JP2021175820A - 複合銅部材 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
銅部材の少なくとも一部の表面の上に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材であって、
前記銅部材の少なくとも一部の表面のRzが、0.20μm以上0.70μm以下である複合銅部材。
[2]
前記銅酸化物を含む層の内部に、
銅の腐食抑制剤、
前記銅の腐食抑制剤と、銅原子、銅イオン、水酸化銅もしくは酸化銅との結合体分子、
または銅の腐食抑制剤に含まれる原子
が含まれる、[1]に記載の複合銅部材。
[3]
前記銅の腐食抑制剤を含有する、pHが11.5〜14の酸化剤水溶液に銅部材を浸漬させることにより、前記銅部材の少なくとも一部の表面の上に銅酸化物を含む層を形成させた、[2]に記載の複合銅部材。
[4]
前記銅の腐食抑制剤が、銅原子、銅イオン、水酸化銅又は酸化銅と結合する、-OH基、エーテル基(−O−)、又はN原子を有する、[2]又は[3]に記載の複合銅部材。
[5]
前記銅の腐食抑制剤が、シラノール基、エポキシ基、グリシジル基、トリゾール環又はチアゾール環を有する、[2]又は[3]に記載の複合銅部材。
[6]
前記銅の腐食抑制剤が、無機系インヒビター又は有機系インヒビターである、[2]又は[3]に記載の複合銅部材。
[7]
前記有機系インヒビターが、ポリエポキシエーテル、ポリグリシジルエーテル、水溶性シランカップリング剤、キノリン、アミン、アミド及びテトラゾールからなる群から選択される、[6]に記載の複合銅部材。
[8]
前記ポリグリシジルエーテルが、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロルプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びそれらの塩からなる群から選択される、[7]に記載の複合銅部材。
[9]
前記水溶性シランカップリング剤はビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、又はコハク酸無水物官能基を有する、[7]に記載の複合銅部材。
[10]
前記水溶性シランカップリング剤が、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;
p−スチリルトリメトキシシラン;
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン;
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;
トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート;
3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン;
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;
3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;
それらの加水分解物;及び
それらの塩;
からなる群から選択される、[7]又は[9]に記載の複合銅部材。
[11]
前記無機系インヒビターが、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、オルトリン酸塩、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、クロム酸塩、亜硝酸塩、モリブテン酸塩及び鉄又は鉄イオンからなる群から選択される[6]に記載の複合銅部材。
[12]
前記ケイ酸塩及び前記メタケイ酸塩が、珪酸ナトリウムである、[11]に記載の複合銅部材。
[13]
前記有機系インヒビターが、ベンゾトリアゾール(BTA)及びその誘導体;ジオカルパミン酸及びその誘導体;チオ尿素、チオアセトアミド、チオセミカルバミド、チオフェノール、P−チオクレゾール、チオベンゾイン酸、ωメルカプトカルボン酸誘導体(RS(CH2)nCOOH(式中、n=1又は2;RはC1〜5のアルキル基))を含む硫黄化合物;6置換1,3,5−トリアジン2,4−ジチオール(R−TDT);及びそれらの塩からなる群から選択される、[6]に記載の複合銅部材。
[14]
前記ベンゾトリアゾールの誘導体が、トルトライアゾール(TTA);2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT);2,5−ジメルカプトチアゾール(DMTDA);ベンズイミダゾール(BIA);ベンズイミダゾールチオール(BIT);ベンズオキサゾールチオール(BOT);メチルベンゾチアゾール及びインドールの混合物;メルカプトチアゾリン;2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール(TT−LYK);及びそれらの塩からなる群から選択される、[13]に記載の複合銅部材。
[15]
前記銅酸化物を含む層の表面のRaが0.04μm以上である、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[16]
前記銅酸化物を含む層の表面のRzが0.25μm以上である、[1]〜[15]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[17]
前記銅酸化物を含む層の表面のRSmが200nm以上1200nm以下である、[1]〜[16]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[18]
前記複合銅部材の走査電子顕微鏡による断面の撮影像において、銅酸化物を含む層が形成された面に平行な方向で測ったときの3.8μmあたり、長さ50nm以上1500nm以下の凸部が20個以上存在する、[1]〜[17]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[19]
前記銅酸化物を含む層の表面の、20GHzの交流電流に対する比導電率が標準銅板(比導電率5.8×107S/mの無酸素銅板)の95%以上である、[1]〜[18]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[20]
前記銅酸化物を含む層を除去した後の銅部材表面の、20GHzの交流電流に対する比導電率が標準銅板(比導電率5.8×107S/mの無酸素銅板)の95%以上である、[1]〜[19]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[21]
消しゴム(A.W.FABER−CASTELL社製、N6−W825R)に、100gの荷重をかけ、摺動速度65mm/sec、摺動距離25.4mmで、前記銅酸化物を含む層の上を3回摺動させたとき、摺動させた部分の表面について、摺動させる前の前記部分の表面と摺動させた後の前記部分の表面の色差(ΔE*ab)が50以下である、[1]〜[20]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[22]
前記銅酸化物を含む層の表面の任意の5点における明度L*の値の標準偏差が、5以下である、[1]〜[21]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[1]に記載の複合銅部材の製造方法であって、
銅の腐食抑制剤を含有する、pHが11.5〜14の酸化剤水溶液で酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程
を含む、複合銅部材の製造方法。
[A2]
前記酸化剤水溶液で酸化処理する工程の前に行われる、pH9以上のアルカリ溶液で処理する工程を含む、[A1]に記載の製造方法。
[A3]
前記銅の腐食抑制剤が、前記酸化剤水溶液中で、銅原子、銅イオン、水酸化銅又は酸化銅と結合する、-OH基、エーテル基(−O−)、又はN原子を有する化合物として存在する、[A1]又は[A2]に記載の製造方法。
[A4]
前記銅の腐食抑制剤が、前記酸化剤水溶液中で、シラノール基、エポキシ基、グリシジル基、トリゾール環又はチアゾール環を有する化合物として存在する、[A1]又は[A2]に記載の製造方法。
[A5]
前記銅の腐食抑制剤が、無機系インヒビター又は有機系インヒビターである、[A1]又は[A2]に記載の製造方法。
[A6]
前記有機系インヒビターが、ポリエポキシエーテル;ポリグリシジルエーテル;水溶性シランカップリング剤;並びにキノリン、アミン、アミド、テトラゾール及びそれらの塩からなる群から選択される、[A5]に記載の製造方法。
[A7]
前記ポリグリシジルエーテルが、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロルプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びそれらの塩からなる群から選択される、[A6]に記載の製造方法。
[A8]
前記水溶性シランカップリング剤はビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、又はコハク酸無水物官能基を有する、[A6]に記載の製造方法。
[A9]
前記水溶性シランカップリング剤が、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;
p−スチリルトリメトキシシラン;
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン;
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;
トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート;
3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン;
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;
3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;
それらの加水分解物;及び
それらの塩からなる群から選択される、[A6]又は[A8]に記載の製造方法。
[A10]
前記無機系インヒビターが、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、オルトリン酸塩、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、クロム酸塩、亜硝酸塩、モリブテン酸塩及び鉄又は鉄イオンからなる群から選択される[A5]に記載の製造方法。
[A11]
前記ケイ酸塩及び前記メタケイ酸塩が、珪酸ナトリウムである、[A10]に記載の製造方法。
[A12]
前記有機系インヒビターが、ベンゾトリアゾール(BTA)及びその誘導体;ジオカルパミン酸及びその誘導体;チオ尿素、チオアセトアミド、チオセミカルバミド、チオフェノール、P−チオクレゾール、チオベンゾイン酸、ωメルカプトカルボン酸誘導体(RS(CH2)nCOOH(式中、n=1又は2;RはC1〜5のアルキル基))を含む硫黄化合物;6置換1,3,5−トリアジン2,4−ジチオール(R−TDT);及びこれらの塩からなる群から選択される、[A5]に記載の製造方法。
[A13]
前記ベンゾトリアゾールの誘導体が、トルトライアゾール(TTA);2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT);2,5−ジメルカプトチアゾール(DMTDA);ベンズイミダゾール(BIA);ベンズイミダゾールチオール(BIT);ベンズオキサゾールチオール(BOT);メチルベンゾチアゾール及びインドールの混合物;メルカプトチアゾリン;2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール(TT−LYK);及びこれらの塩からなる群から選択される、[A12]に記載の製造方法。
==関連文献とのクロスリファレンス==
本出願は、2020年4月27日付で出願した日本国特許出願2020−78603に基づく優先権を主張するものであり、当該基礎出願を引用することにより、本明細書に含めるものとする。
本発明の一実施態様は、銅部材の少なくとも一部の表面の上に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の製造方法である。
銅部材とは、構造の一部となる、Cuを主成分として含む材料であり、電解銅箔や圧延銅箔およびキャリア付き銅箔等の銅箔、銅配線、銅板、銅製リードフレームなどが含まれるが、これに限定されない。銅は純度が99.9質量%以上の純銅であることが好ましく、タフピッチ銅、脱酸銅、無酸素銅を含むことがより好ましく、含有酸素量が0.001質量%〜0.0005質量%の無酸素銅を含むことがさらに好ましい。
Rzとは、基準長さlにおいて、輪郭曲線(y=Z(x))の山の高さZpの最大値と谷の深さZvの最大値の和を表す。
RzはJIS B 0601:2001(国際基準ISO13565−1準拠)に定められた方法により算出できる。
この工程において、銅部材表面を酸化剤水溶液で酸化して、銅酸化物を含む層を形成するとともに、表面に微細な凹凸を形成する。酸化処理は片面処理であっても両面処理であってもよい。
脱脂処理の方法は特に限定されないが、銅部材を液温40〜60℃の水酸化ナトリウム水溶液(30〜50g/L)に0.5〜2分浸漬させて行うことが好ましい。
酸洗浄の方法は特に限定されないが、銅部材を液温20〜30℃の硫酸水溶液(5〜20重量%)に1〜3分浸漬させて行うことが好ましい。
アルカリ処理の方法は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10g/L、より好ましくは1〜2g/Lのアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いて、30〜50℃で、0.5〜2分間程度処理すればよい。アルカリ処理に用いるアルカリ水溶液は、pH8、pH9、又はpH10以上であることが好ましい。
酸化反応条件は特に限定されないが、酸化剤水溶液の液温は40〜95℃であることが好ましく、45〜80℃であることがより好ましい。反応時間は0.5〜30分であることが好ましく、1〜10分であることがより好ましい。酸化剤水溶液のpHは、アルカリ性であればよいが、73℃で、pH11.5以上、12.0以上、12.5以上又は13以上が好ましく、pH14.0以下、又はpH13.5以下が好ましい。pHの好ましい範囲は測定温度に依存するため、当業者が適宜実験し、設定できる。
銅の腐食抑制剤は、無機系インヒビター又は有機系インヒビターに分類され、また形成される皮膜によって、酸化皮膜型インヒビター、沈殿皮膜型インヒビター、及び吸着皮膜型インヒビターに分類される。
銅の腐食抑制剤は、水溶性が好ましく、例えばポリグリセロールポリグリシジルエーテルの場合、73℃で、酸化剤水溶液中、0.20g/L以上、0.50g/L以上、0.75g/L以上、1.00g/L以上、1.50g/L以上、2.00g/L以上又は2.50g/L以上含まれていることが好ましく、4g/L以下、3.5g/L以下又は3g/L以下含まれることが好ましい。
珪酸ナトリウムは、無水珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO2)と、水和珪酸ナトリウム(Na2O・nSiO2・mH2O)を含み、通常n=0.5〜4.0である。水ガラス又は珪酸ソーダと呼ばれる珪酸ナトリウム水溶液を酸化剤水溶液に添加してもよい。
(1)ベンゾトリアゾール(BTA)及びその誘導体(たとえば、トルトライアゾール(TTA);2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT);2,5−ジメルカプトチアゾール(DMTDA);ベンズイミダゾール(BIA);ベンズイミダゾールチオール(BIT);ベンズオキサゾールチオール(BOT);メチルベンゾチアゾール及びインドールの混合物;メルカプトチアゾリン;及び2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール(TT−LYK));
(2)ジオカルパミン酸及びその誘導体(たとえば、ジメチルジチオカルバメート;ジエチルジチオカルバメート;N−メチルジチオカルバメート;エチレンービスジチオカルバメート);
(3)チオ尿素、チオアセトアミド、チオセミカルバミド、チオフェノール、P−チオクレゾール、チオベンゾイン酸、ωメルカプトカルボン酸誘導体(RS(CH2)nCOOH(式中、n=1又は2;RはC1〜5のアルキル基))を含む硫黄化合物;
(4)6置換1,3,5−トリアジン2,4−ジチオール(R−TDT);
及びそれらの塩が含まれる。
(1)水溶性シランカップリング剤;
(2)キノリン、アミン(たとえばオクタデシアルアミンやジシクロヘキシルアミン)、アミド、テトラゾール及びその誘導体(たとば、3−アミノ1,2,4トリアゾール)、及びそれらの塩;
(3)水溶性の、1分子あたり単官能又は多官能(2、3、4又は5官能以上)のエポキシ基又はグリシジル基をもつ、エポキシモノマー又はグリシジルモノマー(たとえばポリエポキシエーテルやポリグリシジルエーテル)、及びそれらの塩が含まれる。
有機系の官能基は、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基又は酸無水物官能基等を有する官能基(たとえば、「エポキシ基を有する官能基」にはグリシジル基が含まれる)であることが好ましい。
シランカップリング剤は、有機系の官能基の種類により、
1)ビニル基を有するシランカップリング剤(たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン);
2)エポキシ基を有するシランカップリング剤(たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン);
3)スチリル基を有するシランカップリング剤(たとえば、p-スチリルトリメトキシシラン);
4)メタクリル基を有するシランカップリング剤(たとえば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン);
5)アクリル基を有するシランカップリング剤(たとえば3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン);
6)アミノ基を有するシランカップリング剤(たとえば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン);
7)イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤(たとえばトリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート);
8)ウレイド基を有するシランカップリング剤(たとえば、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン);
9)メルカプト基を有するシランカップリング剤(たとえば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン);
10)イソシアネート基を有するシランカップリング剤(たとえば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン);
11)酸無水物官能基を有するシランカップリング剤(たとえばコハク酸無水物官能基を有する、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物);
などに分類される。
水溶性シランカップリング剤はアルカリ条件下、たとえばpH11.5〜14の条件において、73℃で酸化剤水溶液に0.01g/L以上、0.1g/L以上、0.5g/L以上、又は1g/L以上溶解できるシランカップリング剤が好ましい。
特に限定しないが、水溶性シランカップリング剤には、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;
p−スチリルトリメトキシシラン;
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン;
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;
トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート;
3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン;
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;
3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物;
それらの加水分解物;及び
それらの塩が含まれる。
水溶性の単官能又は多官能のエポキシポリマー又はグリシジルポリマーには、ポリグリシジルエーテル(たとえば、グリセロールポリエポキシエーテル、トリメチロルプロパンポリエポキシエーテル、ペンタエリスリトルポリエポキシエーテル、ポリグリセロールポリエポキシエーテル、及びソルビトールポリエポキシエーテル)やポリグリシジルエーテル(たとえば、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロルプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、及びソルビトールポリグリシジルエーテル)が含まれる。
銅の腐食抑制剤は、酸化剤水溶液中で、シラノール基、エポキシ基、グリシジル基、トリゾール環又はチアゾール環を有する分子となることが好ましい。
ベンゾトリアゾール(BTA)及びその誘導体は、トリアゾール環やチアゾール環などを構成するN原子と銅イオンが配位結合を形成して高分子化する。
水溶性シランカップリング剤は、アルコキシリル基(−Si(OR)n)が酸化剤水溶液中で加水分解され、シラノール基(−Si(OH)n)になり、シラノール基が銅と反応してSi−O−金属(M)結合を形成する。
ポリエポキシエーテル及びポリグリシジルエーテルは、エポキシ基又はグリシジル基が銅と反応する。
銅の腐食抑制剤の多くは、これらの官能基を有するため、銅原子、銅イオン、水酸化銅又は酸化銅との間で結合体分子を生成する。銅の腐食抑制剤1分子中、これらの官能基又は原子が1、又は複数(2、3、4、5又は6以上)含まれることが好ましい。
1)還元剤(たとえば、ジメチルアミンボラン(DMAB)、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等)を用いて、酸化処理により形成された銅酸化物を含む層に含まれる銅酸化物を部分的に還元する還元処理;
2)溶解剤(たとえば、エチレンジアミン四酢酸、ジエタノールグリシン、L−グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸、3−ヒドロキシ−2、2’−イミノジコハク酸ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、アスパラギン酸ジ酢酸4ナトリウム、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸ジナトリウム、グルコン酸ナトリウムなどのキレート剤)により、酸化処理により形成された銅酸化物を含む層を部分的に溶解する溶解処理;
3)酸化処理により形成された銅酸化物を含む層の上に、金属(たとえばSn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Au、Pt、又はこれらの合金)のめっき層を形成するめっき処理(電解めっき、無電解めっき、真空蒸着、化成処理等を含む);
4)酸化処理により形成された銅酸化物を含む層の上に、カップリング処理層(シランカップリング剤等含む)を形成するカップリング剤処理や防錆剤層(ベンゾトリアゾール類等を含む)を形成する防錆処理;
などの表面処理を行ってもよい。
本発明の一実施態様は、銅部材の少なくとも一部の表面の上に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材である。
ここで、銅酸化物を含む層の下に存在する銅部材の表面の粗度は、複合銅部材から、銅酸化物層を含む層を溶解して除去してから測定することができる。たとえば希硫酸水溶液は、銅酸化物を含む層のみを溶解するが、銅部材の銅に対しては殆ど溶解しない。それ故、複合銅部材を室温(20度〜30度)で、希硫酸水溶液(たとえば10%重量%)に30秒〜2分浸漬させることにより、銅酸化物を含む層を除去した後の銅部材の表面の粗度を、銅酸化物を含む層の下に存在する銅部材の表面の粗度として評価できる。
銅酸化物を含む層の下に存在している銅部材の表面のRzは、0.10μm以上、0.15μm以上、又は0.20μm以上が好ましく、0.70μm以下、0.65μm以下、0.60μm以下、0.55μm以下、0.50μm以下、0.45μm以下、0.40μm以下、0.35μm以下、又は0.30μm以下が好ましい。
高周波に対する表皮深さ(skin depth:表皮に比べ、流れる電流が約37%に低下する厚さ)よりRzが小さいことがより好ましい。表皮深さは無酸素銅(比導電率:5.8×107S/m)の場合、1GHzの交流電流に対しては約2μm、10GHzの交流電流に対しては約0.7μm、20GHzの交流電流に対しては約0.5μm、40GHzの交流電流に対しては約0.35μmである。Rzの値が表皮深さより小さい場合、導電体の表面形状による表皮効果への影響は極めて小さくなり、表面の粗さの横方向のパラメーターの影響は少ない。従って特に限定する必要はないが、銅酸化物を含む層の下に存在している銅部材の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、2000nm以下、1500nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、600nm以下、550nm以下、450nm以下、又は350nm以下であってよく、100nm以上、200nm以上又は300nm以上であってもよい。
RSmとは、ある基準長さ(lr)における粗さ曲線に含まれる1周期分の凹凸が生じている長さ(すなわち輪郭曲線要素の長さ:Xs1〜Xsm)の平均を表し、以下の式で算出される。
算術平均粗さ(Ra)とは基準長さlにおいて、以下の式で表される輪郭曲線(y=Z(x))におけるZ(x)(すなわち山の高さと谷の深さ)の絶対値の平均を表す。
銅酸化物を含む層の表面のRaは0.10μm以下、0.09μm以下、又は0.80μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、0.02μm以上、0.03μm以上又は0.04μm以上であることが好ましい。
銅酸化物を含む層の表面のRzは1.00μm以下、0.90μm以下、又は0.80μm以下であることが好ましく、0.10μm以上、0.15μm以上、0.20μm以上又は0.3μm以上であることが好ましい。
銅酸化物を含む層の表面のRSmは、1200nm以下、700nm以下、650nm以下、600nm以下、550nm以下、450nm以下、又は350nm以下が好ましく、100nm以上、200nm以上又は300nm以上が好ましい。
たとえば、20GHzの交流電流に対する表面の比導電率は、銅酸化物を含む層を除去前であっても除去後であっても、標準銅板(比導電率5.8×107S/mの無酸素銅板)の95%以上であることが好ましい。表面の比導電率は、JIS R1627(1996)に準拠して、1誘電体円柱共振器2モード法(1誘電体共振器法)により測定することができる。
実施例1〜7、9、比較例1〜7、10は古河電工株式会社製の銅箔(DR−WS、厚さ:18μm)の光沢面(反対面と比較したときに平坦である面:Rz=0.3μm)を評価面として用いた。実施例8は、UACJ製箔社製の圧延銅箔(ES箔、厚さ:18μm;Rz=0.65μm)を用いて、評価は全て圧延方向に平行な面で行った。比較例8は銅めっきにより粗化処理された市販されているH-VLP(Hyper-Very Low Profile)銅箔(Rz=0.9μm)の粗化処理面、比較例9は銅めっきにより粗化処理されたVLP(Very Low Profile)銅箔(Rz=1.7μm)の粗化処理面をそのまま評価面として用いた。
実施例1〜9及び比較例1〜7および比較例10の銅箔を、液温50℃、40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬した後、水洗を行った。
アルカリ脱脂処理を行った銅箔を、液温25℃、10重量%の硫酸水溶液に2分間浸漬した後、水洗を行った。
その後、実施例1〜9、比較例2〜7の銅箔は、水酸化ナトリウム1.2g/Lの水溶液(pH10.5)に40℃で1分間浸漬した後、水洗して乾燥させた。比較例10の銅箔は、硫酸1.3%;過酸化水素0.8%の水溶液に30度で1分間浸漬してエッチング後、水洗して乾燥させた。
前処理を行った銅箔を、酸化剤水溶液に浸漬して両面の酸化処理を行った。
実施例1は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム4g/L;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製;デナコール EX−521)1g/Lの水溶液(pH12.3)を用いた。
実施例2,6,7,8は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/L;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル1g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
実施例3は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/L;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル2g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
実施例4は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/L;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越シリコーン社製;KBM9659)1g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
実施例5は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/L;水ガラス(珪酸ナトリウム含量52〜57重量%(和光1級)、和光純薬工業株式会社製)1g/Lの水溶液(pH13.3)を用いた。
実施例9は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム45g/L;水酸化カリウム12g/L;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製;KBM403)2g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
比較例2は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/Lの水溶液(pH13.5)を用いた。
比較例3は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル1g/Lの水溶液(pH11.4)を用いた。
比較例4は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/L;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル0.1g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
比較例5は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/L;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル5g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
比較例6は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/L;難溶性の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製;KBE−9007)0.2g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
比較例7は、酸化剤水溶液として、亜塩素酸ナトリウム58g/L;水酸化カリウム20g/Lの水溶液(pH13.4)を用いた。
実施例1〜6、8、9及び比較例2、3、5、6は酸化剤水溶液に73℃で2分間浸漬し、実施例7及び比較例4は酸化剤水溶液に73℃で4分間浸漬し、比較例7は酸化剤水溶液に73℃で1分間浸漬した。その後水洗して、乾燥させた。
酸化剤水溶液中に銅の腐食抑制剤を添加することで、銅箔のエッチング量を制御し、かつスレ耐性があり、色ムラの少ない均一な銅酸化物を含む層を銅箔表面に形成することが可能になる。
(1)Ra及びRz
共焦点走査電子顕微鏡 OPTELICS H1200(レーザーテック株式会社製)を用いて実施例及び比較例の試験片の表面形状を測定し、JIS B 0601:2001に定められた方法によりRa及びRzを算出した。測定条件として、スキャン幅は100μm、スキャンタイプはエリアとし、Light sourceはBlue、カットオフ値は1/5とした。オブジェクトレンズはx100、コンタクトレンズはx14、デジタルズームはx1、Zピッチは10nmの設定とし、3箇所のデータを取得し、それらの平均値を各実施例及び比較例のRa、Rzとした。
(2)RSm
実施例及び比較例の試験片のRSmを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、JIS R 1683:2007に準じて算出した。
装置:日立ハイテクサイエンス製
プローブステーション AFM5000II
接続機種:AFM5300E
カンチレバー:SI−DF40
AFM5000IIにおける自動設定機能を使用して設定
(振幅減衰率、走査周波数、Iゲイン、Pゲイン、Aゲイン、Sゲイン)
走査領域:5μm角
画素数:512 x 512
測定モード:DFM
測定視野:5μm
SISモード:使用しない
スキャナ:20μmスキャナ
測定方法:3次補正を行い計測した。
◆RSm→平均断面解析(lr=5μm)
(3)凸部の数
共焦点走査電子顕微鏡コントローラ MC−1000A(レーザーテック株式会社製)を用い、実施例及び比較例の試験片の凸部の高さ及び数を測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)画像において、凸部を挟んで隣り合う凹部の極小点を結んだ線分の中点と、凹部の間にある凸部の極大点との距離を凸部の高さとした。5個の独立した場所についてのSEM画像を用い、1画像につき3箇所測定して、その平均値を計算し、凸部の平均の高さとした。次に、5個のSEM画像で、3.8μm当たり、高さが50nm以上1500nm以下の凸部の数を数え、5個の平均値を算出した。元の銅部材にうねりがある場合は元の部材のうねりを平面に延ばした場合の長さを測定し、3.8μmあたりの長さに換算した。
表面の比導電率の評価は、SUM―ROD Ver. 7.0(サムテック製)を用いてJIS R1627(1996)に準拠して行った。1誘電体円柱共振器2モード法(1誘電体共振器法)により行った。表面の比導電率は標準銅板(比導電率5.8×107S/mの無酸素銅板)に対する比導電率で求められ、本試験では比誘電率および誘電正接は一定であるため比導電率は銅箔による影響のみであると言える。電気力線は電極表面上を通るため、銅の表面状態による比導電率への影響を確認することが可能である。試料は所定形状(直径40mm、厚18μm)として、共振周波数は20GHzになる様に設定した。
(5)高周波特性
実施例及び比較例の試験片にプリプレグ NC0207(ナミックス社製 厚さ25μm)を4枚重ねて貼り付け、真空プレス機を用いて1.0MPaになるまで加圧し、その後200℃で、60分保持することにより熱圧着し、長さ100mmのマクロストリップラインを作製した。作製したマクロストリップラインを用いて、高周波帯域における伝送損失を測定した。伝送特性は、0〜40GHz帯域の測定に適する公知のストリップライン共振器法を用いて測定した。具体的には、S21パラメーターを、以下の条件でカバーレイフィルムなしの状態で測定した。
測定条件:マイクロストリップ構造;基材プリプレグ アドフレマNC0207;回路長さ200mm;導体幅280μm;導体厚さ28μm;基材厚さ100μm;特性インピーダンス50Ω
高周波特性が−0.94以上を〇、−0.94未満を×と評価した。
実施例及び比較例の試験片に対し、プリプレグ NC0207(ナミックス社製 厚さ25μm)を1枚貼り付け、真空プレス機を用いて1.0MPaになるまで加圧し、その後200℃の下、60分保持することにより熱圧着し、積層体試料を得た。これらの積層体試料に対して90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)に準じて、複合銅箔をプリプレグから引き剥がして、ピール強度を測定した。
実施例及び比較例の試験片の評価面の上を、消しゴム(A.W.FABER−CASTELL社製、N6−W825R)に、100gの荷重をかけ、摺動速度65mm/sec、摺動距離25.4mmで、3回摺動させた。摺動前後の評価面の色(L*、a*、b*)を測定後、得られた値から、以下の式に従い、ΔE*abを算出した。
ΔE*ab = [(ΔL*)2 + (Δa*)2 + (Δb*)2 ]1/2
実施例及び比較例の80mmx120mmの試験片を用意し、任意の領域5点の明度(L*)を測定し、5点間の明度の標準偏差を算出した。
実施例及び比較例の試験片を、銅酸化物層除去剤(10重量%の硫酸水溶液)に25度で1分間浸漬して、銅酸化物を含む層を除去した。浸漬後、水洗して乾燥させた。
除去処理後の試験片に対して、「2.銅酸化物を含む層を除去する前の複合銅箔の評価」と同様の方法により、Ra、Rz、RSm及び表面導電率を算出した。
比較例1は、樹脂基材とのピール強度が小さかった。比較例2は、銅酸化物を含む層のRzは実施例7と同等であるが、導電体である銅部分のRzは大きくて表面の比導電率が悪く、高周波特性も悪く、そしてスレ耐性も低かった。比較例3は、樹脂基材とのピール強度が小さく、色ムラも大きかった。比較例4は、銅部分のRzが大きくて表面の比導電率が悪く、スレ耐性も低かった。比較例5は、RSmが大きて樹脂基材とのピール強度が小さかった。比較例6は銅部分のRzが大きく、スレ耐性が低く、色ムラも大きかった。比較例7は、樹脂基材とのピール強度が小さく、色ムラも大きかった。比較例8〜10は銅部分のRzが大きくて表面の比導電率が悪く、高周波特性も悪かった。それに対して実施例1〜9は、導電体である銅部分の表面が平滑であるため良好な比導電率と高周波特性を示し、銅酸化物の形成により良好な樹脂基材とのピール強度を示した。
以上のように本発明の実施例においては銅酸化物を含む層の表面粗さではなく、銅酸化物を含む層の下に存在している銅部分の粗度を制御することで表面の比導電率と高周波特性が良好になる。
Claims (1)
- 複合銅部材。
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