JPH06292595A - 低分子量フィブロインの製造方法 - Google Patents

低分子量フィブロインの製造方法

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JPH06292595A
JPH06292595A JP5078343A JP7834393A JPH06292595A JP H06292595 A JPH06292595 A JP H06292595A JP 5078343 A JP5078343 A JP 5078343A JP 7834393 A JP7834393 A JP 7834393A JP H06292595 A JPH06292595 A JP H06292595A
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fibroin
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hydrolysis
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water
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JP5078343A
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Kiyoshi Hirabayashi
潔 平林
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KUSUYAMA MITSUGI
MICRO SILK KK
MIYAGAWA YOSHITO
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KUSUYAMA MITSUGI
MICRO SILK KK
MIYAGAWA YOSHITO
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Abstract

(57)【要約】 【目的】蚕糸より得られる高分子量フィブロインを加水
分解して、より機能性の高い有用なペプチドを持った低
分子量フィブロインを得る。 【構成】今まで使用されたことがない加水分解酵素を使
うことによって、蚕糸より得られる高分子量フィブロイ
ンを分解して、平均分子量200〜4000という生理
活性の高い低分子量フィブロインを得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば食用、医薬用、
医療用品、化粧品に使用できる低分子量フィブロインの
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】蚕糸は、フィブリル化結晶領域のフィブ
ロインの周辺にセリシンが付着した構造であり、精練等
の2次加工でセリシンが除去されて絹繊維として衣料に
使用される。これ以外の用途においてもその優れた性質
が利用されている。膜、粉末、ゲル、水溶液などいろい
ろな形状にでき、食用、医薬用、医療用品、化粧品に使
用する用途が注目されている。
【0003】フィブロインは数十種類のアミノ酸を含ん
だ天然蛋白質からなるため、このようにいろいろな分野
に利用できる。構成アミノ酸のうち45%を占めるグリ
シンおよび12%を占めるセリンには血中コレステロー
ル濃度を抑制する作用があり、第2位のアラニンはアル
コール代謝を促進し、またチロシンには痴呆症の予防効
果があるとされている。またインスリンの分泌を促進す
るとも言われている。このような機能性食品には、高濃
度の塩化カルシウム溶液に蚕糸を溶解し透析することで
得られる再生フィブロイン溶液のシルクドリンク、これ
をゲル化したゼリー、フィルム状にしたペーパー食品な
どがある。このようなフィブロインの食品は、例えば特
開平1−256350号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】同公報に開示されてい
るフィブロインは、蚕糸に含まれるフィブロインを溶解
し精製したものであり分子量が30万以上の蛋白質であ
り、そのままの状態では人体で消化吸収されにくい。こ
のためフィブロインの分子鎖を断ち切ることで、低分子
化することが好ましい。また低分子化することで水に対
する溶解度が高まるので利用範囲が広がる可能性もあ
る。
【0005】そこで発明者は、塩酸による加水分解でフ
ィブロインの分子鎖を断ち切り、低分子化することを試
しみた。しかしながら塩酸による加水分解は、分子鎖を
ランダムに切ってしまうので、加水分解物の分子量の制
御は困難であった。得られた低分子量フィブロインは、
分子量が150以下のアミノ酸レベルにまで分解されて
いたものもかなり含んでいた。この低分子量フィブロイ
ンを粉末にしたものは、黄色に着色しており、異臭や独
特な味がするものであった。この低分子量フィブロイン
粉末を水に再溶解させようとすると、かなりの未溶解残
渣が残った。このような不純物を除くため、活性炭によ
り処理することを試しみた。得られたものの性能は良か
ったが、収率が50%以下と悪いものとなった。
【0006】上記したように従来の方法で製造された低
分子量フィブロインは、分子量が適正なものになりにく
く不純物を多く含み、また不純物を除去するための工程
を付加すると製造工程が煩雑になるだけではなく、収率
が悪いものとなってしまう。本発明はこのような欠点を
排除し、分子量が適度にコントロールされた純粋な低分
子量フィブロインを、収率良く製造するための製造方法
を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、発明者は蛋白質加水分解酵素(プロテアーゼ)がフ
ィブロインの分子鎖をある特定の箇所で切断し得ること
に着目し本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明の低分子量フィブロインの
製造方法は、中性塩を含む水溶液に高分子量フィブロイ
ンを溶解し、タンパク質分解酵素を共存させ、平均分子
量が200〜4000のポリペプチドを生成させるもの
である。
【0009】蛋白質分解酵素はアクチナーゼ、エラスタ
ーゼ、キモトリプシン、サモアーゼ、バンクレアチン、
ペプシン、トリプシン、レニン、カテプシン、およびロ
クターゼのなかから選んで使用することができる。なか
でもアクチナーゼ、エラスターゼは平均分子量が200
〜4000のポリペプチドを生成させるのに好ましい。
特にアクチナーゼを使用して得られた低分子量フィブロ
インは、ペプチドの数が3から5程度、平均分子量が2
00〜500程度と人の食用に適し、生理活性にも優れ
ているものとなっている。
【0010】高分子量フィブロインを溶解させるための
水溶液に含まれる中性塩は、塩化カルシウム、もしくは
臭化リチウムである。またこの中性塩を含む水溶液にエ
タノールを混合させておいてもよい。
【0011】
【作用】高分子量フィブロインをタンパク質分解酵素で
加水分解するため、分子量が適度な値、200〜400
0にコントロールされた純度の良いポリペプチドが収率
良く生成する。
【0012】
【実施例】蚕糸から低分子量フィブロインの粉末を得る
には、以下のとおりの工程を経る。先ず蚕糸原料、例え
ば屑繭を炭酸ナトリウムの0.5%溶液に浸漬し、加
熱、攪拌することでセリシンが除去され、フィブロイン
の繊維が得られる。このフィブロインの繊維を中性塩の
水溶液である塩酸カルシウムに入れ、煮沸すると溶解す
る。この溶解液を透析するとフィブロイン溶液が得られ
る。このフィブロイン溶液に加水分解酵素、例えばエラ
スターゼをフィブロインの1500量に対して1量程度
加える。温度は37℃程度に保つ。加水分解酵素の活性
に適したpHを保つため緩衝液を入れておく。加水分解
酵素がエラスターゼの場合、適正なpHは8.8 であり、
緩衝液として0.05Mトリス[トリス(ヒドロキシメ
チル)アミノメタン]を使用できる。
【0013】酵素加水分解後は速やかに煮沸し酵素を失
活させ、遠心分離により反応液を上澄液と沈殿に分け
る。上澄み液と沈殿をそれぞれ約5日間ほど凍結した
後、凍結乾燥機で乾燥し、粉末試料として低分子量フィ
ブロインを得る。上澄液から得た粉末重量S、沈殿から
得られた粉末重量Pから下記の式で収率を計算できる。 {S/(S+P)}×100=収率(%) 得られた低分子量フィブロインの特性は、電気泳動、赤
外吸収スペクトル、熱重量分析(TGA)、電子顕微鏡
写真撮影、ゲル濾過、アミノ酸分析により調べることが
できる。以下、本発明を適用する方法で低分子量フィブ
ロインを製造した実験例、およびその実験例で製造され
た低分子量フィブロインの特性評価について記載する。
【0014】フィブロイン溶液の作製 蚕糸の原料である繭は、東京農工大付属津久井農場産の
家蚕である朝日東海を用いた。この家蚕繭を沸騰した5
0倍量の0.5重量%炭酸ナトリウム水溶液で30分間
2回精練してセリシンを除去した。得られたフィブロイ
ンは水洗した後乾燥させた。精練したフィブロインを、
20倍量の40〜50%塩化カルシウム水溶液中で煮沸
し溶解した。これを室温で十分冷却し、水中でセルロー
スチューブに入れて3日間透析した後、風乾により濃縮
した。フィブロイン溶液の濃度は乾燥重量法により測定
した。得られたフィブロイン溶液を2重量%濃度に調整
し、加水分解に供した。
【0015】実施例1:エラスターゼによる加水分解 2重量%フィブロイン溶液の有効フィブロイン1500
重量に対し、エラスターゼを1重量の割合で溶解し、緩
衝液0.05Mトリス[トリス(ヒドロキシメチル)ア
ミノメタン]を入れてpHを8.8、温度を37℃に保
ち所定の時間(12〜48時間)反応させた。所定の時
間後、速やかにフィブロイン溶液を煮沸し、酵素を失活
させ、遠心分離により反応液を上澄液と沈殿に分けた。
上澄液と沈殿をそれぞれ約5日間ほど凍結した後、凍結
乾燥機(東京理化器械製 FREEZEDRYER FDUー830) で乾
燥し、低分子量化したフィブロインを得た。上澄液から
得られた粉末を水溶性粉末、沈殿から得られた粉末を沈
殿物とし、特性評価試料とした。
【0016】最適酵素濃度について確認するために、前
記のエラスターゼ量:有効フィブロイン量= 1:1500の
他に、エラスターゼ量:有効フィブロイン量= 1:300
0、エラスターゼ量:有効フィブロイン量= 1:6000の
酵素濃度についても加水分解し、溶液の清澄度を比較し
た。その結果、酵素量の多いものがより清澄度が高かっ
た。つまりエラスターゼ量:有効フィブロイン量= 1:
1500が最適酵素濃度である。
【0017】このことを確認するためにも上記の3種類
の試料溶液につき、電気泳動試験をおこなった。溶液濃
度を5mg/mlになるように調整したフィブロイン溶液10
μlを15%均一の濃度勾配SDSポリアクリルアミド
ゲルに塗付した。泳動用緩衝液を用いて20mAの低電
流で約2時間泳動した。泳動終了後、ゲルはを色液に2
時間、脱色液に12時間浸した。電気泳動によってもエ
ラスターゼ量:有効フィブロイン量=1:1500が最
も分解度が高いことがわかった。
【0018】エラスターゼによる加水分解反応の時間的
推移を調べるため、加水分解時間が12時間、24時
間、48時間における収率を調べた。尚、試料は、酵素
濃度がエラスターゼ量:有効フィブロイン量=1:15
00についてのものである。表1には加水分解時間によ
る得られた低分子量フィブロインの水溶性粉末の収率を
示してある。
【0019】
【表1】
【0020】この表1より加水分解が進むにつれ、沈殿
物の比率が少なくなっていることが分かる。所定時間の
中で最も高い収率で水溶性粉末を得るには48時間が好
ましい。また水溶性粉末は、いずれの時間においても9
0%以上と高い収率を占めた。
【0021】次に加水分解の終点を知るため、pH変動
値測定をおこなった。アルカリ側で加水分解する場合、
アミノ基はこのpHではほとんど解離しない。遊離カル
ボキシル基のみが解離するので、溶液のpHが次第に下
がることを利用し、加水分解の終点を知ることができ
る。測定においてはフィブロン溶液濃度を2%に調整
し、酵素量を次のように調整した。 (1)エラスターゼ量:有効フィブロイン量=1:15
00 (2)エラスターゼ量:有効フィブロイン量=1:30
00 (3)エラスターゼ量:有効フィブロイン量=1:45
00 (4)エラスターゼ量:有効フィブロイン量=1:60
00 4N NaOHを一定時間ごとに添加することによって、
加水分解によって微変動したpHを反応前のpH=8.
8に戻し、その後のpH変動をガラス電極式水素イオン
濃度計を用いて測定した。その結果を図1に示す。図1
よりpH変動値の挙動は酵素量が異なっていても変わら
ず、急激なpHの変動を示した後、2時間〜6時間でほ
ぼ一定の変動を示した。その後グラフは上下している。
この上下運動を繰り返しながら、振幅が小さくなり終点
に向かっていくと考えられる。
【0022】さらに酵素濃度がエラスターゼ量:有効フ
ィブロイン量=1:1500で得られた低分子量フィブ
ロインに、電気泳動をおこない、各時間における加水分
解度を調べた。評価試料は加水分解時間1分〜48時間
のものを使用した。これによると加水分解時間12時間
までは分解が進んでいく様子が観察できるが、12時間
以降の分解度の違いは分からなかった。
【0023】以降、評価試料は加水分解時間48時間、
エラスターゼ量:有効フィブロイン量=1:1500の
酵素量で得られた低分子量フィブロインの水溶性粉末お
よび沈殿物を使用する。
【0024】先ず最初に、赤外吸収スペクトル分析をお
こなった。赤外分光光度計は島津製作所製IR−435
を用い、KBR法により測定した。波長領域は400〜
4000cm-1とし、サンプルは48時間の低分子量フ
ィブロインを用いた。この結果を図2に示した。水溶性
粉末は1648cm-1、1534cm-1、1248cm
-1に吸収が見られた。これはランダムコイルのアミドI
、アミドII、アミドIII の吸収に一致する。また沈殿
物には1620cm-1、1530cm-1、1230cm
-1に吸収が見られた。これはアミドI 、アミドII、アミ
ドIII のβ構造に一致する。
【0025】次に熱重量分析をおこなった。熱分析装置
は島津制作所製DTAー30を用いて試料の熱分解温度
を測定した。測定条件は空気中で、昇温速度10℃/m
in、温度範囲30〜600℃とした。第2次分解温度
は絹の分解の始まる温度(約290℃)であり、この温
度で微結晶は破壊される。水溶性粉末ではその温度が約
220℃であり、この温度は時間が経過してもほとんど
変わらなかった。第3次分解温度は時間が経過していく
につれ低温側にシフトした。
【0026】次に凍結乾燥した際に緩衝液から生じる粉
末を除去していないので、この粉末がどのような状態で
水溶性粉末および沈殿物に存在するか、また水溶性粉末
および沈殿物の表面状態がどのようなものか観察するた
め電子顕微鏡写真を撮影した。上澄液、沈殿から得た粉
末、および0.05M トリス[トリス(ヒドロキシメチ
ル)アミノメタン]緩衝液のみを凍結乾燥して、得られ
た粉末の電子顕微鏡写真を撮影した。水溶性粉末、およ
び沈殿物のどちらにも緩衝液から生じた粉末は見当たら
なかった。また両者を比較すると水溶性粉末の表面は滑
らかだが、沈殿物には凹凸が見られた。
【0027】次に水溶性粉末の分子量分布を詳しく調べ
るために、ゲル濾過をおこなった。ゲルにはセファデッ
クスG−50を用い、蒸留水で膨潤させた後、ガラス管
に充填した。移動相には脱気した蒸留水を用い、流速1
0〜20m・cm-2・h-1で低分子量フィブロインの分
離をおこない、分光光度計で210nmの吸光度を測定
した。図3にその結果を示す。これより時間の経過とと
もに高分子量のものが、低分子量のものへと加水分解し
ていくことがわかる。
【0028】次に水溶性、疎水性に対するアミノ酸組成
の影響を見るためアミノ酸分析をおこなった。水溶性粉
末および沈殿物に200倍量の6N塩酸を加え、減圧風
管した後、110℃で24時間加熱した。加熱終了後、
塩酸をロータリーエバポレーターで除き、試料を100
0倍のクエン酸ナトリウム緩衝液(pH=2.2)で薄
めた後、自動アミノ酸分析装置でアミノ酸組成を調べ
た。この結果、アミノ酸組成には両者の間に差が見られ
なかった。
【0029】実施例2:アクチナーゼによる加水分解 2重量%フィブロイン溶液の有効フィブロイン10重量
に対し、アクチナーゼを1重量の割合で溶解し、緩衝液
0.05Mトリス[トリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタン]を入れてpHを7.0、温度を37℃に保ち、
所定時間(1〜24時間)反応させた。所定時間後、速
やかにフィブロイン溶液を煮沸し、酵素を失活させ、遠
心分離により反応液を上澄液と沈殿に分けた。上澄液と
沈殿をそれぞれ約5日間ほど凍結した後、凍結乾燥機
(東京理化器械製 FREEZE DRYERFDUー830)で乾燥し、低
分子量化したフィブロインを得た。上澄液から得られた
粉末を水溶性粉末、沈殿から得られた粉末を沈殿物と
し、特性評価試料とした。
【0030】最適酵素濃度について確認するために、前
記のアクチナーゼ量:有効フィブロイン量=1:10、
アクチナーゼ量:有効フィブロイン量=1:20、アク
チナーゼ量:有効フィブロイン量=1:100の酵素濃
度についても加水分解し、溶液の清澄度を比較した。そ
の結果、酵素量の多いものがより清澄度が高かった。つ
まりアクチナーゼ量:有効フィブロイン量=1:10が
最適酵素濃度である。
【0031】以降、アクチナーゼによる加水分解で生じ
た低分子量フィブロインの評価には、アクチナーゼ量:
有効フィブロイン量=1:10で得られた試料を用い
た。
【0032】アクチナーゼによる加水分解反応の時間的
推移を調べるため、加水分解時間が1時間、4時間、8
時間、12時間、24時間における収率を調べた。表2
には加水分解時間により得られた低分子量フィブロイン
の水溶性粉末の収率を示してある。
【0033】
【表2】
【0034】表2に示すようにすべての分解時間におい
て水溶性粉末の収率が90%以上という高い値を示して
いる。
【0035】この分解時間12時間の水溶性粉末でゲル
濾過をおこなった。ここでのゲルはセファデックスG−
15を使用した。他の条件はエラスターゼによる加水分
解と同じである。ゲル濾過の結果を図4に示した。図4
より1時間では高分子量と低分子量のピークがブロード
気味に出ている。時間が経過していくにつれ高分子量、
低分子量のピークとも鋭くなり低分子量側にシフトし
た。このフィブロインの分子量は、高分子量側のものは
約550、低分子量側のものは約220であった。この
フィブロインは、ペプチド結合を3〜5含んだ低重合体
である。フィブロインはペプチド結合が多過ぎて、分子
量が大きくなり過ぎると消化吸収が困難になる。またペ
プチド結合が少なすぎて、塩酸加水分解で得られるよう
な分子量150以下のものだと、機能的に劣ったフィブ
ロインとなってしまう。したがってここで得られた分子
量220〜550のフィブロインは機能的に最も優れた
低分子量フィブロインである。
【0036】アクチナーゼによる加水分解で得られた低
分子量フィブロインのアミノ酸分析を行った。尚、分析
の条件はエラスターゼによる加水分解の場合と同様であ
る。
【0037】表3にはアクチナーゼによる加水分解を1
時間行なった後に得られた水溶性粉末の分析結果を示し
てある。
【0038】
【表3】
【0039】表4にはアクチナーゼによる加水分解を1
時間行なった後に得られた沈殿物の分析結果を示してあ
る。
【0040】
【表4】
【0041】表5にはアクチナーゼによる加水分解を1
2時間行なった後に得られた水溶性粉末の分析結果を示
してある。
【0042】
【表5】
【0043】表6にはアクチナーゼによる加水分解を1
2時間行なった後に得られた沈殿物の分析結果を示して
ある。
【0044】
【表6】
【0045】表3、表4に見られるように、加水分解時
間1時間の水溶性粉末、沈殿物のアミノ酸組成にはそれ
ほど大きな差は見られなかった。だが表5、表6に見ら
れるように、加水分解時間12時間の水溶性粉末、沈殿
物の組成を比較すると沈殿物のほうに疎水性アミノ酸で
あるチロシンが約50mol%も含まれており、親水性
アミノ酸であるセリンの割合は低下している。つまり加
水分解が進んでいるにもかかわらず、沈殿物の重量が増
加する。これは加水分解初期段階では絹の結晶領域を構
成しているアミノ酸であるグリシン、アラニン、セリン
が沈殿物に多く存在し、非結晶領域を構成しているアミ
ノ酸であるチロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニ
ルアラニンが水溶性の部分に多く含まれている。加水分
解が終点に近ずくと、それまで水に溶けていた高分子量
のペプチドへの加水分解も始まり、チロシンを含んだ部
分は沈殿するが、逆にグリシン、アラニン、セリンを含
んだペプチドは加水分解によって水溶性になっていくも
のと推察される。
【0046】次に酵素の自己分解による影響を検討する
ために、アクチナーゼ自身のアミノ酸分析をおこなっ
た。これによるとアクチナーゼにはアスパラギン酸が最
も多く含まれていた。しかし低分子量フィブロインにお
けるアスパラギン酸の含有比率(mol%)は大変低
い。これより酵素量の影響は無視できるものと考えた。
【0047】次に酵素濃度に対する影響を見るため、酵
素の添加量を変えて加水分解をおこない、それぞれのフ
ィブロイン溶液の清澄度を比較した。酵素量は1重量
%、5重量%、10重量%の3種類でおこなった。その
結果、酵素濃度が10重量%の溶液の清澄度が最も高く
なった。
【0048】更に、上記と同じ3種類のフィブロイン溶
液から低分子量フィブロインを得て、水溶性粉末のゲル
濾過をおこなった。その結果を図5に示す。酵素量1重
量%では高分子量と低分子量のピークがブロード気味に
なった。5重量%と10重量%とを比較すると10重量
%のほうがより低分子量側にシフトし、ピークも鋭く変
化している。これらのことから最適酵素濃度は10重量
%とした。
【0049】実施例3:水溶性の評価 最後に低分子量フィブロインの水溶性を評価した。2%
フィブロイン溶液をそのまま凍結乾燥して得た試料と、
エラスターゼ、アクチナーゼの加水分解から得られた低
分子量フィブロインを水2mlに加えておこなった。水
に対する濃度は0.5%、1%、2%、5%、10%で
実施した。その結果を表7に示す。
【0050】
【表7】
【0051】エラスターゼによる加水分解で得られた低
分子量フィブロインは2%までは溶解できるが、それ以
上の濃度になると溶解しにくくなる。アクチナーゼ加水
分解による低分子量フィブロインは5%までは溶解可能
であった。この差は分子量の大きさの違いによるものと
思われる。
【0052】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、蚕糸より
得られる高分子量フィブロインの加水分解においてエラ
スターゼ、アクチナーゼを加水分解酵素に使用すること
で、従来知られていた塩酸加水分解で得られていたフィ
ブロインよりも、高機能であり、分子量200〜400
0を示す低分子量フィブロインを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するエラスターゼによる加水分解
のpH変動値を示す図である。
【図2】本発明を適用するエラスターゼによる加水分解
で得られた低分子量フィブロインの赤外吸収スペクトル
を示す図である。
【図3】本発明を適用するエラスターゼによる加水分解
で得られた水溶性粉末のゲル濾過を示す図である。
【図4】本発明を適用するアクチナーゼによる加水分解
で得られた水溶性粉末のゲル濾過を示す図である。
【図5】本発明を適用するアクチナーゼの量の変化に対
する水溶性粉末のゲル濾過を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 37/12 ADN 8314−4C (72)発明者 平林 潔 東京都小平市小川東町1丁目16番21号

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中性塩を含む水溶液に高分子量フィブロ
    インを溶解し、蛋白質分解酵素を共存させ、平均分子量
    が200〜4000のポリペプチドを生成させることを
    特徴とする低分子量フィブロインの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記蛋白質分解酵素がアクチナーゼ、エ
    ラスターゼ、キモトリプシン、サモアーゼ、バンクレア
    チン、ペプシン、トリプシン、レニン、カテプシン、お
    よびロクターゼから選ばれる少なくとも1種類の酵素で
    あることを特徴とする請求項1に記載の低分子量フィブ
    ロインの製造方法。
JP5078343A 1993-04-05 1993-04-05 低分子量フィブロインの製造方法 Pending JPH06292595A (ja)

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