JP2645902B2 - レトルト食品の製造方法 - Google Patents

レトルト食品の製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、脱酸素処理を行った後に、含気状態でレト
ルト殺菌することにより、風味を保持しつつ食品を保存
するレトルト食品の製造方法に関する。さらに詳細に
は、食品保存時の脱酸素による風味劣化防止のみなら
ず、前もって脱酸素処理を行うことにより、含気状態で
のレトルト殺菌時における食品成分の急激な酸化を防止
することにより、レトルト殺菌時における風味劣化を防
止する、レトルト食品の製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
食品の長期保存技術として、気密性の包装材料に食品
を充填し密封したのち、含気状態で殺菌するレトルト食
品等がある。このような気密性包装材料に密封された食
品の含気状態でのレトルト殺菌は、腐敗の原因となる殺
菌を殺すことを目的して、例えば、90〜130℃で1〜60
分程度行われる。
しかし、気密性包装材料に密封された食品中の耐熱性
細菌胞子を、完全に滅菌することは困難であり、容器中
に残る酸素により、該食品の保存中にこの胞子が発芽し
て食品を腐敗させ、さらに、この残る酸素が、食品成
分、特に油脂を酸化させ、食品の変色、味の変質など食
品の劣化を生じさせる等の問題があった。
このようにレトルト食品の保存中、容器内に残る酸素
よる食品の劣化を防止する技術は、特開昭63−219359号
に開示されている。この技術は、脱酸素剤とともに食品
を気密性の容器に収納して密封後、含気状態でレトルト
殺菌することにより、容器中の酸素をなくし、行き残っ
た殺菌胞子の発芽及び繁殖を防止するとともに、保存中
の食品に含まれる油脂の酸化を防止しようとするもので
ある。
しかし、前記の脱酸素剤とともに食品を気密性の容器
に収納して密封を行うレトルト殺菌では、殺菌時の高温
及び高圧下で、容器中に存在する酸素により、食品の成
分、特に脂質が急激に酸化されてしまい、食品の変色、
味覚の変質とともに、食品の風味が著しく損なわれてし
まうという問題があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
従って、本発明は、従来の脱酸素剤を使用したレトル
ト殺菌法の欠点である、食品の風味劣化を防止し、食品
の風味を保存するとともに、従来の脱酸素剤を使用した
レトルト食品と同様、保存中の酸素による腐敗及び劣化
を防止するレトルト食品の製造方法を提供することを目
的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、殺菌時にpHが5.0〜5.7になるように調製し
た食品を気密性包装材料に密封し、脱酸素処理を施し、
含気状態でレトルト殺菌すると、レトルト殺菌時の高温
高圧下での酸素による、食品成分、特に脂質の激しい酸
化反応が防止され、食品の風味の劣化を防止できるとい
う知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、レトルト殺菌時に食品のpHが5.
0〜5.7になるよう調整して、その食品を容器に充填し、
脱酸素剤を入れて密封した後、所定時間保温して脱酸素
処理し、気相中の酸素量を6.5容量%以下とした後、レ
トルト殺菌することを特徴とする、レトルト食品の製造
方法を提供するものである。
本発明において対象となる食品は、半調理又は調理後
に、含気状態で殺菌を必要とするものであり、例えば、
米飯、麺類(うどん、ラーメン等)等の澱粉含有食品が
ある。また、油脂を含有する食品に対して特に効果を発
揮する。食品の油脂含有量が0.2〜3.0重量%、好ましく
は1.0〜2.6重量%であれば、一層効果が高まる。
殺菌時における食品のpHは5.0〜5.7、好ましくは5.2
〜5.4である。pHが5.7を上回ると食品が変色する危険が
あり、5.0を下回ると食味に悪影響(酸味が出る)から
である。このpH調整は、澱粉含有食品のような中性の食
品では、有機酸、例えば、クエン酸、リンゴ酸及びリン
酸ナトリウム等を用いて行う。特に、米飯の場合には、
浸漬時又は炊飯時に添加する。次に、対象となる食品を
容器中に20〜60容量%となるように充填し、密封時に含
気量が40〜80容量%となるようにする。この容器中の含
気量は、水上置換方法により測定できる。
次に、含気状態でのレトルト殺菌時の容器気相中の酸
素量は、少なくとも6.5容量%以下でなければあまり効
果がなく、ゼロに近いことが望ましい。この酸素量の測
定は、ガスクロマト方法により行うことができる。
本発明における脱酸素処理は、食品を充填した容器に
脱酸素剤を封入して密封した後、酸素量が低下するまで
一定時間保存することにより行う。
ここで使用する脱酸素剤は、本発明の性質上、水分依
存型脱酸素剤(脱酸素剤自身は水分を含まず、空気に触
れるだけでは酸素を吸収せず、食品から蒸散する水分に
よって酸素を吸収する脱酸素剤)であって、速効性のも
のが望ましく、かつ含気状態でのレトルト殺菌時の高温
に耐え得るものでなければならない。本発明において封
入される脱酸素剤は、上記の条件を満たすものであれば
特に限定されないが、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素
塩、亜二チオン酸塩等を含有する脱酸素剤、鉄粉等の金
属粉を含有する脱酸素剤、アスコルビン酸及び/又はそ
の塩、イソアスコルビン酸及び/又はその塩を含有する
脱酸素剤、これらを組み合わせた脱酸素剤がある。
なお、脱酸素剤は、容器の密封前に封入するが、外
観、衛生上の見地等から蓋材に取りつける等して、食品
に直接接触しないようにする。
脱酸素剤の作用により、酸素量を低下させるための保
存は、保温庫内で37〜80℃で0.5〜4時間、好ましくは4
0〜50℃で1〜1.5時間である。温度条件は、一般的な芽
胞細菌の増殖最適温度が35℃であるので37℃が下限とな
り、食品への熱の影響を考慮して80℃が上限となる。ま
た、レトルト殺菌の初品温として好ましい、40〜50℃が
保存の適温となる。また、上限温80℃で酸素量が6.5容
量%となるのが0.5時間後で、下限温度37℃で菌増殖の
影響が出てくるのが4時間後であることを考慮して、保
存時間は0.5〜4時間とした。さらに、熱エネルギー効
率等を考えて最適条件を40〜50℃で1〜1.5時間とし
た。
本発明におけるレトルト殺菌は、通常の方法に従って
行われる。例えば、レトルト釜を使用して、90〜130℃
で1〜60分程度行う。
また、本発明で使用される包装容器は、気密性があっ
て、酸素が透過しにくく、レトルト殺菌に耐える耐熱性
のあるものでなければならず、この条件を満たすもので
あれば特に限定されない。具体的な容器の材質には、ア
ルミ、PVDC(塩化ビニリデン)、エバール、PVA(ポリ
ビニルアルコール)、PAN(ポリアクリルニトリル)、P
ET(ポリエチレンフタレート)、PP(ポリプロピレ
ン)、NY(ナイロン)等及びこれらの積層材料がある。
〔発明の効果〕 本発明により、含気状態でのレトルト殺菌時における
食品成分の急激な酸化が防止され、食品の劣化、特に風
味の損失が妨げられるとともに、同時に、容器内の無酸
素状態を維持することにより、食品保存知の酸素による
食品の劣化をも、効果的に防止できる。
次に、実施例により本発明を詳細に説明する。
[実施例] 参考例 水998gとクエン酸2gからなる水溶液を洗浄後の白米10
00gに加え1時間浸漬後、炊飯した。次に、この米飯200
gをタテ、ヨコ、高さがそれぞれ140mm、140mm、38mmでP
Pを素材する容器に平らになるように入れた。このとき
の、米飯のpHは5.3であった。
次に、三菱瓦斯化学製のエージレスFM−100(4.5cm×
5.0cm、酸素吸収能100cc)1個を入れ の積層材を素材とするフタで密封した後、それぞれ室温
(25℃)、37℃、60℃及び80℃で保存したところ、容器
内の酸素量は第1図のようになった。
第1図から明らかなように、37℃で酸素量が6.5容量
%以下になるのは1時間後であるが、1.5時間以降は1.3
容量%前後で殆ど変化のないことがわかる。
実施例1. 次に、参考例と同様に調製した容器入り米飯を、約40
℃の保温庫内で、それぞれ0時間、1.0時間、1.5時間、
2.0時間報知した後、含気状態でレトルト殺菌し(121℃
で25分間)、37℃で2ヵ月(室温換算で6ヵ月)保存し
たときの風味の官能評価は5段階評価 で表−1のようになった。
表−1から明らかなように脱酸素剤封入から含気状態
でのレトルト殺菌までの時間が1時間以上のときに保存
中の風味の劣化が防止できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1.における、食品を収納した容器内部
の酸素量を示すグラフである。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レトルト殺菌時に食品のpHが5.0〜5.7にな
    るよう調整して、その食品を20〜60容量%容器に充填
    し、脱酸素剤を入れて密封した後、37〜80℃で0.5〜4
    時間保温し、気相中の酸素量を6.5容量%以下とした
    後、レトルト殺菌することを特徴とする、レトルト食品
    の製造方法。
  2. 【請求項2】食品が澱粉含有食品である、請求項(1)
    記載のレトルト食品の製造方法。
  3. 【請求項3】澱粉含有食品が米飯又は麺類である、請求
    項(2)記載のレトルト食品の製造方法。
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