JP2653719B2 - 大豆蛋白の製造法 - Google Patents

大豆蛋白の製造法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は酵素分解されているにもかかわらず特異なゲ
ル(豆腐のような脆いゲル)を形成する性質を有する大
豆蛋白の製造法に関する。
(従来技術) 大豆蛋白は水系下に加熱すると水溶液状態では粘度が
上昇したり、ペースト状態ではゲルを形成する等所謂加
熱凝固性を有する。
ところが、大豆蛋白を常圧下で酵素分解すると加水分
解が進むにつれ大豆蛋白の特徴であるゲル形成力は低下
し、ある程度以上の加水分解でゲルを形成できなくな
る。
一方、高圧下で生(未変性)の蛋白質(牛乳蛋白)を
酵素(非基質特異性酵素)分解すれば、超高圧によって
蛋白質が変性するので酵素による分解率が上昇すること
が知られている。
しかし、本発明のように加水分解されているにもかか
わらず特異なゲルを形成する大豆蛋白は知られていな
い。
大豆蛋白のゲルがカマボコのようなプリンプリンした
ゲルであるのに比べ本発明の大豆蛋白のゲルは豆腐のよ
うに脆いゲルであるのも知られていない。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明者等は、従来の大豆蛋白とは性質の異なる大豆
蛋白を目的とした。即ち、従来のようなプリンプリンし
た弾力のあるゲルではなく、豆腐のような脆いゲルを形
成する大豆蛋白を目的とした。
(問題を解決する手段) 本発明者等は前記目的を達成すべく種々検討した、手
段の一つに超高圧技術を用い、超高圧下で種々の酵素を
大豆蛋白に作用させるなかで、変性した大豆蛋白に基質
特異性酵素をある加水分解度まで作用させると、従来常
圧下での同程度の加水分解度ではゲル形成のないはずの
大豆蛋白に目的とする性質を見出し本発明を完成するに
到った。
即ち、本発明は変性大豆蛋白を水系下に1,000〜10,00
0気圧の高圧下で基質特異性プロテアーゼを用いて加水
分解することを特徴とする酵素分解大豆蛋白の製造法で
ある。
本発明に用いる大豆蛋白は生(未変性)は不適であ
り、加熱処理等により変性した大豆蛋白が適当である。
実験的に生の大豆から抽出した未変性大豆蛋白は不適当
であるが、工業的に製造した大豆蛋白は製造工程におい
て加熱殺菌処理等を受け変性しているので適当である。
本発明においては大豆蛋白を水系下即ち水溶液又はペ
ースト状態で1,000〜10,000気圧という超高圧下で酵素
分解する必要がある。
1,000気圧未満では目的とする性質を有した大豆蛋白
は得られない。大豆蛋白のungfldingが充分でない為と
推察される。又、10,000気圧を越えると超高圧装置内の
大豆蛋白溶液が凍結状態になる等好ましくない。
本発明に用いる酵素は基質特異性プロテアーゼが適当
である。即ち加水分解するアミノ結合の位置の決まった
酵素が適当である。例えば、トリプシン、キモトリプシ
ン等を例示することができる。非基質特異性プロテアー
ゼでは超高圧下に加水分解したものと常圧下に加水分解
したもとの物性に大差がなく目的とする大豆蛋白を得る
ことは困難である。
本発明のように変性大豆蛋白を超高圧下で基質特異性
酵素で分解すると、分子量パターンが変化したり、物性
が変化すたりする。例えば、基質特異性酵素(例えば、
トリプシン)で市販分離大豆蛋白のような変性大豆蛋白
を超高圧で酵素分解し、分解物の粘度、ゲル強度を測定
すると、分解率20%付近で粘度、ゲル強度共に最高値を
示し、そのゲル強度は分解前より高くなる。
因みに常圧下での酵素分解では20%も分解が進むと通
常ゲル化できなくなる。
又、超高圧下に基質特異性酵素で分解して得られる大
豆蛋白を加水し加熱して得られるゲルは常圧下分解のゲ
ルとは物性が異なる。即ち、豆腐のように表面が固く脆
い(粘弾性の低い)ゲルを形成する。
基質特異性の低い酵素やないる酵素(パパイン等)で
分解する場合、高圧下で分解した方が常圧下で分解する
より得られる大豆蛋白の粘度、ゲル強度の低下が速いだ
けで、ゲルも高圧下、常圧下で差はない。
。 トリプシンのような基質特異性酵素による高圧下での
酵素分解が大豆蛋白の粘度、ゲル形成能に対し、パパイ
ンのような非基質特異性酵素と異なった影響を与えるの
は圧力によって基質である大豆蛋白を変性させ、分子構
造をunfoldingさせ、常圧では作用できない疎水部にも
作用できるため、より分解パターンに変化を与える為と
考えられる。
以下実施例により本発明の実施態様を説明する。
又、酵素分解された大豆蛋白の全窒素に対する該大豆
蛋白の0.22モルのトリクロール酢酸に可溶性の窒素の比
率が0.1〜0.3が好ましい。0.1未満ではプリンプリンし
たゲルになり、0.3を越えると脆いゲルさえ弱くなる。
(実施例) 実施例1 変性分離大豆蛋白としてフジプロR(不二製油(株)
製)を用いた。
分離大豆蛋白は12%濃度に溶かし、トリプシンを添加
し、レトルト袋に空気が入らないように密封してpH7、5
0℃、4000気圧で30分間反応させた。
反応後25℃に冷却し粘度をB型粘度計で測定した。値
を表−1に示す。
一方、同様に超高圧処理して反応終了後、食塩を終濃
度2.5%になるように加え、均一に撹拌し、遠心して脱
泡した。これを80℃で30分間加熱してゲルを調製した。
これを高圧下分解ゲルとしてゲル強度を測定した。結果
を表−1にあわせ示す。
また常圧下でトリプシンで2時間反応後、同様にして
粘度を測定し、同時に同処理して常圧下分解ゲルとし
て、ゲル強度を測定し、表−2に示した。
分解率に伴う分解物の粘度および加熱ゲルの物性につ
いては、トリプシンの場合、分解率10%までは高圧下分
解は常圧下分解より粘度、ゲル強度共に低い値を示した
が、それ以上分解が進むと高圧下分解の方は粘度、ゲル
強度共に上昇し、20%付近で最高値を示した。それに対
し常圧下分解は10%以上になると粘度、ゲル強度共に低
下した。高圧下分解もさらに分解が進むと粘度もゲル強
度も急速に低下した。
但し、分解率は酵素分解された大豆蛋白の全窒素に対
する該大豆蛋白の0.22モルのトリクロール酢酸に可溶性
の窒素の割合を%で表したものである。
比較列1 非基質特異性酵素パパインを用いて実施例1と同様に
した。
パパインによる分解では高圧下の方が常圧下より分解
率に対する粘度及びゲル強度の低下が速かっただけで、
ゲルも高圧下、常圧下で物性に差はなかった。
(効果) 以上説明したように本発明により、加水分解している
にもかかわらず水系下の加熱で豆腐のような脆いゲルを
形成する大豆蛋白の製造が可能になったものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】変性大豆蛋白を水系下に1,000〜10,000気
    圧の高圧下で基質特異性プロテアーゼを用いて加水分解
    することを特徴とする大豆蛋白の製造法。
  2. 【請求項2】酵素分解された大豆蛋白の全窒素に対する
    該大豆蛋白の0.22モルのトリクロール酢酸に可溶性の窒
    素の比率が0.1〜0.3である請求項1記載の製造法。
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化学と生物Vol.25,No.11P.703−705(1987)
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