JP2009256466A - 電子部品用接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬化物が低温から高温領域の広い温度領域において適度な柔軟性を有し、弾性率の温度による変化が従来技術と比較して非常に小さいことから、接着性に優れ、基板に接着した半導体チップ等の電子部品に大きな反りが発生することがなく、また、ハンダリフロー時にもクラックが発生しない電子部品用接着剤。
【解決手段】硬化性化合物と硬化剤とを含有する電子部品用接着剤であって、前記硬化性化合物は、分子の両端にエポキシ基を有し、かつ、一方のエポキシ基と他方のエポキシ基との間に数平均分子量が50〜10000である柔軟な骨格を有するエポキシ化合物を含有するものであり、前記硬化剤は、常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤からなる粒子と常温で液体である2官能の酸無水物硬化剤との混合物である電子部品用接着剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、硬化物が低温から高温領域の広い温度領域において適度な柔軟性を有し、弾性率の温度による変化が従来技術と比較して非常に小さいことから、接着性に優れ、基板に接着した半導体チップ等の電子部品に大きな反りが発生することがなく、また、ハンダリフロー時にもクラックが発生しない電子部品用接着剤に関する。
近年、益々半導体チップ等の電子部品の小型化が要求されており、例えば、半導体チップの薄片化も進んでいる。これに伴い、接着剤を介して半導体チップと基板とを接着する際に、半導体チップに生じる反りの問題が益々重要な課題となってきている。
この半導体チップに生じる反りの問題は、半導体チップと基板との間を接着する接着剤を硬化させるときの温度から室温にまで冷却される過程において、半導体チップと基板との伸び率の温度依存性の相違により生じる応力が大きな要因であると考えられる。
このような問題に対し、例えば、半導体チップと基板との間を接着する接着剤で、半導体チップと基板との伸び率の温度依存性の相違により生じる応力を緩和することが考えられている。
ここで、半導体チップと基板との伸び率の温度依存性の相違により生じる応力を緩和するためには、半導体チップと基板との間を接着する接着剤は、硬化物の常温での貯蔵弾性率が1GPa以下であることが必要とされる。
一方、常温における貯蔵弾性率が1GPa以下である硬化物を得ることができる高分子化合物からなる接着剤は、一般に、175℃付近での貯蔵弾性率が10MPa以下になってしまうことが知られている。
しかしながら、電子部品接合体の作製において、ワイヤボンディング処理をする際には175℃付近の高温になるところ、このとき硬化物が10MPa以上の高い貯蔵弾性率を有しなければ、硬化物が撓んでしまう。そのため、このような高分子化合物からなる接着剤を用いた場合、半導体チップと基板との間を接着すると、ワイヤボンディング処理をすることができない(例えば、特許文献1参照)。
これに対し、常温での貯蔵弾性率を1GPa以下に保ちつつ、175℃での貯蔵弾性率が10MPaを超えるものとする方法として、アクリル樹脂とエポキシ化合物とを相分離させ、更にこれらの樹脂中にフィラーを高充填する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、このようなフィラーを高充填した接着剤は、接着強度が低く、熱サイクル試験の下で電子部品と基材の剥離を生じる等、半導体チップ等の電子部品の接着信頼性に問題が生じるものであった。
特許文献2には、硬化後の引張り弾性率が0.01〜3GPaであり、かつ、Tgが250℃以下である、フレキシブルプリント基板とバンプ付き半導体素子を接着するためのアンダーフィル接着フィルムが記載されている。このような接着フィルムを用いると、半導体素子の反りの問題が解決できるとされている。また、実施例においては、ポリカルボジイミド樹脂からなるアンダーフィル接着フィルムについて引張弾性率とガラス転移温度を測定した結果が記載されており、−55℃30分と125℃30分を1000サイクル行った場合にもクラック等の不良が発生しなかった旨が示されている。しかしながら、特許文献2に記載のアンダーフィル接着フィルムでは、鉛フリーリフロー条件のような260℃を超えるリフローを複数回かける場合には、ガラス転移点(Tg)における物性変化が複数回起き、リフロークラック等の不具合が発生するという問題があった。
特許文献3には、エポキシ樹脂、硬化剤、第一のカップリング剤で表面処理された無機充填材、及び、酸塩基性を有する第二のカップリング剤で表面処理された無機充填材を含有するアンダーフィル用液状封止樹脂組成物が記載されている。このような組成物からなるアンダーフィル接着フィルムを用いると、クラックや反りを防止できること記載されている。実施例においては、−55℃30分、125℃30分の冷熱サイクル試験を1000サイクルパスしたことが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載されたアンダーフィル接着フィルムは、室温における弾性率が高すぎることから、反りの発生を充分には防止できないという問題があった。
特許文献4には、シクロヘキサン骨格を有する特定のエポキシ化合物、硬化剤、無機フィラーを含有するアンダーフィル接着フィルムが記載されている。しかしながら、特許文献4に記載されたアンダーフィル接着フィルムは、室温における弾性率が高すぎることから、反りの発生を充分には防止できないという問題があった。
特許文献5には、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が10〜2000MPaであり、かつ、260℃における貯蔵弾性率が3〜50MPaである接着剤が記載されており、このような接着剤によれば、耐はんだリフロークラック性と温度サイクル試験での剥離防止とを達成できると記載されている。しかしながら、特許文献5に記載された接着剤(フィルム)では、ガラス転移温度前後での弾性率変化が大きく、ガラス転移温度をまたぐような熱履歴がかかった場合には、チップクラックが発生しやすいという問題があった。
このように、従来例公知の電子部品用接着剤では、硬化物の高温での弾性率を高くすると低温でも弾性率が高くなってしまい、常温での弾性率が高すぎて反りの問題が起こってしまう。一方、低温から常温にかけての弾性率を低くすると、高温での弾性率が低下してしまい、接続安定性が劣ってしまう。更に、高温での弾性率と低温での弾性率とが大きく異なることにより、冷熱サイクル試験を行ったときにクラックや剥離が起こるという問題があった。
特開2005−183788号公報 特開2005−112916号公報 特開2006−193595号公報 特開2007−063565号公報 特開平11−260838号公報 日立化成テクニカルレポートNo.47(2006−7)
本発明は、上記現状に鑑み、硬化物が低温から高温領域の広い温度領域において適度な柔軟性を有し、弾性率の温度による変化が従来技術と比較して非常に小さいことから、接着性に優れ、基板に接着した半導体チップ等の電子部品に大きな反りが発生することがなく、また、ハンダリフロー時にもクラックが発生しない電子部品用接着剤を提供することを目的とする。
本発明は、硬化性化合物と硬化剤とを含有する電子部品用接着剤であって、前記硬化性化合物は、分子の両端にエポキシ基を有し、かつ、一方のエポキシ基と他方のエポキシ基との間に数平均分子量が50〜10000である柔軟な骨格を有するエポキシ化合物を含有するものであり、前記硬化剤は、常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤からなる粒子と常温で液体である2官能の酸無水物硬化剤との混合物である電子部品用接着剤である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、柔軟な骨格を有するエポキシ化合物に対して、常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤からなる粒子と常温で液体である2官能の酸無水物硬化剤との2種類の硬化剤を併用した。これにより、硬化物の貯蔵弾性率を低温から室温においては比較的低く、かつ、高温においては比較的高く調整することができ、半導体チップ等の電子部品の接着に用いたときにも大きな反りが発生することなく、かつ、ハンダリフロー時にもクラックを発生させないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤からなる粒子(以下、「硬化剤粒子」ともいう)を含有することにより、加熱したときに該硬化剤粒子が溶融した拡散領域において高架橋の硬化物(以下、「高架橋部分」ともいう)が生成する。一方、拡散領域外では常温で液体である2官能の酸無水物硬化剤(以下、「硬化剤液」ともいう)により、比較的架橋度の低い硬化物(以下、「低架橋部分」ともいう)が生成する。このようにして得られた硬化物では、高架橋部分が低架橋部分中に分散した構造となる。このような構造を有する硬化物では、低温から室温においては低架橋部分により比較的貯蔵弾性率が低くなり、かつ、高温においては高架橋部分により比較的貯蔵弾性率が高くなる。このため、温度変化に対する貯蔵弾性率の変化が、広い温度領域において非常になだらかな曲率を示すものとなり、反りやクラックの発生を著しく低減することができる。
なお、本明細書において低温から常温とは、−60〜30℃程度の温度領域を意味し、高温とは、120〜260℃程度の温度領域を意味する。
本発明の電子部品用接着剤は、硬化性化合物として分子の両端にエポキシ基を有し、かつ、一方のエポキシ基と他方のエポキシ基との間に数平均分子量が50〜10000である柔軟な骨格を有するエポキシ化合物(以下、「柔軟エポキシ化合物」ともいう)を含有する。このような柔軟エポキシ化合物を用いることにより、本発明の電子部品用接着剤の硬化物は、常温領域での低貯蔵弾性率を達成しつつ、接着性に優れたものとなる。
なお、本明細書において、「柔軟な骨格」とは、その骨格のみからなる樹脂のガラス転移温度が25℃以下となるような骨格を意味する。
上記柔軟な骨格部分は、数平均分子量の下限が50、上限が10000である。数平均分子量が50未満であると、電子部品用接着剤の硬化物の常温における柔軟性が不充分となる場合があり、10000を超えると、電子部品用接着剤の接着性が不充分となることがある。数平均分子量の好ましい下限は100、好ましい上限は2000である。
上記柔軟エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、1,2−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、1,4−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、アクリルゴム変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ウレタン樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエステル樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、1,2−ポリブタジエン変性グリシジルエーテル、1,4−ポリブタジエン変性グリシジルエーテル、ポリプロピレンオキサイド変性グリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイド変性グリシジルエーテル、アクリルゴム変性グリシジルエーテル、ウレタン樹脂変性グリシジルエーテル、ポリエステル樹脂変性グリシジルエーテル、及び、これらの水添化物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、上記柔軟な骨格がブタジエンゴム、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、アクリルゴム、及び、これらの水添加物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来するエポキシ化合物が好適に用いられる。更に好ましくは、ブタジエンゴム又はこれらの水添加物に由来する柔軟な骨格を有するエポキシ化合物が好ましい。
上記柔軟エポキシ化合物としては、反応速度が速いことから、分子内に芳香族骨格を有するものが好適である。
このような芳香族骨格を有するエポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、1,2−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、1,4−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、アクリルゴム変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ウレタン樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエステル樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、グリシジル基が芳香族骨格に直接結合している構造を有するものは、特に反応速度が速い。
グリシジル基が芳香族骨格に直接結合している構造を有するエポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPB−13(日本曹達社製)、EXA−4850(大日本インキ社製)等が挙げられる。
本発明の電子部品用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記柔軟エポキシ化合物以外のその他の硬化性化合物を含有してもよい。
上記その他の硬化性化合物としてはエポキシ化合物が好ましく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル、レゾルシノール型等の芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物等が挙げられる。
本発明の電子部品用接着剤が上記その他の硬化性化合物を含有する場合、上記柔軟エポキシ化合物とその他の硬化性化合物全体に占める上記柔軟エポキシ化合物の比率の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は80重量%である。柔軟エポキシ化合物の比率が5重量%未満であると、硬化物の柔軟性が不充分となることがあり、80重量%を超えると、接着性等を調整したい場合に不便なことがある。
上記硬化剤粒子は、常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤からなる。
上記常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤としては特に限定されず、3官能の酸無水物硬化剤としては、例えば、酸無水物無水トリメリット酸等が挙げられ、4官能以上の酸無水物硬化剤としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等が挙げられる。
上記3官能以上の酸無水物硬化剤は、融点の好ましい下限が80℃である。融点が80℃未満であると、上記柔軟エポキシ化合物との相溶性が悪くなるように選択して混合しなければ、比較的低温で液状となって本発明の電子部品用接着剤中に広がってしまい、硬化時の加熱により所望の構造を形成することが困難となる場合がある。
なお、3官能以上の酸無水物硬化剤として、上記柔軟エポキシ化合物との相溶性が悪くなるものを特に選択した場合には、融点が80℃未満のものであっても使用可能である。
上記硬化剤粒子の平均粒子径としては、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が10μmである。平均粒子径が0.1μm未満であると、硬化させた際に小さな高架橋部分しか形成できず、高温領域での高貯蔵弾性率が達成できないことがある。平均粒子径が10μmを超えると、高架橋部分が大きくなりすぎてしまい、常温から低温領域での柔軟性が不足し、半導体チップ等の電子部品の反りが改善できないことがある。
上記硬化剤液は、常温で液体である2官能の酸無水物硬化剤からなる。
上記常温で液体である2官能酸無水物硬化剤としては特に限定されず、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
上記硬化剤粒子と硬化剤液との組み合わせとしては特に限定されないが、例えば、硬化剤粒子として無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びメチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物からなる群より選択される1種類以上と、硬化剤液としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸及びメチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸からなる群より選択される1種類以上との組み合わせが好ましい。
本発明の電子部品用接着剤において、上記硬化剤粒子及び硬化剤液の含有量としては特に限定されないが、上記柔軟エポキシ化合物及びその他の硬化性化合物の官能基量の合計を上記硬化剤粒子及び硬化剤液の塩基性基量の合計で除した値の好ましい下限が0.5、好ましい上限が1.5である。上記柔軟エポキシ化合物及びその他の硬化性化合物の官能基量の合計を上記硬化剤粒子及び硬化剤液の塩基性基量の合計で除した値が0.5未満であると、本発明の電子部品用接着剤による接着信頼性に劣ることがあり、1.5を超えると、本発明の電子部品用接着剤の硬化が不充分となることがある。上記柔軟エポキシ化合物及びその他の硬化性化合物の官能基量の合計を上記硬化剤粒子及び硬化剤液の塩基性基量の合計で除した値のより好ましい下限は0.6、より好ましい上限は1.3である。
上記硬化剤粒子と硬化剤液との配合比としては特に限定されないが、上記硬化剤粒子の配合量(重量)を上記硬化剤液の配合量(重量)で除した値の好ましい下限が0.1、好ましい上限が10である。上記硬化剤粒子の配合量(重量)を上記硬化剤液の配合量(重量)で除した値が0.1未満であると、硬化物としたときに上述の構造が形成されないことがあり、10を超えると、硬化物全体の強度が不充分となることがある。上記硬化剤粒子の配合量(重量)を上記硬化剤液の配合量(重量)で除した値より好ましい下限は0.2、より好ましい上限は5である。
本発明の電子部品用接着剤は、硬化速度や硬化物の物性等を調整するために、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられ、なかでも、硬化速度や硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記イミダゾール系硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールや、イソシアヌル酸で塩基性を保護したもの(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記硬化促進剤の配合量としては特に限定されず、上記柔軟エポキシ化合物等の硬化性化合物の合計100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。硬化促進剤の配合量が1重量部未満であると、充分な硬化促進効果が得られないことがあり、10重量部を超えても、それ以上の効果は得られない。
本発明の電子部品用接着剤は、無機フィラーを上記硬化性化合物100重量部に対して100〜400重量部含有することが好ましい。無機フィラーを上記の配合量で含有することにより、硬化物の柔軟性やゆるやかな貯蔵弾性率の変化を達成することができるとともに、低吸水率化や低線膨張率化を達成することができる。また、貯蔵弾性率を全体的に高くすることができるため、上述した柔軟エポキシ化合物の選択及び配合量によっては非常に有用である。
上記無機フィラーとしては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、窒化珪素、ハイドロタルサイト、カオリン等が挙げられる。なかでも、低線膨張率及び吸水率の低下の観点から、シリカ粒子が好適である。これらの無機フィラーは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
なかでも表面にフェニル基を有するシリカ粒子は、上記柔軟エポキシ化合物と併用したときに、高充填しても他の表面状態のシリカ粒子を同量充填する場合と比較して低粘度の組成物を得ることができる。即ち、粘度を犠牲にすることなく、低線膨張率及び低吸水率を達成することができる。
上記表面にフェニル基を有するシリカ粒子は、表面処理されていないシリカ粒子の表面をフェニル基を有するカップリング剤で表面処理する方法により製造することができる。
また、上記表面にフェニル基を有するシリカ粒子の市販品としては例えば、SE−4050−SPE(アドマテックス社製)が挙げられる。
上記無機フィラーの形状としては特に限定されないが、球状であることが好ましい。
上記無機フィラーの平均粒子径としては、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が5μmである。無機フィラーの平均粒子径が0.1μm未満であると、高充填が困難なことがあり、5μmを超えると、高充填したものを極薄の接着剤層に適用するのが困難となる。
本発明の電子部品用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、希釈剤を含有してもよい。上記希釈剤としは、加熱硬化時に硬化物に取り込まれるような反応性希釈剤が好ましい。なかでも、硬化物の接着信頼性を悪化させないために1分子内に2つ以上官能基を持つものが好ましい。
このような反応性希釈剤としては、例えば、脂肪族型エポキシ、エチレンオキサイド変性エポキシ、プロピレンオキサイド変性エポキシ、シクロヘキサン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、フェノール型エポキシ等が挙げられる。
本発明の電子部品用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、無機イオン交換体、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤、有機無機ハイブリッドエポキシ化合物、スペーサー粒子、チキソトロピー付与剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
本発明の電子部品用接着剤を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記柔軟エポキシ化合物等の硬化性化合物、硬化剤粒子、硬化剤液及び必要に応じて添加する添加剤を所定量配合して混合した後、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
本発明の電子部品用接着剤は、25℃でE型粘度計により10rpmで測定した際の粘度が70Pa・s以下であることが好ましい。これを超えると、塗布性に劣り、微細な接着剤層を形成できない等、電子部品の小型化に追従できない場合がある。電子部品用接着剤の粘度は、好ましくは50Pa・s以下、更に好ましくは40Pa・s以下である。
本発明の電子部品用接着剤は、上記構成よりなることにより、硬化物が低温から高温領域の広い温度領域において適度な柔軟性を有し、弾性率の温度による変化が従来技術と比較して非常に小さいものとなる。
本発明の電子部品用接着剤は、硬化物の−65℃における貯蔵弾性率が6GPa以下であり、150℃における貯蔵弾性率が10MPa以上である。−65℃における貯蔵弾性率が6GPaより大きいと、低温での貯蔵弾性率が高く硬化物が「硬い」ため、冷熱サイクル試験時にクラックが発生することがある。150℃における貯蔵弾性率が10MPa未満であると、高温で硬化物が軟らかくなりすぎ、ワイヤーボンディングやリフロー時の信頼性が劣ったり、冷熱サイクル試験時に低温領域の弾性率に比べて高温領域での貯蔵弾性率が低いために貯蔵弾性率の差が大きく、結果クラックが発生することがある。
本発明の電子部品用接着剤は、硬化物を150℃、0%雰囲気下に100時間保った後の150℃における貯蔵弾性率が10MPa〜150MPaである。これよりも変化率が高いと、高温放置下での弾性率の変化が顕著な硬化物、ということになり、長期使用における信頼性が不足したものとなる。
本発明の電子部品用接着剤は、硬化物のガラス転移温度(Tg)が50℃以下であることが好ましい。硬化物のガラス転移温度(Tg)が50℃未満であると、熱履歴による繰り返し応力が発生し、クラックが発生することがある。硬化物のガラス転移温度(Tg)は、より好ましくは30℃以下である。
本発明の電子部品用接着剤は、−65℃での貯蔵弾性率/150℃での貯蔵弾性率の値が200以下であることが好ましい。−65℃での貯蔵弾性率/150℃での貯蔵弾性率の値が200を超えると、Tg前後での弾性率変化が大きくTgをまたぐ熱履歴がかかる場合、クラックが発生しやすくなる。−65℃での貯蔵弾性率/150℃での貯蔵弾性率の値は、より好ましくは100以下である。
なお、上記硬化物の貯蔵弾性率は、例えば、厚さ0.3mmの硬化物を作製し、アイティー計測制御社製の粘弾性測定機を使い、昇温速度5℃/min、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで測定することができる。
本発明の電子部品用接着剤は、硬化物の線膨張係数がガラス転移温度(Tg)以上の温度域においては150ppm以下、ガラス転移温度(Tg)以下の温度域においては80以下であることが好ましい。硬化物の線膨張係数がこの範囲外であると、接着剤やアンダーフィルとして用いた場合に、温度サイクル試験のような熱履歴のかかったときに不良が発生するおそれがある。硬化物の線膨張係数は、より好ましくはTg以上の温度域において100ppm以下、Tg以下の温度域において30ppm以下である。
なお、上記硬化物の線膨張係数は、例えば、TMAにより測定することができる。
本発明の電子部品用接着剤の用途としては特に限定はされないが、半導体チップと基板(種類を問わない)との間の接着剤や、アンダーフィル、ダイアタッチメントペーストに特に好適である。
本発明によれば、硬化物が低温から高温領域の広い温度領域において適度な柔軟性を有し、弾性率の温度による変化が従来技術と比較して非常に小さいことから、接着性に優れ、基板に接着した半導体チップ等の電子部品に大きな反りが発生することがなく、また、ハンダリフロー時にもクラックが発生しない電子部品用接着剤を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜4)
表1の組成に従って、下記に示した各材料をホモディスパーを用いて攪拌混合し、実施例1〜4及び比較例1〜4に係る電子部品用接着剤を調製した。
(1)エポキシ化合物
両末端ビスフェノールAグリシジルエーテル変性ポリブタジエン(EPB−13、日本曹達社製、常温半固体)
両末端グリシジルエーテル変性プロピレンオキサイド(EX−931、ナガセ産業社製、常温液体)
(2)その他のエポキシ化合物
ビスフェノールA型エポキシ化合物(EP−828、ジャパンエポキシレジン社製、50℃での粘度が2Pa・s)
(3)硬化剤
2官能酸無水物硬化剤(YH−306、ジャパンエポキシレジン社製、常温で液体)
4官能酸無水物硬化剤からなる粒子(B−4400、大日本インキ社製、常温で固体、平均粒子径3μm)
(4)硬化促進剤
イミダゾール硬化促進剤(2MZA、四国化成社製)
(5)反応性希釈剤
ジシクロペンタジエン型エポキシ(EP−4088S、アデカ社製、単量体)
(6)チキソトロピー付与剤
疎水性ヒゥームドシリカ(QS−40、トクヤマ社製)
(7)接着性付与剤
イミダゾールシランカップリング剤(SP−1000、日鉱マテリアル社製)
(8)表面未処理無機フィラー SE−4050 アドマテックス製
(9)表面フェニル基有り無機フィラー SE−4050−SPE アドマテックス製
得られた電子部品用接着剤を用いて、以下の実装方法1又は2のいずれかの方法により半導体チップ積層体を製造した。なお、半導体チップ積層体の製造に供した基板及びチップは以下のものである。
<基板>
サイズ 50mm×30mm×0.8mm
素材 FR4
パッドピッチ 150um
パッド数 240
<チップ>
サイズ 9.6mm×9.6mm×0.1mm
素材 Si 表面PI
バンプピッチ 150um
バンプ数 240
バンプ 鉛フリー半田
バンプ高さ 70um
(実装方法1)
得られた電子部品用接着剤を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、基板とニードルとのギャップ200μm、塗布量5mgにてガラスエポキシ基板上に塗布した。
塗布を行った後、チップをフリップチップボンダー(DB−100、澁谷工業社製)を用いて温度240℃、圧力0.1MPaで5秒間押圧することにより積層した。170℃で15分間加熱を行い、電子部品用接着剤を硬化させることにより、半導体チップ積層体を作製した。
(実装方法2)
塗布を行った後、チップをフリップチップボンダー(DB−100、澁谷工業社製)を用いて温度240℃、圧力0.1MPaで5秒間押圧することにより積層した。
得られた電子部品用接着剤を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、基板とニードルとのギャップ200μm、基板温度100℃にて、チップ/基板間に充填した。
170℃で15分間加熱を行い、電子部品用接着剤を硬化させることにより、半導体チップ積層体を作製した。
(評価)
実施例1〜4及び比較例1〜4で調製した電子部品用接着剤及び半導体チップ積層体について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(1)電子部品用接着剤の粘度の測定
E型粘度計(VISCOMETER TV−22、TOKI SANGYO CO.LTD社製、使用ローターφ15mm、設定温度25℃)を用いて回転数10rpmにおける粘度を測定した。
(2)硬化物のガラス転移温度の測定
実施例1〜4及び比較例1〜3で調製した電子部品用接着剤を170℃、15分で硬化させた硬化物のガラス転移温度を、粘弾性測定機(アイティー計測制御社製)を用い、昇温速度5℃/min、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzの条件で測定したときのTanδのピーク時の温度をガラス転移点とした。
(3)硬化物の(Tg−20)℃での貯蔵弾性率/(Tg+20)℃での貯蔵弾性率の測定
実施例1〜4及び比較例1〜3で調製した電子部品用接着剤を170℃、15分で硬化させた硬化物について、−65℃での貯蔵弾性率及び150℃での貯蔵弾性率を粘弾性測定機(アイティー計測制御社製)を用い、昇温速度5℃/min、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzの条件で測定した。
(4)硬化物の貯蔵弾性率の測定
アイティー計測制御社製の粘弾性測定機を使い、実施例1〜4及び比較例1〜3で調製した電子部品用接着剤を170℃、15分で硬化させた硬化物の−65℃、25℃、及び150℃における貯蔵弾性率を、昇温速度5℃/min、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで測定した。
(5)硬化物の高温放置後の弾性率の測定
実施例1〜4及び比較例1〜4で調製した電子部品用接着剤を170℃、15分で硬化させた硬化物を、150℃、0%の雰囲気下に100時間放置した。その後、上述した方法と同様にして貯蔵弾性率を測定し、変化値を求めた。
(6)硬化物の線膨張係数の測定
実施例1〜4及び比較例1〜4で調製した電子部品用接着剤を170℃、15分で硬化させた硬化物について、TMA/SS6100(SII社製)を用い、昇温速度5℃/minにて測定した。
(7)半導体チップ積層体の反り量の測定
作製した半導体チップ積層体の半導体チップの対角線に沿って反り量をレーザー変位計(KEYENCE社製 LT9010M、KS−1100)にて測定した。
(8)半導体チップ積層体の耐リフロー性評価
作製した半導体チップ積層体を、85℃85%の恒温高湿オーブンに48時間放置したのち、230℃以上が20秒以上でかつ最高温度が260℃となるIRリフロー炉に3回投入した。投入後、半導体装置のリフロークラックの発生の有無を超音波探傷装置(SAT)により観察し、以下の基準で評価した。
◎ リフロークラック発生数0/6
○ リフロークラック発生数1/6
× リフロークラック発生数2以上/6
(9)半導体チップ積層体の冷熱サイクル試験
作製した半導体チップ積層体を、チャンバー式冷熱サイクル試験機(WINTECH NT510、ETACH社製)にて−60℃、30分及び150℃30分を1サイクルとして500サイクル、1000サイクル行った。試験後の硬化物表面のクラックの有無を光学顕微鏡(TRANSFORMER−XN、Nikon社製)、剥離の有無を超音波探傷装置(mi−scope hyper、日立建機ファインテック社製)にて観察した。1000サイクル実施したものについて、それぞれテストサンプル10検体中のクラック又は剥離が発生したテストサンプルの数を数え、下記の基準により評価した。
◎ クラック又は剥離の発生したテストサンプルが10検体中、0検体
〇 クラック又は剥離の発生したテストサンプルが10検体中、1〜2検体
△ クラック又は剥離が発生したテストサンプルが10検体中、3〜4検体
× クラック又は剥離が発生したテストサンプルが10検体中、5検体以上
Figure 2009256466
本発明によれば、硬化物が低温から高温領域の広い温度領域において適度な柔軟性を有し、弾性率の温度による変化が従来技術と比較して非常に小さいことから、接着性に優れ、基板に接着した半導体チップ等の電子部品に大きな反りが発生することがなく、また、ハンダリフロー時にもクラックが発生しない電子部品用接着剤を提供することができる。

Claims (11)

  1. 硬化性化合物と硬化剤とを含有する電子部品用接着剤であって、
    前記硬化性化合物は、分子の両端にエポキシ基を有し、かつ、一方のエポキシ基と他方のエポキシ基との間に数平均分子量が50〜10000である柔軟な骨格を有するエポキシ化合物を含有するものであり、
    前記硬化剤は、常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤からなる粒子と常温で液体である2官能の酸無水物硬化剤との混合物である
    ことを特徴とする電子部品用接着剤。
  2. 更に、硬化性化合物100重量部に対して100〜400重量部の無機フィラーを含有することを特徴とする請求項1記載の電子部品用接着剤。
  3. エポキシ化合物中の柔軟な骨格は、ブタジエンゴム、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、アクリルゴム、及び、これらの水添加物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来することを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品用接着剤。
  4. エポキシ化合物は、分子内に芳香族骨格を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子部品用接着剤。
  5. エポキシ化合物は、グリシジル基が芳香族骨格に直接結合している構造を有することを特徴とする請求項4記載の電子部品用接着剤。
  6. 常温で固体である3官能以上の酸無水物硬化剤からなる粒子の配合量(重量)を常温で液体である2官能の酸無水物硬化剤の配合量(重量)で除した値が0.1〜10であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の電子部品用接着剤。
  7. 更に、硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の電子部品用接着剤。
  8. 更に、表面にフェニル基を有するシリカ粒子を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の電子部品用接着剤。
  9. 硬化物の、−65℃における貯蔵弾性率が6GPa以下、150℃における貯蔵弾性率が10MPa以上であり、かつ、硬化物を150℃0%の環境で100時間保った後の150℃での貯蔵弾性率が10〜150MPaであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の電子部品用接着剤。
  10. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の電子部品用接着剤を用いてなることを特徴とする半導体チップ用アンダーフィル。
  11. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の電子部品用接着剤を用いてなることを特徴とするダイアタッチメントペースト。
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