本願発明は、植物(主として農作物)を地面より高い位置において栽培床で栽培するようにした植物栽培装置に関するものである。
例えばイチゴや葉物野菜などの背丈の低い植物を直接地面(低位置)に植え付けて栽培するものでは、作業者が腰を屈めて各種作業を行う必要があるので、作業環境が悪いという問題がある。即ち、腰を屈めての作業では、作業がしにくいとともに、長時間の作業が続くと疲労感・苦痛感が大きくなる。
そこで、近年では、例えば図21~図22に示すように、圃場(図示例ではビニールハウスH内)に所定高さ(例えば60cm~70cmの高さ)の架台2を設置し、その架台2上に複数個の栽培床1,1・・を前後一列状態で載せて、地面より高い位置で植物を栽培するようにした植物栽培装置Bが使用されている。尚、図21~図22示す設置例では、一列状態を一単位とする植物栽培装置BをビニールハウスH内に左右複数列設置して、所定面積の植物栽培施設を形成している。
栽培床1は、容器(袋の場合もある)内に培養土を充填したもので、適宜の大きさのものが使用される。この栽培床1は、一般的なものとして、プランターのような容器、長尺(例えば20~30m)のベッド状の容器、長さが1m内外の袋等がある。又、これらの栽培床1は、例えば、幅が25cm内外、高さが10cm内外で、圃場長さに応じた長尺(例えば20~30m長さ)の形態で使用される。
そして、図21~図22で使用されている各列の植物栽培装置B,B・・では、栽培床1が架台2上の所定高位置(例えば60cm~70cmの高さ)に設置されていて、作業者が立ったまま各種作業が行えるので、作業能率が良くなるとともに、疲労感が軽減できる。
ところで、植物栽培は、単位面積当たりの栽培面積を広くするほど収穫量を多くできるが、圃場内(例えば図21~図22のビニールハウスH内)には各列の栽培床1,1間に各種の栽培管理や収穫作業を行うための作業通路Pを設けることが必要である。この作業通路Pは、概ね80cm~100cm程度の幅Wが必要であるが、この作業通路P(幅W)は通常は植物栽培ができない作付け不能スペースとなっている。
従って、図21~図22に示す既存の植物栽培施設では、架台2上(高位置)に栽培床1を設置して高所で植物栽培を行えるので作業性は良いものの、各列の植物栽培装置B,B・・間には作業通路P,P・・(作付け不能スペースとなる)を設ける必要があるので、その分、単位面積当たりの収穫量を多くできない。
他方、既存の植物栽培装置の中にも、単位面積当たりの栽培面積を広くするために次のような工夫を施したものがある。
第1の例として、栽培床を上下2段に重合させた状態で設置した植物栽培装置がある。ところが、この上下2段式の植物栽培装置では、単位面積当たりの作付け面積が広くなるものの、下段側の栽培床には太陽光が十分に当たらないので生育むらが生じる(未熟品作物が発生し易くなる)。
第2の例として、栽培床を上下2段で水平方向にひな壇状にずらした状態で設置した植物栽培装置がある。ところが、このひな壇式の植物栽培装置では、平面視において2つの栽培床が接合しているものの、左右に隣接設置される2列のひな壇式植物栽培装置間にはそれぞれ所定幅の作業通路が必要である。そして、この各作業通路部分には植物を作付けできないので、その分、単位面積当たりの収穫量を多くできない。又、このひな壇式の植物栽培装置の場合、太陽光の照射角度によっては下段側の栽培床が上段側の栽培床の影になることがあり、下段側の栽培床に太陽光が十分に当たらない事態が発生することがある(未熟品作物が発生し易くなる)。さらに、下段側の栽培床については、腰を屈めての作業になるので、作業能率が低下する一方、疲労度合いが大きくなる。
第3の例として、栽培床を台車に載せて台車ごと水平方向に移動させ得るようにした植物栽培装置がある。この場合は、各列の栽培床を密状態で配置したものでも、台車ごと栽培床を水平移動させることにより、順次所定幅の作業通路を作ることができる。ところが、この水平移動式の植物栽培装置では、台車やスライドレール等の複雑な構成が必要であって設備コストが非常に高くなるとともに、少なくとも1本分の幅の作業通路は確保しておく必要がある。尚、この作業通路部分の面積は作付け不能スペースとなる。又、確保している通路から離れた栽培床を管理する場合は、1列ごと台車をスライドさせていく必要があり、作業性が悪い。
第4の例として、左右2つの栽培床を1本のアームの両端部からそれぞれ吊下させ、該アームを傾動させることにより、両栽培床を同高さ位置(水平位置)から斜め上・下位置に変位させ得るようにした植物栽培装置がある。尚、このアーム傾動式の植物栽培装置としては、特許第3001511号公報(特許文献1)や特許第3919614号公報(特許文献2)等に掲載されたものがある。
ところが、上記特許文献1及び特許文献2に掲載されているアーム傾動式の植物栽培装置では、両栽培床を吊下しているアームを最大傾斜させても、そのアームが角度60°程度までしか傾動できない構造であるので、アーム両端部から吊下している両栽培床を平面視においてさほど近接させることができない。即ち、アームを傾斜させると、両栽培床が平面視で相互に近づくものの、アームを最大で角度60°程度までしか傾斜できないものでは、両栽培床による平面視の占有面積はさほど小さくならない。従って、平面視における両栽培床の移動分(近接分)だけでは作業通路形成用のスペースを十分にとれないので、必要幅の作業通路を確保するために予め余剰スペースを設けておく必要がある。尚、この余剰スペースは作付け不能スペースとなるものである。
特許第3001511号公報
特許第3919614号公報
本願発明は、既存の植物栽培装置における上記の各種問題点に鑑み、比較的簡易で安価に製作できる構成のもので、通常栽培時には各列の栽培床間に作業通路を設けることなく各栽培床を水平方向に近接させた状態で配置でき(この場合は単位面積当たりの栽培面積を広くできる)、作業時には簡単な操作で左右近接位置にあった2つ栽培床を上下に完全重合する位置まで変位させることができる(この場合は隣接する栽培床間に十分な間隔の作業通路を確保できる)ようにした植物栽培装置を提供することを目的としている。
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、所定高さの架台を用いて栽培床を所定高位置に設置して植物栽培を行えるようにした植物栽培装置を対象にしている。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の植物栽培装置は、添付の図1~図11に例示するように、2個を1組とする植物栽培用の栽培床1,1と、所定間隔をもって設置した2台を1組とする架台2,2と、2台の架台2,2間の所定高さ位置に回転可能に架設した駆動軸3と、駆動軸3の軸直交方向両側にあってそれぞれ外方に所定長さ伸びる一対のアーム部41,41を有し且つ両アーム部41,41が駆動軸3の回転と共に回動するアーム部材4と、各アーム部41,41の各先端部42,42から各栽培床1,1をそれぞれ吊下する吊下手段5,5とを備え、アーム部材4は、各アーム部41,41が駆動軸3を挟んで同高さに位置する水平姿勢と各アーム部41,41が駆動軸3を挟んで上下同位置に重合する鉛直姿勢との間で変位できるとともに、アーム部材4が水平姿勢状態では各アーム部41,41の各先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が水平方向に間隔をもった同高さ位置に支持される一方、アーム部材4が鉛直姿勢状態では各アーム部41,41の各先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が上下に間隔をもった重合位置に支持され且つ下側の栽培床1が地面より上方で支持される一方で上側の栽培床1が駆動軸3の設置高さより上方で支持されるように構成されていることを特徴としている。
本願請求項1の植物栽培装置では、2個1組の栽培床1,1と、2台1組の架台2,2と、架台2,2間に架設した駆動軸3と、駆動軸3に組付けたアーム部材4と、各栽培床1,1を吊下する吊下手段5,5、とを1セットとして構成している。そして、その1セットの植物栽培装置は、圃場内(例えばビニールハウス内)において前後方向及び左右方向にそれぞれ複数セットずつ近接状態で設置することで、所望の面積範囲に植物栽培施設を設置することができる。
尚、以下の説明では、便宜上、2台1組とする架台2,2間に架設された駆動軸3の軸線方向を前後方向といい、平面視において駆動軸3と直交する方向を左右方向ということがある。
この請求項1では、駆動軸3として、図11に示すように外面が円形の丸棒3bを使用してもよい。この場合、アーム部材4を駆動軸3に対して相対回転不能に組付けるのに、アーム部材4側の円穴4bに駆動軸3(丸棒3b部分)を挿通させた状態で円穴4b部分と丸棒3の外面とを溶接する。
他方、この請求項1において、以下に説明する請求項2のように、駆動軸3として外面四角形の角棒3aを採用してもよい。尚、このように、駆動軸3を角棒3aとしたものについては、請求項2の項で詳しく説明する。
駆動軸3は、2台1組の架台2,2に対して回転可能となっていて、該駆動軸3を手動(人力)で回転させることができるようになっている。
駆動軸3には、その軸直交方向の両外方にそれぞれ所定長さ伸びる一対のアーム部41,41を有しており、この両アーム部41,41で天秤棒状態のアーム部材4を構成している。このアーム部材4は、2台の架台2,2間に架設した駆動軸3に対して複数本使用し、駆動軸3の長さ方向に間隔をもたせた複数箇所で各側の栽培床1を支持するようにしている。尚、2台の架台2,2間におけるアーム部材4の使用本数は、2本の場合と3~4本程度の複数本の場合とが想定される。
アーム部材4は、駆動軸3の回転と共に水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができるようになっている。実際には、駆動軸3は角度360°の範囲で回転させることができようにしたものが採用でき、その場合はアーム部材4を駆動軸3の全周に亘って旋回させることができる。尚、駆動軸3を回転させる方法としては、駆動軸3の一端部に回転操作具(ハンドル付き)を設けて該回転操作具で駆動軸3を回転させてもよいし、アーム部材4を手で回動させることで駆動軸3を回転させてもよい。
アーム部材4の各アーム部41,41は、例えば駆動軸3の軸心からそれぞれ30cm~35cm程度の長さ範囲で相互に同長さに設定されている。尚、この各アーム部41,41の長さは、栽培床1の幅や必要とする作業通路Pの幅等によって決まり、上記長さ(30cm~35cm程度)は特に限定するものではない。
アーム部材4の各アーム部41,41のそれぞれ先端部42,42には、それぞれ吊下手段5,5により1個ずつの栽培床1が吊下されている。この各栽培床1,1の重量は、特に限定するものではないが、苺や野菜の場合、栽培床1個当たり例えば30Kg~50Kgの範囲のものが想定される。そして、この両栽培床1,1は、相互に同程度の重量に設定されていて、アーム部材4の両端部での重量バランスが均一になるようにしている。又、この各栽培床1,1は、アーム部材4の姿勢(水平姿勢、回転途中及び鉛直姿勢)に拘わらず、それぞれ自身の重量により常に鉛直姿勢で吊下されるようになっている。
ところで、本願の植物栽培装置では、アーム部材4が水平姿勢から鉛直姿勢まで支障なく変位できるようになっているが、そのためにアーム部材4が水平姿勢から鉛直姿勢まで姿勢変更する間は栽培床1が接地しないとともに各種の構成部材同士が相互に衝突しないように設計されている。具体的には、吊下手段5で栽培床1を吊下した状態で栽培床1の吊下位置(アーム部先端部42)から栽培床1の下端までの距離がアーム部41の長さよりかなり短くなるように設計しており、それによってアーム部材4が水平姿勢から鉛直姿勢まで変位しても、下部側で吊下されている栽培床1が地面より上方で支持される(栽培床1が接地しない)一方で、上部側で吊下されている栽培床1が駆動軸3より上方位置で支持される(栽培床1が駆動軸3に接触しない)ようにしている。
本願請求項1の発明の植物栽培装置は、圃場内(例えばビニールハウスH内)において前後方向及び左右方向にそれぞれ複数セットずつ近接状態で設置して、単位面積当たりの栽培面積を広くした状態で使用される。尚、以下の説明では、それぞれ複数の栽培床1及び架台2を前後一列状態で設置した部分を、一単位の植物栽培装置Aとして説明する。
ところで、通常栽培時には、平面視において各栽培床1,1・・を可及的に近接させて単位面積当たりの栽培面積を広くすることが好ましいが、各種の栽培管理や収穫作業を行うには各栽培床1,1間に所定幅Wの作業通路Pを設けることが必要である。
そして、本願の植物栽培装置A,A・・を使用した植物栽培施設(図1、図2)では、各種の作業を必要としない通常栽培時と管理作業や収穫作業を行う作業通路必要時とで次のように変化させる。
まず、通常栽培時には、圃場内に作業通路を設ける必要がないので、図1及び図4に示すようにアーム部材4を水平姿勢に維持することでアーム部材4の両端部(各アーム部先端部42,42)から吊下している両栽培床1,1を同高さの水平位置で支持することができる。このとき、1つの植物栽培装置Aにおける左右の両栽培床1,1間の間隔b(図1、図2、図4参照)は、植物生育上必要最小限の空間であり、栽培植物の種類によるが例えば苺栽培用であれば40cm程度である。
そして、この状態(両栽培床1,1が同高さの水平位置状態)では、左右に隣接設置した両植物栽培装置A,Aにおいて、近接側の両栽培床1,1間の間隔a(図1、図2、図4参照)を植物生育上必要な空間(必要最小限)まで狭めている。この場合、近接側の両栽培床1,1間の間隔a(図1~図2、図4参照)は、上記間隔bと同様に植物生育上必要最小限の空間であり、栽培植物の種類によるが例えば苺栽培用であれば40cm程度である。尚、この間隔aのスペースには、図4に示すように、左右の栽培床1,1に植生している栽培植物の葉が繁茂することも加わって、該間隔aのスペースでは作業通路Pとして使用できないものである。
このように、アーム部材4を水平姿勢に維持させた状態(両栽培床1,1が同高さの水平位置で支持されている状態)では、平面視における単位面積当たりの栽培面積を広くできる(栽培効率が良好になる)とともに、各栽培床1,1が水平方向に並置されているので各栽培床に対して太陽の照射光が均一に照射する(生育環境が良好となる)。
他方、栽培床1,1間に作業通路Pを形成するには、アーム部材4が水平に向く通常栽培状態から駆動軸3を角度90°回転(右回転でも左回転でもよい)させる。すると、水平姿勢(図4及び図5の実線図示)であったアーム部材4が鉛直姿勢(図8及び図5の鎖線図示)に変位し、それによってアーム部材4の両端部(両アーム部先端部42,42)からそれぞれ吊下している両栽培床1,1を上下(鉛直方向)に重合する位置まで移動させることができる。この状態では、平面視において上下に重合する両栽培床1,1の左右各側にそれぞれアーム部41の長さ(厳密には駆動軸3の軸心からアーム部先端部の吊下手段支持位置までの直線距離=例えば30cm程度)と等しい幅のスペースが新たに形成されることになる。このとき、左右に2セットの植物栽培装置A,Aを隣接設置したものにおいて、各側の植物栽培装置A,Aにおけるアーム部材4,4をそれぞれ鉛直姿勢にすることにより、隣接する両植物栽培装置A,A間に、元の間隔aに各側のアーム部退避分を加えた幅W(例えばW=100cm程度)の作業通路Pを確保することができる(図9及び図10参照)。
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の植物栽培装置において、図7に例示するように、駆動軸3として外面四角形の角棒3aを採用する一方、アーム部材4の長さ方向中央部に上記角棒3aと同形同大きさの角穴4aを設け、上記角穴4aに角棒3aを挿通させることによって、駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けていることを特徴としている。
ところで、上記請求項1の植物栽培装置では、図11に示すように、駆動軸3として外面が円形の丸棒3bを使用することができるが、丸棒3b製の駆動軸3を使用したものでは、アーム部材4を駆動軸3に対して相対回転不能に組付けるのに、アーム部材4側の円穴4bに駆動軸3(丸棒3b部分)を挿通させた状態で円穴ba部分と丸棒3b外面とを溶接する必要がある。ところが、この場合、設置現場(圃場)で溶接作業を行う必要があるので、溶接設備の搬入を含めて各種の面倒な作業が多くなる。
そこで、本願請求項2では、図7に示すように、駆動軸3として外面四角形の角棒3aを採用する一方、アーム部材4の長さ方向中央部に駆動軸3の角棒3aと同形同大きさの角穴4aを設け、該角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させるだけで、駆動軸3とアーム部材4とが相対回転しないようにしている。
駆動軸3の角棒3a部分は、中心が空洞の四角鋼管でもよいし、中まで詰まった中実のものでもよい。
アーム部材4と駆動軸3とは、アーム部材4の角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させただけで組付けているので、アーム部材4が駆動軸3の長さ方向に自由にスライドできるようになっている。従って、駆動軸3に対するアーム部材4の組付け位置を栽培床1の長さに応じた適正位置に調整することができる。
又、駆動軸3に対して複数のアーム部材4,4が組付けられているが、各アーム部材4,4はそれぞれ上記角穴4aを駆動軸3の角棒3aに嵌合させているので、各アーム部材4,4の組付け姿勢が自動的に全て同じ姿勢になる(駆動軸3に対するアーム部材4の姿勢を調整する必要がない)。
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の植物栽培装置において、図15~図16に例示するように、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上のアーム部材4,4・・を設置している一方、隣接する2本を1組とするアーム部材4,4間ごとにそれぞれ2個を1組とする栽培床1,1を設置していることを特徴としている。
この請求項3の植物栽培装置では、2台の架台2,2間の間隔を広くすることで、駆動軸3の長さ方向にアーム部材4,4・・の使用本数より1個少ない個数の栽培床1を列状に設置できる。例えば図15~図16の例示のように、2台の架台2,2間に4本のアーム部材4,4・・を使用した場合には、駆動軸3の長さ方向に3個(左右で6個)の栽培床1,1・・を設置できる。換言すると、駆動軸3の長さ方向に複数個の栽培床1を設置したものでも、それら複数個の栽培床1を2台の架台2,2のみで支持できる。
又、この請求項3の植物栽培装置では、3本以上使用されている各アーム部材4,4・・における中間部に位置するアーム部材4を、その前後に設置される両栽培床1,1の支持用部材として共用できる。
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項1又は2の植物栽培装置において、図17~図20に例示するように、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上のアーム部材4,4,4A,4Aを設置して、2個を1組とする栽培床1,1を3本以上のアーム部材4,4,4A,4Aで支持している一方、3本以上のアーム部材における中間部に位置するアーム部材4A,4Aに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aに接触するのを防止するための接触防止用の凹み部44を設けていることを特徴としている。
この請求項4の植物栽培装置は、隣接する2台の架台2,2間の間隔を広くする一方、両架台2,2間に長尺(例えば5m超の長さ)で一体に連続する栽培床1,1を設置するのに適したものである。そして、長尺(例えば5m超の長さ)の栽培床1を支持する場合、栽培床両端の2箇所のみをアーム部材4,4で支持するものでは、栽培床1の中間部分が重みで垂れることがあるが、この請求項4の植物栽培装置のように、長尺の栽培床1の長さ方向中間部を駆動軸3に組付けたアーム部材4Aで支持することにより、栽培床1の中間部分が重みで垂れるのを防止できる。
ところで、アーム部材4Aで栽培床1の長さ方向中間部を支持したものでは、該アーム部材が直線状のものであると、該アーム部材を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させる途中で吊下している栽培床1とアーム部材とが接触(衝突)してしまう。
そこで、この請求項4の植物栽培装置では、栽培床1の長さ方向中間部を支持するアーム部材4Aに栽培床接触防止用の凹み部44を設けていることにより、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようになる。従って、栽培床1の長さ方向中間部をアーム部材4Aで支持したものであっても、アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができる。尚、栽培床1,1の両端部を支持するアーム部材4,4は、上記の凹み部44を有しない直線状のものを使用することができる。
[本願請求項5の発明]
本願請求項5の発明は、上記請求項1から4のいずれか1項に記載の植物栽培装置において、架台2は所定間隔をもって3台以上を一列状態で設置し、それら3台以上の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設し、隣接する2台の架台2,2間の各スペースごとに、隣接する2台の架台2,2間に架設された駆動軸3部分と2個1組とする栽培床1,1とアーム部材4と各吊下手段5,5とを1セットとする栽培ユニットUをそれぞれ装備していることを特徴としている。
1本の駆動軸3を3台以上の架台2,2・・に跨がって架設しようとすると、該駆動軸3が極めて長尺になることが予想されるが、共通の駆動軸が長尺になる場合は、所定小長さの複数本を順次ジョイントで直線状に連結して1本の駆動軸3にすることができる。
この請求項5の発明の植物栽培装置では、上記の構成により、共通する1本の駆動軸3を回転させることで、順次隣接する2つの架台2,2間の各スペースごとに配置している各栽培ユニットU,U・・の各アーム部材4,4・・を同時に回動させることができる。従って、1本の駆動軸3を回転操作するだけで、全ての栽培ユニットU,U・・について2個1組の栽培床1,1を同時に水平方向に位置する姿勢と鉛直方向に位置する姿勢との間で変位させることができる。
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の植物栽培装置では、駆動軸3の回転と共にアーム部材4が水平方向に向く水平姿勢と上下方向に向く鉛直姿勢との間で変位でき、さらにアーム部材4が水平姿勢状態では各アーム部先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が水平方向に間隔をもった同高さ位置に支持される一方、アーム部材4が鉛直姿勢状態では各アーム部先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が鉛直方向に重合する位置に支持されるように構成されている。従って、この請求項1の植物栽培装置には次のような効果がある。
(1)駆動軸3を回転させることで、両栽培床1,1の位置を水平方向の同高さ位置と上下方向に重合する位置との間で変位させることができるので、単一構成の植物栽培装置であっても、両栽培床1,1の姿勢を、水平方向に並置される姿勢と鉛直方向に重合する姿勢との2通りに変更することができる。つまり、通常栽培時には、両栽培床1,1を水平位置に並置させることで、栽培面積を広くして収穫量を多くできるとともに太陽光を均一に受けることができるようにする一方、作業通路必要時には両栽培床1,1を鉛直方向に重合させることで、左右に隣接する栽培床1,1間に十分な幅の作業通路を設けることができる。
(2)アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させ得る構成を有しているので、アーム部材4の両端部から吊下している両栽培床1,1を確実に上下同位置に重合させることができ、それによって両栽培床1,1による平面視での占有スペースを小さくできる。換言すると、栽培床の姿勢変位による作業通路幅を大きく取れることで、必要幅の作業通路を確保するのに予め余剰スペースを設けておく必要がなくなり、その分、単位面積当たりの作付け面積を広くできる。
(3)両栽培床1,1の姿勢を変更させるのに駆動軸3を回転させるだけで達成できるので、両栽培床1,1を姿勢変更させるための構成が簡単で且つ安価に製作できるとともに、栽培床の姿勢変更操作(駆動軸3の回転操作)が簡単に行える。
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、請求項1の植物栽培装置において、駆動軸3として外面四角形の角棒3aを採用し、アーム部材4の長さ方向中央部に角穴4aを設け、該角穴4aに角棒3aを挿通させることによって、駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けている。
このように、本願請求項2の植物栽培装置では、アーム部材4を駆動軸3に組付けるのに、アーム部材4側の角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させるだけで、角棒3aと角穴4aとの角張った係合により両者(駆動軸とアーム部材)を相対回転不能状態で組付けることができる。つまり、アーム部材4と駆動軸3とを特別な手段(例えば溶接やボルト止め等)を用いることなく、相対回転不能に組付けることができる。
又、アーム部材4と駆動軸3とは、アーム部材4の角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させただけで組付けているので、アーム部材4が駆動軸3の長さ方向にスライドできるようになっている。
そして、本願請求項2の植物栽培装置は、上記請求項1の効果に加えて、次のような効果がある。
まず、上記角棒3aと上記角穴4aとの係合という簡単な構成で、アーム部材4と駆動軸3とを確実に相対回転不能に組付けることができる。
又、アーム部材4を駆動軸3の長さ方向にスライドできるので、駆動軸3に対するアーム部材4の組付け位置を栽培床1の長さに応じた適正位置に調整することができる。
さらに、駆動軸3に対して複数のアーム部材4,4が組付けられているが、各アーム部材4,4はそれぞれ上記角穴4aを駆動軸3の角棒3aに嵌合させているので、各アーム部材4,4の組付け姿勢が特別な位置調整(姿勢調整)をすることなしに自動的に全て同じ姿勢になる(駆動軸3に対するアーム部材4の姿勢を調整する必要がない)。
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、請求項1又は2の植物栽培装置において、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上のアーム部材4,4・・を設置し、さらに隣接する2本を1組とするアーム部材4,4間ごとにそれぞれ2個を1組とする栽培床1,1を設置したものである。
従って、この請求項3の植物栽培装置は、上記請求項1又は2の効果に加えて、設置される栽培床1の個数の割りに使用する架台2の台数を少なくでき、且つ2台1組の架台2,2間に複数個の栽培床1,1,1を設置できるとともに、中間部に位置するアーム部材4をその前後に設置される両栽培床1,1の支持用に共用できるので、架台2(又は栽培床1)やアーム部材4等の設置効率が良好となる(部材点数を削減できる)という効果がある。
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、請求項1又は2の植物栽培装置において、隣接する2台の架台2,2間に設置した2個を1組とする栽培床1,1を3本以上のアーム部材4,4,4A,4Aで支持し、さらに中間部に位置するアーム部材4A,4Aに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aに接触するのを防止するための接触防止用の凹み部44を設けたものである。
そして、この請求項4の植物栽培装置では、栽培床1の長さ方向中間部を中間部に位置するアーム部材4Aで支持できるとともに、アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようになる。
従って、本願請求項4の植物栽培装置では、上記請求項1又は2の効果に加えて、栽培床1が長尺(例えば5m超)であっても栽培床1の長さ方向中間部を中間部に位置するアーム部材4Aで支持しているので、栽培床1の長さ方向中間部が重みで垂れ下がらないとともに、栽培床1の長さ方向中間部をアーム部材4Aで支持したものであっても、アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができるという効果がある。
[本願請求項5の発明の効果]
本願請求項5の発明は、上記請求項1から4のいずれか1項の植物栽培装置において、3台以上の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設し、隣接する2台の架台2,2間の各スペースごとに、隣接する2台の架台2,2間に架設された駆動軸3部分と2個1組とする栽培床1,1とアーム部材4と各吊下手段5,5とを1セットとする栽培ユニットUをそれぞれ装備している。
従って、この請求項5の発明の植物栽培装置では、上記請求項1~4の効果に加えて、次のような効果がある。
まず、1本の駆動軸3を複数の栽培ユニットU,U・・の各駆動軸として共用できるので、それぞれの栽培ユニットUに個別の駆動軸3を用いる場合より構成が簡単になる。
又、1台の架台2をその前後に隣接設置される両栽培ユニットU,Uの支持用に共用できるので、栽培ユニットUの設置個数の割に架台2の使用個数を削減できる。
さらに、共通する1本の駆動軸3を回転させることで、複数の栽培ユニットU,U・・の各アーム部材4,4・・を同時に回動させることができるので、各栽培ユニットU,U・・のそれぞれアーム部材4,4・・を水平姿勢と鉛直姿勢との間で姿勢変更させる操作が簡単となる(共通の駆動軸3を1回回転操作するだけでよい)。
本願第1実施形態の植物栽培装置をビニールハウス内において前後左右にそれぞれ多数設置してなる植物栽培施設の正面図。
図1の植物栽培施設の平面図。
図2の一点鎖線で囲った部分の拡大図。
図1の植物栽培施設の一部拡大図(1棟のビニールハウス部分の拡大図)。
本願第1実施形態の植物栽培装置であってアーム部材を水平姿勢にした状態での正面図(図4の一点鎖線で囲った部分の拡大図)。
図5の植物栽培装置の右側面図。
図5及び図6の植物栽培装置の一部斜視図。
図5の植物栽培装置からの状態変化図で、アーム部材を鉛直姿勢にした状態での正面図。
図4の植物栽培施設からの状態変化図で、各植物栽培装置のアーム部材を鉛直姿勢にした状態(図8の状態)での正面図。
図9の状態の植物栽培施設の平面図。
本願第1実施形態の第1変形例(駆動軸に丸棒を使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第1実施形態の第2変形例(吊下手段に吊プレートを使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第1実施形態の第3変形例(吊下手段に別の吊プレートを使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第1実施形態の第4変形例(吊下手段にさらに別の吊プレートを使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第2実施形態の植物栽培装置の側面図。
図15(本願第2実施形態)の植物栽培装置の平面図。
本願第3実施形態の植物栽培装置の側面図。
図17(本願第3実施形態)の植物栽培装置の平面図。
図17(本願第3実施形態)のXIX-XIX線拡大矢視図。
図19(本願第3実施形態)からの状態変化図で、アーム部材を鉛直姿勢にした状態図。
既設の植物栽培施設(ビニールハウス内に設置したもの)の正面図。
図21(既設)の植物栽培施設の平面図。
以下、添付の図面を参照して本願のいくつかの実施形態の植物栽培装置を説明すると、図1~図10には第1実施形態、図11~図14にはそれぞれ第1実施形態の第1~第4の変形例、図15~図16には第2実施形態、図17~図20には第3実施形態、の植物栽培装置が示されている。
<第1実施形態>
図1~図2には、本願第1実施形態の植物栽培装置AをビニールハウスH内において左右に複数基設置してなる植物栽培施設が示されている。尚、以下の説明において、ビニールハウスHの幅方向を左右方向といい、ビニールハウスHの長さ方向を前後方向ということがある。
図1~図2に例示する植物栽培施設において、1棟のビニールハウスHの大きさは、前後長さが30m、左右幅が5.2m程度である。そして、図1及び図2に示す植物栽培施設の例では左右に4連のビニールハウスH,H・・を並設している。尚、1棟のビニールハウスHの大きさやビニールハウスHの並設数等は、植物栽培施設の敷地面積に応じて変更できることはもちろんである。
第1実施形態で採用されている植物栽培施設では、各ビニールハウスH,H・・内にそれぞれ所定列数の植物栽培装置A,A・・を設置している。尚、図1及び図2に示す植物栽培施設の例では、1棟のビニールハウスH内に、左右に4列の植物栽培装置Aが設置されている。
第1実施形態の植物栽培装置Aの構成について、図3~図10を併用して詳細に説明すると、この第1実施形態の植物栽培装置Aは、2個を1組とする植物栽培用の栽培床1,1と、所定間隔をもって設置した2台を1組とする架台2,2と、2台の架台2,2間の所定高さ位置に回転可能状態で架設した駆動軸3と、駆動軸3の軸直交方向両側にあってそれぞれ外方に所定長さ伸びる一対のアーム部41,41を有し且つ両アーム部41,41が駆動軸3の回転と共に回動するアーム部材4と、各アーム部41,41の各先端部42,42から各栽培床1,1をそれぞれ吊下する吊下手段5,5とを基本構成として用いている。
栽培床1は、この第1実施形態では細長い容器内に培養土を充填したものが採用されている。この栽培床1の1個の大きさは、特に限定するものではないが一例として幅が25cm、高さが10cm、長さが2~3m程度のものが想定できる。そして、この栽培床1は、後述する2台1組として設置される両架台2,2間の間隔に応じて、1個の状態又は複数個(例えば2~3個)を1列に並べた状態で使用することができる。尚、栽培床1としては、容器に代えて袋内に培養土を充填したものも採用可能である。
使用される一単位の栽培床1としては、1個の場合と複数個(1列に連続状態)の場合とがあるが、それら一単位の栽培床1は、共通の載置台11に載せられる。この載置台11としては、図5~図7に示すように、前後に間隔をもった2つの受け材12,12上に複数本(図示例では3本)のパイプ13,13,13を架設したものを採用できる。尚、載置台11上に載せた栽培床1は、載置台11に対して位置ずれしないように適宜の工夫がなされる。
上記架台2は、図4~図7に明示するように、複数のフレーム材を組付けて縦長枠体状に形成した支持台21が使用されている。この支持台21の高さは、60cm~70cm程度が適当である。そして、この架台2は、支持台21の上端部に駆動軸3を回転可能に支持する軸受23付きのブラケット22を設けて構成されている。
架台2は、基本的には2台を1組として機能する。そして、2台1組の架台2,2は、図2~図3及び図6に示すように、圃場(図示例ではビニールハウスH内)における前後方向に所定間隔をもった2位置にそれぞれ立設固定している。2台を1組とする架台2,2間の間隔は、使用する一単位の栽培床1の長さを基準にして設定されるが、例えば2~5mの範囲内の適宜の間隔に設定される。
この第1実施形態では、本願請求項5に対応する構成として、図2に示すように複数個の栽培ユニットU,U・・を前後一列状態で形成するようにしているが、その際、3台以上の架台2を前後方向に所定間隔をもって順次一列状態で設置することで、図3に拡大図示するように中間に位置する1台の架台2をその前後2つの栽培ユニットU,Uの支持台として共用できるようにしている(詳細は後述する)。
この第1実施形態で使用している駆動軸3は、本願請求項2に対応するもので、図7に明示するように外面四角形の角棒3aを採用している。尚、この角棒3aを用いた駆動軸3の機能については、後述する。
この駆動軸3は、本願請求項1では2台1組の架台2,2ごとに1本ずつ使用してもよいが、この第1実施形態では、本願請求項5に対応させて、多数台(例えば10台程度)の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設している。即ち、図2~図3及び図6に示すように、多数台(例えば10台程度)の架台2,2・・を前後方向に所定間隔をもって一列状態で設置し、その全部の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設している。その場合、1本の駆動軸3の全長が非常に長くなる(30m程度までが現実的)が、1本が例えば2~6m程度の軸棒を適数本ジョイントで連続させることで必要長さ(例えば30m程度の長さ)を有する1本の駆動軸3に形成することができる。
この駆動軸3は、各架台2,2・・に対して回転可能となっていて、該駆動軸3を手動(人力)で回転させることができるようになっている。この第1実施形態では、駆動軸3の一端側にハンドル61及び減速機62付きの回転操作具6を設けており、該回転操作具6のハンドル61を回すことで共通する1本の駆動軸3を回転(右回転又は左回転)させることができる。
尚、上記回転操作具6は、この第1実施形態では、ハンドル61及び減速機62付きのものを採用し、各列の植物栽培装置A,A・・ごとに各回転操作具6,6・・をそれぞれ固定状態で取付けているが、他の実施形態では、単一の回転操作具6を植物栽培装置Aに対して着脱自在に装備できるようにし、その単一の回転操作具6を全列の植物栽培装置A,A・・の駆動軸回転用に共用できるようにしてもよい。その場合は、回転操作具6の設備コストを大幅に低減できる。
上記アーム部材4は、2個1組の栽培床1,1を所定間隔をもたせた状態で吊り下げ支持するものであるが、この第1実施形態では、1箇所の栽培ユニットUについて2本1組のアーム部材4,4が使用されている。
2本1組の各アーム部材4,4は、相互に同構造で、駆動軸3の軸直交方向両側にそれぞれ所定長さ伸びる一対のアーム部41,41を有している。尚、この第1実施形態で使用されているアーム部材4は、2本のアーム部41,41を直線方向に一体に連続させた鋼板製の長板材が使用されている。
アーム部材4の各アーム部41,41は、駆動軸3からその軸直交方向の両外方に向けてそれぞれ30cm~40cm程度の同長さを有している。尚、ここに記載した各アーム部41,41の長さ(30cm~40cm)は、特に限定するものでなく、栽培床1の幅や吊下高さ及び栽培植物の生育高さ等に応じて適宜に設定できる。
そして、この2本1組の各アーム部材4,4は、図3及び図6に示すように、共通の駆動軸3に対して、前後に隣接する2台1組の架台2,2の各内側近接位置において駆動軸3の軸線方向から見て完全に重合する同一姿勢で組付けている。尚、この両アーム部材4,4の前後間隔は、一単位の栽培床1の長さとほぼ同程度になっている。
駆動軸3に対するアーム部材4の組付けは次のように行っている。即ち、図1~図7の第1実施形態では、駆動軸3として外面四角形の角棒3a(図7参照)を使用している関係で、長板材からなるアーム部材4の長さ方向中央部に駆動軸3の外形と同形同大きさの角穴4a(図7参照)を設け、該角穴4aに駆動軸3(角棒3a)を挿通させるだけで駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けている。この場合、アーム部材4の角穴4aに駆動軸3(角棒3a)を挿通させて駆動軸3(角棒3a)とアーム部材4(角穴4a)とを係合させるという簡単な構成で、アーム部材4と駆動軸3とを確実に相対回転不能に組付けることができるので、両者の組付けに特別な手段(例えば溶接やボルト止め等)を用いる必要がない。
ところで、駆動軸3とアーム部材4との組付け形態について、本願請求項1では、図11に示す第1変形例のように、駆動軸3として丸棒3bを使用する一方、アーム部材4の長さ方向中央部に円穴4bを設けて、アーム部材4側の円穴4bに駆動軸3(丸棒3b部分)を挿通させた状態で円穴4b部分と丸棒3b外面とを溶接により固定したものを採用することができる。ところが、上記図11(第1変形例)の組付け形態の場合は、設置現場(圃場)で溶接作業を行う必要があるので、溶接設備の搬入を含めて各種の面倒な作業が多くなり、結果として上記第1実施形態(図7)のように角棒3a製の駆動軸3と角穴4a付きのアーム部材4との組付け形態の方が利点が多い。尚、角棒3a製の駆動軸3と角穴4a付きのアーム部材4との組付け形態の利点については後述する。
図1~図10の第1実施形態では、前後2台の架台2,2間には、順次一列状態でそれぞれ栽培ユニットUが設置されているが、この各栽培ユニットU,U・・における全てのアーム部材4,4・・も、共通の駆動軸3に対して該駆動軸3の軸線方向から見て完全に重合する同一姿勢で固定されている。
そして、この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、共通する1本の駆動軸3を回転させると、その駆動軸3に組付けている全てのアーム部材4,4・・が同時に且つ同じ姿勢で駆動軸3と供回りするようになっている。そして、この各アーム部材4,4・・は、少なくとも水平姿勢(図4及び図5の実線図示姿勢)と鉛直姿勢(図8及び図5の鎖線図示姿勢)との間で変位できればよいが、実際には、駆動軸3は角度360°の範囲で回転させることができ、従ってアーム部材4を駆動軸3の全周に亘って旋回させることができる。尚、駆動軸3は、適宜のロック手段により、アーム部材4が水平方向に向く位置と鉛直方向に向く位置の2位置でそれぞれ回転不能にロックできるようにしている。
前後2つのアーム部材4,4には、左右各側に1単位ずつの栽培床1,1がそれぞれ前後2つずつの吊下手段5,5により吊下されている。尚、この各栽培床1,1の重量は、相互に同程度に設定されていて、前後両アーム部材4,4の左右両端部での重量バランスが均一になるようにしている。
上記吊下手段5は、この第1実施形態では、図5、図7、図8等に明示するように、アーム部41の先端部42から2本のワイヤ51,51を逆V形に配置し、該各ワイヤ51,51の下端部を載置台11の受け材12の各端部に固定しているとともに、各ワイヤ51,51の上端部に係止具52を取付け、この係止具52をアーム部41の先端部42に設けたピン43に対して回動自在に係止して構成されている。
この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、1箇所の栽培ユニットUについて前後1組とする2つの吊下手段5,5を前後両アーム部材4,4の左右各端部に1セットずつ使用して、両アーム部材4,4の左右各側に1個ずつの栽培床1,1を吊持している。そして、この各栽培床1,1は、アーム部材4,4の姿勢(水平姿勢及び鉛直姿勢)に拘わらず、それぞれ自身の重量により常に鉛直姿勢で吊下されるようになっている。
ところで、吊下手段5にワイヤ51,51を用いて栽培床1を吊持するようにしたものでは、アーム部材4と共に栽培床1を駆動軸3の回りで回動させたときにワイヤ51が撓むことで栽培床1が左右に揺れ易く、回動操作が終了しても揺れが止まりにくい。又、栽培床1の揺れが大きい場合は、その付近で作業をしていると栽培床1が人に干渉(衝突)する恐れがある。
そこで、吊下手段5として、上記第1実施形態のように栽培床吊持用にワイヤ51を用いたものに代えて、図12~図14に示すようないくつかの変形例(第2~第4の変形例)の構成を採用することができる。
図12の第2変形例の吊下手段5では、上記第1実施形態のワイヤ51に代えて金属薄板製の吊プレート53を使用している。この吊プレート53は、全面が塞がった二等辺三角形の形状を有し、その上端部53aをアーム部41の先端部42にピン43で揺動自在に枢支している。又、この吊プレート53の底辺部分には、栽培床1の載置台11となるパイプ13(3本)の各端部13aを挿通させる3つの穴54,54,54が所定間隔をもって形成されている。
図12に示す第2変形例の吊下手段5は、1つの栽培床1に対して前後一対(2つ)使用し、前後の吊プレート53の各穴54,54,54にそれぞれパイプ13(3本)の各端部を挿通して保持させることで、前後の両吊下手段5間に載置台11となる3本のパイプ13,13,13を支持している。尚、載置台11上には栽培床1が位置保持された状態で載せられる。
そして、この第2変形例で使用される吊下手段5では、吊プレート53の上端部53aがアーム部先端部42においてピン43で揺動自在に枢支されているので、駆動軸3の回転によりアーム部材4が回動したときに栽培床1の重量により吊プレート53が常に鉛直姿勢に維持されるようになっている。又、この吊プレート53は、金属薄板製で剛性があるので、アーム部材4と共に栽培床1を駆動軸3の回りで回動させたときにも栽培床1が左右に揺れにくい。
図13の第3変形例の吊下手段5は、図12の第2変形例で使用している吊プレート53と同様に外形が二等辺三角形の形状ではあるが、二等辺三角形の中央部を大きく切除して空間部56とした枠状プレート55を使用している。尚、図13の第3変形例の吊下手段5(枠状プレート55)におけるその他の構成については、図12の第2変形例の吊下手段(吊プレート53)と同じであるので、その第2変形例の説明を援用する。
この第3変形例(図13)の吊下手段5では、中央部に大きな空間部56を設けた枠状プレート55を使用しているので、軽量化を達成できる。又、中央部に大きな空間部56を設けたものであっても、金属薄板製であるので保形性は十分に確保でき、アーム部材4と共に栽培床1を駆動軸3の回りで回動させたときにも栽培床1が左右に揺れにくい。
図14の第4変形例の吊下手段5は、上記第3変形例(図13)の吊下手段5(枠状プレート55)と同様に二等辺三角形の枠状プレート57を使用している。そして、この第4変形例(図14)の吊下手段5(枠状プレート57)では、載置台11となる各パイプ13(3本)の端部13aを係止するのに、底辺枠58の上面部分にパイプ13の外形と同形の半円形の凹み部59(3箇所)を設けている。
この第4変形例の吊下手段5では、載置台11となるパイプ13(3本)の端部13aを枠状プレート57に組付けるのに、パイプ端部13aを底辺枠58の凹み部59に上方から落とし込むことで位置ずれ不能に保持させることができる。従って、この第4変形例(図14)の吊下手段5(枠状プレート57)では、枠状プレート57をアーム部41にセットした状態でも、該枠状プレート57に対するパイプ13の組付けが容易に行える。
ところで、上記第1実施形態(図1~図10)の植物栽培装置では、アーム部材4として平板状の長板材を用いているが、平板状のアーム部材4では、強度面(特にねじり方向の強度面)で若干劣るところがある。
そこで、上記第2~第4の各変形例(図12~図14)では、アーム部材4としてC形鋼を使用して強度面の補強を図っている。尚、他の実施形態として、C形鋼を用いたアーム部材4を上記第1実施形態(図1~図10)のアーム部材として使用してもよい。
上記第1実施形態(図1~図10)の植物栽培装置Aは、本願請求項5に対応させたもので、図2に示すように前後方向に所定間隔をもって一列状態で複数個の架台2,2・・を設け、その前後2つの架台2,2間に順次一列状態で栽培ユニットU,U・・を設けたものである。そして、この前後一列状態の植物栽培装置Aを各棟のビニールハウスH,H・・内に所定の左右近接状態で複数列設置して、所望の面積範囲に植物栽培施設を設置している(図1、図2参照)。
図1~図2の植物栽培施設において、各種の作業を必要としない通常栽培時には、図1~図4に示すように、各列の植物栽培装置A,A・・における各アーム部材4を水平姿勢にして、左右1組の栽培床1,1を左右同高さ位置で支持する。この状態では、左右に隣接する各列の植物栽培装置A,A・・における近接側の各栽培床1,1間の間隔a,a・・が例えば40cm程度まで狭くなることで、平面視における単位面積当たりの栽培面積を広くできる(栽培効率が良好になる)。又、この状態では、各栽培床1,1が水平方向に並置されているので、各栽培床1,1・・に対して太陽の照射光が均一に照射する(生育環境が良好となる)。
左右に隣接する植物栽培装置A,Aの栽培床1,1・・間の間隔aは、栽培植物生育上、葉が繁茂するなど必要な最小限のスペースを確保していればよく、例えば40cm程度のかなり狭いものでよい。従って、この間隔aは、各種作業を行うための必要な作業通路幅(図9及び図10の作業通路幅W)は確保できないが、通常栽培時には特に作業通路は必要ないので差し支えない。
他方、栽培床1に対して各種の作業をするには、左右の栽培床1,1間に作業通路Pを形成する必要がある。そしてこの作業通路Pを形成するには、アーム部材4が水平に向く通常栽培状態(図4及び図5の実線図示状態)から、回転操作具6により駆動軸3を角度90°回転(図5の例では左回転)させる。すると、水平姿勢であったアーム部材4が図5に鎖線図示(符号4’)する鉛直姿勢に変位し、それによってアーム部材4’の両端部(両アーム部先端部42’,42’)からそれぞれ吊下している両栽培床1’,1’を上下(鉛直方向)に重合する位置まで移動させることができる(図8の状態)。
図8に示すアーム部材4が鉛直姿勢状態では、平面視において上下に重合する両栽培床1,1の左右各側にそれぞれアーム部41の長さ程度の幅のスペースが形成される。そして、左右に隣接する2列の植物栽培装置A,Aにおいて各側のアーム部材4,4を鉛直姿勢にすると、図9及び図10に示すように左右に隣接する両植物栽培装置A,A間に、元の間隔aに各側のアーム部退避分を加えた幅W(例えばW=100cm程度)の作業通路Pを確保することができる(図9及び図10参照)。尚、図9及び図10の状態では、全列の植物栽培装置A,A・・についてそれぞれアーム部材4を鉛直姿勢に姿勢変更させているが、実際には作業通路Pを形成すべき場所の左右2つの植物栽培装置A,Aについてのみ行えばよい。
又、図9及び図10に示す作業通路形成状態(アーム部材4が鉛直姿勢状態)から図1~図4に示す通常栽培状態(アーム部材4が水平姿勢状態)に戻すには、回転操作具6を操作して(又はアーム部材4を押して)駆動軸3を角度90°回転させることで達成できる。
上記した第1実施形態(図1~図10)の植物栽培装置Aは、本願の請求項1と請求項2と請求項5に対応した構成を有したものであり、この第1実施形態の植物栽培装置Aには次のような各種の効果がある。
(1)駆動軸3を回転させることで、両栽培床1,1の位置を水平方向の同高さ位置と上下方向に重合する位置との間で変位させることができるので、単一構成の植物栽培装置Aであっても、両栽培床1,1の姿勢を水平方向に並置される姿勢と鉛直方向に重合する姿勢との2通りに変更することができる。つまり、通常栽培時には、両栽培床1,1を水平位置に並置させることで、栽培面積を広くして収穫量を多くできるとともに太陽光を均一に受けることができるようにする一方、作業通路必要時には両栽培床1,1を鉛直方向に重合させることで、左右に隣接する栽培床1,1間に十分な幅の作業通路を確保することができる。
(2)アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させ得る構成を有しているので、アーム部材4の両端部から吊下している両栽培床1,1を確実に上下同位置に重合させることができ、それによって両栽培床1,1による平面視での占有スペースを小さくできる。換言すると、栽培床の姿勢変位による作業通路幅を大きく取れることで、必要幅の作業通路を確保するのに予め余剰スペースを設けておく必要がなくなり、その分、単位面積当たりの作付け面積を広くできる。
(3)両栽培床1,1の姿勢を変更させるのに駆動軸3を回転させるだけで達成できるので、両栽培床1,1を姿勢変更させるための構成が簡単で且つ安価に製作できるとともに、栽培床1,1の姿勢変更操作が簡単に行える。
(4)駆動軸3として角棒3aを採用し、アーム部材4に設けた角穴4aに角棒3aを挿通させることによって、駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けているので、アーム部材4と駆動軸3とを、特別な手段(例えば溶接やボルト止め等)を用いることなく簡単な構成で確実に相対回転不能に組付けることができる。
(5)アーム部材4を駆動軸3の長さ方向にスライドできるので、駆動軸3に対するアーム部材4の組付け位置を栽培床1の長さに応じた適正位置に調整することができる。
(6)駆動軸3に対して複数のアーム部材4,4が組付けられているが、各アーム部材4,4はそれぞれ上記角穴4aを駆動軸3の角棒3aに嵌合させているので、各アーム部材4,4の組付け姿勢が特別な位置調整(姿勢調整)をすることなしに自動的に全て同じ姿勢になる(駆動軸3に対するアーム部材4の姿勢を調整する必要がない)。
(7)1本の駆動軸3を複数の栽培ユニットU,U・・の各駆動軸として共用できるので、それぞれの栽培ユニットUに個別の駆動軸3を用いる場合より構成が簡単になる。
(8)1台の架台2をその前後に隣接設置される両栽培ユニットU,Uの支持用に共用できるので、栽培ユニットUの設置個数の割に架台2の使用個数を削減できる。
(9)共通する1本の駆動軸3を回転させることで、複数の栽培ユニットU,U・・の各アーム部材4,4・・を同時に回動させることができるので、各栽培ユニットU,U・・のそれぞれアーム部材4,4・・を水平姿勢と鉛直姿勢との間で姿勢変更させる操作が簡単となる(共通の駆動軸3を1回回転操作するだけでよい)。
<第2実施形態>
図15~図16には、本願請求項3に対応する第2実施形態の植物栽培装置が示されている。この第2実施形態の植物栽培装置は、図15~図16に示すように、上記第1実施形態の植物栽培装置の構成に加えて次の構成を採用している。
即ち、第2実施形態(図15~図16)の植物栽培装置は、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上(図示例では4本)のアーム部材4,4・・を設置している一方、隣接する2本を1組とするアーム部材4,4間ごとにそれぞれ2個を1組とする栽培床1,1の両端部をそれぞれ吊下手段5,5で吊下している。尚、架台2、栽培床1、駆動軸3、アーム部材4、吊下手段5の各構成は、上記第1実施形態のものと同じである。
図15~図16の実線図示状態は、各アーム部材4,4・・を水平姿勢に維持した状態のものであり、図15に鎖線図示する状態は、駆動軸3を角度90°回転させて各アーム部材4’,4’・・を鉛直姿勢に変位させることで1組の栽培床1’,1’を上下に重合する位置に変位させたものである。
この第2実施形態の植物栽培装置では、2台の架台2,2間の間隔を広くすることで、駆動軸3の長さ方向にアーム部材4,4・・の使用本数より1個少ない個数の栽培床1を列状に設置できる。図15~図16の例示では、2台の架台2,2間に4本のアーム部材4,4・・を使用することで、駆動軸3の長さ方向に3個(左右で6個)の栽培床1,1・・を設置している。換言すると、駆動軸3の長さ方向に複数個(3個)の栽培床1を設置したものでも、それら複数個の栽培床1を2台の架台2,2のみで支持している。
又、この第2実施形態の植物栽培装置では、4本使用されている各アーム部材4,4・・における中間部に位置する2本のアーム部材4,4を、その前後に設置される両栽培床1,1の支持用部材として共用している。
従って、この第2実施形態(図15~図16)の植物栽培装置は、上記第1実施形態の効果に加えて、設置される栽培床1の個数の割りに使用する架台2の台数を少なくでき、且つ2台1組の架台2,2間に複数個の栽培床1,1,1を設置できるとともに、中間部に位置するアーム部材4をその前後に設置される両栽培床1,1の支持用に共用できるので、架台2(又は栽培床1)やアーム部材4等の設置効率が良好となる(部材点数を削減できる)という効果を達成できる。
<第3実施形態>
図17~図20には、本願請求項4に対応する第3実施形態の植物栽培装置が示されている。この第3実施形態の植物栽培装置は、図17~図20に示すように、上記第1実施形態の植物栽培装置の構成に加えて次の構成を採用している。
即ち、第3実施形態(図17~図20)の植物栽培装置は、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上(図示例では4本)のアーム部材4,4,4A,4Aを設置して、2個を1組とする栽培床1,1を3本以上(図示例では4本)のアーム部材4,4,4A,4Aで支持している一方、各アーム部材4,4,4A,4Aにおける中間部に位置するアーム部材(2本)4A,4Aに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4に接触するのを防止するための接触防止用の凹み部44(図19、図20参照)を設けている。尚、この第3実施形態では、各栽培床1は、容器部分の上端部を吊下手段5(ワイヤ)で吊持している。
この第3実施形態(図17~図20)の植物栽培装置では、隣接する2台の架台2,2間の間隔を広くする一方、両架台2,2間に長尺(例えば5m超の長さ)で一体に連続する栽培床1,1を設置するのに適したものである。そして、長尺(例えば5m超の長さ)の栽培床1を支持する場合、栽培床両端の2箇所のみをアーム部材4,4で支持するものでは、栽培床1の中間部分が重みで垂れることがあるが、この第3実施形態の植物栽培装置のように、長尺の栽培床1の長さ方向中間部(図示例では2箇所)を駆動軸3に組付けたアーム部材4A,4Aで支持することにより、栽培床1の中間部分が重みで垂れるのを防止するようにしている。
ところで、この第3実施形態のようにアーム部材4Aで栽培床1の長さ方向中間部を支持したものでは、該アーム部材が第1実施形態のように直線状のものであると、該アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させる途中で吊下している栽培床1とアーム部材4とが接触(衝突)してしまう。
そこで、この第3実施形態植物栽培装置では、図19及び図20に示すように、栽培床1の長さ方向中間部を支持するアーム部材4A,4Aに上記した栽培床接触防止用の凹み部44を設けている。この凹み部44付きのアーム部材4Aは、駆動軸3を挟んで両側にコ形フレーム45,45を有し、その各コ形フレーム45,45の内側に栽培床1を収容し得る凹み部44,44を設けている。
この凹み部44付きのアーム部材4Aは、その中間部にある中間突出片45aの先端部を駆動軸3に対して相対回転不能に組付けている。又、この凹み部44付きのアーム部材4Aでは、各コ形フレーム45,45の端部側にある端部突出片45b,45bの先端部にそれぞれ吊下手段5,5を介して栽培床1,1を支持している。尚、この第3実施形態では、各コ形フレーム45,45の端部側にある端部突出片45b,45bが上記第1実施形態のアーム部先端部42に相当する。
そして、この第3実施形態の植物栽培装置では、上記凹み部44付きのアーム部材4Aが水平姿勢(図19の状態)から鉛直姿勢(図20の状態)まで変位したときに、栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようにしている。従って、栽培床1の長さ方向中間部をアーム部材4Aで支持したものであっても、該アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができる。尚、栽培床1,1の両端部を支持するアーム部材4,4は、上記の凹み部44を有しない直線状のもの(第1実施形態で使用しているもの)を使用することができる。
上記のように、この第3実施形態(図17~図20)の植物栽培装置では、栽培床1の長さ方向中間部を凹み部44付きのアーム部材4Aで支持できるとともに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようになる。
従って、この第3実施形態の植物栽培装置では、上記第1実施形態の効果に加えて、栽培床1が長尺(例えば5m超)であっても栽培床1の長さ方向中間部を凹み部44付きのアーム部材4Aで支持しているので、栽培床1の長さ方向中間部が重みで垂れ下がらないとともに、アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができるという効果を達成できる。
1は栽培床、2は架台、3は駆動軸、3aは角棒、4aは角穴、4,4Aはアーム部材、5は吊下手段、6は回転操作具、11は載置台、21は支持台、41はアーム部、42は先端部、44は凹み部、51はワイヤ、Aは植物栽培装置、Hはビニールハウス、Pは作業通路、Uは栽培ユニットである。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の植物栽培装置は、添付の図1~図11に例示するように、2個を1組とする植物栽培用の栽培床1,1と、所定間隔をもって設置した2台を1組とする架台2,2と、2台の架台2,2間の所定高さ位置に角度360°の範囲で回転可能に架設した駆動軸3と、駆動軸3の軸直交方向両側にあってそれぞれ外方に所定長さ伸びる一対のアーム部41,41を有し且つ両アーム部41,41が駆動軸3の回転と共に回動するアーム部材4と、各アーム部41,41の各先端部42,42から各栽培床1,1をそれぞれ吊下する吊下手段5,5とを備え、アーム部材4は、駆動軸3と共に角度360°の範囲で回転させることで、少なくとも各アーム部41,41が駆動軸3を挟んで同高さに位置する水平姿勢と各アーム部41,41が駆動軸3を挟んで上下同位置に位置する鉛直姿勢との間で変位でき、アーム部材4が水平姿勢状態では各アーム部先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が水平方向に間隔をもった同高さ位置に支持される一方、アーム部材4が鉛直姿勢状態では各アーム部先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が上下に間隔をもった上下同位置に支持されるとともに、各アーム部先端部42,42から吊下した栽培床1,1は、アーム部材4が角度360°の範囲で回転しても2台を1組とする架台2,2間において架台2,2と駆動軸3と地面にそれぞれ干渉することなく変位できるように構成されていることを特徴としている。
アーム部材4は、駆動軸3の回転と共に水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができるようになっている。実際には、駆動軸3は左右両方向にそれぞれ角度360°の範囲で回転させることができようにしたものを採用しているので、アーム部材4を駆動軸3の全周に亘って左右いずれかの方向に回動させることができる。尚、駆動軸3を回転させる方法としては、駆動軸3の一端部に回転操作具(ハンドル付き)を設けて該回転操作具で駆動軸3を回転させてもよいし、アーム部材4を手で回動させることで駆動軸3を回転させてもよい。
アーム部材4の各アーム部41,41のそれぞれ先端部42,42には、それぞれ吊下手段5,5により1個ずつの栽培床1が吊下されている。この各栽培床1,1の重量は、特に限定するものではないが、苺や野菜の場合、栽培床1個当たり例えば30Kg~50Kgの範囲のものが想定される。そして、この両栽培床1,1は、相互に同程度の重量に設定されていて、アーム部材4の両端部での重量バランスが均一になるようにしている。又、この各栽培床1,1は、アーム部材4の姿勢(水平姿勢、回転途中及び鉛直姿勢)に拘わらず、それぞれ自身の重量により常に地面と平行な水平姿勢で吊下されるようになっている。
他方、栽培床1,1間に作業通路Pを形成するには、アーム部材4が水平に向く通常栽培状態から駆動軸3を角度90°回転(右回転でも左回転でもよい)させる。すると、水平姿勢(図4及び図5の実線図示)であったアーム部材4が鉛直姿勢(図8及び図5の鎖線図示)に変位し、それによってアーム部材4の両端部(両アーム部先端部42,42)からそれぞれ吊下している両栽培床1,1を上下(鉛直方向)に間隔をもった状態で上下同位置まで移動させることができる。この状態では、上下同位置に位置する両栽培床1,1の左右各側にそれぞれアーム部41の長さ(厳密には駆動軸3の軸心からアーム部先端部の吊下手段支持位置までの直線距離=例えば30cm程度)と等しい幅のスペースが新たに形成されることになる。このとき、左右に2セットの植物栽培装置A,Aを隣接設置したものにおいて、各側の植物栽培装置A,Aにおけるアーム部材4,4をそれぞれ鉛直姿勢にすることにより、隣接する両植物栽培装置A,A間に、元の間隔aに各側のアーム部退避分を加えた幅W(例えばW=100cm程度)の作業通路Pを確保することができる(図9及び図10参照)。尚、以下の説明では、両栽培床1,1が上下に間隔をもって上下同位置に位置する状態を「重合」と表現することがある。
(1)駆動軸3を回転させることで、両栽培床1,1の位置を水平方向の同高さ位置と上下方向に重合する位置との間で変位させることができるので、単一構成の植物栽培装置であっても、両栽培床1,1の姿勢を、水平方向に並置される姿勢と鉛直方向に重合する姿勢との2通りに変更することができる。つまり、通常栽培時には、両栽培床1,1を水平位置に並置させることで、栽培面積を広くして収穫量を多くできるとともに太陽光を均一に受けることができるようにする一方、作業通路必要時には両栽培床1,1を鉛直方向に重合させることで、左右に隣接する栽培床1,1間に十分な幅の作業通路を設けることができる。又、両栽培床1,1を水平姿勢から鉛直姿勢に変位させるのに、駆動軸3を右回転させても左回転させてもよく、その駆動軸回転方向によって両栽培床1,1の一方を可逆的に上側に位置させることができる。
この駆動軸3は、各架台2,2・・に対して左右両方向にそれぞれ角度360°の範囲で回転可能となっていて、該駆動軸3を手動(人力)で回転させることができるようになっている。この第1実施形態では、駆動軸3の一端側にハンドル61及び減速機62付きの回転操作具6を設けており、該回転操作具6のハンドル61を回すことで共通する1本の駆動軸3を回転(右回転又は左回転)させることができる。
そして、この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、共通する1本の駆動軸3を回転させると、その駆動軸3に組付けている全てのアーム部材4,4・・が同時に且つ同じ姿勢で駆動軸3と供回りするようになっている。実際には、この各アーム部材4,4・・は、駆動軸3と共に角度360°の範囲で左右両方向に回転できるので、アーム部材4を駆動軸3の全周に亘って左右いずれかの方向に回動させることができる。つまり、アーム部材4は、駆動軸3の回転と共に少なくとも水平姿勢(図4及び図5の実線図示姿勢)と鉛直姿勢(図8及び図5の鎖線図示姿勢)との間で変位させることができる。尚、駆動軸3は、適宜のロック手段により、アーム部材4が水平方向に向く位置と鉛直方向に向く位置の2位置でそれぞれ回転不能にロックできるようにしている。
この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、1箇所の栽培ユニットUについて前後1組とする2つの吊下手段5,5を前後両アーム部材4,4の左右各端部に1セットずつ使用して、両アーム部材4,4の左右各側に1個ずつの栽培床1,1を吊持している。そして、この各栽培床1,1は、アーム部材4,4の姿勢(水平姿勢及び鉛直姿勢)に拘わらず、それぞれ自身の重量により常に地面と平行な鉛直姿勢で吊下されるようになっている。
又、この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、アーム部材4,4の各アーム部先端部42,42から吊下した各栽培床1,1は、アーム部材4が角度360°の範囲で回転しても2台を1組とする架台2,2間において架台2,2と駆動軸3と地面にそれぞれ干渉することなく変位できるようになっている。つまり、各栽培床1,1は、アーム部材4が角度360°の範囲で回転しても、他の部材等の障害物(架台2や駆動軸3や地面等)に干渉しないように構成されている。
他方、栽培床1に対して各種の作業をするには、左右の栽培床1,1間に作業通路Pを形成する必要がある。そしてこの作業通路Pを形成するには、アーム部材4が水平に向く通常栽培状態(図4及び図5の実線図示状態)から、回転操作具6により駆動軸3を角度90°回転(図5の例では左回転)させる。すると、水平姿勢であったアーム部材4が図5に鎖線図示(符号4’)する鉛直姿勢に変位し、それによってアーム部材4’の両端部(両アーム部先端部42’,42’)からそれぞれ吊下している両栽培床1’,1’を上下(鉛直方向)に重合する位置まで移動させることができる(図8の状態)。
ところで、アーム部材4を水平姿勢(図5の実線図示状態)から鉛直姿勢(図5の鎖線図示状態)に変位させるのに、図5の例ではアーム部材4を左回転させるようにしているが、この場合、同高さ位置(水平位置)にあった右側の栽培床1が上方に移動する一方、左側の栽培床1が下方に移動する。他方、アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢に変位させるのに、アーム部材4を右回転(図5とは逆回転)させると、左右2つの栽培床1,1の位置関係が相互に逆になる(左側の栽培床1が上方に移動する一方、右側の栽培床1が下方に移動する)。従って、この実施形態の植物栽培装置Aでは、2個1組の両栽培床1,1を同高さ位置(水平位置)から上下同位置(鉛直位置)に変位させる際に、左右いずれの側の栽培床1,1も可逆的に上側に位置させることができるようになっている。
(1)駆動軸3を回転させることで、両栽培床1,1の位置を水平方向の同高さ位置と上下方向に重合する位置との間で変位させることができるので、単一構成の植物栽培装置Aであっても、両栽培床1,1の姿勢を水平方向に並置される姿勢と鉛直方向に重合する姿勢との2通りに変更することができる。つまり、通常栽培時には、両栽培床1,1を水平位置に並置させることで、栽培面積を広くして収穫量を多くできるとともに太陽光を均一に受けることができるようにする一方、作業通路必要時には両栽培床1,1を鉛直方向に重合させることで、左右に隣接する栽培床1,1間に十分な幅の作業通路を確保することができる。又、両栽培床1,1を水平姿勢から鉛直姿勢に変位させるのに、駆動軸3を右回転させても左回転させてもよく、その駆動軸回転方向によって両栽培床1,1の一方を可逆的に上側に位置させることができる。
本願発明は、植物(主として農作物)を地面より高い位置において栽培床で栽培するようにした植物栽培装置に関するものである。
例えばイチゴや葉物野菜などの背丈の低い植物を直接地面(低位置)に植え付けて栽培するものでは、作業者が腰を屈めて各種作業を行う必要があるので、作業環境が悪いという問題がある。即ち、腰を屈めての作業では、作業がしにくいとともに、長時間の作業が続くと疲労感・苦痛感が大きくなる。
そこで、近年では、例えば図21~図22に示すように、圃場(図示例ではビニールハウスH内)に所定高さ(例えば60cm~70cmの高さ)の架台2を設置し、その架台2上に複数個の栽培床1,1・・を前後一列状態で載せて、地面より高い位置で植物を栽培するようにした植物栽培装置Bが使用されている。尚、図21~図22示す設置例では、一列状態を一単位とする植物栽培装置BをビニールハウスH内に左右複数列設置して、所定面積の植物栽培施設を形成している。
栽培床1は、容器(袋の場合もある)内に培養土を充填したもので、適宜の大きさのものが使用される。この栽培床1は、一般的なものとして、プランターのような容器、長尺(例えば20~30m)のベッド状の容器、長さが1m内外の袋等がある。又、これらの栽培床1は、例えば、幅が25cm内外、高さが10cm内外で、圃場長さに応じた長尺(例えば20~30m長さ)の形態で使用される。
そして、図21~図22で使用されている各列の植物栽培装置B,B・・では、栽培床1が架台2上の所定高位置(例えば60cm~70cmの高さ)に設置されていて、作業者が立ったまま各種作業が行えるので、作業能率が良くなるとともに、疲労感が軽減できる。
ところで、植物栽培は、単位面積当たりの栽培面積を広くするほど収穫量を多くできるが、圃場内(例えば図21~図22のビニールハウスH内)には各列の栽培床1,1間に各種の栽培管理や収穫作業を行うための作業通路Pを設けることが必要である。この作業通路Pは、概ね80cm~100cm程度の幅Wが必要であるが、この作業通路P(幅W)は通常は植物栽培ができない作付け不能スペースとなっている。
従って、図21~図22に示す既存の植物栽培施設では、架台2上(高位置)に栽培床1を設置して高所で植物栽培を行えるので作業性は良いものの、各列の植物栽培装置B,B・・間には作業通路P,P・・(作付け不能スペースとなる)を設ける必要があるので、その分、単位面積当たりの収穫量を多くできない。
他方、既存の植物栽培装置の中にも、単位面積当たりの栽培面積を広くするために次のような工夫を施したものがある。
第1の例として、栽培床を上下2段に重合させた状態で設置した植物栽培装置がある。ところが、この上下2段式の植物栽培装置では、単位面積当たりの作付け面積が広くなるものの、下段側の栽培床には太陽光が十分に当たらないので生育むらが生じる(未熟品作物が発生し易くなる)。
第2の例として、栽培床を上下2段で水平方向にひな壇状にずらした状態で設置した植物栽培装置がある。ところが、このひな壇式の植物栽培装置では、平面視において2つの栽培床が接合しているものの、左右に隣接設置される2列のひな壇式植物栽培装置間にはそれぞれ所定幅の作業通路が必要である。そして、この各作業通路部分には植物を作付けできないので、その分、単位面積当たりの収穫量を多くできない。又、このひな壇式の植物栽培装置の場合、太陽光の照射角度によっては下段側の栽培床が上段側の栽培床の影になることがあり、下段側の栽培床に太陽光が十分に当たらない事態が発生することがある(未熟品作物が発生し易くなる)。さらに、下段側の栽培床については、腰を屈めての作業になるので、作業能率が低下する一方、疲労度合いが大きくなる。
第3の例として、栽培床を台車に載せて台車ごと水平方向に移動させ得るようにした植物栽培装置がある。この場合は、各列の栽培床を密状態で配置したものでも、台車ごと栽培床を水平移動させることにより、順次所定幅の作業通路を作ることができる。ところが、この水平移動式の植物栽培装置では、台車やスライドレール等の複雑な構成が必要であって設備コストが非常に高くなるとともに、少なくとも1本分の幅の作業通路は確保しておく必要がある。尚、この作業通路部分の面積は作付け不能スペースとなる。又、確保している通路から離れた栽培床を管理する場合は、1列ごと台車をスライドさせていく必要があり、作業性が悪い。
第4の例として、左右2つの栽培床を1本のアームの両端部からそれぞれ吊下させ、該アームを傾動させることにより、両栽培床を同高さ位置(水平位置)から斜め上・下位置に変位させ得るようにした植物栽培装置がある。尚、このアーム傾動式の植物栽培装置としては、特許第3001511号公報(特許文献1)や特許第3919614号公報(特許文献2)等に掲載されたものがある。
ところが、上記特許文献1及び特許文献2に掲載されているアーム傾動式の植物栽培装置では、両栽培床を吊下しているアームを最大傾斜させても、そのアームが角度60°程度までしか傾動できない構造であるので、アーム両端部から吊下している両栽培床を平面視においてさほど近接させることができない。即ち、アームを傾斜させると、両栽培床が平面視で相互に近づくものの、アームを最大で角度60°程度までしか傾斜できないものでは、両栽培床による平面視の占有面積はさほど小さくならない。従って、平面視における両栽培床の移動分(近接分)だけでは作業通路形成用のスペースを十分にとれないので、必要幅の作業通路を確保するために予め余剰スペースを設けておく必要がある。尚、この余剰スペースは作付け不能スペースとなるものである。
特許第3001511号公報
特許第3919614号公報
以上のように、従来の植物栽培装置には各種の問題点がある。特に、所定の植物栽培施設において、所定の植物栽培装置を左右に複数基隣接して設置することにより単位面積当たりの設置密度を高くして栽培収量を増大させようとすると、栽培管理や収穫作業を行うための作業通路を確保することができず、他方、隣接する植物栽培装置間の間隔を広くして作業通路を確保しようとすると、植物栽培装置の単位面積当たりの設置密度が低下して栽培収量が減少する。
一方、複数の栽培床を上下2段に重合させた植物栽培装置では、上下のもので日照量が相違し、各栽培床において均一な栽培成果を上げることができない。また、下段側の栽培床の高さが低くなり、栽培管理や収穫作業時の作業性が悪い。
本願発明は、それら従来の植物栽培装置における問題を解決するためになされたもので、栽培時には隣接する複数基の植物栽培装置の各栽培床間に作業通路を設けることなく各栽培床を水平方向の同じ高さに近接して位置させて栽培効率を向上させる一方、作業時にはそれら各栽培床を鉛直方向の上下異なる高さに位置させて作業通路を形成すると共に作業に適した高さに維持するようにした所定の植物栽培施設において左右に複数基隣接して設置される植物栽培装置を提供することを目的としている。
本願発明は、上記課題を解決するための手段として、次のような構成を有している。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の植物栽培装置は、添付の図1~図11に例示するように、所定の植物栽培施設において、左右に複数基隣接して設置される植物栽培装置であって、2個を1組とする植物栽培用の栽培床1,1と、所定の間隔をもって地面上に設置した2台を1組とする所定の高さの架台2,2と、該2台の架台2,2間の所定の高さ位置に角度360°の範囲で回転可能に架設された駆動軸3と、該駆動軸3を上記角度360°の範囲で右方向又は左方向に任意に回転させる、減速機62を備えた回転操作具6と、上記駆動軸3の軸直交方向両側にあってそれぞれ外方に所定の長さ伸びる一対のアーム部41,41を有し、該両アーム部41,41が上記駆動軸3の回転と共に回動するアーム部材4と、上記各アーム部41,41の先端部42,42から上記各栽培床1,1をそれぞれ吊下する吊下手段5,5とを備え、上記回転操作具6を用いて、上記アーム部材4を上記駆動軸3と共に上記角度360°の範囲で右方向又は左方向に回転させることにより、上記各アーム部41,41が上記駆動軸3を挟んで左右同じ高さに位置する水平姿勢と上記駆動軸3を挟んで上下異なる高さに位置する鉛直姿勢に変位させることができるようになっており、上記各アーム部41,41が水平姿勢状態では上記各アーム部41,41の先端部42,42から吊下している上記2個の栽培床1,1が水平方向に所定の間隔をもった栽培に適した同じ高さ位置に支持される一方、上記各アーム部41,41が鉛直姿勢状態では上記各アーム部41,41の先端部42,42から吊下している上記2個の栽培床1,1が鉛直方向に所定の間隔をもった作業に適した上下異なる高さ位置に支持されるように構成されていることを特徴としている。
本願請求項1の植物栽培装置は、所定の植物栽培施設において、左右に複数基隣接して設置される植物栽培装置であって、各植物栽培装置がそれぞれ2個を1組とする植物栽培用の栽培床1,1と、所定の間隔をもって地面上に設置した2台を1組とする所定の高さの架台2,2と、該2台の架台2,2間の所定の高さ位置に角度360°の範囲で回転可能に架設された駆動軸3と、該駆動軸3を上記角度360°の範囲で右方向又は左方向に任意に回転させる、減速機62を備えた回転操作具6と、上記駆動軸3の軸直交方向両側にあってそれぞれ外方に所定の長さ伸びる一対のアーム部41,41を有し、該両アーム部41,41が上記駆動軸3の回転と共に回動するアーム部材4と、上記各アーム部41,41の先端部42,42から上記各栽培床1,1をそれぞれ吊下する吊下手段5,5を備えて構成されている。
そして、上記回転操作具6を用いて、上記アーム部材4を上記駆動軸3と共に上記角度360°の範囲で右方向又は左方向に回転させると、上記各アーム部41,41が上記駆動軸3を挟んで左右同じ高さに位置する水平姿勢と上記駆動軸3を挟んで上下異なる高さに位置する鉛直姿勢との2つの異なる姿勢に変位する。
そして、上記各アーム部41,41が上記駆動軸3を挟んで左右同じ高さに位置する水平姿勢状態では上記各アーム部41,41の先端部42,42から吊下している上記2個の栽培床1,1が水平方向に所定の間隔をもった栽培に適した同じ高さ位置に支持される一方、上記各アーム部41,41が上記駆動軸3を挟んで上下異なる高さに位置する鉛直姿勢状態では上記各アーム部41,41の先端部42,42から吊下している上記2個の栽培床1,1が鉛直方向に所定の間隔をもった作業に適した上下異なる高さ位置に支持される。
これらの結果、上記各アーム部41,41が上記駆動軸3を挟んで左右同じ高さに位置し、上記各アーム部41,41の先端部42,42から吊下している2個の栽培床1,1が水平方向に所定の間隔をもった栽培に適した同じ高さ位置では、隣接する植物栽培装置それぞれの2個の栽培床1,1、1,1を相互に近接させた単位面積当たりの栽培面積を広くした状態で使用することができ、また隣接する植物栽培装置それぞれの2個の栽培床1,1、1,1が均一な日照量を受けるので、有効に栽培収量を増大させることができる。
他方、上記各アーム部41,41が上記駆動軸3を挟んで上下異なる高さに位置し、上記各アーム部41,41の先端部42,42から吊下している上記2個の栽培床1,1が鉛直方向に所定の間隔をもった作業に適した上下異なる高さ位置では、上記駆動軸3の左右両側に水平に伸びていた上記各アーム部41,41が上記駆動軸3の上下両側に鉛直に伸びるようになり、隣接する植物栽培装置の上記各アーム部41,41の先端部42,42から吊下している上記2個の栽培床1,1も鉛直方向に所定の間隔をもって上下方向の高さを異にした状態に保持される。その結果、隣接する植物栽培装置相互の間には有効な作業通路が形成され、また隣接する植物栽培装置相互の上記2個の栽培床1,1、1,1の高さも所定の高さに維持される。
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の植物栽培装置において、添付の図7に例示するように、駆動軸3として外面四角形の角棒3aを採用する一方、アーム部材4の長さ方向中央部に上記角棒3aと同形同大きさの角穴4aを設け、上記角穴4aに角棒3aを挿通させることによって、駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けていることを特徴としている。
ところで、上記請求項1の植物栽培装置では、図11に示すように、駆動軸3として外面が円形の丸棒3bを使用することができるが、丸棒3b製の駆動軸3を使用したものでは、アーム部材4を駆動軸3に対して相対回転不能に組付けるのに、アーム部材4側の円穴4bに駆動軸3(丸棒3b部分)を挿通させた状態で円穴ba部分と丸棒3b外面とを溶接する必要がある。ところが、この場合、設置現場(圃場)で溶接作業を行う必要があるので、溶接設備の搬入を含めて各種の面倒な作業が多くなる。
そこで、本願請求項2では、図7に示すように、駆動軸3として外面四角形の角棒3aを採用する一方、アーム部材4の長さ方向中央部に駆動軸3の角棒3aと同形同大きさの角穴4aを設け、該角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させるだけで、駆動軸3とアーム部材4とが相対回転しないようにしている。
駆動軸3の角棒3a部分は、中心が空洞の四角鋼管でもよいし、中まで詰まった中実のものでもよい。
アーム部材4と駆動軸3とは、アーム部材4の角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させただけで組付けているので、アーム部材4が駆動軸3の長さ方向に自由にスライドできるようになっている。従って、駆動軸3に対するアーム部材4の組付け位置を栽培床1の長さに応じた適正位置に調整することができる。
又、駆動軸3に対して複数のアーム部材4,4が組付けられているが、各アーム部材4,4はそれぞれ上記角穴4aを駆動軸3の角棒3aに嵌合させているので、各アーム部材4,4の組付け姿勢が自動的に全て同じ姿勢になる(駆動軸3に対するアーム部材4の姿勢を調整する必要がない)。
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の植物栽培装置において、添付の図15~図16に例示するように、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定の間隔をもって3本以上のアーム部材4,4・・を設置している一方、それらの内の隣接する2本を1組とするアーム部材4,4間に上記2個を1組とする栽培床1,1を設置していることを特徴としている。
この請求項3の植物栽培装置では、2台の架台2,2間の間隔を広くすることで、駆動軸3の長さ方向にアーム部材4,4・・の使用本数より1個少ない個数の栽培床1を列状に設置できる。例えば図15~図16の例示のように、2台の架台2,2間に4本のアーム部材4,4・・を使用した場合には、駆動軸3の長さ方向に3個(左右で6個)の栽培床1,1・・を設置できる。換言すると、駆動軸3の長さ方向に複数個の栽培床1を設置したものでも、それら複数個の栽培床1を2台の架台2,2のみで支持できる。
又、この請求項3の植物栽培装置では、3本以上使用されている各アーム部材4,4・・における中間に位置するアーム部材4を、その前後に設置される両栽培床1,1の支持用部材として共用できる。
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項1又は2の植物栽培装置において、添付の図17~図20に例示するように、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3の長さ方向に所定の間隔をもって3本以上のアーム部材4,4,4A,4Aを設置し、上記2個を1組とする栽培床1,1を当該3本以上のアーム部材4,4,4A,4Aで支持している一方、上記3本以上のアーム部材の中間に位置するアーム部材4A,4Aに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに上記栽培床1がアーム部材4Aに接触するのを防止するための接触防止用の凹み部44を設けていることを特徴としている。
この請求項4の植物栽培装置は、隣接する2台の架台2,2間の間隔を広くする一方、両架台2,2間に長尺(例えば5m超の長さ)で一体に連続する栽培床1,1を設置するのに適したものである。そして、長尺(例えば5m超の長さ)の栽培床1を支持する場合、栽培床両端の2箇所のみをアーム部材4,4で支持するものでは、栽培床1の中間部分が重みで垂れることがあるが、この請求項4の植物栽培装置のように、長尺の栽培床1の長さ方向中間部を駆動軸3に組付けたアーム部材4Aで支持することにより、栽培床1の中間部分が重みで垂れるのを防止できる。
ところで、アーム部材4Aで栽培床1の長さ方向中間部を支持したものでは、該アーム部材が直線状のものであると、該アーム部材を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させる途中で吊下している栽培床1とアーム部材とが接触(衝突)してしまう。
そこで、この請求項4の植物栽培装置では、栽培床1の長さ方向中間部を支持するアーム部材4Aに栽培床接触防止用の凹み部44を設けていることにより、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようになる。従って、栽培床1の長さ方向中間部をアーム部材4Aで支持したものであっても、アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができる。尚、栽培床1,1の両端部を支持するアーム部材4,4は、上記の凹み部44を有しない直線状のものを使用することができる。
[本願請求項5の発明]
本願請求項5の発明は、上記請求項1から4のいずれか1項に記載の植物栽培装置において、上記架台2は所定の間隔をもって3台以上の架台2,2・・を一列に設置し、それら一列に設置された3台以上の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設し、隣接する2台の架台2,2間の各スペースごとに、隣接する2台の架台2,2間に架設された上記駆動軸3部分と2個を1組とする上記栽培床1,1と上記アーム部材4と上記各吊下手段5,5とを1セットとする栽培ユニットUをそれぞれ装備していることを特徴としている。
1本の駆動軸3を3台以上の架台2,2・・に跨がって架設しようとすると、該駆動軸3が極めて長尺になることが予想されるが、共通の駆動軸が長尺になる場合は、所定小長さの複数本を順次ジョイントで直線状に連結して1本の駆動軸3にすることができる。
この請求項5の発明の植物栽培装置では、上記の構成により、共通する1本の駆動軸3を回転させることで、順次隣接する2つの架台2,2間の各スペースごとに配置している各栽培ユニットU,U・・の各アーム部材4,4・・を同時に回動させることができる。従って、1本の駆動軸3を回転操作するだけで、全ての栽培ユニットU,U・・について2個1組の栽培床1,1を同時に水平方向に位置する姿勢と鉛直方向に位置する姿勢との間で変位させることができる。
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の植物栽培装置では、駆動軸3の回転と共にアーム部材4が水平方向に向く水平姿勢と上下方向に向く鉛直姿勢との間で変位でき、さらにアーム部材4が水平姿勢状態では各アーム部先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が水平方向に間隔をもった同じ高さ位置に支持される一方、アーム部材4が鉛直姿勢状態では各アーム部先端部42,42から吊下している2つの栽培床1,1が鉛直方向に高さを異にして平面視重合する位置に支持される。従って、この請求項1の植物栽培装置には次のような効果がある。
(1)駆動軸3を回転させることで、両栽培床1,1の位置を水平方向の同じ高さ位置と鉛直方向に高さを異にして平面視重合する位置との間で変位させることができるので、単一構成の植物栽培装置であっても、両栽培床1,1の姿勢を、水平方向に並置される姿勢と鉛直方向に重合する姿勢との2通りに変更することができる。つまり、通常栽培時には、両栽培床1,1を水平位置に並置させることで、栽培面積を広くして収穫量を多くできるとともに太陽光を均一に受けることができるようにする一方、作業通路必要時には両栽培床1,1を鉛直方向に高さを異にして重合させることで、左右に隣接する栽培床1,1間に十分な幅の作業通路を設けることができる。又、栽培床1,1を水平姿勢から鉛直姿勢に変位させるのに、駆動軸3を右回転させても左回転させてもよく、その駆動軸回転方向によって両栽培床1,1の一方を可逆的に上側に位置させることができる。
(2)アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させ得る構成を有しているので、アーム部材4の両端部から吊下している両栽培床1,1を確実に上下同位置に重合させることができ、それによって両栽培床1,1による平面視での占有スペースを小さくできる。換言すると、栽培床の姿勢変位による作業通路幅を大きく取れることで、必要幅の作業通路を確保するのに予め余剰スペースを設けておく必要がなくなり、その分、単位面積当たりの作付け面積を広くできる。
(3)両栽培床1,1の姿勢を変更させるのに駆動軸3を回転させるだけで達成できるので、両栽培床1,1を姿勢変更させるための構成が簡単で且つ安価に製作できるとともに、栽培床の姿勢変更操作(駆動軸3の回転操作)が簡単に行える。
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、請求項1の植物栽培装置において、駆動軸3として外面四角形の角棒3aを採用し、アーム部材4の長さ方向中央部に角穴4aを設け、該角穴4aに角棒3aを挿通させることによって、駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けている。
このように、本願請求項2の植物栽培装置では、アーム部材4を駆動軸3に組付けるのに、アーム部材4側の角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させるだけで、角棒3aと角穴4aとの角張った係合により両者(駆動軸とアーム部材)を相対回転不能状態で組付けることができる。つまり、アーム部材4と駆動軸3とを特別な手段(例えば溶接やボルト止め等)を用いることなく、相対回転不能に組付けることができる。
又、アーム部材4と駆動軸3とは、アーム部材4の角穴4aに駆動軸3の角棒3aを挿通させただけで組付けているので、アーム部材4が駆動軸3の長さ方向にスライドできるようになっている。
そして、本願請求項2の植物栽培装置は、上記請求項1の効果に加えて、次のような効果がある。
まず、上記角棒3aと上記角穴4aとの係合という簡単な構成で、アーム部材4と駆動軸3とを確実に相対回転不能に組付けることができる。
又、アーム部材4を駆動軸3の長さ方向にスライドできるので、駆動軸3に対するアーム部材4の組付け位置を栽培床1の長さに応じた適正位置に調整することができる。
さらに、駆動軸3に対して複数のアーム部材4,4が組付けられているが、各アーム部材4,4はそれぞれ上記角穴4aを駆動軸3の角棒3aに嵌合させているので、各アーム部材4,4の組付け姿勢が特別な位置調整(姿勢調整)をすることなしに自動的に全て同じ姿勢になる(駆動軸3に対するアーム部材4の姿勢を調整する必要がない)。
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、請求項1又は2の植物栽培装置において、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上のアーム部材4,4・・を設置し、さらに隣接する2本を1組とするアーム部材4,4間ごとにそれぞれ2個を1組とする栽培床1,1を設置したものである。
従って、この請求項3の植物栽培装置は、上記請求項1又は2の効果に加えて、設置される栽培床1の個数の割りに使用する架台2の台数を少なくでき、且つ2台1組の架台2,2間に複数個の栽培床1,1,1を設置できるとともに、中間部に位置するアーム部材4をその前後に設置される両栽培床1,1の支持用に共用できるので、架台2(又は栽培床1)やアーム部材4等の設置効率が良好となる(部材点数を削減できる)という効果がある。
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、請求項1又は2の植物栽培装置において、隣接する2台の架台2,2間に設置した2個を1組とする栽培床1,1を3本以上のアーム部材4,4,4A,4Aで支持し、さらに中間部に位置するアーム部材4A,4Aに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aに接触するのを防止するための接触防止用の凹み部44を設けたものである。
そして、この請求項4の植物栽培装置では、栽培床1の長さ方向中間部を中間部に位置するアーム部材4Aで支持できるとともに、アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようになる。
従って、本願請求項4の植物栽培装置では、上記請求項1又は2の効果に加えて、栽培床1が長尺(例えば5m超)であっても栽培床1の長さ方向中間部を中間部に位置するアーム部材4Aで支持しているので、栽培床1の長さ方向中間部が重みで垂れ下がらないとともに、栽培床1の長さ方向中間部をアーム部材4Aで支持したものであっても、アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができるという効果がある。
[本願請求項5の発明の効果]
本願請求項5の発明は、上記請求項1から4のいずれか1項の植物栽培装置において、3台以上の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設し、隣接する2台の架台2,2間の各スペースごとに、隣接する2台の架台2,2間に架設された駆動軸3部分と2個1組とする栽培床1,1とアーム部材4と各吊下手段5,5とを1セットとする栽培ユニットUをそれぞれ装備している。
従って、この請求項5の発明の植物栽培装置では、上記請求項1~4の効果に加えて、次のような効果がある。
まず、1本の駆動軸3を複数の栽培ユニットU,U・・の各駆動軸として共用できるので、それぞれの栽培ユニットUに個別の駆動軸3を用いる場合より構成が簡単になる。
又、1台の架台2をその前後に隣接設置される両栽培ユニットU,Uの支持用に共用できるので、栽培ユニットUの設置個数の割に架台2の使用個数を削減できる。
さらに、共通する1本の駆動軸3を回転させることで、複数の栽培ユニットU,U・・の各アーム部材4,4・・を同時に回動させることができるので、各栽培ユニットU,U・・のそれぞれアーム部材4,4・・を水平姿勢と鉛直姿勢との間で姿勢変更させる操作が簡単となる(共通の駆動軸3を1回回転操作するだけでよい)。
本願第1実施形態の植物栽培装置をビニールハウス内において前後左右にそれぞれ多数設置してなる植物栽培施設の正面図。
図1の植物栽培施設の平面図。
図2の一点鎖線で囲った部分の拡大図。
図1の植物栽培施設の一部拡大図(1棟のビニールハウス部分の拡大図)。
本願第1実施形態の植物栽培装置であってアーム部材を水平姿勢にした状態での正面図(図4の一点鎖線で囲った部分の拡大図)。
図5の植物栽培装置の右側面図。
図5及び図6の植物栽培装置の一部斜視図。
図5の植物栽培装置からの状態変化図で、アーム部材を鉛直姿勢にした状態での正面図。
図4の植物栽培施設からの状態変化図で、各植物栽培装置のアーム部材を鉛直姿勢にした状態(図8の状態)での正面図。
図9の状態の植物栽培施設の平面図。
本願第1実施形態の第1変形例(駆動軸に丸棒を使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第1実施形態の第2変形例(吊下手段に吊プレートを使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第1実施形態の第3変形例(吊下手段に別の吊プレートを使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第1実施形態の第4変形例(吊下手段にさらに別の吊プレートを使用したもの)を示す一部斜視図。
本願第2実施形態の植物栽培装置の側面図。
図15(本願第2実施形態)の植物栽培装置の平面図。
本願第3実施形態の植物栽培装置の側面図。
図17(本願第3実施形態)の植物栽培装置の平面図。
図17(本願第3実施形態)のXIX-XIX線拡大矢視図。
図19(本願第3実施形態)からの状態変化図で、アーム部材を鉛直姿勢にした状態図。
既設の植物栽培施設(ビニールハウス内に設置したもの)の正面図。
図21(既設)の植物栽培施設の平面図。
以下、添付の図面を参照して本願のいくつかの実施形態の植物栽培装置を説明すると、図1~図10には第1実施形態、図11~図14にはそれぞれ第1実施形態の第1~第4の変形例、図15~図16には第2実施形態、図17~図20には第3実施形態、の植物栽培装置が示されている。
<第1実施形態>
図1~図2には、本願第1実施形態の植物栽培装置AをビニールハウスH内において左右に複数基設置してなる植物栽培施設が示されている。尚、以下の説明において、ビニールハウスHの幅方向を左右方向といい、ビニールハウスHの長さ方向を前後方向ということがある。
図1~図2に例示する植物栽培施設において、1棟のビニールハウスHの大きさは、前後長さが30m、左右幅が5.2m程度である。そして、図1及び図2に示す植物栽培施設の例では左右に4連のビニールハウスH,H・・を並設している。尚、1棟のビニールハウスHの大きさやビニールハウスHの並設数等は、植物栽培施設の敷地面積に応じて変更できることはもちろんである。
第1実施形態で採用されている植物栽培施設では、各ビニールハウスH,H・・内にそれぞれ所定列数の植物栽培装置A,A・・を設置している。尚、図1及び図2に示す植物栽培施設の例では、1棟のビニールハウスH内に、左右に4列の植物栽培装置Aが設置されている。
第1実施形態の植物栽培装置Aの構成について、図3~図10を併用して詳細に説明すると、この第1実施形態の植物栽培装置Aは、2個を1組とする植物栽培用の栽培床1,1と、所定間隔をもって設置した2台を1組とする架台2,2と、2台の架台2,2間の所定高さ位置に回転可能状態で架設した駆動軸3と、駆動軸3の軸直交方向両側にあってそれぞれ外方に所定長さ伸びる一対のアーム部41,41を有し且つ両アーム部41,41が駆動軸3の回転と共に回動するアーム部材4と、各アーム部41,41の各先端部42,42から各栽培床1,1をそれぞれ吊下する吊下手段5,5とを基本構成として用いている。
栽培床1は、この第1実施形態では細長い容器内に培養土を充填したものが採用されている。この栽培床1の1個の大きさは、特に限定するものではないが一例として幅が25cm、高さが10cm、長さが2~3m程度のものが想定できる。そして、この栽培床1は、後述する2台1組として設置される両架台2,2間の間隔に応じて、1個の状態又は複数個(例えば2~3個)を1列に並べた状態で使用することができる。尚、栽培床1としては、容器に代えて袋内に培養土を充填したものも採用可能である。
使用される一単位の栽培床1としては、1個の場合と複数個(1列に連続状態)の場合とがあるが、それら一単位の栽培床1は、共通の載置台11に載せられる。この載置台11としては、図5~図7に示すように、前後に間隔をもった2つの受け材12,12上に複数本(図示例では3本)のパイプ13,13,13を架設したものを採用できる。尚、載置台11上に載せた栽培床1は、載置台11に対して位置ずれしないように適宜の工夫がなされる。
上記架台2は、図4~図7に明示するように、複数のフレーム材を組付けて縦長枠体状に形成した支持台21が使用されている。この支持台21の高さは、60cm~70cm程度が適当である。そして、この架台2は、支持台21の上端部に駆動軸3を回転可能に支持する軸受23付きのブラケット22を設けて構成されている。
架台2は、基本的には2台を1組として機能する。そして、2台1組の架台2,2は、図2~図3及び図6に示すように、圃場(図示例ではビニールハウスH内)における前後方向に所定間隔をもった2位置にそれぞれ立設固定している。2台を1組とする架台2,2間の間隔は、使用する一単位の栽培床1の長さを基準にして設定されるが、例えば2~5mの範囲内の適宜の間隔に設定される。
この第1実施形態では、本願請求項5に対応する構成として、図2に示すように複数個の栽培ユニットU,U・・を前後一列状態で形成するようにしているが、その際、3台以上の架台2を前後方向に所定間隔をもって順次一列状態で設置することで、図3に拡大図示するように中間に位置する1台の架台2をその前後2つの栽培ユニットU,Uの支持台として共用できるようにしている(詳細は後述する)。
この第1実施形態で使用している駆動軸3は、本願請求項2に対応するもので、図7に明示するように外面四角形の角棒3aを採用している。尚、この角棒3aを用いた駆動軸3の機能については、後述する。
この駆動軸3は、本願請求項1では2台1組の架台2,2ごとに1本ずつ使用してもよいが、この第1実施形態では、本願請求項5に対応させて、多数台(例えば10台程度)の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設している。即ち、図2~図3及び図6に示すように、多数台(例えば10台程度)の架台2,2・・を前後方向に所定間隔をもって一列状態で設置し、その全部の架台2,2・・に跨がって共通する1本の駆動軸3を架設している。その場合、1本の駆動軸3の全長が非常に長くなる(30m程度までが現実的)が、1本が例えば2~6m程度の軸棒を適数本ジョイントで連続させることで必要長さ(例えば30m程度の長さ)を有する1本の駆動軸3に形成することができる。
この駆動軸3は、各架台2,2・・に対して左右両方向にそれぞれ角度360°の範囲で回転可能となっていて、該駆動軸3を手動(人力)で回転させることができるようになっている。この第1実施形態では、駆動軸3の一端側にハンドル61及び減速機62付きの回転操作具6を設けており、該回転操作具6のハンドル61を回すことで共通する1本の駆動軸3を回転(右回転又は左回転)させることができる。
尚、上記回転操作具6は、この第1実施形態では、ハンドル61及び減速機62付きのものを採用し、各列の植物栽培装置A,A・・ごとに各回転操作具6,6・・をそれぞれ固定状態で取付けているが、他の実施形態では、単一の回転操作具6を植物栽培装置Aに対して着脱自在に装備できるようにし、その単一の回転操作具6を全列の植物栽培装置A,A・・の駆動軸回転用に共用できるようにしてもよい。その場合は、回転操作具6の設備コストを大幅に低減できる。
上記アーム部材4は、2個1組の栽培床1,1を所定間隔をもたせた状態で吊り下げ支持するものであるが、この第1実施形態では、1箇所の栽培ユニットUについて2本1組のアーム部材4,4が使用されている。
2本1組の各アーム部材4,4は、相互に同構造で、駆動軸3の軸直交方向両側にそれぞれ所定長さ伸びる一対のアーム部41,41を有している。尚、この第1実施形態で使用されているアーム部材4は、2本のアーム部41,41を直線方向に一体に連続させた鋼板製の長板材が使用されている。
アーム部材4の各アーム部41,41は、駆動軸3からその軸直交方向の両外方に向けてそれぞれ30cm~40cm程度の同長さを有している。尚、ここに記載した各アーム部41,41の長さ(30cm~40cm)は、特に限定するものでなく、栽培床1の幅や吊下高さ及び栽培植物の生育高さ等に応じて適宜に設定できる。
そして、この2本1組の各アーム部材4,4は、図3及び図6に示すように、共通の駆動軸3に対して、前後に隣接する2台1組の架台2,2の各内側近接位置において駆動軸3の軸線方向から見て完全に重合する同一姿勢で組付けている。尚、この両アーム部材4,4の前後間隔は、一単位の栽培床1の長さとほぼ同程度になっている。
駆動軸3に対するアーム部材4の組付けは次のように行っている。即ち、図1~図7の第1実施形態では、駆動軸3として外面四角形の角棒3a(図7参照)を使用している関係で、長板材からなるアーム部材4の長さ方向中央部に駆動軸3の外形と同形同大きさの角穴4a(図7参照)を設け、該角穴4aに駆動軸3(角棒3a)を挿通させるだけで駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けている。この場合、アーム部材4の角穴4aに駆動軸3(角棒3a)を挿通させて駆動軸3(角棒3a)とアーム部材4(角穴4a)とを係合させるという簡単な構成で、アーム部材4と駆動軸3とを確実に相対回転不能に組付けることができるので、両者の組付けに特別な手段(例えば溶接やボルト止め等)を用いる必要がない。
ところで、駆動軸3とアーム部材4との組付け形態について、本願請求項1では、図11に示す第1変形例のように、駆動軸3として丸棒3bを使用する一方、アーム部材4の長さ方向中央部に円穴4bを設けて、アーム部材4側の円穴4bに駆動軸3(丸棒3b部分)を挿通させた状態で円穴4b部分と丸棒3b外面とを溶接により固定したものを採用することができる。ところが、上記図11(第1変形例)の組付け形態の場合は、設置現場(圃場)で溶接作業を行う必要があるので、溶接設備の搬入を含めて各種の面倒な作業が多くなり、結果として上記第1実施形態(図7)のように角棒3a製の駆動軸3と角穴4a付きのアーム部材4との組付け形態の方が利点が多い。尚、角棒3a製の駆動軸3と角穴4a付きのアーム部材4との組付け形態の利点については後述する。
図1~図10の第1実施形態では、前後2台の架台2,2間には、順次一列状態でそれぞれ栽培ユニットUが設置されているが、この各栽培ユニットU,U・・における全てのアーム部材4,4・・も、共通の駆動軸3に対して該駆動軸3の軸線方向から見て完全に重合する同一姿勢で固定されている。
そして、この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、共通する1本の駆動軸3を回転させると、その駆動軸3に組付けている全てのアーム部材4,4・・が同時に且つ同じ姿勢で駆動軸3と供回りするようになっている。駆動軸3は、角度360°の範囲で回転させることができるようになっている(前述の如く、回転操作具6により右回転方向又は左回転方向に回転させることができる)。したがって、各アーム部材4,4・・も、駆動軸3と共に角度360°の範囲で右又は左方向に任意に回転させることができる。その結果、アーム部材4,4・・は、駆動軸3の回転と共に、少なくとも水平姿勢(図4及び図5の実線図示姿勢)と鉛直姿勢(図5の鎖線図示姿勢及び図8の実線図示姿勢又は図5の鎖線図示姿勢及び図8の実線図示姿勢における上下の関係を逆にした姿勢)との間で所望に変位させることができる。尚、駆動軸3は、適宜のロック手段により、アーム部材4が上記水平方向に向く位置と鉛直方向に向く位置の2位置でそれぞれ回転不能にロックできるようにしている。
前後2つのアーム部材4,4には、左右各側に1単位ずつの栽培床1,1がそれぞれ前後2つずつの吊下手段5,5により吊下されている。尚、この各栽培床1,1の重量は、相互に同程度に設定されていて、前後両アーム部材4,4の左右両端部での重量バランスが均一になるようにしている。
上記吊下手段5は、この第1実施形態では、図5、図7、図8等に明示するように、アーム部41の先端部42から2本のワイヤ51,51を逆V形に配置し、該各ワイヤ51,51の下端部を載置台11の受け材12の各端部に固定しているとともに、各ワイヤ51,51の上端部に係止具52を取付け、この係止具52をアーム部41の先端部42に設けたピン43に対して回動自在に係止して構成されている。
この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、1箇所の栽培ユニットUについて前後1組とする2つの吊下手段5,5を前後両アーム部材4,4の左右各端部に1セットずつ使用して、両アーム部材4,4の左右各側に1個ずつの栽培床1,1を吊持している。そして、この各栽培床1,1は、アーム部材4,4の姿勢(水平姿勢及び鉛直姿勢)に拘わらず、それぞれ自身の重量により常に地面と平行な鉛直姿勢で吊下されるようになっている。
又、この第1実施形態の植物栽培装置Aでは、アーム部材4,4の各アーム部先端部42,42から吊下した各栽培床1,1は、アーム部材4が角度360°の範囲で回転しても2台を1組とする架台2,2間において架台2,2と駆動軸3と地面にそれぞれ干渉することなく変位できるようになっている。つまり、各栽培床1,1は、アーム部材4が角度360°の範囲で回転しても、他の部材等の障害物(架台2や駆動軸3や地面等)に干渉しないように構成されている。
ところで、吊下手段5にワイヤ51,51を用いて栽培床1を吊持するようにしたものでは、アーム部材4と共に栽培床1を駆動軸3の回りで回動させたときにワイヤ51が撓むことで栽培床1が左右に揺れ易く、回動操作が終了しても揺れが止まりにくい。又、栽培床1の揺れが大きい場合は、その付近で作業をしていると栽培床1が人に干渉(衝突)する恐れがある。
そこで、吊下手段5として、上記第1実施形態のように栽培床吊持用にワイヤ51を用いたものに代えて、図12~図14に示すようないくつかの変形例(第2~第4の変形例)の構成を採用することができる。
図12の第2変形例の吊下手段5では、上記第1実施形態のワイヤ51に代えて金属薄板製の吊プレート53を使用している。この吊プレート53は、全面が塞がった二等辺三角形の形状を有し、その上端部53aをアーム部41の先端部42にピン43で揺動自在に枢支している。又、この吊プレート53の底辺部分には、栽培床1の載置台11となるパイプ13(3本)の各端部13aを挿通させる3つの穴54,54,54が所定間隔をもって形成されている。
図12に示す第2変形例の吊下手段5は、1つの栽培床1に対して前後一対(2つ)使用し、前後の吊プレート53の各穴54,54,54にそれぞれパイプ13(3本)の各端部を挿通して保持させることで、前後の両吊下手段5間に載置台11となる3本のパイプ13,13,13を支持している。尚、載置台11上には栽培床1が位置保持された状態で載せられる。
そして、この第2変形例で使用される吊下手段5では、吊プレート53の上端部53aがアーム部先端部42においてピン43で揺動自在に枢支されているので、駆動軸3の回転によりアーム部材4が回動したときに栽培床1の重量により吊プレート53が常に鉛直姿勢に維持されるようになっている。又、この吊プレート53は、金属薄板製で剛性があるので、アーム部材4と共に栽培床1を駆動軸3の回りで回動させたときにも栽培床1が左右に揺れにくい。
図13の第3変形例の吊下手段5は、図12の第2変形例で使用している吊プレート53と同様に外形が二等辺三角形の形状ではあるが、二等辺三角形の中央部を大きく切除して空間部56とした枠状プレート55を使用している。尚、図13の第3変形例の吊下手段5(枠状プレート55)におけるその他の構成については、図12の第2変形例の吊下手段(吊プレート53)と同じであるので、その第2変形例の説明を援用する。
この第3変形例(図13)の吊下手段5では、中央部に大きな空間部56を設けた枠状プレート55を使用しているので、軽量化を達成できる。又、中央部に大きな空間部56を設けたものであっても、金属薄板製であるので保形性は十分に確保でき、アーム部材4と共に栽培床1を駆動軸3の回りで回動させたときにも栽培床1が左右に揺れにくい。
図14の第4変形例の吊下手段5は、上記第3変形例(図13)の吊下手段5(枠状プレート55)と同様に二等辺三角形の枠状プレート57を使用している。そして、この第4変形例(図14)の吊下手段5(枠状プレート57)では、載置台11となる各パイプ13(3本)の端部13aを係止するのに、底辺枠58の上面部分にパイプ13の外形と同形の半円形の凹み部59(3箇所)を設けている。
この第4変形例の吊下手段5では、載置台11となるパイプ13(3本)の端部13aを枠状プレート57に組付けるのに、パイプ端部13aを底辺枠58の凹み部59に上方から落とし込むことで位置ずれ不能に保持させることができる。従って、この第4変形例(図14)の吊下手段5(枠状プレート57)では、枠状プレート57をアーム部41にセットした状態でも、該枠状プレート57に対するパイプ13の組付けが容易に行える。
ところで、上記第1実施形態(図1~図10)の植物栽培装置では、アーム部材4として平板状の長板材を用いているが、平板状のアーム部材4では、強度面(特にねじり方向の強度面)で若干劣るところがある。
そこで、上記第2~第4の各変形例(図12~図14)では、アーム部材4としてC形鋼を使用して強度面の補強を図っている。尚、他の実施形態として、C形鋼を用いたアーム部材4を上記第1実施形態(図1~図10)のアーム部材として使用してもよい。
上記第1実施形態(図1~図10)の植物栽培装置Aは、本願請求項5に対応させたもので、図2に示すように前後方向に所定間隔をもって一列状態で複数個の架台2,2・・を設け、その前後2つの架台2,2間に順次一列状態で栽培ユニットU,U・・を設けたものである。そして、この前後一列状態の植物栽培装置Aを各棟のビニールハウスH,H・・内に所定の左右近接状態で複数列設置して、所望の面積範囲に植物栽培施設を設置している(図1、図2参照)。
図1~図2の植物栽培施設において、各種の作業を必要としない通常栽培時には、図1~図4に示すように、各列の植物栽培装置A,A・・における各アーム部材4を水平姿勢にして、左右1組の栽培床1,1を左右同高さ位置で支持する。この状態では、左右に隣接する各列の植物栽培装置A,A・・における近接側の各栽培床1,1間の間隔a,a・・が例えば40cm程度まで狭くなることで、平面視における単位面積当たりの栽培面積を広くできる(栽培効率が良好になる)。又、この状態では、各栽培床1,1が水平方向に並置されているので、各栽培床1,1・・に対して太陽の照射光が均一に照射する(生育環境が良好となる)。
左右に隣接する植物栽培装置A,Aの栽培床1,1・・間の間隔aは、栽培植物生育上、葉が繁茂するなど必要な最小限のスペースを確保していればよく、例えば40cm程度のかなり狭いものでよい。従って、この間隔aは、各種作業を行うための必要な作業通路幅(図9及び図10の作業通路幅W)は確保できないが、通常栽培時には特に作業通路は必要ないので差し支えない。
他方、栽培床1に対して各種の作業をするには、左右の栽培床1,1間に作業通路Pを形成する必要がある。そしてこの作業通路Pを形成するには、アーム部材4が水平に向く通常栽培状態(図4及び図5の実線図示状態)から、回転操作具6により駆動軸3を角度90°回転(図5の例では左回転)させる。すると、水平姿勢であったアーム部材4が図5に鎖線図示(符号4’)する鉛直姿勢に変位し、それによってアーム部材4’の両端部(両アーム部先端部42’,42’)からそれぞれ吊下している両栽培床1’,1’を上下(鉛直方向)に重合する位置まで移動させることができる(図8の状態)。
ところで、アーム部材4を水平姿勢(図5の実線図示状態)から鉛直姿勢(図5の鎖線図示状態)に変位させるのに、図5の例ではアーム部材4を左回転させるようにしているが、この場合、同高さ位置(水平位置)にあった右側の栽培床1が上方に移動する一方、左側の栽培床1が下方に移動する。他方、アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢に変位させるのに、アーム部材4を右回転(図5とは逆回転)させると、左右2つの栽培床1,1の位置関係が相互に逆になる(左側の栽培床1が上方に移動する一方、右側の栽培床1が下方に移動する)。従って、この実施形態の植物栽培装置Aでは、2個1組の両栽培床1,1を同高さ位置(水平位置)から上下同位置(鉛直位置)に変位させる際に、左右いずれの側の栽培床1,1も可逆的に上側に位置させることができるようになっている。
図8に示すアーム部材4が鉛直姿勢状態では、平面視において上下に重合する両栽培床1,1の左右各側にそれぞれアーム部41の長さ程度の幅のスペースが形成される。そして、左右に隣接する2列の植物栽培装置A,Aにおいて各側のアーム部材4,4を鉛直姿勢にすると、図9及び図10に示すように左右に隣接する両植物栽培装置A,A間に、元の間隔aに各側のアーム部退避分を加えた幅W(例えばW=100cm程度)の作業通路Pを確保することができる(図9及び図10参照)。尚、図9及び図10の状態では、全列の植物栽培装置A,A・・についてそれぞれアーム部材4を鉛直姿勢に姿勢変更させているが、実際には作業通路Pを形成すべき場所の左右2つの植物栽培装置A,Aについてのみ行えばよい。
又、図9及び図10に示す作業通路形成状態(アーム部材4が鉛直姿勢状態)から図1~図4に示す通常栽培状態(アーム部材4が水平姿勢状態)に戻すには、回転操作具6を操作して(又はアーム部材4を押して)駆動軸3を角度90°回転させることで達成できる。
上記した第1実施形態(図1~図10)の植物栽培装置Aは、本願の請求項1と請求項2と請求項5に対応した構成を有したものであり、この第1実施形態の植物栽培装置Aには次のような各種の効果がある。
(1)駆動軸3を回転させることで、両栽培床1,1の位置を水平方向の同高さ位置と上下方向に重合する位置との間で変位させることができるので、単一構成の植物栽培装置Aであっても、両栽培床1,1の姿勢を水平方向に並置される姿勢と鉛直方向に重合する姿勢との2通りに変更することができる。つまり、通常栽培時には、両栽培床1,1を水平位置に並置させることで、栽培面積を広くして収穫量を多くできるとともに太陽光を均一に受けることができるようにする一方、作業通路必要時には両栽培床1,1を鉛直方向に重合させることで、左右に隣接する栽培床1,1間に十分な幅の作業通路を確保することができる。又、両栽培床1,1を水平姿勢から鉛直姿勢に変位させるのに、駆動軸3を右回転させても左回転させてもよく、その駆動軸回転方向によって両栽培床1,1の一方を可逆的に上側に位置させることができる。
(2)アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させ得る構成を有しているので、アーム部材4の両端部から吊下している両栽培床1,1を確実に上下同位置に重合させることができ、それによって両栽培床1,1による平面視での占有スペースを小さくできる。換言すると、栽培床の姿勢変位による作業通路幅を大きく取れることで、必要幅の作業通路を確保するのに予め余剰スペースを設けておく必要がなくなり、その分、単位面積当たりの作付け面積を広くできる。
(3)両栽培床1,1の姿勢を変更させるのに駆動軸3を回転させるだけで達成できるので、両栽培床1,1を姿勢変更させるための構成が簡単で且つ安価に製作できるとともに、栽培床1,1の姿勢変更操作が簡単に行える。
(4)駆動軸3として角棒3aを採用し、アーム部材4に設けた角穴4aに角棒3aを挿通させることによって、駆動軸3とアーム部材4とを相対回転不能に組付けているので、アーム部材4と駆動軸3とを、特別な手段(例えば溶接やボルト止め等)を用いることなく簡単な構成で確実に相対回転不能に組付けることができる。
(5)アーム部材4を駆動軸3の長さ方向にスライドできるので、駆動軸3に対するアーム部材4の組付け位置を栽培床1の長さに応じた適正位置に調整することができる。
(6)駆動軸3に対して複数のアーム部材4,4が組付けられているが、各アーム部材4,4はそれぞれ上記角穴4aを駆動軸3の角棒3aに嵌合させているので、各アーム部材4,4の組付け姿勢が特別な位置調整(姿勢調整)をすることなしに自動的に全て同じ姿勢になる(駆動軸3に対するアーム部材4の姿勢を調整する必要がない)。
(7)1本の駆動軸3を複数の栽培ユニットU,U・・の各駆動軸として共用できるので、それぞれの栽培ユニットUに個別の駆動軸3を用いる場合より構成が簡単になる。
(8)1台の架台2をその前後に隣接設置される両栽培ユニットU,Uの支持用に共用できるので、栽培ユニットUの設置個数の割に架台2の使用個数を削減できる。
(9)共通する1本の駆動軸3を回転させることで、複数の栽培ユニットU,U・・の各アーム部材4,4・・を同時に回動させることができるので、各栽培ユニットU,U・・のそれぞれアーム部材4,4・・を水平姿勢と鉛直姿勢との間で姿勢変更させる操作が簡単となる(共通の駆動軸3を1回回転操作するだけでよい)。
<第2実施形態>
図15~図16には、本願請求項3に対応する第2実施形態の植物栽培装置が示されている。この第2実施形態の植物栽培装置は、図15~図16に示すように、上記第1実施形態の植物栽培装置の構成に加えて次の構成を採用している。
即ち、第2実施形態(図15~図16)の植物栽培装置は、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上(図示例では4本)のアーム部材4,4・・を設置している一方、隣接する2本を1組とするアーム部材4,4間ごとにそれぞれ2個を1組とする栽培床1,1の両端部をそれぞれ吊下手段5,5で吊下している。尚、架台2、栽培床1、駆動軸3、アーム部材4、吊下手段5の各構成は、上記第1実施形態のものと同じである。
図15~図16の実線図示状態は、各アーム部材4,4・・を水平姿勢に維持した状態のものであり、図15に鎖線図示する状態は、駆動軸3を角度90°回転させて各アーム部材4’,4’・・を鉛直姿勢に変位させることで1組の栽培床1’,1’を上下に重合する位置に変位させたものである。
この第2実施形態の植物栽培装置では、2台の架台2,2間の間隔を広くすることで、駆動軸3の長さ方向にアーム部材4,4・・の使用本数より1個少ない個数の栽培床1を列状に設置できる。図15~図16の例示では、2台の架台2,2間に4本のアーム部材4,4・・を使用することで、駆動軸3の長さ方向に3個(左右で6個)の栽培床1,1・・を設置している。換言すると、駆動軸3の長さ方向に複数個(3個)の栽培床1を設置したものでも、それら複数個の栽培床1を2台の架台2,2のみで支持している。
又、この第2実施形態の植物栽培装置では、4本使用されている各アーム部材4,4・・における中間部に位置する2本のアーム部材4,4を、その前後に設置される両栽培床1,1の支持用部材として共用している。
従って、この第2実施形態(図15~図16)の植物栽培装置は、上記第1実施形態の効果に加えて、設置される栽培床1の個数の割りに使用する架台2の台数を少なくでき、且つ2台1組の架台2,2間に複数個の栽培床1,1,1を設置できるとともに、中間部に位置するアーム部材4をその前後に設置される両栽培床1,1の支持用に共用できるので、架台2(又は栽培床1)やアーム部材4等の設置効率が良好となる(部材点数を削減できる)という効果を達成できる。
<第3実施形態>
図17~図20には、本願請求項4に対応する第3実施形態の植物栽培装置が示されている。この第3実施形態の植物栽培装置は、図17~図20に示すように、上記第1実施形態の植物栽培装置の構成に加えて次の構成を採用している。
即ち、第3実施形態(図17~図20)の植物栽培装置は、隣接する2台の架台2,2間における駆動軸3に、該駆動軸3の長さ方向に所定間隔をもって3本以上(図示例では4本)のアーム部材4,4,4A,4Aを設置して、2個を1組とする栽培床1,1を3本以上(図示例では4本)のアーム部材4,4,4A,4Aで支持している一方、各アーム部材4,4,4A,4Aにおける中間部に位置するアーム部材(2本)4A,4Aに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4に接触するのを防止するための接触防止用の凹み部44(図19、図20参照)を設けている。尚、この第3実施形態では、各栽培床1は、容器部分の上端部を吊下手段5(ワイヤ)で吊持している。
この第3実施形態(図17~図20)の植物栽培装置では、隣接する2台の架台2,2間の間隔を広くする一方、両架台2,2間に長尺(例えば5m超の長さ)で一体に連続する栽培床1,1を設置するのに適したものである。そして、長尺(例えば5m超の長さ)の栽培床1を支持する場合、栽培床両端の2箇所のみをアーム部材4,4で支持するものでは、栽培床1の中間部分が重みで垂れることがあるが、この第3実施形態の植物栽培装置のように、長尺の栽培床1の長さ方向中間部(図示例では2箇所)を駆動軸3に組付けたアーム部材4A,4Aで支持することにより、栽培床1の中間部分が重みで垂れるのを防止するようにしている。
ところで、この第3実施形態のようにアーム部材4Aで栽培床1の長さ方向中間部を支持したものでは、該アーム部材が第1実施形態のように直線状のものであると、該アーム部材4を水平姿勢から鉛直姿勢まで変位させる途中で吊下している栽培床1とアーム部材4とが接触(衝突)してしまう。
そこで、この第3実施形態植物栽培装置では、図19及び図20に示すように、栽培床1の長さ方向中間部を支持するアーム部材4A,4Aに上記した栽培床接触防止用の凹み部44を設けている。この凹み部44付きのアーム部材4Aは、駆動軸3を挟んで両側にコ形フレーム45,45を有し、その各コ形フレーム45,45の内側に栽培床1を収容し得る凹み部44,44を設けている。
この凹み部44付きのアーム部材4Aは、その中間部にある中間突出片45aの先端部を駆動軸3に対して相対回転不能に組付けている。又、この凹み部44付きのアーム部材4Aでは、各コ形フレーム45,45の端部側にある端部突出片45b,45bの先端部にそれぞれ吊下手段5,5を介して栽培床1,1を支持している。尚、この第3実施形態では、各コ形フレーム45,45の端部側にある端部突出片45b,45bが上記第1実施形態のアーム部先端部42に相当する。
そして、この第3実施形態の植物栽培装置では、上記凹み部44付きのアーム部材4Aが水平姿勢(図19の状態)から鉛直姿勢(図20の状態)まで変位したときに、栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようにしている。従って、栽培床1の長さ方向中間部をアーム部材4Aで支持したものであっても、該アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができる。尚、栽培床1,1の両端部を支持するアーム部材4,4は、上記の凹み部44を有しない直線状のもの(第1実施形態で使用しているもの)を使用することができる。
上記のように、この第3実施形態(図17~図20)の植物栽培装置では、栽培床1の長さ方向中間部を凹み部44付きのアーム部材4Aで支持できるとともに、該アーム部材4Aが水平姿勢から鉛直姿勢まで変位したときに栽培床1がアーム部材4Aの上記凹み部44内に非接触状態で入り込むようになる。
従って、この第3実施形態の植物栽培装置では、上記第1実施形態の効果に加えて、栽培床1が長尺(例えば5m超)であっても栽培床1の長さ方向中間部を凹み部44付きのアーム部材4Aで支持しているので、栽培床1の長さ方向中間部が重みで垂れ下がらないとともに、アーム部材4Aを支障なく水平姿勢と鉛直姿勢との間で変位させることができるという効果を達成できる。
1は栽培床、2は架台、3は駆動軸、3aは角棒、4aは角穴、4,4Aはアーム部材、5は吊下手段、6は回転操作具、11は載置台、21は支持台、41はアーム部、42は先端部、44は凹み部、51はワイヤ、Aは植物栽培装置、Hはビニールハウス、Pは作業通路、Uは栽培ユニットである。