JP2021154650A - 金属/樹脂複合構造体、金属/樹脂複合構造体の製造方法およびエンジンマウント部材 - Google Patents

金属/樹脂複合構造体、金属/樹脂複合構造体の製造方法およびエンジンマウント部材 Download PDF

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Abstract

【課題】金属部材に、ポリアミド樹脂組成物からなる樹脂部材が強固に接合および固着された、金属と樹脂の複合構造体を提供する。【解決手段】金属/樹脂複合構造体100は、金属部材110と、それと接合された樹脂部材120とを有する。樹脂部材120は、ポリアミド樹脂(A)と、タルク(B)とを含むポリアミド樹脂組成物からなる。ポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸に由来する成分単位を含むジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と、分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位とを含むジアミンに由来する成分単位(a2)とを含む。タルクの含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対して0.1〜5質量%である。【選択図】図1

Description

本発明は、金属/樹脂複合構造体、金属/樹脂複合構造体の製造方法およびエンジンマウント部材に関する。
樹脂部材と金属部材を接合する技術は、例えば、自動車、通信機器、家庭電化製品、産業機器などの広範な産業分野において求められている。
樹脂部材と金属部材を接合する技術として、金型にインサートされた金属部材に樹脂材料を射出成形することにより、樹脂部材と金属部材を接合する技術、いわゆる「射出接合法」が提案されている。
例えば、表面粗化された金属部材に対し、樹脂部材としてのポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「PBT」という。)、またはポリフェニレンスルフィド樹脂(以下「PPS」という。)を射出接合させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、金属表面粗化処理法の技術をさらに進展させることによって、PA6やPA66等のポリアミド樹脂を表面粗化金属部材に射出成形する方法も開示されている(特許文献2〜4)。
特開2004−216425号公報 特開2006−315398号公報 特開2007−182071号公報 国際公開第2008/081933号
しかしながら、特許文献2〜4に示される方法で得られた、樹脂部材と金属部材との複合構造体の接合強度は、未だ十分なレベルではなかった。
例えば、自動車エンジンルーム内部品であって、エンジンを支持する部品の一つであるエンジンマウントブラケットなどの、高温下で高い剛性が求められるパワートレイン系部品に従来の複合構造体を適用したとき、高温下での接合強度が未だ十分なレベルではない場合があり、改善の余地が残されていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、金属部材に、ポリアミド樹脂組成物からなる樹脂部材が強固に接合および固着された、金属/樹脂複合構造体およびその製造方法ならびにエンジンマウント部材を提供することを目的とする。
本発明は、以下の金属/樹脂複合構造体、金属/樹脂複合構造体の製造方法およびエンジンマウント部材に関する。
本発明の金属/樹脂複合構造体は、表面に凹凸構造を有する金属部材と、前記金属部材の前記凹凸構造を有する表面に接合された樹脂部材とを有する金属/樹脂複合構造体であって、前記樹脂部材は、ポリアミド樹脂(A)と、タルク(B)とを含むポリアミド樹脂組成物からなり、前記ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアミンに由来する成分単位(a2)とを含み、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分単位を含み、前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4〜15の直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と、炭素原子数4〜18の分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位とを含み、前記タルク(B)の含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物に対して0.1〜5質量%である。
本発明のエンジンマウント部材は、本発明の金属/樹脂複合構造体を含む。
金属/樹脂複合構造体の製造方法は、本発明の金属/樹脂複合構造体の製造方法であって、1)表面に凹凸構造を有する金属部材を、射出成形金型に配置する工程と、2)前記金属部材の前記凹凸構造を有する面に、溶融した前記ポリアミド樹脂組成物を射出し、固化させて、樹脂部材を接合する工程とを含む。
本発明によれば、金属部材に、ポリアミド樹脂組成物からなる樹脂部材が強固に接合および固着された、金属/樹脂複合構造体およびその製造方法ならびにエンジンマウント部材を提供することができる。
図1は、本実施形態の金属/樹脂複合構造体の構造の一例を模式的に示した外観図である。 図2は、十点粗さの測定方法を示す模式図である。
本発明者らは、分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むポリアミド樹脂(A)は、成形時に良好な流動性を有することを見出した。一方で、そのようなポリアミド樹脂を含む樹脂組成物は、凹凸構造を有する金属部材との接合強度が十分ではなかった。
これに対し、本発明者らは、分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むポリアミド樹脂(A)にタルク(B)を組み合わせることで、成形時の流動性を維持しつつ、金属部材と樹脂部材との接合強度を顕著に高めうることを見出した。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
すなわち、ポリアミド樹脂(A)は、分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むため、成形時に良好な流動性を示すものの、結晶化速度は遅い。そのため、射出成形時にはほとんど結晶化せず、射出成形終了後に結晶化しやすい。それにより、射出成形終了後における金属部材上での硬化収縮量が多くなり、金属部材と樹脂部材との界面に隙間が生じやすく、接合強度が低くなりやすい。
これに対し、ポリアミド樹脂(A)にタルク(B)を所定量配合することで、射出成形中にも結晶化を適度に進行させることができる。それにより、射出成形終了後の(金属部材上での)硬化収縮量を少なくすることができるため、金属部材と樹脂部材との界面に隙間が生じにくく、接合強度を高めることができる。
また、ポリアミド樹脂(A)よりも融解熱量(ΔH)(結晶性)が低いポリアミド樹脂(C)をさらに添加することで、射出成形時の樹脂組成物の流動性と結晶化速度とを高度にバランスさせることができる。それにより、金属部材と樹脂部材との界面に隙間がさらに生じにくく、接合強度をさらに高めうる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
1.金属/樹脂複合構造体
図1は、本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100の構造の一例を模式的に示した外観図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100は、表面に凹凸構造を有する金属部材110と、金属部材110と接合された樹脂部材120とを有する。
1−1.金属部材110
金属部材110は、樹脂部材120と接合される面の少なくとも一部に、微細な凹凸構造を有する。
(材料)
金属部材110を構成する金属材料は、特に限定されないが、例えば、鉄、高張力鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金などでありうる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。中でも、軽量かつ高強度の観点では、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。また、高強度の観点では、鉄および高張力鋼が好ましい。アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、6061、6063、7075が好ましく用いられる。
金属部材110の形状は、樹脂部材120と接合しうる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状などでありうる。また、樹脂部材120と接合される表面111は、特に限定されないが、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
金属部材110は、切断、プレスなどの塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工などの除肉加工などにより所定の形状に成形加工された後、後述する粗化処理がなされたものであることが好ましい。成形加工された金属部材110は、長期間の自然放置で表面に酸化皮膜(錆)があるものは、研磨や化学処理などにより取り除いておくことが好ましい。
(凹凸構造)
金属部材110は、少なくとも樹脂部材120と接する表面111に、複数の凸部を含む微細な凹凸構造を有することが好ましい。それにより、金属部材110と樹脂部材120との接合強度を向上させることができる。
微細な凹凸構造を構成する複数の凸部の中心間距離(ピッチ)は、金属部材110と樹脂部材120とを良好に接合させうる程度であればよく、特に制限されないが、5nm〜500μmであることが好ましい。複数の凸部の中心間距離が5nm以上であると、凸部同士の間の凹部が適度に大きいため、接合時にポリアミド樹脂組成物を当該凹部に十分に浸入させやすく、金属部材110と樹脂部材120との接合強度をより向上させうる。また、複数の凸部の中心間距離が500μm以下であると、当該凹部が大きくなりすぎないため、金属/樹脂複合構造体100の金属―樹脂界面に隙間が生じるのをより抑制できる。それにより、金属と樹脂の界面の隙間から水分などが浸入するのを一層抑制しうるため、金属/樹脂複合構造体を高温・高湿下で用いた際に、接合強度の低下を一層抑制できる。複数の凸部の中心間距離は、同様の観点から、5μm〜250μmであることがより好ましい。複数の凸部の中心間距離は、一の凸部の中心とそれと隣接する凸部の中心との間の距離の平均値である。
複数の凸部の中心間距離は、金属/樹脂複合構造体から樹脂部材を機械的剥離、溶剤洗浄などにより除去し、露出した金属部材110の表面を、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡観察、あるいは表面粗さ測定装置を用いて観察して測定することができる。
具体的には、複数の凸部の中心間距離が0.5μm未満の凹凸構造は、電子顕微鏡により観察することが可能であり、複数の凸部の中心間距離が0.5μm以上の凹凸構造は、レーザー顕微鏡または表面粗さ測定装置により観察することができる。例えば、金属部材110の表面を電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真において、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部の中心間距離をそれぞれ測定する。そして、凸部の中心間距離の全ての測定値を積算した後、50で除したもの(平均したもの)を「複数の凸部の中心間距離」とする。
金属部材110の微細な凹凸構造を有する表面111の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値は、特に制限されないが、2μmを超えることが好ましく、2μm超50μm以下であることがより好ましく、2.5μm超45μm以下であることがさらに好ましい。
十点平均粗さ(Rz)の平均値は、JIS B0601(ISO 4287)に準拠して測定することができる。具体的には、後述するように、互いに平行な任意の3つの直線部と、それらと直交する任意の3つの直線部の合計6つの直線部上の十点平均粗さ(Rz)を測定し、これらの平均値をRzの平均値とする(後述の図2参照)。
金属部材110の微細な凹凸構造を有する表面111の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、0.5〜500μmであることが好ましい。特に、接合強度の観点では、複数の凸部の中心間距離が0.5μm未満であり、かつ、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が0.5〜500μmであることが好ましい。粗さ曲線要素の平均長さも、前述と同様、JIS B0601(ISO 4287)により測定することができる。
1−2.樹脂部材120
樹脂部材120は、ポリアミド樹脂組成物の成形物である。
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、タルク(B)とを含む。
1−2−1.ポリアミド樹脂(A)
ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアミンに由来する成分単位(a2)とを含む。
[ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)]
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、特に制限されないが、結晶性を高めやすくする観点では、テレフタル酸に由来する成分単位を含むことが好ましい。
テレフタル酸に由来する成分単位の含有量は、特に限定されないが、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の総モル数に対して20〜100モル%であることが好ましい。上記成分単位の含有量が20モル%以上であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶性や機械的強度を高めやすい。上記成分単位の含有量は、同様の観点から、50〜100モル%であることがより好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他のジカルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジカルボン酸の例には、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸など)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸)、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸が含まれる。
他のジカルボン酸に由来する成分単位の合計含有量(テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位、脂環式ジカルボン酸に由来する成分単位、および、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位の合計含有量)は、0〜80モル%であることが好ましく、0〜50モル%であることがより好ましい。
[ジアミンに由来する成分単位(a2)]
ジアミンに由来する成分単位(a2)は、特に制限されないが、(得られる成形体の機械的強度を損なわない程度に)射出成形時の流動性を高める観点では、直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と、分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位とを含むことが好ましい。
直鎖状の脂肪族ジアミンは、炭素原子数4〜15の直鎖状の脂肪族ジアミンであることが好ましい。炭素原子数4〜15の直鎖状の脂肪族ジアミンの例には、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミンなどが含まれる。中でも、1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミンおよび1,10−デカンジアミンが好ましく、1,6−ヘキサンジアミンがより好ましい。これらの脂肪族ジアミンは、1種であってもよいし、2種以上あってもよい。
直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量の合計に対して20〜80モル%であることが好ましい。上記成分単位の含有量が20モル%以上であると、結晶化速度が遅くなりすぎないため、ポリアミド樹脂(A)の結晶性や機械的強度を適度に高めやすい。上記成分単位の含有量が80モル%以下であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度が高くなりすぎないため、成形時の流動性が損なわれにくい。同様の観点から、直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、上記合計に対して30〜60モル%であることがより好ましい。
分岐状の脂肪族ジアミンは、炭素原子数4〜18の分岐状の脂肪族ジアミンであることが好ましい。炭素原子数4〜18の分岐状の脂肪族ジアミンの例には、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,10−デカンジアミンが含まれる。中でも、2−メチル−1,8−オクタンジアミンおよび2−メチル−1,5−ペンタンジアミンが好ましく、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンがより好ましい。これらの脂肪族ジアミンは、1種であってもよいし、2種以上あってもよい。例えば、ジアミンに由来する成分単位(a2)は、2−メチル−1,8−オクタンジアミンに由来する成分単位と2−メチル−1,5−ペンタンジアミンに由来する成分単位のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量の合計に対して20〜80モル%であることが好ましい。上記成分単位の含有量が20モル%以上であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度が適度に遅くなりやすいため、成形時の流動性を高めやすい。上記成分単位の含有量が80モル%以下であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶性や機械的強度が損なわれにくい。同様の観点から、分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、上記合計に対して40〜70モル%であることがより好ましい。
なお、直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の合計は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の総モル数に対して60〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることがより好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。
ジアミンに由来する成分単位(a2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジアミンに由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジアミンの例には、芳香族ジアミンや脂環式ジアミンが含まれる。他のジアミンに由来する成分単位の合計含有量は、ジアミンに由来する成分単位(b)の総モル数に対して5モル%以下でありうる。
そのようなポリアミド樹脂(A)の例には、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)として、テレフタル酸に由来する成分単位を含み;ジアミンに由来する成分単位(a2)として、1,6−ヘキサンジアミンに由来する成分単位と、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンまたは2−メチル−1,8−オクタンジアミンに由来する成分単位とを含むポリアミド樹脂が含まれる。
[物性]
ポリアミド樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)は、後述のポリアミド樹脂(C)よりも高いことが好ましい。具体的には、ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)は、20J/gよりも高いことが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)が20J/gよりも高いと、結晶性が低すぎないため、耐熱性を高くしやすい。ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)は、同様の観点から、30〜130J/gであることがより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)は、280〜340℃であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)が280℃以上であると、離型性や機械的強度、耐熱性などが損なわれにくく、340℃以下であると、成形温度を過剰に高くする必要がないため、成形加工性が得られやすい。ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)は、290〜320℃であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定されるガラス転移温度(Tg)は、70〜170℃であることが好ましく、128〜155℃であることがより好ましい。ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であると、耐熱性が損なわれにくい。
ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)、融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定することができる。
具体的には、約5mgのポリアミド樹脂(A)を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱する。樹脂を完全融解させるために、350℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却する。30℃で5分間置いた後、10℃/minで360℃まで2度目の加熱を行う。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とする。融解熱量(ΔH)は、JIS K7122に準じて、1度目の昇温過程での結晶化の発熱ピークの面積から求める。
ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)、融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、ジカルボン酸やジアミンの組成によって調整することができる。
ポリアミド樹脂(A)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.5〜2.0dl/gであることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が0.5dl/g以上であると、得られる樹脂部材(成形体)の機械的強度(靱性など)を十分に高めやすく、2.0dl/g以下であると、成形時の流動性が損なわれにくい。ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は、同様の観点から、0.80〜1.15dl/gであることがより好ましい。極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂(A)の末端封止量などによって調整することができる。
ポリアミド樹脂(A)の極限粘度は、JIS K6810−1977に準拠して測定することができる。
具体的には、ポリアミド樹脂(A)0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解して試料溶液とする。この試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して、25±0.05℃の条件下で測定し、得られた値を下記式に当てはめて算出することができる。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
上記式において、各代数または変数は、以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
ηSPは、以下の式によって求められる。
ηSP=(t−t0)/t0
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ポリアミド樹脂(A)は、コンパウンドや成形時の熱安定性の観点から、少なくとも一部の分子の末端基が末端封止剤で封止されていてもよい。末端封止剤は、例えば分子末端がカルボキシル基の場合は、モノアミンであることが好ましく、分子末端がアミノ基である場合は、モノカルボン酸であることが好ましい。
モノアミンの例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モ
ノアミン;アニリン、トルイジンなどの芳香族モノアミンが含まれる。モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸などの炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;およびシクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸および脂環式モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
ポリアミド樹脂(A)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対して20〜99質量%であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の含有量が20質量%以上であると、ポリアミド樹脂(A)の特性が得られやすい。同様の観点から、ポリアミド樹脂(A)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対して35〜80質量%であることがより好ましい。
1−2−2.タルク(B)
タルク(B)は、ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度を適度に高めうる。それにより、金属部材110と樹脂部材120との接合強度を高めうる。
タルク(B)は、一般的に、含水ケイ酸マグネシウム(SiO:58〜64%、MgO:28〜32%、Al:0.5〜5%、Fe:0.3〜5%)を主成分とする。
タルク(B)の平均粒子径は、特に制限されないが、1〜15μmであることが好ましい。タルクの平均粒子径が上記範囲内であると、ポリアミド樹脂組成物の流動性を損なうことなく、ポリアミド樹脂(A)中に分散させやすい。同様の観点から、タルクの平均粒子径は、1〜7.5μmであることがより好ましい。
タルク(B)の平均粒子径は、レーザー回折法、例えば(株)島津製作所製の島津粒度分布測定器SALD−2000A型を用いたレーザー回折法により測定できる。
タルク(B)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。タルクの含有量が0.1質量%以上であると、射出成形時にポリアミド樹脂(A)を適度に結晶化させうるため、射出成形終了後のポリアミド樹脂(A)の結晶化による硬化収縮量をより少なくしうる。それにより、金属部材110の表面111(具体的には、凹凸構造を構成する複数の凸部同士の間)と樹脂部材120との間に隙間がさらに生じにくく、接合強度をさらに高めうる。タルク(B)の含有量が5質量%以下であると、射出成形時にポリアミド樹脂(A)が結晶化しすぎないため、流動性が損なわれにくく、金属部材110の表面111の微細な凹凸構造へのポリアミド樹脂組成物の追従不良(微細な凹凸構造を構成する複数の凸部同士の間への充填不良)をより抑制しうる。同様の観点から、タルク(B)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対して0.1〜3.5質量%であることが好ましい。
また、タルク(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)とタルク(B)の合計100質量部に対して0.02〜11質量部であることが好ましく、0.1〜7質量部であることがより好ましい。
1−2−3.他の成分
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂(C)、繊維状無機フィラー(D)、滑剤(E)、その他添加剤(例えば着色剤、酸化防止剤、重金属不活性化剤(キレート剤)、難燃助剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、抗菌剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、核剤、分散剤、増粘剤、発泡剤、顔料、染料、有機充填材など)が含まれる。中でも、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂(C)、繊維状無機フィラー(D)、滑剤(E)が好ましい。
(ポリアミド樹脂(C))
ポリアミド樹脂(C)の融解熱量(ΔH)は、ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)よりも低いことが好ましい。具体的には、ポリアミド樹脂(C)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)は、0〜5J/gであることが好ましい。ポリアミド樹脂(C)の融解熱量(ΔH)が5J/g以下であると、樹脂組成物の結晶性を下げることができるため、金属部材110上での硬化収縮量をさらに少なくすることができ、金属部材110との接合強度をさらに高めやすい。ポリアミド樹脂(C)の融解熱量(ΔH)は、同様の観点から、0J/gであることがより好ましい。また、ポリアミド樹脂(C)は、非晶性の樹脂であることが好ましい。
ポリアミド樹脂(C)とポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)の差は、特に制限されないが、20J/g以上であることが好ましい。融解熱量(ΔH)の差が20J/g以上であると、射出成形時のポリアミド樹脂組成物の結晶化速度を調整しやすい。同様の観点から、ポリアミド樹脂(C)とポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)の差は、より好ましくは30〜130J/g、さらに好ましくは30〜60J/gでありうる。ポリアミド樹脂(C)の融解熱量(ΔH)は、前述と同様の方法で測定することができる。
ポリアミド樹脂(C)は、融解熱量(ΔH)が上記範囲を満たすものであればよく、特に制限されないが、ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)と、ジアミンに由来する成分単位(c2)とを含む。
[ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)]
ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)は、特に制限されないが、結晶性を調整する観点では、イソフタル酸に由来する成分単位を含むことが好ましい。
イソフタル酸に由来する成分単位の含有量は、特に限定されないが、ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)の総モル数に対して20〜100モル%であることが好ましい。上記成分単位の含有量が20モル%以上であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶性を高めやすい。上記成分単位の含有量は、同様の観点から、50〜100モル%であることがより好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)は、上記以外の他のジカルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジカルボン酸の例には、イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸など)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸)、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸が含まれる。中でも、ポリアミド樹脂(A)との親和性が良好である観点などから、テレフタル酸が好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(c)における、イソフタル酸に由来する成分単位とテレフタル酸に由来する成分単位との含有モル比は、イソフタル酸に由来する成分単位/テレフタル酸に由来する成分単位=60/40〜100/0であることが好ましい。ポリアミド樹脂(C)の結晶化速度を適度に低くすることで、ポリアミド樹脂(A)と組み合わせた際に、成形時の流動性と結晶化速度とのバランスを調整しうる。
また、ポリアミド樹脂(C)を構成するジカルボン酸に由来する成分単位(c1)中のイソフタル酸に由来する成分単位の含有量は、ポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸に由来する成分単位(a1)中のイソフタル酸に由来する成分単位の含有量よりも多いことが好ましい。
他のジカルボン酸に由来する成分単位の合計含有量は、0〜80モル%であることが好ましく、0〜50モル%であることがより好ましい。
[ジアミンに由来する成分単位(c2)]
ジアミンに由来する成分単位(c2)は、特に制限されないが、脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むことが好ましい。
脂肪族ジアミンは、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミンであることが好ましい。炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミンは、ポリアミド樹脂(A)と組み合わせることで、結晶化速度を適切に調整する観点では、直鎖状の脂肪族ジアミンであることが好ましい。直鎖状の脂肪族ジアミンは、前述と同様であり、好ましくは1,6−ヘキサンジアミンである。なお、ジアミンに由来する成分単位(c2)は、分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含まなくてもよい。
直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(c2)の総モル数に対して40〜100モル%であることが好ましい。上記成分単位の含有量が40モル%以上であると、結晶化速度を遅くしやすく、100モル%以下であると、耐熱性が維持しやすい。同様の観点から、上記成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(c2)の総モル数に対して60〜100モル%であることがより好ましい。
[物性]
ポリアミド樹脂(C)は非晶性樹脂であるため、融点(Tm)は、観測されない。
ポリアミド樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)と同等であり、例えば90〜130℃でありうる。
ポリアミド樹脂(C)の極限粘度[η]は、特に制限されないが、ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]よりも低く、例えば0.50〜1.50dl/g、好ましくは0.50〜0.90dl/gである。
融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)、極限粘度[η]は、前述と同様の方法で測定することができる。
ポリアミド樹脂(C)の含有量は、特に制限されないが、ポリアミド樹脂組成物に対して0〜30質量%でありうる。ポリアミド樹脂(C)の含有量が一定量以上であると、結晶化速度が遅延しやすく、30質量%以下であると、耐熱性が損なわれにくい。同様の観点から、ポリアミド樹脂(C)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対して0〜20質量%でありうる。
また、ポリアミド樹脂(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(C)とポリアミド樹脂(A)の合計に対して0〜60質量%でありうる。ポリアミド樹脂(C)の含有量が一定量以上であると、樹脂組成物の結晶性をより低くしうるため、射出成形時の、金属部材110上での硬化収縮量もさらに少なくしうる。ポリアミド樹脂(C)の含有量が60質量%以下であると、得られる樹脂組成物の結晶性が損なわれにくいため、成形体の機械的強度や耐熱性が損なわれにくい。同様の観点から、ポリアミド樹脂(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(C)とポリアミド樹脂(A)の合計に対して、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは5〜40質量%でありうる。
(繊維状無機フィラー(D))
繊維状無機フィラー(D)は、ポリアミド樹脂組成物の成形物である樹脂部材120に、高い機械的強度を付与しうる。
繊維状無機フィラー(D)の例には、ガラス繊維、カーボン繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバーおよびカットファイバーなどが含まれる。これらのうち、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、樹脂部材120の機械的強度を高めやすいことなどから、ガラス繊維やワラストナイトが好ましく、ガラス繊維がより好ましい。
繊維状無機フィラー(D)の平均繊維長は、樹脂組成物の成形性、および得られる成形体の機械的強度や耐熱性の観点から、例えば1μm〜20mm、好ましくは5μm〜10mmとしうる。また、繊維状無機フィラー(D)のアスペクト比は、例えば5〜2000、好ましくは30〜600としうる。
繊維状無機フィラー(D)の平均繊維長と平均繊維径は、以下の方法により測定することができる。
1)樹脂組成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)前記1)で得られた濾過物を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300本それぞれの繊維長(Li)と繊維径(di)を計測する。繊維長がLiである繊維の本数をqiとし、次式に基づいて重量平均長さ(Lw)を算出し、これを繊維状充填材の平均繊維長とする。
重量平均長さ(Lw)=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
同様に、繊維径がDiである繊維の本数をriとし、次式に基づいて重量平均径(Dw)を算出し、これを繊維状充填材の平均繊維径とする。
重量平均径(Dw)=(Σri×Di)/(Σri×Di)
繊維状無機フィラー(D)の含有量は、特に制限されないが、ポリアミド樹脂組成物に対して0〜75質量%であることが好ましく、0質量%超75質量%以下であることがより好ましく、15〜60質量%であることがさらに好ましい。
(滑剤(E))
滑剤(E)は、ポリアミド樹脂組成物の成形時の流動性や混練加工性、金型からの離型性を向上させうる。
滑剤(E)は、特に制限されないが、炭素原子数8〜10の中鎖脂肪酸または炭素原子数12以上の長鎖脂肪酸の金属塩である。
脂肪酸の例には、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セバシン酸、リシノール酸が含まれ、好ましくはモンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、およびベヘン酸である。
金属塩の例には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩およびアルミニウム塩が含まれ、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、およびリチウム塩である。
そのような脂肪酸の金属塩の例には、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸リチウムが含まれる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
滑剤(E)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対して、例えば0〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%である。滑剤(E)の含有量が一定以上であると、流動性が向上し、混錬、成形性が向上しやすく、一定以下であると、樹脂組成物の混錬加工性が損なわれにくい。
2以上の滑剤(E)が含まれる場合、滑剤(E)全体におけるモンタン酸金属塩の含有量は、20〜100質量%、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。それにより、金属/樹脂複合構造体の接合強度を高めることができる。
(ポリアミド樹脂組成物の物性)
ポリアミド樹脂組成物の射出流動長(L/t)は、その組成にもよるが、例えば18mm以上であることが好ましく、20〜30mmであることがより好ましい。流動長(L/t)が一定以上であると、流動性に優れるため、金属部材110との接合時に、当該金属部材100の表面111の、凹凸構造の凸部同士の間にポリアミド樹脂組成物を隙間なく充填しやすい。流動長は、バーフロー金型を用いて射出成形により測定することができる。
ポリアミド樹脂組成物の流動長は、ポリアミド樹脂(A)、(C)の組成およびそれらの含有比、タルク(B)や繊維状無機フィラー(D)の含有量などによって調整されうる。流動長を高くするためには、例えばポリアミド樹脂(A)中の分岐状の脂肪族ジアミンの含有割合を多くしたり、ポリアミド樹脂(C)を添加したりすることが好ましい。
(ポリアミド樹脂組成物の製造方法)
ポリアミド樹脂組成物は、上記各成分を、公知の樹脂混練方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、またはタンブラーブレンダーで混合する方法、あるいは混合後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、またはバンバリーミキサーで溶融混練した後、造粒または粉砕する方法で製造することができる。
1−3.物性
本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100は、表面に微細な凹凸構造を有する金属部材110と、当該微細な凹凸構造を有する表面に、強固に接合されたポリアミド樹脂組成物からなる樹脂部材120とを有する。
具体的には、金属部材110と樹脂部材120との接合面の引張せん断強度は、40MPa以上であることが好ましく、45MPa以上であることがより好ましく、47〜70MPaであることがさらに好ましい。
また、引張せん断強度の測定後の破壊面は、母材破壊形態であることが好ましい。母材破壊とは、金属/樹脂接合部分の界面の80面積%以上に樹脂残りが観測される破壊形態として定義される。
接合強度は、引張試験により、23℃、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件で測定することができる。具体的には、引張試験機に専用の治具を取り付け、金属/樹脂複合構造体の破断荷重(N)を上記条件で測定する。そして、破断荷重(N)を、金属/樹脂接合部分の面積で除して、接合強度(引張せん断強度)(MPa)を算出する。
接合強度は、ポリアミド樹脂組成物の組成、特にポリアミド樹脂(A)、タルク(B)、およびポリアミド樹脂(C)の種類や含有量などによって調整されうる。接合強度を高くするためには、射出成形時の流動性を高めつつ、射出成形時に適度に結晶化するように調整することが好ましい。射出成形時に適度に結晶化させる観点では、タルク(B)の含有量を適度に多くすることが好ましく、流動性を高める観点では、ポリアミド樹脂(A)の分岐状の脂肪族ジアミンの含有割合を多くしたり、ポリアミド樹脂(C)を添加したりすることが好ましい。
2.金属/樹脂複合構造体の製造方法
本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100の製造方法は、特に制限されないが、例えば、1)表面に凹凸構造を有する金属部材110を、射出成形金型に配置する工程と、2)当該金属部材110の凹凸構造を有する面に、溶融したポリアミド樹脂組成物を射出し、固化させて、樹脂部材120を接合する工程とを有する。
1)の工程について
まず、少なくとも一部の表面に凹凸構造を有する金属部材110を準備する。
微細な凸凹構造を有する金属部材110を得る方法は、特に制限されず、例えば特許第4020957号に開示されているようなレーザー加工を用いる方法;NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNOなどの無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法;特許第4541153号に開示されているような陽極酸化法により金属部材を処理する方法;国際公開第2015−8847号に開示されているような酸系エッチング剤、好ましくは、無機酸、第二鉄イオン、第二銅イオンおよび必要に応じてマンガンイオンや塩化アルミニウム六水和物、塩化ナトリウムなどを含む酸系エッチング剤水溶液によってエッチングする置換晶析法;国際公開第2009/31632号に開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に金属部材を浸漬する方法(以下、NMT法と呼ぶ場合がある)、特開2008−162115号公報に開示されているような温水処理法などでありうる。
これらの方法は、使用する金属材料の金属種類や、複数の凸部の中心間距離の大きさに応じてエッチング方法を任意に使い分けることが可能であるが、金属部材110と樹脂部材120との接合強度の視点から、本実施の形態では、置換晶析法やNMT法が好ましい。
そして、金型を開いて、準備した凹凸構造を有する金属部材110を、当該金型内のキャビティ部(空間部)に配置する。
2)の工程について
そして、上記ポリアミド樹脂組成物の少なくとも一部が、金属部材110の微細な凹凸構造を有する面と接するように、金型のキャビティ部にポリアミド樹脂組成物を射出する。その後、冷却して固化させて、金属部材110と樹脂部材120とを接合する。
射出成形金型の温度は、ポリアミド樹脂組成物を射出成形に適した状態に溶融させうる温度であればよく、特に制限されないが、例えば100〜250℃としうる。
射出および保圧後、金型冷却を行い、次いで、型開きを行い、必要によりエジェクタピンを用いて突出しすることにより、金属/樹脂複合構造体100を得ることができる。
金型としては、公知の射出成形金型、例えば高速ヒートサイクル成形(RHCM、ヒート&クール成形)用金型や発泡成形用コアバック金型を用いることができる。
3.金属/樹脂複合構造体の用途
本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100は、高い耐熱性、機械特性、耐摩擦性、摺動性、気密性、水密性を有するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
そのような用途の例には、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品などの家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品が挙げられる。
具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品、エンジン周辺部品、駆動系・ギア周辺部品、吸気・排気系部品、冷却系部品等が挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子が挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギア等が挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランクが挙げられる。
また、金属部材110の高い熱伝導率と、樹脂部材120の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途、例えば、各種家電にも用いることができる。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカーなどの家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器が挙げられる。
また、他の用途として、玩具、スポーツ用具、靴、サンダル、鞄、フォークやナイフ、スプーン、皿などの食器類、ボールペンやシャープペン、ファイル、バインダーなどの文具類、フライパンや鍋、やかん、フライ返し、おたま、穴杓子、泡だて器、トングなどの調理器具、リチウムイオン2次電池用部品、ロボットが挙げられる。
また、本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100は、樹脂部材120がポリアミドを含有しているため、機械特性および耐摩耗性に優れている。そのため、ギア、ブッシュ、およびドアチェッカー用アームなどの動的用途を目的とする摺動部品として非常に有用である。
また、本実施の形態に係る金属/樹脂複合構造体100は、エンジン(振動部材)を支持部材に対して防振支持するエンジンマウント部材を構成するブラケットとして有用である。ブラケットに形成された、振動部材および/または支持部材への固定用インサート締結金具、または強度向上のためにブラケット本体に埋められた金属補強リブに、ポリアミド樹脂組成物が一体成形されたエンジンマウント部材は、上記締結金具または上記金属補強リブ表面に微細凹凸表面を形成させた後に、ポリアミド樹脂組成物をインサート成形することによって得られる。本実施の形態に係るエンジンマウント部材は、高い接合強度と耐熱性を示すブラケットを有し、かつ高い振動特性を有するので、エンジンなどの振動に効果的に耐えることができる。
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.金属部材
<表面処理金属部材(M−1)の調製>
JIS H4000に規定された合金番号6063のアルミニウム板(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このアルミニウム板を、30℃のアルカリ系エッチング剤(水酸化ナトリウム:15質量%、酸化亜鉛:3質量%中に3分間浸漬(以下の説明では「アルカリ系エッチング剤処理」と略称する場合がある)後、30℃の硝酸;30質量%にて1分間浸漬し、アルカリ系エッチング剤処理を更に1回繰り返し実施した。次いで、得られたアルミニウム合金板を30℃の酸系エッチング剤(硫酸:4.1質量%、塩化第二鉄:3.9質量%、塩化第二銅:0.2質量%)中に5分間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分)を行い、乾燥させて、表面処理金属部材(M−1)を得た。
得られた表面処理金属部材(M−1)の表面物性は、以下の通りであった。
複数の凸部の中心間距離:95μm
要素の平均長さRsm:104μm
6つの直線部のRz:19.2μm、20.8μm、18.5μm、18.2μm、18.4μm、19.6μm
Rz値の平均値:19μm
エッチング率:2.9質量%
<表面処理金属部材(M−2)の調製>
合金番号A6063を合金番号A5052に変更したアルミニウム板を、30℃の酸系エッチング剤(硫酸:8.2質量%、塩化第二鉄:7.8質量%(Fe3+:2.7質量%)、塩化第二銅:0.4質量%(Cu2+:0.2質量%)、イオン交換水:残部)中に80秒間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分)を行い、乾燥させ表面処理金属部材(M−2)を得た。
得られた表面処理金属部材(M−2)の表面物性は、以下の通りであった。
複数の凸部の中心間距離:92μm
要素の平均長さRsm:96.8μm
6つの直線部のRz:17.8μm、18.1μm、19.6μm、17.8μm、17.2μm、18.0μm
Rz値の平均値:18.1μm
エッチング率:2.6質量%
表面処理金属部材の表面物性(複数の凸部の中心間距離および表面粗さ)の測定は、以下の方法で行った。
(複数の凸部の中心間距離)
表面処理金属部材の間隔周期は、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK−X100)にて測定した。具体的には、金属部材の表面を撮影して得られた写真において、任意の凸部を50個選択し、それらの隣接する凸部間の中心間距離をそれぞれ測定した。測定した全ての中心間距離を積算して50で除して、「複数の凸部の中心間距離」とした。
(表面粗さ)
表面処理金属部材の表面粗さは、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用して測定し、図2に示される6つの直線上の十点平均粗さ(Rz)、要素の平均長さ(Rsm)およびエッチング処理前後の金属部材の質量比から求めたエッチング率を算出した。
測定条件は、以下の通りとした。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
測定は、金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3つの直線、およびこれらの直線と直交する任意の3つの直線との合計6つの直線上について行い、それらの平均値を求めた(図2参照)。
2.ポリアミド樹脂組成物の構成成分
(1)ポリアミド樹脂
<ポリアミド樹脂(PA−1)>
1,6−ヘキサンジアミン1312g(11.3モル)、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン1312g(11.3モル)、テレフタル酸3655g(22.0モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム5.5g(5.2×10−モル)、およびイオン交換水640ml、を1リットルの反応器に仕込み、窒素置換後、250℃、35kg/cmの条件で1時間反応させた。1,6−ヘキサンジアミンと2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとのモル比は、50:50とした。1時間経過後、この反応器内に生成した反応生成物を、この反応器と連結され、かつ圧力を約10kg/cm低く設定した受器に抜き出し、極限粘度[η]が0.15dl/gであるポリアミド前駆体を得た。次いで、このポリアミド前駆体を乾燥させた後、二軸押出機を用いてシリンダー設定温度330℃で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(PA−1)を得た。
得られたポリアミド樹脂(PA−1)の組成は、以下の通りである。ジカルボン酸に由来する成分単位中のテレフタル酸に由来する成分単位の含有量は100モル%;ジアミンに由来する成分単位中の1,6−ヘキサンジアミンに由来する成分単位の含有量は、50モル%;2−メチル−1,5−ペンタンジアミンに由来する成分単位の含有量は、50モル%であった。また、ポリアミド樹脂(PA−1)の極限粘度[η]は0.9dl/g、融点Tmは300℃、ガラス転移温度は140℃、および融解熱量(ΔH)は45J/gであった。
<ポリアミド樹脂(PA−2)>
1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、テレフタル酸1390g(8.4モル)、イソフタル酸2581g(15.5モル)、安息香酸109.5g(0.9モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを、内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.02MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。その後、低次縮合物を室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3000ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。次いで、この低次縮合物を、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(PA−2)を得た。
得られたポリアミド樹脂(PA−2)の組成は、以下の通りである。ジカルボン酸に由来する成分単位中のテレフタル酸に由来する成分単位の含有量は70モル%、イソフタル酸に由来する成分単位の含有量は30モル%であり;ジアミンに由来する成分単位中の1,6−ヘキサンジアミンに由来する成分単位の含有量は、100モル%であった。また、ポリアミド樹脂(PA−2)の極限粘度[η]は0.9dl/g、融点(Tm)は330℃、ガラス転移温度(Tg)は125℃、および融解熱量(ΔH)は50J/gであった。
<ポリアミド樹脂(PA−3)>
1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、テレフタル酸2581g(15.5モル)、イソフタル酸1390g(8.4モル)、安息香酸109.5g(0.9モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを、内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.02MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。その後、低次縮合物を室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3000ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。
次に、この低次縮合物を、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(PA−3)を得た。
得られたポリアミド樹脂(PA−3)の組成は、以下の通りである。ジカルボン酸に由来する成分単位中のテレフタル酸に由来する成分単位の含有量は30モル%、イソフタル酸に由来する成分単位の含有量は70モル%であり;ジアミンに由来する成分単位中の1,6−ヘキサンジアミンに由来する成分単位の含有量は、100モル%であった。また、ポリアミド樹脂(PA−3)の極限粘度[η]は0.65dl/g、融点(Tm)は観測されず、ガラス転移温度(Tg)は125℃、および融解熱量(ΔH)は0J/gであった。
ポリアミド樹脂(PA−1)〜(PA−3)の組成および物性を表1に示す。
Figure 2021154650
ポリアミド樹脂の極限粘度[η]、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)および融解熱量(ΔH)の測定は、以下の方法で行った。
[極限粘度[η]]
JIS K6810−1977に準拠して、ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解させて、試料溶液とした。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して25±0.05℃の条件下で測定した。測定結果を下記式に当てはめて、ポリアミド樹脂の極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
ηSP=(t−t0)/t0
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
[融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、融解熱量(ΔH)]
ポリアミド樹脂の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)および融解熱量(ΔH)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。具体的には、約5mgのポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、示差走査熱量計にセットした。そして、室温から10℃/minで350℃まで加熱した。当該樹脂を完全融解させるために、360℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却した。30℃で5分間置いた後、10℃/minで360℃まで2度目の加熱を行った。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とした。融解熱量ΔHは、JIS K7122に準じて、1度目の昇温過程での結晶化の発熱ピークの面積から求めた。
(2)タルク
タルク:平均粒子径6μm
(3)繊維状無機フィラー
ガラス繊維:日本電気硝子社製ECS03T−251H(平均繊維径が10.5μmのガラス繊維)
(4)滑剤
モンタン酸カルシウム
3.金属/樹脂複合構造体の作製および評価
[実施例1〜5および比較例1〜7]
(ポリアミド樹脂組成物のペレットの調製)
表2に示されるポリアミド樹脂、タルク(B)、ガラス繊維(D)および滑剤(E)を、表2に示される割合で、バレル温度335℃に設定した30mmφベント付二軸押出機で混練し、ペレタイザーにて、ペレット化し、組成物のペレットを得た。
(射出成形)
次いで、日本製鋼所社製の射出成形機J55ADに、小型ダンベル金属インサート金型を装着した。次いで、金型を160℃に加熱した後に、金型内に表2に示される表面処理金属部材を設置した。
そして、上記調製したポリアミド樹脂組成物のペレットを、110℃、10Torr(1330Pa)の条件で24時間乾燥させた後、上記射出成形機の射出ユニットのホッパーに投入し、シリンダー温度335℃、金型温度150℃で、射出速度40mm/sec、保圧90MPa、射出保圧時間8秒の条件で射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体を得た。
得られた金属/樹脂接合体の接合強度および流動性を、以下の方法で評価した。
(接合強度)
引張試験機モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件で、金属/樹脂複合構造体の破断荷重(N)を測定した。
そして、破断荷重(N)を、金属/樹脂接合部分の面積で除して、接合強度(引張せん断強度)(MPa)を算出した。
(流動長試験(射出流動性))
幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を使用し、以下の条件で射出を行い、金型内の樹脂の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出圧力設定値:2000kg/cm
シリンダー設定温度:335℃
金型温度:150℃
実施例1〜5および比較例1〜7の評価結果を表2に示す。
Figure 2021154650
表2に示されるように、ポリアミド樹脂(A)を含み、かつタルク(B)を所定量含む実施例1〜5の金属/樹脂複合構造体は、高い接合強度を有することがわかる。また、実施例1〜5のポリアミド樹脂組成物は、射出成形時の流動性も良好であることがわかる。
特に、ポリアミド樹脂(C)をさらに含むことで、金属/樹脂複合構造体の接合強度はさらに高まることがわかる(実施例1と3の対比)。
これに対し、ポリアミド樹脂(A)を含まない比較例1、2および6の金属/樹脂複合構造体、および、タルクを含まない比較例3および4の金属/樹脂複合構造体は、いずれも接合強度が低いことがわかる。
本発明によれば、金属部材に、ポリアミド樹脂組成物からなる樹脂部材が強固に接合および固着された、金属部材に、ポリアミド樹脂組成物からなる樹脂部材が強固に接合および固着された、金属/樹脂複合構造体およびその製造方法ならびにエンジンマウント部材を提供することができる。
100 金属/樹脂複合構造体
110 金属部材
111 表面(接合面)
120 樹脂部材

Claims (15)

  1. 表面に凹凸構造を有する金属部材と、前記金属部材の前記凹凸構造を有する表面に接合された樹脂部材とを有する金属/樹脂複合構造体であって、
    前記樹脂部材は、ポリアミド樹脂(A)と、タルク(B)とを含むポリアミド樹脂組成物からなり、
    前記ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアミンに由来する成分単位(a2)とを含み、
    前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分単位を含み、
    前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4〜15の直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と、炭素原子数4〜18の分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位と
    を含み、
    前記タルク(B)の含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物に対して0.1〜5質量%である、
    金属/樹脂複合構造体。
  2. 前記分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位は、2−メチル−1,8−オクタンジアミンに由来する成分単位と2−メチル−1,5−ペンタンジアミンに由来する成分単位のうち少なくとも一方を含む、
    請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体。
  3. 前記直鎖状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位は、1,6−ヘキサンジアミンに由来する成分単位を含み、
    前記分岐状の脂肪族ジアミンに由来する成分単位は、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンに由来する成分単位を含む、
    請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体。
  4. 前記ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(C)をさらに含み、
    前記ポリアミド樹脂(C)の示差走査熱量計により測定される融解熱量(ΔH)は、前記ポリアミド樹脂(A)よりも低い、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  5. 前記ポリアミド樹脂(C)の前記融解熱量(ΔH)は、0〜5J/gである、
    請求項4に記載の金属/樹脂複合構造体。
  6. 前記ポリアミド樹脂(C)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)と、ジアミンに由来する成分単位(c2)とを含み、
    前記ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)は、イソフタル酸に由来する成分単位を含み、
    前記ジアミンに由来する成分単位(c2)は、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含む、
    請求項4または5に記載の金属/樹脂複合構造体。
  7. 前記ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)は、テレフタル酸に由来する成分単位をさらに含んでもよく、
    前記イソフタル酸に由来する成分単位と前記テレフタル酸に由来する成分単位との含有モル比は、イソフタル酸に由来する成分単位/テレフタル酸に由来する成分単位=60/40〜100/0である、
    請求項6に記載の金属/樹脂複合構造体。
  8. 前記ポリアミド樹脂(C)の含有量は、前記ポリアミド樹脂(C)と前記ポリアミド樹脂(A)の合計に対して1〜40質量%である、
    請求項4〜7のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  9. 前記ポリアミド樹脂組成物は、繊維状無機フィラーをさらに含む、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  10. 前記繊維状無機フィラーの含有量は、前記ポリアミド樹脂組成物に対して0質量%超75質量%以下である、
    請求項9に記載の金属/樹脂複合構造体。
  11. 前記金属部材は、鉄、高張力鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上を含む、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  12. 前記金属部材は、前記樹脂部材と接合される面に、複数の凸部を有する凹凸構造を有し、
    前記複数の凸部の中心間距離は、5nm〜500μmである、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体を含む、
    エンジンマウント部材。
  14. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法であって、
    1)表面に凹凸構造を有する金属部材を、射出成形金型に配置する工程と、
    2)前記金属部材の前記凹凸構造を有する面に、溶融した前記ポリアミド樹脂組成物を射出し、固化させて、樹脂部材を接合する工程と
    を含む、
    金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  15. 前記金属部材は、前記樹脂部材と接合される面に、複数の凸部を有する凹凸構造を有し、
    前記複数の凸部の中心間距離は、5nm〜500μmである、
    請求項14に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
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