JP3975122B2 - めっきポリエステル樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面粗度が小さく平滑性に優れ、しかも強固に密着しためっき層が表面に形成されためっきポリエステル樹脂成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂成形品の表面に無電解めっき等の方法により金属導体層を形成する技術は、電子部品や電子機器の筺体のシールドなどの用途や、射出成形品上に導体回路を形成したMlD(Molded Interconnected Device)などの分野で非常に重要な技術である。めっき層は、基材となる合成樹脂成形品に対する密着力ができるだけ大きいこと、そして、その表面粗度が小さく平滑性に優れていることが、めっき層及び導体回路層の電気的信頼性の観点から望ましい。
【0003】
無電解めっきは、金属イオンと還元剤を含む溶液の中で酸化還元反応を起させ、還元剤が酸化されると同時に金属イオンが金属に還元されるようにして、被膜を形成する方法である。一般に、合成樹脂成形品の表面に無電解めっきを施すには、例えば、(1)成形品の脱脂、(2)エッチング、(3)中和、(4)めっき触媒担持、(5)めっき触媒の活性化、(6)めっき層の成長の工程によって行われる。無電解めっき層の上には、必要に応じて、さらに電気めっきが施される。
【0004】
例えば、ABS樹脂成形品を対象とする場合には、エッチング工程をクロム酸と硫酸の混合液で行うことにより、ABS樹脂中に微細な粒子として分散しているゴム成分を優先的に溶出させて、表面に凹凸を形成させる。この凹凸のアンカー効果により、めっき層と成形品表面との間に強固な密着が得られる。ABS樹脂中のゴム成分は、サブミクロンから数ミクロンという非常に微小なドメインサイズで均一に分散しているので、エッチングにより形成される凹凸の表面粗度が小さく、その結果、非常に平滑性に優れ、光沢のあるめっき層を形成することができる。しかし、ABS樹脂は、ガラス転移温度が100℃程度であるため、リフロー半田付けプロセスを伴うような高度の耐熱性が要求される電子部品等の用途には使用することができない。
【0005】
一方、耐熱性に優れるポリブチレンテレフタレートやポリアミド等のエンジニアリングプラスチックの成形品に、めっき層を形成する方法が提案されている。例えば、特開昭54−15977号公報には、ポリブチレンテレフタレートに多量の炭酸カルシウムや珪酸カルシウム等の無機充填材を混合した樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を成形した後、得られた成形品の表面をアルカリ性溶液で処理してエッチングすることにより、該表面に凹凸を形成し、しかる後、無電解めっきを行う方法が提案されている。アルカリ性溶液で処理することにより、炭酸カルシウムなどの無機充填材が溶出して、表面に凹凸が形成される。
【0006】
しかし、上記方法は、エッチングにより形成される表面の凹凸のサイズが前記ABS樹脂の場合よりも1桁以上大きく、その結果、その上に形成される無電解めっき層の平滑性がABS樹脂の場合に比べて大幅に劣るという間題があった。また、この方法は、エンジニアリングプラスチック中に多量の無機充填材を添加する必要があるので、成形品の機械的強度や耐衝撃性が低下するという間題もあった。
【0007】
上記方法において、エッチングにより形成される凹凸のサイズは、無機充填材の粒径が反映されるので、凹凸のサイズを小さくするには、平均粒径の小さな無機充填材を使用すればよいと考えられる。しかし、一般に、樹脂中に多量の無機充填材を溶融混合する場合、無機充填材の粒径が小さくなるほど、無機充填材が凝集し易くなるので、期待した効果が得られない。しかも、粒径の小さな無機充填材を添加した樹脂組成物は、溶融トルクが高くなるため、溶融流動性が大幅に低下し、成形加工性が低下する。
【0008】
ポリブチレンテレフタレートやポリアミド等のエンジニアリングプラスチックを用いた成形品では、機械的強度や曲げ弾性率の向上を図るために、樹脂中にガラス繊維やウィスカ等の異方性無機フィラーを添加する方法が広く適用されている。しかし、このような異方性無機フィラーを添加したエンジニアリングプラスチック成形品の表面には、密着性が良く、かつ、平滑性に優れるめっき層を形成することが極めて困難であった。
【0009】
その理由は、異方性無機フィラーを添加したエンジニアリングプラスチック成形品をアルカリ性溶液を用いてエッチングすると、ガラス繊維やウィスカの一部が成形品の表面に露出するので、表面粗度が大きくなるためである。例えば、ガラス繊維の場合は、繊維外径が通常20〜30μmであるため、炭酸カルシクムや珪酸カルシウム等の無機充填材を添加した系よりも、エッチング面の表面粗度が大きくなる。
【0010】
上記問題を改善すべく、ポリブチレンテレフタレート中にABS樹脂を添加する方法も検討されているが、それによって、成形品の熱変形温度が下がり、ポリブチレンテレフタレート本来の耐熱性が損なわれてしまうという間題があった。
【0011】
特開昭63−275660号公報には、スルホイソフタル酸金属塩を0.5〜10モル%共重合し、かつ、主鎖の少なくとも80モル%がブチレンテレフタレート単位で構成されるポリエステル樹脂に、珪酸金属塩及び/または炭酸金属塩を添加した無電解めっき用のポリエステル樹脂組成物が開示されている。この方法によれば、アルカリ性溶液による粗面化の処理時間を短縮できる利点がある。しかし、樹脂中に珪酸金属塩や炭酸金属塩などの無機充填材を多量に分散せしめる必要がある点では、前述の特開昭54−15977号公報に記載の方法と同じであるから、同様の理由で、めっき層の密着強度と平滑性を両立させることが困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面粗度が小さく平滑性に優れ、しかも強固に密着しためっき層が表面に形成されためっきポリエステル樹脂成形品の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、耐熱性や機械的強度に優れためっきポリエステル樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、スルホイソフタル酸金属塩と芳香族ジカルボン酸成分とを含有するジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物からなる熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を溶融成形し、得られた成形品に無電解めっきを施す前に、成形品の表面を塩酸などの酸を含有する酸水溶液で処理する方法に想到した。
【0014】
この方法によれば、酸水溶液で処理した表面に無電解めっきを施すことにより、めっき層の成形品表面に対する密着性を強固にすることができ、しかも無電解めっき層の表面粗度が小さく、平滑性に優れている。また、この方法によれば、ガラス繊維などの異方性無機フィラーを充填して、成形品の機械的強度を高めても、めっき層の平滑性を損なうことがない。さらに、この方法によれば、熱可塑性ポリエステル樹脂本来の耐熱性を損なうこともない。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、スルホイソフタル酸金属塩と芳香族ジカルボン酸成分とを含有するジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物からなる熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を溶融成形し、得られた成形品の表面を酸濃度5〜50重量%の酸水溶液で処理した後、該成形品表面に残存している酸を洗浄除去し、次いで、該表面に無電解めっきを施す工程を含むことを特徴とするめっきポリエステル樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
1.熱可塑性ポリエステル樹脂
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂は、スルホイソフタル酸金属塩と芳香族ジカルボン酸成分とを含有するジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物である。
【0017】
スルホイソフタル酸金属塩の金属塩の種類は、特に制限されないが、ナトリウム塩であることが好ましい。また、イソフタル酸金属塩としては、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩が好ましい。
【0018】
スルホイソフタル酸金属塩の共重合割合は、全ジカルボン酸成分を基準として、0.5〜10モル%とすることが好ましく、1〜8モル%とすることがより好ましく、3〜7モル%とすることが特に好ましい。スルホイソフタル酸金属塩の共重合割合が少なすぎると、十分なめっき層の密着強度が得られず、逆に多すぎると、樹脂の融点の低下による耐熱性や機械的強度の低下、さらには、結晶化速度の低下による射出成形性が低下するため、好ましくない。
【0019】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、これらの酸無水物などが挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸成分の中でも、熱可塑性ポリエステル樹脂の融点の観点から、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどが好ましい。これらの中でも、テレフタル酸、テレフタル酸ジメタチルは、熱可塑性ポリエステル樹脂の射出成形性の点から特に好ましい。
【0020】
ジカルボン酸成分として、所望により、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を併用することができる。これらの飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸成分は、アルキルエステルや酸無水物などの形態であってもよい。脂肪族ジカルボン酸成分は、全ジカルボン酸成分を基準として、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下の割合で用いられる。
【0021】
飽和脂肪族ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、l,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等を例示することができる。これらの中でも、熱可塑性ポリエステル樹脂の射出成形性の点から、1,4−ブタンジオールが好適である。
【0022】
ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とをエステル化反応と重縮合反応させることにより、熱可塑性ポリエステル樹脂を合成する。これらの反応において、通常、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、三酸化アンチモン等の触媒が用いられる。
【0023】
上記のスルホイソフタル酸金属塩、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、更に必要に応じて不飽和脂肪族ジカルボン酸を重縮合反応させてスルホン酸金属塩を含有する熱可塑性ポリエステル樹脂を得る製造工程としては、まず上記の各成分を反応器に仕込んで、昇温、撹拌開始、触媒添加によりエステル化反応を行い、続いて重縮合反応を行う。
【0024】
エステル化反応は、温度や時間には特に制限されるものではなく、公知の範囲で実施すればよいが、通常、190〜200℃程度でアルコールや水を留去させながら実施される。重縮合反応においては、エステル化反応時よりも昇温して、例えば、210〜260℃程度に昇温し、さらに、反応系を徐々に減圧して、100〜500Pa程度の圧力下で反応を行う。ジカルボン酸成分に対して過剰量の脂肪族ジオール成分を使用することにより、スルホイソフタル酸金属塩と芳香族ジカルボン酸成分とを所定のモル比で共重合させることが容易になる。
【0025】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂の250℃で測定した溶融粘度は、100Pa・s以上が好ましく、150〜350Pa・sの範囲がより好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の溶融粘度が低すぎると、成形品の機械物性の低下が不十分となることがある。
【0026】
2.樹脂組成物
本発明では、樹脂組成物として、熱可塑性ポリエステル樹脂単独を使用することができるが、機械的強度を向上させるために、異方性無機フィラーを含有させることが好ましい。
【0027】
異方性無機フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維などの繊維状充填材;炭化珪素、窒化珪素、チタン酸カリウム、棚酸アルミニウム、酸化亜鉛、塩基性硫酸マグネシウム、棚酸マグネシウム、二棚化チタン、硫酸カルシウムなどのウィスカ;などを例示することができる。これらの中でも、コストの点からガラス繊維が好適である。異方性無機フィラーは、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは1〜70重量部、特に好ましくは5〜50重量部の割合で用いられる。
【0028】
本発明で使用する樹脂組成物には、必要に応じて、滑剤、可塑剤、着色剤、補強材、その他の充填材、難燃剤、酸化防止剤等の添加剤を適宣添加することができる。これら添加剤の混合には、単軸押出機等の既知の混合装置を使用することができる。
【0029】
3.溶融成形
熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を溶融成形する方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形などを挙げることができるが、これらの中でも射出成形が好ましい。
【0030】
4.酸水溶液による表面処理
溶融成形により得られた成形品の表面を酸水溶液により処理する。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの強酸が好ましく、これらの中でも、熱可塑性ポリエステル樹脂に対する加水分解等の悪影響を及ぼし難いという観点から、塩酸が特に好ましい。酸水溶液の酸濃度は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。
【0031】
酸水溶液による処理は、成形品を酸水溶液と接触させることにより行う。酸水溶液を接触させる方法としては、例えば、成形品に酸水溶液を噴霧したり、成形品を酸水溶液中に浸漬する方法が挙げられる。これらの中でも、成形品を酸水溶液中に浸漬する方法が均一な表面を処理を行う上で好ましい。
【0032】
処理温度は、通常0〜100℃、好ましくは5〜80℃、より好ましくは10〜60℃程度である。使用する酸水溶液の酸の種類と濃度にもよるが、多くの場合、30〜60℃程度の少し高温状態に維持した酸水溶液中に成形品を浸漬する方法が好ましい。処理時間は、使用する酸水溶液の酸の種類と濃度にもよるが、通常1〜60分間、好ましくは2〜30分間、より好ましくは3〜20分間程度である。成形品の表面を酸水溶液で処理した後、イオン交換水で洗浄するなどして、成形品表面に残存している酸を除去する。
【0033】
5.無電解めっき
酸水溶液を用いたエッチングの後、常法に従って無電解めっきを行う。無電解めっきとしては、無電解銅めっきが好ましい。無電解銅めっきを行うには、(1)プレディップ(触媒化液への水洗水の持ち込みを防止)、(2)塩化すず、塩化パラディウム、塩化ナトリウムなどを含有する溶液を用いた触媒化(キャタリスト)、(3)アクセラレーター、(4)無電解銅めっきの各工程で処理する。無電解銅めっきの後、水洗してから、電気銅めっきなどの電気めっきを行うことができる。
【0034】
無電解銅めっきの組成としては、銅イオン源(例えば、硫酸銅)、錯化剤(例えば、ETDA)、還元剤(例えば、ホルムアルデヒド)、pH調整剤(例えば、NaOH)、添加剤(例えば、ジピリジル)などが代表的なものである。無電解銅めっき液としては、市販品を使用することができる。
【0035】
6.めっきポリエステル樹脂成形品
本発明のめっきポリエステル樹脂成形品は、めっき密着強度が通常2.0MPa以上、好ましくは3.0MPa以上、より好ましくは4.0MPa以上である。めっき平滑性は、共焦点顕微鏡を用いて観察した10点平均粗さで、通常5.0μm以下、好ましくは4.0μm以下、特に好ましくは3.5μm以下である。
【0036】
成形品の室温(20℃)での曲げ弾性率は、異方性無機フィラーを含まない場合には、通常2.5GPa以上であり、異方性無機フィラーを含有させた場合には、通常4.0GPa以上、好ましくは5.0GPa以上である。成形品の引張降伏点強度は、異方性無機フィラーを含まない場合には、通常40MPa以上、好ましくは45MPa以上、特に好ましくは50MPa以上であり、異方性無機フィラーを含有させた場合には、通常60MPa以上、好ましくは70MPa以上である。衝撃強度は、異方性無機フィラーを含まない場合には、通常3.5kJ/m2以上、好ましくは4.0kJ/m2以上であり、異方性無機フィラーを含有させた場合には、通常5.0kJ/m2以上、好ましくは8.0kJ/m2以上である。
【0037】
本発明のめっきポリエステル樹脂成形品は、電子部品や電子機器の筺体のシールドなどの用途、射出成形品上に導体回路を形成したMlDとしての用途などに好適に適用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、以下の実施例等において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準で示した。
【0039】
[試験片の作製と評価法]
各実施例及び比較例で合成した熱可塑性ポリエステル樹脂100部に対して、酸化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1010)、異方性無機フィラー(旭ファイバーガラス社製、CS FT698)、及び無機フィラー(炭酸カルシウム)を表1及び2に示す配合量で配合し、溶融成形した。その成形条件及び物性評価は、以下の通りである。
【0040】
各成分の溶融混合は、二軸混合機(45mmφL/D=32)を用いて、バレル温度260℃にて行い、溶融ストランドを水冷ペレタイズしてポリエステル樹脂組成物のペレットを作製した。得られたペレットを用いて、射出成形により試験片等を作製した。
【0041】
射出成形機(型締力100トン、スクリュー径45mmφ)を用いて、バレル温度260℃、射出圧100kg/cm2、保圧時間10秒、金型温度60℃の条件にて射出成形して、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾット衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのプレートを作製した。プレートには、めっき層を形成して、めっき密着強度及びめっき平滑性を測定した。
【0042】
(1)引張降伏点強度:
ASTM D−638に準じて測定した。測定温度20℃。
(2)曲げ弾性率:
ASTM D−790に準じて測定した。測定温度20℃。
(3)衝撃強度:
ASTM D−256(アイゾット、ノッチ付き、1/4インチ)に準じて測定した。測定温度20℃。
【0043】
(4)めっき密着強度:
図1に示すように、頭の直径が7mmφの釘4を使用し、釘4の頭とプレート1のめっき面2を半田付けして(半田層3)、めっき面と垂直方向に引っぱり速度10mm/分で引き剥がし、めっきの密着強度を測定した。めっきの密着強度が2MPa以上ならば、良好と判断される。
【0044】
(5)めっき平滑性:
めっきの平滑性については、共焦点顕微鏡(キーエンス製 VK8550)を用い、10点平均粗さを測定した。10点平均粗さが5μm以下であれば、良好と判断される。
【0045】
(6)射出成形性:
長さ50×幅20×厚み0.5mmのプレートを作製する際、金型での冷却時間が20秒で自動機で取り出せる場合には、良好と判断される。
【0046】
[めっき法]
(1)めっき法A
(1−a)酸水溶液による処理:
射出成形品をエタノールで洗浄した後、30%の塩酸水溶液で40℃で10分間処理する。次に、イオン交換水で洗浄し、その後、以下に示す無電解銅めっき、引き続いて電気銅めっきを行う。
【0047】
(1−b)プレディップ:
塩化ナトリウム(180g/l)、塩酸(80ml/l)、OS−1505〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)の溶液に、45℃で3分浸漬する。
【0048】
(1−c)キャタリスト:
塩化ナトリウム(180g/l)、塩酸(100ml/l)、OS−1505〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)、OS−1558〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)の溶液に、30℃で8分浸漬する。浸漬後、イオン交換水で洗浄する。
【0049】
(1−d)アクセラレーター:
OS−1560〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)溶液に、30℃で2分浸漬する。浸漬後、イオン交換水で洗浄する。
【0050】
(1−e)無電解銅めっき:
OS−1598M(48ml/l)、OS−1598A(10ml/l)、OS−1598R(2ml/l)、OS−1120SR(2.lml/l)、CupZ(23ml/l)、CupY(12ml/l)〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕の水溶液に、45℃で15分浸漬する。浸漬後、イオン交換水で洗浄する。
【0051】
(1−f)電気銅めっき:
硫酸銅220g/l及び硫酸60g/lの溶液中で、25℃で2A/dm2の電流密度で20分間通電し、金属銅厚み約15μmのめっき膜を形成する。
【0052】
(2)めっき法B
めっき法Aにおいて、酸水溶液で処理する工程(1−a)を省き、その他はめっき法Aに準じためっき法である。
【0053】
(3)めっき法C
(3−a)強アルカリエッチング:
射出成形品をエタノールで洗浄した後、45%の水酸化ナトリウム水溶液に80℃で5分間浸漬し、次いで、3%の塩酸で中和した。それ以後の工程は、めっき法Aの工程(1−b)〜(1−f)に準じためっき法である。
【0054】
[実施例1]
撹拌機、温度計、ガス吹き込み口及び蒸留口を備えた反応器に、窒素ガス雰囲気下で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩5モル%、テレフタル酸45モル%、1,4−ブタンジオール150モル%を仕込み、さらに触媒としてテトラブチルチタネートを仕込み、180〜200℃で窒素ガス中で2時間反応させ水を留出させた。次いで、210℃に昇温して、圧力を260Paの減圧状態になるまで徐々に減じて、さらに減圧下で2時間反応させて、熱可塑性ポリエステル樹脂を製造した。
【0055】
この方法により、主鎖の90モル%がブチレンテレフタレート単位で構成される熱可塑性ポリエステル樹脂が得られた。この熱可塑性ポリエステル樹脂の溶融粘度(250℃)は、200Pa・sであった。
【0056】
得られた熱可塑性ポリエステル樹脂をペレット化した。得られたペレットを用いて、射出成形機で所定の成形品を作製したところ、冷却時間が15秒で良好な射出成形品を得ることができ、良好な射出成形性を示した。射出成形により得られた試験片を用いて機械物性を評価した。また、射出成形により得られたプレートに、めっき法Aでめっきを行い、めっき密着強度、めっきの平滑性を評価した。評価結果は、表1に示すように、何れも良好であった。
【0057】
[実施例2]
表1の組成で実施例1での減圧下での反応時間を4時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性ポリエステル樹脂を合成した。この方法により、主鎖の86モル%がブチレンテレフタレート単位で構成される熱可塑性ポリエステル樹脂が得られた。この熱可塑性ポリエステル樹脂の溶融粘度(250℃)は、300Pa・sであった。このポリエステル樹脂を用いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製し、めっき法Aによりめっきを行い、評価した。評価結果は、表1に示すように、何れも良好であった。
【0058】
[実施例3]
実施例1で合成した熱可塑性ポリエステル樹脂を用い、2軸混合機でガラス繊維(CS FT698、旭ファイバーガラス製)を30部添加し、実施例1と同様な方法で成形品を作製し、めっき法Aでめっきした後、評価した。その結果、表1に示すように、ガラス繊維を添加した樹脂組成物を用いた場合でも、めっき面が平滑で、密着強度の強い良好なめっきが得られた。
【0059】
【表1】
【0060】
[比較例1]
表1の組成で実施例1での減圧下での反応時間を3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性ポリエステル樹脂を合成した。この方法により、主鎖の100モル%がブチレンテレフタレート単位で構成される熱可塑性ポリエステル樹脂が得られた。この熱可塑性ポリエステル樹脂の溶融粘度(250℃)は、250Pa・sであった。この熱可塑性ポリエステル樹脂を用いて、実施例1と同様の方法で試験片等を作成し、めっき法Aでめっきを行った。その結果、表2に示すように、めっき密着強度が低い値となり、良好なめっきが得られなかった。
【0061】
[比較例2]
めっき法Aをめっき法Bに代えたこと以外は,比較例1と同様に実施した。その結果、表2に示すように、めっき密着強度が低い値となり、良好なめっきが得られなかった。
【0062】
[比較例3]
実施例1で合成した熱可塑性ポリエステル樹脂を用い、実施例1と同様な方法で成形品を作製し、めっき法Bでめっきした。その結果、表2に示すように、めっき密着強度が弱く、良好なめっきが得られなかった。
【0063】
[比較例4]
表1の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性ポリエステル樹脂を合成した。この方法により、主鎖の70モル%がブチレンナフタレート単位で構成される熱可塑性ポリエステル樹脂が得られた。この熱可塑性ポリエステル樹脂の溶融粘度(250℃)は、200Pa・sであった。この熱可塑性ポリエステル樹脂を用いて、実施例1と同様の方法で試験片等を作成し、めっき法Bでめっきを行った。その結果、表2に示すように、射出成形時の冷却時間が60秒以上となり、射出成形性が十分でなかった。めっき密着強度も不十分であった。
【0064】
[比較例5]
比較例1で合成した熱可塑性ポリエステル樹脂を用い、2軸混合機で炭酸カルシウムを40部添加し、実施例1と同様な方法で成形品を作製し、めっき法Cでめっきを行った。その結果、表2に示すように、めっき密着強度は得られるものの、めっき平滑性が低く、良好なめっきが得られなかった。
【0065】
【表2】
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、熱可塑性ポリエステル樹脂成形品の表面に無電解めっき等の方法により、密着性が大きく、かつ、表面粗度が小さく平滑性に優れた金属導体層を形成することができる。本発明の方法により得られるめっきポリエステル樹脂成形品は、電子機器の筺体のシールド用途、射出成形品上に導体回路を形成したMlDなどの分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】めっき密着強度を測定する方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
1:樹脂成形品、
2:めっき層、
3:半田層、
4:釘。
Claims (6)
- スルホイソフタル酸金属塩と芳香族ジカルボン酸成分とを含有するジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物からなる熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を溶融成形し、得られた成形品の表面を酸濃度5〜50重量%の酸水溶液で処理した後、該成形品表面に残存している酸を洗浄除去し、次いで、該表面に無電解めっきを施す工程を含むことを特徴とするめっきポリエステル樹脂成形品の製造方法。
- スルホイソフタル酸金属塩がスルホイソフタル酸ナトリウム塩であり、かつ、スルホイソフタル酸金属塩の共重合比率が、全ジカルボン酸成分を基準として、0.5〜10モル%の範囲内である請求項1記載の製造方法。
- 樹脂組成物が、異方性無機フィラーをさらに含有するものである請求項1記載の製造方法。
- 異方性無機フィラーが、ガラス繊維である請求項3記載の製造方法。
- ポリエステル樹脂成形品の20℃での曲げ弾性率が2.5GPa以上である請求項1記載の製造方法。
- 無電解めっき工程の後、形成された無電解めっき層の上に、さらに電気めっきを施す工程が付加されている請求項1記載の製造方法。
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