JP2560956B2 - 水中防汚剤およびその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は養殖または定置用の漁
網、およびこれらに使用される浮き子、ロープなどの資
材、さらに船底、水中構築物などに対して、ヒドロ虫等
の腔腸動物の付着を防止するための水中防汚組成物の防
汚成分として有用なビス（ジメチルジチオカルバモイ
ル）エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛を含有する水
中防汚剤およびその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】養殖または定置用の漁網類や船底、水中
構築物などは海中に長期間保持されるために、海藻類、
フジツボ、セルプラ、コケムシ、軟体動物類などの海棲
汚損生物の付着が激しく、これらの経済的運用を妨げて
おり、それらの保守に多大の労力と費用をかけているの
が現状である。特にヒドロ虫等の腔腸動物の付着を防止
する選択的な有効成分の開発が待たれていた。

【０００３】この対策として種々の研究、提案がなされ
ているが、実用的には一連の有機錫化合物が有効である
ことが知られている。しかし、これらの有機錫化合物は
概して毒性が強く、これらを含有する商品を不用意に取
り扱うと取扱者に障害を及ぼす恐れがあり、また環境対
策上好ましくないなどの欠点がある。

【０００４】この様な理由から低公害性の水中防汚剤の
出現が望まれている。例えば、特公昭５１−１０８４９
号公報にはベンゾチアゾール化合物を有効成分とする水
中防汚塗料が、特開昭６０−３８３０６号公報、特開昭
６３−２８４２７５号公報、特公平１−１１６０６号公
報にはテトラアルキルチウラムジスルフィッド化合物と
その他の水中防汚剤化合物とを組み合わせた種々の漁網
用防汚剤、防汚塗料組成物、漁網防汚用溶液が、特公昭
６１−５０９８４号公報には３−イソチアゾロン化合物
を有効成分とする海洋構築物の汚染防止剤が、特公平１
−２０６６５号公報、特公平２−２４２４２号公報、特
開昭５３−９３２０号公報にはマレイミド化合物を有効
成分とする防汚塗料がそれぞれ開示されている。

【０００５】しかしこれらの水中防汚剤は、いずれもヒ
ドロ虫等の腔腸動物に対する付着防止効果が弱く、実用
に供し得るものではなかった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は低公害性で、
特にヒドロ虫等の腔腸動物の付着に対し、すぐれた防汚
効果を示す実用的な水中防汚剤およびその製造方法を提
供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
従来の水中防汚剤の諸欠点を除き、低毒性で環境汚染の
恐れが少ない、安全性が高く、作業性のよい水中防汚剤
を鋭意研究した結果、ビス（ジメチルジチオカルバモイ
ル）エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛が、ヒドロ虫
等の腔腸動物に対してすぐれた防汚効果を示すこと、さ
らに、実用的な製剤特性を示すことを見いだし、本発明
を完成するに至った。

【０００８】すなわち、本発明は有効成分として平均粒
子径２ミクロン以下のビス（ジメチルジチオカルバモイ
ル）エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛を、および溶
出調整剤としてジ第３級ノニルペンタスルフィッドを含
有することを特徴とする腔腸動物付着防止用水中防汚剤
に関する。また、本発明は有効成分としての平均粒子径
２ミクロン以下のビス（ジメチルジチオカルバモイル）
エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛および溶出調整剤
としてのジ第３級ノニルペンタスルフィッドに樹脂を加
えて、溶剤で分散させることを特徴とする腔腸動物付着
防止用水中防汚剤の製造方法に関する。

【０００９】本発明のビス（ジメチルジチオカルバモイ
ル）エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛については、
平均粒子径２ミクロン以下のものを使用することによ
り、忌避効果を飛躍的に高め、さらに分散懸濁状態での
粒子を長く沈降させないことによって製造時の作業性を
改善することができた。すなわち均一な組成での充填が
可能となった。

【００１０】本発明のビス（ジメチルジチオカルバモイ
ル）エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛の配合量は、
水中防汚剤の適用対象物、適用環境によって任意に変更
でき、特に限定されるものではないが、通常、３〜３０
重量％、好ましくは５〜２０重量％である。

【００１１】溶出調整剤として使用されるジ第３級ノニ
ルペンタスルフィッドの配合量は、３〜２０重量％、望
ましくは５〜１０重量％である。その溶出調整剤の混合
比は、使用条件により任意にできる。

【００１２】本発明の水中防汚剤は分散塗料の形態で使
用され、通常の方法で容易に製造できる。たとえば、漁
網用防汚剤は、有効成分としての平均粒子径２ミクロン
以下のビス（ジメチルジチオカルバモイル）エチレンビ
スジチオカルバミン酸亜鉛、溶出調整剤としてジ第３級
ノニルペンタスルフィッドに樹脂を加えて、溶剤で分散
すればよい。ここで、使用される樹脂は、たとえば、ロ
ジン樹脂、アクリル樹脂、ポリブテン樹脂、塩化ゴム樹
脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、
エチレン−酢酸ビニル樹脂などがあげられ、それらの１
種またはそれ以上を併用してもよい。また、溶剤として
は、キシレン、ソルベントナフサ、プソイドクメン、ブ
タノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケト
ン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、メシチレ
ンなどがあげられる。

【００１３】

【作用】本発明の水中防汚剤は、低毒性で安全性が高
く、かつ、長期にわたってヒドロ虫等の腔腸動物に対
し、優れた防汚効果を示す。

【００１４】

【実施例】以下、実施例を示すが、本発明はこれらに限
定されるものではない。なお、実施例中の配合は重量％
を示す。

【００１５】実施例１ 次の処方例にしたがって、各成分を混合分散して漁網用
防汚剤を調製した。

【００１６】 処方例１ ビス（ジメチルジチオカルバモイル）エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛 （平均粒子径１．５ミクロン） １０％ ジ第３級ノニルペンタスルフィッド ５％ 流動パラフィン（試薬） ５％ アクリル樹脂（５０％キシレン液） ４０％ キシレン ４０％

【００１７】

【発明の効果】実験１ 本発明の実施例１の漁網用防汚剤をそれぞれ、ポリエチ
レン製無結節網（６節、４００デニール／６０本）に浸
漬塗布し風乾した後に、平成３年６月から和歌山県田辺
湾内の海面下約５ｍに浸海保持し、網に対するヒドロ虫
等の腔腸動物の付着状況を調査した。この結果を表１の
基準により評価した。

【００１８】

【表１】

【００１９】 比較例処方は次のとおりである。 比較例１ テトラエチルチウラムジスルフィッド １５％ アクリル樹脂（５０％キシレン液） ５０％ キシレン ３５％ 比較例２ ビス（ジメチルジチオカルバモイル）エチレンビスジチオカルバミン酸銅 （平均粒子径５．０ミクロン） ８％ ジ第３級ノニルペンタスルフィッド ５％ 黄色ワセリン ５％ アクリル樹脂（５０％キシレン液） ４０％ キシレン ４２％ 結果を表２に示す。

【００２０】

【表２】

【００２１】表２に示した通り、本発明の平均粒子径２
ミクロン以下のビス（ジメチルジチオカルバモイル）エ
チレンビスジチオカルバミン酸亜鉛を有効成分とし、溶
出調整剤としてジ第３級ノニルペンタスルフィッドを含
有する漁網防汚剤は、ヒドロ虫等の腔腸動物に対して持
続性のある実用的な効果を示すとともに、毒性も低い安
全性の高い、かつ分散安定性の良好な防汚剤を提供でき
ることが判明した。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平１−190613（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−221301（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 有効成分として平均粒子径２ミクロン以
   下のビス（ジメチルジチオカルバモイル）エチレンビス
   ジチオカルバミン酸亜鉛を、および溶出調整剤としてジ
   第３級ノニルペンタスルフィッドを含有することを特徴
   とする腔腸動物付着防止用水中防汚剤。
2. 【請求項２】 有効成分としての平均粒子径２ミクロン
   以下のビス（ジメチルジチオカルバモイル）エチレンビ
   スジチオカルバミン酸亜鉛および溶出調整剤としてのジ
   第３級ノニルペンタスルフィッドに樹脂を加えて、溶剤
   で分散させることを特徴とする腔腸動物付着防止用水中
   防汚剤の製造方法。