JP2686062B2 - 吸収式冷凍システム及び作動流体 - Google Patents

吸収式冷凍システム及び作動流体

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に吸収式冷凍シ
ステムに関する。特に、本発明は、このようなシステム
に用いられる腐食防止作動流体及びこのような流体の製
造方法に関する。この流体には、システムの作動流体と
接触する部分における金属の腐食を抑えるための腐食防
止剤が含まれている。
【０００２】
【従来の技術】従来、吸収冷凍システムに用いられる冷
媒及び吸収剤には種々の組み合わせが存在する。このよ
うな組み合わせの一つとして、水とハロゲンリチウム
塩、例えば臭化リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウ
ム、との組み合わせが挙げられ、両者は混合されてリチ
ウム塩の濃縮水溶液が形成される。このような組み合わ
せの他の例としては、水とアンモニアが挙げられる。
【０００３】鉄と鋼鉄等の鉄合金、及び銅と銅合金は、
吸収式冷凍システムに用いられる典型的な構成材質であ
る。これらの材質の腐食は、種々の困難を招く。例え
ば、腐食による金属の損失だけでなく、鉄を含む金属の
酸化によって水素ガスが発生する。水素ガスを除去しな
いと、水素によって、システムの適正な動作が阻害され
てしまう。
【０００４】このように、ハロゲンリチウム塩を用いる
システムにおいては、腐食は特に問題となっている。ま
た、システムに用いられる冷媒／吸収剤のペアの種類に
拘わらず、金属の腐食速度は、システムの温度が上昇す
るにつれて増していく。
【０００５】従来から、吸収式冷凍システムの冷媒／吸
収剤溶液に対してクロム塩、例えばクロム酸リチウムを
添加すると、金属の腐食を抑えるのに効果があることは
よく知られている。
【０００６】クロム酸化合物の存在によって、吸収剤と
接触しているシステムの表面上に、鉄とクロム酸化物の
保護層が形成される。鉄の酸化が小さくなるにつれて、
凝縮できない水素の生成も、これに対応して小さくな
る。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】しかし、クロムを使用
する場合、健康が損なわれるおそれがある。政府機関の
少なくとも一つ、米国環境保護局、においては、クロム
をガンの一因であると認定し、大気に解放されたシステ
ムにおいてはクロム化合物の利用は禁止されている。
【０００８】現時点では、閉鎖系においはクロムの使用
に特別の制限はないが、将来的には何らかの規制がなさ
れることも予想される。吸収式冷凍システムは、勿論、
閉鎖系ではあるが、作動流体の試料採取時、製造工程
時、及び取り扱い時や注入時において、システムから大
気中へとある程度作動流体が飛散することも起こり得
る。また、システムの寿命がきたときに、クロム化合物
が含まれる作動流体の廃棄には、必ず費用がかかる。
【０００９】従って、吸収式冷凍システムの作動流体に
おいて、金属部分の腐食の抑制に有効な抑制剤を含有
し、かつ、クロムを含有しないことによって、環境及び
健康に悪影響を与えることのないものが必要とされてい
る。作動流体としては、種々のタイプのシステムに適用
可能で、かつ三重効用吸収式システム及び天然ガスまた
はプロパンにより燃焼されるシステムにおける非常に高
い温度環境下にあっても腐食の抑制に有効であることが
必要となる。
【００１０】
【課題を解決するための手段】本発明においては、ハロ
ゲンのリチウム塩またはアンモニア塩のいずれかを、ク
ロムを含有しない水溶液として吸収式冷凍システムの作
動流体に用いる。リチウム塩やアンモニア塩に加えて、
溶液には、モリブデン酸塩を含有する化合物、硼酸塩を
含有する化合物、及び好適実施形態においては、珪酸塩
を含有する化合物が含有される。これにより、モリブデ
ン、ホウ素、及びケイ素のイオンが作動流体内に存在す
るようになっている。
【００１１】この溶液には、水酸化物を含有する化合物
が十分に加えられ、（酸性ではなく）むしろ強い塩基性
にされている。添加された成分は、効果的な腐食防止剤
として作用し、作動流体の腐食防止性能は、従来のクロ
ム酸リチウムの腐食防止剤を用いた作動流体よりも優れ
たものとなっている。
【００１２】作動流体は、モリブデン、ホウ素、及び好
適実施形態においてはケイ素のハロゲンまたはアンモニ
ウム塩をリチウム塩またはアンモニアの水溶液に加える
ことで調製される。所望のアルカリ度を得るために、ナ
トリウム、リチウム、カリウム又はアンモニウムの水酸
化物もまた加えられる。添加される化合物は、好ましく
は水溶液として加えられる。
【００１３】
【発明の実施の形態】本発明の作動流体の一実施形態に
おける腐食防止性能は、鋼鉄及び銅の試料を用いた実験
室的状況下及び実際の冷凍システムの双方において検証
された。その検証結果から、この作動流体は、腐食の抑
制力が、クロム酸塩の防止剤よりも優れ、勿論その他の
防止剤や防止剤のブレンドよりも優れていることが示さ
れた。
【００１４】本発明に係る作動流体は、ハロゲン塩また
はアンモニアの水溶液である。加えて、作動流体は、モ
リブデンとホウ素イオンのブレンドによる腐食防止剤を
含有する。一実施形態においては、このブレンドにはシ
リコンケイ素イオンが含まれる。水酸化物を含有する化
合物もまた作動流体に加えられて水酸イオンが加えら
れ、溶液はアルカリ性とされる。モリブデン、ホウ素及
びケイ素のイオンは、それぞれ、モリブデン酸塩、硼酸
塩、珪酸塩を含有する化合物を添加することにより、溶
液中に存在するようになる。
【００１５】個々の吸収式冷凍システムにおいては、い
ずれも、作動流体として、臭化リチウム、塩化リチウ
ム、ヨウ化リチウムまたはアンモニアの水溶液を用い得
る。システムによっては、二種以上のハロゲンリチウム
塩の水溶液を作動流体として用い得る。モリブデン酸
塩、硼酸塩、珪酸塩を含有する腐食防止化合物は、流体
の基本成分に対する同類の塩であることが好ましい。従
って、水と臭化リチウムの作動流体においては、添加化
合物は、好ましくはモリブデン酸リチウム、ホウ素酸リ
チウム、及びケイ素酸リチウムとする。また、好ましく
は、その規定度(normality)は、水酸化リチウムの添加
により調整される。
【００１６】水とアンモニアの作動流体においては、添
加する化合物は、好ましくは、モリブデン酸アンモニウ
ム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、
硼酸アンモニウム、硼酸リチウム、硼酸ナトリウム、珪
酸アンモニウム、珪酸リチウム、珪酸ナトリウムであ
り、その規定度は、好ましくは、水酸化アンモニウム、
水酸化リチウム、水酸化ナトリウムによって調整され
る。しかし、モリブデン酸カリウム、硼酸カリウム、珪
酸カリウムを、水酸化カリウムを用いて規定度を調整す
ることでも、満足し得る結果が得られる。
【００１７】本発明に係る作動流体は、混合及び溶解技
術によって得られる。例えば、腐食防止臭化リチウム作
動流体は、臭化リチウムの水溶液を調製する得られる。
その後、モリブデン酸リチウム、硼酸リチウム、及び好
適実施形態においては、珪酸リチウム、及び水酸化リチ
ウムが加えられる。冷媒／吸収剤溶液自体に対して、直
接冷媒／吸収剤溶液に添加化合物を加えるより、添加化
合物を水溶液として加えることが好ましい。
【００１８】本発明によって臭化リチウム作動流体を実
験室的状況下、及び実際の冷凍システムのそれぞれにお
いて試験した。このような作動流体における臭化リチウ
ムの基本水溶液は、臭化リチウム濃度が５５％で、０．
０６Ｎであった。その他の添加物の濃度は、モリブデン
１５０ｐｐｍ（parts per milion:ppm ただし重量比)
ホウ素１９０ｐｐｍ、ケイ素１０ｐｐｍであった。ま
た、ケイ素化合物を添加しないものとし、その他の条件
は同一として作動流体を試験した。
【００１９】その結果、ケイ素化合物の添加の有無に拘
わらず、本発明に係る作動流体は、クロムを含有する作
動流体に比較して、優れた腐食防止能を有することが示
された。実際の腐食速度は、温度条件、金属の種類、金
属と接触する作動流体が気体、液体、または気液混合状
態のいずれの状態にあるかによりより変動する。しか
し、本願発明に係る作動流体を用いたときの腐食速度
は、銅および鋼鉄のいずれにおいても、腐食防止剤を用
いない場合に比較すると平均的に約百分の一以下、クロ
ムの腐食防止剤を用いた場合に比較しても、平均的に約
十分の一以下となっている。さらに、ケイ素含有化合物
を添加した場合には、ケイ素を含有しない腐食防止剤を
ブレンドした場合に比較してさらに優れた性能が得られ
る。
【００２０】比較試験の結果は、規定度が０．０３〜
０．２、モリブデン濃度が１２０〜１８０ｐｐｍ、ホウ
素濃度が１６０〜２２０ｐｐｍ、ケイ素濃度が１〜２０
ｐｐｍである作動流体において得られると認められる。
さらに、比較的低濃度の腐食防止添加剤として、１０ｐ
ｐｍのモリブデン、１ｐｐｍのホウ素が、腐食の抑制に
効果的である。
【００２１】本発明に係る作動流体の腐食防止能は、そ
の他の添加剤、例えば２−エチルヘキサノール等による
影響を受けることがないことが、試験によって示され
た。本発明に係る作動流体は、長時間格納によってわず
かに濁る。しかし、このような混濁は、その腐食防止能
に何ら影響するものではない。本発明に係る作動流体を
用いると、試験したシステムにおいては、スティールの
構成部上への銅のメッキも生じなかった。作動流体中に
カルシウム不純物（最大１ｐｐｍ）がみられない点は重
要である。
【００２２】腐食防止剤ブレンドの成分には、作動流体
をシステムに入れて長時間経過すると消費されてしまう
ものもあり、システムの動作時においては、その消費速
度が増す。従って、このような消費分のために、作動流
体中の成分化合物の濃度を必要量よりもある程度多めに
することが好ましい。この消費分のため、モリブデン濃
度を５００ｐｐｍ、ホウ素濃度を１％（１０，０００ｐ
ｐｍ）、シリコン濃度を１００ｐｐｍ程度とすることが
好ましい。
【００２３】なお、上記添加物の濃度は、アンモニウム
の濃度、ハロゲン塩またはハロゲン塩類の総濃度が通常
の値である作動流体、例えば５４〜５６重量％の臭化リ
チウム水溶液、及び１０重量％のアンモニア水溶液であ
る。
【００２４】なお、本願を要約すると、吸収式冷凍シス
テムに用いられ、腐食を防止する作動流体及びその製造
方法が得られる。この作動流体は、リチウムのハロゲン
塩またはアンモニアであって、モリブデン酸塩含有水溶
性化合物、硼酸塩含有水溶性化合物、及び好適実施例に
おいては珪酸塩含有水溶性化合物が添加される。
【００２５】また、モリブデン、ホウ素、ケイ素イオン
の最終的な好適濃度も開示されている。水酸化物を含有
する水溶性化合物もまた加えられ、作動流体がアルカリ
の規定度となるようにされる。好適な製造方法において
は、添加される化合物は、水溶液として作動流体に加え
られる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−101352（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−147689（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−174487（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−82364（ＪＰ，Ａ) 特表 平６−510818（ＪＰ，Ａ)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 臭化リチウム、塩化リチウム及びヨウ化
    リチウムから選択される少なくとも一種の化合物の水溶
    液を含む吸収式冷凍システムの作動流体であって、 前記溶液は、更に、 前記溶液におけるモリブデン濃度を１０〜５００ｐｐｍ
    とする添加量で添加されたモリブデン酸塩と、 前記溶液におけるホウ素濃度を１〜１０，０００ｐｐｍ
    とする添加量で添加されたホウ酸塩と、 前記溶液におけるケイ素濃度を１〜２０ｐｐｍとする添
    加量で添加されたケイ酸塩と、 を含むことを特徴とする作動流体。
  2. 【請求項２】 前記溶液をアルカリ性とするに十分な量
    の水酸化物を更に含むことを特徴とする請求項１記載の
    作動流体。
  3. 【請求項３】 前記溶液の規定度は０．０３〜０．２で
    あることを特徴とする請求項２記載の作動流体。
  4. 【請求項４】 臭化リチウム、塩化リチウム及びヨウ化
    リチウムから選択される少なくとも一種の化合物の水溶
    液を含む吸収式冷凍システムの作動流体であって、 前記溶液は、更に、 前記溶液におけるモリブデン濃度を１２０〜１８０ｐｐ
    ｍとする添加量で添加されたモリブデン酸塩と、 前記溶液におけるホウ素濃度を１６０〜２２０ｐｐｍと
    する添加量で添加されたホウ酸塩と、 前記溶液におけるケイ素濃度を１〜２０ｐｐｍとする添
    加量で添加されたケイ酸塩と、 を含むことを特徴とする作動流体。
  5. 【請求項５】 前記溶液をアルカリ性とするに十分な量
    の水酸化物を更に含むことを特徴とする請求項４記載の
    作動流体。
  6. 【請求項６】 前記溶液の規定度は０．０３〜０．２で
    あることを特徴とする請求項５記載の作動流体。
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