JP2654077B2 - 結晶形態の1−メチル−カルバペネム化合物 - Google Patents

結晶形態の1−メチル−カルバペネム化合物

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JP2654077B2 JP63095443A JP9544388A JP2654077B2 JP 2654077 B2 JP2654077 B2 JP 2654077B2 JP 63095443 A JP63095443 A JP 63095443A JP 9544388 A JP9544388 A JP 9544388A JP 2654077 B2 JP2654077 B2 JP 2654077B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はカルバペネム系抗生物質に関し、さらに詳細
には、カルバペネム骨格の1位にβ−配置のメチル基が
導入され且つ2位に第4級アンモニウム官能基である
(メチル置換−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)
メチルチオ基が導入された次式(I): で示される結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(メチル置
換−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
ル−カルバペネム−3−カルボキシレート、該化合物を
有効成分として含有する抗菌剤並びに該化合物の製造方
法に関する。
[従来の技術と問題点] 従来より、種々の抗菌活性を目的として次式(A): で示されるカルバ−2−ペネム−3−カルボン酸を基本
骨格とするカルバペネム系抗生物質は多数提案されてい
る。
例えば初期のカルバペネム系抗生物質は、ストレプト
ミセス・カトレヤ(Streptomyces cattleya)の発酵よ
り得られる次式(B): で示されるチエナマイシンのような天然由来のカルバペ
ネム化合物である。このチエナマイシンは広範囲にわた
るグラム陽性菌、グラム陰性菌に対し、優れた抗菌スペ
クトラムを有し、有用性の高い化合物としてその開発が
期待されたものの、化学的安定性が悪く、実用化される
までには至っていない。
そのため多くの研究者は、上記式で示されるチエナマ
イシンの抗菌活性を保有し且つその化学的安定性が確保
されたカルバペネム化合物を開発するために努力し、そ
の結果、チエナマイシンの2位側鎖のアミノ基をホルム
イミドイル化した次式(C): で示されるイミペネム(imipenem;INN)が実用的抗菌剤
として登場するに至った。
しかし、上記式(C)で示されるイミペネムは、チエ
ナマイシンより優れた抗菌活性を示し、化学的安定性は
ある程度確保されているものの、生体内において腎デヒ
ドロペプチダーゼ(DHP)により分解不活性化が短時間
のうちに生じてしまうという欠点を有している。そのた
めイミペネムは単独で投与がすることができず、DHP阻
害剤と併用し、その分解不活性化を抑制してやらなけれ
ばならない。したがって、この化合物の実際的製剤はDH
P阻害剤の一種であるシラスタチン(cilastatin;INN)
と併用したイミペネム/シラスタチンの配合処方となっ
ている。
しかしながら臨床的に使用される実用的な抗菌剤とし
ては、抗菌剤本来の抗菌活性がそのまま発揮されるのが
好ましく、また併用するDHP阻害剤が生体内の他の組織
において好ましからざる副作用を発揮するおそれがある
ことも考えられるので、配合処方は極力回避した方がよ
いことはいうまでもない。そのため抗菌活性と同時にDH
Pに対する耐性をも保有するカルバペネム化合物の開発
が強く要望されている。
最近に至り上述の目的を達成させるものとして、カル
バペネム骨格の1位にメチル基を導入した1−メチルカ
ルバペネム化合物が種々提案されており、またごく最近
にはカルバペネム骨格の2位の置換基として第四級アン
モニウムチオ基を導入したカルバペネム化合物も提案さ
れている。例えば、特開昭60−83183号公報[欧州特許
公開第170,073号](メルク社)には、下記一般式
(D): で示される2位にアルキル化されたモノ−またはピーサ
イクリツク第4級ヘテロアリールアルキルチオ置換基を
持つ1−メチルカルバペネム化合物が開示されており、
これら化合物は抗菌活性が優れたものであるとともにDH
Pによる分解不活性化に対する抵抗性が著しく改善さ
れ、有用性が高いものであると報告されている。
しかしながら、上記公報には、これら1β−メチル−
カルバペネム化合物について上位概念による広い記載は
あるものの具体例は少なく、しかも抗菌活性が優れてい
るとの一般的記述はなされているが、具体的抗菌活性デ
ータについての記載は皆無である。特に上記式に包含さ
れるカルバペネム化合物について上記公報には約470種
以上にわたる多数の化合物が例示されているものの、実
施例においてその製造が確認されている化合物はわずか
10種にすぎず、かつそれら化合物はいずれも凍結乾燥品
という無晶形態で得られているにすぎない。
また、米国特許第4,644,061号明細書(ブリストル−
マイヤーズ)には、カルバペネム骨格の2位が第4級ヘ
テロアルキルチオ置換された下記一般式(E): 式中、R1はヒドロキシエチル基等を表わし、R8は水素
原子等を表わし、そしてR15は水素原子またはメチル基
を表わす、 で示されるカルバペネム化合物について開示されてい
る。
この米国特許明細書のなかには、基: が次式: で示される(2−メチル−1,2,3−チアジアゾリウム−
4−イル)メチル基である化合物が記載されているが
(例えば実施例16)、この化合物は凍結乾燥品という無
晶形態のものでしかない。
ところで、カルバペネム系化合物を実際の抗菌剤とし
て市場化する場合には、その化合物の化学的安定性の面
からみて結晶形態にあることが望ましい。特に無晶形態
の固体は安定性が不充分であり、通常の条件下で長期間
保存すると変色し、活性の低下をきたし、また仮に無晶
固体として市場化するとしても、該無晶形固体を実質的
に純粋なものとして製造するためには煩雑な精製工程を
要し、実際の市場化には種々問題がある。
したがって、結晶形態のカルバペネム化合物を得るこ
とは極めて重要なことであるにもかかわらず、これまで
該カルバペネム化合物の結晶についてあまり詳細に検討
されていないというのが実情である。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、強力な抗菌活性ならびにβ−ラクタマーゼ
阻害作用等を有するとともに、腎デヒドロペプチダーゼ
に対する優れた耐性を有する結晶形態のカルバペネム化
合物を提供するものである。
すなわち、本発明は次式(I): で示される結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(メチル置
換−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
ル−カルバペネム−3−カルボキシレート殊に、次式
(I−1): で示される結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(2−メチ
ル−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
ル−カルバペネム−3−カルボキシレートを提供するも
のである。
ところで本発明者らは、上記式(I)で示されるカル
バペネム化合物が、これまで詳細に検討されていない1
位がβ−配置でメチル置換されたカルバペネム化合物に
おいて、2位側鎖として特に(メチル置換−1,2,3−チ
アジアゾリウム−4−イル)メチルチオ基が導入され且
つこの側鎖が3位のカルボキシレートと分子内塩を形成
している化合物として特異的なものであり、かつ該化合
物に優れた抗菌活性が認められられることを見出し先に
特許出願している(特願昭62−89012号および特願昭62
−279444号)。
本発明は、この特異的な式(I)で示されるカルバペ
ネム化合物が安定な結晶として得られることおよび結晶
化により容易に精製されることを見出し完成されたもの
であり、結晶化することによりその抗菌力ならびにDHP
に対する耐性が特異的に優れている点に顕著な特徴を有
するものである。
したがって、本発明によればまた前記式(I)で示さ
れる結晶形態のカルバペネム化合物を有効成分として含
有する抗菌剤が提供される。
本発明で提供される式(I)で示される結晶形態のカ
ルバペネム化合物は、偏光顕微鏡による観察および粉末
X線回折分析によって結晶形態であることを確認するこ
とができる。特に粉末X線回折図形において、面間隔
(d)6.9、5.3、4.6、4.2、3.9、3.3、3.0、2.5および
2.4Åに特徴的なピークを有することによって同定され
る。
本発明により結晶化される前記式(I)で示されるカ
ルバペネム化合物それ自体は、基本的には以下に述べる
方法により製造することができる。すなわち、次式(I
I): 式中、R2はカルボキシ保護基を表わし、Raはアシル基
を表わす、 で示される化合物に、次式(III): で示されるメルカプト試薬を反応させ、次式(IV): 式中、R2は前記定義のとおりである、 で示される化合物となし、そして得られる化合物に対し
て、保護基R2の除去およびジメチル硫酸もしくはメチル
トリフレートによる第四級化をこの順序またはこの逆の
順序で行なうことにより、式(I)で示されるカルバペ
ネム化合物を製造することができる。
また、式(I)で示されるカルバペネム化合物は、前
記式(II)で示される化合物に次式(III−1): 式中、 Rcはメルカプト基の保護基を表わし、 X は第四級アンモニウムの残基を表わす、 で示されるメルカプト試薬を反応させて、次式(IV−
1): 式中、R2およびX は前記定義のとおりである、 で示される化合物となし、そして得られる化合物に対し
て、保護基R2の除去を行なうことにより、製造すること
もできる。
以下、上記の式(I)で示されるカルバペネム化合物
の製造方法について更に詳細に説明する。
上記方法において出発原料として使用される前記式
(II)で示される化合物は、それ自体既知のものであ
り、例えば特開昭56−123985号公報に記載の方法によっ
て製造することができ、或いは好適には、本発明者らが
既に提案した下記反応式Aに示す立体選択的方法(例え
ば、特願昭61−315444号出願明細書参照)に従って製造
することができる。
上記反応式中、R3は水素原子または低級アルキル基を
表わし、Zはt−ブチルジメチルシリル基を表わし、R2
およびRaは前記定義のとおりである。
なお、本明細書において、「低級」なる語は、この語
が付された基または化合物の炭素原子数が1〜7個、好
ましくは1〜4個であることを意味する。
「低級アルキル基」は直鎖状または分岐鎖状のいずれ
であってもよく、好ましくは1〜6個の炭素原子を有す
ることができ、例えばメチル、エチル、n−プロピル、
イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチ
ル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−
ヘキシル、イソヘキシル基等が包含される。
「カルボキシル保護基」としては、例えばエステル残
基を例示することができ、かかるエステル残基としては
メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−,i
so−,sec−,tert−ブチル、n−ヘキシルエステル等の
低級アルキルエステル残基;ベンジル、p−ニトロベン
ジル、o−ニトロベンジル、p−メトキシベンジル等の
アラアルキルエステル残基;アセトキシメチル、プロピ
オニルオキシメチル、n−,iso−,ブチリルオキシメチ
ル、ピバロイルオキシメチル等の低級脂肪族アシルオキ
シメチル残基等が挙げられる。
また、「アシル基」は、単に有機カルボン酸のカルボ
キシル基からOHを除いた残りの原子団のみならず、広義
に、有機スルホン酸や有機リン酸から誘導されるアシル
基をも包含され、例えばアセチル、プロピオニル、ブチ
リル等の低級アルカイル基;メタンスルホニル、トリフ
ルオロメタンスルホニル基等の(ハロ)低級アルキルス
ルホニル基;ベンゼンスルホニル、p−ニトロベンゼン
スルホニル、p−ブロモベンゼンスルホニル、トルエン
スルホニル、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホ
ニル等の置換もしくは未置換のアリールスルホニル基;
ジフエニルホスホリル基等が挙げられる。
さらに、「メルカプト基の保護基」としては、アセチ
ル、プロピオニル等の低級アルカノイル基;t−ブチルジ
メチルシリル、t−ブチルジフエニルシリル、(2−フ
エニル−2−プロピル)ジメチルシリル等のシリル基が
挙げられる。
以下、上記反応式Aで示される式(II)の化合物の高
立体選択的製造の各工程をさらに詳しく説明する。
工程(a)は、式(IV)のN−プロピオニル−1,3−
チアゾリジン−2−チオン誘導体を、塩基の存在下にス
ズ(II)トリフレートと反応させてエノレートを生成さ
せ、次いでこれに式(V)の化合物を反応させて、式
(VII)のアゼチジン−2−オン誘導体を製造すること
からなる。
上記の式(VI)のN−プロピオニル−1,3−チアゾリ
ジン−2−チオン誘導体のス(II)トリフレートによる
エノール化反応は、通常反応に不活性な溶媒中、例え
ば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテ
ル類;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水
素類;ジクロルメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭
化水素類など、特にテトラヒドロフラン中で好適に実施
することができる。
反応温度は厳密に制限されるものではなく、使用する
出発原料等に応じて広範に変えることができるが、一般
には約−100℃ないしほぼ室温程度、好ましくは約−78
℃〜約0℃の比較的低温が使用される。
式(VI)の化合物に対するスズ(II)トリフレートの
使用量は臨界的なものではないが、通常、式VIの化合物
1モルに対するス(II)トリフレートは約1〜約2モ
ル、好ましくは1〜1.5モルの割合で使用することがで
きる。
上記エノール化反応は塩基の条件下に実施され、使用
しうる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイ
ソプロピルエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.
2]オクタン、N−メチルモルホリン、N−エチルピペ
リジン、ピリジン等の第三級アミン等が挙げられ、中で
もN−エチルピペリジンが有利に用いられる。これらの
塩基は一般に式(VI)の化合物1モル当り約1.0〜約3
当量、好ましくは1.0〜2.0当量の割合で使用することが
できる。
上記エノール化反応は一般に約5分〜約4時間で終わ
らせることがき、これによってエノレートが得られる。
このエノール化反応に引続いてそのまま、生成するエ
ノレートに前記式(V)の化合物を反応せしめることが
できる。
前記エノレートと式(V)の化合物との間のアルキル
化反応は一般に、約−100℃ないしほぼ室温、好ましく
は約−78℃〜約10℃の温度において実施することができ
る。その際の式(V)の化合物の使用量は臨界的ではな
く適宜変更することができるが、通常、前記エノール化
反応に用いた式(VI)の化合物1モル当り約0.5〜約5
モル、好ましくは0.5〜2モルの割合で用いるのが適当
である。
かかる条件下に反応は一般に約5分〜約5時間、より
一般には5分〜約2時間程度で終了させることができ
る。
前述のエノール化反応及び上記アルキル化反応は、必
須ではないが、不活性雰囲気下、例えば窒素ガス、アル
ゴンガス雰囲気下に実施するのが望ましい。
最後に反応生成物は水で処理される。例えば、反応終
了後、pH7付近の燐酸緩衝液を加え撹拌し、不溶物を戸
別したのち、式(VII)の化合物を常法により、例えば
抽出、再結晶、クロマトグラフイー等により分離精製す
ることができる。
工程(b)は、前記工程(a)で製造される式(VI
I)で示されるアゼチジン−2−オン誘導体を、イミダ
ゾールの存在下に式(R2OOCCH2CO22Mgで表わされるマ
グネシウムマロネート化合物と反応させ、式(VIII)で
表わされる化合物を得る工程である。
反応は好ましくは不活性有機溶媒中で行なわれ、例え
ばエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエー
テル系溶媒;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の
炭化水素系溶媒;ジクロルメタン、クロロホルム等のハ
ロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル等などを挙げ
ることができるが、特にアセトニトリルが好適に使用さ
れる。
反応温度は厳密に制限されるものではなく、使用する
出発原料等に応じて広範に変えることができるが、一般
に約0℃ないしほぼ100℃程度、好ましくは室温付近の
比較的低温が使用される。
式(VII)の化合物に対するマグネシウムマロネート
化合物の使用量はほぼ等モル量が使用され、反応は50時
間程度、好ましくは20時間程度で完了する。
なお、使用するマグネシウムマロネート化合物として
は、例えば、パラニトロベンジルマグネシウムマロネー
ト、ベンジルマグネシウムマロネート、メチルマグネシ
ウムマロネート等を挙げることができるが、なかでもパ
ラニトロベンジルマグネシウムマロネートを用いるのが
好ましい。
工程(c)は、工程(b)で得られる式(VIII)の化
合物において水酸基の保護基Zを脱離させる工程であ
る。t−ブチルジメチルシリル基Zの除去は、式(VII
I)の化合物をメタノール、エタノール、テトラヒドロ
フラン、ジオキサンなどのような溶媒中で、塩酸、硫
酸、酢酸などのような酸の存在下に、0〜100℃の温度
で0.5〜18時間酸性加水分解することにより実施するこ
とができる。
かかる工程により、目的とする式(IX)で示される化
合物を定量的に得ることができる。
工程(d)では、工程(c)が得られる式(IX)で示
される化合物を、塩基の存在下に、前記工程(b)で述
べたと同様の不活性有機溶媒中でアジド化合物で処理
し、目的とする式(x)のジアゾ化合物を得る。
使用されるアジド化合物としては、例えば、p−カル
ボキシベンゼンスルホニルアジト、トルエンスルホニル
アジド、メタンスルホニルアジド、ドデシルベンゼンス
ルホニルアジドなどを挙げることができ、また、塩基と
しては、トリエチルアミン、ピリジン、ジエチルアミン
などの塩基を例示することができる。
反応は、好ましくはトリエチルアミンの存在下アセト
ニトリル中で、p−トルエンスルホニルアジドを加え、
0〜100℃、好ましくは室温で1〜50時間処理すること
により行なうことができ、これによって高収率で目的と
する式(X)のジアゾ化合物を得ることができる。
工程(e)は工程(d)で得られる式(X)のジアゾ
化合物を環化し、式(XI)で示される化合物とする工程
である。該工程は好適には、例えば式(X)の化合物
を、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、シクロ
ヘキサン、酢酸エチル、ジクロルメタンなどのような不
活性溶媒中、好ましくはトルエン中で、25〜110℃の温
度において1〜5時間、ビス(アセチルアセトナト)Cu
(II)、CiSO4、銅粉末、Rh2(OCOCH3、ロジウムオ
クタノエートまたはPb(OCOCH3のような金属カルボ
キシレート化合物などの金属触媒の存在下で処理するこ
とにより実施される。一方別の方法として、上記環化工
程はまた式(X)の化合物を、ベンゼン、ジエチルエー
テルなどのような溶媒中で、0〜250℃の温度において
0.5〜2時間、パイレックスフィルター(波長は300nmよ
り大)を通して光を照射することにより実施することも
できる。
最後に、工程(f)において、工程(e)で得られる
式(XI)の化合物をRaOHで示される酸の反応性誘導体
(例えば、酸無水物、ハライドなど)と反応させること
により、式(II)で示される化合物が得られる。
かかる酸の反応性誘導体としては、例えば、無水酢
酸、アセチルクロリド、プロピオニレクロリド、p−ト
ルエンスルホン酸無水物、p−ニトロベンゼンスルホン
酸無水物、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン
酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタ
ンスルホン酸無水物、ジフェニルリン酸クロリド、トル
エンスルホンクロリド、p−ブロモベンゼンスルホニル
クロリドなどが挙げられ、特にジフェニルリン酸クロリ
ド(R=ジフエニルホスホリル基)が好適である。
式(XI)の化合物と上記酸の反応性誘導体との反応
は、通常のアシル化法と同様にして行なうことができ、
例えば、メチレンクロリド、アセトニトリル、ジメチル
ホルムアミド等の不活性溶媒中で、適宜ジイソプロピル
エチルアミン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノ
ピリジン等の塩基の存在下に、−20〜40℃の温度で約30
分〜約24時間処理することにより行なうことができる。
以上に述べた方法によれば、カルバペネム骨格の1位
がR配置のメチル基で置換され、これらに5位ならびに
6位がそれぞれR及びS配置であり、また6位のヒドロ
キシルエチル基の水酸基がR配置を有する特定の立体配
置を有する式(II)で示される化合物を高立体選択的に
製造することができる。
次いで、得られる式(II)で示される化合物に、前記
式(III)または(III−1)で示されるメルカプト試薬
を反応させ、式(IV)または(IV−1)で示される化合
物を得る。
式(II)で示される化合物と式(III)または(III−
1)で示されるメルカプト試薬との反応は、例えば式
(II)で示される化合物を、テトラヒドロフラン、ジク
ロルメタン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメ
チルスルホキシド、アセトニトリル、ヘキサメチルホス
ホラミドなど等の適当な溶媒中で、ほぼ等モル量乃至約
1.5倍モル量の過剰量の式(III)または(III−1)で
示されるメルカプト試薬と、好ましくは炭酸水素ナトリ
ウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピ
ルエチルアミンなどの塩基の存在下に約−40〜約25℃の
範囲内の温度で約30分〜約24時間反応させることにより
行なうことができる。
以上の反応により、式(IV)または(IV−1)で示さ
れるカルバペネム化合物が得られるが、この式(IV)ま
たは(IV−1)の化合物は3位のカルボン酸がカルボキ
シ保護基R2で保護されている。
この保護基R2の除去は、ソルボリシスまたは水素添加
分解のようなそれ自体既知の脱保護基反応により行なう
ことができる。典型的には、式(IV)または(IV−1)
で示される化合物を例えばpH7のモルホリノプロパンス
ルホン酸−水酸化ナトリウム緩衝液、PH7のリン酸塩緩
衝液、リン酸二カリウム、重炭酸ナトリウムなどを含む
テトラヒドロフラン−水、テトラヒドロフラン−エタノ
ール−水、ジオキサン−水、ジオキサン−エタノール−
水、n−ブタノール−水などのような混合溶媒中で、1
〜4気圧の水素を用い、酸化白金、パラジウム−活性
炭、水酸化パラジウム−活性炭などの水添触媒の存在下
に、約0〜約50℃の範囲内の温度で約0.25〜約4時間処
理することにより行なうことができる。
かくして得られる(IV)においてR2が水素原子である
遊離カルボン酸を第四級化することにより、本発明の式
(I)で示されるカルバペネム化合物に誘導することが
できる。この第四級化は、通常、前記の如くして製造さ
れる式(IV)で示される化合物を、例えばpH=7.0のリ
ン酸緩衝液に溶解させ、この溶液にジメチル硫酸を作用
させるか、あるいは適当な有機溶媒、例えばジオキサ
ン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン中でメチルト
リフレートを作用させることにより行なうのが好適であ
る。得られる化合物は、例えば、適当なイオン交換樹
脂、好ましくはDowex50W X4タイプのイオン交換樹脂の
カラムにより精製し、凍結乾燥することにより本発明の
結晶化に供しうる分子内両性イオン化合物である式
(I)で示されるカルバペネム化合物に導くことができ
る。
なお、以上に述べた方法において、上記のカルボキシ
ル保護基R2の脱離反応と第四級化反応とは逆の順序で行
なってもよい。すなわち、式(IV)で示される化合物に
対して上記の如くして第四級化を行なった後、その生成
物に対して脱カルボキシル保護基反応を行なってもよ
い。一般に、この順序で行なう方が好ましい。
また一方、式(II)で示される化合物と式(III−
1)で示されるメルカプト試薬の反応で得られる式(IV
−1)で示されるカルバペネム化合物は、カルボキシ保
護基R2の除去により式(I)で示されるカルバペネム化
合物に誘導することができるが、かかる除去反応は前記
するソルボリシスまたは水素添加分解が適用され、その
後得られる化合物をイオン交換樹脂のカラムに通して精
製し凍結乾燥することにより、前記同様結晶化に供しう
る分子内両性イオン化合物である式(I)で示されるカ
ルバペネム化合物に導びくこともできる。
次いで以上の如くして得られる式(I)で示される無
晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(2−メチル−1,2,3−
チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チオ−6−
[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−カル
バペネム−3−カルボキシレートは、本発明の目的物で
ある結晶形態に変えられる。その結晶化には具体的には
例えば以下の方法で実施することができる。
すなわち、上記の如き製造方法に従い製造された凍結
乾燥品(無晶形態)の式(I)で示される化合物を、例
えばダウエツクス(Dowex)50W−X4タイプ、アンバーラ
イト(Amberlite)IR−120タイプあるいはダイアイオン
(Diaion)HP−40タイプ等のイオン交換樹脂を適宜組合
させることにより無晶形態の式(I)の化合物の純度を
高める。この場合、純度は少なくとも97%、好ましくは
99%以上であることが好ましい。次いでこの精製された
無晶形態の式(I)の化合物は結晶化溶媒として水を選
択することにより結晶化が実施される。より具体的には
無晶形態の式(I)の化合物を、少なくとも65%(w/
w)、好ましくは67%(w/w)以上の高濃度溶液となるよ
うに必要に応じて撹拌しながら水に完全に溶解させ、得
られる水溶液から結晶を析出させる。結晶の析出には例
えば上記の如くして得られる水溶液の撹拌を行なうこと
により達成される。この撹拌は一般的に約0℃から約40
℃、好ましくは室温下に行なうのが良く、かつ本発明の
結晶が撹拌溶液から析出するのに充分な時間行なうのが
良い。
本発明の結晶化を行なうにあたっては、無晶形態の式
(I)の化合物の水溶液から結晶を析出させるには、あ
る程度純度の高い無晶形態の化合物を原料として用い、
結晶化溶液として水を用い、その高濃度溶液から結晶を
析出させることが重要であることが判明した。特に本発
明者らの検討の結果によれば、純度が97%以下の無晶形
態の式(I)の化合物を用い、通常の有機化合物の結晶
化に使用される低級アルコール、例えばメタノール、エ
タノール、イソプロパノール、n−プロパノールあるい
はテトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル等の単独
溶媒あるいはこれと水との混合溶媒を結晶化溶媒として
用いた場合には、本発明の目的物である結晶形態の式
(I)の化合物を生成せしめることは困難であった。ま
た、結晶化溶媒として水の単独溶媒を用いたとしても、
純度が97%未満の無晶形態の式(I)の化合物を原料に
用いた場合には結晶化が困難であった。
しかしながら、一旦目的とする式(I)の化合物の結
晶を得、この結晶を種晶として用いる場合には、必ずし
も高純度の無晶形態の式(I)の化合物を原料として用
いることも、及び/又は水の単独溶媒を使用することも
必要ではない。すなわち、97%程度の純度を有する無晶
形態の式(I)の化合物を原料として使用し、この化合
物をある程度の濃度[例えば、55%(w/w)以上]とな
るよう水に溶解させ、該溶液に結晶形態の式(I)の化
合物を種晶として少量添加し、例えばエタノールの如き
水と混和しうる有機溶媒を更に加え、撹拌処理すること
によっても目的とする結晶形態の式(I)の化合物が得
られる。
上記のようにして析出させた結晶は、結晶化溶媒とし
て水のみを使用しかつ結晶化に用いた無晶形態式(I)
の化合物が充分に高純度のものである場合には、そのま
ま常法に従い濾過、乾燥することにより本発明の結晶を
取得することができる。また、本発明の結晶化操作にお
いては好ましくない不純物は母液側に移るので、析出結
晶を含む溶液を濾過し、得られる結晶を少量の有機溶媒
あるいは水−有機溶媒の混合液で洗浄することによって
も充分な純度を有する結晶を取得することが可能であ
る。このような有機溶媒としては、例えば、エタノー
ル、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトン等
が挙げられるが、なかでもエタノールが最も好ましい。
以上の如くして製造される本発明の結晶形態の式
(I)で示される(1R,5S,6S)−2−[(2−メチル−
1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チオ−
6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−
カルバペネム−3−カルボキシレートは、後述する実施
例からも明らかな如く、偏光顕微鏡による観察および粉
末X線回折分析によって結晶形態であることが示され、
その固体安定性は無晶形物に比較しはるかに優れてお
り、しかもその抗菌活性も強力なものであって、医療用
抗菌剤として極めて有用なものである。
本発明の前記式(I)で示される結晶形態の(1R,5S,
6S)−2−[(1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)
メチル]チオ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]
−1−メチルカルバペネム−3−カルボキシレートは、
既に述べたとおり、従来の文献に具体的には開示されて
いない新規な結晶形態の化合物であって、デヒドロペプ
チダーゼ(DHP)として知られている腎酵素による攻撃
に対して極めて安定であり、かつその抗菌作用も優れて
いることが判明した。本発明により提供される式(I)
で示される結晶形態の化合物の優れた抗菌活性及び腎デ
ヒドロペプチダーゼに対する高い安定性は以下に示す生
物活性試験によって立証することができる。
I:抗菌試薬 試験方法: 日本化学療法学会標準法[Chemotherapy,vol29,76〜7
9(1981)]に準じた寒天平板希釈法にしたがった。す
なわち、被検菌のMueller−Hinton(MH)寒天液体培地3
7℃、一夜培養液を約106cells/mlになるようにBuffered
saline gelatin(BSG)溶液で希釈し、ミクロプランタ
ーを用い試験化合物含有MH寒天培地に約5μ接種し、
37℃、18時間培養後、被検菌の発育が認められない最少
濃度をもってMinimum inhibitory concentration(MI
C)とした。
なお、使用菌株は標準菌株を用いた。
結果: 下記第1表に示す。
なお、試験化合物としては後記実施例11に記載の結晶
化合物(20)を用いた。また、対照化合物には、実施例
5で得た無晶形化合物(14)ならびに臨床的に広く使用
されているセファロスポリン化合物であるセフアゾリン
(CEZ)とカルバペネム化合物であるイミペネムを用い
た。
以上の抗菌活性試験によれば、本発明のカルバペネム
化合物は、優れた抗菌活性を有していることが明らかで
ある。
II:臨床分離のβ−ラクタマーゼ(セフアロスポリナー
ゼ)産生株に対する抗菌力 試験方法: 日本化学療法学会標準法に準じた寒天平板希釈法により
測定した。すなわち、sensitivity test broth(STB,ニ
ッスイ)で18時間培養したエピゾーム研究所保存のセフ
アロスポリナーゼ産生菌液を新鮮なSTB溶液で約106cell
s/mlになるように希釈し、その菌浮遊液をミクロプラン
ターを用いて試験薬剤含有sensitivity disk agar−N
(SDA,ニッスイ)平板上にスポットし、18〜20時間後の
被検菌の発育の認められない最少濃度をもってMICとし
た。
結果 下記第2表に示す。
なお、試験化合物としては後記実施例11に記載の結晶
化合物(20)を用いた。また、対照化合物には、実施例
5で得た無晶形化合物(14)ならびに被検菌に対し抗菌
力の優れているとされ、臨床的に使用されるセフアロス
ポリン化合物であるセフチジジム(CAZ)と、カルバペ
ネム化合物であるイミペネムを用いた。
以上の結果から判断すると、Pseudomonadaceaeに属す
るP.aeruginosa,P.cepaciaに対する本発明の結晶形態の
カルバペネム化合物の抗菌力はイミペネムとほぼ同等で
あり、抗プセウドモナス活性を有するCAZより特に強い
ものであった。
また、proteus属を除く腸内細菌科の菌種に対する抗
菌活性はイミペネムと同様にCAZより優れていた。
III.臨床分離株に対する感受性試験 1.P.aeruginosa 耐性株に対して: (1)被検菌株: 下記薬剤に対しカッコ内の濃度で耐性を示すP.aerugi
nosa 54株(注:薬剤間で重複する菌株が存在する結果
54株が選択された。)を用いた。
セフタジジム(CAZ)(25〜100μg/ml)21株 セフスロジン(CFS)(25〜>100μg/ml)23株 ピペラシリン(PIPC)(25〜>100μg/ml)15株 ゲンタマイシン(GM)(25〜>100μg/ml)21株 アミカシン(AMK)(25〜>100μg/ml)26株 オフロキサシン(OFLX)(25〜>100μg/ml)4株 (2)試験方法: 日本化学療法学会標準法に準じた寒天平板希釈法によ
る。すなわち抗緑膿菌剤耐性P.aeruginosa54株を用い試
験IIと同様に行ない、MICを求めた。
(3)結果: この結果で本発明の後記実施例11に記載の結晶化合物
(20)は3.13μg/mlでその約99%の菌株の発育を阻止す
る抗菌活性を有し、6.25μg/mlですべての菌の発育を阻
止した。
これに対しイミペネムでは6.25μg/mlで約98%の菌株
が、12.5μg/mlですべての菌の発育が阻止された。
以上の結果からみると、本発明の化合物はイミペネム
に比較しその効果は優れたものであることが明らかであ
る。
IV.腎デヒドロペプチダーゼに対する安定性試験 1.材料 (1) ブタ腎デヒドロペプチダーゼ−I(DHP−I) ブタ腎臓8kgをホモジナイズし、酵素蛋白を沈殿さ
せ、結合資質をアセトンで除去したのちブタノールによ
る可溶化を行ない、硫安分画法にて順次精製し、最終的
に75%硫安分画の精製によりDHP−I酵素を得た。
なお、酵素濃度は25mg/10ml、pH=7.1、リン酸緩衝液
となるように調整し、各1mlに小分け後、使用時まで−4
0℃以下にて冷凍保存した。
(2) 試験化合物 試験化合物としては後記実施例5に記載の無晶形化合
物(14)ならびに実施例11で得た結晶化合物(20)を用
いた。
なお、該化合物は50ミリモル(mM)リン酸ナトリウム
緩衝液(pH=7.1)にて117μM濃度となるよう用時調整
した。
対照化合物としては、グリシルデヒドロフエニルアラ
ニン(Gl−dh−Ph)ならびにイミペネムを用い、上記と
同様のリン酸ナトリウム緩衝液にて117μM濃度となる
よう用時調整した。
2.方法 (1) レイトアツセイによるDHP−I酵素の基質に対
する加水分解活性の測定 対照化合物であるGl−dh−Phならびにイミペネムをそ
れぞれ117μM含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液
(基質)1.2mlに、上記で得たDHP−I酵素25mg/10ml溶
液の0.2mlを加え(基質の最終濃度:100μM)、37℃に
て10分間インキユベーシヨンを行ない、各基質に特有の
λmaxを用いて吸光度の減少から基質の加水分解の初期
速度を求めた。
なお、ブランクとして上記基質1.2mlにpH7.1リン酸ナ
トリウム緩衝液0.2mlを加えて上記と同様の実験を行な
い、ブランク試験とした。
(2) 高速液体クロマトグラフイ(HPLC)法による各
試験化合物のDHP−Iに対する安定性の測定 本発明の試験化合物ならびに対照化合物であるイミペ
ネムについて上記(1)と同様の操作を行なうが、イン
キユベーシヨンは37℃にて4.5時間ならびに24時間行な
い、それぞれの時間の経過後の化合物の分解をHPLC法に
より測定した。
3.結果: レイトアツセイにより、DHP−Iに対する各基質の加
水分解の初期速度を求めたところ、 Gl−dh−Ph=17.4μM/分 イミペネム=0.56μM/分 であった。
DHP−Iに対するイミペネムならびに本発明の試験化
合物の安定性の測定結果を第3表に示す。
イミペネムはほとんどないしすべてが分解したものと
考えられ、残存量は検出できなかった。
以上のDHP−Iに対する安定性試験の結果から明らか
な如く、本発明の結晶形態のカルバペネム化合物はイミ
ペネムに比較し、数十倍の安定性を示す。
V.毒性試験 マウスはCrjCD(SD)系雄性、体重20〜23gを一群10匹
で使用し、後記実施例11に記載の本発明の結晶形態のカ
ルバペネム化合物(20)を含む溶液を静脈内投与し、1
週間にわたる観察を行なった。
その結果、本発明の結晶形態のカルバペネム化合物
(20)は500mg/kg投与量でもすべて異常なく生存したこ
とが観察された。
上記した如く、本発明の結晶形態のカルバペネム化合
物は、従来のセフアロスポリン化合物に比較し広範囲の
抗菌スペクトルを示すとともに、イミペネムに匹敵する
優れた抗菌活性を有し、そのうえイミペネムと比較しDH
Pに対する耐性がはるかに優れている。更に、臨床分離
病原菌に対しても優れた抗菌効果を有しており、しかも
マウスにおける感染防御試験においても種々の試験菌に
対し良好な効果を示すことが観察された。
したがって、本発明の式(I)で示される結晶形態の
カルバペネム化合物は、従来のイミペネムがDHPに阻害
剤であるシラスタチンと組合せることによってはじめて
実用的な抗菌剤として臨床治療に用いられるようになっ
たのとは対照的に、単独での使用が可能となり、DHP阻
害剤との併用による副作用の心配なく、種々の病原菌に
よる細菌感染症の治療、予防等のための抗菌剤として極
めて有用である。
式(I)で示される結晶形態のカルバペネム化合物
は、それを抗菌剤として使用するに際して、その抗菌的
有効量を含有する薬剤学的組成物の形で人間をはじめと
する哺乳動物に投与することができる。その投与量は処
置すべき患者の年令、体重、症状、薬剤の投与状態、医
師の診断等に応じて広い範囲にわたり変えることができ
るが、一般に、成人に対しては一日当り約200〜3,000mg
の範囲内の用量が標準的であり、通常にこれを1日1回
または数回に分けて経口的、非経口的または局所的に投
与することができる。
しかして、上記の薬剤学的組成物は、医薬、特に抗生
物質の製剤において慣用されている無機もしくは有機の
固体または液体の製剤用担体または希釈剤、例えば、で
んぷん、乳糖、白糖、結晶セルロース、リン酸水素カル
シウム等の賦形剤;アカシア、ヒドロキシプロピルセル
ロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン
等の結合剤;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウ
ム、ステアリン酸カルシウム、タルク、水添植物油等の
滑沢剤;加工でんぷん、カルシウムカルボキシメチルセ
ルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等の崩
壊剤;非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等
の溶解補助剤等とともに、経口的、非経口的または局所
的投与に適した剤形に製剤化することができる。経口投
与に適した剤形には、錠剤、コーテイング剤、カプセル
剤、トローチ剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ドライシロツ
プ剤等の固体製剤、あるいはシロツプ剤等の液体製剤が
挙げられ、非経口投与に適した剤形としては、例えば注
射剤、点滴剤、坐剤等が包含される。また、局所投与に
適した剤形には軟膏、チンキ、クリーム、ゲル等が挙げ
られる。これらの製剤は製剤学の分野で自体周知の方法
で調製することができる。
本発明のカルバペネム化合物は殊に注射剤の形態で非
経口的に投与するのが好適である。
[実施例] 次に実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
なお、各実施例中の記号は以下の意味を有する。
Ph:フエニル基 PNB:パラニトロベンジル基 PNZ:パラニトロベンジルオキシカルボニル基 ブチルジメチルシリル基 Ac:アセチル基 Et:エチル基 実施例1:1,2,3−チアジアゾール−4−イルメタノール
(化合物1)の製造 (a) ピルビン酸エチルエステル5gをエタノール5ml
に溶解し、カルバジン酸エチル4.5gのエタノール12ml溶
解を徐々に滴加する。室温で15分撹拌したのち、溶媒を
減圧下に留去すると白色固体のα−N−カルボエトキシ
ヒドラゾノプロピオン酸エチルを8.6g(98.6%)得た。
(b) 次いで上記(a)で得た化合物8.6gを塩化チオ
ニル22mlに溶解し70℃において3時間加熱還流した。
塩化チオニルを減圧下に留去し、得られた残渣をベン
ゼン150mlに溶解し5%炭酸水素ナトリウム水溶液で、
洗液の液性が中性になるまで食塩水で洗浄したのち硫酸
マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧下に留去すると淡黄色
結晶の1,2,3−チアジアゾール−4−イルカルボン酸エ
チルを6.1g(91.1%)得た。
NMR(CDCl3)δ:1.52(3H,t,J=7.6Hz)、4.54(2H,q,J
=7.6Hz)、9.25(1H,s)。
(c) 無水エーテル100mlに水素化リチウムアルミニ
ウム1.6gを徐々に投入したのち、上記(b)で得た1,2,
3−チアジアゾール−4−イルカルボン酸エチル6.1gの
エーテル70ml溶液を徐々に滴加する。室温で18時間撹拌
したのち反応液に氷水8.0mlを投入し、さらに20%硫酸
9.0mlを滴加する。有機層を分層したのち、水層を酢酸
エチル/テトラヒドロフラン(1/1)200mlで抽出し先の
有機層と合一する。硫酸マグネシウムで乾燥したのち溶
媒を減圧下に留去し得られた残渣をカラムクロマトグラ
フイ(シリカゲル クロロホルム:酢酸エチル=1:1)
で精製し黄色油状物として化合物(1)を1.2g(27.3
%)得た。
NMR(CDCl3)δ:2.48(1H,bs)、5.22(2H,s)、8.51
(1H,s)。
実施例2:4−メルカプトメチル−1,2,3−チアジアゾール
(化合物2)の製造: (a) 上記実施例1で得た1,2,3−チアジアゾール−
4−イルメタノール1.2gをジクロメタン70mlに溶解しト
リエチルアミン2.9mlを滴加する。0℃に溶液を冷却し
たのちメタンスルホニルクロライド1.6mlを徐々に滴加
した。反応液を室温で1時間撹拌したのちジクロルメタ
ン70mlを加え水(35ml×2)、食塩水(35ml×1)で順
次洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下に
留去したのち、得られた残渣をアセトン160mlに溶解し
チオ酢酸カリウム2.4g(21.1mmol)を加え室温で18時間
撹拌した。アセトンを減圧下に留去したのち残渣をジク
ロルメタン150mlに溶解し水(40ml×2)、食塩水(40m
l)で順次洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を
減圧下に留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフ
イ(シリカゲルベンゼン:酢酸エチル=50:1)で精製
し、黄色油状物として4−アセチルチオメチル−1,2,3
−チアジアゾールを1.2g(73.1%)得た。
NMR(CDCl3)δ:2.37(3H,s)、4.58(2H,s)、8.43(1
H,s)。
(b) 上記(a)で得た化合物1.2gを窒素気流下メタ
ノール55mlに溶解し0℃に氷冷する。ナトリウムメトキ
サイドのメタノール溶液(28mg/ml)13.3mlを徐々に滴
加し0℃で15分撹拌した。ジクロルメタン250mlを加え1
0%塩酸90ml、食塩水50mlで順次洗浄し硫酸マグネシウ
ムで乾燥した。溶媒を減圧下に留去し得られた残渣をカ
ラムクロマトグラフイ(シリカゲル クロロホルム:酢
酸エチル=50:1)で精製し黄色油状物として化合物
(2)を666mg(73.1%)得た。
NMR(CDCl3)δ:2.13(1H,t,J=8.9Hz)、4.24(2H,d,J
=8.9Hz)、8.40(1H、s)。
実施例3 スズトリフレート3.712gを窒素ガス気流下、無水テト
ラヒドロフラン10mlに溶解し、0℃に冷却したのち、N
−エチルピペリジン1.3mlおよび化合物(4)1.2gを無
水テトラヒドロフラン7ml溶液を加え、同温度にて2時
間撹拌した。次いで化合物(3)1.42gを無水テトラヒ
ドロフラン2ml溶液を加え、1時間撹拌する。反応終了
後、クロロホルム100mlを加え、10%クエン酸水溶液で
洗浄し、有機層をMgSO4にて乾燥し溶媒を留去する。残
留物をシリカゲルクロマトグラフイ(溶出液:n−ヘキサ
ン−酢酸エチル=2〜1:1)により精製し、黄色固体物
として化合物(5)を1.93g(97%)得た。
NMR(δ,CDCl3):0.07(6H、s)、0.88(9H、s)、1.
21(3H、d)、1.26(3H、d)、3.30(1H、dd)、3.28
(2H、t)、3.94(1H、dd)、4.55(2H、t)、6.24
(1H、bs)。
スズトリフレート57.0gを窒素ガス気流下、無水テト
ラヒドロフラン164mlに溶解し、0℃に冷却したのち、
N−エチルピペリジン19.9mlおよび化合物(6)21.71g
の無水テトラヒドロフラン123ml溶液を加え、同温度に
て1.5時間撹拌した。次いで化合物(3)1.42gの無水テ
トラヒドロフラン123ml溶液を加え、1時間撹拌する。
反応終了後、クロロホルムを加え、10%クエン酸水溶
液、食塩水にて洗浄し、有機層をMgSO4にて乾燥し溶媒
を留去する。残留物をシリカゲルクロマトグラフイ(溶
出液:n−ヘキサン−酢酸エチル=2:1)により精製し、
融点85.5〜86.5℃の黄色固形物として化合物(7)を3
3.57g(98%)得た。
NMR(δ,CDCl3):0.07(6H、s)、0.90(9H、s)、1.
00(3H、t)、1.23(3H、d)、1.26(3H、d)、2.90
(1H、dd)、3.50(1H、dd)、6.10(1H、bs)。
▲[α]25 D▼=+233.9(C=0.77、CHCl3 上記(B)で得た化合物(7)30.66gの無水アセトニ
トリル740ml溶液に、イミダゾール12.13gを加え、窒素
ガス気流、室温下に5.5時間撹拌した。次いでMg(O2CCH
2CO2PNB)253.39gを加え、60℃にて一夜撹拌した。反応
液を200mlまでに減圧濃縮し、酢酸エチル1を加え、
有機層を1N−HCl水溶液、5%NaHCO3水溶液ならびに食
塩水にて順次洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を留去
し、残留物をシリカゲル800gを用いたカラムクロマトグ
ラフイにて精製し、無色油状物として化合物(8)37.4
7gを得た。
NMR(δ,CDCl3):0.06(6H、s)、0.87(9H、s)、1.
16(3H、d)、1.20(3H、d)、3.63(2H、s)、5.27
(1H、s)、5.92(1H、bs)、7.56、8.24(4H芳香環プ
ロトン)。
本品は更に精製することなく、次の(D)に使用し
た。
上記(C)で得た化合物(8)37.47gのメタノール39
2ml溶液に、濃HCl 19.6mlを加え、室温にて1.5時間撹
拌した。次いで反応液を約100mlまで減圧濃縮し、酢酸
エチル800mlを加え、水、食塩水にて洗浄し、MgSO4乾燥
した。溶媒を減圧留去し、無色油状物として化合物
(9)を得た。
NMR(δ,CDCl3):1.25(3H、d)、1.30(3H、d)、2.
90(2H、m)、3.65(2H、s)、3.83(1H、m)、4.15
(1H、m)、5.27(2H、s)、6.03(1H、bs)、7.55、
8.27(4H芳香環プロトン)。
次いで上記化合物(9)をそのまま無水アセトニトリ
ル408mlに溶解し、ドデシルベンゼンスルホニルアジド3
6.31gおよびトリエチルアミン13.8mlを加え、室温にて2
0分間撹拌し、溶媒を留去する。残留物をシリカゲル80g
を用いたカラムクロマトグラフイ(溶出液:クロロホル
ム−アセトン=2:1)にて精製し、無色油状物として化
合物(10)21.57g(上記(B)、(C)および(D)の
全収率として69.4%)を得た。
IR(CHCl3)cm-1:2150、1750、1720、1650、 NMR(δ,CDCl3):1.23(3H、d)、1.30(3H、d)、2.
92(1H、m)、3.50〜4.30(3H、m)、5.38(2H、
s)、6.40(1H、bs)、7.57、8.30(4H、芳香環プロト
ン) ▲[α]21 D▼=−41.6(C=3.1、CH2Cl2 上記(D)で得た化合物(10)21.57gを酢酸エチル13
4mlに溶解し、ロジウムオクタノエート0.065gを加え、8
0℃にて0.5時間撹拌した。次いで溶媒を留去し、乾燥
し、化合物(11)を固形物として得た。
IR(CHCl3)cm-1:2950、2925、1860、1830 NMR(CDCl3):1.22(3H、d、J=8.0Hz)、1.37(3H、
d、J=6.0Hz)、2.40(1H、bs)、2.83(1H、q、J
=8.0Hz)、3.28(1H、d、d)、4.00〜4.50(2H、
m)、4.75(1H、s)、5.28及び5.39(2H、ABq、J=1
2Hz)、7.58、8.24(4H、芳香環プロトン)。
上記(E)で得た化合物(11)186mgの無水アセトニ
トリル2ml溶液に、氷冷下ジフエニルリン酸クロライド
0.11mlおよびジイソプロピルエチルアミン0.90mlを加
え、同温にて0.5時間撹拌する。次いで反応液を濃縮
後、残渣をシリカゲルカラムにより精製し、化合物(1
2)を白色固体として252mgを得た。
NMR(δ、CDCl3):1.24(3H、d)、1.34(3H、d)、
3.30(1H、q)、3.52(1H、m)、4.10〜4.40(2H、
m)、5.20及び5.35(2H、q)、7.29(10、m)、7.58
及び8.18(4H、d)。
実施例4 実施例3で得た化合物(12)1.7gの無水アセトニトリ
ル15ml溶液を−30℃に冷却し、実施例2で得た化合物
(2)364mgの無水アセトニトリル7ml溶液を加える。次
いでジイソプロピルエチルアミン0.5mlを加え、0℃ま
で1時間撹拌した。溶媒を留去し、得られた残留物をシ
リカゲルカラムクラロマトグラフイ(クロロホルム:酢
酸エチル=1:1)で精製し、化合物(13)を1.1g(80.7
%)得た。
NMR(δ、CHCl3)δ:1.27(d,3H,J=7.0Hz)、1.35(d,
3H,J=6.0Hz)、3.25(dd,1H,J=3.0,6.0Hz)、3.58〜
4.65(m,5H)、5.12及び5.48(ABq,2H,J=14.0,27.0H
z)、7.56〜8.25(m,8H)、8.43(s,1H)。
実施例5 実施例4で得た化合物(13)257mgをジクロルメタン
4.0mlに溶解し0℃に氷冷する。トリフルオロメタンス
ルホン酸メチル0.073mlを滴加したのち0℃で18時間撹
拌した。0.5M N−メチルモルホリン−塩酸緩衝液(pH
6.8)5.0ml、n−ブタノール4.4ml、酢酸エチル4.0mlを
順次加え、20%水酸化パラジウム−炭素260mgを添加し
たのち3.0atmで2時間、室温で接触水添を行なった。反
応液を、セライトを用いて過し、セライト層を少量の
メタノールと水で洗浄したのち、液を集めてエーテル
で洗浄した。水層を減圧下濃縮したのちDowex 50W−X4
(Na+)のカラムにて精製し、凍結乾燥を行ない、化合
物(14)22.6mg(11.8%)得た。
IR(KBr)cm-1:1750,1590,1380 NMR(CD3OD)δ:1.16(3H,d,J=7.0Hz)、1.24(3H,d,J
=6.0Hz)、3.12−3.45(3H,m)、3.98−4.52(3H,
m)、4.63(3H,s)。
実施例6 化合物(13)→化合物(14) 実施例4で得た化合物(13)291mgをジクロルメタン4
mlに溶解し0℃に冷却する。トリフルオロメタンスルホ
ン酸メチル0.083mlを滴加したのち、同温にて18時間撹
拌した。テトラヒドロフラン20ml、エーテル20mlおよび
0.01Mリン酸緩衝液(pH=7.0)25mlを順次加え、10%パ
ラジウム炭素330mgを添加したのち3気圧下室温にて1
時間水素添加を行なった。次いで実施例5と同様処理
し、化合物(14)を66mg(30.5%)得た。
本品のIRならびにNMRスペクトルは実施例5で得たも
のも完全に一致した。
実施例7 化合物(14)の製造 (a) 4−t−ブチルジフエニルシリルチオメチル−
1,2,3−チアジアゾール(化合物15)の製造: 実施例2で得た4−メルカプトメチル−1,2,3−チア
ジアゾール−4(化合物2)2.64gのジクロルメタン40m
l溶液に、窒素ガス気流下0℃にてt−ブチルジフエニ
ルクロロシラン6.5mlおよびトリエチルアミン3.5mlの混
合物を滴加する。同温にて30分間撹拌後、溶媒を留去
し、残留物をカラムクロマトグラフイ(シリカゲル ヘ
キサン:酢酸エチル=3:1)で精製し黄色油状物として
化合物(15)を7.4g(定量的)得た。
(b) 2−メチル−4−t−ブチルジフエニルシリル
チオメチル−1,2,3−チアジアゾリウムトリフレート
(化合物16)の製造: 上記(a)で得た化合物(15)7.4gのエーテル15ml溶
液に、窒素ガス気流下0℃にてメチルトリフレート2.8m
lを加え、4時間撹拌する。溶媒を留去し、残留物をn
−ヘキサンで洗浄し、黄色油状物として化合物(16)を
9.18g(86%)得た。
実施例3で得た化合物(12)8.5gおよび上記(b)で
得た化合物(16)9.18gをジメチルアセトアミド26mlお
よびアセトニトリル90mlの混合液に溶解し、窒素ガス気
流下−40℃にて15.6mlのフツ化テトラブチルアンモニウ
ム溶液(1.0モルのテトラヒドロフラン溶液)を滴加
し、同温にて1時間撹拌する。この段階で化合物(17)
が生成する。次いで反応液を0.35M酢酸緩衝液(pH5.5)
220ml、テトラヒドロフラン70mlおよびエーテル150mlの
混液中に加え、更に10%パラジウム−炭素8.5gを加え、
4.0atmで40分間室温で接触水添を行なった。反応液をセ
ライトを用いて過し、水層のpHを6.8とし、減圧下濃
縮したのちDowex50W−X4(Na+)のカラムにて精製し、
凍結乾燥を行ない、化合物(14)2.16g(43%)得た。
本品のIRおよNMRスペクトルは実施例5で得たものと
完全に一致した。
実施例8 実施例2の工程(a)で得た4−アセチルチオメチル
−1,2,3−チアジアゾール4.6gのエーテル26mlおよびジ
クロルメタン2.6ml混液に、窒素ガス気流下0℃にてメ
チルトリフレート3.3mlを滴加する。5℃にて18時間撹
拌し、生成した沈殿物を取し、エーテルにて洗浄し、
化合物(18)を8.3g得た。
上記で得た化合物(18)338mlをエタノール4mlおよび
1mlの混液に溶解し、−20℃に冷却する。この溶液に1
規定水酸化ナトリウム溶液1mlを加え、数分間撹拌した
のち、この溶液中に実施例3で得た化合物(12)298mg
のテトラヒドロフラン8ml溶液を加え、更に0.18Mリン酸
緩衝液8mlを加え、0℃にて1時間撹拌する。次いで反
応液にエーテル20mlおよび水10mlを加え、更に2%パラ
ジウム−アルミナ2.5gを加え1.5気圧下室温にて1時間
水素添加を行なった。反応終了後実施例7と同様処理を
行ない、化合物(14)を59.6mg(33.2%)得た。
本品のIRおよびNMRスペクトルは実施例5で得たもの
と完全に一致した。
実施例9:化合物(14)の製造 4−メルカプトメチル−2−メチル−1,2,3−チアジ
アゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(化合物1
9)676mg、メタノール4mlおよび水1mlの混合液を−20℃
まで冷却する。1規定水酸化ナトリウム水溶液2mlを加
え数分間撹拌する。この混合液に氷冷下、実施例3で得
た化合物(12)594mg、テトラヒドロフラン10mlおよび
0.35Mリン酸緩衝液(pH7.0)の混合液を加え、同温にて
1時間撹拌することにより、化合物(17)を含む反応混
合液を得た。
この化合物(17)は反応混合液から単離することな
く、そのまま次の工程に用いた。
(b) 化合物(17)→化合物(14) 上記(a)で得た化合物(17)を含有する反応混合液
に、0.35Mリン酸緩衝液20mlを加えたのち、リン酸を加
えてpH6.1に調整する。次いで亜鉛末1.2gを加えて18−2
0℃にて30分間撹拌したのち、反応混合液をセライト濾
過する。濾液の有機溶媒を減圧留去し、得られた水溶液
を酢酸エチル100mlで洗浄する。水層を減圧濃縮し、濃
縮液のpHを6.3−6.5に調整したのち、Dowex50X−X4(Na
+)のカラムにて精製し、凍結乾燥を行ない、化合物(1
4)195.4mg(55.0%)を得た。
本品のIRならびにNMRスペクトルは実施例5で得たも
のと完全に一致した。
実施例10:化合物(14)の製造 (a) 化合物(12)+化合物(16) →化合物(17) 実施例3で得た化合物(12)804mgと実施例7の
(b)で得た化合物(16)940mgのアセトニトリル21ml
の溶液に、窒素ガス気流下−40℃にてテトラブチルアン
モニウムフルオライドの1:0Mテトラヒドロフラン溶液1.
62mlとテトラヒドロフラン2mlの混液を滴加し、同温に
て20分間撹拌することにより化合物(17)を含む反応混
合液を得た。この化合物(17)は単離することなくその
まま次の工程に用いた。
(b) 化合物(17)→化合物(14) 上記(a)で得た化合物(17)を含有する反応混合液
に、pH7.0の0.5Mリン酸緩衝液12ml、水21mlおよび亜鉛
末1.6gを加える。次いで反応液を飽和リン酸2水素カリ
ウム水溶液にてpH6.7に調整し、20分間撹拌したのち、
反応混合液をセライト濾過する。濾液をエーテル50mlで
洗浄し、水層を分離する。有機層を水50mlで抽出し、こ
の抽出液とこの水層を合わせ溶液のpHを6.8に調整した
のち濃縮する。得られた濃縮液をDowex 50W−X4(N
a+)のカラムにて精製し、凍結乾燥を行なうことによ
り、化合物(14)251mg(52%)を得た。
本品のIRならびにNMRスペクトルは実施例5で得たも
のと完全に一致した。
実施例11:結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(2−メチ
ル−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
ル−カルバペネム−3−カルボキシレート[結晶化合物
(20)] 前記実施例10で得た無晶形化合物(14)[注:凍結乾
燥品、本品は偏光顕微鏡の観察で無晶形であった。]1g
を水0.5mlに溶解し、該溶液を室温下に2時間撹拌す
る。撹拌とともに溶液は均一化したのち結晶が析出し
た。析出した結晶を濾取し、少量のエタノールで洗浄
後、室温にて20時間真空乾燥し、結晶化合物(20)を淡
黄白色の結晶として251mg(25.1%)得た。
本品の結晶化合物(20)は、偏光顕微鏡の観察で結晶
であることが認められ、また粉末X線回折において以下
の第4表に示す如き特徴的ピークを示した。
なお、X−線源にはCuのλ=1.5418を用い、面間隔d
(単位Å)は次式より求めた。
実施例12:結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(2−メチ
ル−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
ル−カルバペネム−3−カルボキシレート[結晶化合物
(20)] 前記実施例11で得た結晶化合物(20)を結晶化の種晶
として用い、結晶化を行なった。すなわち、実施例10で
得た無晶形化合物(14)250mgを水0.5mlに溶解し、この
溶液に更にエタノール2.5mlを加えた。次いで実施例11
で得た結晶化合物(20)の少量を種晶として加え、室温
にて2時間撹拌すると結晶が析出した。生成した結晶を
濾取し、少量のエタノールで洗浄し、室温にて20時間真
空乾燥することにより、結晶化合物(20)を淡黄白色の
結晶として142mg(56.8%)得た。
本品の結晶化合物(20)は、偏光顕微鏡の観察下で結
晶であることが確認された。
以上の実施例11および実施例12のいずれの実施例で得
られた結晶も同一の機器分析データを示した。それらの
結果をまとめると以下のとおりである。
実施例13:結晶化合物(20)と無晶形化合物(14)の固
体安定性の比較 実施例11および実施例12でそれぞれ得た結晶化合物
(20)ならびに実施例10で得た無晶形化合物(14)を各
々20mg採取し、ガラスびんに入れ、これを40℃の恒温室
にて10日間放置した。各化合物の貯蔵1日目、2日目、
5日目および10日目の活性をHPLCにて測定した。初日の
活性を100%とし、それぞれの活性の低下を、残存率で
示すと以下の表の如くまとめられた。
この結果からも明らかな如く、本発明の結晶化合物
(20)は安定性が極めて良好なことが判明する。
次に本発明の結晶形態のカルバペネム化合物を用いた
製剤例を示す。
製剤例1(注射剤) (1) 懸濁注射剤 結晶化合物(20) 25.0 g メチルセルロース 0.5 g ポリビニルピロリドン 0.05g パラオキシ安息香酸メチル 0.1 g ポリソルベート80 0.1 g 塩酸リドカイン 0.5 g 蒸留水 適量/総容積100ml 上記成分を混合し、総容積100mlの懸濁注射剤とす
る。
(2) 凍結乾燥する場合 結晶化合物(20)20gに蒸留水適量を加えて容積100ml
とする。
1バイアル中に上記水溶液2.5ml(化合物(14)500mg
を含有する)を充てんし、凍結乾燥する。用時、蒸留水
約3〜4mlを添加して注射剤とする。
(3) 粉末充てんする場合 1バイアル中に結晶化合物(20)250mgをそのまま充
てんする。用時、蒸留水約3〜4mlを添加して注射剤と
する。
製剤例2(錠剤) 結晶化合物(20) 250mg 乳糖 250mg ヒドロキシプロピルセルロース 1mg ステアリン酸マグネシウム 10mg 1錠:511mg 上記の成分を混合し、常法により打錠して錠剤とした
後、必要に応じて常法により糖衣もしくはフイルムコー
テイングして糖衣錠もしくはフイルムコーテイング錠と
する。
製剤例3(トローチ剤) (1) 結晶化合物(20) 200mg 白糖 770mg ヒドロキシプロピルセルロース 5mg ステアリン酸マグネシウム 20mg 香料 5mg 1錠:1000mg (2) 結晶化合物(20) 50mg 白糖 240mg ヒドロキシプロピルセルロース 2mg ステアリン酸マグネシウム 6mg 香料 2mg 1錠:300mg (1)および(2)のそれぞれにつき、上記の成分を
混合し、常法により打錠してトローチ剤とする。
製剤例4(カプセル剤) 結晶化合物(20) 250mg ステアリン酸マグネシウム 5mg 1カプセル:255mg 上記の成分を混合し、これを通常の硬ゼラチンカプセ
ルに充てんしてカプセル剤とする。
製剤例5(ドライシロツプ剤) 結晶混合物(20) 220mg ヒドロキシプロピルセルロース 2mg 白糖 793mg 香料 5mg 計:1000mg 上記の成分を混合してドライシロツプ剤とする。
製剤例6(散剤) (1) 結晶化合物(20) 200mg 乳糖 800mg 計:1000mg 上記の成分を混合して散剤とする。
製剤例7(坐剤) 結晶化合物(20) 500mg ウイテツプソールH−12 (ダイナマイト・ノーベル社製) 700mg 1坐剤:2200mg 上記の成分を混合し、これを常法により坐剤とする。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次式(I): で示される結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(メチル置
    換−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
    オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
    ル−カルバペネム−3−カルボキシレート。
  2. 【請求項2】次式(I−1): で示される結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(2−メチ
    ル−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
    オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
    ル−カルバペネム−3−カルボキシレートである請求項
    1記載の化合物。
  3. 【請求項3】粉末X線回折図形において、面間隔(d)
    6.9、5.3、4.6、4.2、3.9、3.3、3.0、2.5および2.4Å
    に特徴的なピークを有する請求項2記載の化合物。
  4. 【請求項4】請求項1記載の式(I)で示される結晶形
    態の(1R,5S,6S)−2−[(メチル置換−1,2,3−チア
    ジアゾリウム−4−イル)メチル]チオ−6−[(R)
    −1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−カルバペネム
    −3−カルボキシレートを有効成分として含有すること
    を特徴とする抗菌剤。
  5. 【請求項5】無晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(メチル
    置換−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]
    チオ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メ
    チル−カルバペネム−3−カルボキシレートを少なくと
    も65%の濃度で水に溶解させ、得られる水溶液から結晶
    を析出させることを特徴とする請求項1記載の式(I)
    で示される結晶形態の(1R,5S,6S)−2−[(メチル置
    換−1,2,3−チアジアゾリウム−4−イル)メチル]チ
    オ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチ
    ル−カルバペネム−3−カルボキシレートの製造方法。
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