JP2023083364A - 緩衝器 - Google Patents

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Abstract

【課題】工数の増加が抑制される緩衝器を提供する。【解決手段】背圧室への導入オリフィスが形成されるピン部をメインボディ、メインバルブ、及びパイロットケースの内周に設け、当該ピン部に設けられたナットをピン部に対して回転させることにより、メインボディ、メインバルブ、及びパイロットケースを締結するので、ピン部に工具係合部を加工する必要がなく、工数の増大を抑制することができる。【選択図】図2

Description

本発明は、緩衝器に関するもので、特に、ピストンロッドのストロークによって生じる作動流体の流れを制御して減衰力を調整する減衰力調整式緩衝器に関する。
特許文献1には、取付部材2の取付軸2c(ピン部材)をバルブハウジング4に対して回転させることにより、取付部材2とバルブハウジング4との間の上流側バルブ部品を締結する減衰弁を備えた緩衝器(以下「従来の緩衝器」と称する)が開示されている。
特許文献1 特開2017-57864号公報
従来の緩衝器では、取付部材2に、取付軸2c(ピン部材)をバルブハウジング4に対して回転させるときに用いる工具係合部を加工する必要があり、取付部材2の加工に工数を要していた。
本発明は、工数の増加が抑制される緩衝器を提供することを課題とする。
本発明の緩衝器は、作動液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内を2室に画成するピストンと、前記シリンダの外周に設けられた外筒と、前記シリンダと前記外筒との間に形成されて作動液及びガスが封入されたリザーバと、前記シリンダと前記外筒との間に設けられて前記シリンダ内に連通する接続管と、前記外筒の外部に設けられたバルブケースに収容されて前記接続管に接続された減衰力発生機構と、を備え、前記減衰力発生機構は、減衰力を発生させるメインバルブと、前記メインバルブが当接するシート部材と、前記メインバルブの背部に形成されて内圧が該メインバルブに閉弁方向へ作用する背圧室を形成するパイロットケースと、前記背圧室の内圧を調整するパイロットバルブと、前記シート部材、前記メインバルブ、及び前記パイロットケースの内周に設けられて前記背圧室への導入通路が形成されるピン部材と、を有し、前記ピン部材には、前記ピン部材に対して回転させることで、前記シート部材、前記メインバルブ、及び前記パイロットケースを締結させる締結部材が設けられ、前記導入通路の下流側に設けられ、前記パイロットバルブよりも上流側の圧力に応じて開閉する背圧導入弁が設けられることを特徴とする。
本発明の一実施形態によれば、緩衝器の工数の増加を抑制することができる。
第1実施形態に係る減衰力調整式緩衝器の断面図である。 図1における減衰力調整機構の拡大図である。 第1実施形態の説明図であって、上流側バルブ部品と下流側バルブ部品とを示す図である。 第2実施形態に係る減衰力調整式緩衝器の減衰力調整機構の断面図である。 第2実施形態の説明図であって、上流側バルブ部品と下流側バルブ部品とを示す図である。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。便宜上、図1における上下方向をそのまま「上下方向」と称する。また、図2における左側(シリンダ2側)を「一側」及び右側(シリンダ2側とは反対側)を「他側」と称する。
図1に示されるように、第1実施形態は、減衰力調整機構31が外筒3の側壁に横付けされた、所謂、制御バルブ横付型の減衰力調整式油圧緩衝器1(以下「緩衝器1」と称する)に関する。緩衝器1は、外筒3の内側にシリンダ2が設けられた複筒構造をなし、外筒3とシリンダ2との間には、リザーバ4が形成される。シリンダ2内には、シリンダ2内をシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に画成するピストン5が摺動可能に嵌装される。ピストン5には、ピストンロッド6の下端部が連結される。ピストンロッド6の上端側は、シリンダ上室2Aを通過し、シリンダ2及び外筒3の上端部に取り付けられたロッドガイド8とオイルシール9とに挿通されてシリンダ2の外部へ突出する。
ピストン5には、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとを連通する伸び側通路11及び縮み側通路12が設けられる。縮み側通路12には、シリンダ下室2Bからシリンダ上室2Aへの作動液の流通を許容する逆止弁13が設けられる。他方、伸び側通路11には、シリンダ上室2A側の圧力が設定圧力に達したときに開弁し、当該シリンダ上室2A側の圧力をシリンダ下室2B側へリリーフする(逃がす)ディスクバルブ14が設けられる。
シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを区画するベースバルブ10が設けられる。ベースバルブ10には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを連通する伸び側通路15及び縮み側通路16が設けられる。伸び側通路15には、リザーバ4側からシリンダ下室2B側への作動液の流通を許容する逆止弁17が設けられる。他方、縮み側通路16には、シリンダ下室2B側の圧力が設定圧力に達したときに開弁し、当該シリンダ下室2B側の圧力をリザーバ4側へリリーフする(逃す)逆止弁18が設けられる。なお、シリンダ2内には作動液が封入され、リザーバ4内には作動液及びガスが封入される。
シリンダ2の外周には、上下一対のシール部材19,19を介してセパレータチューブ20(接続管)が取り付けられる。シリンダ2とセパレータチューブ20との間には、環状流路21が形成される。環状流路21は、シリンダ2の上端側側壁に設けられた通路22によってシリンダ上室2Aに連通される。セパレータチューブ20の下端側の側壁には、側方に突出して先端が開口する円筒形の接続口23が設けられる。外筒3の側壁には、接続口23と対向する位置に取付孔24が設けられる。取付孔24は、接続口23と同軸に配置され、且つ接続口23の外径よりも大きい内径を有する。外筒3の側壁には、取付孔24を囲むようにして略円筒形のバルブケース25が設けられる。バルブケース25には、減衰力調整機構31が収容される。
図2に示されるように、減衰力調整機構31は、減衰力を発生させる背圧型のメインバルブ51と、該メインバルブ51が当接する環状のメインボディ52(シート部材)と、メインバルブ51の背部に形成されて内圧がメインバルブ51に対して閉弁方向へ作用する背圧室72と、背圧室72を形成するパイロットケース73と、背圧室72の内圧を調整してメインバルブ51の開弁圧力を制御するパイロットバルブ71と、パイロットバルブ71が当接するパイロットボディ74と、パイロットバルブ71の下流側に設けられるフェイルセーフバルブ141と、パイロットバルブ71の開弁圧力を制御するソレノイド121と、を備える。
メインボディ52の他側端面(図2における「右側端面」)の外周縁部には、メインバルブ51の外周縁部が離着座可能に当接する環状のシート部53が形成される。シート部53の内周側、換言すれば、メインバルブ51の上流側には、環状凹部55が形成される。他方、メインボディ52の一側端面(図2における「左側端面」)には、セパレータチューブ20の接続口23が嵌合(挿入)される凹部56が形成される。凹部56は、メインボディ52と同軸の内円筒面からなる内周面57を有する。
なお、メインボディ52(凹部56)の内周面57には環状溝62が形成され、環状溝62に装着されたシールリング58により、メインボディ52の内周面57とセパレータチューブ20の接続口23との間がシールされる。また、メインボディ52の、一側の凹部56と他側の環状凹部55とは、メインボディ52の軸方向(接続管23の軸方向、図2における左右方向)に沿って延びる複数本の通路59によって連通される。
ディスク状のメインバルブ51の内周部は、メインボディ52の内周部54と略有底円筒形に形成されたパイロットケース73の底部75の内周部76との間で挟持される。メインバルブ51の外周部の背面側には、環状のパッキン60(弾性シール部材)が接合される。パイロットケース73(底部75)の一側端面(図2における「左側端面」)には、背圧室72を形成する環状凹部77が形成される。環状凹部77の外周側壁面は、パイロットケース73の軸線(中心線)と同軸の内円筒面からなり、メインバルブ51のパッキン60の摺動面78をなす。
パイロットケース73の一側端面の、環状凹部77の内周縁部には、環状のシート部79が形成される。シート部79には、ディスク状の背圧導入弁81の外周縁部が離着座可能に当接する。パイロットケース73の一側端面の、内周部76とシート部79との間、換言すると、背圧導入弁81の他側には、環状凹部80が形成される。
背圧導入弁81の内周部は、メインボディ52の内周部54とパイロットケース73の内周部76との間で挟持される。メインボディ52の内周部54とパイロットケース73の内周部76との間には、一側から他側へ順に、メインバルブ51の内周部、リテーナ82、スペーサ83、リテーナ84、及び背圧導入弁81が介装される。メインバルブ51、リテーナ82、スペーサ83、リテーナ84、及び背圧導入弁81の軸孔には、パイロットケース73と一体に形成されたピン部85(ピン部材)が挿通される。
ピン部85は、パイロットケース73と同軸に設けられ、パイロットケース73の底部75からシリンダ2側(図2における左側)へ突出する。ピン部85は、メインボディ52の軸孔61に挿通され、一側端部(先端部)が、メインボディ52の凹部56の内側、換言すれば、接続口23の内側に位置する。ピン部85の一側端部にはねじ部86が形成され、ねじ部86にはナット87(締結部材)が螺合される。よって、ナット87は、接続口23の内側、換言すれば、メインボディ52の凹部56の内側に位置する(収容される)。なお、ピン部85は、パイロットケース73と別個の構成とすることができる。この場合、パイロットケース73に形成した軸孔(図4の「符号105」参照)にピン部85(ピン部材)を圧入することにより、パイロットケース73とピン部85とを一体化させることができる。
そして、ねじ部86に螺合したナット87を締め付ける(ピン部材に対して回転させる)ことにより、ワッシャ88とパイロットケース73との間の部品(以下「上流側バルブ部品42」と称する、図3参照)、第1実施形態では、メインボディ52、メインバルブ51、リテーナ82、スペーサ83、リテーナ84、及び背圧導入弁81に軸力が作用される。なお、ナット87を締め付けるとき、パイロットケース73の外周面に形成された二面幅89(図2に一方の面のみ表示)に工具を係合する。また、パイロットケース73の二面幅89とヨーク122との間には、後述する通路33が形成される。
パイロットケース73の底部75の、他側端面(図2における「右側端面」)の中央には、凹部91が形成される。凹部91は、パイロットケース73を軸方向(図2における左右方向)に貫通する複数本の通路92によってパイロットケース73の一側端面の環状凹部80連通される。凹部91は、ピン部85の軸孔93(導入通路)によって環状流路21に連通される。軸孔93の一側端部、換言すれば、ピン部85の先端部には、背圧室72への導入オリフィス94が形成される。環状流路21の作動液は、導入オリフィス94、軸孔93、凹部91、通路92、環状凹部80、及び背圧導入弁81を介して背圧室72に導入される。なお、背圧導入弁81の外周縁部には、背圧室72と環状流路21とを常時連通する複数個のオリフィス99が形成される。
パイロットボディ74は、他側が開口した略有底円筒形に形成される。パイロットボディ74は、一側の小外径部95がパイロットケース73の内周面96に嵌合される。パイロットボディ74は、一側端面がパイロットケース73の底部75に当接することにより、パイロットケース73に対して軸方向に位置決めされる。パイロットボディ74の小外径部95の外周面には環状溝97が形成され、該環状溝97に装着されたシールリング98により、パイロットケース73の内周面96とパイロットボディ74の小外径部95との間がシールされる。
パイロットボディ74の内側には、パイロットバルブ71及びフェイルセーフバルブ141の弁室100が形成される。パイロットボディ74の底部中央には、軸孔101が形成される。軸孔101は、導入オリフィス94を介して環状流路21から導入された作動液を弁室100へ導入する。軸孔101の他側の開口周縁部には、環状のシート部102が形成される。シート部102には、パイロットバルブ71の弁体103が離着座可能に当接する。
弁体103は、略円筒形に形成され、一側端部がテーパ状に形成される。弁体103の他側には、外フランジ形のばね受部104が形成される。弁体103は、パイロットばね142、フェイルセーフばね143、及びフェイルセーフディスク144により、シート部102に対向して軸方向へ移動可能に弾性支持される。なお、パイロットばね142とフェイルセーフばね143とは、単一の非線形ばねに形成することができる。
パイロットボディ74の内周面には、内径が他側(開口側)から一側へ段階的に小さくなる第1内径部108、第2内径部109、及び第3内径部110が形成される。第2内径部109と第3内径部110との間の段部(符号省略)は、パイロットばね142の外周部を支持する。他方、第1内径部108と第2内径部109との間の段部(符号省略)は、第1内径部108内に積層されたフェイルセーフばね143、スペーサ111、フェイルセーフディスク144、リテーナ112、スペーサ113、及びワッシャ114を支持する。
パイロットボディ74の第1内径部108の軸方向長さは、第1内径部108内のフェイルセーフばね143、スペーサ111、フェイルセーフディスク144、リテーナ112、スペーサ113、及びワッシャ114の積層高さよりも短く設定される。第1内径部108内のフェイルセーフばね143、スペーサ111、フェイルセーフディスク144、リテーナ112、スペーサ113、及びワッシャ114は、パイロットボディ74の他側の大外径部115に装着されたキャップ116によってパイロットボディ74に固定される。
キャップ116には、弁室100をキャップ116の外周の流路37に連通させる複数個の切り欠き118が形成される。弁室100は、ワッシャ114の軸孔119、キャップ116の切り欠き118、流路37、パイロットケース73の二面幅89とヨーク122の円筒部123との間の通路33、及びバルブケース25の内周であってメインボディ52の外周に形成された環状流路35、を介してリザーバ4に連通される。
一方、二面幅89が形成されたパイロットケース73の外周面には、ねじ部117が形成される。ねじ部117(おねじ)は、ヨーク122の一側の円筒部123の内周面に形成されたねじ部124(めねじ)に螺合される。この状態で、パイロットケース73とヨーク122とを、ねじ部117とねじ部124との締め付け方向へ相対回転させることにより、パイロットケース73とヨーク122とが締結される。
これにより、パイロットケース73とヨーク122との間の部品(以下「下流側バルブ部品43」と称する、図3参照)、即ち、パイロットボディ74、パイロットばね142、フェイルセーフばね143、スペーサ111、フェイルセーフディスク144、リテーナ112、スペーサ113、ワッシャ114、及びキャップ116に軸力が作用される。なお、パイロットケース73とヨーク122とを締結させるとき、パイロットケース73の二面幅89(図2に一方の面のみ表示)とヨーク122の外周面に形成された二面幅138とに工具を係合する。
ヨーク122の他側には、コイル126、コア127、コア128、プランジャ129、及び中空の作動ロッド130が組み付けられる。作動ロッド130は、プランジャ129と一体に形成されるが、別体であってもよい。作動ロッド130の一側端部には、パイロットバルブ71の弁体103が固定される。ヨーク122の他側端部には、スペーサ131及びカバー132が挿入され、ヨーク122の他側周縁部を塑性加工する(かしめる)ことにより、ヨーク122内のソレノイド内機部品に軸力が作用される。
ヨーク122は、一側の円筒部123がバルブケース25の他側に開口する大内径部26に嵌合されることにより、バルブケース25に結合される。ヨーク122は、円筒部123の一側端面がバルブケース25内側の段部27に当接されることにより、バルブケース25に対して軸方向へ位置決めされる。ヨーク122の円筒部123の外周面には環状溝133が形成され、環状溝133に装着されたシールリング134により、バルブケース25とヨーク122の円筒部123との間がシールされる。バルブケース25にヨーク122を固定するには、バルブケース25に螺合されたナット135を締め付けて、ヨーク122の環状溝136に装着された止め輪137を圧縮する。なお、バルブケース25の外周面には環状溝28が形成され、環状溝28に装着されたシールリング29により、バルブケース25とナット135との間がシールされる。
そして、コイル126への非通電時には、弁体103は、フェイルセーフばね143のばね力により、シート部102に対する離座方向(図2における「右方向」)へ付勢される。これにより、弁体103のばね受部104は、フェイルセーフディスク144に当接(着座)し、フェイルセーフバルブ141が閉弁する。このとき、パイロットばね142は、第2内径部109と第3内径部110との間の段部から離間される。
一方、コイル126への通電時には、作動ロッド130が弁体103の着座方向(図2における「左方向」)へ付勢され、パイロットばね142が第2内径部109と第3内径部110との間の段部に当接する。弁体103は、パイロットばね142及びフェイルセーフばね143のばね力に抗してシート部102に着座する。ここで、弁体103の開弁圧力は、コイル126に通電する電流値を変化させることで制御される。なお、コイル126に通電する電流値が小さいソフトモード時には、パイロットばね142のばね力とプランジャ129の推力とがつり合い、弁体103は、シート部102から離間された状態(図2参照)となる。
次に、緩衝器1の作動を説明する。
緩衝器1は、車両のサスペンション装置(図示省略)のばね上(車体)、ばね下(車輪)間に設けられる。通常の作動状態では、車載コントローラは、減衰力調整機構31のソレノイド121のコイル126への通電電流を制御することにより、パイロットバルブ71の開弁圧力を調節する。
ピストンロッド6の伸び行程時には、シリンダ上室2A内の圧力上昇によりピストン5の逆止弁13が閉弁し、ディスクバルブ14の開弁前には、シリンダ上室2A側の作動液が加圧される。加圧された作動液は、通路22および環状流路21を通って、セパレータチューブ20(接続管)の接続口23から減衰力調整機構31へ導入される。このとき、ピストン5が移動した分の作動液は、リザーバ4からベースバルブ10の逆止弁17を開弁させてシリンダ下室2Bへ流入する。なお、シリンダ上室2Aの圧力がピストン5のディスクバルブ14の開弁圧力に達してディスクバルブ14が開弁すると、シリンダ上室2Aの圧力がシリンダ下室2Bへリリーフされる。これにより、シリンダ上室2Aの過度の圧力上昇が回避される。
一方、ピストンロッド6の縮み行程時には、シリンダ下室2B内の圧力上昇により、ピストン5の逆止弁13が開弁し、ベースバルブ10の通路15の逆止弁17が閉弁する。ディスクバルブ18の開弁前には、ピストン下室2Bの作動液がシリンダ上室2Aへ流入し、ピストンロッド6がシリンダ2内に侵入した体積分の作動液が、シリンダ上室2Aから、通路22、環状流路21、セパレータチューブ20(接続管)の接続口23を通って減衰力調整機構31へ導入される。なお、シリンダ下室2B内の圧力がベースバルブ10のディスクバルブ18の開弁圧力に達してディスクバルブ18が開弁すると、シリンダ下室2Bの圧力がリザーバ4へリリーフされる。これにより、シリンダ下室2Bの過度の圧力上昇が回避される。
減衰力調整機構31に導入された作動液は、ピン部85(ピン部材)に形成された導入オリフィス94、ピン部85の軸孔93、パイロットケース73の凹部91、及び通路92を介して環状凹部80に流入し、背圧導入弁81の開弁方向の圧力が設定した圧力を超えた場合に、背圧導入弁81を開弁させて背圧室72に導入される。メインバルブ51の開弁前(ピストン速度低速域)には、導入オリフィス94、軸孔93、凹部91、パイロットボディ74の軸孔101を通って弁体103(パイロットバルブ71)を開弁させ、パイロットボディ74内の弁室100に流入する。
弁室100に流入した作動液は、弁体103とフェイルセーフディスク144との間、ワッシャ114の軸孔119、キャップ116の切り欠き118、流路37、二面幅89によって形成されたパイロットケース73とヨーク112との間の通路33、環状流路35、及びメインボディ52の外周を通ってリザーバ4へ流通する。ピストン速度が上昇し、通路59を介して接続口23に連通される環状凹部55の圧力がメインバルブ51の開弁圧力に達すると、メインバルブ51が開弁し、環状流路21の作動液は、接続口23、通路59、環状凹部55、メインバルブ51を通ってリザーバ4へ流通する。
このように、減衰力調整機構31は、ピストンロッド6の伸び行程及び縮み行程の両行程時において、メインバルブ51の開弁前(ピストン速度低速域)には、導入オリフィス94及びパイロットバルブ71(弁体103)の開弁圧力によって減衰力を発生し、メインバルブ51の開弁後(ピストン速度中速域)には、メインバルブ51の開度に応じた減衰力を発生する。そして、コイル126への通電を制御してパイロットバルブ71の開弁圧力を調整することにより、ピストン速度に係らず、減衰力を直接制御することができる。また、コイル126への通電を制御してパイロットバルブ71の開弁圧力を調整することにより、背圧導入弁81を開弁させて背圧室72に導入される作動液の圧力が調整されるので、減衰力特性を広範囲に調整することができる。
また、コイル126の断線、車載コントローラの故障等のフェイル発生時にプランジャ129の推力が失われた場合、フェイルセーフばね143のばね力によって弁体103を後退させてパイロットバルブ71を開弁するとともに、弁体103のばね受部104をフェイルセーフディスク144に当接させることにより、弁室100とバルブケース25内側の環状流路35との間の連通を遮断する。
これにより、環状流路21から、導入オリフィス94、軸孔93、凹部91、パイロットボディ74の軸孔101、弁室100、ワッシャ114の軸孔119、キャップ116の切り欠き118、流路37、通路33、環状流路35、及びメインボディ52の外周を通ってリザーバ4へ流通する作動液の流れが、フェイルセーフバルブ41によって制御される。ここで、フェイルセーフディスク144の開弁圧力を可変させることにより、所望の減衰力を得ることができる。同時に、背圧室72の内圧、即ち、メインバルブ51の開弁圧力を調整することが可能であり、フェイル発生時においても適切な減衰力を得ることができる。
次に、第1実施形態に係る減衰力調整機構31の組み付け手順の概略を説明する。
まず、パイロットケース73の一側に、上流側バルブ部品42(図3参照)、即ち第1実施形態では、メインボディ52(シート部材)、メインバルブ51、リテーナ82、スペーサ83、リテーナ84、及び背圧導入弁81を積層する。なお、上流側バルブ部品42の軸孔には、パイロットケース73と一体に形成されたピン部85(ピン部材)が挿通される。
次に、ピン部85にワッシャ88を挿通し、ピン部85のねじ部86に螺合させたナット87(締結部材)をピン部85に対して回転させる。次に、ナット87を既定トルクで締め付けることにより、上流側バルブ部品42をナット87(ワッシャ88)とパイロットケース73の内周部76との間でクランプし、上流側バルブ部品42に既定の軸力を作用させる。なお、ナット87を締め付ける(ピン部材に対して回転させる)とき、パイロットケース73の二面幅89に工具を係合させる。
一方、パイロットボディ74の他側に、パイロットばね142、フェイルセーフばね143、スペーサ111、フェイルセーフディスク144、リテーナ112、スペーサ113、及びワッシャ114を積層し、さらに、パイロットボディ74の他側の大外径部115にキャップ116を装着することにより、下流側バルブ部品43(図3参照)を構成する。次に、パイロットケース73の内周面96にパイロットボディ74の一側の小外径部95を嵌合し、上流側バルブ部品42と下流側バルブ部品43とを結合して一体化させたバルブアセンブリ41(図3参照)を構成する。
次に、バルブアセンブリ41のパイロットケース73のねじ部117を、ヨーク122のねじ部124に螺合し、この状態で、パイロットケース73とヨーク122とを締め付け方向へ相対回転させることにより、パイロットケース73(バルブアセンブリ41)とヨーク122とを締結させる。これにより、パイロットケース73とヨーク122との間の下流側バルブ部品43に既定の軸力を作用させることができる。
なお、パイロットケース73とヨーク122とを締結させるとき、パイロットケース73の二面幅89とヨーク122の外周面に形成された二面幅138とに工具を係合させる。また、ヨーク122には、予めソレノイド内機部品が組み付けられている。そして、バルブケース25の大内径部26に、バルブアセンブリ41が組み付けられたヨーク122の円筒部123を嵌合し、同時に、メインボディ52の一側の凹部56に、セパレータチューブ20(接続管)の接続口23を挿入及び接続する。次に、バルブケース25の外周にナット135を装着して締め付けて、ナット135とヨーク122との間の止め輪137を圧縮することにより、ヨーク122がバルブケース25に締結される。
ここで、従来の緩衝器(「特許文献1」参照)では、オリフィス2F(第1実施形態の「導入オリフィス94」に相当)が形成された取付軸2c(第1実施形態の「ピン部85」に相当)を有する取付部材2に、取付軸2cをバルブハウジング4(第1実施形態の「パイロットケース73」に相当)に対して回転させるときだけに用いる工具係合部を加工する必要があり、取付部材2の加工に工数を要していた。
これに対し、第1実施形態では、背圧室72への導入オリフィス94が形成されるピン部85(ピン部材)をメインボディ52(シート部材)、メインバルブ51、及びパイロットケース73の内周に設け、当該ピン部85に設けられたナット87(締結部材)をピン部85に対して回転させることにより、メインボディ52、メインバルブ51、及びパイロットケース73が締結されるので、ピン部85に工具係合部を加工する必要がなく、工数の増大を抑制することができる。
また、従来の緩衝器では、バルブハウジング4を第二固定鉄心73(第1実施形態における「ヨーク122」)に組み付けるときに工具が差し込まれる差込穴4d(工具係合部)と、バルブハウジング4と第二固定鉄心73との間に隙間(第1実施形態の「通路33」に相当)を形成するための溝4iと、をバルブハウジング4に別個に加工する必要があり、取付部材2の加工に工数を要していた。
これに対し、第1実施形態では、パイロットケース73の外周面に形成した二面幅89を、パイロットケース73をヨーク122に組み付けるときの工具係合部と、パイロットケース73とヨーク122との間のパイロット流路(通路33)と、の2つの用途に使用することができるので、工具係合部とパイロット流路との加工が一工程(一回の加工)で済み、工数の増大を抑制することができる。
また、従来の緩衝器では、バルブハウジング4の内部と背圧室Pとを連通させるための連通孔4f(第1実施形態の「通路92」に相当)がバルブハウジング4の軸線(中心線)に対して傾けられているので、加工が煩雑化して工数が増大する要因になっていた。
これに対し、第1実施形態では、弁室100と背圧室72とを連通させるための通路92が、パイロットケース73の軸線に対して平行に加工されるので、加工の難易度が低く、工数及び製造コストを削減することができる。
また、第1実施形態では、メインボディ52(シート部材)、メインバルブ51、及びパイロットケース73の内周には、背圧室72への導入オリフィス94が形成されたピン部85(ピン部材)が設けられ、当該ピン部85には、メインボディ52、メインバルブ51、及びパイロットケース73を締結させるナット87(締結部材)が設けられているので、メインボディとパイロットケース(パイロットボディ)との間に介装されるパイロットピンを省くことが可能であり、バルブアセンブリ41の全長(軸方向長さ)、延いては減衰力調整機構31の全長を短くすることができる。これにより、車両のサスペンション装置の設計自由度を向上させることができる。
また、第1実施形態では、上流側バルブ部品42に単独で軸力を作用させる、換言すれば、上流側バルブ部品42の軸力伝達経路C1(図3参照)が下流側バルブ部品43の軸力伝達経路C2(図3参照)から切り離されるので、パイロットピンによりメインボディとパイロットケース(パイロットボディ)とが結合される従来の緩衝器(例えば、特開2014-129842号公報参照)と比較して、バルブ部品、特に、メインボディ52の剛性を低く設定することができる。これにより、メインボディ52の厚さ(軸方向長さ)を薄く設計することが可能であり、上流側バルブ部品42、延いては減衰力調整機構31の全長を短くすることができる。
また、第1実施形態では、メインボディ52の凹部56にセパレータチューブ20(接続管)の接続口23を嵌合し、さらに、接続口23の内側(内周)にナット87(締結部材)を収容した、換言すれば、ナット87を、シリンダ2と外筒3との間に設けられるセパレータチューブ20の軸方向範囲(図3におけるA1)に配置したので、ナット87の高さによって上流側バルブ部品42の軸方向長さが長くなることを回避することができる。
また、第1実施形態では、ピン部85(ピン部材)をパイロットケース73と一体に形成したので、部品点数を低減することが可能であり、組み付け工数を削減することができる。
(第2実施形態)
次に、図4、図5を参照して第2実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態との相違部分について説明する。なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
第1実施形態では、ナット87(締結部材)を、シリンダ2と外筒3との間に設けられるセパレータチューブ20(接続管)の軸方向範囲(図3におけるA1)に配置した。これに対し、第2実施形態では、ナット87を、パイロットケース73とパイロットバルブ71との軸方向間(図5におけるA2)に配置した。即ち、第2実施形態では、第1実施形態と比較と比較した場合、ナット87を収容するためにパイロットケース73の凹部91が深く(軸方向長さが長く)形成されている。
図4に示されるように、ピン部85は、メインボディ52(シート部材)と同軸に設けられ、メインボディ52からパイロットバルブ71側(図4における右側)へ突出する。ピン部85は、パイロットケース73の軸孔105に挿通され、他側端部(先端部)が、パイロットケース73の凹部91の内側に位置する。ピン部85の他側端部にはねじ部86が形成され、当該ねじ部86にはナット87(締結部材)が螺合される。即ち、ナット87は、パイロットケース73の凹部91に収容される。なお、ピン部85は、メインボディ52と別個の構成とすることができる。この場合、メインボディ52に形成した軸孔(図2の「符号61)参照)にピン部85(ピン部材)を圧入することにより、メインボディ52とピン部85とを一体化させることができる。
そして、ねじ部86に螺合したナット87を締め付ける(ピン部材に対して回転させる)ことにより、メインボディ52とナット87との間の上流側バルブ部品42(図5参照)、第2実施形態では、メインバルブ51、リテーナ82、スペーサ83、リテーナ84、背圧導入弁81、及びパイロットケース73に軸力が作用される。なお、ナット87を締め付けるとき、工具を、メインボディ52の一側端面に形成された凹部66に係合させる。凹部66は、軸直角平面による断面が正六角形に形成されており、六角レンチを係合させることができる。また、凹部66は、導入オリフィス94、ピン部85の軸孔93、パイロットケース73の凹部91、通路92、及び背圧導入弁81(オリフィス99)を介して、背圧室72に連通される。
メインボディ52の一側には、セパレータチューブ20の接続口23の内側に嵌合(挿入)される接続部65が形成される。メインボディ52の接続部65の外周面には環状溝62が形成され、環状溝62に装着されたシールリング58により、メインボディ52の接続部65とセパレータチューブ20の接続口23との間がシールされる。また、メインボディ52には、一側の凹部66と他側の環状凹部55とを連通する複数本(第2実施形態では「6本」)の通路67が形成される。
次に、第2実施形態に係る減衰力調整機構31の組み付け手順の概略を説明する。
まず、メインボディ52の他側に、上流側バルブ部品42(図5参照)、第2実施形態では、メインバルブ51、リテーナ82、スペーサ83、リテーナ84、背圧導入弁81、及びパイロットケース73を積層する。なお、上流側バルブ部品42の軸孔には、メインボディ52と一体に形成されたピン部85(ピン部材)が挿通される。
次に、ピン部85のねじ部86にナット87(締結部材)を螺合する。次に、ナット87を既定トルクで締め付けて、上流側バルブ部品42をナット87とメインボディ52の内周部54との間でクランプし、上流側バルブ部品42に既定の軸力を作用させる。なお、ナット87を締め付けるとき、メインボディ52の一側の凹部66に工具(例えば「六角レンチ」)を係合させる。
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
なお、第1及び第2実施形態では、締結部材をナット87としたが、上流側バルブ部品42に既定の軸力を作用させることができるものであれば、例えば、かしめ等の手段で代替することができる。
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1 緩衝器、2 シリンダ、3 外筒、4 リザーバ、5 ピストン、20 セパレータチューブ(接続管)、31 減衰力調整機構、51 メインバルブ、52 メインボディ(シート部材)、71 パイロットバルブ、72 背圧室、73 パイロットケース、85 ピン部(ピン部材)、93 軸孔(導入通路)、87 ナット(締結部材)

Claims (4)

  1. 緩衝器であって、該緩衝器は、
    作動液が封入されたシリンダと、
    該シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内を2室に画成するピストンと、
    前記シリンダの外周に設けられた外筒と、
    前記シリンダと前記外筒との間に形成されて作動液及びガスが封入されたリザーバと、
    前記シリンダと前記外筒との間に設けられて前記シリンダ内に連通する接続管と、
    前記外筒の外部に設けられたバルブケースに収容されて前記接続管に接続された減衰力発生機構と、を備え、
    前記減衰力発生機構は、
    減衰力を発生させるメインバルブと、
    前記メインバルブが当接するシート部材と、
    前記メインバルブの背部に形成されて内圧が該メインバルブに閉弁方向へ作用する背圧室を形成するパイロットケースと、
    前記背圧室の内圧を調整するパイロットバルブと、
    前記シート部材、前記メインバルブ、及び前記パイロットケースの内周に設けられて前記背圧室への導入通路が形成されるピン部材と、を有し、
    前記ピン部材には、前記ピン部材に対して回転させることで、前記シート部材、前記メインバルブ、及び前記パイロットケースを締結させる締結部材が設けられ、
    前記導入通路の下流側に設けられ、前記パイロットバルブよりも上流側の圧力に応じて開閉する背圧導入弁が設けられることを特徴とする緩衝器。
  2. 請求項1に記載の緩衝器において、
    前記背圧導入弁には、前記背圧室と前記導入通路とを常時連通するオリフィスが形成されることを特徴とする緩衝器。
  3. 請求項2に記載の緩衝器において、
    前記背圧導入弁によって、前記導入通路から前記背圧室へ流れる流量と前記背圧室から前記導入通路へ流れる流量とが異なることを特徴とする緩衝器。
  4. ソレノイドバルブであって、該ソレノイドバルブは、
    減衰力を発生させるメインバルブと、
    前記メインバルブが当接するシート部材と、
    前記メインバルブの背部に形成されて内圧が該メインバルブに閉弁方向へ作用する背圧室を形成するパイロットケースと、
    前記背圧室の内圧をソレノイドによって調整されるパイロットバルブと、
    前記シート部材、前記メインバルブ、及び前記パイロットケースの内周に設けられて前記背圧室への導入オリフィスが形成されるピン部材と、を有し、
    前記ピン部材には、前記ピン部材に対して回転させることで、前記シート部材、前記メインバルブ、及び前記パイロットケースを締結させる締結部材が設けられ、
    前記導入通路の下流側に設けられ、前記パイロットバルブよりも上流側の圧力に応じて開閉する背圧導入弁が設けられることを特徴とするソレノイドバルブ。
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