JP2017088739A - 複合体、電気機器、モータ、変圧器、構造体、移動体及び複合体の製造方法 - Google Patents

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Yuri Kajiwara
ゆり 梶原
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孝仁 村木
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靖彦 多田
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Abstract

【課題】ガラス転移温度を基準とする耐熱性が低いため、高温環境で使用するとクリープが発生し、塑性変形が起き、そのため、使用環境は温和な温度条件に限定され、構造材料用途には使用できないという熱可塑性タイプの接着剤の課題、また、接着膜が硬く、弾性が無いため、剥離、衝撃、曲げ応力に弱い熱硬化性タイプの接着剤の課題、それぞれの課題を共に解決する接着剤、それを用いた複合体の提供。
【解決手段】エステル結合、ヒドロキシル基、エステル交換反応触媒を含む樹脂組成物によりなる接着剤。及び、金属、ガラス、セラミックまたは樹脂からなる2つ以上の部材がその接着剤により接着された複合体103。熱刺激によりヒドロキシル基と前記エステル結合のエステル交換反応が開始する複合体103。
【選択図】図1

Description

本実施形態は、樹脂複合体、樹脂組成物及びその適用製品に関するものである。
現在、接着剤として樹脂組成物が幅広い分野、製品で使用されている。接着剤として使用される樹脂は熱可塑性タイプと熱硬化性タイプに大別される。熱可塑性タイプの接着剤の特徴は、樹脂の熱分解温度以下の温度範囲では繰返しの使用が可能である点である。一方で、課題は、ガラス転移温度を基準とする耐熱性が低いため、高温環境で使用するとクリープが発生し、塑性変形が起こるという課題がある。そのため、使用環境は温和な温度条件に限定され、構造材料用途には使用できない。
また、熱硬化性タイプの接着剤の特徴は、耐熱性に優れ、クリープ抵抗があり、強度が高いことが利点である。しかし、接着膜が硬く弾性が無いため、剥離、衝撃、曲げ応力に弱い等の課題がある。また、熱硬化性タイプでは、プロセスによっては、ポットライフも問題となる。
樹脂組成物に関連する公知例として2件の特許文献を開示する。
特許第5333975号公報 特許第5749354号公報
熱可塑性タイプの接着剤の課題は、ガラス転移温度を基準とする耐熱性が低いため、高温環境で使用するとクリープが発生し、塑性変形が起こる点である。そのため、使用環境は温和な温度条件に限定され、構造材料用途には使用できない。
また、熱硬化性タイプの接着剤の課題は、接着膜が硬く弾性が無いため、剥離、衝撃、曲げ応力に弱い等の点が挙げられる。
本発明に係る複合体で用いる接着剤は、これらの熱可塑性及び熱硬化性それぞれの課題を共に解決する。
本発明に係る複合体は例えば、金属、ガラス、セラミックまたは樹脂からなる2つ以上の部材が樹脂組成物により接着され、前記樹脂組成物は、エステル結合、ヒドロキシル基、エステル交換反応触媒を含む。
ポットライフが長く、クリープ耐性はあるが繰返しの使用が可能な接着剤としての樹脂組成物を含む複合体を提供することができる。
樹脂複合体をモータコイルの保護材として用いたモータの図である。 樹脂複合体を樹脂モールド材として用いた変圧器の図である。 樹脂複合体を航空機体用の接着剤として用いた図である。 実施例及び比較例のせん断試験における試験片の図である。 実施例及び比較例のポットライフの試験結果を比較した図である。
本実施形態の樹脂複合体に使用する樹脂組成物では、上記の熱可塑性と熱硬化性のそれぞれの課題を共に解決することができる。本実施形態の樹脂複合体に使用する樹脂組成物は、エステル結合交換反応に因る動的共有結合が有効に作用し、課題を解決する。
近年、共有結合でありながら可逆的な解離−結合が容易に実現できる共有結合の平衡反応へ関心が高まっており、これを活用する化学を動的共有結合化学という。動的共有結合化学に基づいて形成される構造体は、熱力学的に安定な構造をもつ一方で、温度、光、圧力、触媒や鋳型の有無等の特定の外部刺激によりその構造を変化させることができる。このような「動的」な共有結合を利用することで、これまで実現不可能だった超分子形成や高分子構築が可能になる。特に注目すべき点は、関与する結合が共有結合であるため、形成される結合が、従来の超分子やそのポリマーにみられる水素結合などの弱い結合に比べて格段に強く、この活用は、新規な構造体構築の重要な手段となりうることだ。特許文献1は、このような動的共有結合を利用した高分子として、高分子鎖中にアルコキシアミン骨格を導入した高分子の研究に関する特許である。
特許文献2には、「本発明は熱変形が可能な熱硬化性樹脂とそれを含む熱硬化性複合材料に関するものであり、この組成物は少なくとも一つのエステル交換触媒の存在下で酸無水物から選択される少なくとも一つの硬化剤を少なくとも一つの熱硬化性樹脂前駆物質と接触させて得られる」と記載されている。この公報では、硬化後に熱変形可能な熱硬化性樹脂を開発することを目的とし、動的共結合としてエステル結合交換反応を利用している。この樹脂の特徴は、エポキシ系熱硬化性樹脂でありながら、変形可能であり、同時に、接着や応力緩和が可能であることを特徴とする。このため、特許文献2に記載されているリサイクル性だけでなく、耐クラック性の向上や、自己修復機能を有するメンテナンスフリーな塗料用樹脂への応用、樹脂自体の長寿命化等の期待ができる。
本実施形態における樹脂複合体は、金属、ガラス、セラミック、または樹脂からなる2つの部材が樹脂組成物により接着された複合体であって、樹脂組成物が、エステル結合、ヒドロキシル基、エステル交換反応触媒を含み、熱硬化性であることを特徴とする。
部材である金属、ガラス、セラミックス、樹脂はそれぞれどのような材であってもよく、2つ以上の部材が異なる種類の部材であってもよい。
本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物は、エステル結合、ヒドロキシル基を含み、2つ以上のビニル結合を有する化合物と、重合開始触媒とエステル交換反応触媒を含む液状ワニスを重合して形成することを特徴とする。
本実施形態において、ヒドロキシル基は−OH基を指し、水酸基を含む意味で用いる。
樹脂組成物の前駆体は液状ワニスであり、ラジカル重合反応により樹脂硬化物となる。
この液状ワニスは、ヒドロキシル基、エステル結合基を有し、ビニル基(ビニル結合)を2つ以上有するビニルモノマを含むことを特徴とする。本実施形態に用いることのできるビニルモノマの具体例として、2−ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ジビニルエチレングリコール、モノメチルフマレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、グリセロールジメタクリレート、アリルアクリレート、メチルクロトネート、メチルメタクリレート、メチル3,3−ジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、ジメチルフマレート、フマル酸、1,4−ブタンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリラート、1,3−ブタンジオールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、ビニルクロトネート、クロトン酸無水物、マレイン酸ジアリル、ネオペンチルグリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート等が挙げられるが、これ以外の化合物も適用可能である。
本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物の前駆体である液状ワニスに含まれるモノマとして、ビニル結合を1つ有するモノマが含まれていても良い。その具体例として、芳香族ビニル化合物、芳香族アリル化合物、含複素環ビニル化合物、含複素環アリル化合物、アルキレングリコールのモノ−(メタ)アクリレート及びアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シアノアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル、不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、不飽和アルコール、不飽和(モノ)カルボン酸、不飽和ポリカルボン酸及び不飽和ポリカルボン酸無水物、ジシクロペンタジエニル及びエチリデンノルボルネン等が挙げられる。これらのモノマと、ヒドロキシル基または及びエステル結合基を有し、ビニル結合を2つ以上有するビニルモノマを組合せて共重合反応を行うことで、エステル交換反応部位の量を制御できる。これにより、架橋密度の制御や、主鎖骨格の柔軟性の制御が可能となる。架橋密度や主鎖骨格の柔軟性の制御により、弾性率も変化させることが可能であるため、熱変形特性の制御も可能である。
本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物の前駆体である液状ワニスは、重合開始触媒とエステル交換反応触媒を含むことを特徴とする。
本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物の前駆体である液状ワニスに適用可能な重合開始触媒として過酸化物系、アゾ系化合物等の開始剤を使用することができる。具体的には、2,2 ’−アゾビスイソブチロニトリル、2 ,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアゾ化合物、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t− ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等のペルオキシカーボネート等が挙げられる。また、重合開始剤として、リビングラジカル重合開始剤も使用でき、遷移金属化合物やチオカルボニル系化合物、アルキルボラン系化合物の使用が可能である。リビングラジカル重合開始剤を使用すると、ブロック共重合やランダム共重合の制御が可能となり、本実施形態の樹脂組成物の光学特性、熱伝導性、電気特性等の特性を向上させることができる。本実施形態の液状ワニスに適用可能なリビングラジカル重合開始剤は、遷移金属錯体、チオカルボニル系開始剤、ニトロキシ系開始剤から選択され、制限はない。
本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物の前駆体である液状ワニスに適用可能なエステル交換反応触媒は、前述の重合開始触媒よりも触媒活性温度が高いことが重要となる。すなわち、ビニルモノマの重合反応では、重合開始触媒が反応触媒となり、エステル交換反応触媒は反応せずに、樹脂組成物中に存在することが重要である。適用可能な具体例としては、酢酸亜鉛(II)、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛(II)、アセチルアセトン鉄(III)、アセチルアセトンコバルト(II)、アルミニウムイソプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、メトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、エトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、プロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、イソプロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、メトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、エトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、プロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、イソプロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)、二酢酸すず(II)、ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリアザビシクロデセン、トリフェニルホスフィンが挙げられる。
本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物の前駆体である液状ワニスは、無機フィラーと組合せても良い。本実施形態に適用できる無機フィラーとしては、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコン、フォステライト、ステアライト、スピレル、ムライト、チタニア等の粉体、また、これらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。また、無機フィラーの形状に限定はなく、球状、鱗片状などどれを用いてもよい。
本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物の前駆体である液状ワニスは、従来のエポキシ系動的共有結合を含む樹脂に比べ、ワニス粘度を低減することが可能である。高粘度のワニス材は、ボイド等を引き起こす可能性が高く、モールド変圧器やモータコイルへの適用の際には課題となる。
本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物の前駆体である熱硬化性樹脂組成物は、本実施形態の液状ワニスを硬化した熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする。本実施形態の液状ワニスに用いることのできるビニルモノマには、ビニル結合を2以上有するビニルモノマを含むことを特徴とする。そのため、本実施形態の液状ワニスを硬化した硬化物は架橋しており、熱可塑性樹脂組成物とは異なる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱刺激により接着することを特徴とする。従来の熱硬化性樹脂は、硬化後は熱変形しない。本実施形態の特徴は、ビニルモノマの重合反応により硬化した熱硬化性樹脂組成物中に未反応のまま存在するエステル交換反応触媒が、熱刺激により触媒活性を示すことによるものである。従来のエステル交換反応触媒が本実施形態の熱硬化性樹脂中において、熱刺激により触媒活性を示すと、ヒドロキシル基とエステル結合基のエステル交換反応が生じる。
本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物は、エステル結合と、保護基により保護されたヒドロキシル基を有し、前記ヒドロキシル基は外部刺激により脱保護されるものであり、前記ヒドロキシル基は前記エステル結合とエステル交換反応可能であることを特徴とする。
本発明の樹脂複合体における樹脂組成物は、硬化時にエステル結合を形成するモノマ、あるいはモノマ骨格としてエステル結合を含む構造であることが望ましい。硬化時にエステル結合を形成するモノマとしては、多官能のエポキシ基を有するエポキシ化合物、および、硬化剤としてカルボン酸無水物、あるいは多価カルボン酸から成ることが好ましい。さらに、エポキシ化合物としてビスフェノールA型樹脂、ノボラック型樹脂、脂環式樹脂、グリシジルアミン樹脂が好ましい。
エポキシの例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルフェノール、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、レゾシノールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフロロアセトンジグリシジルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
硬化剤であるカルボン酸無水物あるいは多価カルボン酸の例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−ドデセニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、多価脂肪酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記、樹脂組成物中のエステル交換反応に関与するヒドロキシル基は、保護基により保護されていてもよく、その場合、外部刺激により脱保護されることにより、エステル交換反応が可能となる。外部刺激としては熱・光等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。外部刺激が熱の場合、140〜200の温度の熱により、ヒドロキシル基は脱保護される。外部刺激が光である場合、樹脂組成物は光刺激により酸を発生する光酸発生剤を有することが好ましい。硬化時に予め保護基により保護されたヒドロキシル基を有する化合物を混合しておくことが好ましい。保護基により保護されたヒドロキシル基を有する化合物としては上記エポキシ化合物のうち、硬化前に一部エポキシ基を開環させ、ヒドロキシル基を形成させたものを保護基で保護しておくことが好ましい。また、保護基は外部刺激により脱保護され、ヒドロキシル基を形成する。保護基の例としては、トリクロロ酢酸エステル、蟻酸エステル、酢酸エステル、イソ酪酸エステル、ピバル酸エステル、安息香酸エステル、メトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、テトラヒドロチオピラニルエーテル、4−メトキシテトラヒドロピラニルエーテル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル、テトラヒドルフラニルエーテル、テトラヒドロチオフラニルエーテル、1−メチル−1−メトキシエチルエーテエル、2−(フェニルセレニル)エチルエーテル、t−ブチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル、o−ニトロベンジルエーテル、トリフェニルメチルエーテル、α−ナフチルジフェニルメチルエーテル等が挙げられる。
触媒としては、混合物中で均一に分散し、エステル交換反応を促進するものであることが好ましい。例えば、酢酸亜鉛(II)、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛(II)、アセチルアセトン鉄(III)、アセチルアセトンコバルト(II)、アセチルアセトンコバルト(III)、アルミニウムイソプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、メトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、エトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、プロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、イソプロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、メトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、エトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、プロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、イソプロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)、ナフテン酸コバルト(II)、ステアリン酸コバルト(II)、二酢酸すず(II)、ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリアザビシクロデセン、トリフェニルホスフィン、2 - フェニルイミダゾール、2 - フェニル - 4 - メチルイミダゾール、1 - ベンジル - 2 - フェニルイミダゾール、1 - シアノエチル - 2 - フェニルイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の樹脂複合体における樹脂組成物は(1)2つ以上のエポキシ基を含むビニル化合物の共重合体と、カルボン酸無水物と、エステル交換反応触媒を有する、または(2)2つ以上のカルボン酸無水物基を含むビニル化合物の共重合体と、エポキシと、エステル交換反応触媒を有する樹脂組成物でも良い。
本実施形態の樹脂組成物は、上記エポキシとカルボン酸無水物が反応した結果、エステル結合とヒドロキシル基を有することとなる。そして、エステル交換反応触媒の下で、これらエステル結合とヒドロキシル基は、加熱によりエステル交換反応を開始する。
耐加水分解性の高いビニル化合物を主鎖骨格に用いることで、樹脂の耐加水分解性を向上できる。
エステル結合、ヒドロキシル基及びエステル交換反応触媒の量を所定の範囲に設定し、適正な温度で加熱することで、熱変形可能な樹脂の合成が可能となる。
主鎖骨格のビニル化合物共重合体の側鎖にエポキシ基またはカルボン酸無水物が結合していることを特徴とする。
エポキシ基を有するビニル化合物(前駆体ビニルモノマ)としては、1,3−ブタジエンエポキシド、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジル、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンから選ぶことが可能である。
カルボン酸無水物を有するビニル化合物(前駆体ビニルモノマ)としては、無水マレイン酸、メチルマレイン酸、アリルこはく酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物から選ぶことが可能である。
上記記載のビニルモノマにおいて、ビニルモノマの官能基がエポキシ基同士であれば、異種のビニルモノマを適当な配合比で混合し、共重合反応を行っても良い。また同様に、ビニルモノマの官能基がカルボン酸無水物であれば、異種のビニルモノマを適当な配合比で混合し、共重合反応を行っても良い。
前駆体ビニルモノマが、芳香族ビニル化合物、芳香族アリル化合物、含複素環ビニル化合物、含複素環アリル化合物、アルキル(メタ)アクリレート、不飽和モノカルボン酸エステル、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、シロキサニル化合物、アルキレングリコールのモノ−(メタ)アクリレート及びジ−(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シアノアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル、不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、不飽和アルコール、不飽和(モノ)カルボン酸、不飽和ポリカルボン酸及び不飽和ポリカルボン酸無水物;不飽和ポリカルボン酸若しくは不飽和ポリカルボン酸無水物のモノエステル及びジエステル;エポキシ基含有不飽和化合物、ジエン化合物、塩化ビニル、酢酸ビニル、イソプレンスルホン酸ナトリウム、ケイ皮酸エステル、クロトン酸エステル、ジシクロペンタジエニル及びエチリデンノルボルネンからなる群から選択することができる。
上記記載のビニルモノマは、エポキシ基またはカルボン酸無水物を有するビニルモノマと組み合わせ、共重合反応を行うことで、エステル交換反応部位の量を制御できる。これにより、架橋密度の制御や、主鎖骨格の柔軟性の制御が可能となる。架橋密度や主鎖骨格の柔軟性の制御により、弾性率も変化させることが可能であるため、熱変形特性の制御も可能である。
また、上記記載のビニルモノマそのものの特性を活かすことで、本実施形態の樹脂組成物の耐熱性、耐加水分解性、光学特性、熱伝導性、電気特性等の特性をさらに付与することが可能である。
例えば、シクロオレフィン類に分類されるジシクロペンタジエニル及びエチリデンノルボルネン等を共重合モノマとして組み合わせることで、さらなる耐加水分解性の向上が可能となる。
本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物は、全ビニル化合物に対してエステル交換反応触媒の割合が0.23〜11mol%であることを特徴とする。この割合でエステル交換反応触媒を含むことで、エステル交換反応が生じる条件を満たすことができる。後に説明する表1のエステル交換反応触媒の割合は、この範囲に含まれる。
エステル交換反応触媒として、酢酸亜鉛(II)、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛(II)、アセチルアセトン鉄(III)、アセチルアセトンコバルト(II)、アルミニウムイソプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、メトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、エトキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、プロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、イソプロポキシド(トリフェニルホスフィン)銅(I)錯体、メトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、エトキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、プロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、イソプロポキシドビス(トリフェニルホスフィン)銅(II)錯体、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)、二酢酸すず(II)、ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリアザビシクロデセン、トリフェニルホスフィンから選択することができる。
本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物は、ビニル化合物共重合体樹脂組成物において、前駆体ビニルモノマから選択されるビニルモノマをラジカル重合により重合または共重合した重合物に、カルボン酸無水物またはエポキシ化合物と上記記載のエステル交換反応触媒から選択される触媒を添加して生成されるエステル結合とヒドロキシル基を含むビニル化合物共重合体組成物であることを特徴とする。
主鎖骨格の重合のラジカル重合開始剤として、過酸化物系、アゾ系化合物等の開始剤を使用することができる。また、リビングラジカル重合開始剤も使用でき、遷移金属化合物やチオカルボニル系化合物、アルキルボラン系化合物の使用が可能である。
特に、リビングラジカル重合開始剤を使用すると、ブロック共重合やランダム共重合の制御が可能となり、本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物の光学特性、熱伝導性、電気特性等の特性を向上させることができる。
前躯体ビニルモノマとして、官能基にエポキシ基を有するモノマを選択した場合、全躯体ビニルモノマを重合または共重合し、主鎖骨格を形成した後、カルボン酸無水物とエステル交換反応触媒を添加し、エステル結合とヒドロキシル基を含む本実施形態の樹脂組成物が得られる。
カルボン酸無水物の具体例として、無水フタル酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセン無水コハク酸、無水グルタル酸等があるが、これ以外のカルボン酸無水物も使用でき、特に限定されない。
前躯体ビニルモノマとして、官能基にカルボン酸無水物を有するモノマを選択した場合、前躯体ビニルモノマを重合または共重合し、主鎖骨格を形成した後、エポキシ化合物とエステル交換反応触媒を添加し、エステル結合とヒドロキシル基を含む本実施形態の樹脂組成物が得られる。
エポキシ化合物として、ノボラック・エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラグリシジル・メチレンジアニリン、ペンタエリスリトール・テトラグリシジル・エーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはヒドロキノン・ジグリシジルエーテル、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、プロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ブチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチル・グリコール・ジグリシジルエーテル、1,4- ブタンジオール・ジグリシジルエーテル、1,6- ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレン・グリコール・ジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチル・グリコール・ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ポリ(グリシジル・アクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、エポキシ化された多価不飽和脂肪酸、エポキシ化された植物油、エポキシ化された魚油及びエポキシ化されたリモネン及びこれの混合物から選択することができる。
本実施形態の樹脂複合体は、樹脂複合体をせん断試験により破壊した後、加熱により破壊界面を再接着させた場合のせん断強度が、初期強度の80%以上になることを特徴とする。
本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物は、加熱によるエステル交換反応により流動性を生じ、熱可塑性タイプの接着剤と同じように繰返しの使用が可能となる。本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物の場合、流動性を生じる温度領域では、エステル交換反応が活発に生じるが、それより低い温度であるとエステル交換反応は生じにくくなる。しかし、低い温度領域におけるエステル交換反応は、部材界面のひずみの低減に応力緩和剤として純分に効果がある。例えば、部材が金属の場合、本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物では、金属と接着剤の線膨張係数を使用温度においてあわせることが可能となり、界面におけるひずみを低減できる。
本実施形態の樹脂複合体は、接着前の樹脂組成物の形状が板/シート状または粉末状またはペレットである、すなわち固体状態にあることを特徴とする。
本実施形態の樹脂複合体における樹脂組成物の形状は、上記記載の形状が好ましいが、用途によって変えることが可能である。また、用途によっては、無機物や金属または金属酸化物等のフィラを添加して使用することが可能である。フィラ添加の効果により、接着界面ひずみの低減効果を増大させることが可能である。
本実施形態の樹脂複合体は電気機器に使用することが可能で、特に回転機及びモータ、変圧器の固着、モールド材に使用することができる。
図1は樹脂複合体をモータコイルの保護材として用いたモータの図である。モータコイルは、電磁振動等によるクラック発生の課題がある。本実施形態の樹脂組成物では、モータ使用時に発生する熱により、結合組換えが起こるため、クラックの原因となる歪、すなわち応力を緩和させることが可能である。
コイル104は皮膜導線101、磁心102、樹脂複合体103で構成される。磁心102には樹脂複合体103がコイル保護材用ワニスとして一様に塗布されている。皮膜導線101と磁心102は樹脂複合体103により接着されている。
コイル104は固定子コイル105として回転電機(モータ)109に用いられている。回転電機109は回転子磁心106、固定子磁心107、スロット108、ハウジング110で構成される。
図2樹脂複合体を樹脂モールド材として用いた変圧器の図である。変圧器用モールド樹脂材料は、成型時の他の部材との膨張係数の違いによる歪が原因でクラックが発生する。耐クラック性を向上させるために、樹脂の架橋密度を低下させると、耐熱性が低下してしまう。また、ゴム粒子やフィラー等の添加材を使用すると、樹脂粘度が上昇し、モールド注形の際にボイドが発生し易くなり、そこを起点としたクラックや、電気絶縁性が低下する問題がある。一方、本実施形態による樹脂複合体では、これらの課題を克服することができる。また、小さなクラックであれば、使用後に発生したクラックも加熱により修復が可能である。
図2の左側は外観図、図2の右側は、コイル軸の方向に直角な断面(A−A’断面)を示す。図2において、樹脂モールドコイル201の最外部は、予めヒートプレスされ整面処理されたフルキュアガラスクロス、フィルム状の絶縁部材204、ゴムシート、または導電性部材のシートで構成された外装材203の面が露出した状態となっている。樹脂複合体202は、巻型と外装材203との間に注入されるため、外装材203の外側面には樹脂複合体202は漏れ出さず付着もしない。このため、樹脂の硬化後にも外装材203の外側面の外観修正は不要である。
本実施形態の樹脂複合体は建築構造物の接着剤、シーリング材として使用することが可能である。
本実施形態の樹脂複合体は航空機体の接着剤として使用することが可能である。航空機体はCFRP等の炭素繊維強化プラスチックが用いられている。CFRPの樹脂材としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の樹脂が使用されている。本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物は、部材側の樹脂にエステル結合やヒドロキシル基が存在すれば、界面においてエステル交換反応が生じる。CFRPの接着剤として本実施形態の樹脂複合材における樹脂組成物を用いた場合、CFRPと樹脂組成物界面で共有結合が形成されるため、強固な接着力が生まれる。
上記性能を用いれば、航空機体に限定されず、CFRPを使用している製品、構造物であれば、本実施形態の樹脂複合体を接着/接合に使用することができる。
図3は樹脂複合体を航空機体用の接着剤として用いた図である。図3の上側は航空機の外観図、図3の下側は航空機体のブレードの断面図を示す。航空機体のブレード301は
分割成形された航空機体のブレード材のパーツ303の界面を接着して構成され、界面接着部302を有する。界面接着部302は本実施形態の樹脂組成物により構成される。
本実施形態の樹脂複合体は、移動体に使用することができる。移動体とは、車、鉄道車両、電動二輪車、自転車等、特に限定はない。
車の場合、車体ボディーの構造用接着として、本実施形態の樹脂複合体を使用することができる。車体ボディーは、窓ガラスや金属部材、樹脂等様々な部材から構成され、すべての部材に対し、本実施形態の樹脂組成物は適用が可能である。
<樹脂組成物合成>
本実施例を用いて、本実施形態の液状ワニスの作製法及び、熱硬化性樹脂組成物の硬化について説明する。
組成1〜5
スチレン(東京化成)3.0g(29mmol)、ビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(アルドリッチ)6.0g(11.8mmol)、2−ヒドロキシメタクリレート1.54g(11.8mmol)、過酸化物系重合開始剤CT50(日立化成)0.17g、ナフテン酸亜鉛(東京化成)0.907gをガラス製のスクリュー瓶に入れた。ミックスローターを用いて、スクリュー瓶中の試薬を撹拌し、均一な液状ワニスを作製した。0.5mm厚テフロン(登録商標)シート15×15mmの型にワニスを流しこみ、120℃の恒温槽で4時間硬化させた。
上記記載と同様の方法で組成2〜5について、硬化物のシートを得た。各組成は表1に示した。
組成6
jER828エポキシ樹脂(三菱ケミカル)およびビスフェノールAビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エーテルのヒドロキシル基をトリクロロ酢酸エステルで保護したエポキシ化合物の混合物(jER828/エポキシ化合物 モル比1/1)に対し、HN−2200(3or4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸(日立化成工業)1.0モル等量、亜鉛(II)アセチルアセトナート0.01モル等量を加え、大気中にて撹拌・混合した後、0.5mm厚テフロン(登録商標)シート15×15mmの型にワニスを流しこみ、120℃で12時間加熱し、混合物を硬化させた。なお、ビスフェノールAビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エーテルのヒドロキシル基の保護は塩基存在下、トリクロロ酢酸クロリドを反応させることで行った。
組成7
jER828エポキシ樹脂(三菱ケミカル)およびビスフェノールAビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エーテルのヒドロキシル基をトリクロロ酢酸エステルで保護したエポキシ化合物の混合物(jER828/エポキシ化合物 モル比1/1)に対し、HN5500メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業)1.0モル等量、酢酸亜鉛0.01モル等量を加え、約100℃で撹拌・混合した後、0.5mm厚テフロン(登録商標)シート15×15mmの型にワニスを流しこみ、120℃で12時間加熱し、混合物を硬化させた。なお、ビスフェノールAビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エーテルのヒドロキシル基の保護は塩基存在下、トリクロロ酢酸クロリドを反応させることで行った。
<せん断試験(JISK6850−1972)>
試験片作製方法
基板として2mm厚のアルミニウム、ステンレス(ニラコ社製)、不飽和ポリエステル樹脂を用意した。試験片サイズ等は図5に示した。実施例1で作製した樹脂シートを必要サイズ(12.5mm×25mm)に切り出し、金属基板の接着部に樹脂シートをのせ、金属基板で挟み、加熱プレスによりせん断試験片を作製した。プレス温度及びプレス圧は表2に示した通り、組成により変化させた。
せん断試験方法
図4は実施例及び比較例のせん断試験における試験片の図である。図4の上側は試験片の側面図であり、図4の下側は試験片の上面図である。試験片は接着部403で接着されており、せん断試験時に支持体401で試験片を支え、つかみ部402を固定部として用いてせん断試験を進める。
図4に示したとおり、試験片のつかみ部(38mm)をオートグラフ(島津製作所製AGX−100kN)のチャックに固定し、10mm/分の速度で室温にて引張試験を行った。試験片がせん断破壊する時を最大試験力とし、せん断接着強さとしては、最大試験力を接着面積(12.5mm×25mm)で割った値をせん断接着強さとした。
結果を表2せん断強度(1)に示した。
<繰返しの接着性の評価>
せん断試験後の破壊したサンプルを再び加熱プレスにより、再接着後、再びせん断接着試験を行った。表2せん断強度(2)に示すとおり、初期接着強度の80%以上のせん断接着強度を得た。
<ポットライフ>
実施例1で作製した組成1〜7の樹脂シートを室温に放置し、接着力の低下の経時変化を追った。アルミニウムを基板にした時の結果を図5に示した。
図5は実施例及び比較例のポットライフの試験結果を比較した図である。ポットライフの面でDP−8805NSは他より劣ることが分かる。
<耐熱温度>
実施例2のせん断試験において、140℃の条件にて、せん断試験を行った。その結果を表3せん断強度(3)に示した。
Figure 2017088739
Figure 2017088739
Figure 2017088739
比較例1
<せん断試験>
比較サンプルとして、エポキシ系接着剤2液型:Scotch−WeldDP-8805NS(3M製)、ホットメルトタイプ:Scotch−Weld3779(3M製)を使用した。結果を表4に示した。
比較例2
<繰返し接着性の評価>
比較例1の2種類の比較サンプルにおいて、せん断試験後の破壊したサンプルを加熱プレスにより、再接着を行った。ホットメルトタイプの3779では再接着を確認し、せん断強度も得られたが、DP−8805NSでは、試験片の再接着は確認できなかった。結果は表4に示した。
比較例3
<ポットライフ>
DP-8805NSについては、使用開始日を初期値として、経時変化を追った。結果を図5に示した。
比較例4
<耐熱温度>
比較例1のせん断試験を、140℃の温度条件にて、せん断試験を行った。その結果を表5に示した。
以上、実施例及び比較例より、本実施形態の樹脂複合材はポットライフが長く、クリープ耐性はあるが繰返しの使用が可能な接着剤であることが分かる。
Figure 2017088739
Figure 2017088739
101:皮膜導線 102:磁心 103:樹脂複合体 104:コイル
105:固定子コイル 106:回転子磁心 107:固定子磁心 108:スロット
109:回転電機 110:ハウジング
201:樹脂モールドコイル 202:樹脂複合体 203:外装材 204:絶縁部材
301:航空機体のブレード 302:界面接着部
303:分割成形された航空機体のブレード材のパーツ
401:支持体 402:つかみ部 403:接着部

Claims (13)

  1. 金属、ガラス、セラミックまたは樹脂からなる2つ以上の部材が樹脂組成物により接着された複合体であって、
    前記樹脂組成物は、エステル結合、ヒドロキシル基、エステル交換反応触媒を含むことを特徴とする複合体。
  2. 請求項1に記載の複合体において、
    前記エステル交換反応触媒は熱刺激により触媒活性を示すことを特徴とする複合体。
  3. 請求項2に記載の複合体において、
    熱刺激により、前記ヒドロキシル基と前記エステル結合のエステル交換反応が開始することを特徴とする複合体。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合体において、
    前記樹脂組成物は熱硬化性であることを特徴とする複合体。
  5. 請求項1に記載の複合体を含むことを特徴とする電気機器。
  6. 請求項1に記載の複合体を含むことを特徴とするモータ。
  7. 請求項1に記載の複合体を含むことを特徴とする変圧器。
  8. 請求項1に記載の複合体を含むことを特徴とする構造体。
  9. 請求項1に記載の複合体を含むことを特徴とする移動体。
  10. 複合体の製造方法であって、
    エステル結合、ヒドロキシル基、2つ以上のビニル結合を有する化合物と、重合開始触媒と、エステル交換反応触媒とを含む液状ワニスを加熱し、
    加熱により前記化合物は重合反応を開始して樹脂組成物を形成し、
    金属、ガラス、セラミックまたは樹脂からなる2つ以上の部材を前記樹脂組成物により接着することを特徴とする複合体の製造方法。
  11. 請求項10に記載の複合体の製造方法であって、
    前記エステル交換反応触媒は、前記重合開始触媒よりも触媒活性温度が高いことを特徴とする複合体の製造方法。
  12. 複合体の製造方法であって、
    保護基により保護されたヒドロキシル基に外部刺激を与え、
    前記外部刺激によりヒドロキシル基は脱保護され、
    脱保護されたヒドロキシル基と、エステル結合とがエステル交換反応可能して樹脂組成物を形成し、
    金属、ガラス、セラミックまたは樹脂からなる2つ以上の部材を前記樹脂組成物により接着することを特徴とする複合体の製造方法。
  13. 請求項10乃至12のいずれか一項に記載の複合体の製造方法において、
    接着前の樹脂組成物は固体であることを特徴とする複合体の製造方法。
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