JP2022174379A - 樹脂複合体、樹脂複合体の製造方法、及び樹脂複合体の解体方法 - Google Patents

樹脂複合体、樹脂複合体の製造方法、及び樹脂複合体の解体方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022174379000001
【課題】高接着強度及び高リサイクル性を両立させた樹脂複合体、樹脂複合体の製造方法及び樹脂複合体の解体方法を提供する。
【解決手段】樹脂複合体101は、可逆的に解離又は結合可能な動的共有結合を有する第1樹脂部材1と、第1樹脂部材1とは異なる樹脂であり、前記動的共有結合と結合可能な目標官能基を少なくとも表面に有する第2樹脂部材2と、を備え、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とは、前記動的共有結合及び前記目標官能基を介した共有結合により接合している。樹脂複合体101は、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とを接触させ、少なくとも接触した部分を加熱することで製造できる。樹脂複合体101は、前記共有結合の部分を加熱することで解体できる。
【選択図】図2

Description

本開示は、樹脂複合体、樹脂複合体の製造方法、及び樹脂複合体の解体方法に関する。
複数の機能を付与する目的で、複数の樹脂部材同士を組み合わせて使用することがある。例えば、環境規制及び省エネ対応に伴い、自動車、航空機、鉄道車両等の移動体の軽量化が進められ、例えば繊維、フィラー等を含有した樹脂部材で構成部材が作製され得る。樹脂複合体に関する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1の要約書には「複数のビーズ発泡成形体で芯材を構成させ、しかも、接着面近傍のビーズの内部の気泡が扁平形状となっているビーズ発泡成形体で芯材を形成させる。」ことが記載されている。
特開2020-163733号公報
特許文献1に記載の技術では、接着強度向上のため、接着剤の使用により樹脂部材同士が接着される(段落0014)。ここで、樹脂複合体の例えば製造時に生じた不良品、使用後の樹脂複合体等、不要になった樹脂複合体を構成する樹脂部材はリサイクルされることが好ましい。しかし、特許文献1の技術では、接着剤の使用により樹脂部材同士が剥離し難く、樹脂部材のリサイクルが困難である。
本開示は、高接着強度及び高リサイクル性を両立させた樹脂複合体、樹脂複合体の製造方法及び樹脂複合体の解体方法の提供である。
本開示の樹脂複合体は、可逆的に解離又は結合可能な動的共有結合を有する第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材とは異なる樹脂であり、前記動的共有結合と結合可能な目標官能基を少なくとも表面に有する第2樹脂部材と、を備え、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とは、前記動的共有結合及び前記目標官能基を介した共有結合により接合している。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
本開示によれば、高接着強度及び高リサイクル性を両立させた樹脂複合体、樹脂複合体の製造方法及び樹脂複合体の解体方法を提供できる。
本開示の樹脂複合体の断面図である。 第1官能基と目標官能基との間に形成された動的共有結合を説明する図であり、第1樹脂部材と第2樹脂部材との接合時を示す図である。 本開示の樹脂複合体の製造方法を説明する図である。 第1樹脂部材及び第2樹脂部材の表面構造を説明する図である。 本開示の樹脂複合体の解体方法を説明する図である。
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
図1は、本開示の樹脂複合体101の断面図である。樹脂複合体101は、第1樹脂部材1と、第2樹脂部材とを備える。第1樹脂部材1は、可逆的に解離又は結合可能な動的共有結合を有する。第2樹脂部材2は、第1樹脂部材1とは異なる樹脂であり、第1樹脂部材1の動的共有結合と結合可能な目標官能基を少なくとも表面に有する。ここでいう「異なる」は、構造(単位モノマーの種類等)又は物性(分子量等)の少なくとも一方が異なることをいう。
図2は、第1官能基と目標官能基との間に形成された動的共有結合を説明する図であり、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2との接合時を示す図である。第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とは、第1樹脂部材1の動的共有結合及び第2樹脂部材2の目標官能基を介した共有結合により、接合している。
図示の例では、動的共有結合は例えばエステル結合であり、目標官能基は例えばヒドロキシル基であるが、いずれもこれらに限られない。エステル結合は、例えば、第1樹脂部材1を構成するカルボン酸又はカルボン酸無水物とヒドロキシル基との脱水縮合により形成される。動的共有結合について、式(1)を参照して説明する。
Figure 2022174379000002
式(1)は、動的共有結合の解離及び結合を説明する化学反応式であり、エステル交換反応を示す。式(1)に示した化学式はエステル交換反応で得られる構造の一部である。R及びR’’は第1樹脂部材1に由来する有機基であり、R’は第2樹脂部材2に由来する有機基である。例えば、表面に存在する官能基同士の結合により動的共有結合が形成されることで、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とが接合する。
一方で、左辺の状態において、少なくとも接合部分の加熱により動的共有結合の組み換えが行われ、反応が右辺に進行する。これにより、第1樹脂部材1のROと、第2樹脂部材2のR’’OHとによって動的共有結合が形成され、右辺第1項に示す第1樹脂部材1及び右辺第2項に示す第2樹脂部材2が得られる。この結果、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2との間で形成されていたエステル結合がA部で容易に切断されることで動的共有結合の組み換えが生じ、接合が解かれる。
第1樹脂部材1は、動的共有結合を有する樹脂であれば特に制限されず、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等の少なくとも1種が挙げられる。
中でも、第1樹脂部材1は、エポキシ樹脂である第1樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂を含むことにより、エポキシモノマーと硬化剤である酸無水物との組成比を調整することで、硬化反応により、容易に動的共有結合であるエステル基及びヒドロキシル基を導入できる。以下、一例として第1樹脂がエポキシ樹脂である場合を例示するが、第1樹脂はエポキシ樹脂に限定されない。
エポキシ樹脂は、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、カルボン酸又はカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種の硬化剤と、エステル交換反応を促進させるエステル交換反応触媒とを含む混合物の硬化により得られる。混合物は、更に、重合開始触媒等を含んでもよい。
例えば硬化促進剤(後記)の存在下、硬化によりエポキシ化合物と硬化剤とが反応した結果、エステル結合(エステル基)とヒドロキシル基が生成される。そして、エステル交換反応触媒により、これらエステル結合及びヒドロキシル基は、加熱によりエステル交換反応を開始する。エステル結合、ヒドロキシル基及びエステル交換反応触媒の量を所定の範囲に設定し、適正な温度で加熱することで、硬化後でもエステル交換反応が進行し、高接合強度及び剥離容易な樹脂複合体101が得られる。
分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型樹脂、ノボラック型樹脂、脂環式樹脂、グリシジルアミン樹脂が好ましい。エポキシの例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルフェノール、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、レゾシノールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフロロアセトンジグリシジルエーテル等の少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
硬化剤であるカルボン酸、酸無水物の例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-ドデセニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、多価脂肪酸等の少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酸無水物の添加量は、例えばエポキシ基に対して30モル%以上70モル%以下である。より好ましくは40モル%以上60モル%以下であることが望ましい。酸無水物の量をこの範囲にすることにより、重合後にヒドロキシル基が存在するため、動的共有結合による高分子構造の再編成を効率的に行うことができる。特に、30モル%以上にすることで、硬化を十分に進行できる。70モル%以下にすることで、ヒドロキシル基の生成量を増やし、エステル交換反応を進行し易くできる。
第1樹脂部材1は、ヒドロキシル基、エステル基及び2つ以上のビニル基を有するビニルモノマー、及び、そのビニルモノマーを重合させる重合開始剤を含んでもよい。ビニルモノマーの具体例としては、2-ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ジビニルエチレングリコール、モノメチルフマレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、エチル2-(ヒドロキシメチル)アクリレート、グリセロールジメタクリレート、アリルアクリレート、メチルクロトネート、メチルメタクリレート、メチル3,3-ジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、ジメチルフマレート、フマル酸、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、1,3-ブタンジオールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、ビニルクロトネート、クロトン酸無水物、マレイン酸ジアリル、ネオペンチルグリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート等の少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
重合開始触媒としては、過酸化物重合開始剤、アゾ化合物重合開始剤等が挙げられ、具体例として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等のアゾ化合物、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等のペルオキシカーボネート等の少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エステル交換反応触媒としては、混合物中で均一に分散し、エステル交換反応を促進するものであることが好ましい。例えば、マンガン(III)アセチルアセトナート、酢酸亜鉛(II)、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛(II)、アセチルアセトン鉄(III)、アセチルアセトンコバルト(II)、アセチルアセトンコバルト(III)、アルミニウムイソプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、メトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、エトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、プロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、イソプロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、メトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、エトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、プロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、イソプロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)、ナフテン酸コバルト(II)、ステアリン酸コバルト(II)、二酢酸すず(II)、ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリアザビシクロデセン、トリフェニルホスフィン、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等の少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第1樹脂部材1は少なくとも1種の繊維を含むことが好ましい。繊維を含むことで、第1樹脂部材1の強度を向上でき、第1樹脂部材1と共有結合する第2樹脂部材2を備える樹脂複合体101全体の強度及び剛性を向上できる。
繊維としては、例えば、無機繊維及び有機繊維が挙げられる。例えば無機繊維として、アラミド繊維、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、チラノ繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維等が挙げられる。また、例えば有機繊維として、高強度ポリエチレン繊維、ポリアセタール繊維、脂肪族又は芳香族ポリアミド繊維、ポリアクリレート繊維、フッ素繊維、ボロン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、アラミド繊維、PBO(ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維等が挙げられる。これらの繊維は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの繊維のうち、機械的強度等の点から、有機繊維、特に炭素繊維が好ましい。炭素繊維は、その原料により、合成高分子由来の炭素繊維(ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、レーヨン系炭素繊維等)と、鉱物由来の炭素繊維(ピッチ系炭素繊維等)とに分類できる。これらのうち、機械的強度の観点から合成高分子由来の炭素繊維が好ましい。これらの繊維は、連続繊維、長繊維、短繊維、チョップド等の形状で、一方向材、平織り、不職布等の形状で用いられる。また第1樹脂部材1中に直接添加して用いられることもあるが、本実施形態ではこれらの繊維形状、繊維状態に限定されるものではない。
繊維を含む第1樹脂部材1を作製する方法としては、特に制限されない。例えば、第1樹脂を含浸させた繊維を重ねて加圧及び加熱する方法、繊維を敷いた金型内に第1樹脂を注入して加熱する方法、第1樹脂中に繊維を混練して射出成型する方法等が挙げられる。
第1樹脂部材1は、少なくとも1種の無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコン、フォステライト、ステアライト、スピレル、ムライト、チタニア等の粉体、また、これらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。また、無機フィラーの形状に限定はなく、球状、鱗片状などどれを用いてもよい。
第1樹脂部材1は、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、分散剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、顔料、染料等の少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。
第2樹脂部材2は、上記のように、動的共有結合可能な目標官能基を少なくとも表面に有する。目標官能基の第2樹脂部材2の表面への形成方法は特に制限されないが、例えば第2樹脂部材2の表面への表面改質によって目標官能基を配置できる。表面改質は例えば酸化により実行できる。
第2樹脂部材2は、更に、目標官能基を内部にも有することが好ましい。これにより、目標官能基を有する樹脂の例えば成形により第2樹脂部材2を形成すればよいため、第2樹脂部材2を容易に形成できる。第2樹脂部材2は、例えば、ウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の少なくとも1種を含むことで構成できる。
中でも、第2樹脂部材2は、目標官能基としてのヒドロキシル基を有するウレタンである第2樹脂を含むことが好ましい。ウレタンである第2樹脂を含むことで、例えば以下の効果が得られる。即ち、従来の接着剤を使用してウレタンを接着する場合、ウレタンが接着剤を含侵するため、接着剤の使用量が増え、樹脂複合体101が重くなり易い。しかし、本開示では、接着剤を使用しないか又は使用しても少量で済むため、ウレタンを接着する場合であっても、樹脂複合体101を軽量化できる。ウレタンは、発泡させたもの(発泡ウレタン)でもよく、発泡させていないもののどちらでもよい。以下、一例として第2樹脂がウレタンである場合を例示するが、第2樹脂はウレタンに限定されない。
ウレタンは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの重合により得られる。これらを所定の比率で混ぜ合わせ、加熱硬化させることで任意の形状で得ることができる。
ポリオールの具体的な種類は、特に限定されない。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、低分子量のポリオール等の少なくとも1種が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、1,6-へキサンジオールとダイマー酸との重縮合物等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。さらに、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルポリエステルポリオール等を用いることもできる。低分子量ポリオールは、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。さらに、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコールを用いてもよい。これらは単独、又は2種類以上を混合して使用することができる。
ポリイソシアネートの具体的な種類は、特に限定されない。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシレン-1,4-ジイソシアネート、キシレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等の有機ジイソシアネート、及び有機ポリイソシアネートのビウレット変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、これらの混合変性体が挙げられる。これらは単独、又は2種類以上を混合して使用することができる。
第2樹脂部材2は、上記の事項以外は、必要に応じて、第1樹脂部材1と同様の事項を適用できる。
図3は、本開示の樹脂複合体101の製造方法を説明する図である。樹脂複合体101は、動的共有結合を有する第1樹脂部材1と、第1樹脂部材1とは異なる樹脂であり、目標官能基を有する第2樹脂部材2とを接触させ、少なくとも接触した部分の加熱により製造できる。加熱により、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とは、動的共有結合及び目標官能基を介した共有結合により接合する。第1樹脂部材1及び第2樹脂部材2は図示の例では平板状であるが、それぞれの形状は平板に限定されない。
図4は、第1樹脂部材1及び第2樹脂部材2の表面構造を説明する図である。第1樹脂部材1の表面には、動的共有結合としての例えばエステル結合が複数存在する。一方で、第2樹脂部材2の表面には、目標官能基としての例えばヒドロキシル基が複数存在する。そして、第1樹脂部材と第2樹脂部材とを接触させ(例えば重ね合わせ)、少なくとも接触部分(例えば全体でもよい)を加熱すると、エステル結合が切断され、不対電子を有するカルボニル基が生成する。生成したカルボニル基は反応性が高いため、第2樹脂部材2の表面に存在するヒドロキシル基と容易に結合し、第2樹脂部材2との間で新たなエステル結合が生成する。生成したエステル結合は、上記図2に示したように、再度の加熱により切断可能な動的共有結合である。これらの反応により、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とが共有結合で接合し、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2との接合強度を向上できる。
加熱は任意の方法で行うことができる。例えば、加熱は、恒温槽等で全体を加熱してもよいし、所望の位置にマイクロ波又は赤外線を照射して部分的に加熱してもよい。さらには、例えば、電気ヒータ等を用いて加熱した金属板を所望の位置に押しつけることで、加熱してもよい。加熱は、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2との接触方向(例えば積層方向)にプレスしながら(押す力を加えながら)加熱してもよいし、プレスせずに加熱してもよい。また、プレスせずに加熱する場合には、例えば加熱後冷却前にプレスを行うこともできる。
加熱温度は、第1樹脂部材1及び第2樹脂部材2の材料組成及び配合比率によって異なるが、例えば、第1樹脂及び第2樹脂のそれぞれのガラス転移温度(動的共有結合の組み換えが生じる温度)以上、かつ、第1樹脂及び第2樹脂のそれぞれが熱分解しない温度以下にできる。具体的には例えば、第1樹脂がエポキシ樹脂、第2樹脂がウレタンの場合、例えば100℃以上、好ましくは150℃以上、その上限として例えば300℃以下、好ましくは200℃以下にできる。加熱時間は、例えば1時間以上10時間以下にできる。加熱温度及び加熱時間は、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とを接合させるときと、これらを分離するときとで、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図5は、本開示の樹脂複合体101の解体方法を説明する図である。樹脂複合体101のうち、少なくとも、動的共有結合及び目標官能基を介した共有結合の部分を加熱することで動的共有結合から目標官能基を解離させて、樹脂複合体101が第1樹脂部材1及び第2樹脂部材2に解体される。これにより、容易に解体でき、リサイクル性を向上できる。
加熱は、図4を参照して説明した接合時と同条件で行うことができる。例えば、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2との接触方向(例えば積層方向)に引く力を加えながら加熱してもよいし、そのような力を加えずに加熱してもよい。また、そのような力を加えずに加熱する場合には、加熱後に引く力を加えてこれらを分離することもできる。
以下、実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明するが、本開示は実施例に限定されない。
<実施例1>
第1樹脂部材1(図1)を以下のようにして作製した。まず、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型のエポキシ化合物(jER828、三菱ケミカル社製)100質量部に対し、酸無水物(MHAC-P、昭和電工マテリアルズ社製)47質量部、マンガン(III)アセチルアセトナート(エステル交換反応触媒、東京化成社製)19質量部、硬化促進剤としての2E4MZ-CN(四国化成製)0.3質量部大気中で攪拌及び混合し、混合物を得た。酸無水物の使用量は、エポキシ化合物の使用量に対して50モル%(化学両論比で半量)、マンガン(III)アセチルアセトナートの使用量は、エポキシ化合物の使用量に対して10モル%である。次いで、混合物を100℃で1時間、200℃で1時間加熱し、混合物を硬化させ、平板状の第1樹脂部材1を得た。第1樹脂部材1は、酸無水物とヒドロキシル基との脱水縮合により生じたエステル結合を動的共有結合として表面及び内部に有する。
第2樹脂部材2(図1)を以下のようにして作製した。まず、ポリオール(NIPPOLAN982R、日本ポリウレタン社製)7質量部と、ポリイソシアネート(CORONATE HXR、日本ポリウレタン社製)16質量部と、アミン(Polycat8、サンアプロ社製)3質量部とを混合し、混合物を得た。次いで、混合物を80℃で、1時間加熱することで、平板状の第2樹脂部材2を得た。第2樹脂部材2は、第1樹脂部材1とは異なる樹脂であり、目標官能基としてのヒドロキシル基を表面及び内部に有する。
平板状の第1樹脂部材1と平板状の第2樹脂部材とを重ね合わせ、190℃で1時間加熱プレス及びその後室温に冷却することで、樹脂複合体101(図1)を得た。第1樹脂部材1を一方の手で掴むとともに第2樹脂部材2を他方の手で掴むことで、これらの剥離を試みた。しかし、両手で力をかけて引っ張ってもこれらは剥離されず、強固に接合していることが確認された。これは、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2とが動的共有結合によって接合したためと考えられる。
次いで、樹脂複合体101を恒温槽に入れ、空気中で全体を200℃で1時間加熱した。1時間の加熱直後、手袋を装着して両手で引っ張ることで剥離を試みたところ、わずかな力でこれらを剥離できた。従って、加熱により樹脂複合体101を容易に解体できることが確認された。これは、加熱により動的共有結合の組み換えが行われ、第1樹脂部材1と第2樹脂部材2との間に形成された動的共有結合が切断されたためと考えられる。
<実施例2>
第1樹脂部材1(図1)としてエポキシ樹脂に代えてポリエステル樹脂(動的共有結合有する)を使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂複合体101(図1)を作製した。そして、実施例1と同様に剥離を試みたところ、加熱前には剥離できず、加熱直後には容易に剥離できた。この結果、高接合強度及び高リサイクル性を確認できた。なお、ポリエステル樹脂は、エステル基とヒドロキシル基を含むビニルモノマーを反応開始剤により硬化させた。スチレン(東京化成工業社製)100重量部、ビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(シグマアルドリッチ社製)100重量部、2-ヒドロキシメタクリレート25.6重量部、ジエチルメトキシボラン(シグマアルドリッチ社製)6重量部、マンガン(III)アセチルアセトナート(エステル交換反応触媒、東京化成社製)19質量部を撹拌し、120℃で4時間硬化させることで得た。
<実施例3>
第2樹脂部材2(図1)としてウレタンに代えてフェノール樹脂(目標官能基であるヒドロキシル基を表面及び内部に有する)を使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂複合体101(図1)を作製した。そして、実施例1と同様に剥離を試みたところ、加熱前には剥離できず、加熱直後には容易に剥離できた。この結果、高接合強度及び高リサイクル性を確認できた。なお、フェノール樹脂は、DG-630(DIC製)を180℃で4時間硬化させることで得た。
<比較例1>
酸無水物の使用量を、エポキシ化合物の使用量に対して100モル%(化学両論比で等量)にしたこと以外は実施例1と同様にして樹脂複合体を作製した。比較例1の第1樹脂部材では作製中にエポキシ化合物と酸無水物とが化学両論比通りに反応し、第1樹脂部材は動的共有結合を有していない。
実施例1と同様にして剥離を試みたところ、加熱前及び加熱直後のいずれにおいても、大きな力をかけることなく容易に剥離した。これは、第1樹脂部材が動的共有結合を有さず、第2樹脂部材2との間で動的共有結合を利用した接合が行われなかったためと考えられる。
<比較例2>
ヒドロキシル基(目標官能基の一例)のないアクリル樹脂を第2樹脂部材として使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂複合体を作製した。比較例2では、第1樹脂部材1は動的共有結合を有するものの、第2樹脂部材は動的共有結合と結合可能な目標官能基を有しない。
実施例1と同様にして剥離を試みたところ、加熱前及び加熱直後のいずれにおいても、大きな力をかけることなく容易に剥離した。これは、第2樹脂部材が目標官能基を有さず、第1樹脂部材との間で動的共有結合を利用した接合が行われなかったためと考えられる。
以上の結果から、動的共有結合を用いた異種樹脂同士の接合により、高接合強度及び高リサイクル性を図ることができる。
1 第1樹脂部材
2 第2樹脂部材
101 樹脂複合体

Claims (7)

  1. 可逆的に解離又は結合可能な動的共有結合を有する第1樹脂部材と、
    前記第1樹脂部材とは異なる樹脂であり、前記動的共有結合と結合可能な目標官能基を少なくとも表面に有する第2樹脂部材と、
    を備え、
    前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とは、前記動的共有結合及び前記目標官能基を介した共有結合により接合している
    ことを特徴とする樹脂複合体。
  2. 前記第2樹脂部材は、更に、前記目標官能基を内部にも有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂複合体。
  3. 前記第2樹脂部材は、前記目標官能基としてのヒドロキシル基を有するウレタンである第2樹脂を含む
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂複合体。
  4. 前記第1樹脂部材は、エポキシ樹脂である第1樹脂を含む
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂複合体。
  5. 前記第1樹脂部材は繊維を含む
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂複合体。
  6. 可逆的に解離又は結合可能な動的共有結合を有する第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材とは異なる樹脂であり、前記動的共有結合と結合可能な目標官能基を少なくとも表面に有する第2樹脂部材と、を接触させ、少なくとも接触した部分を加熱することで、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを、前記動的共有結合及び前記目標官能基を介した共有結合により接合させる
    ことを特徴とする樹脂複合体の製造方法。
  7. 可逆的に解離又は結合可能な動的共有結合を有する第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材とは異なる樹脂であり、前記動的共有結合と結合可能な目標官能基を少なくとも表面に有する第2樹脂部材と、を備え、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とは、前記動的共有結合及び前記目標官能基を介した共有結合により接合している樹脂複合体のうち、少なくとも前記共有結合の部分を加熱することで前記動的共有結合から前記目標官能基を解離させて、前記樹脂複合体を前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材に解体する
    ことを特徴とする樹脂複合体の解体方法。
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