JP2022188594A - 金属捕捉剤および金属捕捉剤の製造方法、ならびに流動接触分解触媒組成物 - Google Patents

金属捕捉剤および金属捕捉剤の製造方法、ならびに流動接触分解触媒組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】バナジウムの捕捉特性に優れた流動接触分解触媒用金属捕捉剤を提供し、その製造方法を提案する。また、耐摩耗性が高く、さらに劣化を抑制した金属を含む流動接触分解触媒組成物を提供する。【解決手段】珪素酸化物バインダーおよびアルミナ成分と、金属成分である第2族元素の化合物とからなり、特定の比表面積を有する酸化マグネシウムを用いることで、耐摩耗性が0.1~10の範囲であること、強熱減量(LOI)が20~35の範囲にあることを特徴とする金属捕捉剤を得る。該金属捕捉剤の製造方法と、さらに、該金属捕捉剤を含む流動接触分解触媒と、を含む流動接触分解触媒組成物である。【選択図】図1

Description

本発明は、接触分解反応過程において、流動接触分解触媒の被毒元素の一つであるバナジウムを捕捉固定化する技術分野に関する。
製油所での残油処理比率の増加を背景とし、残油処理用流動接触分解触媒(RFCC)に関する触媒開発や改良が急務となっている。RFCCでの問題点の一つは、原油(または残油)中に含まれる触媒被毒金属(Ni,V)の濃度が高く、触媒へのダメージが大きいことにある。この影響を緩和する対策として、この被毒金属と親和性の良い元素(被毒金属捕捉剤)を流動接触分解触媒(FCC)中に添加することや、親和性のよい元素を高濃度に含む助触媒(添加剤)を一定量FCC触媒にブレンドする方法がある。これらの対策は被毒金属をある一定の結晶相として捕捉し、触媒活性への悪影響を緩和するという考えのもとで採られている方法である。
例えば、原料油中に不純物として存するバナジウムは、流動接触分解触媒を再生する再生塔内の雰囲気においてはバナジン酸を形成し、流動接触分解触媒中のゼオライトの結晶破壊や活性低下を引き起こすことが知られている。このため、流動接触分解触媒中にバナジウムの捕捉能を有する構成物を組み込む手法や、前記構成物を添加剤として母体触媒と混合する手法が採用されている。
特許文献1には、流動接触分解触媒に添加しバナジウムを不動態化する添加剤として、遊離酸化マグネシウムおよびその場で生成したケイ酸マグネシウムセメントバインダーを含んでなる添加剤およびその製造方法が開示されている。この添加剤は、低い表面積を有し、最小の分解活性を有している。
また特許文献2には、流動接触分解の間の金属不動態化に使われる金属捕捉粒子として、カオリン、酸化マグネシウムまたはマグセシウム水酸化物およびカルシウム炭酸塩からなる乾燥粒子で、少なくとも10wt%の酸化マグネシウムを含む粒子が開示されている。
また特許文献3には、珪素酸化物を主として含むバインダー、アルミナ成分および粘土鉱物から選ばれた1種または2種、第1の金属成分である第2族元素の化合物とからなり、かつ、耐摩耗性指数CAIが所定の範囲にある金属捕捉剤が開示されている。さらにこの金属捕捉剤は、X線回折分析において、前記第1の金属成分の珪酸塩のピークが検出されない特徴を有している。
特表平08-504397号公報 特表2013-506548号公報 国際公開第2020/129455号
触媒化成技報 Vol.13、No.1、P65、1996
発明者らは、特許文献3に開示した金属捕捉剤を開発し、該金属捕捉剤を含む流動接触分解触媒を開発したが、さらに、流動接触分解触媒の劣化を抑えることができると共に、耐摩耗性に優れた金属捕捉剤が求められていた。
そこで、本発明の目的は、炭化水素油の接触分解反応過程で用いられる流動接触分解触媒の被毒元素の一つであるバナジウムを捕捉固定化し、流動接触分解触媒の劣化を抑えることができると共に、耐摩耗性が高く、さらに高い触媒活性を維持できる金属捕捉剤およびその製造方法を提供することにある。更に本発明の他の目的は、その金属捕捉剤を含む流動接触分解触媒組成物を提供することにある。
このような技術的背景のもと、発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、珪素酸化物バインダーおよびアルミナ成分に第2族元素からなる酸化物を分散させることで耐摩耗性が高く、さらに流動接触分解触媒の劣化を抑えた金属捕捉剤が得られることを知見し、本発明を開発するに至った。
前記課題を解決し、上記の目的を実現するため開発した本発明は、下記のとおりのものである。すなわち、本発明は、第一に、珪素酸化物バインダーおよびアルミナ成分と、金属成分である第2族元素の酸化物とからなり、第2族元素の酸化物として特定の比表面積を有する酸化マグネシウムを用いることで、耐摩耗性が0.1~10の範囲であること、強熱減量(LOI)が20~35の範囲にあることを特徴とする金属捕捉剤を提供する。
本発明にかかる上記金属捕捉剤は、珪素酸化物(シリカ系)バインダーと、アルミナ成分と、金属成分と、を含む金属捕捉剤であって、
(a)前記珪素酸化物(シリカ系)バインダーの含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で15~35質量%であり、
(b)前記アルミナ成分の含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で10~30質量%であり、
(c)前記金属捕捉剤の平均粒子径が40~100μmの範囲にあり、比表面積が130~280m/gの範囲にあり、細孔容積が0.05~0.50ml/gの範囲にあることを特徴とする金属捕捉剤を特徴とする。
なお、本発明にかかる金属捕捉剤は、
(1)上記金属捕捉剤は、耐摩耗性指標(CAI)が0.1~10の範囲であること、
(2)上記金属成分の含有量は、上記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で20~80質量%であること、
(3)上記金属捕捉剤に、さらにアルカリ金属Mが含まれ、上記アルカリ金属Mの含有量が酸化物MO換算で1.5質量%以下であること、
(4)上記金属捕捉剤は、強熱減量(LOI)が20~35の範囲にあること、などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
また、本発明は、第二に、上記いずれかの金属捕捉剤の製造方法を提供する。すなわち、本発明にかかる金属捕捉剤の製造方法は、上記いずれかの金属捕捉剤の製造方法であって、珪素酸化物(シリカ系)バインダーにアルミナ成分またはアルミナ成分前駆体を加え、上記珪素酸化物(シリカ系)バインダー-上記アルミナ成分または上記アルミナ成分前駆体を混合し、さらに、金属成分の化合物を混合し、上記金属成分を加えた混合スラリーを加熱して金属捕捉剤前駆体を得る第一工程と、
上記金属捕捉剤前駆体を乾燥し、上記金属捕捉剤前駆体の噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を得る第二工程と、
上記噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を洗浄して、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る第三工程と、
上記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱処理する第四工程と、を含むことを特徴とする金属捕捉剤の製造方法を提案する。
なお、本発明にかかる金属捕捉剤の製造方法については、
(5)上記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの加熱処理は、上記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキに対して80~200℃の熱風をあて、昇温速度2~10℃/分にて、上記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを80~175℃まで加熱し、回収すること、
(6)上記第一工程において、上記混合スラリーのpHを、10.0~13.0の範囲に調製する工程と、を含むこと、
(7)上記第三工程において、上記噴霧乾燥粒子を複数回洗浄し、上記噴霧乾燥粒子を水に分散した懸濁スラリーのpHを、10.0~12.0の範囲に調製してする工程を含むこと、などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
また、本発明は、第三に、上記いずれかの金属捕捉剤と、流動接触分解触媒と、を含むことを特徴とする流動接触分解触媒組成物を提供する。
本発明は、金属捕捉剤として、珪素酸化物バインダーにアルミナ成分を加えたうえで、バナジウム捕捉機能を有する例えばマグネシウムおよびカルシウムなどの金属成分である第2族元素の酸化物を分散させている。このため、金属捕捉剤の耐摩耗性能を向上させ、流動接触分解触媒の劣化を抑えることができ、しかも使用した各化合物を有効に利用することができる。また、金属捕捉剤に含まれる金属成分である第2族元素の化合物として、特定の比表面積を有する酸化マグネシウムを用いることで、金属捕捉剤の耐摩耗性を向上させ、その強熱減量(LOI)を15~35の範囲にすることができる。
従って、本発明によれば、各化合物の利用効率を高くすることができ(ロスが少なく)、各化合物の使用量を抑えることができる。
本発明の金属捕捉剤の製造方法の各製造工程を示すフロー図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[金属捕捉剤]
本発明の金属捕捉剤は、珪素酸化物(シリカ系)バインダーにアルミナ成分を加え、金属成分として、バナジウム(V)の捕捉機能を有する金属酸化物を分散させて構成されている。
<珪素酸化物(シリカ系)バインダー成分>
本発明で使用されるバインダーは、珪素酸化物(シリカ系)を含む。バインダーは、珪素酸化物以外に、Tiの酸化物を含んでもよく、Tiの酸化物の含有量が、バインダーの質量中、1~20質量%であることが好ましい。
本発明の金属捕捉剤のシリカ系バインダーとして珪素酸化物を用いることにより、シリカ系バインダーに金属成分を分散した金属捕捉剤が、チタン酸化物を主成分とする担体に金属成分を担持した他の金属捕捉剤よりも熱的に安定であり、相転移が起こりにくく、さらにバナジウム(V)の捕捉機能を有する化合物との相互作用が強く、金属捕捉剤表面に金属成分を容易に分散させやすいという利点がある。加えて、金属捕捉剤の耐摩耗性が改善される。
珪素酸化物(シリカ系)は、微粒子であることが好ましく、該微粒子の平均粒子径は、4~100nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が4nm以上であれば、微粒子として存在することができるので好ましい。一方、平均粒子径が100nm以下であれば、金属捕捉剤としての強度を保持することができるので好ましい。より好ましくは、珪素酸化物(シリカ系)微粒子の平均粒子径が、4~80nmの範囲であり、さらに好ましくは、4~50nmの範囲である。
なお、珪素酸化物(シリカ系)微粒子の平均粒子径は下記の方法で求めた。BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により、珪素酸化物(シリカ系)微粒子の比表面積SA(m/g)を測定し、次式で平均粒子径を算出した。
平均粒子径(nm)=6000/{SA(m/g)×ρ(g/cm)}
ここで、ρは、珪素酸化物(シリカ系)微粒子の密度、2.2g/cmである。
金属捕捉剤中の珪素酸化物(シリカ系)バインダーの含有量は、金属捕捉剤に対して、酸化物(SiO)換算で10~30質量%の範囲にあることが好ましい。珪素酸化物(シリカ系)バインダーが10質量%未満では、金属捕捉剤としての強度を保持できないおそれがある。一方、30質量%を超えると、珪素酸化物(シリカ系)バインダーが第2族元素の酸化物や炭酸塩の表面を被覆してしまい、金属捕捉剤としての捕捉性能の低下や拡散性の低下のおそれがある。より好ましくは、珪素酸化物(シリカ系)の含有量が、10~25質量%の範囲である。
<アルミナ成分>
アルミナ成分としては、アルミナや本発明の金属捕捉剤の製造工程においてアルミナを生成するアルミナ成分前駆体としての水酸化アルミニウムや擬ベーマイト(ベーマイトゾル)、塩基性塩化アルミニウムが用いされる。好適にはアルミナ成分として、擬ベーマイト(ベーマイトゾル)が選択される。金属捕捉剤中のアルミナ成分の含有量としては、酸化物(Al)換算で10~30質量%であることが好ましく、さらに、15~25質量%であることがより好ましい。アルミナ成分は、触媒形状・耐摩耗性の維持や細孔構造を維持する機能を有する。
<金属成分>
本発明の金属捕捉剤は、珪素酸化物(シリカ系)バインダー中に、金属成分として、第2族元素の酸化物を含む。第2族元素の酸化物は、珪素酸化物(シリカ系)バインダー中に直接添加されてもよいが、例えば、水酸化物や炭酸塩、シュウ酸塩、またはその前駆物質(以下、金属成分という)として添加されてもよい。シリカ系バインダー中に前駆物質が添加される場合には、熱処理を行うことで、前駆物質が所望の化合物である第2族元素の酸化物となる。
金属成分は、少なくともMgを含み、MgおよびCaの両方含まれることが好ましい。金属捕捉剤中の金属成分の含有量は、金属捕捉剤に対して、酸化物換算として20~80質量%であることが好ましい。金属成分の含有量が酸化物換算として20質量%より過度に小さいと、流動接触分解触媒の被毒元素の一つであるバナジウムとの反応に必要な金属捕捉能が確保できないおそれがあるため好ましくなく、80質量%より過度に大きいと、金属成分が凝集しやすくなり、分散性を阻害するおそれがあるため好ましくない。金属成分がMgおよびCaの両方を含む場合には、金属捕捉剤中の金属成分Mgの含有量が、酸化物(MgO)換算でMgOとして15~60質量%、金属成分Caの含有量が、酸化物(CaO)換算で5~20質量%の範囲にあることが好ましい。
ここで、金属成分として用いるMgO、CaOは、MgO、CaOそのものを用いてもよいし、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を焼成処理し、所望の金属成分である第2元素の酸化物が得られるものであれば、無機、有機物質にかかわらす、特に限定するものではない。
さらに、金属成分として用いるMgOの比表面積は、20~40m/gの範囲にあることが好ましい。MgOの比表面積が、20m/g以上であれば、と金属捕捉剤としての機能が低下しないため好ましい。また、MgOの比表面積が、40m/g以下であれば、上記珪素酸化物(シリカ系)バインダーと、アルミナ成分と、金属成分とを含む金属捕捉剤の原料を混合した混合スラリーの粘度が上昇しすぎて噴霧乾燥出来なくなる場合がないため好ましい。
<アルカリ金属成分>
本発明の金属捕捉剤中には、ナトリウム型やリチウム型などのアルカリ金属(M)が含まれる。金属捕捉剤中のアルカリ金属(M)の含有量は、MO酸化物換算で1.5質量%以下であることが好ましい。主触媒には一般にゼオライト成分が含まれており、アルカリ金属(M)の含有量を制御することで、ゼオライトに対するMO酸化物の影響(ゼオライトの被毒等)を緩和することが可能となる。さらに、アルカリ金属(M)の含有量がMO酸化物換算で1.0質量%以下であることがより好ましい。
<金属捕捉剤の物性>
(耐摩耗性指数(CCIC Attrition Index、CAI)
本発明にかかる金属捕捉剤の耐摩耗性(Attrition Resistance)は、非特許文献1に記載された方法により測定される耐摩耗性指数(CCIC Attrition Index、CAI)により測定される。ここで、金属捕捉剤の耐摩耗性指数CAIは、0.1~10の範囲にある必要がある。0.1未満では金属捕捉成分が有効に使用されないおそれがあり、一方、10を超えると、金属捕捉剤が使用時に粉化して、装置トラブルや製品への粉体の混入等のおそれがあるためである。さらに、CAIが0.2~6の範囲であることがより好ましい。
(平均粒子径)
本発明の金属捕捉剤は、平均粒子径が40~100μmの範囲にあることが好ましい。なお、粒子径評価は、乾式マイクロメッシュシーブ法により測定し、50質量%値(D50)を平均粒子径とした。平均粒子径が40μmよりも過度に小さいと金属捕捉効率が低下し、一方、100μmよりも過度に大きいと金属捕捉剤の耐摩耗性や強度が低下するおそれがある。さらに、金属捕捉剤の平均粒子径が50~90μmの範囲であることがより好ましい。
(比表面積(SA))
本発明の金属捕捉剤は、BET法で測定した比表面積(SA)が、130~280m/gの範囲にあることが好ましい。金属捕捉剤の比表面積が130m/gよりも過度に小さいと、金属成分に含まれる化合物が凝集しやすくなり、金属捕捉効率が低下する。一方、金属捕捉剤の比表面積が300m/gよりも過度に大きいと、金属捕捉剤として強度が小さくなり、金属捕捉剤としての形状保持性が低下するおそれがある。なお、金属捕捉剤の比表面積は、140~250m/gの範囲であることがより好ましい。
(細孔容積(PV))
本発明の金属捕捉剤は、水のポアフィリング法により測定される細孔容積(PV)が、0.05~0.50ml/gの範囲にあることが好ましい。金属捕捉剤の細孔容積(PV)が、0.05ml/gよりも過度に小さいと金属捕捉効率が低下し、一方、0.50ml/gよりも過度に大きいと、触媒にした時の強度が得られないおそれがある。さらに、金属捕捉剤の細孔容積(PV)が、0.05~0.45ml/gの範囲であることがより好ましく、0.05~0.40ml/gの範囲であることがより一層好ましい。なお、細孔容積は細孔直径41Å(4.1nm)以上の細孔直径を有する細孔の容積を表す。
(嵩密度(ABD))
本発明にかかる金属捕捉剤の嵩密度(ABD)は、0.70g/ml以上とすることが好ましい。金属捕捉剤の嵩密度の測定方法は、25mlのシリンダーを用いて、金属捕捉剤の重量を測定し、単位体積当たりの重量から嵩密度を計算した。嵩密度が0.70g/mlより低い場合は、耐摩耗性が不十分となり、流動触媒として使用した場合、容易に粉化して触媒が飛散する要因となり、実用的使用に向かないおそれがある。なお、嵩密度の上限は、組成から定まる密度となる。
(強熱減量(LOI))
本発明にかかる金属捕捉剤の強熱減量(LOI)は、15%~35%の範囲にあることが好ましい。さらには20%~30%の範囲にあることが、より好ましい。LOIの測定方法は、1000℃に保持した電気炉にて1時間保持したときの重量減少量を測定し、重量減少率を計算して強熱減量(LOI)として算出した。
[金属捕捉剤の製造方法]
図1は、本発明の金属捕捉剤の製造方法の各製造工程を示すフロー図である。以下、本発明の金属捕捉剤の製造方法の各工程について説明する。本発明にかかる金属捕捉剤の製造方法は、珪素酸化物(シリカ系)バインダーにアルミナ成分またはアルミナ成分前駆体を加え、珪素酸化物(シリカ系)-アルミナ成分を混合し、さらに、上記金属成分の化合物を混合し、金属成分を加えた混合スラリーを加熱して金属捕捉剤前駆体を得る第一工程と、上記金属捕捉剤前駆体を乾燥し、噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を得る第二工程と、上記噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を洗浄する第三工程と、上記噴霧乾燥粒子洗浄品を加熱処理する第四工程と、を含むことを特徴とする。
以下、各工程について説明する。
<第一工程:珪素酸化物(シリカ系)バインダー-アルミナ成分-金属成分の混合スラリーから金属捕捉剤前駆体を得る工程>
第一工程において、珪素酸化物(シリカ系)バインダーにアルミナ成分またはアルミナ成分前駆体を加え、珪素酸化物(シリカ系)とアルミナ成分とを混合し、さらに、金属成分の化合物を混合し、金属成分を加えた混合スラリーを得る。第一工程において、混合スラリーを得るために必要な各成分の添加順については、特に制限されるものではなく、各成分の添加順を変更してもよい。本発明においては、金属成分を、後で添加する方法で説明を行う。また、すべての成分を同時に添加する方法であってもよい。
まず、珪素酸化物(シリカ系)-アルミナ成分の混合スラリーを調製する。珪素酸化物(シリカ系)-アルミナ成分の混合スラリーは、たとえば珪素酸化物(シリカ系)のゲル又はゾルを珪素酸化物(シリカ系)バインダーとして用いてもよく、珪素酸化物(シリカ系)のゾルは、ケイ酸塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陽イオンを除去したものを用いてもよい。この時得られた珪素酸化物(シリカ系)のゲルまたはゾルは、珪素酸化物からなる珪素酸化物(シリカ系)微粒子を含む。この珪素酸化物(シリカ系)微粒子の平均粒子径は、4nm以上が好ましい(この値は、珪素酸化物(シリカ系)-アルミナ成分の混合スラリーがゾルとして存在し得る最小値である。)。また、珪素酸化物(シリカ系)微粒子の平均粒子径は、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。ここでいう珪素酸化物(シリカ系)微粒子とは、上記のような方法で得られる珪素酸化物(シリカ系)の水和物あるいは珪素酸化物(シリカ系)スラリーの総称である。珪素酸化物(シリカ系)微粒子には、珪素の他にTiの酸化物前駆体を加えてもよく、これらの含有量は、珪素酸化物(シリカ系)に対して酸化物換算の内数で1~20質量%の範囲であれば、珪素酸化物(シリカ系)バインダー調製時に加えてもよい。
次に、アルミナ成分として、たとえば、擬ベーマイトを純水に分散させて擬ベーマイトスラリーを準備する。この擬ベーマイトスラリーを先の珪素酸化物(シリカ系)-アルミナ成分の混合スラリーに添加し、珪素酸化物(シリカ系)-アルミナ成分の混合スラリーを調製する。アルミナ成分としては、擬ベーマイトのほか、水酸化アルミニウムや塩基性塩化アルミニウムなどが使用できる。
上記工程で得られた混合スラリーに、金属成分を溶解して得られる水溶液または金属成分を同時に加えた混合スラリーを得る。この混合スラリーを撹拌混合した後、加熱して金属捕捉剤前駆体を得る。混合条件は、上記混合スラリーを20~90℃、好ましくは25~80℃に加温して保持し、この混合スラリーの温度の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃に加温した金属成分を含む水溶液を、pHが10.0~13.0、好ましくは10.5~11.5、より好ましくは10.6~11.3になるように、通常5~20分、好ましくは7~15分の間に連続添加して、金属捕捉剤前駆体を得る。
金属成分は、第2族元素の酸化物を含む。金属成分には、特にMgOおよびCaOの両方が含まれることが好ましい。ここで用いる、Mg酸化物およびCa酸化物は、シュウ酸塩、水酸化物、炭酸塩などの化合物をその原料として用いることができる。これらの化合物としては、焼成等によりMg酸化物又はCa酸化物を生成する炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムを用いてもよい。これら金属成分に含まれる第2族元素の酸化物の平均粒子径が100μm以下であることが好ましく、場合によっては、粉砕処理して用いることが好ましい。ここで、金属成分として用いるMgOの比表面積は、20~40m/gの範囲にあることが好ましい。MgOの比表面積が20m/g以上であれば、調製した金属捕捉剤の比表面積が向上し、性能的に向上しかつ物理性状が良好となるため好ましい。
MgOの比表面積が40m/g以下であれば、調合スラリーの粘度の上昇を抑制出来、安定した金属捕捉剤の製造が可能となるため好ましい。
<第二工程:金属捕捉剤前駆体を乾燥し、噴霧乾燥粒子を得る工程>
第二工程は、上記金属捕捉剤前駆体を乾燥し、噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を得る工程である。第一工程で得られた金属捕捉剤前駆体を、100~600℃、好ましくは110~600℃、さらに好ましくは400~600℃の温度で、0.5~10時間、好ましくは1~8時間の乾燥処理することにより、本発明の噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を製造する。上記金属捕捉剤前駆体の乾燥は、噴霧乾燥機による噴霧乾燥であってもよい。噴霧乾燥の方がより実用的である。このため、噴霧乾燥条件は、例えば、下記条件内で行うことが好ましい。
詳細には、噴霧乾燥は、第一工程で得られた金属捕捉剤前駆体を含む混合スラリーを噴霧乾燥機のスラリー貯槽に充填し、120~450℃の範囲、例えば、230℃に調製された気流(例えば空気)が流れる乾燥チャンバー内に混合スラリーを噴霧することにより行う。噴霧乾燥により、噴霧乾燥粒子(以下、単に金属捕捉剤ともいう。)が得られる。混合スラリーの噴霧乾燥によって、上記気流の温度は低下するが、乾燥チャンバーの出口の初期乾燥温度は、ヒーターなどを用いて50~300℃の範囲、例えば120℃に維持される。乾燥速度は、初期乾燥温度120℃から450℃への昇温を1.0~2.0℃/分に設定することができる。
このように、本発明にかかる金属捕捉剤の製造方法は、第二工程において、混合スラリー溶液の初期乾燥温度を下げ、昇温速度を制御して、乾燥速度をマイルドな条件で行うことによって、耐久摩耗性に優れた金属捕捉剤を得ることができる。なお、該噴霧乾燥粒子は、下記洗浄を行う前に予備乾燥を行ってもよい。予備乾燥は、100~300℃程度の温度範囲で0.5~5.0時間以内で行ってもよい。このように予備乾燥を行うことで、後段の洗浄による構成成分の溶出や金属捕捉剤の崩壊を防止することができる。
<第三工程:金属捕捉剤を水に分散しスラリーを得、洗浄する工程>
第二工程で得られた噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)が副生成物を含んでいる場合は、副生成物を除去するために洗浄処理することが好ましい。洗浄処理をすることにより、噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を含んだ噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る。洗浄処理を行う場合は、詳細には温水(40~80℃)で固液比が1:3から1:50、撹拌時間として3~30分程度で洗浄する。洗浄処理により本願の金属捕捉剤に含まれるアルカリ金属Mの含有量を低下させることができる。本願発明の金属捕捉剤に含まれるアルカリ金属Mの含有量は、当該金属捕捉剤に対しMO酸化物換算で1.5質量%以下が好ましく、さらに1.0質量%以下であることがさらに好ましい。アルカリ金属Mの含有量を制御することで、主触媒に含まれているゼオライトに対するMO酸化物の影響(ゼオライトの被毒等)を緩和することが可能となる。ここで、アルカリ金属Mとしては、NaやLi、Kなどが挙げられる。また、噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)の洗浄工程を繰返す、もしくは洗浄時間を延ばすことで、金属捕捉剤の比表面積や耐摩耗性が向上する。
さらに、噴霧乾燥粒子を洗浄する際に、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を水に溶解したアルカリ金属水溶液を加え、懸濁スラリーを得て、懸濁スラリーのpHを10.0~12.0の範囲に調整することが好ましい。さらに、アルカリ金属水溶液のpHを10.5~11.7の範囲に調整することがより好ましい。このアルカリ金属水溶液のpHが10.0以上であれば、バナジウム捕捉成分であるMgやCaが金属捕捉剤から溶出せず、金属捕捉剤の耐摩耗性が低下しないため好ましい。このアルカリ金属水溶液のpHが12.0以下であれば、金属捕捉剤に含まれる珪素酸化物バインダー成分であるシリカ源が溶出せず、金属捕捉剤の耐摩耗性が低下しないため好ましい。
その後、イオン交換水等へ噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを再懸濁、脱水、掛水洗浄を行うことが好ましい。懸濁時のスラリー温度は40~80℃、掛水温度は40~80℃が好ましい。また、この工程を繰返すことでアルカリ金属Mの含有量を低減することが出来る。
<第四工程:噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を乾燥および/または焼成加熱し金属捕捉剤を得る工程>
第三工程で得られた洗浄した後の噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を、80~200℃、好ましくは80~175℃、さらに好ましくは80~150℃の温度で、0.1~10時間、好ましくは0.2~8時間の乾燥および/または焼成加熱処理することにより、本発明の金属捕捉剤を得る。洗浄した後の噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)の乾燥は、箱型乾燥機、ロータリードライヤー等を用いて、従来公知の方法により行うことができる。
詳細には、第三工程で得られた洗浄した後の噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)である金属捕捉剤洗浄ケーキを、80~200℃の範囲、例えば120℃に調整された気流(例えば空気)が流れるロータリードライヤー内に該洗浄ケーキを投入することにより、金属捕捉剤が得られる。例えば、金属捕捉剤洗浄ケーキの加熱処理は、80~200℃に設定し、昇温速度2.0~10.0℃/分程度で加温され、80~200℃となり、乾燥粉末として回収する。
[流動接触分解触媒組成物について]
本発明の流動接触分解触媒組成物とは、流動接触分解触媒と本発明の金属捕捉剤をブレンドしたものを意味する。本発明の流動接触分解触媒組成物(以下、「本発明触媒組成物」という)には、少なくとも上記金属捕捉剤やゼオライト成分、バインダー成分(シリカ系バインダーあるいはアルミナ系バインダー)、粘土鉱物成分が含まれる。該触媒組成物を使用した原油又は残油の流動接触分解処理は、固定床反応装置に触媒組成物を充填して水素雰囲気下、高温高圧条件で行なわれる。本発明の流動接触分解触媒組成物に含まれる流動接触分解触媒としては、従来公知の流動接触分解触媒(日揮触媒化成株式会社より提供される一般的なCVZシリーズの流動接触触媒)を用いることができる。
<金属捕捉剤>
本発明の流動接触分解触媒組成物には、本発明の金属捕捉剤が0.5~10質量%の範囲で含まれることが好ましい。金属捕捉剤が、0.5質量%より少ないと、バナジウム、ニッケル等の金属を捕捉して流動接触分解触媒の被毒を抑える効果が十分ではないおそれがあるため好ましくない。一方、金属捕捉剤が、10質量%を超えると流動接触分解触媒組成物中のゼオライト比率が低下し、触媒活性面で悪影響を及ぼすとともに、過剰の活性金属成分がゼオライトの被毒等の活性面への悪影響の要因ともなるので好ましくない。
<比表面積(SA)>
本発明にかかる流動接触分解触媒組成物は、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法で測定した比表面積(SA)が、30~150m/gの範囲であることが好ましい。比表面積が、30m/gよりも小さいと、流動接触分解プロセスなどにおいて短い接触時間で接触分解反応を十分に進行させることができないおそれがある。一方、150m/gより大きいと流動接触分解触媒として、十分な強度が得られないおそれがある。
<金属捕捉剤および流動接触分解触媒組成物の平均粒子径>
本発明にかかる流動接触分解触媒組成物の平均粒子径は、40~100μmが好適であり、50~90μmがより一層好ましい。金属捕捉剤および流動接触分解触媒組成物の平均粒子径の測定は、粒度分布の測定用の試料をそれぞれ準備し、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-950V2)にて行うことができる。具体的には、光線透過率が70~95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度 2.8L/min,超音波 3min、反復回数 30で測定した。メディアン径(D50)を平均粒子径として採用した。
<細孔容積(PV)>
本発明にかかる流動接触分解触媒組成物は、水のポアフィリング法により測定した全細孔径範囲の細孔容積(PV)が0.05~0.50ml/g、好適には0.10~0.45ml/gの範囲内にあることが好ましい。流動接触分解触媒組成物を流動触媒として使用した場合、細孔容積が0.05ml/gを下回ると、十分な接触分解活性が得られないおそれがある。一方で、細孔容積が0.50ml/gを超えるものは、流動接触分解触媒組成物としての強度が低下するおそれがある。
<嵩密度(ABD)>
本発明にかかる流動接触分解触媒組成物の嵩密度(ABD)は、嵩密度は0.70g/mlを下限とすることが好ましい。嵩密度が0.70g/mlより低い場合は、耐摩耗性が不十分となり、流動触媒として使用した場合、容易に粉化して流動接触分解触媒組成物の成分が飛散する要因となるおそれがある。流動接触分解触媒組成物の嵩密度(ABD)の測定方法は、25mlのシリンダーを用いて、金属捕捉剤の重量を測定し、単位体積当たりの重量から嵩密度を計算した。
<強熱減量(LOI)>
本発明にかかる流動接触分解触媒組成物の強熱減量(LOI)は、20%~35%の範囲にあることが好ましい。さらには22~30%の範囲にあることが、より好ましい。強熱減量(LOI)の測定方法は、1000℃に保持した電気炉にて1時間保持したときの重量減少量を測定し、重量減少率を計算して強熱減量(LOI)として算出した。
[MTR-1]金属捕捉剤MTR-1の調製(平均粒子径が4-5nmのシリカ微粒子および擬ベーマイトを用いた金属捕捉剤)
固形分濃度として84.2質量%の結晶性ベーマイト(比表面積105m/g)23.8gと、固形分濃度として97.0質量%の酸化マグネシウム(比表面積27m/g)41.2gと、固形分濃度(酸化カルシウム換算)として43.1質量%の炭酸カルシウム34.8gをイオン交換水230.4gに混合し、さらに、固形分濃度として20.1質量%、粒子径4-5nmのシリカゾル124.2gを添加して、撹拌混合することで調合スラリーを得た。このときの混合スラリーのpHは10.2であった。
得られた混合スラリーを液滴として入口温度が240℃、出口温度が150℃となるように噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が75μmの噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を得た。得られた噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)をイオン交換水に固形分濃度10質量%となるように懸濁し、懸濁スラリーを得た。このときの懸濁スラリーのpHは10.5であった。懸濁スラリーを濾別し、さらに、固形分量に対して15倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、洗浄スラリーを得た。洗浄スラリーを脱水することで噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得た。
得られた噴霧乾燥粒子洗浄ケーキをパットに移し、送風式箱型乾燥機に入れ120℃まで2時間かけて、昇温速度2℃/分にて昇温し、その後、120℃で8時間保持することで、MTR-1を得た。得られたMTR-1の強熱減量(LOI)は29.5%であり、600℃にて2時間保持した後、測定した比表面積は210m/g、耐摩耗性指数(CAI)は3であった。
[MTR-2]金属捕捉剤MTR-2の調製(混合スラリーのpHを上昇させ、調製した金属捕捉剤)
調合スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を添加し、そのpHを11.0とした以外は、MTR-1の調製と同様にして、金属捕捉剤MTR-2を得た。具体的には、MTR-1の調製と同様にして、噴霧乾燥を実施し、イオン交換水に固形分濃度が10質量%となるように懸濁し、懸濁スラリーを得た。このときの懸濁スラリーのpHを10.9とした。得られたMTR-2の強熱減量(LOI)は24.6%であり、600℃にて2時間保持した後、測定した比表面積は163m/g、耐摩耗性指数(CAI)は3であった。
[MTR-3]金属捕捉剤MTR-3の調製(洗浄スラリーのpHを上昇させ、調製した金属捕捉剤)
噴霧乾燥品をイオン交換水に懸濁する際に水酸化ナトリウム水溶液を添加し懸濁スラリーのpHを11.3に調製した以外はMTR-1の調製と同様にして、金属捕捉剤MTR-3を得た。得られたMTR-3の強熱減量(LOI)は30.8%であり、600℃にて2時間保持した後、測定した比表面積は226m/g、耐摩耗性指数(CAI)は2であった。
[MTR-4]金属捕捉剤MTR-4の調製(混合スラリーのpHを上昇させ、乾燥スプレーを用いて調製した金属捕捉剤)
得られた噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを入口温度が240℃の噴霧乾燥機の上部より投入し、熱風で乾燥すること以外はMTR-2の調製と同様にして、金属捕捉剤MTR-4を得た。得られたMTR-4の強熱減量(LOI)は、20.8%であり、600℃にて2時間保持した後、測定した比表面積は140m/g、耐摩耗性指数(CAI)は6であった。
[MTR-5] 金属捕捉剤MTR-5の調製(洗浄スラリーのpHを上昇させ、乾燥スプレーを用いて調製した金属捕捉剤)
得られた噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを入口温度が240℃の噴霧乾燥機の上部より投入し、熱風で乾燥すること以外はMTR-3の調製と同様にして、金属捕捉剤MTR-5を得た。得られたMTR-4の強熱減量(LOI)は25.6%であり、600℃にて2時間保持した後、測定した比表面積は188m/g、耐摩耗性指数(CAI)は5であった。
比較例1
[MTR-R1] 金属捕捉剤MTR-R1の調製
脱水ケーキを、入口温度が240℃の噴霧乾燥機の上部より投入し、熱風で乾燥すること以外は、MTR-1の調製と同様にして、金属捕捉剤MTR-R1を得た。得られたMTR-R1の強熱減量(LOI)は、17.8%であり、600℃にて2時間保持した後、測定した比表面積は125m/g、耐摩耗性指数(CAI)は12であった。
比較例2
[MTR-R2] 金属捕捉剤MTR-R2の調製
調合スラリーに硝酸を添加し、pHを9.0に調整した以外はMTR-1の調製と同様にして、金属捕捉剤MTR-R2の製造を試みたが、調合スラリーの粘度が上昇し過ぎたため、噴霧乾燥が実施できなかったため、金属捕捉剤MTR-R2を製造することができなかった。
比較例3
[MTR-R3] 金属捕捉剤MTR-R3の調製
噴霧乾燥品をイオン交換水に懸濁する際に硝酸水溶液を添加し、pHを6.5とし、濾別を行った後、固形分に対して15倍のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得た。得られた噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを入口温度が240℃の噴霧乾燥機の上部より投入し、熱風で乾燥すること以外は、MTR-1の調製と同様にして、金属捕捉剤MTR-R3を得た。得られたMTR-R3の強熱減量(LOI)は16.8%であり、600℃にて2時間保持した後、測定した比表面積は110m/g、耐摩耗性指数(CAI)は14であった。
このように、上記で調製した金属捕捉剤MTR-1~MTR-5およびMTR-R1、MTR-R3の耐摩耗性(Attrition Resistance)を触媒化成技報 Vol.13、No.1、P65、1996に記載された方法により測定される耐摩耗性指数(CAI)により評価した。金属捕捉剤の試料条件および性能測定結果を表1に示す。
Figure 2022188594000002
[金属捕捉剤の耐摩耗性(Attrition Resistance)評価結果]
表1に示すように、発明例の金属捕捉剤MTR-1から5は、耐摩耗性指数(CAI)が0.1~10の範囲にあり、十分な耐摩耗性を有している。一方、MTR-R1およびR3は、耐摩耗性指数(CAI)が10を上回っている。
[金属捕捉剤を含む流動接触分解触媒組成物の性能評価]
本発明にかかる金属捕捉剤の添加効果を確認するために、日揮触媒化成株式会社より提供される一般的なCVZシリーズの流動接触分解触媒に上記で製造した金属捕捉剤MTR-1、2を5質量%添加し、性能評価用の流動接触分解触媒組成物を得た。
シリカバインダーを用いた流動接触分解触媒組成物に対して、
上記で製造した金属捕捉剤MTR-1~MTR-5を質量比で5%ブレンドして評価用の流動接触分解触媒を調製し、性能評価を行った。用いた流動接触分解触媒は、シリカバインダーを17質量%、ゼオライトを30質量%、活性アルミナを20質量%、カオリンを33質量%、上記金属捕捉剤を5質量%含むものであり、比表面積は275m/g、細孔容積は、0.30ml/gである。
<金属捕捉剤と含む流動接触分解触媒組成物の調製>
日揮触媒化成株式会社製の流動接触触媒CVZと本願発明の金属捕捉剤を95:5に比率で混合することで触媒組成物を得る。
[触媒の性能評価試験]
上記のようにして得た流動接触分解触媒に各金属捕捉剤をブレンドした流動接触分解触媒組成物を調製し、ACE-MAT(Advanced Cracking Evaluation-Micro Activity Test)を用い、同一原油、同一反応条件下で触媒組成物の性能評価試験を行った。各触媒組成物の性能評価試験の結果を表2に示す。各収率は、C/O=5.0のときの各生成物の質量を質量%とした。
ただし、これらの性能評価試験を行う前に、各触媒の表面に、予めニッケルおよびバナジウムをそれぞれ1000質量ppm(ニッケルの質量を触媒の質量で除算している)および2000質量ppm(バナジウムの質量を触媒の質量で除算している)沈着させ、次いでスチーミングして擬平衡化処理を行った。具体的には、各触媒を予め600℃で2時間焼成した後、所定量のナフテン酸ニッケル、およびナフテン酸バナジウムのトルエン溶液を吸収させ、次いで110℃で乾燥後、600℃で1.5時間焼成し、次いで780℃で13時間スチーム処理を行った。
性能評価試験における運転条件は以下の通りである。
原料油:原油の脱硫常圧残渣油(DSAR)+脱硫減圧軽油(DSVGO)(50+50)
触媒/通油量の質量比(C/O):5.0
反応温度:520℃
1)転化率=100-(LCO+HCO+CLO) (質量%)
2)収率:C/O=5.0のときの各生成物の質量を質量%とした。
3)ガソリンの沸点範囲:30~216℃ (Gasoline)
4)LCOの沸点範囲:216~343℃(LCO:Light Cycle Oil)
5)HCOおよびCLOの沸点範囲:343℃+(HCO:Heavy Cycle Oil、CLO:Clarified Oil)
6)LPG(液化石油ガス)
7)Dry Gas:メタン、エタンおよびエチレン
Figure 2022188594000003
[触媒組成物の活性評価結果]
触媒組成物の活性評価結果(表2)によれば、実施例1にて調製した金属捕捉剤MTR-1~MTR5を5.0質量%含む触媒(発明例)での性能評価結果(収率:C/O=5.0)は、金属捕捉剤を含まない母体触媒100%の場合(テストNo.1:基準)に比べて、H、Dry GasおよびCoke収率の低下並びにガソリン収率の増加が明らかである。また、金属捕捉剤MTR-3を15.0質量%添加した触媒組成物(テストNo.7)は、金属捕捉剤MTR-3を5.0質量%添加した触媒より、特にH、Coke、Dry Gas収率の改善は高いものの、転化率が低下している。また、MTR-3を0.3質量%添加した場合(テストNo.8)、いずれの収率に対しても明らかな改善は観られなかった。
以上説明したように、本発明にかかる金属捕捉剤は、金属捕捉能が高く、耐摩耗性も有するので、流動接触分解触媒に添加して、ニッケルやバナジウムを含有する炭化水素油の分解に使用して、触媒の機能を長期にわたり安定に維持でき、好適である。上記例では、アルミナバインダーを用いた流動接触分解触媒としたが、それ以外のバインダーや他の添加物とも好適に組み合わせることができる。このように、本発明は、残油処理用流動接触分解にきわめて有用であり、石油精製、石油化学工業等の産業上利用可能である。

Claims (10)

  1. 珪素酸化物(シリカ系)バインダーと、アルミナ成分と、金属成分と、を含む金属捕捉剤であって、
    (a)前記珪素酸化物(シリカ系)の含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で15~35質量%であり、
    (b)前記アルミナ成分の含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で10~30質量%であり、
    (c)前記金属捕捉剤の平均粒子径が40~100μmの範囲にあり、比表面積が130~280m/gの範囲にあり、細孔容積が0.05~0.50ml/gの範囲にあることを特徴とする金属捕捉剤。
  2. 前記金属捕捉剤は、耐摩耗性指標(CAI)が0.1~10の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の金属捕捉剤。
  3. 前記金属成分の含有量は、前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で20~80質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属捕捉剤。
  4. 前記金属捕捉剤に、さらにアルカリ金属Mが含まれ、
    前記アルカリ金属Mの含有量が酸化物MO換算で1.5質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の金属捕捉剤。
  5. 前記金属捕捉剤は、強熱減量(LOI)が20~35の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の金属捕捉剤。
  6. 請求項1ないし5のいずれか一項に記載の金属捕捉剤の製造方法であって、
    珪素酸化物(シリカ系)バインダーにアルミナ成分またはアルミナ成分前駆体を加え、前記珪素酸化物(シリカ系)-前記アルミナ成分または前記アルミナ成分前駆体を混合し、さらに、金属成分の化合物を混合し、前記金属成分を加えた混合スラリーを加熱して金属捕捉剤前駆体を得る第一工程と、
    前記金属捕捉剤前駆体を乾燥し、噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を得る第二工程と、
    前記噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤)を洗浄して、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る第三工程と、
    前記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱処理する第四工程と、を含むことを特徴とする金属捕捉剤の製造方法。
  7. 前記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの加熱処理は、前記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの乾燥温度を80~200℃に設定し、
    昇温速度2.0~10.0℃/分にて加熱することを特徴とする請求項6に記載の金属捕捉剤の製造方法。
  8. 前記第一工程において、前記混合スラリーのpHを、10.0~13.0の範囲に調製する工程と、を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の金属捕捉剤の製造方法。
  9. 前記第三工程において、前記噴霧乾燥粒子を複数回洗浄し、前記噴霧乾燥粒子が水に分散した懸濁スラリーのpHを、10.0~12.0の範囲に調製してする工程と、を含むことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか一項に記載の金属捕捉剤の製造方法。
  10. 前記請求項1ないし5のいずれか一項に記載の金属捕捉剤と、流動接触分解触媒と、を含むことを特徴とする流動接触分解触媒組成物。
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