JPS6240430B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明はメツキしたポリエステル樹脂成形品の
製造法に関する。更に詳しくは本発明は熱可塑性
ポリエステル樹脂の物理的、化学的性質を損うこ
となく、且つ該樹脂表面に優れた金属的外観を賦
与せしめたメツキ成形品の製造方法に関する。 熱可塑性ポリエステル樹脂、例えばポリエチレ
ンテレフタレート（以下単にPET樹脂という）
やポリブチレンテレフタレート（以下単にPBT
樹脂という）は、優れた機械的性質、耐熱性、耐
薬品性を有しており、エンジニヤリングプラスチ
ツクとして種々の電気部品、機械部品に用いられ
ているが、更にこれに金属的な外観を賦与した金
属メツキ成形品は従来のABS樹脂やポリプロピ
レン樹脂のメツキ品では利用しえなかつた耐熱性
や機械的強度を必要とする新規な分野への応用が
期待される。 一般にプラスチツクメツキの方法は(1)前処理、
(2)化学エツチング、(3)センシタイジング、(4)アク
テイベーテイング、(5)化学メツキおよび(6)電気メ
ツキの各工程からなつておりプラスチツクの種類
に応じて種々の方法が用いられている。 これらの工程の中でもとりわけ(2)の化学エツチ
ング工程は完成したメツキ成形品における樹脂と
メツキ金属被膜との密着性や外観に大きな影響を
与える重要な工程である。 本発明者は、先にポリエステル樹脂中に充填剤
を含有せしめた成形物をアルカリ性溶液に接触せ
しめた後次いでメツキを行うことにより極めて金
属被膜との密着性の良好なメツキ完成品が得られ
ることを見出し、更にこれらの充填剤の一部と繊
維状強化材を併用することにより優れた耐熱性を
有するメツキ成形品が得られることを見出した。
しかし前者においては耐熱性において必ずしも満
足のいくものではなく、更に改善の余地が認めら
れ、又後者においては一般的な繊維状強化材を用
いた場合、光沢は良好であるが、いわゆる“ゆず
肌”という現象が生じる為、表面の平滑性におい
て改善の余地が認められた。 本発明者は更にこのようなポリエステルメツキ
の難点を改善すべくポリエステル樹脂の物理的、
化学的性質の改良およびエツチング条件について
鋭意研究した結果、熱可塑性ポリエステルに特定
量の針状型無水石膏を添加することによつて極
めてメツキに適した性質が発現し、容易に表面粗
化ができるのみならずポリエステル樹脂の優れた
諸特性例えば機械的特性、熱的特性、化学的特性
等が向上することを知見し、本発明に到達したも
のである。 すなわち、本発明は充てん剤を配合してなるポ
リエステル樹脂成形品をアルカリ性溶液による処
理を行つてからメツキ操作に附す方法において、
前記充てん剤が平均直径対平均長さの比が10以上
である針状の型無水石膏の粉末であり、その配
合量が５〜50重量％（全体基準量）であることを
特徴とするメツキしたポリエステル樹脂成形品の
製造法である。 本発明において言う熱可塑性ポリエステルとは
酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、ナフ
タレン−２・６−ジカルボン酸等のような２塩基
性酸又はそれらのエステル形成性誘導体を用い、
グリコール成分としてエチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペ
ンチルグリコール、２・２・４・４−テトラメチ
ルシクロブタンジオール、４・4′−イソプロピリ
デン−ジ−Ｐフエニル等のようなグリコール又は
これらのエステル形成性誘導体を用いて重合され
たホモポリマー又はコポリマーである。 特に好ましい熱可塑性ポリエステルとしてはポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフ
タレート、ポリエチレン−２・６−ナフタレー
ト、ポリブチレン−２・６−ナフタレート等の如
き芳香族ポリエステルが挙げられるが、これらの
ポリエステルは、その一部を他の共重合成分で置
換されていてもよい。熱可塑性ポリエステルは通
常の製造方法で得ることができる。またその極限
粘度〔η〕は0.3以上、特に0.5以上であることが
望ましい。 本発明に用いる針状型無水石膏は例えば亜硫
酸カルシウム半水塩の懸濁液をPH３程度に調整
し、温度130℃、圧力２Kg／cm²で酸化反応を１時
間行つた後熱時に過洗滌し90℃以上で乾燥して
得られる。 ここで用いる針状型無水石膏は、この方法に
よつて製造されるものに限定されることはなく、
２水石膏から針状型半水石膏を造りこれを焼成
して得られたものあるいはその他公知の方法によ
り造られたものでもよい。又ここでいう針状とは
平均直径対平均長さの比（ｄ／ｌ）が10以上のも
のをいう、ｄ／ｌが10よりも小さいものでは耐熱
性の向上が顕著でない。 本発明での石膏の樹脂成分に対する配合量は５
〜50重量％、好ましくは10〜40重量％である。す
なわち５重量％より少い量では耐熱性の向上が顕
著でなく、又50重量％よりも多い量ではメツキし
た後の、ポリエステル樹脂成形品の光沢が著しく
劣つてくる。 上記充填剤をポリエステル樹脂中に配合する方
法は種々考えられるが、充填剤のポリエステル成
形品中への分散が充分でないと得られたメツキ完
成品の表面外観が劣るため成形に先立つて出来る
だけ均一に混練しておくことが望ましい。最も一
般的な混練方法は、押出機を用い該ポリエステル
樹脂の溶融温度以上にてポリエステルと該充填剤
を溶融混練する方法である。 上記充填剤以外に該ポリエステル樹脂の他の特
性を改良する目的で異種のポリマー、着色剤、滑
剤、離型剤、該剤、発泡剤、難燃剤、安定剤、ガ
ラス繊維、CaCo₃等の充填剤をメツキ性能を損わ
ない量で添加混入してもよい。 本発明にいうアルカリ性溶液による処理とは、
これら充填機含有ポリエステル樹脂成形品の表面
粗化（エツチング）を目的とした処理であつて比
較的広範囲の条件の採用が可能であるが、メツキ
金属被膜との密着性および得られたメツキ成形物
の特性を考慮すると次式の成立する条件が望まし
い。 1500≧Ｃ・2⁽〓〓〓^）・ｔ≧20 〔 但し式中のＣ、ｔおよびＴは以下の通りであ
る。 Ｃ：アルカリ性水溶液の当量濃度（規定） ｔ：処理時間（分） Ｔ：処理温度（℃）〕 上記の条件下でアルカリ水溶液にて処理後プラ
スチツクに広く用いられているセンシタイジン
グ・アクテイベーテイング、化学メツキ、電気メ
ツキ等の工程を経てメツキ操作は完結する。な
お、密着性を更に向上する目的でアルカリ水溶液
による処理の前後に酸処理を行つても本発明の効
果は失われない。上記式におけるＣ；ｔおよびＴ
は特に限定はないが作業上好ましくはＣは0.1〜
10規定、ｔは１〜40分、Ｔは20〜80℃である。 以下実施例をあげて本発明を具体的に説明す
る。 尚、本実施例中で用いる測定項目のうち曲げ強
度および熱変形温度の測定は各々ASTM Ｄ−
790およびＤ−648に準じて行つた。ポリエステル
樹脂の極限粘度〔η〕はオルトクロロフエノール
溶媒を用い35℃にて測定した。 実施例 １ 120℃にて４時間熱風乾燥した〔η〕＝1.10のポ
リブチレンテレフタレート100重量部に対しｌ／
ｄ＝45の針状型無水石膏を30重量部タンブラー
にて混合した後、ベントタイプの65mmφ押出機を
用いてシリンダー温度250〜260℃にて溶融混合
し、ダイスから出たスレツドを冷却切断して成形
用ペレツトを得た。このペレツトを用いて５オン
スの射出成形機にてシリンダー温度260℃、射出
圧800Kg／cm²、金型温度80℃、成形サイクル30秒
に試験用成形品を射出成形した。得られた射出成
形品の曲げ破断強度、熱変形温度は第１表に示し
た。この射出成形品を中性洗剤にて洗浄脱脂後５
規定の水酸化ナトリウム水溶液で70℃にて30分浸
漬し、次いで流水中にて次分洗浄し、以下に示す
常法に従つて電気銅メツキを施した。 (1) センシタイジング 前記表面粗化した成形品を塩化オースズ20
ｇ、塩酸（38％水溶液）10c.c.及び水1000c.c.の混
合液に25℃で３〜５分浸漬 (2) 水洗 流水中１〜２分 (3) アクテイベーテイング 塩化パラジウム0.5ｇ、塩酸（38％水溶液）
５c.c.及び水1000c.c.の混合液に25℃にて２〜５分
間浸漬 (4) 水洗 流水中１〜２分 (5) 化学ニツケルメツキ 硫酸ニツケル20ｇ／、次亜りん酸ナトリウ
ム15ｇ／、硫酸アンモニウム50ｇ／、クエ
ン酸ソーダ20ｇ／からなる組成のPH８〜９の
液中40〜50℃にて10分間浸漬 (6) 水洗 流水中１〜２分 (7) 電気銅メツキ 硫酸銅220ｇ／、硫酸50ｇ／、光沢剤
〔UBAC＃１（荏原ユージライト（株）製品）〕
５ｇ／からなる水溶液中温度25〜30℃にて
3A／ｄm²の電流密度で電流を30〜60分間流
し、金属銅膜厚み約40μのメツキ被膜を樹脂成
形品に形成させた。 以上の処理工程を施して得た成形品の樹脂層と
銅膜との密着強度を第１表に示す、なお密着強度
は剥離速度５cm／分にて巾１cmの密着面を90゜の
方向へはくりした時の強度を表わす。 また第１表には比較例としてｌ／ｄ＝１〜２の
型無水石膏を用した以外は上記と同様に処理し
た成形品の特性を併記して示す。

【表】 針状型無水石膏を含むポリエステル組成物か
らは第１表に表すように高い熱変形温度を有し、
外観の良好なメツキ品が得られた。 実施例 ２〜５ 極限粘度1.0のポリエチレンテレフタレートと
ｌ／ｄ＝75の針状型無水石膏を第２表に示す割
合でタンブラーにて混合後、二軸押出機にて溶融
混合し、射出成形用のペレツトを得た。このペレ
ツトを用いてシリンダー温度270℃、射出圧力800
Kg／cm²、金型温度140℃にて試験用成形品を射出
成形した。得られた射出成形品の熱変形温度は第
１表に示す。この射出成形品を中性洗剤にて洗滌
脱脂後５規定の水酸化ナトリウム水溶液で50℃に
て20分間浸漬し、次いで流水中にて充分洗浄し、
実施例１に示すと同様の操作を経て電気銅メツキ
を施した。このメツキ完成品の密着強度の測定お
よび外観の観察結果を第２表に示す。

【表】 第２表より針状型無水石膏の添加により熱変
形温度、密着性の向上が明らかである。針状型
無水石膏の添加量が５％よりも少いと耐熱性向上
も顕著でなく金属との密着性も低下し、又50％よ
りも多くなると成形品の光沢が劣るため得られた
メツキ完成品も不充分なものとなる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 充てん剤を配合してなるポリエステル樹脂成
   形品をアルカリ性溶液による処理を行つてからメ
   ツキ操作に附す方法において、前記充てん剤が平
   均直径対平均長さの比が10以上である針状の型
   無水石膏の粉末であり、その配合量が５〜50重量
   ％（全体基準量）であることを特徴とするメツキ
   したポリエステル樹脂成形品の製造法。