JP2522058Y2 - ドラム式測長貯留装置の制御装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、織機のドラム式測長貯
留装置において、ロングピックの発生時に、ドラム上で
よこ糸の巻量を自動的に補充する制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】実開昭６２−４６６７９号の公報は、ド
ラム式測長貯留装置を示している。そのドラム式測長貯
留装置では、回転ヤーンガイド駆動用のモータの回転量
が織機の主軸の回転量に追従するよう織機同期方式の下
に制御される。したがって、織機の運転中つまり製織中
に、ドラム上で、よこ入れに必要な巻数のよこ糸が自動
的に測長され、よこ入れ時まで貯留されていくことにな
る。

【０００３】上記の織機同期方式のものにおいて、織機
およびドラム式測長貯留装置の停止中に、よこ入れ不良
などの修復や調整のために、よこ糸自動補修装置や、測
長貯留装置の制御系の解舒押しボタンスイッチなどの操
作によって、所定の巻数のよこ糸がドラム上で解舒でき
るようになっている。このとき、停止中であることか
ら、回転ヤーンガイド駆動用のモータの同期制御が行わ
れていないため、ドラム上でよこ糸の貯留量が解舒巻数
だけ不足し、その後の最初のよこ入れで、ショートピッ
クのよこ入れ不良が発生することになる。したがって、
よこ糸の解舒操作後に、ショートピックのよこ入れ不良
の発生を未然に防止するために、ドラム上に解舒巻数分
に相当するよこ糸を手動によって貯留する操作が必要と
なる。

【０００４】

【従来技術の問題点】また、製織中に、ロングピックの
よこ入れ不良が発生したとき、ロングピックの余計に長
い分だけ、よこ糸の貯留量が少ないことになるから、何
の対策もしないまま、織機の運転を継続すると、その後
の最初のよこ入れ時に、ショートピックのよこ入れ不良
が発生する。

【０００５】

【考案の目的】したがって、本考案の目的は、ドラム式
測長貯留装置において、回転ヤーンガイド駆動用のモー
タを織機の回転量に追従して制御する織機同期方式の制
御系において、ロングピックの発生時に、ドラムの外周
面のよこ糸の貯留量を補正し、その後の最初のよこ入れ
時に、ショートピックの発生を未然に防止することであ
る。

【０００６】

【考案の解決手段】そこで、本考案は、織機の運転中
に、主軸の回転量をアップ入力とし、回転ヤーンガイド
を回転させるモータの回転量をダウン入力とするアップ
ダウン式のカウンタの偏差に応じて、所定のスピードで
上記モータの回転量を制御する織機同期方式の巻量制御
器により、静止状態のドラムの外周面に巻き付けて貯留
されるよこ糸の巻量を制御するとともに、この巻き付け
状態のよこ糸の係止および解舒を係止ピンの進退運動に
より行うドラム式測長貯留装置において、上記カウンタ
にはロングピック検出用フィーラからのロングピック発
生信号に応じて予め設定器に設定された所定の補充巻数
分に相当する補正信号を加算器により加算することによ
り、ロングピックの余計に長い分に対応して、ドラム上
のよこ糸の貯留不足分を自動的に補充するようにしてい
る。ここで、ロングピックの場合、ほとんどがドラム上
での１巻分の余計解舒となっているから、貯留不足分
は、１巻分つまり回転ヤーンガイドの１回転として設定
される。

【０００７】

【実施例】図１および図２は、本考案の制御装置１の構
成を示している。この制御装置１は、ドラム式測長貯留
装置２を前提とし、図１の巻量制御器３、および図２の
解舒制御器４によって組み立てられている。

【０００８】ドラム式測長貯留装置２は、モータ５によ
って回転ヤーンガイド６に回転運動を与え、給糸体７か
らよこ糸８を引き出して、静止状態のドラム９の外周面
に係止ピン１０で係止しながら巻き付けて測長し、かつ
よこ入れ時点まで貯留する。係止ピン１０は、ソレノイ
ド１１によってドラム９の外周面に向けて進退自在に設
けられており、ドラム９の外周面に突入した状態で、よ
こ糸８を係止し、よこ入れタイミングで後退することに
よって、ドラム９上でよこ糸８を解舒する。この解舒時
点で、よこ入れノズル１２は、流体をたて糸開口中に噴
射することによって、ドラム９からよこ糸８を引き出
し、たて糸開口中によこ入れしていく。

【０００９】ここで上記モータ５は、巻量制御器３によ
って制御される。巻量制御器３は、織機同期方式のもの
であり、例えば実開昭６２−４６６７９号公報に記載さ
れているように、デジタルフィードバックサーボ制御に
よって、織機の運転中に、織機の主軸１３の回転量に追
従して、モータ５を回転させ、よこ入れに必要なよこ糸
８をドラム９上で蓄えていく。

【００１０】すなわち、主軸１３の回転は、それに連結
されたシャフトエンコーダ１４によって検出され、織機
パルスとしてアップダウン形式のカウンタ１５のアップ
入力端に入力される。また、上記モータ５の回転量は、
それに連結されたシャフトエンコーダ１６によって検出
され、回転パルスとしてカウンタ１５のダウン入力端に
送り込まれている。

【００１１】したがって、カウンタ１５のカウント値
は、織機パルスを指令値とし、回転パルスをフィードバ
ック量とするデジタル的な偏差信号となっており、Ｄ／
Ａ変換器１７によってアナログ量に変換され、ゲイン補
正器１８を経て加え合わせ点１９に送り込まれ、偏差信
号と基本速度設定器２０からの基本速度信号との和の信
号として、接点２１のオン状態のときに、ドライバ２３
に送り込まれ、モータ５を駆動する。ここで、上記接点
２１は“Ｈ”レベルの運転信号の存在時に、リレー２２
によって駆動され、オンの状態に設定されている。

【００１２】このようにして、巻量制御器３は、製織中
に主軸１３の回転中すなわち“Ｈ”レベルの運転信号の
存在時に、基本速度信号および回転の偏差信号にもとづ
いてモータ５を駆動し、主軸１３の回転量に追従させて
回転ヤーンガイド６の回転量を制御していく。この結
果、モータ５の回転数（回転速度）は、図３に例示する
ように、基本速度値以上で、偏差信号によって設定され
る加減速度を変動量として変化する。この間のモータ５
の回転量は、シャフトエンコーダ１６によって検出さ
れ、カウンタ１５のダウン入力端に回転パルスとして帰
還されるため、カウンタ１５のカウント値が「０」にな
った時点で、モータ５は、基本速度値でのみ回転するこ
とになる。

【００１３】一方、運転中に、“Ｈ”レベルの運転信号
は、アンドゲート２４の一方の入力端に送り込まれてい
るため、解舒期間で“Ｈ”レベルの解舒タイミング信号
は、アンドゲート２４、オアゲート２５を経てドライバ
２６に与えられ、ソレノイド１１を駆動する。ソレノイ
ド１１は、よこ入れの期間中に係止ピン１０をドラム９
から後退させることによって、ドラム９の外周面で巻き
付け状態のよこ糸８をよこ入れに必要な巻数だけ解舒
し、よこ入れノズル１２によってよこ入れ可能な状態に
設定していく。

【００１４】織機の運転中つまり製織中に、よこ入れ不
良などで停止指令が出ると、“Ｈ”レベルの運転信号が
“Ｌ”レベルに変化するため、リレー２２は、接点２１
をオフの状態に設定して、モータ５の回転を直ちに停止
させる。また、アンドゲート２４は、解舒タイミング信
号の通過を禁止することによって、係止ピン１０をドラ
ム９の外周面に突出したままの状態に設定する。

【００１５】このあと、オペレータは、織機の停止状態
を確認し、よこ入れ不良のよこ糸８つまり不良糸の抜き
取りに必要な操作を行う過程で、解舒信号発生手段とし
ての解舒押しボタンスイッチ２７を操作して解舒指令を
出し、ドラム９上で不良糸の抜き取り作業のために、１
または２以上の所定の巻数のよこ糸８を解舒し、不良糸
の抜き取り作業を進める。

【００１６】すなわち、“Ｌ”レベルの運転信号がノッ
ト回路２８によって“Ｈ”レベルの信号としてアンドゲ
ート２９の一方の入力端に与えられているので、オペレ
ータが解舒押しボタンスイッチ２７をオンの状態に設定
すると、その“Ｈ”レベルの信号がアンドゲート２９の
出力端からオアゲート５４の一方の入力端に与えられ
る。

【００１７】このため解舒制御器４の内部のワンショッ
ト回路３０は、解舒指令に応じて所定のパルス幅の出力
を発生し、ダウンカウンタ３１をプリセットするととも
に、オアゲート３２を介しタイマ３３の入力となる。こ
のとき、タイマ３３は、図４に示すように、“Ｈ”レベ
ルの出力を時間ｔ１にわたって発生し、この出力をノッ
ト回路３５によって反転してドライバ２６を介しソレノ
イド１１に送ることにより、係止ピン１０を後退させ
る。

【００１８】また、後段のタイマ３４は、タイマ３３の
出力の立ち下がり後、“Ｈ”レベルの出力を時間ｔ２に
わたって発生し、これでダウンカウンタ３１をダウン方
向に「１」だけ歩進させる。このようにして、係止ピン
１０が時間ｔ１の期間にわたって後退し、その後の時間
ｔ２の期間にわたって前進しているため、巻き付け状態
のよこ糸８が係止ピン１０の後退中に、ドラム９で１巻
分だけ解舒される。

【００１９】ダウンカウンタ３１の計数値が「０」にな
らない限り、ダウンカウンタ３１の出力は“Ｈ”レベル
に設定されている。このため、アンドゲート３７は、ダ
ウンカウンタ３１の出力とノット回路３８からの“Ｈ”
レベルのタイマ３４の出力とを入力条件として、“Ｈ”
レベルの出力を発生することによって、再びタイマ３３
を動作させる。このようにして、１巻分の解舒動作が所
定回数にわたって継続的に行われる。

【００２０】このように、“Ｈ”レベルの解舒信号が入
力されると、解舒制御器４は、所定の解舒巻数に必要な
回数にわたって係止ピン１０を継続的に往復駆動するた
め、よこ糸８は、ドラム９の外周面で１巻分ずつ所定の
巻数だけ断続的に解舒されていく。なお、所定の解舒巻
数Ｎａは設定器３６によって予め設定され、アンドゲー
ト２９の出力すなわち解舒信号Ｓａにより設定器３６か
らダウンカウンタ３１へ入力されている。

【００２１】ダウンカウンタ３１の出力が“Ｈ”レベル
に設定されている間に、オアゲート３９は、“Ｈ”レベ
ルの噴射信号を発生し、これをよこ入れ制御系に送るこ
とによって、よこ入れノズル１２を継続的に一斉噴射の
状態に設定している。ダウンカウンタ３１の出力が
“Ｌ”レベルに低下した後、タイマ４０が時間ｔ３の区
間にわたって継続的に“Ｈ”レベルの出力を発生してい
るため、解舒動作の完了後に時間ｔ３にわたって、よこ
入れノズル１２は噴射状態を継続する。

【００２２】一方、アンドゲート２９の出力すなわち解
舒信号Ｓａは、設定器４２、およびオアゲート５７を経
て加算器４１の入力となる。ここで、加算器４１は、織
機の起動前に、設定器４２によって予め設定された所定
の解舒巻数Ｎａに相当する補正信号をカウンタ１５に出
力し、その後の起動に際し、所定の解舒巻数に相当する
分だけモータ５を余計に回転させることによって、不良
糸の抜き取りのために解舒した巻数のよこ糸８をドラム
９に巻き付けることにより、ドラム９でのよこ糸８の不
足に備える。

【００２３】以上の解舒動作および補正動作は、解舒押
しボタンスイッチ２７の操作によって開始されるほか、
よこ糸自動補修装置からの解舒信号Ｓｂによっても開始
される。すなわち、解舒信号Ｓｂは、オアゲート５４、
５７に入力され、巻量制御器３および解舒制御器４を作
動させ、かつ設定器５５、５８により解舒巻数Ｎｂを設
定する。

【００２４】また、製織中にロングピックのよこ入れ不
良が発生すると、この状態がロングピック検出用フィー
ラ５６によって検出され、ロングピック発生信号Ｓｃが
出力される。ロングピック発生信号Ｓｃは、巻量制御器
３内の設定器５９の入力となり、補充巻数Ｎｃを加算器
４１に出力させるとともに、オアゲート５７を介して加
算器４１に与えられ、補充巻数Ｎｃに相当する補正信号
をカウンタ１５に加算値として送る。

【００２５】出願人の事例研究によれば、ほとんどのロ
ングピックでは、ソレノイド１１の動作遅れによって、
貯留状態のよこ糸８がドラム９上で１巻分だけ余計に解
舒されている。したがって、次のよこ入れまでに、ドラ
ム９上に巻き付けなければならない巻数つまり補充巻数
Ｎｃは、「１」として設定される。

【００２６】そこで、カウンタ１５は、次のよこ入れ時
点までに、モータ５を１回転だけ余計に回す。したがっ
て、ドラム式測長貯留装置２は、ロングピック発生後の
最初のよこ入れに必要な巻数のよこ糸８をドラム９上に
巻き付け、当該よこ入れに備えて貯留する。この結果、
ロングピックのよこ入れ不良が発生しても、次のよこ入
れサイクルでショートピックのよこ入れ不良が予防でき
るから、織機は、よこ止めとならず、製織を継続するこ
とになる。

【００２７】なお、オペレータが全解舒押しボタンスイ
ッチ４３を操作すると、フリップフロップ４４がセット
状態に設定されるため、フリップフロップ４４の出力が
ドライバ２６に与えられ、係止ピン１０を継続的に後退
状態に設定する。これによって、よこ入れノズル１２
は、ドラム９上で蓄えられている全てのよこ糸８を引き
出すことによって、ドラム９上で糸無しの状態に設定す
る。

【００２８】このあとで、オペレータが予備巻き押しボ
タンスイッチ４５を操作すると、フリップフロップ４４
がリセット状態に設定され、係止ピン１０がドラム９の
外周面に進出する。これと同時に、カウンタ４６がフリ
ップフロップ４４の反転信号の立ち上がり時点で、設定
器４７によって設定された予備巻数の信号を発生し、カ
ウンタ１５のカウント値をクリアするとともに、アンド
ゲート４８を開き、ノット回路４９、オアゲート５０を
介し、リレー５２を駆動することによって、接点５１を
閉じ、予備巻き速度設定器５３の出力をドライバ２３に
与え、その速度でモータ５を駆動する。

【００２９】予備巻きに必要な回転数だけモータ５が回
転すると、シャフトエンコーダ１４からの織機パルスの
信号によってカウンタ４６の値が「０」になるため、リ
レー５２は、オフの状態に設定され、接点５１を開く。
なおこのリレー５２は、カウンタ１５の正値によっても
オンの状態に設定される。

【００３０】

【考案の効果】本考案では、ロングピックのよこ入れ不
良が発生したら、ロングピックにより余計に解舒された
巻数のよこ糸が次のよこ入れ時点までに自動的に補充さ
れるため、ロングピック発生後の最初のよこ入れ過程で
ショートピックなどのよこ入れ不良の発生が予防できる
から、よこ止めによる織機の停台が少なくなり、またよ
こ止め補修作業も少なくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の制御装置、特にドラム式測長貯留装置
および巻量制御器のブロック線図である。

【図２】本考案の制御装置、特にドラム式測長貯留装置
および解舒制御器のブロック線図である。

【図３】モータの回転（速度）特性のグラフである。

【図４】解舒制御器の動作時のタイムチャート図であ
る。

【符号の説明】

１ 制御装置 ２ ドラム式測長貯留装置 ３ 巻量制御器 ４ 解舒制御器 ５ モータ ６ 回転ヤーンガイド ８ よこ糸 ９ ドラム １０ 係止ピン １１ ソレノイド １２ よこ入れノズル １３ 主軸 １４ シャフトエンコーダ １５ カウンタ １６ シャフトエンコーダ ２７ 解舒押しボタンスイッチ ４１ 加算器 ５６ ロングピック検出用フィーラ ５９ 設定器

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 織機の運転中に主軸の回転量をアップ入
   力とし、回転ヤーンガイドを回転させるモータの回転量
   をダウン入力とするアップダウン式のカウンタの偏差に
   応じて所定のスピードで上記モータの回転量を制御する
   織機同期方式の巻量制御器により、静止状態のドラムの
   外周面に巻き付けて貯留されるよこ糸の巻量を制御する
   とともに、この巻き付け状態のよこ糸の係止および解舒
   を係止ピンの進退運動により行うドラム式測長貯留装置
   において、 上記カウンタにはロングピック検出用フィーラからのロ
   ングピック発生信号に応じて予め設定器に設定された所
   定の補充巻数分に相当する補正信号が加算器により加算
   されることを特徴とするドラム式測長貯留装置の制御装
   置。