JP4050290B2 - 半導体用接着フィルム及びこれを用いた半導体装置 - Google Patents
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Description
このような要求に対応するため、例えば半導体素子の上にリードを接着するリード・オン・チップ(LOC)構造が採用されている。
しかし、ペースト状の接着剤を適量に塗布することが困難であり、半導体素子から接着剤がはみ出すことがあった。
第一に、特許文献2および3では、熱可塑性樹脂としてポリイミド樹脂、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が用いられていたが、このような接着フィルムは、耐熱性・信頼性には優れるものの、高温状態で初めて溶融粘度が低下し、さらに最低溶融粘度が高いことより、低温での濡れ性が不足しているため、低温での貼り付けが困難であり、チップが薄型かつ多段に積層されたパッケージに適用するのが困難であったという課題を有していた。
第二に、特許文献4および5では、低温での濡れ性を改善するためにガラス転移温度の低い熱可塑性樹脂としてアクリルゴムを主成分とする樹脂を用いられているが、熱可塑性樹脂の分子量が高く、かつ含有する熱硬化成分の高温時での粘度が高い場合、フィルム状接着剤の流動性が乏しく、有機基板に設けられた回路との間の空隙を埋めることができず、高温時に剥離が起こりやすい。
第三に、低分子量の熱硬化成分の含有量を高くする方法も考えられるが、フィルム状接着剤が可とう性に乏しくなり、フィルム状接着剤を切断する際、フィルム状接着剤の割れが発生しやすい。
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは半導体素子とリードフレーム、有機基板等の半導体素子搭載用支持部材とを接着することができ低温接着性および作業性に優れた半導体用接着フィルムを提供することにある。
本発明の半導体用接着フィルムは、固形エポキシ樹脂を添加すると共に、液状フェノール化合物を添加している。このため、低温での溶融粘度を低く維持するとともにフィルム状接着剤の脆さを低減し、作業性に優れる。
本発明の半導体用接着フィルムは、(A)熱可塑性樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)液状フェノール化合物を含み、当該(B)エポキシ樹脂が実質的に固形エポキシ樹脂であり、かつ当該(C)液状フェノール化合物が化1で表される液状ポリフェノールを含むもので構成される半導体接着用フィルムである。
以下、本発明の半導体用接着フィルムの各成分について説明する。
これらの中でもアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が低いため初期密着性を向上することができる。ここで初期密着性とは、半導体用接着フィルムで半導体素子と支持部材とを接着した際の初期段階における密着性であり、すなわち半導体用接着フィルムを硬化処理する前の密着性を意味する。
本発明においては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基等を持つ化合物を有するアクリル系樹脂(特に、アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。これにより、半導体素子等の被着体への密着性をより向上することができる。前記官能基を持つ化合物として、具体的にはグリシジルエーテル基を持つグリシジルメタクリレート、水酸基を持つヒドロキシメタクリレート、カルボキシル基を持つカルボキシメタクリレート、ニトリル基を持つアクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でも特にニトリル基を持つ化合物を含むアクリル酸エステル共重合体が好ましい。これにより、被着体への密着性を特に向上することができる。
前記シアネート基を有する有機化合物としては、例えばビスフェノールAジシアネート、ビスフェノールFジシアネート、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル、ビスフェノールEジシアネート、シアネートノボラック樹脂等が挙げられる。
前記半導体用接着フィルムの厚さは、特に限定されないが、3μm以上100μm以下が好ましく、特に5μm以上70μm以下が好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に厚さ精度の制御を容易にできる。
(実施例1)
(1)半導体用接着フィルム樹脂ワニスの調製
熱可塑性樹脂(A)としてアクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート−アクリロニトリル−エチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ナガセケムテックス(株)製、SG−80HDR、Tg:10℃、重量平均分子量:350,000)100重量部と、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂(EOCN−1020−80(オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)97重量部と、NC6000(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)146重量部、液状フェノール化合物(MEH−8000H、水酸基当量141g/OH基、明和化成(株)製)110重量部、固形フェノール樹脂(PR−HF−3、水酸基当量104g/OH基、住友ベークライト(株)製)47重量部、硬化促進剤(E)としてイミダゾール化合物(2P4MHZ−PW、四国化成(株)製)0.75重量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403、信越化学(株)製)1.3重量部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して樹脂固形分37%の樹脂ワニスを得た。
コンマコーターを用いて上述の樹脂ワニスを、基材フィルム(I)であるポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製、品番MRX50、厚さ50μm)に塗布した後、90℃、5分間乾燥して、厚さ25μmの半導体用接着フィルムを得た。
(3)基材フィルム(II)及び粘着剤層の製造
基材フィルム(II)としてハイブラ60重量部ポリプロピレン40重量部からなるクリアテックCT−H717(クラレ製)を、押し出し機で、厚み100μmのフィルムを形成し、表面をコロナ処理した。次にアクリル酸2−エチルヘキシル50重量部とアクリル酸ブチル10重量部、酢酸ビニル37重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部とを共重合して得られた重量平均分子量500000の共重合体を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、80℃で5分間乾燥し、粘着剤層を得た。その後粘着剤層を基材フィルム(II)のコロナ処理面にラミネートして基材フィルム(II)及び粘着剤層を得た。
上述の基材フィルム(I)つきのフィルム状接着剤層に保護フィルムを貼り付け、基材フィルム(I)及びフィルム状接着剤層をハーフカットし、上述の基材フィルム(II)上の粘着剤層に貼り付け、保護フィルムを剥がすことにより、基材フィルム(II)、粘着剤層、基材フィルム(I)およびフィルム状接着剤層がこの順に構成されてなるダイシングシート機能付きダイアタッチフィルムを得た。
実施例および比較例で得られたダイシング機能付きダイアタッチフィルムを5インチ200μmウエハーの裏面に60℃で貼り付けし、ダイシング機能付きダイアタッチフィルム付きウエハーを得た。その後ダイシング機能付きダイアタッチフィルム付きウエハーを、ダイシングソーを用いて、スピンドル回転数30,000rpm、切断速度50mm/secで5mm×5mm角の半導体素子のサイズにダイシング(切断)して、次にダイシングシート機能付きダイシングシートの裏面から突上げし基材フィルム(II)及びフィルム状接着剤層間で剥離しダイアタッチフィルムが接合した半導体素子をビスマレイミド−トリアジン樹脂基板に、130℃、5N、1.0秒間圧着して、ダイボンディングし、120℃、1時間、さらに180℃1時間熱処理を行い、半導体接着フィルムを硬化させた後、樹脂で封止し、175℃2時間熱処理を行い、封止樹脂を硬化させて10個の半導体装置を得た。
低温接着性は、半導体素子(有機基板)に得られた半導体用接着フィルムを130℃、5N、1秒間の条件で接着し、その後、ダイシェア強度を測定した。
ダイシェア強度の測定は、プッシュプルゲージを用いて行った。各符号は以下の通りである。
◎:ダイシェア強度が、3.0MPa以上
○:ダイシェア強度が、2.0MPa以上3.0M未満
△:ダイシェア強度が、1.0MPa以上2.0MPa未満
×:ダイシェア強度が、1.0MPa未満
フィルムの脆弱性は、半導体用接着フィルムを基材から剥離し、180度折り曲げ試験を行い、半導体用接着フィルムが破断するまでの回数を評価した。各符号は以下の通りである。
◎:折り曲げ可能回数が、50回以上
○:折り曲げ可能回数が、25回以上50回未満
△:折り曲げ可能回数が、1回以上25回未満
×:折り曲げ不可
回路充填性は、半導体素子(有機基板)に得られた半導体用接着フィルムを130℃、5N、1秒間の条件で接着し、走査型超音波探傷機(SAT)により、有機基板上の回路段差内に半導体用接着フィルムが充填されている率を評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:充填率が、100%
○:充填率が、80%以上100%未満
△:充填率が、40%以上80%未満
×:充填率が、40%未満
各実施例および比較例で得られる樹脂封止前の半導体装置を85℃/85%RH/168時間吸湿処理をした後、半導体素子と有機基板との260℃での剪断強度を評価した。
◎:剪断強度が、1.0MPa以上
○:剪断強度が、0.75以上1.0MPa未満
△:剪断強度が、0.5以上0.75MPa未満
×:剪断強度が、0.5MPa未満
耐クラック性は、各実施例および比較例で得られた半導体装置を85℃/85%RH/168時間吸湿処理をした後、260℃のIRリフローを3回行い走査型超音波探傷機(SAT)で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:発生したクラックが、10個中0個
○:発生したクラックが、10個中1個以上3個以下
△:発生したクラックが、10個中4個以上9個以下
×:発生したクラックが、10個中10個
エポキシ樹脂(B)として、EOCN−1020−80(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)99重量部、NC6000(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)148重量部、液状フェノール化合物(C)として、MEH−8000H(水酸基当量141g/OH基、明和化成(株)製)92重量部、固形フェノール樹脂(D)として、PR−HF−3(水酸基当量104g/OH基、住友ベークライト(株)製)62重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
液状フェノール化合物(C)として、MEH−8000−4L(水酸基当量141g/OH基、明和化成(株)製)110重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
固形フェノール樹脂(D)として、PR53647(水酸基当量104g/OH基、住友ベークライト(株)製)47重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
エポキシ樹脂(B)として、EOCN−1020−80(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)200重量部、液状フェノール化合物(C)として、MEH−8000H(水酸基当量141g/OH基、明和化成(株)製)141重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
エポキシ樹脂(B)として、EOCN−1020−80(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)60重量部、液状フェノール化合物(C)として、MEH−8000H(水酸基当量141g/OH基、明和化成(株)製)42重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
エポキシ樹脂(B)として、EOCN−1020−80(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)400重量部、液状フェノール化合物(C)として、MEH−8000H(水酸基当量141g/OH基、明和化成(株)製)282重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
実施例1で作成した半導体用接着フィルム面を5インチ、200μmの半導体ウエハー裏面に60℃、0.1MPa、50mm/secの条件でラミネートし、半導体用接着フィルム面をダイシングフィルム(スミライトFSL−N4003、住友ベークライト(株)製)に固定した。そして、ダイシングソーを用いて、半導体用接着フィルムが接合した半導体ウエハーをスピンドル回転数30,000rpm、切断速度50mm/secで5mm×5mm角の半導体素子のサイズにダイシング(切断)して、半導体用接着フィルムが接合した半導体素子を得た。次に、ダイシングフィルムの光透過性基材側から紫外線を20秒で250mJ/cm2の積算光量を照射した後、半導体用接着フィルムに接合しているダイシングフィルムを剥離した。そして、上述の半導体用接着フィルムが接合した半導体素子をソルダーレジスト(太陽インキ(株)製、AUS308)で被覆されたビスマレイミド・トリアジンを主材とする有機基板(回路段差10um)に、130℃、5N、1.0秒間圧着して、ダイボンディングし、120℃、1時間、さらに180℃1時間熱処理を行い、半導体接着フィルムを硬化させた後、樹脂で封止し、175℃2時間熱処理を行い、封止樹脂を硬化させて半導体装置を得た。得られた半導体装置は各種評価試験において高い信頼性を示すことが確認された。
エポキシ樹脂(B)、液状フェノール化合物(C)、固形フェノール樹脂(D)、硬化促進剤(E)、を用いなかった以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
エポキシ樹脂(B)として、EOCN−1020−80(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)200重量部、固形フェノール樹脂(D)として、PR−HF−3(水酸基当量104g/OH基、住友ベークライト(株)製)104重量部を用い、液状フェノール化合物(C)を用いなかった以外は、実施例1と同様に実験を行った。配合、及び実験結果を表1に示す。
熱可塑性樹脂(A)としてポリイミド樹脂(ジアミン成分として1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学(株)製)APB) 43.85g(0.15モル)とα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量837)(扶桑化学(株)製 G9)125.55g(0.15モル)と、酸成分として4,4’−オキシジフタル酸二無水物(マナック(株)製 ODPA−M) 93.07g(0.30モル)とを合成して得られるポリイミド樹脂、Tg:70℃、重量平均分子量30,000)100重量部、エポキシ樹脂(B)として、(EOCN−1020−80(オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)10重量部、カップリング剤(G)としてN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573、信越化学(株)製)5重量部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解して樹脂固形分43%の樹脂ワニスを作製し、これを保護フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、品番MRX−50、厚さ50μm)に塗布した後、180℃、10分間乾燥して、厚さ25μmの半導体用接着フィルムを作製し、これを用いて評価を行った。実験結果を表1に示す。
2 半導体素子
3 半導体搭載用支持部材
Claims (7)
- (A)熱可塑性樹脂、
(B)エポキシ樹脂、
(C)液状フェノール化合物、
を含む半導体接着用フィルムであって、
前記(B)が実質的に固形のエポキシ樹脂で構成される半導体接着用フィルム。 - 更に(D)固形フェノール樹脂を含む請求項1または2に記載の半導体接着用フィルム。
- (A)熱可塑性樹脂がアクリル酸エステル共重合体である請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
- 更に(E)硬化促進剤を含むものである請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
- 半導体チップを基板に貼り付ける温度における前記半導体接着用フィルムの溶融粘度が200Pa・s以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体接着用フィルム。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体用接着フィルムを用いて半導体素子と被接着部材とを接着した構造を有する半導体装置。
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