JP2020069759A - 転写フィルムの製造方法およびそれを用いた転写加飾体の製造方法 - Google Patents

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康典 久世
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由里香 河合
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Abstract

【課題】コストや印刷可能距離に優れ、かつ印刷濃度や精細度が向上した転写フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも(1)水なし平版印刷版の表面にインキを付着させる工程、(2)前記インキを直接またはブランケットを介して離型フィルム基材上に転写する工程、を有する転写フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、転写フィルムの製造方法およびそれを用いた転写加飾体の製造方法に関する。
凹凸のある立体面や曲面を有する構造体に文字や絵柄を印刷する加飾方法として、フィルム転写加飾が知られている。フィルム転写加飾とは、離型フィルム基材の片面に印刷を施して得た転写フィルムを、印刷面が接触するように構造体に貼り合わせた後、フィルム基材を剥離することで印刷面を構造体に残し、印刷面を構造体表面に転写する方法である。転写フィルムを製造するための、離型フィルム基材への印刷方法として、グラビア印刷(例えば、特許文献1参照)が用いられている。
特許第6206074号公報
グラビア印刷は印刷版が高額であり、多品種小ロット化が進む加飾分野ではコストが見合わないという問題があった。また、環境規制を背景に、杢目、メッキ、塗装の代替として、より高精細な印刷が求められているが、画線部と非画線部に物理的に凹凸をつけるグラビア印刷では、原理的に高精細化が困難であった。
一方、平版印刷は、印刷版が比較的安価であり、画線部と非画線部に凹凸が殆ど存在しないため、高精細化が容易である。しかし、一般的な平版印刷である水あり印刷では、印刷時に湿し水を使用するため、非吸収性原反である離型フィルム基材上でハジキが発生し、絵柄の滲み、印刷濃度の低下が見られた。そしてそれらに起因して、同品質で印刷できる限界距離(印刷可能距離)が著しく低下するという問題があった。
本発明は、コストや印刷可能距離に優れ、かつ印刷濃度や精細度が向上した転写フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の転写フィルムの製造方法は、以下の構成を有する。少なくとも(1)水なし平版印刷版の表面にインキを付着させる工程、(2)前記インキを直接またはブランケットを介して離型フィルム基材上に転写する工程、を有する転写フィルムの製造方法である。
本発明によれば、コストや印刷可能距離に優れ、かつ印刷濃度や精細度が向上した転写フィルムを製造することができる。
本発明は、転写フィルムの製造方法として水なし平版印刷が特段に優れることを見出すことによりなされたものである。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
(転写フィルムの製造方法)
本発明の実施の形態に係る転写フィルムの製造方法は、少なくとも(1)水なし平版印刷版の表面にインキを付着させる工程、および(2)前記インキを直接またはブランケットを介して離型フィルム基材上に転写する工程、を有する。
本発明に用いられる水なし平版印刷方法は、例えば、以下のような方法である。少なくとも感熱層とシリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版にて、画線部に対応する部分のシリコーンゴム層を除去する。インキが供給されたインキローラーを、その水なし平版印刷版の表面に接触させ、画線部ではインキを付着させ、非画線部ではインキを反発させる。その後、画像様にインキが付着した水なし平版印刷版を、直接被転写基材と接触させる、あるいは、一度ブランケットに接触させた後、ブランケットを被転写基材と接触させることで、画像様のインキを被転写基材に転写させる。
本発明では、被転写基材が離型フィルム基材であることで、転写フィルムが得られる。
印刷機は枚葉機、輪転機のどちらでも良く、水なし平版印刷版を装着できれば特に限定されないが、水なし平版印刷版の耐刷性が向上し、印刷可能距離が長くなるため、ブランケットを使用するオフセット印刷機が好ましい。ここで、印刷可能距離とは、同品質で印刷できる限界距離を指す。水なし平版印刷版の場合であれば、版の損傷により印刷品質が低下するまでの距離である。
加飾市場では多品種小ロット化が進行しているため、印刷可能距離としては、10,000m以上であれば実用上問題ない。20,000m以上が好ましく、30,000m以上がより好ましい。
ブランケットとしては、水なし平版印刷版からのインキ転移性に優れるもの、フィルム基材に転写したインキが平滑になるものが好ましい。インキ転移性が良いとフィルム基材により多くのインキを転写できること、フィルム基材に転写したインキが平滑であれば隠蔽性が高まることから、印刷濃度を向上させることができる。
インキ転移性に優れる点から、ブランケットのゴム硬度は70〜84が好ましい。ここで、ゴム硬度は、ショアA硬度計をブランケット表面に対し垂直に押し当て、置針の値を読み取る操作を10箇所で実施し、その平均値として求められる値である。
また、フィルム基材に転写されるインキの平滑性が高いことから、ブランケットの表面粗さRaは0.5〜1.4μmが好ましく、0.6〜1.1μmがより好ましい。ここで、表面粗さRaは、表面粗さ・輪郭形状測定機を用い、JIS01規格(2001年度)に準拠して測定し、5箇所の平均値として求められる値である。
本発明に用いることができる離型フィルム基材は、表面自由エネルギーが50mJ/m以下であることが好ましく、低いほど良好な離型性を示す。表面自由エネルギーは40mJ/m以下がより好ましく、30mJ/m以下がさらに好ましい。ここで、表面自由エネルギーは、フィルム基材上に純水、1−ブロモナフタレン、ジヨードメタンをそれぞれ滴下したときの接触角から、Zisman法を用いて算出した臨界表面張力で表される。
離型フィルム基材としては、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂からなる群より選ばれる1種以上含有するフィルム基材が挙げられる。これらのフィルム基材の離型性を向上させるために、例えば表面自由エネルギーを低下させるような表面処理を施しても良い。これらの中でも、インキの離型性が良好なことから、オレフィン系樹脂を含有するフィルム基材が特に好ましい。
本発明では、印刷濃度を向上させるため、画像様にインキが付着した水なし平版印刷版あるいはブランケットを、フィルム基材の同じ箇所に2回以上接触させることで、同じ画像を2回以上重ねて転写させることが好ましい。すなわち、上記(1)および(2)の工程を繰り返し、上記離型フィルム基材の同じ箇所に同じ画像を2回以上転写させることが好ましい。2回以上転写することで印刷濃度が向上し、より意匠性に優れた転写フィルムを製造することができる。一方で、コストの観点から転写回数は4回以下が好ましい。
UVもしくはEB硬化型インキを用いる場合、本発明の実施の形態に係る転写フィルムの製造方法は、(2)の工程の後に活性エネルギー線を照射しインキを硬化させる工程を含んでいてもよい。活性エネルギー線としては、硬化反応に必要な励起エネルギーを有するものであればいずれも用いることができるが、例えば紫外線や電子線などが好ましく用いられる。紫外線により硬化させる場合は、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED等の紫外線照射装置が利用できるが、特に限定されない。電子線により硬化させる場合は、10,000〜50,000eVの電子線を放出できる電子線照射装置が好ましく用いられる。
(転写加飾体の製造方法)
上記の転写フィルムを用いて、公知のインモールド転写法もしくはアウトモールド転写法により転写加飾体を製造することができる。例えば、インモールド転写法の場合、本発明の転写フィルムを射出成形の金型内に通し、溶かした樹脂を流し込んで成形することで、成形体の表面に印刷面が接触し加飾される。その後、離型フィルム基材を剥離することで、印刷面を成形体表面に転写することができる。アウトモールド転写法の場合、本発明の転写フィルムを構造体に真空ラミネートすることで、構造体の表面に印刷面が接触し加飾される。その後、離型フィルム基材を剥離することで、印刷面を構造体表面に転写することができる。
(インキ)
本発明で使用できるインキは特に限定されないが、市販のオフセット印刷用インキ、スクリーン印刷用インキを好ましく用いることができる。インキの硬化方式は油性(酸化重合)、UV(紫外線)、EB(電子線)硬化型のいずれでも良いが、硬化速度が速く、生産性が高いことからUVもしくはEB硬化型インキが好ましい。
水なし平版印刷では、高温下ではインキの流動性が向上するため、非画線部のシリコーンゴム層が、インキを反発し難くなるという特有の現象がある。その結果、フィルム基材の非画線部領域にもインキが付着する“地汚れ”という問題が発生する。この地汚れはUV、EB硬化型インキで発生しやすく、地汚れが発生し始める時の水なし平版印刷版の版面温度(地汚れ開始温度)を測定することで、地汚れのし易さを定量的に評価することができる。地汚れ開始温度は28℃以上であれば実用上問題ない。より安定的に印刷できるという点で、32℃以上が好ましく、36℃以上がより好ましい。
UVもしくはEB硬化型インキは、シリコーンオイルを含有することが好ましい。ここでいうシリコーンオイルとは、架橋に関与せず遊離成分として振る舞うシリコーン化合物を指す。シリコーンオイルは親和性の良いシリコーンゴム層に浸透しやすく、インキとシリコーンゴム層との間に液膜として存在することで、流動性の高いインキでも剥離し易くなり、地汚れ開始温度を向上させることができる。さらに、シリコーンオイルは離型性に優れるため、離型フィルム基材と印刷面との間で乖離し易くなり、印刷面が成形体/構造体表面に転写し易くなるため、印刷濃度を向上させることができる。
シリコーンオイルの具体例としては、末端ジメチルポリジメチルシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン、末端ジメチル−ポリジメチル−ポリメチルフェニルシロキサンコポリマー、末端ジメチル−ポリジメチル−ポリジフェニルシロキサンコポリマーなどのジメチルシリコーンオイル類、またアルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、カルバナ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどの分子中のメチル基の一部に各種有機基を導入した変性シリコーンオイル類が挙げられる。地汚れ開始温度および離型性の向上効果と、他のインキ組成物との相溶性の点で、末端ジメチルポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
これらシリコーンオイルの分子量は、標品にポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、重量平均分子量Mwが1,000〜10,000のものが好ましい。
シリコーンオイルは、インキ中に0.1質量%以上5.0質量%以下含有することが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下含有することがより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下含有することがさらに好ましい。0.1質量%以上であれば、地汚れ開始温度および離型性を向上させるのに十分有効であり、5.0質量%以下であれば、他のインキ組成物との相分離が抑制され、また、成形体/構造体表面へのインキ着肉を阻害し、転写加飾体上での印刷濃度の低下を招くことがない。
UVもしくはEB硬化型インキは、ウレタン結合を有する樹脂を含有することが好ましい。このような樹脂はインキに柔軟性を付与し、印刷面が成形体/構造体表面に転写・密着し易くなるため、印刷濃度を向上させることができる。
ウレタン結合を有する樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、ウレタン変性フェノール樹脂、ウレタン変性ロジン・フェノール樹脂、ウレタン変性ロジンエステル樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
ウレタン結合を有する樹脂は、インキ中に0.1質量%以上5.0質量%以下含有することが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下含有することがより好ましい。0.1質量%以上であれば、転写加飾体の印刷濃度を向上させるのに十分有効であり、5.0質量%以下であれば、インキと離型フィルム基材との密着性が過剰になりすぎることがないため、成形体/構造体表面へのインキ転写を阻害することによる転写加飾体上での印刷濃度の低下を招くことがない。
(水なし平版印刷版原版)
本発明に用いられる水なし平版印刷版原版は、基板上に少なくとも感熱層とシリコーンゴム層とを有する。
(基板)
基板としては、従来印刷版に用いられ、印刷工程において寸法的な変化の少ない公知の紙、金属、フィルムなどがあげられる。具体的には、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックのフィルム、上記金属がラミネートまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは透明でも不透明でもよい。検版性の観点からは、不透明のフィルムが好ましい。
これら基板のうち、アルミニウム板は印刷工程において寸法的な変化が少なく、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用の柔軟な基板としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。基板の厚みは特に限定されず、平版印刷に使用される印刷機に対応した厚みを選択すればよい。
(有機層)
また、基板と感熱層の間に任意で有機層を設けることができる。有機層の特性は、水なし平版印刷版に柔軟性を付与し、基板あるいは感熱層と良好な接着性を有し、さらに現像液あるいは印刷時に使用する溶剤に対する耐性が高いことである。例えば、特開2004−199016号公報、特開2004−334025号公報などに開示されている金属キレート化合物を含有する有機層が好ましく用いられるが、この限りではない。
有機層は顔料を含むことが好ましい。顔料を含むことにより、有機層の光透過率を400〜650nmの全ての波長に対して15%以下とすることが可能となり、これにより、機械読み取りによる検版性を付与することができる。顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、リトポン等の無機白色顔料や、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー等の無機黄色顔料を用いることが好ましい。これらの顔料の中で、隠蔽力、着色力の点から酸化チタンが特に好ましく用いられる。顔料の含有量は、良好な隠蔽性能が得られるという点で、有機層中に2体積%以上が好ましい。一方で、良好な塗工性能が得られるという点で、有機層中に30体積%以下が好ましい。
(感熱層)
感熱層としては、描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有し、さらに、発生した熱によって、感熱層の少なくとも表面が分解し、もしくは現像液への溶解性が高まる、またはシリコーンゴム層との接着力が低下するものであることが好ましい。このような感熱層は例えば以下のような組成物を含有することができる。
(A)活性水素を有するポリマー、有機錯化合物、および光熱変換物質を含む組成物。
(B)活性水素を有するポリマー、架橋剤、および光熱変換物質を含む組成物。
(C)自己反応性を持つ活性水素を有するポリマー、および光熱変換物質を含む組成物。
前記感熱層は、レーザー光を照射することで、光熱変換物質から発生した熱により、(A)に示した組成物においては、活性水素を有するポリマーと有機錯化合物とで構成されていた架橋構造、(B)に示した組成物においては、当該ポリマーと架橋剤とで構成されていた架橋構造、(C)に示した組成物においては、当該ポリマーの自己反応で形成された架橋構造が分解される。
感熱層に好ましく用いられる活性水素を有するポリマーとしては、活性水素をもつ構造単位を有するポリマーを挙げることができる。活性水素をもつ構造単位としては例えば、−OH、−SH、−NH、−NH−、−CO−NH、−CO−NH−、−OC(=O)−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CS−OH、−CO−SH、−CS−SH、−SOH、−PO、−SO−NH、−SO−NH−、−CO−CH−CO−などが挙げられる。
上記組成物(A)および(B)で好適に使用できる活性水素を有するポリマーとしては、カルボキシル基もしくは水酸基を有するアクリル樹脂類、ポリウレタン類、ポリウレア類、ポリアミド類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、セルロース誘導体類などが挙げられる。
また、上記組成物(C)で好適に使用できる自己反応性を持つ活性水素を有するポリマーとしては、レゾール樹脂類、メラミン樹脂類などが挙げられる。
活性水素を有するポリマーの含有量は、熱により感熱層表面を分解する、あるいは現像液に対し易溶解性に変化させることにより、現像を促進させる点で、感熱層中20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、感熱層の靱性の点で95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
上記組成物(A)に含まれる有機錯化合物は、金属と有機化合物とからなるものである。これは活性水素を有するポリマーへの架橋剤として機能する。このような有機錯化合物としては、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位した有機無機錯塩、金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類などが挙げられる。
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Al(III)、Ti(IV)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Ni(II)、Ni(IV)、Cu(I)、Cu(II)、Zn(II)、Ge、In、Sn(II)、Sn(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)が好ましい。Al(III)は感度向上効果が得られやすい点から特に好ましく、Ti(IV)は印刷インキやインキ洗浄剤に対する耐性が発現しやすい点から特に好ましい。
また、配位子としては、酸素、窒素、硫黄などをドナー原子として有する配位基を有する化合物が挙げられる。配位基の具体例としては、酸素をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル、R:脂肪族または芳香族炭化水素を表す)、−N=O(ニトロソ化合物)、−NO(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SOH(スルホン酸)、−PO(亜リン酸)など、窒素をドナー原子とするものとしては、−NH(1級アミン、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(アルデヒド、ケトンイミン、エナミン類)、−NCS(イソチオシアナト)など、硫黄をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアミド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SH、−C(=S)−OH、−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナート)などが挙げられる。
上記のような金属と配位子から形成される有機錯化合物のうち、好ましく用いられる化合物としては、Al(III)、Fe(II)、Fe(III)、Ti(IV)、Zr(IV)のアセチルアセトン錯体、アセト酢酸エステル錯体などが挙げられる。
このような化合物の具体例としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジブトキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(エチルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリ−n−ブトキシドモノ(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリイソプロポキシドモノ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)、チタニウムオキサイシドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、鉄(III)アセチルアセトネート、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)。これらを2種以上含有してもよい。
このような有機錯化合物は、ポリマーの架橋剤として働く。その量は感熱層中0.5質量%以上が好ましい。また、水なし平版印刷版の耐刷性を維持する点で50質量%以下が好ましい。
上記組成物(B)に含まれる架橋剤としては、上記ポリマーが有する活性水素と反応性を有する官能基を複数有する多官能性化合物が挙げられる。例えば、多官能イソシアネート、多官能ブロックドイソシアネート、多官能エポキシ化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルデヒド、多官能メルカプト化合物、多官能アルコキシシリル化合物、多官能アミン化合物、多官能カルボン酸、多官能ビニル化合物、多官能ジアゾニウム塩、多官能アジド化合物、ヒドラジンなどが挙げられる。
上記組成物(A)〜(C)が含むことができる光熱変換物質としては、レーザー光を吸収することにより、光エネルギーを原子・分子の運動エネルギーに変換し、瞬間的に感熱層表面で200℃以上の熱を発生させることで、感熱層の架橋構造を熱分解する機能を有するものが好ましい。特に赤外線または近赤外線を吸収する顔料、染料が好ましい。例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、結晶水含有無機化合物、鉄、銅、クロム、ビスマス、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、コバルト、バナジウム、マンガン、タングステンなどの金属粉、またはこれら金属の硫化物、水酸化物、珪酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ジアミン化合物錯体、ジチオール化合物錯体、フェノールチオール化合物錯体、メルカプトフェノール化合物錯体などを挙げることができる。
また、赤外線または近赤外線を吸収する染料としては、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜1500nmの範囲にあるシアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
これらの染料のなかでも、モル吸光係数εの大きなものが好ましく使用される。具体的には、εは1×10L/(mol・cm)以上が好ましく、より好ましくは1×10L/(mol・cm)以上である。εが1×10L/(mol・cm)以上であれば、初期感度をより向上させることができる。ここでの係数は照射する活性エネルギー線に対してである。具体的な波長を示すのであれば780nm、830nmまたは1064nmに注目するのがよい。
これらの光熱変換物質を2種以上含有してもよい。吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を含有することにより、発信波長の異なる2種以上のレーザーに対応させることができる。
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラック、赤外線または近赤外線を吸収する染料が好ましい。
これら光熱変換物質の含有量は、感熱層中0.1質量%〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜40質量%である。光熱変換物質の含有量を0.1質量%以上とすることで、レーザー光に対する感度をより向上させることができる。一方、70質量%以下とすることで、水なし平版印刷版の高い耐刷性を維持することができる。
(シリコーンゴム層)
シリコーンゴム層としては、付加反応型シリコーンゴム層組成物、縮合反応型シリコーンゴム層組成物、もしくは付加反応型と縮合反応型の両方を含有するシリコーンゴム層組成物を塗布して得られる層、またはこれらの組成物の溶液を塗布、乾燥して得られる層が挙げられる。
シリコーンゴム層の膜厚は、印刷濃度、印刷可能距離を向上させる点で、2.2μm以上が好ましく、2.4μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましい。また、精細度を向上させる点で、5.0μm以下が好ましく、4.0μm以下がより好ましい。なお、シリコーンゴム層の膜厚は、水なし平版印刷版の切片を樹脂包埋後、CP法により断面を作製し、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)観察することで確認することができる。
シリコーンゴム層に含まれるシリコーンゴムとしては、硬化速度に優れ、生産性向上が期待できる点で、付加反応型シリコーンゴム組成物が好ましい。付加反応型シリコーンゴムを含む組成物は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、複数のヒドロシリル基を有するSiH基含有化合物および硬化触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤を含有してもよい。
付加反応型シリコーンゴム層は、ビニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有化合物の反応により、シリコーンゴムの架橋点として、新たに下記一般式(ii)で表されるシロキサン単位が生じる。固体29Si NMRスペクトルにおいて、シリコーンゴムのベース成分である下記一般式(i)で表されるジメチルシロキサン単位に帰属されるピーク、および下記一般式(ii)で表されるシロキサン単位に帰属されるピークが観測され、(ii)Si**のピーク面積/(i)Siのピーク面積で表されるピーク面積比を算出することで、シリコーンゴム層の架橋密度を見積もることができる。
−Si−O−Si(CH−O−Si− (i)
−CH−Si**(CH−O−Si− (ii)
同一のビニル基含有オルガノポリシロキサンを使用した場合、(ii)/(i)のピーク面積比が大きい(架橋密度が高い)と、シリコーンゴム層は破断し難くなり精細度が低下する傾向がある。一方で、シリコーンゴム層が強靱になるため印刷可能距離は向上する。精細度と印刷可能距離を両立できる点で、(ii)/(i)のピーク面積比は、0.0005〜0.0030が好ましく、0.0010〜0.0025がより好ましい。
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(α)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
−(SiR−O−)− (α)
一般式(α)中、nは2以上の整数を示す。RおよびRは炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。RおよびRは同じであっても異なっていてもよい。一般式(α)のポリシロキサンに複数存在するRは相互に同じであっても異なっていてもよい。また 一般式(α)のポリシロキサンに複数存在するR2は相互に同じであっても異なっていてもよい。上記一般式(α)中、RおよびRは全体の50%以上がメチル基であることが、水なし平版印刷版のインキ反発性の点で好ましい。また、精細度や耐傷性の観点から、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は30,000以上200,000以下が好ましい。
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。これらを2種以上含有してもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造をもつことができる。
また、下記一般式(iii)と(iv)で表されるシロキサン構造単位の共重合体であるSiH基含有化合物が地汚れ開始温度向上、コストの点から好ましい。
−SiH(CH)−O− (iii)
−Si(CH−O− (iv)
本発明における、前記SiH基含有化合物の一般式(iii)で表されるシロキサン構成単位と一般式(iv)で表されるシロキサン構成単位の合計100モル%に対する一般式(iii)で表されるシロキサン構成単位の含有比率は、1分子当たりに反応できる官能基量が多く、架橋密度を向上できる点から50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。一般式(iii)で表されるシロキサン構成単位の含有比率は、100モル%であっても構わないが、架橋点過多により脆くなるのを防ぐ点で99モル%以下であることが好ましい。
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられ、アセチレン基含有アルコールが好ましく用いられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの反応抑制剤を含有することにより、シリコーンゴム層の硬化速度を調整することができる。反応抑制剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
硬化触媒は公知のものから選ぶことができる。好ましくは白金系化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。なお、白金触媒は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)分析により、分布と添加量を見積もることができる。
また、これらの成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シランもしくはこの官能基を含有するシロキサン、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類などが好ましく、またビニル基やアリル基がケイ素原子に直結したものが好ましい。
(水なし平版印刷版の製造方法)
次に、水なし平版印刷版原版から水なし平版印刷版を製造する方法について説明する。水なし平版印刷版の製造方法は、上記水なし平版印刷版原版を像に従って露光する工程(露光工程)、露光した水なし平版印刷版原版に物理刺激を与え、露光部のインキ反発層を除去する工程(現像工程)を含む。
まず、露光工程について説明する。本発明の水なし平版印刷版原版を像に従って露光する。露光工程で用いられる光源としては、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが挙げられる。これらの中でも、感熱層の吸収波長として広く用いられることから、近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられる。具体的には、熱への変換効率の観点から780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が露光に好ましく用いられる。
次に、現像工程について説明する。露光後の原版に物理刺激を与えることにより、露光部のシリコーンゴム層を除去する。物理刺激を与える方法としては、例えば、(I)乾燥した不織布、脱脂綿、布、スポンジなどで版面を拭き取る方法、(II)現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジなどで版面を拭き取る方法、(III)現像液で版面を前処理した後に水道水などをシャワーしながら回転ブラシで擦る方法、(IV)高圧の水や温水、または水蒸気を版面に噴射する方法などが挙げられる。
現像液としては、例えば水、アルコールやパラフィン系炭化水素を使用できる。また、ジグリコールアミン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールへのアルキレンオキサイド付加物などのプロピレングリコール誘導体や、上記化合物と水との混合物も使用できる。現像液の具体例としては、HP−7N、WH−3、PP−1、PP−3、PP−F、PP−FII、PTS−1、CP−1、CP−Y、CP−X、NP−1、DP−1(何れも東レ(株)製)などを挙げることができる。また、画線部の視認性や網点の計測精度を高める目的から、現像液にクリスタルバイオレット、ビクトリアピュアブルー、アストラゾンレッド等の染料を添加して現像と同時に画線部の染色を行うこともできる。さらには、現像の後に上記の染料を添加した液によって染色することもできる。
上記現像工程の一部または全部は、自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては以下の装置が使用できる。現像部のみの装置、前処理部および現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部、水洗部がこの順に設けられた装置など。このような自動現像機の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(共に東レ(株)製)などが挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
(1)付加型シリコーンゴム層の架橋密度定量
付加型シリコーンゴム層の架橋密度は、固体29Si NMR分析により以下のように定量した。水なし平版印刷版からシリコーンゴム層を削り取り、AVANCE400(Bruker社製)を用いたDD/MAS法により、測定核:29Si、スペクトル幅:40kHz、パルス幅:4.2μsec、パルス繰り返し時間:ACQTM 0.02049sec,PD 140sec、観測ポイント:8192、基準物質:ヘキサメチルシクロトリシロキサン(外部基準:−9.66ppm)、温度:22℃、試料回転数:4kHzの条件下で固体29Si NMR測定を行った。
得られた29Si DD/MAS NMRスペクトルの化学シフト22ppm付近のピークを、シリコーンゴムのベース成分である下記一般式(i)で表されるジメチルシロキサン単位に帰属し、7−8ppm付近のピークを、架橋点である下記一般式(ii)で表されるシロキサン単位に帰属した。
−Si−O−Si(CH−O−Si− (i)
−CH−Si**(CH−O−Si− (ii)
(ii)Si**のピーク面積/(i)Siのピーク面積で表されるピーク面積比率を算出し架橋密度とした。
(2)ブランケットの物性評価
ブランケットの物性を評価するため、ショアA硬度計によりゴム硬度を、表面粗さ・輪郭形状測定機で表面粗さ(Ra)をそれぞれ測定した。
ショアA硬度計GS−719N((株)テクロック製)をブランケット表面に対し垂直に押し当て、置針の値を読み取る操作を10箇所で実施し、その平均値をブランケットのゴム硬度とした。
表面粗さ・輪郭形状測定機SURFCOM 1400D((株)東京精密製)を用いて、JIS01規格(2001年度)、測定速度:0.3mm/s、測定距離:6mmの条件で、粗さ測定を実施した。測定は5箇所で実施し、その平均値を表面粗さ(Ra)とした。
(3)水なし平版印刷版の製造
実施例の水なし平版印刷版原版に対し、CTP用露光機“PlateRite”8900N−E((株)SCREEN製)を用いて、照射エネルギー:125mJ/cm(ドラム回転数:210rpm)の条件で露光を行った。縦550mm×横650mmの平版印刷版原版の中央に、縦100mm×線幅40、30、25、20、15、10μmの6本の細線と、縦20mm×横650mmの帯状のベタ画像を設けた。露光した原版を自動現像機TWL−1160F(東レ(株)製)に速度40cm/分で通し、DP−1(東レ(株)製)で版面を前処理した後に、水道水をシャワーしながら回転ブラシで版面を擦ることで水なし平版印刷版を製造した。
(4)水あり平版印刷版およびグラビアシリンダーの製造
[水あり平版]
水あり平版印刷版原版SUPERIA“XP−F”(FUJIFILM製)に対し、CTP用露光機“PlateRite”8900N−E((株)SCREEN製)を用いて、照射エネルギー:125mJ/cm(ドラム回転数:210rpm)の条件で露光を行った。縦550mm×横650mmの平版印刷版原版の中央に、縦100mm×線幅40、30、25、20、15、10μmの6本の細線と、縦20mm×横650mmの帯状のベタ画像を設けた。露光した原版を自動現像機XP−940R(FUJIFILM製)に速度140cm/分で通し、現像液XP−D(FUJIFILM製)で処理することで水あり平版印刷版を製造した。
[グラビアシリンダー]
銅メッキを施したシリンダーに対し、グラビアシリンダー用電子彫刻機Vision3(OHIO社製)を用いて、線幅300、200、100、50、25、20μmの6本の細線と、縦20mm×横20mmのベタ画像を、セル深度30μmになるように彫刻した。その後、表面の強度を出すためにクロムメッキすることでグラビアシリンダーを製造した。
(5)印刷版の精細度の評価
上記(3)で得られた水なし平版印刷版、上記(4)で得られた水あり平版印刷版およびグラビアシリンダーの細線を100倍のルーペで観察し、断線せず再現している最小線幅を細線再現性とし、精細度の指標とした。線幅が25μm以下であれば良好であり、20μm以下であればより好ましい。
(6)転写フィルムの製造
枚葉印刷機“オリバー266EPZ”(桜井グラフィックシステムズ(株)製、2色機)の排紙部に速度可変式コンベアを内蔵した紫外線照射装置を連結し、所定のブランケットをブランケット胴に備え付けた印刷試験機を準備した。その印刷試験機の版胴に、上記(3)で製造した水なし平版印刷版を装着し、所定の油性およびUV硬化型インキを用いて、5000sphの速度で印刷試験を行った。なお、UV硬化型インキを用いるときのみ、出力120W/cmのメタルハライドランプを使用し、焦点距離150mm、流れ方向のランプハウスの幅100mmの条件で紫外線照射を実施した。
インキローラーにより水なし平版印刷版にインキを供給し、水なし平版印刷版とブランケットとを接触させ、水なし平版印刷版からブランケットにインキを転写した。続いてブランケット上のインキを、離型フィルム基材に転写するオフセット印刷を行い、転写フィルムを製造した。
印刷濃度を向上させるため、同じ箇所に同じ画像を2回転写させる場合は、上記(3)で製造した同画像の水なし平版印刷版を、印刷試験機の1胴目と2胴目の両方に装着し、オフセット印刷を行うことで転写フィルムを製造した。3回以上転写させる場合は、一度印刷した転写フィルムを回収し、その上に再度同画像を印刷することで転写フィルムを製造した。
(7)転写フィルムの印刷濃度の評価
転写フィルムについて、反射分光光度計“SpectroEye”(X−rite(株)製)を用いて、カラーフィルター:ブラックの条件で、墨インキのベタ画像部の反射濃度を測定した。測定は10箇所で実施し、その平均値を転写フィルムの印刷濃度とした。
(8)転写加飾体モデルの製造
転写フィルムの墨インキベタ画像部の印刷面に、“セロテープ”(登録商標)No.405(NICHIBAN製、幅15mm、粘着力3.93N/10mm)を100g/mmの圧力で10秒間貼り合わせた後、転写フィルムに対して90度の角度かつ10mm/sの速度で引き剥がした。印刷面が転写した“セロテープ”(登録商標)をOKトップコート紙(王子製紙製)に貼り合わせることで、転写加飾体モデルを製造した。
(9)転写加飾体モデルの印刷濃度の評価
転写加飾体モデルについて、反射分光光度計“SpectroEye”(X−rite(株)製)を用いて、カラーフィルター:ブラックの条件で、転写加飾体モデルの“セロテープ”(登録商標)側から、墨インキのベタ画像部の反射濃度を測定した。測定は10箇所で実施し、その平均値を転写加飾体モデルの印刷濃度とし、実際の転写加飾体の印刷濃度の指標とした。印刷濃度は1.0以上であれば実用上問題ない。視覚的意匠性(隠蔽性、立体性、艶出し)の観点から、1.6以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。特に1.6以上あれば、転写加飾体を製造するときに、被転写物である成形体/構造体表面に対するインキによる隠蔽性がグラビア印刷相当になり、より重厚な絵柄にすることができる。また、インキが厚盛りになるため、より立体感や艶感を付与することができ好ましい。このような視覚的意匠性は、一般的な反射分光光度計の測定濃度限界である2.5までの範囲において良好である。転写フィルムよりも転写加飾体モデルの方が印刷濃度は低下するが、転写フィルムの印刷濃度に対して、濃度低下率が20%以下であれば実用上問題ない。濃度低下率は低いほど良いが、転写フィルムと転写加飾体の絵柄が近くなり校正し易いという点で、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
(10)シリコーンオイルおよびウレタン結合を有する樹脂のインキへの添加
インキ中にシリコーンオイルもしくはウレタン結合を有する樹脂を、所定の含有量(質量%)になるよう添加し、3本ローラーミルEXAKT(永瀬スクリーン印刷研究所製)に、温度:30℃、クリアランス:6μm、速度目盛り:60の条件で1回通しすることで、シリコーンオイルもしくはウレタン結合を有する樹脂を含有するインキを調製した。
(11)地汚れ開始温度の測定
上記(6)の転写フィルムの製造において、チラーを用いてインキローラーの温度を制御し、水なし平版印刷版の版面温度を変更した。版面温度は非接触温度計で測定し、温度ごとに非画線部の地汚れを確認した。
(12)印刷可能距離の計測
上記(6)の転写フィルムの製造において、版面温度を約25℃に維持しながら、印刷方向に500mm(幅630mm、厚み0.1mm)の長さを有する離型フィルム基材に対し連続印刷を続けた。10,000枚毎に、版の損傷に起因する転写フィルムの地汚れ状態を確認し、[目視で悪化が確認できるまでの枚数]×[0.5m(フィルム基材の長さ)]を印刷可能距離(m)とした。
[実施例1]
水なし平版印刷版原版を以下の方法で作製した。厚み0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に下記の有機層組成物溶液を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、厚み10.0μmの有機層を設けた。なお、有機層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
<有機層組成物溶液>
(a)活性水素を有するポリマー:エポキシ樹脂:“エピコート”(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):35質量部
(b)活性水素を有するポリマー:ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20質量%):375質量部
(c)アルミキレート:アルミキレートALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10質量部
(d)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10質量%):1質量部
(e)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株)製)のN,N−ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50質量%):60質量部
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:730質量部
(g)メチルエチルケトン:250質量部。
次いで、感熱層組成物溶液を上記有機層上に塗布し、140℃で90秒間加熱乾燥し、厚み1.5μmの感熱層を設けた。なお、感熱層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
<感熱層組成物溶液>
(a)赤外線吸収染料(シアニン色素):NK5559(株式会社林原製、最大吸収波長:774nm):16.0質量部
(b)有機錯化合物:チタニウム−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、濃度:73質量%、溶剤としてn−ブタノール:27質量%を含む):15.0質量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):60質量部
(d)ポリウレタン:“ニッポラン”(登録商標)5196(日本ポリウレタン(株)製、濃度:30質量%、溶剤としてメチルエチルケトン:35質量%、シクロヘキサノン:35質量%を含む):25質量部
(e)テトラヒドロフラン:1044質量部。
次いで、塗布直前に調製したシリコーンゴム層組成物溶液−1を上記感熱層上に塗布し、140℃で80秒間加熱し、平均膜厚2.1μmのシリコーンゴム層を設けることで水なし平版印刷版原版を得た。なお、シリコーンゴム層組成物溶液−1は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
<シリコーンゴム層組成物溶液−1>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V52(重量平均分子量15,500、GELEST Inc.製):51.28質量部
(b)α,ω−両末端シラノールポリジメチルシロキサン:TF13(重量平均分子量400,000、東レ・ダウコーニング(株)製):34.19質量部
(c)メチルハイドロジェンシロキサンHMS−151(分子量:1950、GELEST Inc.製):5.98質量部
(d)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.57質量部
(e)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製):5.98質量部
(f)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):900質量部。
得られた水なし平版印刷版原版を上記(3)の方法で露光・現像し、水なし平版印刷版を製造した。水なし平版印刷版のシリコーンゴム層の架橋密度((ii)/(i)のピーク面積比率)を確認したところ0.00048であった。また、細線再現性は10μmと非常に良好であった。
上記(6)の方法の通り、ブランケット“バルカン”(ガデリウス製)をブランケット胴に備え付け、水なし平版印刷版を版胴に装着した印刷機を準備した。ここで、ブランケットの物性を上記(2)の方法で評価したところ、ゴム硬度:85、表面粗さRa:1.41μmであった。
油性インキ“アルポ GT SOYA”−M(株式会社T&K TOKA製)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)であるルミラー“F99”(東レ株式会社製)に対し、転写回数1回で連続印刷を行い、転写フィルムを製造した。地汚れ開始温度は30℃、印刷可能距離は10,000mであった。また、上記(8)の通り転写加飾体モデルを作製した。転写フィルムの印刷濃度は1.40、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.12であり、濃度低下率は20%と実用上問題ない範囲であった。
[実施例2]
ルミラー“F99”をポリプロピレン(PP)であるP2111(東洋紡製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は30℃、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.40、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.20であり、濃度低下率は14%と実用上問題ない範囲であった。
[実施例3]
転写回数を1回から2回に増やしたこと以外は実施例2と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は30℃、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.55であり、濃度低下率は14%と実用上問題ない範囲であった。
[実施例4]
油性インキ“アルポ GT SOYA”−M(株式会社T&K TOKA製)から、UVインキ“FD アクワレス FC BEPS”−M(東洋インキ株式会社製)に変えたこと以外は、実施例3と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は28℃、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.55であり、濃度低下率は14%と実用上問題ない範囲であった。
[実施例5]
UVインキ“FD アクワレス FC BEPS”−M(東洋インキ株式会社製)に対し、上記(10)の方法の通り、シリコーンオイルであるKF−96−100cs(信越シリコーン製、末端ジメチルポリジメチルシロキサン)を0.1質量%含有するよう添加したこと以外は、実施例4と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は32℃と良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.60であり、濃度低下率は11%と実用上問題ない範囲であった。
[実施例6]
インキ中のKF−96−100csの含有量を、0.1質量%から2.0質量%に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は38℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.60であり、濃度低下率は11%と実用上問題ない範囲であった。
[実施例7]
インキ中のKF−96−100csの含有量を、0.1質量%から1.5質量%に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は37℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.68であり、濃度低下率は7%と良好な結果が得られた。
[実施例8]
UVインキ“FD アクワレス FC BEPS”−M(東洋インキ株式会社製)に対し、上記(10)の方法の通り、KF−96−100csを1.0質量%、ウレタン結合を有する樹脂であるサンプレンLQ−336N(三洋化成工業株式会社製、ポリウレタン樹脂、固形分濃度:30質量%、溶剤:ジメチルホルムアミド)を0.05質量%含有するよう添加したこと以外は、実施例4と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.70であり、濃度低下率は6%と良好な結果が得られた。
[実施例9]
インキ中のサンプレンLQ−336Nの含有量を、0.05質量%から6.0質量%に変更したこと以外は、実施例8と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.70であり、濃度低下率は6%と良好な結果が得られた。
[実施例10]
インキ中のサンプレンLQ−336Nの含有量を、0.05質量%から0.5質量%に変更したこと以外は、実施例8と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.78であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例11]
インキ中のウレタン結合を有する樹脂を、サンプレンLQ−336NからバイロンUR−6100(東洋紡株式会社製、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂、固形分濃度:45質量%、溶剤:シクロヘキサノン/ソルベッソ/イソホロン=40/40/20)に変更したこと以外は、実施例10と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.78であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例12]
インキ中のバイロンUR−6100の含有量を、0.5質量%から5.0質量%に変更したこと以外は、実施例11と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.75であり、濃度低下率は3%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例13]
インキ中のバイロンUR−6100の含有量を、0.5質量%から3.0質量%に変更したこと以外は、実施例11と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は10,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.78であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例14]
インキ中のバイロンUR−6100の含有量を、0.5質量%から2.0質量%に変更し、また、シリコーンゴム層の平均膜厚を2.1μmから2.4μmに変更したこと以外は、実施例11と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は15,000mであった。また、転写フィルムの印刷濃度は1.90、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.88であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例15]
シリコーンゴム層組成物溶液−1を以下のシリコーンゴム層組成物溶液−2に変更し、平均膜厚を2.4μmから3.0μmに変更した以外は、実施例14と同様にして、水なし平版印刷版原版を得た。
<シリコーンゴム層組成物溶液−2>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V52(重量平均分子量15,500、GELEST Inc.製):88.11質量部
(b)メチルハイドロジェンシロキサンRD−1(分子量:750、GELEST Inc.製):3.08質量部
(c)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.64質量部
(d)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製):6.17質量部
(e)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):900質量部
得られた水なし平版印刷版原版を前記方法で露光・現像し、水なし平版印刷版を製造した。水なし平版印刷版のシリコーンゴム層の架橋密度((ii)/(i)のピーク面積比率)を確認したところ0.00081であった。また、細線再現性は15μmと非常に良好であった。実施例12と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造したところ、地汚れ開始温度は36℃と非常に良好であり、印刷可能距離は20,000mと良好な結果であった。また、転写フィルムの印刷濃度は2.00、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.98であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例16]
シリコーンゴム層組成物溶液−1を以下のシリコーンゴム層組成物溶液−3に変更し、平均膜厚を2.4μmから4.0μmに変更した以外は、実施例14と同様にして、水なし平版印刷版原版を得た。
<シリコーンゴム層組成物溶液−3>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):86.95質量部
(b)メチルハイドロジェンシロキサンRD−1(分子量:750、GELEST Inc.製):4.24質量部
(c)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.64質量部
(d)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製):6.17質量部
(e)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):900質量部
得られた水なし平版印刷版原版を前記方法で露光・現像し、水なし平版印刷版を製造した。水なし平版印刷版のシリコーンゴム層の架橋密度((ii)/(i)のピーク面積比率)を確認したところ0.00250であった。また、細線再現性は25μmと良好であった。実施例12と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造したところ、地汚れ開始温度は36℃、印刷可能距離は40,000mと非常に良好な結果であった。また、転写フィルムの印刷濃度は2.20、転写加飾体モデルの印刷濃度は2.18であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例17]
シリコーンゴム層の平均膜厚を4.0μmから3.0μmに変更し、ブランケット“エアータックJ”(金陽社製)に変更した以外は、実施例16と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。ここで、ブランケットの物性を評価したところ、ゴム硬度:77、表面粗さRa:1.32μmであった。得られた水なし平版印刷版の細線再現性は20μmと非常に良好であった。地汚れ開始温度は36℃、印刷可能距離は30,000mと非常に良好な結果であった。また、転写フィルムの印刷濃度は2.10、転写加飾体モデルの印刷濃度は2.08であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例18]
ブランケット“PFUVCA”(トレルボルグ製)に変更した以外は、実施例17と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。ここで、ブランケットの物性を評価したところ、ゴム硬度:82、表面粗さRa:0.64μmであった。地汚れ開始温度は36℃、印刷可能距離は30,000mと非常に良好な結果であった。また、転写フィルムの印刷濃度は2.20、転写加飾体モデルの印刷濃度は2.18であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例19]
ブランケット“UV Green”(藤倉ゴム製)に変更した以外は、実施例17と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。ここで、ブランケットの物性を評価したところ、ゴム硬度:72、表面粗さRa:1.00μmであった。地汚れ開始温度は36℃、印刷可能距離は30,000mと非常に良好な結果であった。また、転写フィルムの印刷濃度は2.20、転写加飾体モデルの印刷濃度は2.18であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例20]
インキ中にウレタン結合を有する樹脂を添加しないこと以外は、実施例19と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃、印刷可能距離は30,000mと非常に良好な結果であった。また、転写フィルムの印刷濃度は2.20、転写加飾体モデルの印刷濃度は2.08であり、濃度低下率は5%と非常に良好な結果が得られた。
[実施例21]
転写回数を2回から4回に増やしたこと以外は、実施例19と同様にして、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。地汚れ開始温度は36℃、印刷可能距離は30,000mと非常に良好な結果であった。また、転写フィルムの印刷濃度は2.50、転写加飾体モデルの印刷濃度は2.48であり、濃度低下率は1%と非常に良好な結果が得られた。
[比較例1]
ブランケット“バルカン”(ガデリウス製)をブランケット胴に備え付け、上記(4)で製造した水あり平版印刷版SUPERIA“XP−F”(FUJIFILM製)を版胴に装着した印刷機を準備した。油性インキ“BEST ONE スーパーテック GT”(株式会社T&K TOKA製)を用いて、ルミラー“F99”に対し、転写回数1回で連続印刷を行い、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。
水あり平版印刷版の細線再現性は25μmと良好であったが、ルミラー“F99”に対する湿し水のハジキにより、印刷するほどインキが滲んでしまい、上記(7)および(9)の印刷濃度が評価出来る印刷可能距離は100m未満と著しく悪かった。評価可能なものであっても転写フィルムの印刷濃度は0.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は0.60しかなく、また濃度低下率は25%もあったため、実用不可の結果となった。
[比較例2]
上記(4)で製造したグラビアシリンダーをFB型グラビア印刷機(富士機械工業株式会社製)に取り付け、油性インキ“エコカラー HG”(東洋インキ株式会社製)を用いて、ルミラー“F99”に対し、転写回数1回で連続印刷を行い、転写フィルムおよび転写加飾体モデルを製造した。印刷可能距離は40,000mと非常に良好であり、また、転写フィルムの印刷濃度は1.80、転写加飾体モデルの印刷濃度は1.55であり、濃度低下率は14%と実用上問題ない範囲であったが、グラビアシリンダーの細線再現性は200μmと画像再現性は不足していた。したがって、これを用いてフィルム転写加飾を行っても高精細な印刷ができない。
Figure 2020069759

Claims (13)

  1. 少なくとも(1)水なし平版印刷版の表面にインキを付着させる工程、(2)前記インキを直接またはブランケットを介して離型フィルム基材上に転写する工程、を有する転写フィルムの製造方法。
  2. 前記離型フィルム基材がオレフィン系樹脂を含有する請求項1に記載の転写フィルムの製造方法。
  3. 前記(1)および(2)の工程を繰り返し、前記離型フィルム基材の同じ箇所に同じ画像を2回以上転写させる請求項1または2のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  4. 前記(2)の工程の後に、活性エネルギー線を照射し、前記インキを硬化させる請求項1〜3のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  5. 前記インキがシリコーンオイルを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  6. 前記インキ中に前記シリコーンオイルを0.1質量%以上5.0質量%以下含有する請求項5に記載の転写フィルムの製造方法。
  7. 前記インキ中にウレタン結合を有する樹脂を0.1質量%以上5.0質量%以下含有する請求項1〜6のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  8. 前記水なし平版印刷版がシリコーンゴム層を有し、当該シリコーンゴム層の膜厚が2.2μm以上5.0μm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  9. 前記水なし平版印刷版がシリコーンゴム層を有し、当該シリコーンゴム層に含まれるシリコーンゴムが、付加型シリコーンゴムである請求項1〜8のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  10. 前記シリコーンゴムの固体29Si NMRスペクトルにおいて、下記一般式(i)で表されるジメチルシロキサン単位に帰属されるピーク、および下記一般式(ii)で表されるシロキサン単位に帰属されるピークが観測され、(ii)Si**のピーク面積/(i)Siのピーク面積で表されるピーク面積比が0.0005〜0.0030である請求項9に記載の転写フィルムの製造方法。
    Si−O−Si(CH−O−Si (i)
    −CH−Si**(CH−O−Si (ii)
  11. 前記ブランケットのゴム硬度が70〜84である請求項1〜10のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  12. 前記ブランケットの表面粗さRaが0.5〜1.4μmである請求項1〜11のいずれかに記載の転写フィルムの製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の方法で得られる転写フィルムを用いた転写加飾体の製造方法。
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