JP2532119B2 - 多官能化エポキシ樹脂の製造方法 - Google Patents

多官能化エポキシ樹脂の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は多官能化エポキシ樹脂を製造するための改良
方法に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明
は、特に耐熱性が要求される電子部品などの材料として
好適な、加水分解性ハロゲンの少ない多官能化エポキシ
樹脂を効率よく製造する方法に関するものである。
従来の技術 従来、エポキシ樹脂は、優れた特性を有することか
ら、種々の分野において幅広く用いられており、また近
年、エレクトロニクス分野の急速な発展に伴い、半導体
素子などの封止材や、積層板、導電性ペースト材などの
電子部品の材料としての需要が伸びてきている。
ところが、この分野においては、電子部品の集積度の
増大に伴い、使用されるエポキシ樹脂に対しても、より
高度の品質のもの、例えば優れた耐熱性を有すると共
に、塩素イオン含量が1ppm以下で、かつ加水分解性塩素
含量が1000ppm以下であるものが要求されるようになっ
てきている。
エポキシ樹脂の耐熱性を向上させるためには、該エポ
キシ樹脂を多官能化することが必要であり、このエポキ
シ樹脂の多官能化の方法としては、従来、アルコール性
水酸基を有するエポキシ樹脂を、第四級アンモニウム塩
触媒の存在下、エピクロルヒドリンとアルカリ金属水酸
化物を用いて、該エポキシ樹脂のアルコール性水酸基を
グリシジル化して多官能化する方法が知られている。
[「ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエ
ンス(J.Appl.Polym.Sci.)」第19巻、第607〜617ペー
ジ(1975年)、米国特許第4,623,701号明細書]。
しかしながら、このエポキシ樹脂を多官能化する方法
においては、原料のアルコール性水酸基を有するエポキ
シ樹脂に含まれている加水分解性塩素が、そのまま多官
能化されたエポキシ樹脂中に移行すると共に、多官能化
反応において、加水分解性塩素が著しく増大するのを免
れない上、生成物から第四級アンモニウム塩を除去する
ことが困難であるなどの欠点がある。
他方、非プロトン性極性溶媒中において、フェノール
類とエピクロルヒドリンとをアルカリ金属水酸化物の存
在下に反応させてエポキシ樹脂を生成させる方法が提案
されている(東独特許第153,882号明細書、特開昭60-31
517号公報)。しかしながら、この方法においては、エ
ポキシ樹脂の多官能化については、なんら言及されてい
ない。
発明が解決しようとする問題点 本発明は、このような従来のエポキシ樹脂の多官能化
方法が有する欠点を克服し、特にエレクトロニクス分野
における耐熱性が要求される電子部品の材料などとして
好適な、加水分解性ハロゲンの少ない多官能化エポキシ
樹脂を効率よく製造する方法を提供することを目的とし
てなされたものである。
問題点を解決するための手段 本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究を重
ねた結果、アルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂と
1−ハロ−2,3−エピキシアルカンとを、特定の溶媒を
用い、第四級アンモニウム塩などの触媒を使用せずに、
アルカリ金属水酸化物の存在下に反応させることによ
り、その目的を達成しうることを見い出し、この知見に
基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アルコール性水酸基を有するエ
ポキシ樹脂と1−ハロ−2,3−エポキシアルカンとを、
溶媒としてスルホキシド化合物を用い、アルカリ金属水
酸化物の存在下で反応させることを特徴とする多官能化
エポキシ樹脂の製造方法を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明方法において用いられるアルコール性水酸基を
有するエポキシ樹脂としては、1分子当り、平均0.02〜
100当量、好ましくは0.05〜50当量の割合でアルコール
性水酸基を有するものが好適である。該アルコール水酸
基の含有量が0.02当量未満では、多官能化度が低くて本
発明の目的が十分に達せられないし、100当量を超える
と分子間反応が増大し、得られる多官能化エポキシ樹脂
はゲル化する傾向があり、好ましくない。
該アルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂として
は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェ
ノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ
樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、
ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキ
シ樹脂、カテコールジグリジルエーテル、エポキシクレ
ゾールノボラック樹脂などを挙げることができる。
本発明方法において用いられる1−ハロ−2,3−エポ
キシアルカンとしては、例えば1−クロロ−2,3−エポ
キシプロパン、1−ブロモ−2,3−エポキシプロパン、
1−クロロ−2−メチル−2,3−エポキシプロパン、1
−ブロモ−2−メチル−2,3−エポキシプロパン、1−
クロロ−2,3−エポキシブタン、1−クロロ−2,3−エポ
キシペンタンなどが挙げられるが、これらに限定される
ものではない。
本発明方法においては、これらの1−ハロ−2,3−エ
ポキシアルカンの使用量は、前記エポキシ樹脂1重量部
に対し、通常0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部
の範囲で選ばれる。この使用量が0.5重量部未満ではエ
ポキシ樹脂同士の分子間反応により高分子化が進むおそ
れがあるし、また20重量部を超えると1−ハロ−2,3−
エキポキアルカンの回収に時間と労力を有し、工業上不
利となり好ましくない。
本発明方法において用いられるアルカリ金属水酸化物
としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化リチウムなどが挙げられ、その使用量はアルコー
ル性水酸基1モルに対し、通常0.1〜2モル、好ましく
は0.8〜1.5モル、さらに好ましくは1.0〜1.2モルの範囲
で選ばれる。この使用量が0.1モル未満では多官能化が
十分に進行しなかったり、加水分解性ハロゲンの含量が
低減しなかったりして本発明の目的が十分に達成されな
いし、また1モルを超えると1−ハロ−2,3−エポキシ
アルカンの加水分解などの副反応が多くなる傾向が生
じ、好ましくない。
又、本発明方法において用いられるスルホキシド化合
物としては、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルス
ルホキシド、エチルメチルスルホキシドなどが挙げられ
るが、これらの中で、特にジメチルスルホキシドが好適
である。
これらのスルホキシド化合物は、それぞれ単独で用い
てもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、ま
たその使用量は、1−ハロ−2,3−エポキシアルカン1
重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜2
重量部の範囲で選ばれる。この使用量が0.1重量部未満
では多官能化が十分に進行しないし、また10重量部を超
えると生成物の回収に時間と労力を要し、工業上不利と
なり好ましくない。
次に、本発明方法の好適な実施態様の1例について説
明すると、まずアルコール性水酸基を含有するエポキシ
樹脂と1−ハロ−2,3−エポキシアルカンとを所定の割
合で混合したのち、この溶液に所要量のスルホキシド化
合物を加え混合し、次いでかきまぜながら所要量のアル
カリ金属水酸化物を加えて反応を行う。この反応は、通
常20〜140℃、好ましくは40〜120℃の範囲の温度におい
て行われる。この温度が20℃未満では反応に長時間を要
して実用的でないし、140℃を超えると反応が暴走する
おそれがあり、好ましくない。
さらに、反応を促進させるために反応中、1−ハロ−
2,3−エポキシアルカンと反応生成水とを共沸させるこ
とにより、該反応生成水を系外へ除去することが好まし
い。また、前記アルカリ金属水酸化物は、0.5〜5時間
程度要して少量づつ分割添加するか又は連続添加するの
が有利であり、一度に投入すると1−ハロ−2,3−エポ
キシアルカンの加水分解が促進されるので好ましくな
い。
反応終了後、過剰の1−ハロ−2,3−エポキシアルカ
ンを蒸留により除去したのち、残渣をメチルイソブチル
ケトンなどのケトン類やトルエンなどの芳香族炭化水素
などの難水溶性溶媒で溶解し、水洗によりスルホキシド
化合物を除去し、次いで蒸留により該難水溶性溶媒を除
去することによって、所望の多官能エポキシ樹脂が得ら
れる。
発明の効果 本発明方法によると、加水分解性ハロゲンの少ない耐
熱性に優れた多官能化エポキシ樹脂を効率よく製造する
ことができる。
本発明方法で得られた多官能化エポキシ樹脂は、特に
エレクトロニクス分野における耐熱性が要求される電子
部品の材料などとして好適に用いられる。
実施例 次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、
本発明はこれらの例によってなんら限定されるものでは
ない。
なお、例中の各特性は次の示す方法に従って測定し
た。
(1) 加水分解性塩素量 エポキシ樹脂をジオキサンに溶解し、1規定の水酸化
カリウムのエタノール溶液を加え、30分間煮沸した際に
脱離する塩素イオンを硝酸銀溶液で滴定し、該エポキシ
樹脂中の塩素原子を重量分率で表わしたものである。
(2) エポキシ価 樹脂100g中のエポキシ基の当量数で定義され、JIS K-
7236の方法に準拠した求めた。
(3) アルコール性水酸基価 樹脂100g中のアルコール性水酸基の当量数で定義され
る。
エポキシ樹脂を秤量してフラスコに入れ、ジオキサン
で溶解し、これに1.5N塩化アセチルトルエンを加えて0
℃に冷却したのち、ピリジンを加え60℃で1時間反応さ
せる。反応完結後、フラスコを氷水で冷却し、蒸留水を
加え過剰の塩化アセチルを分解したのち、冷アセトンを
加え、クレゾールレッド指示薬を滴下し、0.5NのNaOH/
エタノール溶液で滴定を行う。同時にブランクテストを
行い、塩化アセチル反応当量価(eq/100g)を求め、こ
の値からエポキシ価を差し引いた値で表わされる。
(4) 塩素イオン量 エポキシ樹脂をトルエン−メタノール溶液に溶解さ
せ、残留する塩素イオンを硝酸銀で滴定し、該エポキシ
樹脂中の塩素イオンを重量分率で表わしたものである。
実施例1〜12 温度計 アルカリ金属水酸化物を連続添加するための
滴下ロート、かくはん翼及び反応系中から蒸発する水
分、及び1−クロロ−2,3−エポキシプロパンを冷却液
化し、有機層と水層をその比重差で分離して有機層は反
応系内にもどし、水層は除去する冷却管付分離管を有す
る容量2lのバッフル付セパラブルフラスコを用いて、別
表に示す種類のエポキシ樹脂100gと1−クロロ−2,3−
エポキシプロパン330gを反応させた。この反応は、該表
に示す種類、量のスルホキシド化合物の存在下で該表に
示す量の水酸化ナトリウム水溶液を2時間連続滴下し、
この間反応温度を60℃に保ち、滴下終了後、1時間同じ
温度で保持して、反応を完結させた。
反応終了後、未反応の1−クロロ−2,3−エポキシプ
ロパンを減圧蒸留により除去し、この際生成する副生塩
とスルホキシド化合物を含む多官能化エポキシ樹脂を、
トルエン300gに溶解し、該副生塩とスルホキシド化合物
を、300gの水を5回使用して、水洗により除去したの
ち、トルエンを蒸留により除去した。
このようにして得られた多官能化エポキシ樹脂の加水
分解性塩素量、エポキシ価、塩素イオン量及びアルコー
ル性水酸基価を該表に示す。
比較例1〜6 実施例1で使用した同じ反応器具を使用し、スルホキ
シド化合物を用いずに、触媒として別表に示す第四級ア
ンモニウム塩を用いた以外は、実施例1と同様に実施し
た。その結果を該表に示す。
この表から、実施例1〜12における加水分解性塩素量
は180〜400ppmであるのに対し、比較例1〜6のそれ
は、いずれも1000ppm以上であり、使用したエポキシ樹
脂より高い値となっている。
さらに、比較例1〜6の残留する塩素イオン量は3〜
5ppmであり、実施例1〜12の0.3ppm以下に比べて、10倍
以上の値となっている。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂
    と1−ハロ−2,3−エポキシアルカンとを、溶媒として
    スルホキシド化合物を用い、アルカリ金属水酸化物の存
    在下で反応させることを特徴とする多官能化エポキシ樹
    脂の製造方法。
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