JP2569703B2 - 液晶光学素子及びその製造方法並びにそれを用いた調光体及び表示装置 - Google Patents

液晶光学素子及びその製造方法並びにそれを用いた調光体及び表示装置

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JP2569703B2
JP2569703B2 JP63059502A JP5950288A JP2569703B2 JP 2569703 B2 JP2569703 B2 JP 2569703B2 JP 63059502 A JP63059502 A JP 63059502A JP 5950288 A JP5950288 A JP 5950288A JP 2569703 B2 JP2569703 B2 JP 2569703B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は透過散乱型の液晶光学素子及びその製造方法
並びにそれを用いた調光体及び表示装置に関するもので
ある。
[従来の技術] 従来、光散乱を動作原理とする液晶光学素子には動的
散乱(DS)及び相転移(PC)の2つのモードが知られて
いる。DSモードは水平もしくは垂直配向処理を行なった
透明電極付基板に、導電性物質を添加した誘電異方性が
負の液晶を封入したものであり、電圧を印加しない透過
状態と、しきい値電圧より高い電圧印加により動的散乱
を生じさせ、透過率を低下させた状態との二状態を制御
するものである。またPCモードは、必要に応じて配向処
理した透明電極付基板にコレステリック液晶封入し、電
圧印加の有無によりホメオトロピック配列のネマチック
相(透過)とフォーカルコニック配列もしくはプレーナ
配列のコレステリック相(散乱)の二状態を制御するも
のである。DSモード、PCモードのいずれも偏光板を使用
しないため、広い視角が得られる利点はあるものの、前
者は液晶中に導電性物質を添加した電流効果型であるた
め、消費電力が大きくなる、液晶の信頼性が低下すると
いった欠点を有している。
一方、後者においても動作電圧が、(電極間距離/液
晶のピッチ)に依存するため、大面積化しようとする場
合、高い精度で均一なギャップを必要とするといった困
難な問題を有している。
一方、H.G.Craigheadらが、Appl.Phys.Lett.,40
(1)22(1982)に開示した方法は、液晶が屈折率異方
性を有する特徴をいかしたものであり、具体的には液晶
を多孔体に含浸させ、電界印加の有無により液晶の屈折
率を変化させ、多孔体との屈折率を調節することによ
り、透過と散乱とを制御するものである。この方法は偏
光板を用いることなく原理的DSモード、PCモードがもつ
欠点を克服することが可能であり有用な方法である。同
様の素子はJ.L.Fergasonらがポリビニルアルコールを使
ってマイクロカプセル化したネマチック液晶により(特
表昭58-501631号)、またK.N.Pearlmanらは種々のラテ
ックス取り込み液晶により(特開昭60-252687号)、ま
たJ.W.Doaneらは、エポキシ樹脂中に液晶を分散硬化さ
せる方法(特表昭61-502128号)で作成している。
H.G.Craigheadらの方法は多孔体への含浸といった手
段をとっているため、使用する多孔体の孔や溝のサイズ
にばらつきがある、液晶の含浸が難しい、多孔体と液晶
の量比に自由度がないといった問題点から、透過率変化
が十分とれない、素子作成が困難であるといった欠点を
有していた。またJ.L.Fergasonら、K.N.Pearlmanらによ
る素子は、素子作成の際、水溶性ポリマーを使ったり、
水に乳化分散したポリマーを使用するため、耐水性に劣
り、その結果、白濁化・膨潤し、物理的性質の低下をき
たすといった欠点を有していた。また、J.W.Doaneらの
方法にエポキシ樹脂を紫外線で硬化する方法が開示され
ているが、エポキシ樹脂はイオン重合はするがラジカル
重合はしないため、ルイス酸やプロトン酸の塩を紫外線
で分解させ生じた酸で重合を行なうものである。このた
め、塩の分解の際生じる副生物や、遊離の酸により、素
子の外観品位や信頼性に劣るといった欠点を有してい
た。
このような欠点を防止すべく本出願人は、液晶物質と
光硬化性ビニル系化合物を使用して、溶液の相分離によ
り硬化物の中に液晶が分散されている液晶光学素子を製
造することを提案している。
[発明の解決しようとする課題] しかし、これらの液晶光学素子は、通常特定の色が付
いていなく、白濁と透明との間で変化するものである。
また、通常のゲストホスト型液晶表示素子のように、
液晶中に二色性染料等の染料を添加して色を付けること
も考えられるが、光重合の際に染料が褪色しやすいとい
う問題点を有しており、製造された液晶光学素子の色が
褪せてしまう危険性が高いものであった。
さらに、基板に色を付けて、色を示すことも考えられ
たが、透過、散乱時に同じ程度の色が付いてしまい、電
圧の印加、非印加の2状態でのコントラストには影響が
なく、色を付けるとともに、この2状態でのコントラス
トを大きくすることが望まれていた。
[課題を解決するための手段] 本発明は、前述の課題を解決すべくなされたものであ
り、一対の電極付基板間に液晶物質を含有させた層を挟
持してなる液晶光学素子において、得られる硬化物の屈
折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no)、異常
光屈折率(ne)または液晶物質がランダムに配向した
場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するように選ば
れた光硬化性ビニル系化合物及び液晶物質の溶解物とそ
の溶解物に対する溶解度が0.1wt%以下である顔料とか
らなる混合物を一対の電極付基板間に保持し、光露光に
より、光硬化性ビニル系化合物を重合硬化させ、液晶物
質と硬化物との相分離を固定化したことを特徴とする液
晶光学素子及びこの外側に補強板を積層して補強したこ
とを特徴とする補強された液晶光学素子を提供するもの
である。
また、これらの液晶光学素子と、それに電圧を印加す
る駆動手段とからなることを特徴とする調光体及びこれ
らの液晶光学素子を複数個組合せ、夫々を個々の駆動可
能な駆動手段を設けたことを特徴とする表示装置を提供
するものである。
さらに、一対の電極付基板間に液晶物質と樹脂を含有
させた混合物を供給し、この混合物を硬化させる液晶光
学素子の製造方法において、この混合物として、得られ
る硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率
(no)、異常光屈折率(ne)または液晶物質がランダ
ムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致す
るように選ばれた光硬化性ビニル系化合物及び液晶物質
の溶解物とその溶解物に対する溶解度が0.1wt%イカで
ある顔料とからなる混合物を使用し、この混合物を一対
の電極付基板に保持し、光を照射することにより、光硬
化性ビニル系化合物を重合硬化させ、液晶物質と硬化物
との相分離を固定化したことを特徴とする液晶光学素子
の製造方法を提供するものである。
本発明の素子は、液晶と光硬化性ビニル系化合物が、
溶解した均一状態から、光硬化過程を経ることにより、
ネマチック液晶と硬化物とを細い不均一状態で固定化さ
せるので、液晶と硬化物の分布が一様となり、外観品
位、生産性に優れた素子といえる。
本発明では、電圧を印加していない状態または印加し
ている状態のいずれか一方で、光露光により硬化させら
れた硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率
(no)、異常光屈折率(ne)または液晶物質がランダ
ムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致す
るようにされる。
これにより得られた硬化物の屈折率と液晶物質の屈折
率とが一致した時に光が透過し、一致しない時に光が散
乱(白濁)することになる。
この特性を生かして、本発明の液晶光学素子は調光体
に使用するとその効果が大きい。
また、本発明の素子は、得られる硬化物の屈折率が、
使用する液晶物質の屈折率をnoまたはneと一致させて
おくことにより、電界が印加されていない場合は、配列
していない液晶物質と、硬化物の屈折率の違いにより、
散乱状態(つまり白濁状態)を示し、また電界を印加し
た場合は、液晶物質が配列し、液晶の屈折率(noある
いはne)と光硬化により得られる硬化物の屈折率とが
一致することにより透過状態を示すものであり、可逆的
な調光機能をもつすぐれた素子と言える。
特に電界を印加した際の液晶の配向が、基板面に対し
垂直である方が透過率が上昇するので、得られる硬化物
の屈折率が、使用する液晶物質のnoと一致するように
選ばれた光硬化性ビニル系化合物と、誘電異方性が正の
ネマチック液晶物質とを組みあわせて使用した方が好ま
しい。
また、本発明の素子は、光露光により硬化させられた
硬化物の屈折率が、使用する液晶物質がランダムに配向
した場合の屈折率(nx)と一致するようにされること
もできる。ここでいうランダムに配向するとは、全ての
液晶分子が基板面に対して平行又は垂直に配列している
のでなく、硬化物の網目の影響により種々の方向を向い
ていることを表わす。
この場合には、電界が印加されていない場合は、配列
していない(ランダムに配向)液晶物質と、硬化物の屈
折率が一致しているため、透過状態を示す。
逆に、電界を印加した場合には、液晶物質が配列し、
液晶の屈折率(noあるいはne)と光硬化により得られ
た硬化物の屈折率とが一致しなくなり、散乱状態(つま
り白濁状態)を示すこととなる。これにより電圧を印加
しない状態で透明の素子が得られるが、光硬化により得
られた硬化物が網目状に存在し、液晶がこの硬化物の影
響を受けランダムに配向しているのと同様の状況にある
ため、均一な状態とすることが難しいという問題点があ
る。これは、前者のように垂直または水平に配向させた
場合には、均一に配向させやすいが、ランダムに配向さ
せるのは、マクロ的にみればダンダムであっても、部分
的にみれば配向状態が微妙に異なり、屈折率の差を生
じ、これがムラとなって見え易いためである。
なお、本発明ではこの硬化物の屈折率と、使用する液
晶物質の屈折率(no、ne、nxのいずれか)とを一致
させるものであるが、この一致とは完全に一致させるこ
とが好ましいものであるが、透過状態に悪影響を与えな
い程度に、ほぼ一致するようにしておけば良い。具体的
には、屈折率の差を0.15程度以下にしておくことが好ま
しい。これは、液晶物質により硬化物が膨潤して、硬化
物が本来持っていた屈折率よりも液晶物質の屈折率に近
づくため、この程度の差があっても、光はほぼ透過する
ようになる。
本発明で使用される、光硬化性ビニル系化合物は、硬
化速度を速めたいなら、光硬化開始剤を加えるなどして
よく、ラジカル種により光硬化可能なものであれば、外
観品位、信頼性にすぐれた素子を作成することができ
る。この光硬化性ビニル系化合物は化合物自身が光反応
性をもつもの、光照射によって生成した物質により硬化
が誘起されるものであってもよく、大別すると、光照射
によって分解硬化するものと、重合硬化するものに分類
される。重合硬化するものは、さらに光二量化するもの
と重合高分子化するものに分けられる。前者はビニル基
の中でも、シンナモイル基やシンナミリデン基をもつも
のが多く、たとえばポリケイ皮酸ビニル、ポリシンナミ
リデン酢酸ビニル、フェニレンジアクリル酸エステルな
どが例示される。後者は、モノマーやオリゴマーが光に
より活性化されて、相互にあるいは他のポリマーやオリ
ゴマー、モノマーと重合硬化するものであり、ビニル基
の中でもアクリロイル系、アリル系、スピラン系、ビニ
ルベンゼン系のモノマー、オリゴマー、ポリマーなどが
あげられる。具体的には、モノアクリレート、ジアクリ
レート、N−置換アクリルアミド、N−ビニルピロリド
ン、スチレン及びその誘導体、ポリオールアクリレー
ト、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレー
ト、エポキシアクリレート、シリコーンアクリレート、
フロロアルキルアクリレート、ポリブタジエン骨格を有
するポリアクリレート、イソシアヌル酸骨格を有するポ
リアクリレート、ヒダントイン骨格を有するアクリレー
ト、不飽和シクロアセタールなどに代表される単官能及
び多官能ビニル基を有する化合物が例示される。
本発明では、これら種々の光硬化性ビニル系化合物を
使用できるが、アクリロイル系化合物を使用すること
が、光露光後の液晶と硬化物の相分離状態及びその均一
性にすぐれていること、また光露光による硬化速度が速
く硬化物が安定であることから好ましい。なお、ここで
いうアクリロイル系化合物のアクリロイル基は、α位、
β位の水素がフェニル基、アルキル基、ハロゲン原子、
シアノ基等で置換されていてもよい。
本発明では、これらの光硬化性ビニル系化合物の内、
光照射によって重合硬化するもの、特に重合高分子化す
るオリゴマーを含有するものが好ましい。
具体的には、光硬化性ビニル系化合物としてビニル基
を2個以上含有するアクリルオリゴマーを15〜70wt%含
有することが好ましく、光硬化後に硬化に伴う収縮が少
なく、液晶光学素子に微小なクラックが発生しにくく、
成形性が良好となる。この微小クラックが多くなれば、
光透過状態での光の透過率が低下する傾向となり、素子
の性能が低下する。このアクリルオリゴマーの粘度は高
すぎても低すぎても成形性に悪影響を与えるので50℃で
150〜500,000cps程度とすることが好ましい。
光硬化性ビニル系化合物の残りの部分は、ビニル系の
モノマーが使用でき、特に、アクリル系のモノマーがア
クリルオリゴマーと相性が良く好ましい。
本発明で使用することが好ましいアクリルオリゴマー
としては、以下に示す一般式(I)の構造を有する。
CH2=CH−CO−O−X−CO−CH=CH2 (I) このXで表わされる部分は、ポリオール、ポリエステ
ル、エポキシ、ウレタン、ヒダントイン等の骨格から選
ばれれば良く、少なくとも両側にアクリル酸の構造(CH
2=CH−COO−)を持っていれば良い。具体的には、以下
のような構造がありうる。
CH2CH2n、C36n等のR−On (Rはアルキレン基、R′は水素またはアルキル基を表
わし、フェニレンで置換もしくはシクロヘキシレンで置
換されていてもよい。また、同一構造式中に複数のR、
R′等がある場合には、全てが同一の基でも良いし、夫
々異なっていてもよい。以下も同じ。) 尚、これらの骨格は単なる例示にすぎなく、素子の形
状、特性等を考慮して適宜選択すれば良い。
また、光硬化性ビニル系化合物は、単独もしくは複数
混合で用いてもよく、素子作成に必要な改質剤、作成し
た素子の改質剤などを含んでいてもよい。具体的には、
架橋剤、界面活性剤、希釈剤、増粘剤、消泡剤、接着性
付与剤、安定剤、吸収剤、重合促進剤、連鎖移動剤、重
合禁止剤などを含んでいてもよい。
本発明の素子で使用する光硬化性ビニル系化合物は、
前述の要件を満たした種々の材料の中から、液晶物質の
屈折率、液晶物質との溶解性を勘案して選択すればよ
い。
また、光硬化開始剤は、ベンゾインエーテル系、ベン
ゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系な
どが例示される。
本発明で使用される液晶物質は、ネマチック液晶物
質、スメクチック液晶物質等があり、単独で用いても組
成物を用いても良いが、動作温度範囲、動作電圧など種
々の要求性能を満たすには組成物を用いた方が有利とい
える。特に、ネマチック液晶の使用が好ましい。
また、使用される液晶物質は、光硬化性ビニル系化合
物に均一に溶解し、光露光後の硬化物とは、溶解しな
い、もしくは困難なものが必要であり、組成物を用いる
場合は、個々の液晶物質の溶解度ができるだけ近いもの
が望ましい。
本発明の素子を製造する際、光硬化性ビニル系化合物
と液晶物質とは5:95〜45:55程度の溶解混合物とすれば
よい。液状ないしは粘稠物として使用されればよい。
本発明の素子を製造する際、調製する光硬化性ビニル
系化合物と液晶物質との混合物は液状であっても粘稠物
であっても均一に溶解していれば良く、素子の製造方法
によって最適なものを選べば良い。
本発明では、この光硬化性ビニル系化合物と液晶物質
との溶解物に、所望の色の顔料を添加する。この顔料と
しては、前記溶解物に分散性が良いものであることが必
要であり、そのためにはその粒径が小さいことが好まし
く、具体的には2μm以下のものが好ましい。また、本
発明の液晶光学素子では、基板間隙が狭い場合もあり、
顔料の導電性は低いことが好ましい。より具体的には、
その比抵抗が104Ωcm以上であることが好ましい。
また、顔料は、光重合を妨害するものであってはなら
ない。そのため、前記溶解物に対する溶解度は0.1wt%
以下とする。顔料は、上記の条件を満足するものであれ
ば、何でも良く、無機系、有機系を問わず、チタン雲母
等の干渉色等が用いられる。また、UV硬化インキ、UV硬
化塗料として市販されている混合物を用いてもよい。
本発明は、例えば、In2O3-SnO2,SnO2等の透明電極付
のガラス基板が、相対向するように配して周辺をシール
したセルには、液状で注入した方が一般に便利であり、
透明電極付のプラスチック、ガラス等の基板に塗付し、
対向する基板を重ね合わせようとする場合には、一般に
粘稠状態の方が便利である。
基板間ギャップは、5〜100μmにて動作することが
できるが、印加電圧、オン・オフ時のコントラストを配
慮すれば、7〜40μmに設定することが適当である。
このようにして、基板に保持した混合物を、光露光に
より、液晶物質と硬化物との相分離状態で固定化する。
なお、ここで言う光露光とは、一般に紫外線照射あるい
は、電子線照射を意味する。
硬化物の屈折率を液晶物質のnoまたはneと一致させ
る場合には、光露光前は、基板に保持された内容物は均
一に溶解しているめ有色透明であるが、光露光後は配列
していない液晶物質と硬化物による屈折率散乱のため有
色白濁状態となる。こうして作成した本発明の素子は、
電圧印加することにより、液晶物質が配列し、硬化物と
屈折率が一致するため有色透過状態となる。
また、硬化物の屈折率を液晶物質の屈折率(nx)と
一致させた場合には、光露光前は、基板に保持された内
容物は均一に溶解しているため有色透明であり、光露光
後は配列していない液晶物質と硬化物による屈折率が一
致するため有色透過状態となる。こうして作成した本発
明の素子は、電圧印加することにより、液晶物質が配列
し、硬化物と屈折率がずれて散乱するため有色白濁状態
となる。
本発明では、さらに基板に着色基板を使用したり、カ
ラーフィルターを積層したりして特定の色を付けること
もできる。
本発明では、液晶物質を溶媒として使用し、光露光に
より光硬化性ビニル系化合物を硬化させるため、硬化時
に不要となる単なる溶媒や水を蒸発させる必要がない。
このため、密閉系で硬化できるため、信頼性が高く、か
つ、光硬化性ビニル系化合物で2枚の基板を接着する効
果も有するため、シール剤を不要にすることもできる。
このため、一方の電極付基板上に光硬化性ビニル系化
合物と液晶物質との溶解物と、顔料との混合物を供給
し、さらにその上に他方の電極付基板を重ね合せ、その
後、光を照射して硬化させるという生産性の良い製造方
法が採用できる。
特に、電極付基板にプラスチック基板を使用すること
により、連続プラスチックフィルムを使用した長尺の液
晶光学素子が容易に製造できる。
このような液晶物質と光硬化性ビニル系化合物の硬化
物マトリックスによる液晶を使用することにより、大面
積にしても、上下の透明電極が短絡する危険性が低く、
まつ、通常のツイストネマチック型の表示素子のように
配向や基板間隙を厳密に制御する必要もなく、大面積を
有する液晶光学素子及びそれを使用した液晶調光体を極
めて生産性良く製造できる。なお、光の透過状態のムラ
を少なくするためには、基板間隙はある程度一定である
方が良い。このため、ガラス粒子、プラスチック粒子、
セラミック粒子等の間隙制御用のスペーサーを基板間隙
に配置する方が好ましい。具体的には、基板上に光硬化
性ビニル系化合物、液晶物質及び顔料の混合物に基板間
隙制御用のスペーサーを含有させて供給するが、混合物
を供給前または後にスペーサーを供給して、他方の基板
を重ね合わせるようにすれば良い。この場合、重ね合わ
せた後に加圧し、その後、硬化させることにより、より
均一な基板間隙になりやすい。
このような液晶光学素子は、表示素子としても使用可
能であるが、大面積化が容易であること及び後で切断し
て所望のサイズにできること等から調光体として使用し
た場合に好適である。調光体として使用される場合に
は、通常は透過型であるため、電極は透明電極とされ
る。もちろん、その一部に低抵抗化するための金属リー
ド部を併設したりしてもよい。また、調光鏡として使用
する場合には、一方の電極を反射電極としてもよい。
この液晶光学素子は、基板がプラスチックや薄いガラ
スの場合にさらに保護のためにプラスチックやガラス等
の補強板を積層したり、基板を強化ガラス、合せガラ
ス、線入ガラス等にしてもよい等種々の応用が可能であ
る。
特に、電極付基板としてプラスチック基板を使用して
液晶光学素子とし、電極取り出し線を付けて、これを液
晶光学素子よりもやや大きい2枚の補強板、特にガラス
板間にポリビニルブチラール等の接着性材料層を介して
挟持して、加熱又は光照射により、接着性材料層を硬化
させて、液晶光学素子と補強板とが一体化し合せガラス
状にして使用することが好ましい。中でも接着性材料を
ポリビニルブチラールとすることにより、通常の合わせ
ガラスと極めて類似した補強構造とすることができる。
この液晶光学素子を製造するには、所望の形状の基板
を2枚準備して、これを組合せて液晶光学素子を製造し
てもよいし、連続プラスチックフィルム基板を使用した
り、長尺ガラス基板を用いて製造して、後で切断する方
式で製造してもよい。
この液晶光学素子を用いて、駆動手段を付加した調光
体の用途としては窓、天窓、間仕切り、扉等の建築材
料、窓、ムーンルーフ等の車両用材料、各種電気製品用
のケース、ドア、蓋等の材料がある。
また、この調光体を使用して、種々の物体を配置する
配置手段と組み合せることにより、各種商品を展示する
ショーウインドウ、ショーケース等の物体展示体に使用
することもできる。これには、ショーケースに使用して
通常は白濁して中が見えないが、電圧を印加して透明に
すれば中が見えるというような応用もある。
また、液晶光学素子を複数個組合せて、夫々を個別に
駆動可能にし、文字や図形を表示するという表示装置に
も使用できる。例えば、10cm角の液晶光学素子を16×16
ビットになるように配置し、漢字を表示することによ
り、従来の液晶表示素子ではできなかったような1文字
が1m以上の大型表示装置も可能となる。
本発明の液晶光学素子は、電圧を印加する時には、液
晶の配列が変化するような交流電圧を印加すればよい。
具体的には、5〜100Vで10〜1000Hz程度の交流電圧を印
加すればよい。
また、電圧を印加しない時には、電極間をオープンに
するか短絡すればよい。これらの内でも、電極間のイン
ピーダンス、即ち、電極のインピーダンス、端子部での
連続インピーダンス、回路インピーダンスの合計インピ
ーダンスが、ネマチック液晶物質と硬化物との層のイン
ピーダンスよりも低くなるようにすることにより、電圧
を切った時の液晶の応答が速い。
特に、電極間のインピーダンスが、ネマチック液晶物
質と硬化物との層のインピーダンスの1/10以下になるよ
うにすることが好ましい。このため、電極のインピーダ
ンス及び端子部での接続インピーダンスが高い場合に
は、回路のインピーダンスを下げることが好ましい。
こにょうに自己放電回路を形成することにより、通常
の液晶光学素子に比して素子自体の有するキャパシタン
スが非常に大きいものであっても、電極間に蓄積された
電荷が速やかに放電され、液晶がランダムな配向に戻る
運動を阻害しなく、透過と散乱との間の変化が速くな
る。
本発明の素子は、表示用素子、とりわけ従来の液晶表
示素子が困難であった、大面積表示素子、湾曲状での表
示素子等に利用できるほか、大面積の調光素子、光シャ
ッター等、数多くの利用が考えられる。
また、電球等の光源の前に設置して、例えばフォグラ
ンプと通常のランプの切替を電気的に行う用途にも使用
できる。
また、本発明では一方の電極を鏡面反射電極として鏡
として使用してもよく、この場合には裏側の基板は不透
明なガラス、プラスチック、セラミック、金属製とされ
てもよい。
また、カラーフィルターを併用したり、他のディスプ
レーであるTN液晶表示素子、エレクトロクロミック表示
素子、エレクトロルミネッセンス表示素子等と積層して
使用してもよく、種々の応用が可能である。
また、カラーフィルターや、色付き中間膜を挟んだ
り、蒸着等によって得られた着色ガラス、エレクトロク
ロミック調光体等と一定の距離を隔てて複層化すること
により、透過−散乱の制御とともに色変化を伴った液晶
調光体とすることもできる。なお、複層化には、スペー
サーを用いて一定間隔を保ち、その周囲を接着剤で密封
する通常の複層ガラスの製法を利用することができる。
[実施例] 以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
実施例1 n−ブチルアクリレート12部、アクリルオリゴマー
(東亜合成化学社製M−1200、粘度300,000cps(50
℃))24部、光硬化開始剤としてメルク社製ダロキュア
ー1116を、1.4部、液晶BDH社製E−8を64部からなる溶
液に、紫外線硬化型インクとして東華色素化学社製UV16
1−標準色紅を1.5部均一に分散させた。さらに、14μm
スペーサーを加えてよく分散させた。その混合物をITO
付きポリエステルフィルム上に供給し、ITO付きポリエ
ステルフィルムを重ね合せ、紫外線照射装置(三菱電機
社製ネオルミスーパー(30W))使用により約90秒光露
光して素子を作製した。
この素子をC光源から10cmの所に置き、C光源の反対
側50cmの所にスポット径4mmの受光部を置き、光の透過
率を30℃において測定した。
電圧印加(AC100V,50Hz)前後の透過率は1.7%と73.1
%であった。その比(コントラスト)は43であった。
これと比較のために、顔料を添加しない他は実施例1
と同様にして液晶光学素子を製造した(比較例1)。こ
の比較例の素子の電圧印加(AC100V,50Hz)前後の透過
率は2.8%と82.3%であった。その比(コントラスト)
は29であった。
このことからみて、実施例1の素子のコントラストが
高いことが分かる。
さらに、この実施例1の液晶光学素子を2枚の補強用
のガラス板の間に2枚のポリビニルブチラール膜を介し
て挟持し、オートクレーブ内で加熱加圧して一体化させ
た。
このようにして補強板と一体化された液晶光学素子
は、外圧に対して安全であり、信頼性も高いものであっ
た。
実施例2 実施例1の紫外線硬化型インクのUV161−標準色紅の
代りに、東華色素化学社製紫外線硬化型インクUV161−1
95マゼンタを用いた他は実施例1と同様にして液晶光学
素子を製造した。
電圧印加(AC100V,50Hz)前後の透過率は1.9%と68.4
%であった。その比(コントラスト)は36であった。
実施例3〜6 実施例1の紫外線硬化型インクのUV161−標準色紅の
代りに、東華色素化学社製紫外線硬化型インクUV161−1
15金赤(実施例3)、UV161−280紺藍(実施例4)、UV
161−405グリーン(実施例5)、UVBF−標準色藍(実施
例6)を用いて、実施例1と同様にして液晶光学素子を
製造した。これらはいずれも高いコントラストを示し
た。
実施例7 実施例1の紫外線硬化型インクのUV161−標準色紅の
代りに、東華色素化学社製紫外線硬化型インクUV161−
標準色黒を用いて、実施例1と同様にして液晶光学素子
を製造した。
この素子は、高いコントラストを示したが、顔料がカ
ーボンブラックという導電性の顔料を含んでいたため、
両基板の電極間での短絡を生じやすいという問題点を有
していた。
実施例8 n−オクチルアクリレート7部及び2−ヒドロキシエ
チルアクリレート15部、アクリルオリゴマー(東亜合成
(株)製M−1200)14部、光硬化開始剤としてベンゾイ
ンイソプロピルエーテル3部、液晶E−8を64部を均一
に溶解し、これに実施例1と同じ紫外線硬化型インクと
して東華色素化学社製UV161−標準色紅を1.5部均一に分
散させた。この混合物をガラス板に仮接着したITO付ポ
リエステルフィルム基板上に塗付し、次いで、14μmス
ペーサーを散布し、その後、同様にガラス板に仮接着し
たITO付ポリエステルフィルム基板を重ね合せた。その
後、紫外線照射装置(東芝:トスキュアー400)により
約60秒光露光すると、露光面が白濁した素子が得られ
た。
電圧印加(AC100V,50Hz)前後の透過率は2.7%と72.0
%であった。なお、顔料を添加していない比較例では、
夫々4.6%と77.4%であった。
実施例9 実施例1で製造した液晶光学素子を、駆動をするため
の交流電圧(AC100V,50Hz)を印加しうる駆動手段に接
続し、窓に嵌込んで、調光窓として使用した。
この調光窓は、電圧を印加しない状態では赤く濁って
反対側が見えないが、交流電圧を印加すると全面が薄く
赤く透明となって反対側が見えた。
実施例10 実施例1で製造したガラス板で補強された液晶光学素
子を、実施例9と同様に駆動をするために交流電圧(AC
100V、50Hz)を印加しうる駆動手段に接続し、窓に嵌込
んで、調光窓として使用した。
この調光窓は、実施例9と同様に、電圧を印加しない
状態では赤く濁って反対側が見えないが、交流電圧を印
加すると全面が薄く赤く透明となって反対側が見えた。
これは両面にガラス板を貼り付けして合せガラス状の
構造を採っているため、極めて安全性の高いものであっ
た。
これの外面に紫外線カットフィルターを貼り付けした
調光窓は、太陽光の直射光に当たる部分に使用しても、
劣化がほとんど無かった。
実施例11 実施例1の素子を8×8個で1文字を表示できるよう
にしてドット表示型の表示装置を作成した。
この表示装置は、各ドットを構成する素子に電圧を印
加しない状態では赤く濁って反対側が見えないが、交流
電圧を印加すると全面が薄く赤く透明となって反対側が
見えた。
実施例12 実施例3で製造したガラス板で補強された液晶光学素
子を実施例9と同様に駆動手段に接続し、窓に嵌込ん
だ。
この素子の視点とは逆の面に12mm離して青色のポリビ
ニルブチラール中間膜(三菱モンサント(株)製#5056
00)を挟んだ着色合わせガラスを嵌込み、複層ガラス化
した。
この複層ガラスの液晶光学素子は電圧を印加しない時
には、散乱状態にあり、薄い金赤色で視線を遮っていた
が、交流電圧(AC100V、50Hz)を印加した時には液晶光
学素子は透明になり、液晶光学素子と合わせガラスとの
混色の薄い藤色となり、複層ガラス全体が透過状態とな
った。
[発明の効果] 以上の如く、本発明は新規な液晶光学素子及びその製
造方法並びにそれを用いた調光体及び表示装置を提供す
るものであり、得られる硬化物の屈折率が、使用する液
晶物質の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)また
は液晶物質がランダムに配向した場合の屈折率(nx
のいずれかと一致するように選ばれた光硬化性ビニル系
化合物とネマチック液晶物質とを均一溶解状態として、
これに顔料を添加した混合物を一対の電極付基板間に保
持し、光露光により、光硬化性ビニル系化合物を硬化さ
せ、ネマチック液晶物質と硬化物との相分離を固定化し
た液晶光学素子である。
したがって、本発明は偏光板を必要とせず、外観品
位、生産性にすぐれた素子であり、表示用、とりわけ大
面積、湾曲状での表示に、また大面積での調光、光シャ
ッター等に広く利用することができる。
本発明では光硬化性ビニル系化合物を使用しているた
め、素子の信頼性が高く、合せガラス様の構造を有して
おり、外圧による破損を生じにくく安全性が高い。
さらに、この基板の少なくとも一面に保護用の補強板
を設けることにより、安全性が向上し、特に、両面に補
強板を設けることにより破損を生じにくくなる。
特に、基板上にネマチック液晶物質、光硬化性ビニル
系化合物、さらに必要に応じて光硬化開始剤との溶解物
に顔料を添加した混合物を供給し、その上に他方の基板
を載置することにより、大面積の素子を極めて生産性良
く製造できる。このため、基板としてガラス基板を使用
した場合にもかなり長尺の基板が使用できるし、プラス
チック基板では連続フィルムによる連続プロセスも可能
となる。
特に、基板にプラスチック基板を衣装した場合には、
生産性は良い反面、強度が劣っているため、大面積化し
た際に破損し易くなったり、湾曲したりする。このた
め、両面に補強板を設ける効果が大きい。中でも、補強
板としてガラス板を使用し、接着性材料で接着すること
により、合わせガラスと類似の構造となり、安全で信頼
性が高くなる。
又、本発明の液晶光学素子は、光硬化性ビニル系化合
物を使用することにより、液晶物質と硬化したビニル系
化合物とが細かな3次元網目状マトリックスを構成し
て、液晶物質が分散していることとなるため、素子を製
造後所望の大きさに切断して使用することもできる。
この場合、マトリックス中の液晶物質の分散体が互い
につながっているため、電圧印加の際、液晶が均一に配
列し易い。このため、マイクロカプセル状や独立した液
晶粒から構成される液晶光学素子と比べて、透明状態で
のヘーズが小さく、駆動電圧が低くてすむ。また、白濁
状態の際、素子が希望する色以外の色に着色しやすくな
るなることを防ぐといった効果もある。
特に、光硬化性ビニル系化合物として、原料にアクリ
ルオリゴマーを使用することにより、硬化後の微小クラ
ックが少なく、電圧印加による透過率の変化が大きいも
のとなる。
本発明は、この外、本発明の効果を損しない範囲内で
種々の応用が可能である。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一対の電極付基板間に液晶物質を含有させ
    た層を挟持してなる液晶光学素子において、得られる硬
    化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率
    (no)、異常光屈折率(ne)または液晶物質がランダ
    ムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致す
    るように選ばれた光硬化性ビニル系化合物及び液晶物質
    の溶解物とその溶解物に対する溶解度が0.1wt%以下で
    ある顔料とからなる混合物を一対の電極付基板間に保持
    し、光露光により、光硬化性ビニル系化合物を重合硬化
    させ、液晶物質と硬化物との相分離を固定化したことを
    特徴とする液晶光学素子。
  2. 【請求項2】請求項1の液晶光学素子の外側に補強板を
    積層して補強したことを特徴とする補強された液晶光学
    素子。
  3. 【請求項3】請求項1または2の液晶光学素子と、それ
    に電圧を印加する駆動手段とからなることを特徴とする
    調光体。
  4. 【請求項4】請求項1または2の液晶光学素子を複数個
    組合せ、夫々を個々に駆動可能な駆動手段を設けたこと
    を特徴とする表示装置。
  5. 【請求項5】一対の電極付基板間に液晶物質と樹脂を含
    有させた混合物を供給し、この混合物を硬化させる液晶
    光学素子の製造方法において、この混合物として、得ら
    れる硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率
    (no)、異常光屈折率(ne)または液晶物質がランダ
    ムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致す
    るように選ばれた光硬化性ビニル系化合物及び液晶物質
    の溶解物とその溶解物に対する溶解度が0.1wt%以下で
    ある顔料とからなる混合物を使用し、この混合物を一対
    の電極付基板間に保持し、光を照射することにより、光
    硬化性ビニル系化合物を重合硬化させ、液晶物質と硬化
    物との相分離を固定化したことを特徴とする液晶光学素
    子の製造方法。
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