JP2550627B2 - 液晶光学素子 - Google Patents

液晶光学素子

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JP2550627B2
JP2550627B2 JP62322701A JP32270187A JP2550627B2 JP 2550627 B2 JP2550627 B2 JP 2550627B2 JP 62322701 A JP62322701 A JP 62322701A JP 32270187 A JP32270187 A JP 32270187A JP 2550627 B2 JP2550627 B2 JP 2550627B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、透過散乱形液晶光学素子の素子構成に関す
るものである。
[従来の技術] 従来、光散乱を動作原理とする液晶光学素子には動的
散乱(DS)及び相転移(PC)の2つのモードが知られて
いる。DSモードは水平もしくは垂直配向処理を行なった
透明電極付基板に、導電性物質を添加した誘電異方性が
負の液晶を封入したものであり、電圧を印加しない透過
状態と、しきい値電圧より高い電圧印加により動的散乱
を生じさせ、透過率を低下させた状態との二状態を制御
するものである。またPCモードは、必要に応じて配向処
理した透明電極付基板にコレステリック液晶封入し、電
圧印加の有無によりホメオトロピック配列のネマチック
相(透過)とフォーカルコニック配列もしくはプレーナ
配列のコレステリック相(散乱)の二状態を制御するも
のである。DSモード、PCモードのいずれも偏光板を使用
しないため、広い視角が得られる利点はあるものの、前
者は液晶中に導電性物質を添加した電流効果型であるた
め、消費電力が大きくなる、液晶の信頼性が低下すると
いった欠点を有している。
一方、後者においても動作電圧が、(電極間距離/液
晶のピッチ)に依存するため、大面積化しようとする場
合、高い精度で均一なギャップを必要とするといった困
難な問題を有している。一方H.G.CraigheadらがAppl.Ph
ys.Lett.,40(1)22(1982)に開示した方法は、液晶
が屈折率異方性を有する特徴をいかしたものであり、具
体的には液晶を多孔体に含浸させ、電界印加の有無によ
り液晶の屈折率を変化させ、多孔体の屈折率を調整する
ことにより、透過と散乱とを制御するものである。この
方法は偏光板を用いることなく原理的DSモード、PCモー
ドがもつ欠点を克服することが可能であり有用な方法で
ある。同様の素子はJ.L.Fergasonらがポリビニルアルコ
ールを使ってマイクロカプセル化したネマチック液晶に
より(特表昭58−501631号)、またK.N.Pearlmanらは種
々のラテックス取り込み液晶により(特開昭60−252687
号)、またJ.W.Doaneらは、エポキシ樹脂中に液晶を分
散硬化させる方法(特表昭61−502128号)で作成してい
る。
[発明の解決しようとする問題点] H.G.Craigheadらの方法は多孔体への含浸といった手
段をとっているため、使用する多孔体の孔や溝のサイズ
にばらつきがある、液晶の含浸が難しい、多孔体と液晶
の量比に自由度がないといった問題点から、透過率変化
が十分とれない、素子作成が困難であるといった欠点を
有していた。またJ.L.Fergasonら、K.N.Pearlmanらによ
る素子は、素子作成の際、水溶性ポリマーを使ったり、
水に乳化分散したポリマーを使用するため、耐水性に劣
り、その結果、白濁化・膨潤し、物理的性質の低下をき
たすといった欠点を有していた。また、J.W.Doaneらの
方法にエポキシ樹脂を紫外線で硬化する方法が開示され
ているが、エポキシ樹脂はイオン重合はするがラジカル
重合はしないため、ルイス酸やプロトン酸の塩を紫外線
で分解させ生じた酸で重合を行なうものである。このた
め、塩の分解の際生じる副生物や、遊離の酸により、素
子の外観品位や信頼性に劣るといった欠点を有してい
た。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、前述の課題を解決すべくなされたものであ
り、一対の電極付基板間に液晶物質を含有させた層を挟
持してなる液晶光学素子において、得られる硬化物の屈
折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no)あるいは
異常光屈折率(ne)のいずれかと一致するように選ばれ
た光硬化性ビニル系化合物及びネマチック液晶物質の溶
解物を一対の電極付基板間に保持し、光硬化性ビニル系
化合物にアクリルオリゴマーを15〜70wt%含有せしめ、
光露光により、光硬化性ビニル系化合物を硬化させ、ネ
マチック液晶物質と硬化物との相分離を固定化したこと
を特徴とする液晶光学素子である。
本発明の素子は、液晶とアクリルオリゴマーを15〜70
wt含有する光硬化性ビニル系化合物が、溶解した均一状
態から、光硬化過程を経ることにより、ネマチック液晶
と硬化物とを細い不均一状態で固定化させるので、液晶
と硬化物の分布が一様となり、外観品位、生産性にすぐ
れた素子といえる。
本発明では、電圧を印加していない状態又は印加して
いる状態のいずれか一方で、光露光により硬化させられ
た硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率
(no)あるいは異常光屈折率(ne)のいずれかと一致す
るようにされる。
これにより、得られた硬化物の屈折率と液晶物質の屈
折率とが一致した時に光が透過し、一致しない時に光が
散乱(白濁)することになる。
この特性を生かして、本発明の液晶光学素子は調光体
に使用するとその効果が大きい。
特に、本発明の素子は、電界が印加されていない場合
には、配列していない液晶物質と、硬化物の屈折率の違
いにより、散乱状態(つまり白濁状態)を示し、また電
界を印加した場合には、液晶物質が配列し、液晶の屈折
率(noあるいはne)と光硬化により得られた硬化物の屈
折率とが一致することにより透過状態を示すものとする
ことが好ましく、可逆的な調光機能をもつすぐれた素子
が得られる。
特に電界を印加した際の液晶の配向が、基板面に対し
垂直である方がヘーズむらが出ず、従って、透過率が上
昇するので、得られる硬化物の屈折率が、使用するネマ
チック液晶のnoと一致するように選ばれた光硬化性ビニ
ル系化合物と誘電異方性が正のネマチック液晶物質とを
組みあわせて使用した方が好ましい。
なお、本発明ではこの硬化物の屈折率と、使用する液
晶物質の屈折率(no、neのいずれか)とを一致させるも
のであるが、この一致とは完全に一致させることが好ま
しいものであるが、透過状態に悪影響を与えない程度
に、ほぼ一致するようにしておけば良い。具体的には、
屈折率の差を0.15程度以下にしておくことが好ましい。
これは、液晶物質により硬化物が膨潤して、硬化物が
本来持っていた屈折率よりも液晶物質の屈折率に近づく
ため、この程度の差があっても、光はほぼ透過するよう
になる。
本発明で使用される、アクリルオリゴマーを15〜70wt
%含有する光硬化性ビニル系化合物は、硬化速度を速め
たいなら、光硬化開始剤を加えるなどしてよく、ラジカ
ル種により光硬化可能なものであれば、外観品位、信頼
性にすぐれた素子を作成することができる。この光硬化
ビニル系化合物は化合物自身が光反応性をもつもの、光
照射によって生成した物質により硬化が誘起されるもの
であってもよく、大別すると、光照射によって分解硬化
するものと、重合硬化するものに分類される。重合硬化
するものは、さらに光二量化するものと重合高分子化す
るものに分けられる。前者はビニル基の中でも、シンナ
モイル基やシンナミリデン基をもつものが多く、たとえ
ばポリケイ皮酸ビニル、ポリシンナミリデン酢酸ビニ
ル、フェニレンジアクリル酸エステルなどが例示され
る。後者は、モノマーやオリゴマーが光により活性化さ
れて、相互にあるいは他のポリマーやオリゴマー、モノ
マーと重合硬化するものであり、ビニル基の中でもアク
リロイル系、アリル系、スピラン系、ビニルベンゼン系
のモノマー、オリゴマー、ポリマーなどがあげられる。
具体的には、モノアクリレート、ジアクリレート、N−
置換アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、スチレン
及びその誘導体、ポリオールアクリレート、ポリエステ
ルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアク
リレート、シリコーンアクリレート、フロロアルキルア
クリレート、ポリブタジエン骨格を有するポリアクリレ
ート、イソシアヌル酸骨格を有するポリアクリレート、
ヒダントイン骨格を有するアクリレート、不飽和シクロ
アセタールなどに代表される単官能及び多官能ビニル基
を有する化合物が例示される。本発明では、これら種々
の光硬化性ビニル系化合物が使用できるが、アクリロイ
ル系化合物を使用することが、光露光後の液晶と硬化物
の相分離状態及びその均一性にすぐれていること、また
光露光による硬化速度が速く硬化物が安定であることか
ら好ましい。尚ここでいうアクリロイル系化合物のアク
リロイル基は、α位、β位の水素がフェニル基、アルキ
ル基、ハロゲン、シアノ基で置換されていてもよい。
本発明では、これらの光硬化性ビニル系化合物の内、
光照射によって重合硬化するもの、特に重合高分子化す
るオリゴマーを含有するものが好ましい。
具体的には、光硬化性ビニル系化合物としてビニル基
を2個以上含有するアクリルオリゴマーを15〜70wt%含
有することが好ましく、光硬化後に硬化に伴う収縮が少
なく、液晶光学素子に微小なクラックが発生しにくく、
成形性が良好となる。この微小クラックが多くなれば、
光透過状態での光の透過率が低下する傾向となり、素子
の性能が低下する。このアクリルオリゴマーの粘度は高
すぎても低すぎても成形性に悪影響を与えるので50℃で
150〜500000cps程度とすることが好ましい。
光硬化性ビニル系化合物の残りの部分は、ビニル系の
モノマーが使用できる。特に、アクリル系のモノマーが
アクリルオリゴマーと相性が良く好ましい。
本発明で使用することが好ましいアクリルオリゴマー
としては、以下に示す一般式(I)の構造を有する。
このXで表わされる部分は、ポリオール、ポリエステ
ル、エポキシ、ウレタン、ヒダントイン等の骨格から選
ばれれば良く、少なくとも両側にアクリル酸の構造(CH
2=CH−COO−)を持っていれば良い。具体的には、以下
のような構造がありうる。
CH2CH2O、C3H6O等のR−O (Rはアルキレン基、R′は水素またはアルキル基を表
わし、フェニレンで置換もしくはシクロヘキシレンで置
換されていてもよい。また、同一構造式中に複数のR、
R′等がある場合には、全てが同一の基でも良いし、夫
々異なっていてもよい。mとhは繰り返しの単位を表
す。) 尚、これらの骨格は単なる例示にすぎなく、素子の形
状、特性等を考慮して適宜選択すれば良い。
また、光硬化性ビニル系化合物は、単独もしくは複数
混合で用いてもよく、素子作成に必要な改質剤、作成し
た素子の改質剤などを含んでいてもよい。具体的には、
架橋剤、界面活性剤、希釈剤、増粘剤、消泡剤、接着性
付与剤、安定剤、吸収剤、色素、重合促進剤、連鎖移動
剤、重合禁止剤などを含んでいてよい。
本発明の素子で使用する光硬化性ビニル系化合物は、
前述の要件を満たした種々の材料の中から、液晶の屈折
率、液晶との溶解性を勘案して選択すればよい。
また、光硬化開始剤は、ベンゾインエーテル系、ベン
ゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系な
どが例示される。
本発明で使用されるネマチック液晶物質は、単独で用
いても組成物を用いても良いが、動作温度範囲、動作電
圧など種々の要求性能を満たすには組成物を用いた方が
有利といえる。
また、使用されるネマチック液晶は、アクリルオリゴ
マーを15〜70wt%含有する光硬化性ビニル系化合物に均
一に溶解し、光露光後の硬化物とは、溶解しない、もし
くは困難なものが必要であり、組成物を用いる場合は、
個々の液晶物質の溶解度ができるだけ近いものが望まし
い。
本発明の素子を製造する際、光硬化性ビニル系化合物
とネマチック液晶とは5:95〜45:55程度の溶解混合物と
すればよく、液状ないしは粘稠物として使用されればよ
い。
本発明の素子を製造する際、調製する光硬化性ビニル
系化合物とネマチック液晶との混合物は液状であっても
粘稠物であっても均一に溶解していれば良く、素子の製
造方法によって最適なものを選べば良い。たとえば、In
2O3−SnO2,SnO2等の透明電極付のガラス基板が、相対向
するように配して周辺をシールしたセルには、液状で注
入した方が一般に便利であり、透明電極付のプラスチッ
ク・ガラス等の基板に塗布し、対向する基板を重ね合わ
せようとする場合には、一般に粘稠状態の方が便利であ
る。
基板間ギャップは、5〜100μmにて動作することが
できるが、印加電圧、オン・オフ時のコントラストを配
慮すれば、7〜40μmに設定することが適当である。こ
のようにして、基板に保持した混合物を、光露光によ
り、ネマチック液晶と硬化物との相分離状態で固定化す
るわけだが、ここで言う光露光とは、一般に紫外線照射
あるいは、電子線照射を意味する。光露光前は、基板に
保持された内容物は均一に溶解しているため無色透明で
あるが、光露光後は配列していないネマチック液晶と硬
化物による屈折率散乱のため白濁状態となる。こうして
作成した本発明の素子は、電圧印加することにより、ネ
マチック液晶が配列し、硬化物と屈折率が一致するため
透過状態となる。
本発明では、この液晶中に2色性色素や単なる色素、
顔料を添加したり、硬化性化合物として着色したものを
使用したり、基板に着色基板を使用したり、カラーフィ
ルターを積層したりして特定の色を付けることもでき
る。
本発明では、ネマチック液晶物質を溶媒として使用
し、光露光により光硬化性ビニル系化合物を硬化させる
ため、硬化時に不要となる単なる溶媒や水を蒸発させる
必要がない。このため、密閉系で硬化できるため、信頼
性が高く、かつ、光硬化性ビニル系化合物で2枚の基板
を接着する効果も有するため、シール剤を不要にするこ
ともできる。
このため、一方の電極付基板上に光硬化性ビニル系化
合物及びネマチック液晶物質の溶解物を供給し、さらに
その上に他方の電極付基板を重ね合せ、その後、光を照
射して硬化させるという生産性の良い製造方法が採用で
きる。
特に、電極付基板にプラスチック基板を使用すること
により、連続プラスチックフィルムを使用した長尺の液
晶光学素子が容易に製造できる。
このような液晶と硬化性化合物のマトリックスによる
液晶を使用することにより、大面積にしても、上下の透
明電極が短絡する危険性が低く、かつ、通常のツイスト
ネマチック型の表示素子のように配向や基板間隙を厳密
に制御する必要もなく、大面積を有する液晶調光体を極
めて生産性良く製造できる。なお、光の透過状態のムラ
を少なくするためには、基板間隙はある程度一定である
方が良い。このため、ガラス粒子、プラスチック粒子、
セラミック粒子等の間隙制御用のスペーサーを基板間隙
に配置する方が好ましい。具体的には、電極付基板上に
光硬化性ビニル系化合物及びネマチック液晶物質の溶解
物に基板間隙制御用のスペーサーを含有させて供給する
か、溶解物を供給前または後にスペーサーを供給して、
他方の電極付基板を重ね合わせるようにすれば良い。こ
の場合、重ね合わせた後に加圧し、その後、硬化させる
ことにより、より均一な基板間隙になりやすい。
このような液晶光学素子は、表示素子としても使用可
能であるが、大面積化が容易であること及び後で切断し
て所望のサイズにできること等からみて調光体として使
用した場合に好適である。
調光体として使用される場合には、通常は透過型であ
るため、電極は透明電極とされる。もちろん、その一部
に低抵抗化するための金属リード部を併設したりしても
よい。また、調光鏡として使用する場合には、一方の電
極を反射電極としてもよい。
この液晶調光体のような大型の液晶光学素子の場合に
は、基板がプラスチックや薄いガラスの場合にさらに保
護のためにプラスチックやガラス等の保護板を積層した
り、基板を強化ガラス、合せガラス、線入ガラス等にし
てもよい等種々の応用が可能である。
特に、電極付基板としてプラスチック基板を使用して
液晶光学素子とし、電極取り出し線を付けて、これを液
晶光学素子よりもやや大きい2枚のガラス板間にポリビ
ニルブチラール等の接着性材料層を介して挟持して、加
熱又は光照射により、接着性材料層を硬化させて、液晶
光学素子とガラス板とを一体化し合せガラス状にして使
用することが好ましい。中でも接着性材料をポリビニル
ブチラールとすることにより、通常の合わせガラスと極
めて類似した構造とすることができる。
この液晶調光体のような液晶光学素子を製造するに
は、所望の形状の基板を2枚準備して、これを組合せて
液晶光学素子を製造してもよいし、連続プラスチックフ
ィルム基板を使用したり、長尺ガラス基板を用いて製造
して、後で切断する方式で製造してもよい。
この液晶調光体の用途としては窓、天窓、間仕切り、
扉等の建築材料、窓、ムーンルーフ等の車両用材料、各
種電気製品用のケース、ドア、蓋等の材料に使用可能で
ある。
本発明の液晶光学素子は、電圧を印加する時には、液
晶の配列が変化するような交流電圧を印加すればよい。
具体的には、5〜100Vで10〜1000Hz程度の交流電圧を印
加すればよい。
また、電圧を印加しない時には、電極間をオープンに
するか短絡すればよい。これらの内でも、電極間のイン
ピーダンス、即ち、電極のインピーダンス、端子部での
接続インピーダンス、回路インピーダンスの合計インピ
ーダンスが、ネマチック液晶物質と硬化物との層のイン
ピーダンスよりも低くなるようにすることにより、電圧
を切った時の液晶の応答が速い。
特に、電極間のインピーダンスが、ネマチック液晶物
質と硬化物との層のインピーダンスの1/10以下になるよ
うにすることが好ましい。このため、電極のインピーダ
ンス及び端子部での接続インピーダンスが高い場合に
は、回路のインピーダンスを下げることが好ましい。
このように自己放電回路を形成することにより、通常
の液晶表示素子に比して素子自体の有するキャパシタン
スが非常に大きいものであっても、電極間に蓄積された
電荷が速やかに放電され、液晶がランダムな配向に戻る
運動を阻害しなく、透過と散乱との間の変化が速くな
る。
本発明の素子は、表示用素子、とりわけ従来の液晶表
示素子が困難であった、大面積表示素子、湾曲状での表
示素子等に利用できるほか、大面積の調光素子、光シャ
ッター等、数多くの利用が考えられる。
また、本発明では一方の電極を鏡面反射電極として鏡
として使用してもよく、この場合には裏側の基板は不透
明なガラス、プラスチック、セラミック、金属製とされ
てもよい。
また、カラーフィルターを併用したり、液晶中に二色
性色素を混入したりしてカラー化したり、他のディスプ
レーであるTN液晶表示素子、エレクトロクロミック表示
素子、エレクトロルミネッセンス表示素子等と積層して
使用してもよく、種々の応用が可能である。
[実施例及び参考例] 以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
例1(参考例) n−ブチルアクリレート1部及び2−ヒドロキシエチ
ルアクリレート5部に液晶(BDH社製「E−8」)を18
部、光硬化開始剤としてベンゾインイソプロピルエーテ
ル0.12部を均一に溶解し、25μmのセルギャップをもっ
たITO付ガラス基板セルに注入した。注入孔を封止した
後、紫外線照射装置(東芝社製「トスキュアー400」)
により、約60秒光露光すると露光面全面が白濁し、樹脂
の網目状のマトリックス中に液晶が分散された構造の素
子がえられた。
電圧印加前の透過率は18.3%であったが、AC60V(50H
z)を印加すると60.2%の透過率を示した。(透過率
計:朝日分光社製「M−304」) 例2 n−ブチルアクリレート1部及び2−ヒドロキシエチ
ルアクリレート3部、アクリルオリゴマー(東亜合成化
学社製「M−1200」、粘度300000cps/50℃)4部、光硬
化開始剤としてメルク社製「ダロキュアー1116」を0.16
部、液晶「E−8」を4部に均一に溶解した。セルギャ
ップを10μmにした以外は、例1と同様に素子を作成し
た。電圧印加(AC60V,50Hz)前後の透過率はそれぞれ3
8.4%、77.1%であった。
例3 n−ブチルアクリレート3部、アクリルオリゴマー
(大阪有機化学工業社製「ビスコート#823」、粘度190
000cps/50℃)2部、液晶「E−8」を3部、「ダロキ
ュアー1116」を0.1部を均一に混合し、ドクター・ブレ
ードを使い、ガラス基板に仮接着したITO付ポリエステ
ルフィルム上に塗布した。次いで同様にガラス基板に仮
接着したITO付ポリエステルフィルムを重ね合せ、10μ
mのスペーサーを使用してセルギャップを調整して、例
1と同様条件で光露光し、素子を作成した。
電圧印加(AC60V,50Hz)前後の透過率はそれぞれ42.8
%、67.1%であった。
例4 n−ブチルアクリレート1部、2−ヒドロキシエチル
アクリレート5部、アクリルオリゴマー(東亜合成化学
社製「M−6200」、粘度240cps/50℃)3部、光硬化開
始剤としてメルク社製「ダロキュアー1173」を0.20部、
液晶「E−8」を18部を均一に溶解した。使用したセル
のガラス板厚を3.0mmにし、光露光時間を3分にした以
外は、例1と同様にして素子を作製した。電圧印加(AC
60V,50Hz)前後の透過率はそれぞれ8.3%、52.0%であ
った。
例5(参考例) N−(n−ブトキシメチル)−アクリルアミド1部、
n−ブチルアクリレート3部、「ダロキュア1116」を0.
2部、液晶Roche社製「TN−623」9.5部を均一に溶解し
た。セルギャップを10μmにした以外は、例1と同様に
素子を作成した。電圧印加(AC60V,50Hz)前後の透過率
は夫々79.1%、85.0%であった。
例6 n−ブチルアクリレート12部、アクリルオリゴマー
「M−1200」24部、「ダロキュアー1116」を1.4部、液
晶「E−8」を64部均一に溶解した。例3と同様にガラ
ス基板に仮接着したITO付ポリエステルフィルムを使用
し、セルギャップが14μmとなるように重ね合せ、紫外
線照射装置(三菱電機社製「ネオルミスーパー(30
W)」)使用により約90秒光露光して素子を作製した。
電圧を印加しない場合の透過率は10.3%、電圧印加後
の透過率は62.5%(AC15V、50Hz)、77.7%(AC100V、5
0Hz)であった。
さらに、これを2枚のガラス板の間に2枚のポリビニ
ルブチラール膜を介して挟持し、オートクレーブ内で加
熱加圧して一体化させた。
このようにして一体化された調光体は、外圧に対して
安全であり、信頼性も高いものであった。
例7 セルギャップを8μmにした以外は例6と同様にして
素子を作製した。電圧を印加しない場合の透過率は19.8
%、電圧印加後の透過率は75.3%(AC15V、50Hz)、77.
2%(AC30V、50Hz)であった。
例8 例6の素子において、AC50Vの電圧を印加した状態か
ら回路を開放した場合の透過率変化の応答時間は1.2秒
であった。電圧を切った後で、素子の両電極を1kΩの抵
抗を介して短絡したところ、応答時間は0.02秒であっ
た。
例9 着色硬化物として、東華色素化学工業社製「ベストキ
ュア161」を1.5部加えて分散させた以外は、例6と同様
にして素子を作製した。
全面、均一に着色した素子が得られ、電圧印加しない
場合の透過率は8.1%、電圧印加後の透過率は63.5%(A
C100V、50Hz)であった。
例10 n−オクチルアクリレート7部及び2−ヒドロキシエ
チルアクリレート15部、アクリルオリゴマー「M−120
0」14部、光硬化開始剤としてベンゾインイソプロピル
エーテル3部に液晶「E−8」64部を均一に溶解した。
この溶液をガラス板に仮接着したITO付ポリエステルフ
ィルム基板上に塗布し、次いで、同様に、ガラス板に仮
接着したITO付ポリエステルフィルム基板をセル間隙が1
4μmとなるように重ね合せた後、紫外線照射装置「ト
スキュアー400」により約60秒光露光すると、露光面が
白濁した素子が得られた。
電圧印加前の透過率は15.9%であったが、AC100V(50
Hz)を印加すると77.0%の透過率を示した。
例11 N−(n−ブトキシメチル)−アクリルアミド1部、
n−ブチルアクリレート3部、アクリルオリゴマー「ビ
スコート#823」1部、光硬化開始剤「ダロキュアー111
6」0.2部、液晶「TN−623」9.5部を均一に溶解した。セ
ル間隙を10μmにした以外は、例5と同様にして素子を
作成した。
電圧印加(AC60V、50Hz)前後の透過率は夫々76.2
%、85.2%であった。
この素子は、原料にアクリルオリゴマーを使用してお
り、例5の素子に比して、硬化後の微小クラックが少な
く、電圧印加による透過率の変化が大きいものであっ
た。
[発明の効果] 以上の如く、本発明は、新規な液晶光学素子を提供す
るものであり、得られる硬化物の屈折率が、使用する液
晶物質の常光屈折率(no)あるいは異常光屈折率(ne
のいずれかと一致するように選ばれたアクリルオリゴマ
ーを15〜70wt%含有する光硬化性ビニル系化合物とネマ
チック液晶物質とを均一溶解状態で一対の電極付基板間
に保持し、光露光により、光硬化性化合物を硬化させ、
ネマチック液晶物質とを硬化物との相分離を固定化した
素子である。したがって本発明は偏光板を必要とせず、
外観品位、生産性にすぐれた素子であり、表示用、とり
わけ大面積、湾曲状での表示に、また大面積での調光、
光シャッター等に広く利用することができる。
本発明では光硬化性ビニル系化合物を使用しているた
め、素子の信頼性が高く、合せガラス様の構造を有して
おり、外圧による破損を生じにくく安定性が高い。
さらに、この基板の少なくとも一面に保護板を設ける
ことにより、安全性が向上し、特に、両面に保護板を設
けることにより破損を生じにくくなる。
特に、基板上にネマチック液晶物質、アクリルオリゴ
マーを15〜70wt%含有する光硬化性ビニル系化合物、さ
らに必要に応じて光硬化開始剤との溶解物を供給し、そ
の上に他方の基板を載置することにより、大面積の素子
を極めて生産性良く製造できる。このため、ガラスの場
合にもかなり長尺の基板が使用できるし、プラスチック
の基板では連続フィルムによる連続プロセスも可能とな
る。
特に、基板にプラスチック基板を使用した場合には、
生産性は良い反面、強度が劣っているため、大面積化し
た際に、破損し易くなったり、湾曲したりする。このた
め、両面に保護板を設ける効果が大きい。中でも保護板
としてガラス板を使用し、接着性材料で接着することに
より、合わせガラスと類似の構造となり、安全で信頼性
が高くなる。
又、本発明の液晶光学素子は、液晶物質と硬化したビ
ニル系化合物とが細かな3次元網目状マトリックスを構
成しているため、素子を製造後所望の大きさに切断して
使用することもできる。
また、マトリックス中に液晶の分散体が互いにつなが
っているため、電圧印加の際、液晶が均一に配列し易い
ためマイクロカプセル状や独立した液晶粒から構成され
る素子と比べて、透明状態でのヘーズが小さく、駆動電
圧が低くてすむ。また、白濁状態の際、素子が赤っぽく
なることを防ぐといった効果もある。
本発明は、この外、本発明の効果を損しない範囲内で
種々の応用が可能である。

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一対の電極付基板間に液晶物質を含有させ
    た層を挟持してなる液晶光学素子において、得られる硬
    化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no
    あるいは異常光屈折率(ne)のいずれかと一致するよう
    に選ばれた光硬化性ビニル系化合物及びネマチック液晶
    物質の溶解物を一対の電極付基板間に保持し、光硬化性
    ビニル系化合物にアクリルオリゴマーを15〜70wt%含有
    せしめ、光露光により、光硬化性ビニル系化合物を硬化
    させ、ネマチック液晶物質と硬化物との相分離を固定化
    したことを特徴とする液晶光学素子。
  2. 【請求項2】アクリルオリゴマーが以下に示す一般式
    (I)の構造を有する特許請求の範囲第1項記載の液晶
    光学素子(Xで表わされる部分は、ポリオール、ポリエ
    ステル、エポキシ、ウレタン、ヒダントイン等の骨格か
    ら選ばれる)。
  3. 【請求項3】アクリルオリゴマーが以下のような構造を
    有する特許請求の範囲第1項または第2項記載の液晶光
    学素子(Rはアルキレン基、R′は水素またはアルキル
    基を表わし、Rはフェニレンで置換もしくはシクロヘキ
    シレンで置換されていてもよい。また、同一構造式中に
    複数のR、R′等がある場合には、全てが同一の基でも
    よいし、夫々異なっていてもよい)。
  4. 【請求項4】光硬化性ビニル化合物がアクリル系モノマ
    ーとアクリルオリゴマーとを含む特許請求の範囲第1項
    〜第3項のいずれか一項記載の液晶光学素子。
  5. 【請求項5】光硬化性ビニル化合物がウレタンアクリレ
    ートを含む特許請求の範囲第1項〜第4項のいずれか一
    項項記載の液晶光学素子。
  6. 【請求項6】光硬化性ビニル化合物がポリオールアクリ
    レートを含む特許請求の範囲第1項〜第4項のいずれか
    一項記載の液晶光学素子。
  7. 【請求項7】光硬化性ビニル化合物がポリエステルアク
    リレートを含む特許請求の範囲第1項〜第4項のいずれ
    か一項記載の液晶光学素子。
  8. 【請求項8】電極付基板が透明電極付基板である特許請
    求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項記載の液晶光学
    素子。
  9. 【請求項9】電極付基板が透明電極付プラスチック基板
    である特許請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項記
    載の液晶光学素子。
  10. 【請求項10】透明電極付基板の外側に保護板が積層さ
    れている特許請求の範囲第8項記載の液晶光学素子。
  11. 【請求項11】保護板が両方の透明電極付基板の外側に
    接着されている特許請求の範囲第10項記載の液晶光学素
    子。
  12. 【請求項12】保護板がガラス板である特許請求の範囲
    第11項記載の液晶光学素子。
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