JP3975123B2 - めっき合成樹脂成形品とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき層を有する合成樹脂成形品とその製造方法に関し、さらに詳しくは、密着性及び平滑性に優れためっき層が表面に形成されためっき合成樹脂成形品とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂成形品の表面に無電解めっき等の方法により金属導体層を形成する技術は、電子部品や電子機器の筺体のシールドなどの用途や、射出成形品上に導体回路を形成したMlD(Molded Interconnected Device)などの分野で非常に重要な技術である。めっき層は、基材となる合成樹脂成形品に対する密着力ができるだけ大きいこと、そして、その表面粗度が小さく平滑性に優れていることが、めっき層及び導体回路層の電気的信頼性の観点から望ましい。
【0003】
無電解めっきは、金属イオンと還元剤を含む溶液の中で酸化還元反応を起させて、還元剤が酸化されると同時に金属イオンが金属に還元されるようにして、被膜を形成する方法である。一般に、合成樹脂成形品の表面に無電解めっきを施すには、例えば、(1)成形品の脱脂、(2)エッチング、(3)中和、(4)めっき触媒担持、(5)めっき触媒の活性化、(6)めっき層の成長の工程によって行われる。無電解めっき層の上には、必要に応じて、さらに電気めっきが施される。
【0004】
例えば、ABS樹脂成形品を対象とする場合には、エッチング工程をクロム酸と硫酸の混合液で行うことにより、ABS樹脂中に微細な粒子として分散しているゴム成分を優先的に溶出させて、表面に凹凸を形成させる。この凹凸のアンカー効果により、めっき層と成形品表面との間に強固な密着が得られる。ABS樹脂中のゴム成分は、サブミクロンから数ミクロンという非常に微小なドメインサイズで均一に分散しているので、エッチングにより形成される凹凸の表面粗度が小さく、その結果、非常に平滑性に優れ、光沢のあるめっき層を形成することができる。しかし、ABS樹脂は、ガラス転移温度が100℃程度であるため、リフローはんだ付けプロセスを伴うような高度の耐熱性が要求される電子部品等の用途には使用することができない。
【0005】
一方、耐熱性に優れるポリブチレンテレフタレートやポリアミド等のエンジニアリングプラスチックの成形品に、めっき層を形成する方法が提案されている。例えば、特開昭54−15977号公報には、ポリブチレンテレフタレートに多量の炭酸カルシウムや珪酸カルシウム等の無機充填材を混合した樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を成形した後、得られた成形品の表面をアルカリ性溶液で処理してエッチングすることにより、該表面に凹凸を形成し、しかる後、無電解めっきを行う方法が提案されている。アルカリ性溶液で処理することにより、炭酸カルシウムなどの無機充填材が溶出して、表面に凹凸が形成される。
【0006】
しかし、上記方法は、エッチングにより形成される表面の凹凸のサイズが前記ABS樹脂の場合よりも1桁以上大きく、その結果、その上に形成される無電解めっき層の平滑性がABS樹脂の場合に比べて大幅に劣るという間題があった。また、この方法は、エンジニアリングプラスチック中に多量の無機充填材を添加する必要があるので、成形品の機械的強度や耐衝撃性が低下するという間題もあった。
【0007】
上記方法において、エッチングにより形成される凹凸のサイズは、無機充填材の粒径が反映されるので、凹凸のサイズを小さくするには、平均粒径の小さな無機充填材を使用すればよいと考えられる。しかし、一般に、樹脂中に多量の無機充填材を溶融混合する場合、無機充填材の粒径が小さくなるほど、無機充填材が凝集し易くなるので、期待した効果が得られない。しかも、粒径の小さな無機充填材を添加した樹脂組成物は、溶融トルクが高くなるため、溶融流動性が大幅に低下し、成形加工性が低下する。
【0008】
ポリブチレンテレフタレートやポリアミド等のエンジニアリングプラスチックを用いた成形品では、機械的強度や曲げ弾性率の向上を図るために、樹脂中にガラス繊維やウィスカ等の異方性無機フィラーを添加する方法が広く適用されている。しかし、このような異方性無機フィラーを添加したエンジニアリングプラスチック成形品の表面には、密着性が良く、かつ、平滑性に優れるめっき層を形成することが極めて困難であった。
【0009】
その理由は、異方性無機フィラーを添加したエンジニアリングプラスチック成形品をアルカリ性溶液を用いてエッチングすると、ガラス繊維やウィスカの一部が成形品の表面に露出するので、表面粗度が大きくなるためである。例えば、ガラス繊維の場合は、繊維外径が通常20〜30μmであるため、炭酸カルシウムや珪酸カルシウム等の無機充填材を添加した系よりも、エッチング面の表面粗度が大きくなる。
【0010】
上記問題を改善すべく、ポリブチレンテレフタレート中にABS樹脂を添加する方法も検討されているが、それによって、成形品の熱変形温度が下がり、ポリブチレンテレフタレート本来の耐熱性が損なわれてしまうという間題があった。
【0011】
特開昭63−275660号公報には、スルホイソフタル酸金属塩を0.5〜10モル%共重合し、かつ、主鎖の少なくとも80モル%がブチレンテレフタレート単位で構成されるポリエステル樹脂に、珪酸金属塩及び/または炭酸金属塩を添加した無電解めっき用のポリエステル樹脂組成物が開示されている。この方法によれば、アルカリ性溶液による粗面化の処理時間を短縮できる利点がある。しかし、樹脂中に珪酸金属塩や炭酸金属塩などの無機充填材を多量に分散せしめる必要がある点では、前述の特開昭54−15977号公報に記載の方法と同じであるから、同様の理由で、めっき層の密着強度と平滑性を両立させることが困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面粗度が小さく平滑性に優れ、しかも強固に密着しためっき層が表面に形成されためっき合成樹脂成形品とその製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、無機フィラー、殊にガラス繊維などの異方性無機フィラーを含有する合成樹脂成形品であっても、平滑性及び密着性に優れためっき層が形成されて、耐熱性及び機械的強度にも優れためっき合成樹脂成形品とその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、合成樹脂成形品の表面にめっき層を形成するに当たり、予め合成樹脂成形品の表面に特定のポリエステル樹脂からなる塗布層をめっきのプライマー層として形成する方法に想到した。
【0015】
より具体的には、合成樹脂成形品(A)の表面に、スルホイソフタル酸金属塩及び芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B)、またはスルホイソフタル酸金属塩、芳香族ジカルボン酸成分、及び不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B2)を形成し、次いで、これらのポリエステル樹脂層の表面に無電解めっきを施し、さらに所望により電気めっきを施すことにより、平滑性及び密着性に優れためっき層を形成し得ることを見出した。
【0016】
本発明の方法によれば、めっき層の形成に際して、従来は不可欠であった合成樹脂成形品表面のエッチングによる粗面化処理を行わずとも、密着性に優れためっき層を形成することができる。本発明の方法によれば、合成樹脂成形品がガラス繊維やウィスカーなどの異方性無機フィラーを含有するものであっても、その表面に特定のポリエステル樹脂層をプライマー層として形成してからめっき層を形成するため、平滑性及び密着性に優れためっき層を形成することができる。
【0017】
さらに、合成樹脂成形品(A)の表面に、前記ポリエステル樹脂層(B2)を形成すると、めっき層の形成前または形成後に電離放射線を照射して該ポリエステル樹脂層(B2)を架橋させることができ、それによって、合成樹脂成形品に高度の耐熱性を付与することができる。表面実装技術では、リフローはんだ付け工程が重要であり、使用される合成樹脂基板には、リフロー炉での熱処理条件に耐えるだけの耐熱性(耐リフロー性)が要求される。本発明のめっき合成樹脂成形品は、耐リフロー性に関する要求水準を満たすことが可能である。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、合成樹脂成形品(A)の表面に、
スルホイソフタル酸金属塩及び芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B)が形成され、
該ポリエステル樹脂層(B)の表面に無電解めっき層(C)または該無電解めっき層(C)とその表面に電気めっき層(D)が形成され、そして、
めっき層の密着強度が2.0MPa以上で、かつ、めっき層の平滑性が2.0μm以下である
ことを特徴とするめっき合成樹脂成形品が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、合成樹脂成形品(A)の表面に、
スルホイソフタル酸金属塩、芳香族ジカルボン酸成分、及び不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B2)が形成され、
該ポリエステル樹脂層(B2)の表面に無電解めっき層(C)または該無電解めっき層(C)とその表面に電気めっき層(D)が形成され
ポリエステル樹脂層(B2)が電離放射線により照射架橋されており、そして、
めっき層の密着強度が2.0MPa以上で、かつ、めっき層の平滑性が2.0μm以下である
ことを特徴とするめっき合成樹脂成形品が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、合成樹脂成形品(A)の表面に、スルホイソフタル酸金属塩及び芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂を含有する溶液を塗布して、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B)を形成する工程1
該ポリエステル樹脂層(B)の表面に無電解めっき層(C)を形成する工程2;または該ポリエステル樹脂層 (B) の表面に該無電解めっき層 (C) を形成する工程2の後、さらに該無電解めっき層(C)の表面に電気めっき層(D)を形成する工程3
からなる一連の工程を含むことを特徴とするめっき合成樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0021】
さらにまた、本発明によれば、合成樹脂成形品(A)の表面に、スルホイソフタル酸金属塩、芳香族ジカルボン酸成分、及び不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂を含有する溶液を塗布して、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B2)を形成する工程I
該ポリエステル樹脂層(B2)の表面に無電解めっき層(C)を形成する工程II;または該ポリエステル樹脂層 (B2) の表面に無電解めっき層 (C) を形成する工程 II の後、さらに該無電解めっき層(C)の表面に電気めっき層(D)を形成する工程III並びに、
前記めっき層の形成工程II及びIIIの前または後に、電離性放射線を照射して、該ポリエステル樹脂層(B2)を照射架橋する工程IV
からなる一連の工程を含むことを特徴とするめっき合成樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
1.合成樹脂成形品
本発明で使用する合成樹脂成形品は、各種合成樹脂を用いて、射出成形、押出成形、圧縮成形、その他の任意の成形法により賦形した成形品である。合成樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46などのポリアミド樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー(LCP)などが挙げられる。
【0023】
各種の特性を改良する目的で、これらの合成樹脂に、無機フィラー、滑剤、可塑剤、着色剤、補強材、充填材、難燃剤、酸化防止剤、架橋剤、架橋助剤などを適宣添加することができる。無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの通常の粒状、粉末状などの無機フィラーを用いることができる。
【0024】
機械的物性等の観点から、異方性無機フィラーを用いることが好ましく、その具体例としては、ガラス繊維、カーボン繊維などの繊維状無機フィラー;炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、硝酸アルミニウム、酸化亜鉛、塩基性硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、二硝化チタン、硫酸カルシウムなどのウィスカー;などを挙げることができる。これらの添加剤は、所望に応じて適量を配合することができる。
【0025】
本発明のめっき合成樹脂成形品は、ガラス繊維やウィスカーなどの異方性無機フィラーを高充填したものであっても、その表面に平滑性かつ密着性に優れためっき層を形成することができるため、耐熱性や機械的強度も向上させることができる。異方性無機フィラーの配合割合は、特に制限されないが、合成樹脂100重量部に対して、通常0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部の範囲内から選択される。これら添加剤の混合は、単軸押出機や二軸押出機等の既知の混合装置を適用して行うことができる。
【0026】
合成樹脂成形品の形状は、特に限定されず、使用目的に応じて適宜定めることができる。合成樹脂成形品は、成形性などの観点から、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂を射出成形した成形品であることが望ましい。
【0027】
2.ポリエステル樹脂
本発明で使用するポリエステル樹脂は、(1)スルホイソフタル酸成分及び芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるポリエステル樹脂、並びに、(2)スルホイソフタル酸成分、芳香族ジカルボン酸成分、及び不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるポリエステル樹脂である。
【0028】
スルホイソフタル酸成分としては、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどのスルホイソフタル酸金属塩が用いられる。スルホイソフタル酸金属塩は、他のジカルボン酸成分やジオール成分とともに、既知のエステル交換法や直接重合法で重縮合物であるポリエステル樹脂とされるが、その後の酸処理により、スルホン酸金属塩がスルホン酸に変換される
【0029】
このスルホイソフタル酸金属塩の共重合割合は、全ジカルボン酸成分を基準として、0.5〜10モル%とすることが好ましく、1〜8モル%とすることがより好ましい。スルホイソフタル酸金属塩の共重合割合が少なすぎると、めっき層の密着強度が不十分となりやすく、逆に、多すぎると、合成樹脂成形品に対するコーティング性が低下したり、ポリエステル樹脂層の耐熱性が低下する。
【0030】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、これらの酸無水物などが挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸成分の中でも、高融点のポリエステル樹脂が得られる点で、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどが好ましい。
【0031】
不飽和脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、これらのアルキルエステル、これらの酸無水物などを挙げることができる。不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を使用する場合には、全ジカルボン酸成分を基準として、通常1〜20モル%、好ましくは1〜10モル%の割合で用いられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸成分の共重合割合が小さすぎると、電離放射線の照射による架橋度が不十分となり、耐熱性の改善効果を得ることが難しくなり、逆に、大きすぎると、ポリエステル樹脂の融点が低下する。
【0032】
飽和脂肪族ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、l,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等を例示することができる。
【0033】
ジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分とをエステル化反応と重縮合反応させることにより、ポリエステル樹脂を合成する。この反応において、通常、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、三酸化アンチモン等の触媒が用いられる。
【0034】
スルホイソフタル酸金属塩、芳香族ジカルボン酸、飽和脂肪族ジオール、更に必要に応じて不飽和脂肪族ジカルボン酸を重縮合反応させることにより、スルホン酸金属塩を含有するポリエステル樹脂を合成する。この製造工程としては、まず上記の各成分を反応器に仕込んで、昇温、撹件開始、触媒添加によりエステル化反応を行い、続いて重縮合反応を行う。
【0035】
エステル化反応は、温度や時間には特に制限されるものではなく、公知の範囲で実施すればよいが、通常、190〜200℃程度でアルコールや水を留去させながら実施される。重縮合反応においては、エステル化反応時よりも昇温して、例えば、210〜260℃程度に昇温し、さらに、反応系を徐々に減圧して、100〜500Pa程度の圧力下で反応を行う。ジカルボン酸成分に対して過剰量の飽和脂肪族ジオール成分を使用することにより、スルホイソフタル酸金属塩と芳香族ジカルボン酸成分、さらには不飽和脂肪族ジカルボン酸成分とを所定のモル比で共重合させることが容易になる。
【0036】
ポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸金属塩を塩酸等を用いた酸処理によりスルホン酸へ変換するには、上記で得られたポリエステル樹脂を適当な方法で粉砕後、80〜90℃の水中に10〜20重量%の濃度となるように溶解させた後、室温程度の温度で、酸にてイオン交換させる。イオン交換すると、スルホン酸基をもつポリエステル樹脂が析出するので、それを濾別して水で洗浄すればよい。このイオン交換反応は、ほぼ定量的に進行する。
【0037】
ポリエステル樹脂には、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、離型剤、界面活性剤、防腐剤、防虫剤、防錆剤、増粘剤等を配合することができる。
【0038】
3.ポリエステル樹脂層の形成
ポリエステル樹脂を水系分散媒体中に分散または溶解させることにより、コーティング溶液(塗布液)を調製する。コーティング溶液は、ポリエステル樹脂の微粒子が分散したディスパージョンであってもよいが、アンモニア水溶液に溶解させた均一な溶液とすることが、均一な塗膜を形成させる上で望ましい。ポリエステル樹脂中のスルホン酸基をアンモニアで中和しておくと、溶液の形態でもコーテイングすることができ、そして、塗膜が乾燥すると、アンモニアが揮発してスルホン酸基をもつポリエステル樹脂の塗膜が形成される。コーティング溶液中のポリエステル樹脂濃度は、適宜定めることができるが、通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%程度である。
【0039】
合成樹脂成形品の表面にコーティング溶液を塗布する方法としては、刷毛塗り法、スピンコート法、ディップコート法などが挙げられ、それぞれの用途に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、合成樹脂成形品の表面に均一な塗膜を形成しやすく、また、膜厚を調節しやすい点で、ディップコート法(浸漬法)が好ましい。コーティング溶液のポリエステル樹脂濃度を適宜調整することにより、乾燥後、通常1〜100μm、好ましくは2〜50μm程度の塗膜(ポリエステル樹脂層)を形成する。多くの場合、1〜10μm、さらには数ミクロン程度の膜厚で、良好な結果を得ることができる。
【0040】
合成樹脂成形品と塗膜との密着性を向上させるために、例えば、(i)コーティング後、塗膜を熱処理する方法、(ii)合成樹脂成形品の表面をコロナ処理した後、コーティングする方法、(iii)少量の無機フイラーを配合した合成樹脂を用いて合成樹脂成形品を成形し、得られた成形品の表面をエッチングにより粗面化して、微細な凹凸を形成する方法、などを採用することもできる。
【0041】
合成樹脂成形品(A)の表面に、スルホイソフタル酸成分、芳香族ジカルボン酸成分、及び不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるポリエステル樹脂を含有するコーティング溶液を塗布して、ポリエステル樹脂層(B2)を形成した場合、その上にめっき層を形成する前または後に、電離性放射線を照射して、該ポリエステル樹脂層(B2)を照射架橋させる。
【0042】
電離放射線の照射は、紫外線(UV光)、加速電子線、ガンマ線等を利用して行うことができる。ポリエステル樹脂塗膜を予め照射架橋してから無電解めっきを行う場合は、UV光、加速電子線を利用することが好ましい。UV光を利用する場合は、ポリエステル樹脂中に光重合開始剤を添加することが好ましい。めっき層の形成後に照射架橋する場合には、透過厚みの関係から、加速電子線やガンマ線などを利用することが好ましい。電離放射線の照射量は、一般に、50〜500kGy程度の範囲内である。
【0043】
4.めっき層の形成
合成樹脂成形品の表面にポリエステル樹脂層を形成した後、常法に従って、ポリエステル樹脂層の表面に無電解めっきを行う。無電解めっきとしては、無電解銅めっきが好ましい。無電解銅めっきを行うには、例えば、(1)プレディップ(触媒化液への水洗水の持ち込みを防止)、(2)塩化すず、塩化パラディウム、塩化ナトリウムなどを含有する溶液を用いた触媒化(キャタリスト)、(3)アクセラレーター、(4)無電解銅めっきの各工程で処理する。
【0044】
無電解銅めっきの組成としては、例えば、銅イオン源(例えば、硫酸銅)、錯化剤(例えば、ETDA)、還元剤(例えば、ホルムアルデヒド)、pH調整剤(例えば、NaOH)、添加剤(例えば、ジピリジル)などが代表的なものである。無電解銅めっき液としては、市販品を使用することができる。
【0045】
無電解銅めっきの後、水洗してから、電気銅めっきなどの電気めっきを行うことができる。電気めっきは、常法に従って、堆積させたい金属が溶けた水溶液に陰極と陽極を挿入し、直流電流を流し、一般には陰極上の基板に金属を堆積させる。
【0046】
めっき層の厚みは、使用目的に応じて適宜定めることができるが、無電解めっき層の厚みは、通常0.5〜10μm、好ましくは1〜5μm程度であり、電気めっき層の厚みは、通常1〜30μm、好ましくは3〜20μm程度である。
【0047】
5.めっき合成樹脂成形品
本発明のめっき合成樹脂成形品は、(1)合成樹脂成形品(A)の表面に、ポリエステル樹脂層(B)が形成され、該ポリエステル樹脂層(B)の表面に無電解めっき層(C)が形成され、そして、所望により、該無電解めっき層(C)の表面に電気めっき層(D)が形成されているめっき合成樹脂成形品、及び(2)合成樹脂成形品(A)の表面に、ポリエステル樹脂層(B2)が形成され、該ポリエステル樹脂層(B2)の表面に無電解めっき層(C)が形成され、所望により、該無電解めっき層(C)の表面に電気めっき層(D)が形成され、そして、該ポリエステル樹脂層(B2)が電離放射線により照射架橋されているめっき合成樹脂成形品である。
【0048】
合成樹脂成形品(A)は、異方性無機フィラーを含有する合成樹脂から形成されたものであることが、耐熱性や機械的強度の観点から好ましい。本発明のめっき合成樹脂成形品は、めっき層の密着強度が2.0MPa以上で、かつ、めっき層の平滑性が2.0μm以下である。めっき層の密着強度は、2.0〜6.0MPaの範囲内にあることが好ましい。めっき層の平滑性は、共焦点顕微鏡を用いて観察した10点平均粗さで評価することができ、1.5μm以下であることが好ましい。
【0049】
めっき合成樹脂成形品の室温(20℃)での曲げ弾性率は、合成樹脂成形品が異方性無機フィラーを含まない場合には、好ましくは2.0GPa以上であり、異方性無機フィラーを含有させた場合には、好ましくは4.0GPa以上、より好ましくは5.0GPa以上である。
【0050】
めっき合成樹脂成形品の引張降伏点強度は、異方性無機フィラーを含まない場合には、通常40MPa以上、好ましくは45MPa以上、特に好ましくは50MPa以上であり、異方性無機フィラーを含有させた場合には、通常60MPa以上、好ましくは70MPa以上である。衝撃強度は、異方性無機フィラーを含まない場合には、通常30J/m以上、好ましくは40J/m以上であり、異方性無機フィラーを含有させた場合には、通常50J/m以上、好ましくは80J/m以上である。
【0051】
本発明のめっき合成樹脂成形品は、ポリエステル樹脂層(B2)が照射架橋されている場合、耐リフロー性に優れている。より具体的には、本発明のめっき合成樹脂成形品を240℃のリフロー炉中に10秒間で通過させる条件下で耐リフロー性を評価すると、めっきの膨れなどの不都合が観察されない。合成樹脂の種類などを選択することにより、めっき合成樹脂成形品の耐リフロー性をさらに向上させることができ、例えば、260℃のリフロー炉中に10秒間で通過させる条件下で評価した耐リフロー性を満足させることができる。
【0052】
本発明のめっき合成樹脂成形品は、電子部品や電子機器の筺体のシールドなどの用途、射出成形品上に導体回路を形成したMlDとしての用途などに好適に適用することができる。
【0053】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、以下の実施例等において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準で示した。
【0054】
[製造例1]コーティング溶液aの製造
撹拌機、温度計、ガス吹き込み口、及び蒸留口を備えた反応器に、窒素ガス雰囲気下で、テレフタル酸95g(0.6モル)、イソフタル酸53g(0.32モル)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸21g(0.08モル)、及びエチレングリコール93g(1.5モル)を仕込み、触媒としてテトラブチルチタネートを用いて、180〜200℃で2時間反応させ、水とメタノールを合計64g留出させた。続いて、反応混合物を240℃から260℃まで昇温し、反応系内の圧力を130Paの減圧状態として2時間反応させ、スルホン酸ナトリウム塩基を0.08モル%の割合で含有するポリエステル樹脂を合成した。
【0055】
得られたポリエステル樹脂を80〜90℃の水に溶解して、20重量%のスルホン酸ナトリウム塩基を含有するポリエステル樹脂水溶液を調製した。次に、2Lの撹拌機付のガラスフラスコに、25℃に調整した12重量%塩酸水溶液750gを供給し、これに上記のポリエステル水溶液1,000gを5分間かけて滴下して、25℃で3時間熟成させた。析出したポリエステル樹脂粉末をヌッチェで濾過して、水洗し、得られたケーキに、水780gと25重量%アンモニア水溶液6.2g(スルホン酸基に対して1.2倍モル)を添加し、80〜90℃で溶解してから冷却して、コーティングaを製造した。
【0056】
[製造例2]コーティング溶液bの製造
上記と同様の反応器に、窒素ガス雰囲気下で、テレフタル酸86g(0.6モル)、イソフタル酸53g(0.32モル)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸21g(0.08モル)、フマル酸7.0g(0.06モル)、及びエチレングリコール93g(1.5モル)をモノマー成分として使用し、製造例1と同様に反応させて、スルホン酸ナトリウム塩基を0.075モル%の割合で含有するポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂を製造例1と同様に酸処理した後、アンモニア水溶液に溶解して、コーティング溶液bを製造した。
【0057】
[めっき法]
(1−a)脱脂処理:
合成樹脂成形品またはポリエステル樹脂層を形成した合成樹脂成形品を超音波洗浄機で5分間洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、その後、以下に示す手順の無電解銅めっき処理にて、厚み2μmのめっき層を形成し、引き続いて、電気銅めっきを行い、総厚み約15μmのめっき層を形成した。
【0058】
(1−b)プレディップ:
塩化ナトリウム(180g/l)、塩酸(80ml/l)、OS−1505〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)の溶液に、45℃で3分浸漬する。
【0059】
(1−c)キャタリスト:
塩化ナトリウム(180g/l)、塩酸(100ml/l)、OS−1505〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)、OS−1558〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)の溶液に、30℃で8分浸漬する。浸漬後、イオン交換水で洗浄する。
【0060】
(1−d)アクセラレーター:
OS−1560〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕(20ml/l)溶液に、30℃で2分浸漬する。浸漬後、イオン交換水で洗浄する。
【0061】
(1−e)無電解銅めっき:
OS−1598M(48ml/l)、OS−1598A(10ml/l)、OS−1598R(2ml/l)、OS−1120SR(2.lml/l)、CupZ(23ml/l)、CupY(12ml/l)〔シプレイ・ファーイースト(株)製〕の水溶液に、45℃で15分浸漬する。浸漬後、イオン交換水で洗浄する。
【0062】
(1−f)電気銅めっき:
硫酸銅220g/l及び硫酸60g/lの溶液中で、25℃で2A/dm2の電流密度で20分間通電し、金属銅の総厚み約15μmのめっき膜を形成する。
【0063】
[試験片の作製と評価法]
溶融混合が必要なものについては、二軸混合機(45mmφ、L/D=32)を用いて混合し、溶融ストランドを水冷ペレタイズして成形に使用する樹脂組成物のペレットを得た。射出成形は、射出成形機(型締力100トン、スクリュー径45mm)を用いて、射出圧100kg/cm2、保圧時間10秒、金型温度60℃の条件にて、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾット衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのプレートを作製した。プレートには、めっき層を形成して、めっき密着強度及びめっき平滑性を測定した。
【0064】
(1)引張降伏点強度:
ASTM D−638に準じて測定した。測定温度20℃。
(2)曲げ弾性率:
ASTM D−790に準じて測定した。測定温度20℃。
(3)衝撃強度:
ASTM D−256(アイゾット、ノッチ付き、1/4インチ)に準じて測定した。測定温度20℃。
【0065】
(4)めっき密着強度:
図1に示すように、頭4の直径が7mmφの釘5を使用し、釘5の頭4とプレート1のめっき面2を半田付けして(半田層3)、めっき面と垂直方向に引っぱり速度10mm/分で引き剥がし、めっきの密着強度を測定した。めっきの密着強度が2MPa以上ならば、良好と判断される。
【0066】
(5)めっき平滑性:
めっきの平滑性については、共焦点顕微鏡(キーエンス製 VK8550)を用い、10点平均粗さを測定した。10点平均粗さが5μm以下であれば、良好と判断される。
【0067】
[実施例l]
ポリブチレンテレフタレート(非強化PBT樹脂;宇部興産株式会社製、UBE PBT1000)を用いて、上記の射出成形機でバレル温度を250℃に設定して射出成形することにより、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾット衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのメッキ用プレートを作製した。得られたメッキ用プレートに、ディッピング法でコーティング溶液aを塗布し、60℃の恒温槽内で1時間乾燥した。このようにしてポリエステル樹脂の塗膜を形成したプレートに無電解めっきを行い、引き続いて電気めっきを行った。
【0068】
結果を表1に示す。表lから明らかなように、得られためっき合成樹脂成形品は、機械的物性が何れも良好な値を示し、めっきの平滑性が0.3μm、密着強度が2.3MPaであり、平滑性及び密着性がともに優れている。
【0069】
[実施例2]
ポリブチレンテレフタレート(非強化PBT樹脂;宇部興産株式会社製、UBE PBT1000)100重量部に炭酸カルシウム(平均粒径3μm)5重量部配合したPBT樹脂組成物のペレットを上記の二軸混合機を用いて、バレル温度250℃の条件で作製した。このペレットを実施例1と同様の方法で射出成形して、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾット衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのめっき用プレートを作製した。
【0070】
上記で得られたメッキ用プレートに、ディッピング法でコーティング溶液aを塗布し、60℃の恒温槽内で1時間乾燥した。このようにしてポリエステル樹脂の塗膜を形成したプレートに無電解めっきを行い、引き続いて電気めっきを行った。結果を表1に示す。
【0071】
表lから明らかなように、得られためっき合成樹脂成形品は、機械的物性が何れも良好な値を示し、めっきの平滑性が0.6μm、密着強度が4.5MPaであり、平滑性及び密着性がともに優れている。
【0072】
[実施例3]
ガラス繊維強化ポリブチレンテレフタレート(GF強化PBT樹脂;宇部興産株式会社製、UBE PBTG600)を用いて、実施例1と同様の方法で射出成形し、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾット衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのプレートを作製した。
【0073】
得られたプレートに、ディッピング法でコーティング溶液bを塗布し、60℃の恒温槽内で1時間乾燥した。このようにしてポリエステル樹脂の塗膜を形成したプレートに3MeVの電子線を200kGy照射して、ポリエステル樹脂を照射架橋した。その後、無電解めっきと電気めっきを行った。結果を表1に示す。
【0074】
表lから明らかなように、得られためっき合成樹脂成形品は、機械的物性が何れも良好な値を示し、めっきの平滑性が0.7μm、密着強度が3.4MPaであり、平滑性及び密着性がともに優れている。
【0075】
上記で得られためっきプレートを240℃設定ゾーンを10秒間で通過する条件にてリフロー炉内を通過させる方法により耐リフロー性試験を行ったところ、めっきの膨れ等は観察されず、耐熱性に優れていることがわかった。
【0076】
[実施例4]
ナイロン6(非強化ナイロン6樹脂;宇部興産株式会社製、UBEナイロン1013B)100重量部にトリアリルイソシアヌレート(TAIC)3重量部を配合したナイロン樹脂組成物のペレットをバレル温度250℃に設定した2軸混合機を用いて作製した。このペレットを実施例1と同様の方法で射出成形し、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾット衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのプレートを作製した。得られたプレートに、ディッピング法でコーティング溶液bを塗布し、60℃の高温槽内で1時間乾燥した。
【0077】
このようにしてポリエステル樹脂の塗膜を形成したプレートに無電解めっき、引き続いて電気めっきを行った後、3MeVの電子線を100kGy照射して、ポリエステル樹脂を照射架橋させた。結果を表1に示す。
【0078】
表lから明らかなように、得られためっき合成樹脂成形品は、機械的物性が何れも良好な値を示し、めっきの平滑性が0.3μm、密着強度が4.7MPaであり、平滑性及び密着性がともに優れている。
【0079】
上記で得られためっきプレートを240℃設定ゾーンを10秒間で通過する条件にてリフロー炉内を通過させる方法により耐リフロー性試験を行ったところ、めっきの膨れ等は観察されず、耐熱性に優れていることがわかった。さらに、このめっきプレートを260℃設定ゾーンを10秒間で通過する条件にてリフロー炉内を通過させる方法で耐リフロー性試験を行ったところ、めっきの膨れ等は観察されず、耐熱性に優れていることがわかった。
【0080】
[実施例5]
無機フィラーを添加した液晶ポリマー(LCP樹脂;ポリプラスチック株式会社製、ベクトラC820)を実施例1と同様の射出成形機で射出成形して、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾット衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのプレートを作製した。得られたプレートを、45%の水酸化ナトリウム水溶液に40℃で5分間浸漬し、次いで、3%の塩酸で中和した後、イオン交換水で洗浄、60℃×1時間乾燥する方法でプレートの粗面化処理を行った。この粗面化処理したプレートにディッピング法でコーティング溶液bを塗布し、60℃の高温槽内で1時間乾燥した。
【0081】
次に、ポリエステル樹脂塗膜を形成したプレートに、無電解めっき、引き続いて電気めっきを行い、その後、3MeVの電子線を100kGy照射して、ポリエステル樹脂層を照射架橋させた。結果を表1に示す。
【0082】
表lから明らかなように、得られためっき合成樹脂成形品は、機械的物性が何れも良好な値を示し、めっきの平滑性が1.2μm、密着強度が5.2MPaであり、平滑性及び密着性がともに優れている。
【0083】
上記で得られためっきプレートを240℃設定ゾーンを10秒間で通過する条件にてリフロー炉内を通過させる方法により耐リフロー性試験を行ったところ、めっきの膨れ等は観察されず、耐熱性に優れていることがわかった。さらに、このめっきプレートを260℃設定ゾーンを10秒間で通過する条件にてリフロー炉内を通過させる方法で耐リフロー性試験を行ったところ、めっきの膨れ等は観察されず、耐熱性に優れていることがわかった。
【0084】
【表1】
Figure 0003975123
【0085】
[比較例1]
実施例1で得られたプレートに、直接、無電解めっき、引き続いて電気めっきを行った。部分的にめっきが成長していない箇所があり、均一なめっき面が得られず、めっき層ができている部分の密着強度も0.2MPaと低く、実用に耐えないものであった。結果を表2に示す。
【0086】
[比較例2]
実施例3で得られたブレートを、45%の水酸化ナトリウム水溶液に80℃で5分間浸漬し、次いで、3%の塩酸で中和した後、イオン交換水で洗浄する方法で粗面化処理した。この粗面化処理したプレートに、無電解めっき、引き続いて電気めっきを行った。その結果、ガラス繊維の露出部周辺に集中的にめっきが成長し、また、めっきの成長していない箇所もあり、均一なめっき面が得られず、実用に耐えないものであった。結果を表2に示す。
【0087】
[比較例3]
実施例2で得られたプレートを、45%の水酸化ナトリウム水溶液に80℃で5分間浸漬し、次いで、3%の塩酸で中和した後、イオン交換水で洗浄する方法で粗面化処理した。この粗面化処理したプレートに、無電解めっき、引き続いて電気めっきを行った。めっきの密着強度を測定した結果、0.6MPaと低く、平滑性も4.2μmと不十分であることがわかった。
【0088】
[比較例4]
ポリブチレンテレフタレート(非強化PBT樹脂;宇部興産株式会社製、UBE PBT1000)100重量部に炭酸カルシウムを30重量部配合したPBT樹脂組成物のペレットを2軸混合機を用いて作製した。このペレットを射出成形して、引張試験ダンベル、曲げ試験片、アイゾソト衝撃試験片、長さ50×幅20×厚み0.5mmのプレートを作製した。
【0089】
上記で得られたプレートを45%の水酸化ナトリウム水溶液に80℃で5分間浸漬し、次いで、3%の塩酸で中和した後、イオン交換水で洗浄する方法で粗面化処理した。この粗面化したプレートに、直接、無電解めっき、引き続いて電気めっきを行った。機械的物性は、表2に示すように、引張降伏点強度、衝撃強度が低く、実用上間題があることがわかった。一方、めっきの密着強度は、2.5MPaと十分な値であることがわかったが、表面粗度は7.2μmであり、平滑性に劣ることがわかった。
【0090】
[比較例5]
実施例5で作製した液晶ポリマーのプレートを、45%の水酸化ナトリウム水溶液に80℃で5分問浸漬し、次いで、3%の塩酸で中和した後、イオン交換水で洗浄する方法で粗面化処理した。この粗面化処理したプレートに、無電解めっきを行い、引き続いて電気めっきを行った。結果を表2に示す。めっきの密着強度は2.8MPaと十分な値を示したが、表面粗度は10.2μmであり、平滑性は劣ることがわかった。
【0091】
【表2】
Figure 0003975123
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、めっき法により、合成樹脂成形品の表面に密着性が大きく、かつ、表面粗度が小さく平滑性に優れてた金属導体層を形成することができる。本発明のめっき合成樹脂成形品は、電子機器の筺体のシールド用途、射出成形品上に導体回路を形成したMlDなどの分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】めっき密着強度を測定する方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
1:樹脂成形品、
2:めっき層、
3:半田層、
4:釘の頭
5:釘。

Claims (8)

  1. 合成樹脂成形品(A)の表面に、
    スルホイソフタル酸金属塩及び芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B)が形成され、
    該ポリエステル樹脂層(B)の表面に無電解めっき層(C)または該無電解めっき層(C)とその表面に電気めっき層(D)が形成され、そして、
    めっき層の密着強度が2.0MPa以上で、かつ、めっき層の平滑性が2.0μm以下である
    ことを特徴とするめっき合成樹脂成形品。
  2. 合成樹脂成形品 (A) が、異方性無機フィラーを含有する合成樹脂から形成されたものである請求項1記載のめっき合成樹脂成形品。
  3. 合成樹脂成形品(A)の表面に、
    スルホイソフタル酸金属塩、芳香族ジカルボン酸成分、及び不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B2)が形成され、
    該ポリエステル樹脂層(B2)の表面に無電解めっき層(C)または該無電解めっき層(C)とその表面に電気めっき層(D)が形成され
    ポリエステル樹脂層(B2)が電離放射線により照射架橋されており、そして、
    めっき層の密着強度が2.0MPa以上で、かつ、めっき層の平滑性が2.0μm以下である
    ことを特徴とするめっき合成樹脂成形品。
  4. 合成樹脂成形品(A)が、異方性無機フィラーを含有する合成樹脂から形成されたものである請求項3記載のめっき合成樹脂成形品。
  5. 合成樹脂成形品(A)の表面に、スルホイソフタル酸金属塩及び芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂を含有する溶液を塗布して、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B)を形成する工程1
    該ポリエステル樹脂層(B)の表面に無電解めっき層(C)を形成する工程2;または該ポリエステル樹脂層 (B) の表面に該無電解めっき層 (C) を形成する工程2の後、さらに該無電解めっき層(C)の表面に電気めっき層(D)を形成する工程3
    からなる一連の工程を含むことを特徴とするめっき合成樹脂成形品の製造方法。
  6. 前記工程1において、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂をアンモニア水溶液に溶解させて、アンモニアで中和されたスルホン酸基を持つポリエステル樹脂の溶液を調製し、次いで、該溶液を合成樹脂成形品 (A) の表面に塗布した後、乾燥してアンモニアを揮散させ、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂層 (B) を形成する請求項5記載の製造方法。
  7. 合成樹脂成形品(A)の表面に、スルホイソフタル酸金属塩、芳香族ジカルボン酸成分、及び不飽和脂肪族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と飽和脂肪族ジオール成分との重縮合物を酸処理してなるスルホン酸基を持つポリエステル樹脂を含有する溶液を塗布して、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂層(B2)を形成する工程I
    該ポリエステル樹脂層(B2)の表面に無電解めっき層(C)を形成する工程II;または該ポリエステル樹脂層 (B2) の表面に無電解めっき層 (C) を形成する工程 II の後、さらに該無電解めっき層(C)の表面に電気めっき層(D)を形成する工程III並びに、
    前記めっき層の形成工程II及びIIIの前または後に、電離性放射線を照射して、該ポリエステル樹脂層(B2)を照射架橋する工程IV
    からなる一連の工程を含むことを特徴とするめっき合成樹脂成形品の製造方法。
  8. 前記工程Iにおいて、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂をアンモニア水溶液に溶解させて、アンモニアで中和されたスルホン酸基を持つポリエステル樹脂の溶液を調製し、次いで、該溶液を合成樹脂成形品 (A) の表面に塗布した後、乾燥してア ンモニアを揮散させ、スルホン酸基を持つポリエステル樹脂層 (B2) を形成する請求項7記載の製造方法。
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