JP2021171996A - 円筒状印刷版原版、円筒状印刷版、およびそれらの製造方法 - Google Patents

円筒状印刷版原版、円筒状印刷版、およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インキ汚れを抑制し、かつ、耐久性に優れた円筒状印刷版原版およびそれを用いた円筒状印刷版を提供すること。【解決手段】少なくとも基材、インキ反発層がこの順に設けられた円筒状印刷版原版であって、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版原版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙を少なくとも1つ有し、前記インキ反発層が前記間隙を除く円筒状印刷版原版の最表面に連続的に存在する円筒状印刷版原版。【選択図】なし

Description

本発明は、円筒状印刷版原版、円筒状印刷版、およびそれらの製造方法に関する。
印刷市場では、飲料・中食市場の拡大、多品種・小ロット化の進行、デザインの多様化などを受けて、包装材料およびラベル分野が成長している。これらの分野では、主にロール・トゥ・ロール方式による連続印刷によって印刷物が製造されており、一般的にグラビア印刷、フレキソ印刷、樹脂凸版印刷などが用いられる。
製版工程時間が短く、より高精細な印刷が可能な水なし平版印刷が包装材料およびラベル分野においても提案されている。しかし、水なし平版印刷版がシート状であるため、印刷機シリンダーの円周方向に取り付ける際、シリンダーの外周長さよりも平版印刷版が小さい場合、原反に印刷された絵柄間に余白ができてしまい、トリミングなどの後加工が煩雑になるという課題があった。一方、シリンダーの外周長さよりも平版印刷版が大きく、シリンダーギャップ(溝)に印刷版をくわえさせ固定する場合、そのくわえ部の間隙にインキが付着することで、間隙を模った線状の汚れを印刷物に発生させるという課題があった。
これらの課題に対し、例えば特許文献1では、インキが付着する間隙がそもそもできないように、円筒状母材上にシリコーン樹脂層を継ぎ目なく形成し、その上にインキ着肉性のレジストパターン部を設けた、シリコーン下層型の円筒状水なし印刷版が開示されている。
国際公開第2017/077825号
しかしながら、特許文献1に開示されるようなシリコーン下層型の円筒状水なし印刷版では、表面自由エネルギーの低いシリコーン樹脂層の上にインキ着肉性パターンをレジスト形成するため、印刷中にシリコーン樹脂層とインキ着肉性パターンとの界面で剥離が起こり易く、印刷物の製造において耐久性が低いという課題があった。
そこで、本発明は、インキ汚れを抑制し、かつ、耐久性に優れた円筒状印刷版原版およびそれを用いた円筒状印刷版を提供することを目的とする。
本発明に係る円筒状印刷版原版は、少なくとも基材、インキ反発層がこの順に設けられた円筒状印刷版原版であって、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版原版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙を少なくとも1つ有し、前記インキ反発層が前記間隙を除く円筒状印刷版原版の最表面に連続的に存在する円筒状印刷版原版である。
本発明によれば、インキ汚れを抑制し、かつ、耐久性に優れた円筒状印刷版原版およびそれを用いた円筒状印刷版を得ることができる。
(A)水なし平版印刷版原版、(B)円周方向におけるインキ反発層の最表面の長さLrと、円周方向における基材のインキ反発層と反対側の最表面の長さLsがLr>Lsを満たす水なし平版印刷版原版の一例を示す模式断面図である。 (A)印刷版原版の端部が折り曲げられ間隙が形成された円筒状印刷版原版、(B)間隙を有する円筒状印刷版原版の一例を示す模式断面図である。 円周方向におけるインキ反発層の最表面の長さLrと、円周方向における前記基材のインキ反発層と反対側の最表面の長さLsがLr>Lsを満たす、円筒状印刷版原版の一例を示す模式断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
(円筒状印刷版原版)
本発明に係る円筒状印刷版原版は、少なくとも基材、インキ反発層がこの順に設けられた円筒状印刷版原版であって、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版原版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙を少なくとも1つ有し、前記インキ反発層が前記間隙を除く円筒状印刷版原版の最表面に連続的に存在するものである。「間隙」とは、円筒状印刷版原版の円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向と垂直な方向の全長の50%以上の長さ、かつ、深さが0.1mm以上を有する領域をいう。なお、本発明において「間隙」とは、円筒状印刷版原版の厚み以下の深さを有する領域である凹部を含むものとする。「連続的に存在する」とは、円筒状印刷版原版の最表面において、インキ反発層が途切れることなく存在していることをいう。間隙を除く円筒状印刷版原版の最表面にインキ反発層が連続的に存在することによって、インキ汚れを抑制する効果を奏する。インキ反発層が円筒状印刷版原版の最表面において円周方向に途切れることなく存在していれば、インキ反発層は間隙を除く円筒状印刷版原版の最表面全面に存在していても、最表面の一部に存在していてもよい。インキ反発層が間隙を除く円筒状印刷版原版の最表面全面において連続的に存在することがより好ましい。
以下、本発明に係る円筒状印刷版原版を図面に基づいて説明する。
本発明に係る円筒状印刷版原版は、水なし平版印刷版原版100を円筒状に成形することで作製できる。水なし平版印刷版原版100は、図1(A)に示すよう、少なくとも基材1およびインキ反発層4をこの順に有する。基材1とインキ反発層4の間に、有機層2および感熱層3を任意に設けてもよい。図2(A)に示すように、水なし平版印刷版原版100の端部を基材1が内側となるように折り込み、折り込んだ水なし平版印刷版原版100の端部のインキ反発層4同士が接し、間隙5ができるように円筒状に成形することで、円筒状印刷版原版300を作製することができる。
このような円筒状印刷版原版300は、例えば、プレートシリンダーに備えられたギャップ(溝)に、折り曲げた版端部を差し込み、インキ反発層4が最表面になるように、プレートシリンダーに巻き付けて作製することもできる。ギャップが2箇所あれば、折り曲げた版の両端部をそれぞれのギャップに差し込むことで、プレートシリンダーに巻き付けることができ、ギャップが1箇所であれば、折り曲げた版の両端部をまとめて1箇所のギャップに差し込むことで、プレートシリンダーに巻き付けることができる。
水なし平版印刷版を円筒状に成形すると、くわえ部に幅の狭い間隙が生じるため、インキローラーを円筒状印刷版の版面に接触させインキを供給する際に、間隙にインキが埋まり、意図せず間隙を模った線状汚れが発生する。
本発明では、間隙の円周方向の長さ、円周方向と垂直な方向の長さ、および深さによって、線状汚れが低減することを見出し、円筒状印刷版にインキローラーを接触させても、インキが埋まることがないよう、十分な長さと深さを持った間隙を予め有している。
図2(A)(B)および図3において、円周方向にインキ反発層4が途切れている部分の円周長さを間隙長さ5、間隙の最深部と間隙長さ5との距離を間隙深さ6と定義される。
間隙長さは、インキ汚れを抑制できる点で、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましい。一方、不要な余白を小さくし生産性を向上できる点で、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。また、円周方向と垂直な方向について、インキ汚れを抑制できる点から全長の50%以上の長さが好ましく、80%以上の長さがより好ましく、90%以上の長さがさらに好ましく、100%の長さがさらにより好ましい。さらに、間隙深さは、インキ汚れを抑制できる点で、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。
本発明において、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版原版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙または凹部は、円筒状印刷版原版において少なくとも1つ有していればよく、生産性を向上する観点から1つであることが好ましい。
本発明に係る円筒状印刷版原版の別の形態として、図1(A)に示すような、水なし平版印刷版原版100を、図2(B)に示すように、インキ反発層4が最表面になり、間隙長さ5を有するように円筒状に成形することで、円筒状印刷版原版400を作製できる。
このような円筒状印刷版原版400は、例えば、プレートシリンダーに両面テープや粘着(接着)剤を設け、インキ反発層4が最表面になるように、水なし平版印刷版原版100をプレートシリンダーに固定して作製することができる。両面テープや粘着(接着)剤は市販のものを使用することができ、特に限定されない。
図2(B)の形態の場合、間隙を直上から見たときに、インキ反発性でない基材1、あるいは任意で設けられる有機層2および/または感熱層3が露出するため、間隙にインキが付着しやすくなり、図2(A)の形態に比べると、インキ汚れが発生し易くなる。
そこで、さらに別の形態として、図1(B)に示すような、円周方向におけるインキ反発層4の最表面の長さLrと、円周方向における基材1のインキ反発層と反対側の最表面の長さLsがLr>Lsを満たす水なし平版印刷版原版200を用いることが好ましい。図3に示すように、水なし平版印刷版原版200のインキ反発層4が最表面になり、間隙長さ5を有するように円筒状に成形することで、円筒状印刷版原版500を作製できる。
円筒状印刷版原版500の場合、間隙を直上から見たときに、インキ反発性でない基材1、あるいは任意で設けられる有機層2および/または感熱層3が露出しなくなるため、間隙にインキが付着しにくく、インキ汚れの発生を抑制することができる。
図1(B)に示す水なし平版印刷版原版200において、Lr>Lsを満たすために、例えば、図1(A)の水なし平版印刷版原版100の両端を、角度切り切断機、レーザー切断装置、ワイヤー放電加工機などで、斜めに切断する方法が挙げられる。
LrとLsとの差(Lr−Ls)は、間隙長さが短くてもインキ汚れを抑制できる点で、0.2mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。
(円筒状印刷版)
本発明に係る円筒状印刷版は、円筒状印刷版原版300、400および500のいずれかに対して、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザーによるアブレーションや、金属・ダイヤモンドバイトによる物理切削などで画像形成することにより作製することができる。間隙を有する円筒状印刷版原版のインキ反発層の一部が除去された部分は、基材、有機層、感熱層のいずれかが最表面に形成されることになる。基材、有機層、感熱層は後述するようにインキ着肉性を有するため、間隙を有する円筒状印刷版原版のインキ反発層の一部が除去されると、インキ着肉部が形成された間隙を有する円筒状印刷版を得ることができる。
図1〜3に示すような水なし平版印刷版原版100や200、間隙を有する円筒状印刷版原版300、400または500において、感熱層3を設ける場合、近赤外領域付近に発光波長領域が存在する汎用の半導体レーザーで画像形成ができるため、製版速度が速く、生産性が向上する点で好ましい。
また、水なし平版印刷版原版100または200を、露光(および現像)し画像形成した水なし平版印刷版を、インキ反発層4が最表面になり、間隙長さ5を有するようにシリンダーに固定することで、円筒状印刷版を作製することもできる。
本発明に係る円筒状印刷版は、少なくとも基材、インキ反発層がこの順に設けられた円筒状印刷版であって、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙を少なくとも1つ有し、前記インキ反発層が前記間隙を除く円筒状印刷版の最表面に連続的に存在するものである。「間隙」とは、円筒状印刷版の円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向と垂直な方向の全長の50%以上の長さ、かつ、深さが0.1mm以上を有する領域をいう。なお、本発明において「間隙」とは、円筒状印刷版の厚み以下の深さを有する領域である凹部を含むものとする。「連続的に存在する」とは、円筒状印刷版の最表面において、インキ反発層が途切れることなく存在していることをいう。間隙を除く円筒状印刷版の最表面にインキ反発層が連続的に存在することによって、インキ汚れを抑制する効果を奏する。インキ反発層が円筒状印刷版の最表面において円周方向に途切れることなく存在していれば、インキ反発層は間隙を除く円筒状印刷版の最表面全面に存在していても、最表面の一部に存在していてもよい。インキ反発層が間隙を除く円筒状印刷版の最表面全面において連続的に存在することがより好ましい。
本発明における間隙長さ、間隙深さは、(円筒状印刷版原版)の項で記載した説明と同義である。
間隙長さは、インキ汚れを抑制できる点で、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましい。一方、不要な余白を小さくし生産性を向上できる点で、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。また、円周方向と垂直な方向について、インキ汚れを抑制できる点から全長の50%以上の長さが好ましく、80%以上の長さがより好ましく、90%以上の長さがさらに好ましく、100%の長さがさらにより好ましい。さらに、間隙深さは、インキ汚れを抑制できる点で、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。生産性向上の観点から、間隙深さは100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
本発明において、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙は、円筒状印刷版において少なくとも1つ有していればよく、生産性を向上する観点から1つであることが好ましい。
別の形態として、円周方向におけるインキ反発層の最表面の長さLrと、円周方向における基材のインキ反発層と反対側の最表面の長さLsがLr>Lsを満たす水なし平版印刷版であることが好ましい。LrとLsとの差(Lr−Ls)は、間隙長さが短くてもインキ汚れを抑制できる点で、0.2mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。
(基材)
基板としては、従来印刷版に用いられ、印刷工程において寸法的な変化の少ない公知の紙、金属、フィルムなどがあげられる。本発明における基材は、インキ着肉性を有する。具体的には、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックのフィルム、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属が蒸着された紙、もしくはアルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは透明でも不透明でもよい。検版性の観点からは、不透明のフィルムが好ましい。また、基材の形状は限定されないが、平板状のものを好ましく用いることができる。
これら基板のうち、アルミニウム板は印刷工程において寸法的な変化が少なく、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用の柔軟な基板としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。基板の厚みは特に限定されず、印刷機に対応した厚みを選択すればよい。
(有機層)
基材とインキ反発層の間に、任意で有機層を設けることができる。本発明における有機層は、インキ着肉性を有する。有機層の特性は、水なし印刷版に柔軟性を付与し、基材あるいは感熱層と良好な接着性を有し、さらに現像液あるいは印刷時に使用する溶剤に対する耐性が高いことである。例えば、特開2004−199016号公報、特開2004−334025号公報などに開示されている金属キレート化合物を含有する有機層が好ましく用いられるが、この限りではない。
有機層は顔料を含むことが好ましい。顔料を含むことにより、有機層の光透過率を400〜650nmの全ての波長に対して15%以下とすることが可能となり、これにより、機械読み取りによる検版性を付与することができる。顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、リトポン等の無機白色顔料や、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー等の無機黄色顔料を用いることが好ましい。これらの顔料の中で、隠蔽力、着色力の点から酸化チタンが特に好ましく用いられる。顔料の含有量は、良好な隠蔽性能が得られるという点で、有機層中に2体積%以上が好ましい。一方で、良好な塗工性能が得られるという点で、有機層中に30体積%以下が好ましい。
(感熱層)
基材とインキ反発層の間に、任意で感熱層を設けることができる。本発明における感熱層は、インキ着肉性を有する。感熱層としては、描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有し、さらに、発生した熱によって、感熱層の少なくとも表面が分解し、もしくは現像液への溶解性が高まる、またはインキ反発層との接着力が低下するものであることが好ましい。このような感熱層は例えば以下のような組成物を含有することができる。
(a)活性水素を有するポリマー、有機錯化合物、および光熱変換物質を含む組成物。
(b)活性水素を有するポリマー、架橋剤、および光熱変換物質を含む組成物。
(c)自己反応性を持つ活性水素を有するポリマー、および光熱変換物質を含む組成物。
前記感熱層は、レーザー光を照射することで、光熱変換物質から発生した熱により、(a)に示した組成物においては、活性水素を有するポリマーと有機錯化合物とで構成されていた架橋構造が分解される。(b)に示した組成物においては、レーザー光を照射することで、光熱変換物質から発生した熱により、当該ポリマーと架橋剤とで構成されていた架橋構造が分解される。(c)に示した組成物においては、レーザー光を照射することで、光熱変換物質から発生した熱により、当該ポリマーの自己反応で形成された架橋構造が分解される。
感熱層に好ましく用いられる活性水素を有するポリマーとしては、活性水素をもつ構造単位を有するポリマーを挙げることができる。活性水素をもつ構造単位としては例えば、−OH、−SH、−NH、−NH−、−CO−NH、−CO−NH−、−OC(=O)−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CS−OH、−CO−SH、−CS−SH、−SOH、−PO、−SO−NH、−SO−NH−、−CO−CH−CO−などが挙げられる。
上記組成物(a)および(b)で好適に使用できる活性水素を有するポリマーとしては、カルボキシル基もしくは水酸基を有するアクリル樹脂類、ポリウレタン類、ポリウレア類、ポリアミド類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、セルロース誘導体類などが挙げられる。
また、上記組成物(c)で好適に使用できる自己反応性を持つ活性水素を有するポリマーとしては、レゾール樹脂類、メラミン樹脂類などが挙げられる。
活性水素を有するポリマーの含有量は、熱により感熱層表面を分解する、あるいは現像液に対し易溶解性に変化させることにより、現像を促進させる点で、感熱層中20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、感熱層の靱性の点で95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
上記組成物(a)に含まれる有機錯化合物は、金属と有機化合物とを含むものである。これは活性水素を有するポリマーへの架橋剤として機能する。このような有機錯化合物としては、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位した有機無機錯塩、金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類などが挙げられる。
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Al(III)、Ti(IV)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Ni(II)、Ni(IV)、Cu(I)、Cu(II)、Zn(II)、Ge、In、Sn(II)、Sn(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)が好ましい。Al(III)は感度向上効果が得られやすい点から特に好ましく、Ti(IV)は印刷インキやインキ洗浄剤に対する耐性が発現しやすい点から特に好ましい。
また、配位子としては、酸素、窒素、硫黄などをドナー原子として有する配位基を有する化合物が挙げられる。配位基の具体例としては、酸素をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル、R:脂肪族または芳香族炭化水素を表す)、−N=O(ニトロソ化合物)、−NO(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SOH(スルホン酸)、−PO(亜リン酸)など、窒素をドナー原子とするものとしては、−NH(1級アミン、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(アルデヒド、ケトンイミン、エナミン類)、−NCS(イソチオシアナト)など、硫黄をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアミド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SH、−C(=S)−OH、−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナート)などが挙げられる。
上記のような金属と配位子から形成される有機錯化合物のうち、好ましく用いられる化合物としては、Al(III)、Fe(II)、Fe(III)、Ti(IV)、Zr(IV)のアセチルアセトン錯体、アセト酢酸エステル錯体などが挙げられる。
このような化合物の具体例としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジブトキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(エチルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリ−n−ブトキシドモノ(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリイソプロポキシドモノ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)、チタニウムオキサイシドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、鉄(III)アセチルアセトネート、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)。これらを2種以上含有してもよい。
このような有機錯化合物は、ポリマーの架橋剤として働く。その量は感熱層中0.5質量%以上が好ましい。また、水なし平版印刷版の耐久性を維持する点で50質量%以下が好ましい。
上記組成物(b)に含まれる架橋剤としては、上記ポリマーが有する活性水素と反応性を有する官能基を複数有する多官能性化合物が挙げられる。例えば、多官能イソシアネート、多官能ブロックドイソシアネート、多官能エポキシ化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルデヒド、多官能メルカプト化合物、多官能アルコキシシリル化合物、多官能アミン化合物、多官能カルボン酸、多官能ビニル化合物、多官能ジアゾニウム塩、多官能アジド化合物、ヒドラジンなどが挙げられる。
上記組成物(a)〜(c)が含むことができる光熱変換物質としては、レーザー光を吸収することにより、光エネルギーを原子・分子の運動エネルギーに変換し、瞬間的に感熱層表面で200℃以上の熱を発生させることで、感熱層の架橋構造を熱分解する機能を有するものが好ましい。特に赤外線または近赤外線を吸収する顔料、染料が好ましい。例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、結晶水含有無機化合物、鉄、銅、クロム、ビスマス、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、コバルト、バナジウム、マンガン、タングステンなどの金属粉、またはこれら金属の硫化物、水酸化物、珪酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ジアミン化合物錯体、ジチオール化合物錯体、フェノールチオール化合物錯体、メルカプトフェノール化合物錯体などを挙げることができる。
また、赤外線または近赤外線を吸収する染料としては、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜1500nmの範囲にあるシアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
これらの染料のなかでも、モル吸光係数εの大きなものが好ましく使用される。具体的には、εは1×10L/(mol・cm)以上が好ましく、より好ましくは1×10L/(mol・cm)以上である。εが1×10L/(mol・cm)以上であれば、初期感度をより向上させることができる。ここでの係数は照射する活性エネルギー線に対してである。具体的な波長を示すのであれば780nm、830nmまたは1064nmに注目するのがよい。
これらの光熱変換物質を2種以上含有してもよい。吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を含有することにより、発信波長の異なる2種以上のレーザーに対応させることができる。
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラック、赤外線または近赤外線を吸収する染料が好ましい。
これら光熱変換物質の含有量は、感熱層中0.1質量%〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜40質量%である。光熱変換物質の含有量を0.1質量%以上とすることで、レーザー光に対する感度をより向上させることができる。一方、70質量%以下とすることで、水なし印刷版の高い耐久性を維持することができる。
(インキ反発層)
本発明に係る円筒状印刷版原版および円筒状印刷版のインキ反発層としては、シリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン・アクリル共重合体などを用いることができるが、ポリオルガノシロキサンの架橋物であるシリコーン樹脂が好ましく使用できる。本発明におけるインキ反発層は、シリコーン樹脂からなるシリコーンゴム層であることが好ましい。また、シリコーンゴム層にはシリコーンオイルを含むことが好ましい。
インキ反発層がシリコーンゴム層である場合、インキ反発層は、付加反応型シリコーンゴム層組成物、縮合反応型シリコーンゴム層組成物、もしくは付加反応型と縮合反応型の両方を含有するシリコーンゴム層組成物を塗布して得られる層、またはこれらの組成物の溶液を塗布、乾燥して得られる層が挙げられる。
インキ反発層の膜厚は、インキ反発性と耐久性を向上させる点で、2.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましく、4.0μm以上がさらに好ましい。また、精細度を向上させる点で、7.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましい。なお、インキ反発層の膜厚は、水なし平版印刷版の切片を樹脂包埋後、CP法により断面を作製し、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)観察することで確認することができる。
インキ反発層に含まれるシリコーンゴムとしては、硬化速度に優れ、生産性向上が期待できる点で、付加反応型シリコーンゴム組成物が好ましい。付加反応型シリコーンゴム組成物は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、複数のヒドロシリル基を有するSiH基含有化合物および硬化触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤を含有してもよい。
本発明におけるインキ反発層中にはインキ反発性を向上させる目的で、シリコーンオイルを含有することができる。中でも、インキ反発層がシリコーンゴム層の場合に、インキ反発層中にシリコーンオイルを含有することがより好ましい。
前記シリコーンオイルは、インキ反発層表面に十分押し出され、インキ反発性を顕著に向上させる点で、インキ反発層中の含有量は5質量%以上が好ましい。また、インキ反発層の膜強度を維持する点で、インキ反発層中への含有量は50質量%以下が好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
インキ反発層中のシリコーンオイル量は、切削したシリコーンゴム層をヘキサンに浸漬し、抽出されたシリコーンオイルの質量を測定することで確認することができる。
本発明で言うシリコーンオイルとは、シリコーンゴム層の架橋に携わらないフリーのポリシロキサン成分のことを指す。従って、末端ジメチルポリジメチルシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン、末端ジメチル−ポリジメチル−ポリメチルフェニルシロキサンコポリマー、末端ジメチル−ポリジメチル−ポリジフェニルシロキサンコポリマーなどのジメチルシリコーンオイル類、またアルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、カルバナ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどの分子中のメチル基の一部に各種有機基を導入した変性シリコーンオイル類が挙げられる。
これらシリコーンオイルの分子量は、標品にポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、重量平均分子量Mwが1000〜10万のものが好ましい。
(シリコーンゴム層)
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(α)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
−(SiR−O−)− (α)
一般式(α)中、nは2以上の整数を示す。RおよびRは炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。RおよびRは同じであっても異なっていてもよい。一般式(α)で表されるポリシロキサンに複数存在するRは相互に同じであっても異なっていてもよい。また 一般式(α)で表されるポリシロキサンに複数存在するR2は相互に同じであっても異なっていてもよい。上記一般式(α)中、RおよびRは全体の50%以上がメチル基であることが、水なし平版印刷版のインキ反発性の点で好ましい。また、精細度や耐傷性の観点から、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は30,000以上200,000以下が好ましい。
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。これらを2種以上含有してもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造をもつことができる。
また、下記一般式(i)と(ii)で表されるシロキサン構造単位の共重合体であるSiH基含有化合物が地汚れ開始温度向上、コストの点から好ましい。
−SiH(CH)−O− (i)
−Si(CH−O− (ii)
本発明における、前記SiH基含有化合物の一般式(i)で表されるシロキサン構成単位と一般式(ii)で表されるシロキサン構成単位の合計100モル%に対する一般式(i)で表されるシロキサン構成単位の含有比率((i)/((i)+(ii))×100)は、1分子当たりに反応できる官能基量が多く、架橋密度を向上できる点から50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。一般式(i)で表されるシロキサン構成単位の含有比率は、100モル%であっても構わないが、架橋点過多により脆くなるのを防ぐ点で99モル%以下であることが好ましい。
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられ、アセチレン基含有アルコールが好ましく用いられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの反応抑制剤を含有することにより、シリコーンゴム層の硬化速度を調整することができる。反応抑制剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
硬化触媒は公知のものから選ぶことができる。好ましくは白金系化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。なお、白金触媒は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)分析により、分布と添加量を見積もることができる。
また、これらの成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シランもしくはこの官能基を含有するシロキサン、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類などが好ましく、またビニル基やアリル基がケイ素原子に直結したものが好ましい。
(円筒状印刷版の製造方法)
まず、本発明に係る円筒状印刷版原版を用いて、円筒状印刷版を製造する方法について説明する。本発明に係る円筒状印刷版の製造方法は、間隙を有する円筒状印刷版原版を像に従って露光する工程(露光工程)、または、任意で露光した間隙を有する円筒状印刷版原版に物理刺激を与え、露光部のインキ反発層を除去する工程(現像工程)を含むことが好ましい。
まず、露光工程について説明する。本発明に係る間隙を有する円筒状印刷版原版を像に従って露光する。露光工程で用いられる光源としては、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが挙げられる。これらの中でも、感熱層の吸収波長として広く用いられることから、近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられる。具体的には、熱への変換効率の観点から780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が露光に好ましく用いられる。
次に、現像工程について説明する。露光後の原版に物理刺激を与えることにより、露光部のインキ反発層を除去する。物理刺激を与える方法としては、例えば、(I)乾燥した不織布、脱脂綿、布、スポンジなどで版面を拭き取る方法、(II)現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジなどで版面を拭き取る方法、(III)現像液で版面を前処理した後に水道水などをシャワーしながら回転ブラシで擦る方法、(IV)高圧の水や温水、または水蒸気を版面に噴射する方法などが挙げられる。
現像液としては、例えば水、アルコールやパラフィン系炭化水素を使用できる。また、ジグリコールアミン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールへのアルキレンオキサイド付加物などのプロピレングリコール誘導体や、上記化合物と水との混合物も使用できる。現像液の具体例としては、HP−7N、WH−3、PP−1、PP−3、PP−F、PP−FII、PTS−1、CP−1、CP−Y、CP−X、NP−1、DP−1(何れも東レ(株)製)などを挙げることができる。また、画線部の視認性や網点の計測精度を高める目的から、現像液にクリスタルバイオレット、ビクトリアピュアブルー、アストラゾンレッド等の染料を添加して現像と同時に画線部の染色を行うこともできる。さらには、現像の後に上記の染料を添加した液によって染色することもできる。
上記現像工程の一部または全部は、自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては以下の装置が使用できる。現像部のみの装置、前処理部および現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部、水洗部がこの順に設けられた装置などを使用することができる。このような自動現像機の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(共に東レ(株)製)などが挙げられる。
また、水なし平版印刷版原版をインキ反発層が最表面になるように筒状にシリンダーに固定し、本発明に係る水なし平版印刷版を作製してもよい。
さらに、水なし平版印刷版をインキ反発層が最表面になるように筒状にシリンダーに固定し、本発明に係る水なし平版印刷版を作製してもよい。
(間隙を有する円筒状印刷版を用いた印刷物の製造方法)
本発明の実施の形態に係る円筒状印刷版を用いた印刷物の製造方法は、少なくとも(1)円筒状印刷版の表面にインキを付着させる工程、および(2)前記インキを直接またはブランケットを介して被印刷体上に転写する工程、を有する。
本発明に用いられる円筒状印刷版を用いた印刷方法は、例えば、以下のような方法である。少なくとも基材、インキ反発層がこの順に設けられた円筒状印刷版にて、画線部に対応する部分のインキ反発層を除去する。インキが供給されたインキローラーを、その円筒状印刷版の表面に接触させ、画線部ではインキが付着し、非画線部ではインキが反発する。その後、画像様にインキが付着した円筒状印刷版を、直接被印刷体と接触させ、または、一度ブランケットに接触させた後、ブランケットを被印刷体と接触させることで、画像様のインキを被印刷体に転写させ、印刷物を製造することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
(1)間隙長さおよび間隙深さの測定
ハンディプローブ三次元測定機“XM−1200”(株式会社キーエンス製)を用いて、 円筒状印刷版の間隙長さと間隙深さを測定した。共に任意の10箇所で測定を行い、その平均値を間隙長さと間隙深さとした。
(2)水なし平版印刷版の製造
1130×900mmサイズの水なし平版印刷原版を、CTP露光機“PlateRite HD 8900N−E”(株式会社SCREEN製)を用いて、光量100%およびドラム回転数210rpmの条件で露光した。絵柄は水なし平版印刷原版の短辺に平行になるように、版の中央に100mm×900mmのベタ帯を設け、版端までベタ露光した。その後、自動現像機“TWL−1160F”(東レ株式会社製)を用いて、前処理液:CP−Y(液温45℃)、現像液:水道水、後処理液:PA−1の条件で、搬送速度40cm/minで現像し、水なし平版印刷版を得た。
(3)軟包装印刷
軟包装印刷機“OFFSET CI8”(COMEXI社製)の版胴に、実施例の円筒状印刷版を取り付けた。
EBオフセットインキ “Sterabeam”(東洋インキ株式会社製)の墨インキをインキローラーに供給し、円筒状印刷版上のベタ帯部のベタ濃度が1.8になるように、円筒状印刷版にインキを供給した。円筒状印刷版とブランケットとを接触させ、円筒状印刷版からブランケットにインキを転写した。続いてブランケット上のインキを、ポリプロピレンフィルム“P2111”(東洋紡株式会社製)に転写するオフセット印刷を行った。
(4)間隙の汚れの濃度の測定
上記(3)の印刷において、1,000m印刷した時点で得られた印刷物をサンプリングし、間隙の汚れ部の濃度を、反射分光光度計“SpectroEye”(X−rite(株)製)を用いて、カラーフィルター:ブラックの条件で測定した。測定は5箇所で実施し、その平均値を間隙の汚れの濃度とした。反射濃度は0.05以下が好ましく、0.02以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましいと判断した。
(5)地汚れ開始温度の測定
上記(3)の印刷において、チラーを用いて版面温度を制御しながら印刷を実施した。円筒状印刷版の版面温度は非接触温度計で測定し、温度ごとに非画線部の地汚れを確認した。地汚れが確認できた時点の温度を地汚れ開始温度とした。地汚れ開始温度は28℃以上であれば実用上問題なく、より安定的に印刷できるという点で、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましいと判断した。
(6)耐久性の評価
上記(3)の印刷において、円筒状印刷版のインキ反発層が摩耗し、非画線部領域にインキが付着した時点の、円筒状印刷版とブランケットの接触回数(shot数)を、円筒状印刷版の耐久性とした。円筒状印刷版の耐久性は、20,000shot以上が好ましく、24,000shot以上がより好ましく、28,000shot以上がさらに好ましいと判断した。
(7)生産性の評価
上記(3)の印刷において、印刷する際の絵柄の余白サイズによって生産性を評価した。印刷方向の絵柄と絵柄の間の余白は、10mm以内であれば実用上問題無く○と評価、5mm以内であればより生産性が高く◎と評価した。一方、余白が10mmを超える場合は実用不可と判断し×と評価した。
[実施例1]
水なし平版印刷版原版−1を以下の方法で作製した。厚み0.075mmのポリエステルフィルム“ルミラー”#75(東レ株式会社製)上に下記の有機層組成物溶液をワイヤーバーコーターで塗布し、150℃で180秒間乾燥し、厚み18.0μmの有機層を設けた。なお、有機層組成物溶液は、下記成分を室温(20〜28℃)にて撹拌混合することにより得た。
<有機層組成物溶液>
(a)活性水素を有するポリマー:エポキシ樹脂:“エピコート”(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):35質量部
(b)活性水素を有するポリマー:ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20質量%):375質量部
(c)アルミキレート:アルミキレートALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10質量部
(d)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10質量%):1質量部
(e)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株)製)のN,N−ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50質量%):60質量部
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:730質量部
(g)メチルエチルケトン:250質量部。
次いで、感熱層組成物溶液を上記有機層上にワイヤーバーコーターで塗布し、140℃で90秒間加熱乾燥し、厚み2.0μmの感熱層を設けた。なお、感熱層組成物溶液は、下記成分を室温(20〜28℃)にて撹拌混合することにより得た。
<感熱層組成物溶液>
(a)赤外線吸収染料(シアニン色素):NK5559(株式会社林原製、最大吸収波長:774nm):16.0質量部
(b)有機錯化合物:チタニウム−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、濃度:73質量%、溶剤としてn−ブタノール:27質量%を含む):15.0質量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):60質量部
(d)ポリウレタン:“ニッポラン”(登録商標)5196(日本ポリウレタン(株)製、濃度:30質量%、溶剤としてメチルエチルケトン:35質量%、シクロヘキサノン:35質量%を含む):25質量部
(e)テトラヒドロフラン:1044質量部。
次いで、塗布直前に調製したシリコーンゴム層組成物溶液−1を上記感熱層上にワイヤーバーコーターで塗布し、140℃で80秒間加熱し、平均膜厚5.0μmのシリコーンゴム層を設けることで水なし平版印刷版−1を得た。なお、シリコーンゴム層組成物溶液−1は、下記成分を室温(20〜28℃)にて撹拌混合することにより得た。
<シリコーンゴム層組成物溶液−1>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):86.26質量部
(b)メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体RD−1((i)/((i)+(ii))×100=50モル%、東レ・ダウコーニング(株)製):4.93質量部
(c)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.64質量部
(d)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製、白金触媒が6.0質量%):6.17質量部
(e)“アイソパー”E(エッソ化学(株)製):900質量部
得られた水なし平版印刷版原版−1を上記(2)の方法で露光・現像し、水なし平版印刷版−1を得た。水なし平版印刷版−1の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた1箇所のギャップに差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付けた。このとき、版の両端部の折り曲げ角度を微調整し、間隙長さが0.1mmになるようにすることで、円筒状印刷版を作製した。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは0.1mm、間隙深さは0.1mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0.05、地汚れ開始温度は28℃、耐久性は20,000であった。
[実施例2]
厚み0.18mmの脱脂した平板状アルミ基材上に、有機層組成物溶液をワイヤーバーコーターで塗布し、200℃で90秒間乾燥し、厚み13.0μmの有機層を設けた以外は、実施例1と同様の感熱層組成物溶液、シリコーンゴム層組成物溶液−1を塗工し、水なし平版印刷版原版−2を作製した。
得られた水なし平版印刷版原版−2を上記(2)の方法で露光・現像し、水なし平版印刷版−2を得た。水なし平版印刷版−2の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた1箇所のギャップに差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付けた。このとき、版の両端部の折り曲げ角度を微調整し、間隙長さが0.5mmになるようにすることで、円筒状印刷版を作製した。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは0.5mm、間隙深さは0.2mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0.02と良好で、地汚れ開始温度は28℃、耐久性は20,000であった。
[実施例3]
厚み0.28mmの脱脂した平板状アルミ基材を用いた以外は、実施例2と同様の有機層組成物溶液、感熱層組成物溶液、シリコーンゴム層組成物溶液−1を塗工し、水なし平版印刷版原版−3を作製した。
得られた水なし平版印刷版−3を上記(2)の方法で露光・現像し、水なし平版印刷版−3を得た。水なし平版印刷版−3の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた1箇所のギャップに差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付けた。このとき、版の両端部の折り曲げ角度を微調整し、間隙長さが1mmになるようにすることで、円筒状印刷版を作製した。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは1mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0.01と非常に良好で、地汚れ開始温度は28℃、耐久性は20,000であった。
[実施例4]
水なし平版印刷版−3の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた2箇所のギャップにそれぞれ差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け、円筒状印刷版を作製した。このとき、2箇所のギャップ間の距離は10mm離れていた。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは10mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は小さく、生産性に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0と非常に良好で、地汚れ開始温度は28℃、耐久性は20,000であった。
[実施例5]
水なし平版印刷版−3の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた2箇所のギャップにそれぞれ差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け、円筒状印刷版を作製した。このとき、2箇所のギャップ間の距離は5mm離れていた。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは5mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0と非常に良好で、地汚れ開始温度は28℃、耐久性は20,000であった。
[実施例6]
シリコーンゴム層組成物溶液−1を以下のシリコーンゴム層組成物溶液−2に変更した以外は、実施例3と同様にして水なし平版印刷版原版−4を得た。
<シリコーンゴム層組成物溶液−2>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):81.9質量部
(b)シリコーンオイル:KF−96−50cs(重量平均分子量:3,780、表面張力:20.8mN/m、沸点:>150℃、信越化学工業(株)製):5質量部
(c)メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体RD−1((i)/((i)+(ii))×100=50モル%、東レ・ダウコーニング(株)製):4.1質量部
(d)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3質量部
(e)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製、白金触媒が6.0質量%):6質量部
(f)“アイソパー”E(エッソ化学(株)製):900質量部
水なし平版印刷版原版−4を上記(2)の方法で露光・現像し、水なし平版印刷版−4を得た。水なし平版印刷版−4の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた2箇所のギャップにそれぞれ差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け、円筒状印刷版を作製した。このとき、2箇所のギャップ間の距離は5mm離れていた。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは5mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0と非常に良好で、地汚れ開始温度は30℃、耐久性は24,000と良好な結果であった。
[実施例7]
シリコーンゴム層組成物溶液−1を以下のシリコーンゴム層組成物溶液−3に変更した以外は、実施例3と同様にして水なし平版印刷版原版−5を得た。
<シリコーンゴム層組成物溶液−3>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):39質量部
(b)シリコーンオイル:KF−96−50cs(重量平均分子量:3,780、表面張力:20.8mN/m、沸点:>150℃、信越化学工業(株)製):50質量部
(c)メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体RD−1((i)/((i)+(ii))×100=50モル%、東レ・ダウコーニング(株)製):2質量部
(d)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3質量部
(e)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製、白金触媒が6.0質量%):6質量部
(f)“アイソパー”E(エッソ化学(株)製):900質量部
水なし平版印刷版原版−5を上記(2)の方法で露光・現像し、水なし平版印刷版−5を得た。水なし平版印刷版−5の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた2箇所のギャップにそれぞれ差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け、円筒状印刷版を作製した。このとき、2箇所のギャップ間の距離は5mm離れていた。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは5mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0、地汚れ開始温度は35℃、耐久性は28,000と非常に良好な結果であった。
[実施例8]
シリコーンゴム層組成物溶液−1を以下のシリコーンゴム層組成物溶液−4に変更した以外は、実施例3と同様にして水なし平版印刷版原版−6を得た。
<シリコーンゴム層組成物溶液−4>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):67.80質量部
(b)シリコーンオイル:KF−96−50cs(重量平均分子量:3,780、表面張力:20.8mN/m、沸点:>150℃、信越化学工業(株)製):20.0質量部
(c)メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体RD−1((i)/((i)+(ii))×100=50モル%、東レ・ダウコーニング(株)製):3.39質量部
(d)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.64質量部
(e)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製、白金触媒が6.0質量%):6.17質量部
(f)“アイソパー”E(エッソ化学(株)製):900質量部
水なし平版印刷版原版−6を上記(2)の方法で露光・現像し、水なし平版印刷版−6を得た。水なし平版印刷版−6の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた2箇所のギャップにそれぞれ差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け、円筒状印刷版を作製した。このとき、2箇所のギャップ間の距離は5mm離れていた。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは5mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0、地汚れ開始温度は35℃、耐久性は30,000と非常に良好な結果であった。
[実施例9]
プレートシリンダーに両面テープ“777”((株)寺岡製作所製)を貼り付け、水なし平版印刷版−6をインキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け固定した。このとき、間隙長さが0.1mmになるよう調整して固定することで、円筒状印刷版を作製した。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは0.1mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0.04であり、地汚れ開始温度は35℃、耐久性は30,000と非常に良好な結果であった。
[実施例10]
水なし平版印刷版−6の両端を、角度切り切断機で、インキ反発層の垂線に対し18度の角度を付けて断裁することで、Lr>Lsを満たす水なし平版印刷版−7を作製した。ここで、円周方向におけるインキ反発層の最表面の長さLrと、円周方向における基材のインキ反発層と反対側の最表面の長さLsの差(Lr−Ls)は、0.2mmであった。
プレートシリンダーに両面テープ“777”((株)寺岡製作所製)を貼り付け、水なし平版印刷版−7をインキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け固定した。このとき、間隙長さが0.1mmになるよう調整して固定することで、円筒状印刷版を作製した。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは0.1mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0.01、地汚れ開始温度は35℃、耐久性は30,000と非常に良好な結果であった。
[実施例11]
水なし平版印刷版−6の両端を、角度切り切断機で、インキ反発層の垂線に対し45度の角度を付けて断裁することで、Lr>Lsを満たす水なし平版印刷版−8を作製した。ここで、円周方向におけるインキ反発層の最表面の長さLrと、円周方向における基材のインキ反発層と反対側の最表面の長さLsの差(Lr−Ls)は、0.6mmであった。
プレートシリンダーに両面テープ“777”((株)寺岡製作所製)を貼り付け、水なし平版印刷版−8をインキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け固定した。このとき、間隙長さが0.1mmになるよう調整して固定することで、円筒状印刷版を作製した。
円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは0.1mm、間隙深さは0.3mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0、地汚れ開始温度は35℃、耐久性は30,000と非常に良好な結果であった。
[比較例1]
厚み0.05mmのポリエステルフィルム“ルミラー”#50(東レ株式会社製)上に、厚み13.0μmの有機層を設けた以外は実施例1と同様にして、水なし平版印刷版−9を作製した。
得られた水なし平版印刷版−9の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた1箇所のギャップに差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付けた。このとき、折り曲げた版の両端部のインキ反発層同士を接触させ、円筒状印刷版を作製した。
前記円筒状印刷版を上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは0.05mm、間隙深さは0.07mmであり、印刷する際の絵柄の余白は十分小さく、生産性に非常に優れていた。さらに上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、地汚れ開始温度は28℃、耐久性は20,000であったが、間隙の汚れは1もあったため、実用不可の結果となった。
[比較例2]
水なし平版印刷版−9の折り曲げた版の両端部を、プレートシリンダーに備えられた2箇所のギャップにそれぞれ差し込み、インキ反発層が最表面になるようにプレートシリンダーに巻き付け、円筒状印刷版を作製した。このとき、2箇所のギャップ間の距離は15mm離れていた。
円筒状印刷版を上記(4)〜(6)の方法で評価したところ、間隙の汚れは0と非常に良好で、地汚れ開始温度は28℃、耐久性は20,000であった。しかし、上記(1)および(7)の方法で評価したところ、間隙長さは15mm、間隙深さは0.07mmであり、印刷する際の絵柄の余白が大きくなりすぎ、生産性に劣るため実用不可の結果となった。
Figure 2021171996
1 基材
Ls 基材1の裏面の長さ
2 有機層
3 感熱層
4 インキ反発層
Lr インキ反発層の最表面の長さ
5 間隙長さ
6 間隙深さ
100 水なし平版印刷版原版
200 水なし平版印刷版原版
300 円筒状印刷版原版
400 円筒状印刷版原版
500 円筒状印刷版原版

Claims (12)

  1. 少なくとも基材、インキ反発層がこの順に設けられた円筒状印刷版原版であって、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版原版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙を少なくとも1つ有し、前記インキ反発層が前記間隙を除く円筒状印刷版原版の最表面に連続的に存在する円筒状印刷版原版。
  2. 前記インキ反発層が、シリコーンゴム層である請求項1に記載の円筒状印刷版原版。
  3. 前記インキ反発層が、シリコーンオイルを含む請求項1または2に記載の円筒状印刷版原版。
  4. 前記インキ反発層中のシリコーンオイルの含有量が5〜50質量%である請求項3に記載の円筒状印刷版原版。
  5. 円周方向における前記インキ反発層の最表面の長さLrと、円周方向における前記基材のインキ反発層と反対側の最表面の長さLsがLr>Lsを満たす水なし印刷版原版を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の円筒状印刷版原版。
  6. 水なし平版印刷版原版をインキ反発層が最表面になるように筒状にシリンダーに固定する、請求項1〜5のいずれかに記載の円筒状印刷版原版の製造方法。
  7. 少なくとも基材、インキ反発層がこの順に設けられた円筒状印刷版であって、円周方向の長さが0.1mm以上10mm以下、円周方向に垂直な方向の長さが円周方向に垂直な方向の円筒状印刷版の全長の50%以上、かつ、深さが0.1mm以上の間隙を少なくとも1つ有し、前記インキ反発層が前記間隙を除く円筒状印刷版の最表面に連続的に存在する円筒状印刷版。
  8. 前記インキ反発層が、シリコーンゴム層である請求項7に記載の円筒状印刷版。
  9. 前記インキ反発層が、シリコーンオイルを含む請求項7または8に記載の円筒状印刷版。
  10. 前記インキ反発層中のシリコーンオイルの含有量が5〜50質量%である請求項9に記載の円筒状印刷版。
  11. 円周方向における前記インキ反発層の最表面の長さLr’と、円周方向における前記基材のインキ反発層と反対側の最表面の長さLs’がLr’>Ls’を満たす水なし印刷版原版を用いる、請求項7〜10のいずれかに記載の円筒状印刷版。
  12. 水なし平版印刷版をインキ反発層が最表面になるように筒状にシリンダーに固定する、請求項7〜11のいずれかに記載の円筒状印刷版の製造方法。
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