JP2614162B2 - 液封入制御型エンジンマウント - Google Patents

液封入制御型エンジンマウント

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JP2614162B2 JP31995692A JP31995692A JP2614162B2 JP 2614162 B2 JP2614162 B2 JP 2614162B2 JP 31995692 A JP31995692 A JP 31995692A JP 31995692 A JP31995692 A JP 31995692A JP 2614162 B2 JP2614162 B2 JP 2614162B2
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善治 中島
陽一 島原
稔 古市
俊之 柴山
公夫 伊藤
敏行 賀美
岳史 奥
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Toyo Tire Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主として自動車のパワ
ーユニットと支持フレームまたはシャーシ等の車体側と
の間で使用される液体封入式防振装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】自動車の
エンジン等のパワーユニットを、その振動を車体へ伝達
させないように支承するマウント等の液体封入式の防振
装置は、液体が充満された第1液室と第2液室とをオリ
フィスにより連通させ、このオリフィス内液体の共振に
より振動減衰効果を得るものである。この効果は共振周
波数付近で顕著であり、エンジンシェイクによる振動減
衰やアイドル振動低減に用いられる。しかしながら、エ
ンジンシェイクによる振動とアイドル振動の周波数が離
れていて両方とも防振機能を持たせたり、更に、こもり
音や透過音も抑制しようとすると、従来の液体封入式の
防振装置そのままでは、対応が不可能であり、振動入力
による液室内の圧力を相殺するように、液圧制御するこ
とが問題解決の方策となる。
【0003】液圧を制御する手段として、磁石とコイル
を用いるものが特願昭60−110052に開示されて
いる。この方式で15〜40Hz付近のアイドリング時
の動的ばね定数を下げようとすると、大きな消費電力が
必要である。また、圧力を発生させるためのコイルに接
続したダイヤフラムの剛性が低いので、ダイヤフラムと
コイルの系の共振周波数が低く、発明者が追試した結果
では、高々200Hzが上限であり、200Hz以上の
周波数では防振性能が得られなかった。また、この方式
では磁石を用いるので、製品重量が重くなるという欠点
もある。
【0004】特開昭60−192141には液室の壁の
一部をセラミック圧電板で構成し、これを湾曲振動させ
る方式が開示されている。しかしながら、現在生産され
ているセラミック圧電板では、湾曲によって発生できる
力は、高々数10g程度であり、一方マウントで実際に
必要な力は、後述の如く、数10kg必要となるので、
この方式は到底実用に供し得ない。
【0005】特開平2−42228に開示されたものの
うち、第2図は積層セラミックのアクチュエータでオリ
フィスを内蔵した仕切板を加振した構造となっている。
現在市販されている、実用的な長さを有するセラミック
アクチュエータは、その伸びが通常数10μ程度しかな
いのに対し、有効に液圧制御するには数100μ必要な
ので、この構造のままでは防振機能はない。第2図と第
5図を組み合わせたものは、一見したところでは、実用
性がありそうに見える。しかしながら、第5図に示され
ているように、ピストン、ピストンリングを使う方式で
は、ピストン、ピストンリング、シリンダ共に高精度の
加工が必要で、しかも実際上は長期間の間に、ピストン
とピストンリング間、ピストンリングとシリンダ間に液
漏れが発生し、その補償手段を講じないと実用に耐えら
れない。
【0006】以上に述べた如く、従来開示されている技
術は、広い周波数域にわたって液室の圧力を制御すると
いう目的を掲げながら、その手段として提示されたもの
は、圧力を発生する力や変位が不十分であったり、ある
いは、液漏れで長期信頼性のないもの、液圧発生機構の
固有振動数が低くしかも大電力を消費するものであり、
目的を達していない。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の液体封入式防振装置は、振動源側と支持側との2つ
の部材がゴム等の弾性体よりなる厚肉の防振基体を介し
て結合され、前記防振基体及び可動部が室壁の一部をな
す第1液室と、ゴムダイヤフラムに接する第2液室と、
第1液室と第2液室を連通するオリフィスとからなり、
可動部と周辺固定部とは金属弾性体またはゴム弾性体で
接続して液封止し、可動部は変位拡大機構を介してセラ
ミックアクチュエータにより変位が与えられるものであ
って、セラミックアクチュエータには常に圧縮を与えて
おくために、大小ピストンのいずれかまたは可動部にス
プリングあるいはゴム等により荷重を加えており、変位
拡大機構は、2つの径の異なったピストンの間に液体を
充満し、両ピストンの周囲はゴム弾性体を接着又は圧着
することにより液体を封止し、両ピストンの有効面積比
を後述する(3)式で与えられる値n0 とすることを特
徴とする液封エンジンマウントである。
【0008】
【作 用】本発明の液体封入式防振装置は図1のように
モデル化することができる。すなわち、オリフィス中の
液柱質量Mと可動部質量mc の2自由度をもった振動系
であるので、2つの共振周波数が存在する。
【0009】低い方の共振周波数を、例えば10Hz近
くなるように、防振基体のばね定数やオリフィス諸元を
設計すると、シェイクのような大振幅が加わり、減衰性
能が必要な時、必要十分な減衰係数を得ることができる
ことは周知の通りである。
【0010】高い方の共振周波数は、例えば、300H
z以上の周波数に、少なくとも、こもり音に影響しない
高い周波数に設定することができる。具体的な設定方法
については後述する。
【0011】上記のように共振周波数を設定すると、両
共振点間の周波数領域では防振機能として入力振動によ
る液圧振動が相殺するように可動板を制御する必要があ
るが、力と変位が最も必要なのは、15〜40Hzのア
イドリング領域である。
【0012】アイドリング領域では、液柱質量Mの共振
点を超え、可動部質量mc の共振点からも離れているの
で、近似的に次の力の釣合い関係が成立する。
【0013】
【数2】 但し、Ka =小ピストンのゴム及び与圧縮用スプリング
のばね定数。
【0014】Kb =大ピストンのゴムのばね定数。
【0015】Kp =セラミックアクチュエータのばね定
数。
【0016】K0 =第1液室の体積弾性率 K1 =第2液室の体積弾性率 a =可動部の有効面積 n =大ピストンの有効面積/小ピストンの有効面積 Z =可動部の変位振幅 u =入力変位振幅 A0 =防振基体の有効ピストン面積 δ =セラミックアクチュエータの変位振幅 ω =角速度 t =時刻 θ1 ,θ2 =位相角 (1)式において、位相角θ1 ,θ2 の影響を小さいも
のとすると、Zは
【数3】 Zはnのみの関数とみて、また、他の諸元はnに関係し
ないとして、Zが最大となるときのnをn0 とすると、
【数4】 但し、
【数5】 この時、Zは、
【数6】 可動板を動かす力Fは
【数7】 高い方の共振周波数fZ は次式で与えられ、
【数8】 但し、mc =可動部の振動質量 (7)式の右辺のパラメータを適切に選ぶことによっ
て、セラミックアクチュエータと可動板の系の共振周波
数fz をこもり音に影響しないように、例えば、300
Hz以上に容易に設定することができる。
【0017】設計例として、幾つかの場合の計算値を表
1に示す。表1より可動板の変位と力は前記の「従来の
技術と発明が解決しようとする課題」の項で述べた程度
の大きさが必要であることが分かる。
【0018】
【表1】 最適の大ピストンの有効面積/小ピストンの有効面積の
比nは(3)式で与えられ、この式の値より小さな比と
するときには、十分な変位を可動部に与えられなくな
り、この式の値より大きな比とするときには、十分な液
圧力を可動部に与えられなくなる。
【0019】(3)式には5つのゴムのばね特性値が含
まれているが、ゴムのばね特性値はばらつきが多いこと
は周知の事実であり、±10〜15%の許容公差をつけ
て取引されるのが慣行となっている。そこで、中間の1
2.5%の誤差を各ばね特性が持っているものとして、
累積二乗和の平方根を求めると±28%がnの誤差範囲
となる。従って、実際の設計にあたっては、(3)式の
計算値の±28%程度の誤差範囲は本発明の範囲に含ま
れる。
【0020】(3)式は可動板の変位を最大にするよう
にnを求めたが、この時振動源側のばね定数が最小とな
ることは容易に証明できる。何故ならば、振動源側の荷
重Wは
【数9】 であるから、振動源側のばね定数W/uを最小にするn
【数10】 なる関係から、Zを最大にするnであることは明らかで
ある。
【0021】次に(2)を(9)に代入すると、
【数11】 (10)式よりW/uを0にする時は、
【数12】 を満たすようにセラミックアクチュエータを選定すれば
よい。
【0022】以上は、慣性項や粘性項の影響を無視して
ばね力の関係のみで論じてきた。実際には、慣性項や粘
性項、セラミックアクチュエータのヒステリシスの影響
があるので、セラミックアクチュエータには電圧と位相
の両方を調整して加電することになり、図2のような制
御が有効である。
【0023】
【実施例】図3は本発明の一実施例を示す。10はエン
ジンマウントの全体である。12はカップ状のサポー
ト、14は筒部であり、両者はリング状の金具16によ
りかしめられている。筒部14の上部にはゴムなどから
なる円錐状をなした厚肉の防振基体18が取付けられて
おり、その中央部には振動源金具20が装着されてい
る。22はゴムダイヤフラムであって、その周縁部はか
しめ金具16によってサポート12などと共に固定さ
れ、その中央部は次に述べる可動板24の中央筒部に固
定されている。
【0024】防振基体18、筒部14、ゴムダイヤフラ
ム22により画される空間部は、仕切板26によって、
第一液室28と第二液室30に区分されている。仕切板
26の周縁には周回オリフィス32が設けられ、これに
より前記の第一および第二液室を連通させている。仕切
板26の中央の円形孔にはリング状ゴム34を介して可
動板24が取付けられている。
【0025】サポート12の内部には、その底面に当接
して、ケーシング36が配されている。さらに、サポー
ト12の下端部にはケース38が配されて、その内部に
セラミックアクチュエータ40が配設されている。アク
チュエータ40は柱状に積層されており、その上端がケ
ーシング36の下部に挿入された大径ピストン42に当
接している。大径ピストン42は拡幅用の液室44を介
して、ケーシング36の上部に配設された小径ピストン
46と連結されている。小径ピストン46の上部は可動
板24の中央筒部に嵌合している。セラミックアクチュ
エータ40の振動が拡幅されて小径ピストン46に伝達
され、可動板24を駆動する。なお、仕切板26と可動
板24との間にはリング状の板ばね48が掛け渡されて
おり、これにより、セラミックアクチュエータ40に予
圧縮が与えられている。
【0026】図4はこの発明の第二の実施例を示す。第
一の実施例と同じ部分には同じ番号を付した。以下の実
施例でも同様である。この実施例では、第二液室30を
防振基体18の上方に配しており、ダイヤフラム21を
その外側から囲むように取付けている。この場合には、
液封入作業が容易である。
【0027】セラミックアクチュエータ40の振動は、
第一の実施例の場合と同様に、大径ピストン42に、液
室44を経て小径ピストン46に伝達される。43はケ
ーシング36と大径ピストン42との間に介在するゴム
リング、45はケーシング36と小径ピストン46との
間に介在する同じくゴムリングである。小径ピストン4
6の振動により可動板24がその周縁に設けられたダイ
ヤフラム25を介して振動する。23はセラミックアク
チュエータ40に与圧縮を加えるばね、27はその支持
板である。
【0028】図5は本発明の第三の実施例を示す。この
場合には、セラミックアクチュエータ40はサポート1
2の軸方向に対して直角に配設されている。すなわち、
セラミックアクチュエータは必要な拡幅を得るにはある
程度の長さが必要であるが、前記2つの実施例のように
配設すると、マウント全高が高くなるので、車輌によっ
ては取付けにくい場合がある。本実施例はそのような場
合に有効である。
【0029】この場合、横置きされたセラミックアクチ
ュエータ40の図において左端部が大径ピストン42に
当接し、この大径ピストン42は、液室44を介して、
マウントの軸方向に配設された小径ピストン46と連動
する。小径ピストン46の振動は可動板24に伝わり、
可動板24はゴム34を介して仕切板26に対して振動
する。この実施例においても第二液室30は防振基体1
8の上方に位置している。
【0030】図6はこの発明の第四の実施例を示す。こ
の場合には、マウント全高をさらに低くするために、セ
ラミックアクチュエータ40と大径ピストン42とをマ
ウント本体10から離れた位置に設置し、連結管11に
より小径ピストン46と結んでいる。その他の構成は図
4の場合とほぼ同様である。
【0031】
【発明の効果】図7に、図4の構造で表1のケース1の
設計値を採用したときの試験結果を示す。10〜70H
zの間は、入力振幅u=0.2mmとした場合で、制御
をしない時に比べて、セラミックアクチュエータに適当
な位相角をもった電圧をかけて制御した時は、とりわけ
約20Hz付近において著しく縦軸の絶対ばね定数K
が低下していて、アイドル振動低減に効果的であること
を示している。70Hz以上の周波数域では、5G一定
の条件で加振した場合の試験結果で、制御をしない時に
比べて、制御した時は殆どKを0にすることができ、
また電圧を加減することにより、K=0となる周波数
を変えることができることを示している。70〜300
Hz域はこもり音の領域であり、この領域でK=0に
できることは、こもり音の低減に顕著な効果があること
を意味する。
【0032】図8に減衰係数の試験結果を示す。この減
衰効果は第1液室と第2液室を連通したオリフィスにお
ける液柱共振によるもので、セラミックアクチュエータ
を制御することなしに得られ、エンジンシェイクに有効
である。
【0033】本発明は、ゴムブッシュタイプのピストン
を2個組合せた液圧変位拡大機構とセラミックアクチュ
エータを液封入マウントに組み入れたもので、高精度な
加工を必要とせず、液漏れを生じることもなく、かつ、
液圧を与える可動部系の固有振動数を高く設定できるの
で、シェイク、アイドリング、こもり音、透過音の領域
までまたがって防振機能を発揮するマウントを提供する
ものである。しかしながら、セラミックアクチュエータ
には、変位と発生力の間に固有の性質があり、また、ア
クチュエータが発生する力の一部はピストンまわりのゴ
ムの変形に使われるので、作動メカニズムについて適切
な配慮をしないと効率の良いマウントが設計出来ない。
本発明者は本発明の作動メカニズムを子細に研究した結
果、効率を高める方策を見出した。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のエンジンマウントのモデルを示す。
【図2】この発明のエンジンマウントの制御方法を示す
概略図。
【図3】この発明の一実施例を示す縦断面図。
【図4】この発明の他の実施例を示す縦断面図。
【図5】この発明のさらに他の実施例を示す縦断面図。
【図6】この発明のさらに他の実施例を示す縦断面図。
【図7】この発明の効果を示す概略図。
【図8】この発明の効果を示す概略図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古市 稔 大阪府茨木市西中条町5番7号 東洋ゴ ム工業株式会社技術開発研究所内 (72)発明者 柴山 俊之 大阪府茨木市西中条町5番7号 東洋ゴ ム工業株式会社技術開発研究所内 (72)発明者 伊藤 公夫 大阪府茨木市西中条町5番7号 東洋ゴ ム工業株式会社技術開発研究所内 (72)発明者 賀美 敏行 大阪府茨木市西中条町5番7号 東洋ゴ ム工業株式会社技術開発研究所内 (72)発明者 奥 岳史 大阪府茨木市西中条町5番7号 東洋ゴ ム工業株式会社技術開発研究所内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液封入制御型エンジンマウントであっ
    て、 振動源側と支持側の両方に接続した厚肉のゴム弾性体と
    一部を可動とした壁面とで囲われた第1液室と、 ゴムダイヤフラムに接する第2液室と、 第1液室と第2液室を連通するオリフィスとを介し、 可動部と周辺固定部とは金属弾性体またはゴム弾性体で
    接続して液封止し、可動部は変位拡大機構を介してセラ
    ミックアクチュエータにより変位が与えられるものであ
    って、セラミックアクチュエータには常に圧縮を与えて
    おくために、大小ピストンのいずれかまたは可動部にス
    プリングあるいはゴム等により荷重を加えており、 変位拡大機構は、2つの径の異なったピストンの間に液
    体を充満し、両ピストンの周囲はゴム弾性体を接着又は
    圧着することにより液体を封止し、両ピストンの有効面
    積比を次式で与えられる値n0 とすることを特徴とする
    液封エンジンマウント。 【数1】 但し、Ka =小ピストンのゴム及び与圧縮用スプリング
    のばね定数。 Kb =大ピストンのゴムのばね定数。 Kp =セラミックアクチュエータのばね定数。 K0 =第1液室の体積弾性率 K1 =第2液室の体積弾性率 a =可動部の有効面積 u =入力変位振幅 A0 =防振基体の有効ピストン面積 δ =セラミックアクチュエータの変位振幅
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