JP5721416B2 - 熱伝導性接着剤 - Google Patents

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Description

本発明は、熱伝導性に優れ、冷熱サイクル下等で生じる応力を緩和することができ、半導体装置の信頼性を高めることのできる熱伝導性接着剤に関する。
従来から、半導体素子が作動時に発する熱を放熱体に伝達させ、半導体素子を常に適温に維持して長期間にわたり正常かつ安定に作動させることを目的として、半導体素子と放熱体とを絶縁性放熱材料を用いて接合する技術が知られている。
このような絶縁性放熱材料として、例えば、特許文献1には、特定のオルガノポリシロキサン、特定の加水分解性基含有メチルポリシロキサン、熱伝導性充填剤、硬化剤を含有してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物が開示されている。そして、特許文献1には、同文献に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物であれば、優れた成形加工性を有し、しかも熱伝導性充填剤の高充填化が可能であることから高熱伝導性を有することが記載されている。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、特定の物性を示す特定量のフィラーを含有してなる接合材料であり、硬化物の熱伝導率が特定値以上であり、消費電力1.7W以上のパワー半導体素子を前記接合材料を介して支持部材に接合させるために用いられるものである接合材料が開示されている。そして、特許文献2には、同文献に記載の接合材料であれば、所定の接着強度を維持しつつ、熱伝導率の向上を図ることが可能であることが記載されている。
また、特許文献3には、オルガノポリシロキサンの基材に、特定量の熱伝導性フィラーを含有してなる絶縁シートであって、当該絶縁シート中の導電性不純物の量が特定値以下である絶縁シート、及び、当該絶縁シートを用いて製造される、車両用に用いられる半導体装置組立体が開示されている。
しかしながら、これらの絶縁性放熱材料を用いた場合には、電子部品の反りが大きくなったり、冷熱サイクル下等においてクラック又は剥離が生じたりするという問題がある。また、半導体素子と放熱体とを接合した接合体をモールド樹脂で封止した場合には、冷熱サイクル下等においてモールド樹脂と絶縁性放熱材料との界面で剥離が生じてしまうこともある。
近年、電子部品の薄型化及び小型化が加速していることから、電子部品にはますます反りが生じやすくなっており、重大な問題となっている。また、例えば、自動車に搭載される電子部品は−30℃程度から100℃程度までの温度範囲に曝されるため、このような電子部品に対して用いられる絶縁性放熱材料には、温度変化の少ない環境で用いられる場合と比較して熱伝導性に優れ、充分な信頼性を確保できることが必要とされる。
特開2000−256558号公報 特許第4507488号公報 特開2005−064291号公報
本発明は、熱伝導性に優れ、冷熱サイクル下等で生じる応力を緩和することができ、半導体装置の信頼性を高めることのできる熱伝導性接着剤を提供することを目的とする。
本発明は、下記一般式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物と、エポキシ基含有アクリルポリマーと、エピスルフィド化合物と、硬化剤と、熱伝導性フィラーとを含有し、前記一般式(1)で表されるエポキシ化合物100重量部に対する前記エピスルフィド化合物の含有量が1重量部以上、30重量部未満であり、熱伝導性接着剤100重量部中、前記熱伝導性フィラーの含有量が40〜85重量部である熱伝導性接着剤である。
Figure 0005721416
一般式(1)中、mは2〜4の整数を表し、nは9〜11の整数を表す。
以下に本発明を詳述する。
熱伝導性接着剤には、熱伝導性を確保するために熱伝導性フィラーが配合される。しかしながら、一般に、熱伝導性を向上させるために熱伝導性フィラーを大量に配合すると、熱伝導性接着剤の柔軟性及び/又は接着力が不足し、電子部品の反りが大きくなったり、冷熱サイクル下等においてクラック又は剥離が生じたりモールド樹脂と熱伝導性接着剤との界面で剥離が生じたりする等の、不良を生じることとなる。
本発明者は、特定の構造を有するエポキシ化合物と、エポキシ基含有アクリルポリマーと、特定量のエピスルフィド化合物と、硬化剤と、特定量の熱伝導性フィラーとを配合することにより、優れた熱伝導性を達成しつつ、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を緩和することができ、半導体装置の信頼性を高めることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、本明細書において電子部品には、半導体素子、基板、放熱体等を含む。
本発明の熱伝導性接着剤は、下記一般式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物(本明細書においてエポキシ化合物(A)ともいう)を含有する。
Figure 0005721416
一般式(1)中、mは2〜4の整数を表し、nは9〜11の整数を表す。
上記エポキシ化合物(A)を用いることにより、熱伝導性接着剤の硬化物の柔軟性を高めることができる。従って、上記エポキシ化合物(A)を含有することにより、本発明の熱伝導性接着剤は、熱伝導性フィラーを含有しているものの硬化物が硬くなりすぎず、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を緩和することができる。加えて、モールド樹脂は一般的にエポキシ樹脂で構成されることが多いことから、上記エポキシ化合物(A)を含有することにより、本発明の熱伝導性接着剤は、モールド樹脂に対する接着力が向上し、モールド樹脂に対する界面剥離が抑制される。
上記一般式(1)において、C2mOは直鎖状であっても分岐していてもよく、全ての構造異性体を含む。
上記一般式(1)においてmが2未満であると、上記エポキシ化合物(A)は、高温時に揮発してしまったり、エーテル結合が増えることで吸水率が上昇したりする。上記一般式(1)においてmが4を超えると、上記エポキシ化合物(A)は、粘度が高くなり、熱伝導性接着剤も粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下する。
また、上記一般式(1)においてnが9未満であると、上記エポキシ化合物(A)は、高温時に揮発してしまう。上記一般式(1)においてnが11を超えると、上記エポキシ化合物(A)は、粘度が高くなり、熱伝導性接着剤も粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下する。
上記一般式(1)中、mの好ましい下限は3であり、nの好ましい下限は10である。
上記エポキシ化合物(A)として、具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(一般式(1)においてm=4かつn=10)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(一般式(1)においてm=3かつn=11)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(一般式(1)においてm=2かつn=9)等が挙げられる。
なかでも、熱伝導性接着剤の硬化物の柔軟性をより一層高めることができることから、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(一般式(1)においてm=4かつn=10)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(一般式(1)においてm=3かつn=11)が好適である。
上記エポキシ化合物(A)の数平均分子量の好ましい下限は800、好ましい上限は10000である。上記エポキシ化合物(A)の数平均分子量が800未満であると、熱伝導性接着剤の硬化物の柔軟性が充分に高められないことがある。上記エポキシ化合物(A)の数平均分子量が10000を超えると、熱伝導性接着剤の粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下することがある。
上記エポキシ化合物(A)の数平均分子量のより好ましい下限は850、より好ましい上限は2000であり、更に好ましい下限は900、更に好ましい上限は1500である。
なお、本明細書において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンをスタンダードとして求めた値であり、例えば、カラムを昭和電工社製Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度を40℃、流速を1mL/min、溶媒をテトラヒドロフラン、標準物質をポリスチレンとする条件で、Waters社製の測定装置を用いて測定した値を意味する。
上記エポキシ化合物(A)は、熱伝導性接着剤の塗布性、作業性等を高めることができることから、E型粘度計を用いて23℃、5rpmの条件で測定された粘度が500mmPa以下であることが好ましい。
上記エポキシ化合物(A)の市販品として、例えば、エポゴーセーPT(四日市合成社製、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、一般式(1)においてm=4かつn=10)、EX−830(ナガセケムテックス社製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、一般式(1)においてm=2かつn=9)等が挙げられる。
本発明の熱伝導性接着剤は、エポキシ基含有アクリルポリマーを含有する。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーは、エポキシ基が上記エポキシ化合物(A)と反応するとともに、アクリルポリマー骨格が熱伝導性接着剤の硬化物の破断強度を高め、凝集力を高めることができる。従って、上記エポキシ基含有アクリルポリマーを含有することにより、本発明の熱伝導性接着剤は、冷熱サイクル下等で応力が生じた場合にも凝集剥離が抑制される。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーとして、主鎖にアクリルポリマー骨格を有し、側鎖にエポキシ基を有するポリマーが好ましい。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量の好ましい下限は300、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量が300未満であると、熱伝導性接着剤の硬化物は、架橋密度が高くなりすぎて弾性率が大きくなり、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を緩和することができないことがある。上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量が1000を超えると、熱伝導性接着剤の硬化物は架橋密度が低くなりすぎて、冷熱サイクル下等で応力が生じた場合に凝集剥離が抑制されないことがある。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量のより好ましい下限は400、より好ましい上限は800である。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量の好ましい下限は5000、好ましい上限は50000である。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量が5000未満であると、熱伝導性接着剤の硬化物は架橋密度が低くなりすぎて、冷熱サイクル下等で応力が生じた場合に凝集剥離が抑制されないことがある。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量が50000を超えると、上記エポキシ基含有アクリルポリマーと他の成分との相溶性が低下することがある。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量のより好ましい下限は7000、より好ましい上限は20000である。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの市販品として、例えば、CP−30(日油社製、エポキシ当量530、数平均分子量9000)、CP−50S(日油社製、エポキシ当量310、数平均分子量20000)、CP−20SAP(日油社製、エポキシ当量750、数平均分子量8000)が挙げられる。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対する好ましい下限が4重量部、好ましい上限が40重量部である。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの含有量が4重量部未満であると、熱伝導性接着剤の硬化物は架橋密度が低くなりすぎて、冷熱サイクル下等で応力が生じた場合に凝集剥離が抑制されないことがある。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの含有量が40重量部を超えると、熱伝導性接着剤の粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下することがある。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が30重量部である。
本発明の熱伝導性接着剤は、エピスルフィド化合物を含有する。
上記エピスルフィド化合物は、エポキシ化合物に比べて電子部品に対する接着力が高い。従って、上記エピスルフィド化合物を含有することにより、本発明の熱伝導性接着剤は、冷熱サイクル下等で応力が生じた場合にも電子部品に対する界面剥離が抑制される。ただし、上記エピスルフィド化合物は、エポキシ化合物に比べて反応性が高く、熱伝導性接着剤の硬化物の架橋密度を上げて弾性率を高くする効果をも有することから、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を充分に緩和することができる程度に、配合量を調整することが重要である。
上記エピスルフィド化合物は、エピスルフィド基を有していれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
上記エピスルフィド化合物として、例えば、ビスフェノール型エピスルフィド化合物(ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物、レゾルシノール型エピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、液状で作業性に優れることから、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物が好適である。
上記水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物の市販品として、例えば、YL−7007(ジャパンエポキシレジン社製、水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物)等が挙げられる。また、上記水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物は、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物をスルフィド化することにより合成することもできる。
上記エピスルフィド化合物の含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対し1重量部以上、30重量部未満である。上記エピスルフィド化合物の含有量が1重量部未満であると、熱伝導性接着剤の電子部品に対する接着力が低下し、冷熱サイクル下等で応力が生じた場合に電子部品に対する界面剥離が充分に抑制されない。上記エピスルフィド化合物の含有量が30重量部以上であると、熱伝導性接着剤の硬化物は、架橋密度が高くなりすぎて弾性率が大きくなり、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を充分に緩和することができない。
上記エピスルフィド化合物の含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対し好ましい下限が5重量部、好ましい上限が20重量部である。
本発明の熱伝導性接着剤は、上記エポキシ化合物(A)とは別に、芳香族骨格を有し、かつ、分子量が150〜500であるエポキシ化合物(本明細書においてエポキシ化合物(B)ともいう)を含有してもよい。
上記エポキシ化合物(B)は、熱伝導性接着剤の硬化物の高温での弾性率を高め、接着信頼性を高めることができる。また、上記エポキシ化合物(B)を含有することにより、得られる熱伝導性接着剤は硬化速度も速くなることから、電子部品の反りをより一層抑制することができる。
分子量が150未満であると、上記エポキシ化合物(B)は、高温時に揮発してしまうことがある。分子量が500を超えると、上記エポキシ化合物(B)は、熱伝導性接着剤の硬化物の高温での弾性率を高める効果、又は、硬化速度を促進する効果を充分に発揮できないことがある。
上記エポキシ化合物(B)の分子量のより好ましい下限は200、より好ましい上限は300である。
なお、本明細書においてエポキシ化合物(B)の分子量とは、エポキシ化合物(B)の構造式が特定できる場合には当該構造式から算出できる分子量を意味し、エポキシ化合物(B)が重合体であって構造式が特定できない場合には数平均分子量を意味する。
上記エポキシ化合物(B)として、例えば、アニリン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物等が挙げられる。
上記アニリン型エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、グリシジルオキシ−N,N−グリシジルアニリン等が挙げられる。上記アニリン型エポキシ化合物の市販品として、例えば、EP−3900S、EP−3950(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、m−レゾルシノールジグリシジルエーテル、o−レゾルシノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。上記レゾルシノール型エポキシ化合物の市販品として、例えば、EX−201、EX−203(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物(B)の含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記エポキシ化合物(B)の含有量が1重量部未満であると、熱伝導性接着剤の硬化物の高温での弾性率が向上しなかったり、硬化速度が促進されなかったりすることがある。上記エポキシ化合物(B)の含有量が20重量部を超えると、熱伝導性接着剤の硬化物の柔軟性が低くなり、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を緩和することができないことがある。
上記エポキシ化合物(B)の含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対するより好ましい下限が3重量部、より好ましい上限が10重量部である。
本発明の熱伝導性接着剤は、硬化剤を含有する。
上記硬化剤は特に限定されず、従来公知の硬化剤を用いることができる。上記硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、コハク酸無水物等の酸無水物硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、熱伝導性接着剤の接着信頼性を高めることができることから、酸無水物硬化剤が好適である。
上記酸無水物硬化剤としては、熱伝導性接着剤の硬化物の柔軟性をより一層高めることができることから、二重結合を有する酸無水物が好適である。
上記二重結合を有する酸無水物は特に限定されず、例えば、ドデセニル無水コハク酸、テトラプロペニル無水コハク酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。上記二重結合を有する酸無水物の市販品として、例えば、DDSA(新日本理化社製、ドデセニル無水コハク酸)、YH−306(ジャパンエポキシレジン社製、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸)等が挙げられる。
上記硬化剤の含有量は、上記硬化剤が等量反応する硬化剤である場合、全ての硬化性成分の硬化性官能基の総和100重量部に対して、好ましい下限が30当量、好ましい上限が110当量である。また、上記硬化剤が触媒として機能する硬化剤である場合、全ての硬化性成分の総和100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
なお、本明細書において全ての硬化性成分とは、エポキシ化合物(A)と、エポキシ基含有アクリルポリマーと、エピスルフィド化合物と、必要に応じて配合するエポキシ化合物(B)とを意味する。
本発明の熱伝導性接着剤は、更に、硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤を用いることにより、熱伝導性接着剤の硬化速度又は接合信頼性等の物性を更に高めることができる。
上記硬化促進剤として、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、熱伝導性接着剤の硬化速度又は硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好適である。
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されないが、熱伝導性接着剤の貯蔵安定性を維持したまま、比較的低温かつ短時間で硬化させることができることから、エポキシ化合物とのアダクト型のイミダゾール系硬化促進剤がより好適である。
上記イミダゾール系硬化促進剤として、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イミダゾールの1位をイソシアヌル酸で保護した化合物(2MA−OK、四国化成工業社製、及び、PN−23J、味の素社製)等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は、全ての硬化性成分の総和100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記硬化促進剤の含有量が1重量部未満であると、熱伝導性接着剤の硬化速度又は接合信頼性を充分に高めることができないことがある。上記硬化促進剤の含有量が20重量部を超えると、熱伝導性接着剤の硬化後に未反応の硬化促進剤が残存することがある。
本発明の熱伝導性接着剤は、熱伝導性フィラーを含有する。
上記熱伝導性フィラーの材質は特に限定されず、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、アルミニウム、窒化珪素、ジルコニア等が挙げられる。なかでも、高温時でも絶縁性及び耐熱性を保ち、熱伝導性の高い熱伝導性接着剤が得られることから、酸化アルミニウムが特に好ましい。
上記熱伝導性フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.6μm、好ましい上限が85μmである。上記熱伝導性フィラーの平均粒子径が0.6μm未満であると、熱伝導性接着剤の粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下することがある。上記熱伝導性フィラーの平均粒子径が85μmを超えると、熱伝導性接着剤における充填率が高くなり、柔軟性及び/又は接着力が不足して、電子部品の反りが大きくなったり、冷熱サイクル下等においてクラック又は剥離が生じたりモールド樹脂と熱伝導性接着剤との界面で剥離が生じたりすることがある。
上記熱伝導性フィラーの平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は5μmである。
上記熱伝導性フィラーの形状は特に限定されない。
上記熱伝導性フィラーのアスペクト比は特に限定されないが、好ましい下限が2、好ましい上限が80であり、より好ましい下限が10、より好ましい上限が50である。
なお、本明細書においてアスペクト比とは、粒子の短径の長さに対する粒子の長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)を意味する。アスペクト比の値が1に近いほど熱伝導性フィラーの形状は真球に近くなる。
本発明の熱伝導性接着剤100重量部中、上記熱伝導性フィラーの含有量は40〜85重量部である。上記熱伝導性フィラーの含有量が40重量部未満であると、熱伝導性接着剤は充分な熱伝導性が得られない。上記熱伝導性フィラーの含有量が85重量部を超えると、熱伝導性接着剤の柔軟性及び/又は接着力が不足して、電子部品の反りが大きくなったり、冷熱サイクル下等においてクラック又は電子部品の剥離が生じたりモールド樹脂と熱伝導性接着剤との界面で剥離が生じたりする。また、上記熱伝導性フィラーの含有量が85重量部を超えると、熱伝導性接着剤の粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下する。
本発明の熱伝導性接着剤における上記熱伝導性フィラーの含有量の好ましい下限は50重量部、好ましい上限は77重量部であり、より好ましい下限は60重量部である。
本発明の熱伝導性接着剤は、更に、シリカ粒子を含有することが好ましい。
上記シリカ粒子を用いることにより、熱伝導性接着剤の硬化物の熱膨張を抑制して、不良の原因となる応力を緩和することができる。
上記シリカ粒子として、熱伝導性接着剤に添加しても粘度の上昇及び塗布性の低下を抑制できることから、フェニル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子が好ましい。
上記フェニル基を有するシランカップリング剤として、例えば、フェニルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記フェニル基を有するシランカップリング剤でシリカ粒子を表面処理する方法として、例えば、高速攪拌可能なミキサー中にシリカ粒子を添加し、攪拌しながら、シランカップリング剤をミキサー中に直接添加する方法、又は、シランカップリング剤を含むアルコール水溶液、有機溶媒溶液もしくは水溶液をミキサー中に添加する乾式法等が挙げられる。上記高速攪拌可能なミキサーとして、例えば、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー等が挙げられる。
また、上記フェニル基を有するシランカップリング剤でシリカ粒子を表面処理する方法として、例えば、シリカ粒子のスラリー中にシランカップリング剤を添加するスラリー法、シリカ粒子を乾燥させた後にシランカップリング剤をスプレー付与するスプレー法等の直接処理法、熱伝導性接着剤を調製する際のシリカ粒子と他の成分との混合時にシランカップリング剤を直接添加するインテグレルブレンド法等も挙げられる。
上記フェニル基を有するシランカップリング剤でシリカ粒子を表面処理する際の上記シランカップリング剤の使用量は、上記シリカ粒子100重量部に対して好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が15重量部である。上記シランカップリング剤の使用量が0.1重量部未満であると、上記シリカ粒子が充分に表面処理されないことがある。上記シランカップリング剤の使用量が15重量部を超えると、未反応のシランカップリグ剤が残存して、熱伝導性接着剤の硬化物の耐熱性が低下することがある。
上記フェニル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子の市販品として、例えば、SE−4050−SPE(アドマテックス社製)等が挙げられる。
上記シリカ粒子の含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対する好ましい下限が50重量部、好ましい上限が400重量部である。上記シリカ粒子の含有量が50重量部未満であると、熱伝導性接着剤の硬化物の熱膨張を抑える効果が充分に得られないことがある。上記シリカ粒子の含有量が400重量部を超えると、熱伝導性接着剤の粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下することがある。
上記シリカ粒子の含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対するより好ましい下限が100重量部、より好ましい上限が200重量部である。
上記シリカ粒子の平均粒子径の好ましい下限は500nm、好ましい上限は20μmである。上記シリカ粒子の平均粒子径が500nm未満であると、シリカの添加による熱伝導性接着剤の粘度上昇が顕著になることがある。上記シリカ粒子の平均粒子径が20μmを超えると、最大粒子径も大きくなり、電子部品を接合する際の熱伝導性接着剤の厚みが必要以上に大きくなってしまうことがある。
本発明の熱伝導性接着剤は、更に、スペーサー粒子を含有することが好ましい。
上記スペーサー粒子を用いることにより、熱伝導性接着剤を用いて電子部品を接合する際に電子部品間の間隔を一定に保つことができる。
上記スペーサー粒子の形状は球状が好ましく、熱伝導性接着剤を用いて電子部品を接合する際に電子部品間の間隔を一定に保つためには、上記スペーサー粒子のアスペクト比の好ましい上限は1.1である。
なお、本明細書においてアスペクト比とは、粒子の短径の長さに対する粒子の長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)を意味する。アスペクト比の値が1に近いほどスペーサー粒子の形状は真球に近くなる。
上記スペーサー粒子の平均粒子径は、電子部品間の間隔が所望の範囲になるように適宜選択すればよいが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は200μmである。上記スペーサー粒子の平均粒子径が5μm未満であると、上記スペーサー粒子の粒子径程度にまで電子部品間の間隔を縮めることが困難なことがある。上記スペーサー粒子の平均粒子径が200μmを超えると、電子部品間の間隔が必要以上に大きくなることがある。
上記スペーサー粒子の平均粒子径のより好ましい下限は9μm、より好ましい上限は50μmである。
上記スペーサー粒子は、粒子径のCV値が10%以下であることが好ましい。上記スペーサー粒子の粒子径のCV値が10%を超えると、粒子径のばらつきが大きいことから、電子部品間の間隔を一定に保つことが困難となることがある。上記スペーサー粒子の粒子径のCV値は、6%以下であることがより好ましく、4%以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書において粒子径のCV値とは、下記式により求められる値を意味する。
CV値(%)=(σ2/Dn2)×100
上記式中、σ2は粒子径の標準偏差を表し、Dn2は数平均粒子径を表す。
上記スペーサー粒子は、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
上記樹脂粒子を構成する樹脂は、非架橋樹脂であってもよく、架橋樹脂であってもよい。上記非架橋樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等が挙げられる。上記架橋樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体、トリアリルイソシアヌレート重合体、ベンゾグアナミン重合体等が挙げられる。なかでも、スペーサー粒子の硬さと圧縮回復率とを調整しやすく、熱伝導性接着剤の硬化物の耐熱性を向上させることができることから、架橋樹脂が好ましい。
上記スペーサー粒子は、必要に応じて表面処理されていてもよい。上記スペーサー粒子に表面処理を施すことにより、熱伝導性接着剤の粘度を容易に所望の範囲にすることができる。
上記スペーサー粒子を表面処理する方法として、例えば、熱伝導性接着剤が全体として疎水性を示す場合には、上記スペーサー粒子の表面に親水基を付与する方法が挙げられる。上記スペーサー粒子の表面に親水基を付与する方法として、例えば、上記スペーサー粒子として上記樹脂粒子を用いる場合、上記樹脂粒子の表面を親水基を有するカップリング剤で処理する方法等が挙げられる。
上記スペーサー粒子の含有量は、上記エポキシ化合物(A)100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が1重量部である。上記スペーサー粒子の含有量が0.01重量部未満であると、電子部品同士の間隔を安定して一定に保つことができないことがある。上記スペーサー粒子の含有量が1重量部を超えると、電子部品同士の間隔を安定して一定に保つことができなかったり、他の成分の割合が相対的に少なくなりすぎて、熱伝導性接着剤の塗布性、硬化物の柔軟性等が低下したりすることがある。
本発明の熱伝導性接着剤は、無機イオン交換体を含有してもよい。
上記無機イオン交換体を用いることにより、熱伝導性接着剤中のイオン不純物をトラップし、電子部品の電極の腐食を防止することができる。上記無機イオン交換体の市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。
本発明の熱伝導性接着剤は、粘度を調整する目的で、増粘剤を含有してもよい。
上記増粘剤として、例えば、シリカ粒子、エチルセルロース、炭化カルシウム等が挙げられる。なお、上記増粘剤としてシリカ粒子を用いる場合、シリカ粒子の平均粒子径の好ましい下限は5nm、好ましい上限は50nmである。
上記増粘剤の含有量は、全ての硬化性成分の総和100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
本発明の熱伝導性接着剤は、必要に応じて、ブリード防止剤、接着性付与剤の従来公知の添加剤を含有してもよい。
本発明の熱伝導性接着剤は、E型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定された粘度の好ましい下限が5Pa・s、好ましい上限が50Pa・sである。上記粘度が5Pa・s未満であると、熱伝導性接着剤を電子部品上に塗布したときに、塗布形状を維持できずに流延してしまうことがある。上記粘度が50Pa・sを超えると、熱伝導性接着剤を電子部品上に均一に又は所望の形状で塗布することができないことがある。
本発明の熱伝導性接着剤は、E型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定された粘度のより好ましい下限が8Pa・s、より好ましい上限が45Pa・sである。
本発明の熱伝導性接着剤は、E型粘度計を用いて25℃、5rpmの条件で測定された粘度を、25℃、0.5rpmの条件で測定された粘度で除した値(チクソ値)が、2以上5以下であることが好ましい。上記チクソ値が2以上であることにより、電子部品に水分が残存していた場合にも、水分の移行を抑制することができ、ボイドを抑制することができる。
上記チクソ値が5を超えると、熱伝導性接着剤を用いて電子部品を接合する際、電子部品間に熱伝導性接着剤の未充填部分がある場合、室温にて、熱伝導性接着剤が表面張力によって未充填部分に広がることが困難となることがある。
本発明の熱伝導性接着剤は、硬化物のリフロー温度での弾性率の好ましい下限が6MPa、好ましい上限が35MPaである。上記硬化物のリフロー温度での弾性率が6MPa未満であると、熱伝導性接着剤の硬化物は接着信頼性が低下することがある。上記硬化物のリフロー温度での弾性率が35MPaを超えると、熱伝導性接着剤の硬化物は、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を緩和することができないことがある。
本発明の熱伝導性接着剤は、硬化物のリフロー温度での弾性率のより好ましい下限が7MPa、より好ましい上限が25MPaであり、更に好ましい上限が23MPaである。
本発明の熱伝導性接着剤は、硬化物のガラス転移温度(Tg)の好ましい下限が−20℃、好ましい上限が25℃である。上記硬化物のガラス転移温度が−20℃未満であると、熱伝導性接着剤に充分な耐熱性が発現しないことがある。上記硬化物のガラス転移温度が25℃を超えると、熱伝導性接着剤の硬化物は、冷熱サイクル下等で生じる不良の原因となる応力を緩和することができないことがある。
本発明の熱伝導性接着剤は、硬化物のガラス転移温度のより好ましい下限が−10℃、より好ましい上限が20℃であり、更に好ましい下限が−5℃、更に好ましい上限が15℃であり、特に好ましい下限が0℃、特に好ましい上限が12℃である。
本発明の熱伝導性接着剤は、例えば、上記エポキシ化合物(A)と、上記エポキシ基含有アクリルポリマーと、上記エピスルフィド化合物と、上記硬化剤と、上記熱伝導性フィラーと、必要に応じて配合される他の成分とを混合した後、必要に応じて上記シリカ粒子を配合する方法等により製造することができる。
上記各成分を混合する方法として、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いる方法が挙げられる。
本発明の熱伝導性接着剤は、熱伝導性に優れ、冷熱サイクル下等で生じる応力を緩和することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
本発明の熱伝導性接着剤の用途は特に限定されないが、車載用の半導体装置において特に好適に用いられる。
上記車載用の半導体装置は特に限定されないが、例えば、パワーデバイス半導体素子を支持部材に接合した接合体を、支持部材ごとモールド樹脂で封止した車載用の半導体装置等が挙げられる。このような半導体装置において、本発明の熱伝導性接着剤を用いてパワーデバイス半導体素子と支持部材とを接合すると、パワーデバイス半導体素子で発する熱を効率的に支持部材に伝達して放熱させることができ、かつ、冷熱サイクル下等で生じる応力を緩和することができる結果、クラックの発生、パワーデバイス半導体素子と支持部材との反り及び剥離、モールド樹脂と熱伝導性接着剤との界面での剥離等を抑制することができる。
本発明によれば、熱伝導性に優れ、冷熱サイクル下等で生じる応力を緩和することができ、半導体装置の信頼性を高めることのできる熱伝導性接着剤を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1〜9及び比較例1〜4)
下記に示した材料を表1及び2に示した配合割合にて配合し、ホモディスパーを用いて攪拌混合することにより、熱伝導性接着剤を調製した。
(1)エポキシ化合物(A)(一般式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物)
エポゴーセーPT(ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、一般式(1)においてm=4かつn=10、四日市合成社製、数平均分子量900)
EXA−4850−150(ポリプロピレングリコール骨格含有エポキシ、一般式(1)においてm=3、DIC社製、数平均分子量900)
EXA−4850−1000(ポリプロピレングリコール骨格含有エポキシ、一般式(1)においてm=3、DIC社製、数平均分子量700)
EX−931(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、一般式(1)においてm=3かつn=11、ナガセケムテックス社製、数平均分子量770)
(2)エポキシ基含有アクリルポリマー
CP−15(日油社製、数平均分子量11000、エポキシ当量1000)
CP−30(日油社製、数平均分子量9000、エポキシ当量530)
CP−50M(日油社製、数平均分子量10000、エポキシ当量310)
CP−50S(日油社製、数平均分子量20000、エポキシ当量310)
CP−20SAP(日油社製、数平均分子量8000、エポキシ当量750)
(3)エピスルフィド化合物
YL−7007(水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物、ジャパンエポキシレジン社製)
(4)エポキシ化合物(B)
EXA−830−CRP(ビスフェノールF型エポキシ化合物、DIC社製、分子量324)
(5)熱伝導性フィラー
AX−3(アルミナ、マイクロン社製、平均粒子径3μm)
(6)シリカ粒子
SE−4050―SPE(フェニル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子、平均粒子径1μm、アドマテックス社製)
(7)硬化剤
YH−306(メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ジャパンエポキシレジン社製)
(8)硬化促進剤
P−0505(エポキシアダクト型イミダゾール化合物、四国化成工業社製)
(9)スペーサー粒子
SP−210(平均粒子径10μm、積水化学工業社製)
(10)シランカップリング剤
SP−1000(イミダゾールシラン、日鉱金属社製)
(11)増粘剤
PM−20L(表面シリコーンオイル処理ヒュームドシリカ、トクヤマ社製)
<評価>
実施例及び比較例で得られた熱伝導性接着剤について、以下の評価を行った。結果を表1及び2に示した。
(1)熱伝導性(熱伝導率の測定)
得られた熱伝導性接着剤の10mm×10mmにカットしたフィルム状のサンプルについて、熱伝導率測定装置(LFA447ナノフラッシュ、NETZSCH社製)を用いて熱伝導率の測定を行った。熱伝導率が1.0W/m・K以上であった場合を○、1.0W/m・K未満であった場合を×とした。
(2)電子部品の反りの評価
熱伝導性接着剤を10mLシリンジ(武蔵エンジニアリング社製)に充填し、シリンジの先端に精密ノズル(武蔵エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付けた。ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、支持部材とニードルとのギャップ200μm、塗布量5mgの条件で、支持部材としての表面Niメッキ無酸素銅(厚さ0.25mm)上に熱伝導性接着剤を塗布し、接着剤層を形成した。接着剤層が形成された支持部材上にアルミナ基板(厚さ0.8mm)を常温で0.1MPaの圧力で5秒間押圧することにより積層し、110℃40分、150℃15分間加熱し、接着剤層を硬化させることにより接合体を作製した。
得られた接合体について、レーザー変位計(KEYENCE社製、LT9010M、KS−1100)を用いてアルミナ基板の上面の高さ位置を測定し、アルミナ基板の対角線上における高さ位置の差の最大値を求めた。高さ位置の差の最大値が50μm未満であった場合を◎、50μm以上100μm未満であった場合を○、100μm以上であった場合を×とした。
(3)冷熱サイクル試験
上記(2)の電子部品の反りの評価と同様にして得られた接合体をモールド封止した後、−40〜150℃(30分/1サイクル)、500サイクルの冷熱サイクル試験を行った。その後、超音波測定装置(日立建機社製)による剥離検査と断面研磨によるクラック検査とを行った。クラックもボイドも確認できなかった場合を○、クラック及び/又はボイドが確認できた場合を×とした。
Figure 0005721416
Figure 0005721416
本発明によれば、熱伝導性に優れ、冷熱サイクル下等で生じる応力を緩和することができ、半導体装置の信頼性を高めることのできる熱伝導性接着剤を提供することができる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物と、エポキシ基含有アクリルポリマーと、エピスルフィド化合物と、硬化剤と、熱伝導性フィラーとを含有し、
    前記一般式(1)で表されるエポキシ化合物100重量部に対する前記エピスルフィド化合物の含有量が1重量部以上、30重量部未満であり、
    前記熱伝導性フィラーは、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、アルミニウム、窒化珪素又はジルコニアからなり、
    熱伝導性接着剤100重量部中、前記熱伝導性フィラーの含有量が40〜85重量部である
    ことを特徴とする熱伝導性接着剤。
    Figure 0005721416
    一般式(1)中、mは2〜4の整数を表し、nは9〜11の整数を表す。
  2. 更に、芳香族骨格を有し、かつ、分子量が150〜500であるエポキシ化合物を、一般式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物100重量部に対して1〜20重量部含有することを特徴とする請求項1記載の熱伝導性接着剤。
  3. エピスルフィド化合物は、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導性接着剤。
  4. 一般式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物は、数平均分子量が800〜10000であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱伝導性接着剤。
  5. エポキシ基含有アクリルポリマーは、エポキシ当量が300〜1000であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の熱伝導性接着剤。
  6. エポキシ基含有アクリルポリマーは、数平均分子量が5000〜50000であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の熱伝導性接着剤。
  7. 硬化剤は、酸無水物硬化剤であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱伝導性接着剤。
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