JP2022136995A - カキ殻焼成粉末を含むプラスチック、プラスチック製品及びプラスチックの製造方法 - Google Patents

カキ殻焼成粉末を含むプラスチック、プラスチック製品及びプラスチックの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カキ殻焼成粉末を含むプラスチック、プラスチック製品及びプラスチックの製造方法を提供する。【解決手段】本開示内容のいくつかの実施形態は、カキ殻焼成粉末と、ポリ塩化ビニルと、アクリル酸エステル系共重合体と、を含むプラスチックを提供する。プラスチックの抗菌性を向上させるとともに、カキ殻焼成粉末によるエアスポット問題を回避することができる。本開示内容のいくつかの実施形態は、カキ殻を提供することと、カキ殻を焼成し、カキ殻焼成粉末を得ることと、カキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及びアクリル酸エステル系共重合体を溶融し、プラスチックを得ることと、を含むプラスチックの製造方法を更に提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、カキ殻焼成粉末を含むプラスチック及びその製造方法に関し、特に、抗菌性を向上させ、カキ殻焼成粉末によるエアスポット問題を改善するプラスチック及びその製造方法に関する。
カキ類は台湾、ひいては各国の美食の一つである。しかし、カキ類を食べた後に残る廃棄カキ殻は分解処理が容易ではなく、長期に亘って堆積すると生態環境を破壊し、悪臭を発する。
カキ殻は、炭酸カルシウムに富み、アルカリ性洗浄剤、吸着剤、有機肥料とするか、又は製品(例えば紙類)にすることができる。カキ殻に対して焼成処理を施した後、焼成後のカキ殻を研磨すると、カキ殻焼成粉末を得ることができ、ここで、カキ殻における炭酸カルシウムの一部又は全部は、カキ殻焼成粉末において酸化カルシウムとなる。そして、カキ殻焼成粉末は抗菌性を有することが報告されている。
プラスチックに抗菌効果を付与するように、如何にカキ殻焼成粉末をプラスチックに応用するかが解決しようとする課題である。
本開示内容のいくつかの実施形態は、カキ殻焼成粉末と、ポリ塩化ビニルと、アクリル酸エステル系共重合体と、を含むプラスチックを提供する。
いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体の分子量範囲は、100万~700万の間である。
いくつかの実施形態において、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、カキ殻焼成粉末は3~10重量部であり、アクリル酸エステル系共重合体は0.8重量部~10重量部である。
いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体の構成成分は、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとを含む。
いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体100重量%に対して、メチルメタクリレートは50重量%~99重量%であり、ブチルアクリレートは1重量%~50重量%である。
いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体の構成成分は、ブチルメタクリレートを更に含む。
いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体100重量%に対して、メチルメタクリレートは50重量%~70重量%であり、ブチルアクリレートは10重量%~30重量%であり、ブチルメタクリレートは10重量%~30重量%である。
本開示内容のいくつかの実施形態は、カキ殻を提供することと、カキ殻を焼成し、カキ殻焼成粉末を得ることと、カキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及びアクリル酸エステル系共重合体を溶融し、プラスチックを得ることと、を含むプラスチックの製造方法を提供する。
いくつかの実施形態において、カキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及びアクリル酸エステル系共重合体を溶融する工程において、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、カキ殻焼成粉末は3重量部~10重量部であり、アクリル酸エステル系共重合体は0.8重量部~10重量部である。
本開示内容のいくつかの実施形態は、前記プラスチックを含むプラスチック製品を提供する。
いくつかの実施形態において、プラスチック製品は、パイプ、包装材、文房具、装飾材、建築材料、又はそれらの組み合わせである。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも例示的なものであり、且つ、保護される本開示内容に対する更なる解釈を提供することを意図していることが理解されたい。
本発明の上記と他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするために、図面の詳細な説明は以下の通りである。
本開示内容のいくつかの実施形態による、液体抗菌剤が添加されたプラスチックのエアスポット度合を示す。 本開示内容のいくつかの実施形態による、液体抗菌剤が添加されたプラスチックのエアスポット度合を示す。 本開示内容のいくつかの実施形態による、アクリル酸エステル系共重合体が添加されたプラスチックのエアスポット度合を示す。
以下に提供される異なる実施形態又は実施例は、本開示の標的となる異なる特徴を実施できることが理解される。特定の構成要素及び配列の実施例は、本開示を簡略化するために使用され、本開示を限定するものではない。もちろん、これらは単なる実施例であり、且つ制限的なものを意図するものではない。例えば、以下に述べた、第1の特徴が第2の特徴上に形成される説明は、両者が直接接触するか、又は両者が直接接触ではなく、その間に他の追加の特徴によって離間されることを含む。また、本開示は、複数の実施例において、数字及び/又は符号を繰り返して参照してもよい。これは、簡略化及び明確化のために繰り返されるのであり、繰り返しのそのものは検討される各実施例同士及び/又は配置同士の関係を意図しない。
本明細書で使用される用語は、一般に、当該技術分野及び使用されている文脈において一般的な意味を有する。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書で使用される実施例は、単に例示的なものであり、本開示内容又は任意の例示的な用語の範囲及び意味を限定するものではない。同様に、本開示内容は、本明細書で提供されるいくつかの実施形態に限定されない。
本明細書において第1、第2などの用語を使用して様々な構成要素を説明してもよいが、これらの構成要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、一つの構成要素と別の構成要素とを区別するために使用される。例えば、本実施形態の範囲から逸脱しない場合、第1の構成要素を第2の構成要素と称してもよく、同様に、第2の構成要素を第1の構成要素と称してもよい。
本明細書において、「及び/又は」という用語は、一つ又は複数の関連する、列記した項目の任意の、及び、全ての組み合わせを含む。
本明細書において、「含む」、「備える」、「有する」などの用語は、開放的な用語と理解されたい。すなわち、「含む」がそれに限定されないことを意味する。
本明細書において、「カキ殻」という用語は牡蠣殻とも呼ばれ、全てのカキ目カキ上科の二枚貝綱軟体動物の外殻を指す。
本明細書において、「phr」(Parts Per Hundred Resin)という単位は、未加工のゴム100重量部当たりに対する添加物の重量部を意味する。
前述のように、本発明は、カキ殻焼成粉末を含むプラスチック、プラスチック製品及びプラスチックの製造方法を提供し、ここで得られるプラスチックは、抗菌性を有するとともに、カキ殻焼成粉末によるエアスポット問題を改善する。
本開示内容のいくつかの実施形態において、カキ殻焼成粉末と、ポリ塩化ビニルと、アクリル酸エステル系共重合体と、を含むプラスチックを提供する。
いくつかの実施形態において、カキ殻焼成粉末は、900℃~1200℃の間の温度範囲(例えば、900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃、1150℃、1200℃、又は前述の任意区間の数値)でカキ殻を焼成してなるものである。いくつかの実施形態において、カキ殻内の炭酸カルシウムの重量%は、少なくとも94%(例えば、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、100%、又は前述の任意区間の数値)である。カキ殻焼成粉末内の酸化カルシウムの重量%は、少なくとも93%(例えば、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、100%、又は前述の任意区間の数値)である。いくつかの実施形態において、カキ殻焼成粉末は、カキ殻に対して、洗浄処理、粉砕処理、900℃~1200℃の間の温度範囲での焼成処理、及び研磨処理をそれぞれすることによって得られるものである。注意すべきなのは、カキ殻焼成粉末は、酸化カルシウムに富むため、酸素含有ラジカルを放出することができ、優れた抗菌能力を具備する。
いくつかの実施形態において、カキ殻焼成粉末の粒径は、7μm~500μmであり、例えば、7μm、8μm、9μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、又は前述の任意区間の数値である。
いくつかの実施形態において、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、カキ殻焼成粉末は3~10重量部(例えば、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、又は前述の任意区間の数値)であり、アクリル酸エステル系共重合体は0.8重量部~10重量部(例えば、0.8重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、又は前述の任意区間の数値)である。
いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体の構成成分は、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとを含む。いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又はスチレン基を有する単量体を含んでもよく、且つ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1~16(例えば、炭素数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16)である。いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体の分子量範囲は、100万~700万の間(例えば、100万、150万、200万、250万、300万、350万、400万、450万、500万、550万、600万、650万、700万、又は前述の任意区間の数値)である。いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体100重量%に対して、メチルメタクリレートの重量%は50%~99%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は前述の任意区間の数値)であり、ブチルアクリレートの重量%は1%~50%(例えば、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、又は前述の任意区間の数値)である。
一実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体は、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとを共重合して得られることができ、分子量範囲が100万~200万の間(例えば、100万、150万、200万、又は前述の任意区間の数値)であってもよい。一実施形態において、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとを共重合して得られるアクリル酸エステル系共重合体100重量%に対して、メチルメタクリレートの重量%は70%~90%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は前述の任意区間の数値)であり、ブチルアクリレートの重量%は10%~30%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、又は前述の任意区間の数値)である。一実施形態において、プラスチックにおいて、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとを共重合して得られるアクリル酸エステル系共重合体は、0.8重量部~10重量部(例えば、0.8重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、又は前述の任意区間の数値)である。
いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体は、ブチルメタクリレートを更に含む。
一実施形態において、アクリル酸エステル系共重合体は、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとブチルメタクリレートとを共重合して得ることができ、分子量範囲が350万~700万の間(例えば、350万、400万、450万、500万、550万、600万、650万、700万、又は前述の任意区間の数値)であってもよい。一実施形態において、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとブチルメタクリレートとを共重合して得られるアクリル酸エステル系共重合体100重量%に対して、メチルメタクリレートの重量%は50%~70%(例えば、50%、55%、60%、70%、又は前述の任意区間の数値)であり、ブチルアクリレートの重量%は10%~30%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、又は前述の任意区間の数値)であり、ブチルメタクリレートの重量%は10%~30%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、又は前述の任意区間の数値)である。一実施形態において、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとブチルメタクリレートとを共重合して得られるアクリル酸エステル系共重合体は、0.8重量部~10重量部(例えば、0.8重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、又は前述の任意区間の数値)である。
いくつかの実施形態において、プラスチックは、他の補助剤を更に含み、安定剤(例えば、有機スズ安定剤、バリウム亜鉛安定剤、又はそれらの組み合わせ)、内部滑剤(例えば、ステアリン酸アルコール、ステアリン酸アミン、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、又はそれらの組み合わせ)、外部滑剤(例えば、パラフィン、ステアリン酸系、ポリエチレンワックス系、酸化ポリエチレンワックス系、又はそれらの組み合わせ)を含むが、これらに限定されない。
本開示内容のいくつかの実施形態において、カキ殻を提供することと、カキ殻を焼成し、カキ殻焼成粉末を得ることと、カキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及びアクリル酸エステル系共重合体を溶融し、プラスチックを得ることと、を含むプラスチックの製造方法を提供する。
いくつかの実施形態において、カキ殻を焼成する工程は、900℃~1200℃の間の温度範囲、例えば900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃、1150℃、1200℃、又は前述の任意区間の数値で実行される。
いくつかの実施形態において、カキ殻を焼成する工程の前に、カキ殻に対して洗浄処理及び粉砕処理を行うことを更に含む。いくつかの実施形態において、カキ殻を焼成する工程の後に、カキ殻焼成粉末に対して研磨処理を行うことを更に含む。いくつかの実施形態において、カキ殻に対して、洗浄処理、粉砕処理、焼成処理、及び研磨処理をそれぞれ実行する。
いくつかの実施形態において、カキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及びアクリル酸エステル系共重合体を溶融する工程において、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、カキ殻焼成粉末は3重量部~10重量部(例えば、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、又は前述の任意区間の数値)であり、アクリル酸エステル系共重合体は0.8重量部~10重量部(例えば、0.8重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、又は前述の任意区間の数値)である。
本開示内容のいくつかの実施形態において、カキ殻焼成粉末と、ポリ塩化ビニルと、アクリル酸エステル系共重合体と、を含むプラスチックを備えるプラスチック製品を提供する。いくつかの実施形態において、プラスチック製品は、パイプ、包装材、文房具、装飾材、建築材料、又はそれらの組み合わせである。
以下、本開示内容のいくつかの実施形態を具体的に説明するために、カキ殻焼成粉末が添加されたプラスチックの抗菌性及び物性についての一連の測定手順及びその分析結果を、以下に提供する。
<カキ殻焼成粉末の調製>
まず、カキ殻を提供する。次に、カキ殻を洗浄した後、カキ殻をカキ殻粒子に粗砕した。その後、カキ殻粒子を900℃~1200℃の温度範囲で焼成した。次に、焼成後のカキ殻粒子を研磨処理して、平均粒径が500μm以下のカキ殻焼成粉末を得た。本来のカキ殻内の炭酸カルシウムは、焼成後、酸化カルシウムに変換することができ、本開示内容のいくつかの実施形態で使用されるカキ殻焼成粉末は、少なくとも93重量%以上の酸化カルシウムを含有する。
<プラスチックの抗菌性テスト>
酸化カルシウムに富むカキ殻焼成粉末を、ポリ塩化ビニルと共にプラスチックにした後、プラスチックの抗菌効果を分析するために、前述の方法で調製された、焼成されたカキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及び助剤(有機スズ、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸系、炭酸カルシウム、アクリル酸エステル系共重合体A(80重量%のメチルメタクリレートと20重量%のブチルアクリレートとを共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体、分子量:100万~200万))という前記材料を、下記表1のレシピに従い、バンク(bank)として均一に混合した後、バンクを190~200℃で均一に溶融させた。次いで、ダブルロール機を用いてバンクを可塑化させ、冷却した後、長さ120mm、幅70mm及び厚さ0.5mmのプラスチックの試験片(ここで使用された試験片は、可塑剤を添加せずに製造された硬質プラスチック試験片であり、可塑剤を添加して製造された軟質プラスチック試験片に比べて硬度が比較的高い。ここで硬質プラスチック試験片を代表として、後の性質テストを行う。以下、単にプラスチック試験片と略称する。)を製造した。
Figure 2022136995000002
次に、異なる含有量のカキ殻焼成粉末を含有するプラスチック試験片を用いて、抗菌性テストを行った。プラスチック試験片の抗菌性テストは、日本産業規格JIS Z 2801 (CNS15823と同様、プラスチック及び非多孔質表面抗菌性測定法)を用いる。具体的な工程として、まず、プラスチック試験片を75%のアルコールで洗浄した後、0.4ミリリットルの大腸菌培養液を接種し、次いで、被覆膜を被せてシャーレに入れて24時間培養した。培養終了後、プラスチック試験片を10ミリリットルの培養液で洗浄した。最後に、各群別のプラスチック試験片を洗浄した培養液を適当な培地に塗布し、16時間~24時間培養した後、各プラスチック試験片の培養液が対応する培地で生育したコロニー数を計数する。比較例1を対照として各実施例の抗菌率(%)を算出し、結果を下記の図2に示す。
Figure 2022136995000003
表2の結果から、カキ殻焼成粉末の添加量が1phrである場合、カキ殻焼成粉末を添加しない比較例に比べて、プラスチック試験片で測定された大腸菌のコロニー数が向上する。つまり、カキ殻焼成粉末の添加量が1phrのプラスチック試験片の抗菌率は、比較例に比べて向上していないことが分かる。しかしながら、カキ殻焼成粉末の添加量を3phr以上に上げると、99.9%の抗菌率を達成することができる。つまり、プラスチック試験片の抗菌率を99.9%に達成するためには、カキ殻焼成粉末の割合を少なくとも3phrにする必要がある。
<プラスチックの物性テスト>
焼成されたカキ殻焼成粉末が添加された後のプラスチック試験片の調製過程、及び、得られたプラスチック試験片の物性を分析するために、表3のレシピに従い、前述の表2と類似している方法で、バンクとして、焼成されたカキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及び助剤(有機スズ、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸系、炭酸カルシウム、アクリル酸エステル系共重合体A(80重量%のメチルメタクリレートと20重量%のブチルアクリレートとを共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体、分子量:100万~200万)、又はアクリル酸エステル系共重合体B(60重量%のメチルメタクリレートと20重量%のブチルアクリレートと20重量%のブチルメタクリレートとを共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体、分子量:350万~700万))を仕込み、混練したバンクをプラスチック試験片にする。バンク混練工程におけるプラスチック試験片の加工性、ロールから分離する際のプラスチック試験片の離型性、及び得られたプラスチック試験片の黄色度、エアスポット度合、熱変形温度(heat distortion temperature,HDT)及び曲げ弾性率(剛性)を分析し、結果を下記の表3に示す。
また、硬質プラスチック試験片に現行使用されている抗菌剤は比較的稀である。カキ殻焼成粉末の添加と現行のプラスチック試験片における抗菌剤の添加によるプラスチックの物性への影響を比較するために、表3において、従来の市販された、軟質プラスチックに添加した液体抗菌剤を使用したものを比較例(比較例2~比較例4)とした。
Figure 2022136995000004
<加工性>
加工性は、バンクを後加工に用いる難易度を反映する。バンクの混練時のバンクの転がり度合を分析することにより得られ、バンクの転がり度合が良い(点数が低い)ほど、加工性が良い。
表3に例示するように、プラスチック試験片に液体抗菌剤が添加された場合(表3の比較例2~比較例4)、液体抗菌剤の添加量が増加するにつれて、プラスチック試験片はロールに付着して分離できなくなるため、後加工に用いられることができず、加工性が失われた(表3の比較例3及び比較例4)。
プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末が添加された場合(表3の実施例1~実施例3)、カキ殻焼成粉末の添加量が増加するにつれて、バンクの転動がスムーズでなくなって、プラスチック試験片の加工性が低下した。しかしながら、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を1phrから2phrに上げると(表3の実施例3~実施例4)、バンクの転動の円滑性が向上し、プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末が添加された後の加工性が悪いという問題が改善された。また、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を上げることの代わりに、アクリル酸エステル系共重合体B(1phrのアクリル酸エステル系共重合体B、実施例5)を追加的に添加すると、カキ殻焼成粉末が添加された後のプラスチック試験片の加工性が悪いという問題を改善することもでき、ひいては、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を上げた群別(2phrのアクリル酸エステル系共重合体A、実施例4)よりも、より良好な加工性を達成した。更に、アクリル酸エステル系共重合体Bの添加量の向上につれて(2phrのアクリル酸エステル系共重合体B、実施例6)、加工性も向上する。
<離型性>
離型性は、プラスチック試験片と調製ツール(例えばロール)との分離程度を反映し、特に力を加えない自然な方式でプラスチック試験片をロールから分離する時のプラスチック試験片の長さを記録することにより得られる。プラスチック試験片の長さが短いほど、ロールに粘着しにくく、プラスチック試験片の離型性が良いことを示す。
表3に例示するように、プラスチック試験片に液体抗菌剤が添加された場合(表3の比較例2)、プラスチック試験片の長さが長くなり、離型性が著しく低下する。また、液体抗菌剤の添加量が増加するにつれて(表3の比較例3及び比較例4)、プラスチック試験片がロールに付着して離型性が極めて不良であり、ひいては、プラスチック試験片がロールから分離できなくなり、プラスチック試験片の長さによって離型性のデータが得られない。
プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末が添加された場合(表3の実施例1~実施例3)には、プラスチック試験片の離型性に影響しない。更に、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を1phrから2phrに上げると(表3の実施例3~実施例4)、プラスチック試験片の離型性を向上させることができる。また、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を上げることの代わりに、アクリル酸エステル系共重合体B(1phrのアクリル酸エステル系共重合体B、実施例5)を追加的に添加すると、プラスチック試験片の離型性を同様に向上させることができる。また、アクリル酸エステル系共重合体Bの添加量が向上するにつれて(2phrのアクリル酸エステル系共重合体B、実施例6)、離型性も向上する。
<黄色度>
黄色度は分光輝度計によりプラスチック試験片の色変化を分析して得られ、一般的に分子構造自体が環境因子(例えば、熱や光)の影響を受けて分子構造自体が変化して黄変するか、添加物がプラスチック原料(例えば、実施例におけるポリ塩化ビニル)と反応してプラスチック試験片が黄変する。従って、黄色度はプラスチック試験片の熱安定性を反映することができ、黄色度が高いほど一般的に熱安定性が悪くなる。
表3に例示するように、プラスチック試験片に液体抗菌剤が添加された場合(表3の比較例2)、プラスチック試験片の黄色度が著しく向上する。また、液体抗菌剤の添加量が増加するため(表3の比較例3及び比較例4)、プラスチック試験片がロールから分離できなくなり、プラスチック試験片を分析できなくなるため、液体抗菌剤の添加量を上げた群別の黄色度のデータが得られない。
プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末が添加された場合(表3の実施例1~実施例3)には、カキ殻焼成粉末の添加量が増加するにつれて、プラスチック試験片の黄色度は向上する。また、同じ添加量で、カキ殻焼成粉末(1phrのカキ殻焼成粉末、実施例1)と液体抗菌剤(1phrの液体抗菌剤、比較例2)の黄色度を比較すると、カキ殻焼成粉末が添加されたプラスチック試験片の方が黄色度の上昇幅が小さく、プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末を添加すると、液体抗菌剤を添加するものよりも熱安定性が良いことを示している。また、カキ殻焼成粉末及びアクリル酸エステル系共重合体Aが添加されたプラスチック試験片(1phrのアクリル酸エステル系共重合体A、表3の実施例2)に対して、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量が上がった(2phrのアクリル酸エステル系共重合体A、表3の実施例4)プラスチック試験片、又は、アクリル酸エステル系共重合体B(表3の実施例5~実施例6)を追加的に添加したプラスチック試験片のいずれも、黄色度に顕著な影響はなかった。
<エアスポット度合>
エアスポットは、プラスチック試験片の成形過程において、ガス抜けが不良であった場合である。表3のエアスポット度合は、目視で評価したものであり、点数が漸増するとエアスポット度合が増加する。
表3に例示するように、プラスチック試験片に液体抗菌剤が添加された場合(表3の比較例2)、プラスチック試験片のエアスポット度合が著しく向上する(図1A及び図1Bを参照)。また、液体抗菌剤の添加量が増加するため(表3の比較例3及び比較例4)、プラスチック試験片がロールから分離できなくなり、プラスチック試験片を分析できなくなるため、プラスチック試験片のエアスポット度合のデータが得られない。
プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末が添加された場合(表3の実施例1~実施例3)、カキ殻焼成粉末の添加量が増加するにつれて、エアスポット度合が向上する。更に、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を1phrから2phrに上げると(表3の実施例3~実施例4)、プラスチック試験片のエアスポット度合を低下させることができる。また、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を上げることの代わりに、アクリル酸エステル系共重合体B(1phrのアクリル酸エステル系共重合体B、実施例5)を追加的に添加すると、プラスチック試験片のエアスポット度合を同様に低下させることができるとともに、アクリル酸エステル系共重合体Bの添加量が増加する(2phrのアクリル酸エステル系共重合体B、実施例6)につれて、エアスポット度合も低下する(図2を参照)。また、有利なことに、1phrのアクリル酸エステル系共重合体Bだけで、アクリル酸エステル系共重合体Aを2phr添加した(実施例4)場合に類似している、エアスポットの低下効果を達成することができる。
<熱変形温度(HDT)>
熱変形温度は、プラスチック試験片の耐熱度を示すことができる。1.82MPaの圧力を印加するとき、プラスチック試験片が変形する特定の温度を検出することによって得られ(標準試験仕様 ASTM D648)、熱変形温度(HDT)が高いほど耐熱度が高いことを示す。
表3に例示したように、プラスチック試験片に液体抗菌剤が添加された場合(表3の比較例2)には、プラスチック試験片のHDTに影響しない。また、液体抗菌剤の添加量が増加するため(表3の比較例3及び比較例4)、プラスチック試験片がロールから分離できなくなり、プラスチック試験片を分析できなくなるため、液体抗菌剤の添加量を上げた群別のHDTのデータが得られない。
プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末が添加された場合(表3の実施例1~実施例3)には、カキ殻焼成粉末の添加量が増加するにつれて、プラスチック試験片のHDTは向上することができる。また、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量が上がるか(2phrのアクリル酸エステル系共重合体A、表3の実施例4)、又は、アクリル酸エステル系共重合体B(表3の実施例5~実施例6)を追加的に添加するにもかかわらず、プラスチック試験片のHDTに顕著な影響はなかった。
<曲げ弾性率(剛性)>
曲げ弾性率は、プラスチック試験片の剛性を示すことができる。プラスチック試験片を一定の距離をおいた2つの固定支点(fixed anvils)に置き、15mm/分の速度で上から下に向けて2つの支点のちょうど中央に対してサンプルが破断するか、或は一定の限界を超えるまで1点加圧(三点テスト法)するときの圧力値を記録して得られたものであり(標準試験仕様 ASTM D790)、曲げ弾性率が高いほど剛性が良いことを示す。
表3に例示したように、プラスチック試験片に液体抗菌剤が添加された場合(表3の比較例2)には、プラスチック試験片のHDTに影響しない。また、液体抗菌剤の添加量が増加するため(表3の比較例3及び比較例4)、プラスチック試験片がロールから分離できなくなり、プラスチック試験片を分析できなくなるため、液体抗菌剤の添加量を上げた群別の曲げ弾性率のデータが得られない。
プラスチック試験片にカキ殻焼成粉末が添加された場合(表3の実施例1~実施例3)には、カキ殻焼成粉末の添加量が増加するにつれて、プラスチック試験片の曲げ弾性率は向上する。また、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量が向上するか(2phrのアクリル酸エステル系共重合体A、表3の実施例4)、又は、アクリル酸エステル系共重合体B(表3の実施例5~実施例6)を追加的に添加するにもかかわらず、プラスチック試験片の曲げ弾性率に顕著な影響はなかった。
以上をまとめると、本開示内容のいくつかの実施形態は、カキ殻焼成粉末をプラスチックに添加し、3phr以上で添加すれば99.9%の抗菌率を達成できることを例示する。
従来の軟質プラスチックに使用されている液体抗菌剤を硬質プラスチックに使用すると、プラスチックの離型性が低下し、ひいてはロールに粘着してロールから分離できなくなり、ひどいエアスポットが発生し、黄変性が著しく向上し、熱変形温度(HDT)及び剛性(曲げ弾性率)は影響を受けない。
本開示内容のいくつかの実施例において、プラスチックの抗菌剤としてカキ殻焼成粉末を使用すると、硬質プラスチックでは、プラスチックの加工性及び離型性が影響を受けないだけでなく(反対に、液体抗菌剤が添加されたプラスチックは、離型性が低下し、更にロールに粘着することがある)、プラスチックの熱変形温度(HDT)及び剛性(曲げ弾性率)を向上させることができ、黄色度の向上の程度は液体抗菌剤が添加されたプラスチックよりも低く、熱安定性が良いことを示す。更に、本開示内容のいくつかの実施例において、カキ殻焼成粉末は、エアスポット度合を向上させるが、アクリル酸エステル系共重合体Aの添加量を上げるか、又は、プラスチックにアクリル酸エステル系共重合体Bを更に追加的に添加すると、カキ殻焼成粉末によるエアスポット度合を効果的に低減させ、加工性及び離型性を向上させることができることを示す。
本開示内容は、いくつかの実施形態によって細部を具体的に説明したが、他の実施形態も可能である。従って、特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に記載された実施形態に限定されるべきではない。

Claims (11)

  1. カキ殻焼成粉末と、ポリ塩化ビニルと、アクリル酸エステル系共重合体と、を含むプラスチック。
  2. アクリル酸エステル系共重合体の分子量範囲は、100万~700万の間である請求項1に記載のプラスチック。
  3. ポリ塩化ビニル100重量部に対して、前記カキ殻焼成粉末は3~10重量部であり、アクリル酸エステル系共重合体は0.8重量部~10重量部である請求項1に記載のプラスチック。
  4. アクリル酸エステル系共重合体の構成成分は、メチルメタクリレートとブチルアクリレートとを含む請求項1に記載のプラスチック。
  5. アクリル酸エステル系共重合体100重量%に対して、メチルメタクリレートは50重量%~99重量%であり、ブチルアクリレートは1重量%~50重量%である請求項4に記載のプラスチック。
  6. アクリル酸エステル系共重合体の構成成分は、ブチルメタクリレートを更に含む請求項4に記載のプラスチック。
  7. アクリル酸エステル系共重合体100重量%に対して、メチルメタクリレートは50重量%~70重量%であり、ブチルアクリレートは10重量%~30重量%であり、ブチルメタクリレートは10重量%~30重量%である請求項6に記載のプラスチック。
  8. カキ殻を提供することと、
    前記カキ殻を焼成し、カキ殻焼成粉末を得ることと、
    前記カキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及びアクリル酸エステル系共重合体を溶融し、プラスチックを得ることと、
    を含むプラスチックの製造方法。
  9. 前記カキ殻焼成粉末、ポリ塩化ビニル及びアクリル酸エステル系共重合体を溶融する工程において、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、前記カキ殻焼成粉末は3重量部~10重量部であり、アクリル酸エステル系共重合体は0.8重量部~10重量部である請求項8に記載の方法。
  10. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のプラスチックを含むプラスチック製品。
  11. パイプ、包装材、文房具、装飾材、建築材料、又はそれらの組み合わせである請求項10に記載のプラスチック製品。
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