JPH0641585B2 - 吸収冷凍機用吸収液 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、腐蝕性の大きいハロゲン化リチウムを含む
水溶液を吸収液とする吸収冷凍機において、吸収液に腐
蝕抑制性能の大きい添加剤を含有させて、吸収冷凍機の
金属材料の腐蝕を抑制する吸収冷凍機用吸収液に関す
る。

〔従来の技術〕

従来、吸収冷凍機では、吸収液として一般にハロゲン化
リチウムの水溶液、特に臭化リチウム水溶液が使用され
ている。しかし、臭化リチウム水溶液は軟鋼、銅、黄銅
等に対する腐蝕性を有することが良く知られている。こ
れらの金属を吸収冷凍機の材料として使用するには、吸
収液として臭化リチウム水溶液が使用される場合、腐蝕
防止の為にインヒビターの添加が不可欠である。従来、
多く使用されるインヒビターには、例えば、クロム酸
塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、硝酸塩、亜硝
酸塩、アゾール類、アミン類等がある。これらの大部分
は酸化剤であり、鉄表面に緻密な保護被膜を形成するこ
とによって腐蝕を抑制するものである。

〔発明が解決しようとする課題〕

前記のような被膜形成の間の反応における水素ガスの発
生を免がれることは困難であり、この水素ガスにより冷
凍機内の圧力上昇を招き、運転に支障を来たすことがし
ばしばあるという問題点がある。それに加えて、近年、
吸収冷凍機の高効率化や空冷化が要望され、吸収液の高
濃度化、冷凍機内の高温化が行なわれるようになった。
これに伴なって、高温での分解が問題とされる有機系イ
ンヒビターや硝酸、亜硝酸系インヒビターを使用するこ
とが困難となる問題点がある。また、一般にハロゲン化
リチウム水溶液は、高温、高濃度になる程、腐蝕性が強
くなるので、前記インヒビターでは十分に腐蝕を抑制す
ることが困難であるという問題点がある。

この発明は、ハロゲン化リチウムを含む水溶液を吸収液
とする吸収冷凍機用吸収液において、吸収冷凍機に使用
する金属材料の腐蝕を抑制する吸収液を提供することを
目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

この発明の吸収冷凍機用吸収液は、ハロゲン化リチウム
を含む水溶液に（ａ）水酸化アルカリ金属化合物、
（ｂ）コバルト化合物を含有させたもので、金属材料に
対する腐蝕を抑制する吸収冷凍機用吸収液である。

さらに、腐蝕抑制性を増加する為に（ｃ）添加剤とし
て、（イ）燐酸塩、（ロ）硼酸塩、（ハ）モリブデン酸
塩の中の少くとも一以上から成る添加物を含有させた吸
収冷凍機用吸収液である。

特に、前記（ａ）水酸化アルカリ金属化合物が水酸化リ
チウムであり、（ｂ）コバルト化合物が塩化コバルトで
ある冷凍機用吸収液である。

そして、前記（ａ）水酸化アルカリ金属化合物の濃度
が、0.05〜0.5重量％であり、（ｂ）コバルト化合物の
濃度が、0.005〜0.1重量％であることが好ましい。

また、前記（ｃ）添加剤の（イ）燐酸塩が燐酸リチウム
であり、（ロ）硼酸塩が四硼酸リチウムであり、（ハ）
モリブデン酸塩がモリブデン酸リチウムである冷凍機用
吸収液である。

さらに、（イ）燐酸塩、（ロ）硼酸塩、（ハ）モリブデ
ン酸塩の各々の濃度が0.005〜0.1重量％であることが好
ましい。

即ち、水酸化リチウムについては、0.05重量％、酸化コ
バルトについては、0.005重量％が少くとも必要であ
り、逆に濃度が高すぎると、アルカリ腐蝕が生じること
や、溶解しきれずに沈澱するといった問題が生じるの
で、水酸化リチウムについては0.5重量％、塩化コバル
トについては0.1重量％を越えないことが好ましい。ま
た、燐酸リチウム、四硼酸リチウム、モリブデン酸リチ
ウムは、0.05重量％以上添加しないとその効果が生じな
いで、0.1重量％を越えた添加量では溶けきれず沈澱す
る可能性があるので、0.005〜0.1重量％が好ましい。

〔作用〕

ハロゲン化リチウムを含む水溶液に水酸化リチウムを添
加するにより、溶液の水素イオン濃度は下がり、腐蝕性
は弱まる。また塩化コバルトを添加することにより、腐
蝕環境にさらされている金属のアノード反応を抑制し溶
液中への金属の溶出を防止することができる。即ち、金
属の腐蝕反応そのものを抑制するので、腐蝕に伴う水素
ガスの発生をも抑制することができ、冷凍機内の圧力上
昇を防止することができる。

さらに、燐酸リチウム、四硼酸リチウム、モリブデン酸
リチウムは塩化コバルトのアノード反応抑制効果を増強
し、より強力な腐蝕抑制効果をもたらすものである。

〔実施例〕

臭化リチウム水溶液を６０重量％含有する水溶液を調製
し、この水溶液に第１表に示すように水酸化リチウム、
塩化コバルト及び添加剤（燐酸リチウム、四硼酸リチウ
ム、モリブデン酸リチウム）を加えて実施例１〜７の試
料吸収液を調製した。また被検腐蝕材料として重量６5.
5ｇ、大きさ１1.0cm（縦）×4.0cm（横）×0.2cm（厚
み）の炭素鋼（spcc）を作製した。これに吊下げ用の孔
を形成し試験片表面をエメリー紙で研磨し、脱脂処理を
行った。その後、第１表の実施例１〜７に示すインヒビ
ターを含んだ各吸収液中に試験片を５枚ずつ隔離して吊
下げて浸漬した。次に容器内を真空にし、温度１６０℃
で５００時間加熱処理を行い、冷却後、容器内を再び真
空引きし、腐蝕反応により生成されるガス発生量を測定
し、試験片を取り出して腐蝕減量を測定した。その結果
を表−１（実施例）に示す。また比較の為に同様に試験
した、比較例１、添加剤無し、比較例２、水酸化リチウ
ムとクロム酸リチウム、比較例３、水酸化リチウムとモ
リブデン酸リチウム、比較例４、水酸化リチウムと硝酸
リチウムの結果を表−２（比較例）に示す。本発明の第
１表と比較例の第２表から添加剤として水酸化リチウム
と塩化コバルトを臭化リチウム水溶液に添加した吸収冷
凍機用吸収液は、炭素鋼の腐蝕量と発生ガス量を顕著に
小さくし得ることが明らかである。また、水酸化リチウ
ムと塩化コバルトを含有する臭化リチウム水溶液へ燐酸
リチウム、四硼酸リチウム、モリブデン酸リチウムを添
加した吸収冷凍機用吸収液は、さらに炭素鋼の腐蝕量と
発生ガス量を減少することが明らかである。

〔発明の効果〕 本発明は、以上説明したように以下に記載されるような
効果を奏する。

本発明の吸収冷凍機用吸収液は、ハロゲン化リチウムを
含む水溶液に水酸化アルカリ金属化合物、特に水酸化リ
チウム、及びコバルト化合物、特に塩化コバルトを添加
させた吸収液であるので金属材料に対して腐蝕抑制効果
を有し、発生ガス量を抑える為、吸収冷凍機の構成材料
の寿命を延ばし機内の圧力上昇を防止し能力を長期にわ
たって維持できる吸収液を提供することができる。さら
に前記吸収液に燐酸塩、特に燐酸リチウム、硼酸塩、特
に四硼酸リチウム、モリブデン酸塩、特にモリブデン酸
リチウムのうちの一以上から成る添加物を添加すること
で腐蝕抑制及びガス発生防止効果を高めることができ
る。

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ハロゲン化リチウムを含む水溶液を吸収液
   とする吸収冷凍機用吸収液において、前記吸収液に
   （ａ）水酸化アルカリ金属化合物と（ｂ）コバルト化合
   物とを含有させたことを特徴とする吸収冷凍機用吸収
   液。
2. 【請求項２】（ｃ）添加剤として、（イ）燐酸塩、
   （ロ）硼酸塩、（ハ）モリブデン酸塩の中の少くとも一
   以上から成る添加物を含有させたことを特徴とする請求
   項１記載の吸収冷凍機用吸収液。
3. 【請求項３】（ａ）水酸化アルカリ金属化合物が水酸化
   リチウムであり、（ｂ）コバルト化合物が塩化コバルト
   であることを特徴とする請求項１または請求項２記載の
   吸収冷凍機用吸収液。
4. 【請求項４】（ａ）水酸化アルカリ金属化合物の濃度
   が、0.05〜0.5重量％であり、（ｂ）コバルト化合物の
   濃度が、0.005〜0.1重量％であることを特徴とする請求
   項１ないし請求項３記載の吸収冷凍機用吸収液。
5. 【請求項５】（ｃ）添加剤の（イ）燐酸塩が燐酸リチウ
   ムであり、（ロ）硼酸塩が四硼酸リチウムであり、
   （ハ）モリブデン酸塩がモリブデン酸リチウムであるこ
   とを特徴とする請求項２記載の吸収冷凍機用吸収液。
6. 【請求項６】（ｃ）添加剤の（イ）燐酸塩、（ロ）硼酸
   塩、（ハ）モリブデン酸塩の各々の濃度が0.005〜0.1重
   量％であることを特徴とする請求項２または請求項５記
   載の吸収冷凍機用吸収液。