JP2023048367A - 金属樹脂複合体およびその製造方法、ならびにポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

金属樹脂複合体およびその製造方法、ならびにポリアミド樹脂組成物 Download PDF

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浩平 西野
Kohei Nishino
功 鷲尾
Isao Washio
悠 土井
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Abstract

【課題】金型温度を低温としてポリアミド樹脂組成物を射出成形して金属樹脂複合体を製造しても、金型温度を高温として金属樹脂複合体を製造したときと比較しての接合強度が低くなりにくい金属樹脂複合体を提供すること。【解決手段】金属部材と、前記金属部材の表面に接合した樹脂部材とを有する金属樹脂複合体は、前記樹脂部材が、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上160℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含むポリアミド樹脂組成物を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、金属樹脂複合体およびその製造方法、ならびにポリアミド樹脂組成物に関する。
各種部品の軽量化の観点から、金属の代替品として樹脂の使用が検討されている。しかし、全ての金属部品を樹脂で代替することは難しい場合も多い。そのような場合のため、金属成形体と樹脂成形体を接合させてなる金属樹脂複合体の使用が検討されている。
たとえば、特許文献1には、侵食性水溶液への浸漬処理または陽極酸化処理により表面に凹凸または細孔を形成したアルミニウム合金に、各種ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物を射出して接合させたことが記載されている。また、特許文献2には、特定の物性を有する芳香族ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物が、アルミニウム部材と良好に接合したと記載されている。
特開2007-182071号公報 特開2018-177867号公報
特許文献1および特許文献2に記載のように、アルミニウムなどの金属にポリアミド樹脂組成物を接合させる方法が種々検討されている。また、特許文献2には、特定の芳香族ポリアミドによりアルミニウム部材との接合性が良好な金属樹脂複合体が得られたと記載されている。
ところで、特許文献2に記載のような芳香族ポリアミド樹脂は融点が高い。そのため、特許文献2に記載の金属樹脂複合体を作製するときには、射出による接合時に金型温度を高温にしないといけない。一方で、金属樹脂複合体の製造コストを低減する観点から、製造時の金型の加熱温度を低くすることが求められている。
しかし、本発明者らの知見によると、金型温度を低温としてポリアミド樹脂組成物を低射出成形して金属樹脂複合体を製造すると、金型温度を高温として金属樹脂複合体を製造したときと比較して、ポリアミド樹脂組成物と金属部材との接合強度が顕著に低下してしまう。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、金型温度を低温としてポリアミド樹脂組成物を射出成形して金属樹脂複合体を製造しても、金型温度を高温として金属樹脂複合体を製造したときと比較しての接合強度が低くなりにくいポリアミド樹脂組成物、当該ポリアミド樹脂組成物により金属樹脂複合体を製造する方法、および製造された金属樹脂複合体を提供することをその目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一態様に関する、金属部材と、前記金属部材の表面に接合した樹脂部材とを有する金属樹脂複合体は、前記樹脂部材が、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上180℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含むポリアミド樹脂組成物を含む。
上記課題を解決するための本発明の別の態様に関する金属樹脂複合体の製造方法は、金属部材を用意する工程と、前記金属部材の表面に、溶融したポリアミド樹脂組成物を射出して、固化させる工程と、を有する。前記ポリアミド樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上180℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含む。
上記課題を解決するための本発明の別の態様に関する金属部材との接合用のポリアミド樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上180℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含む。
本発明によれば、金型温度を低温としてポリアミド樹脂組成物を射出成形して金属樹脂複合体を製造しても、金型温度を高温として金属樹脂複合体を製造したときと比較しての接合強度が低くなりにくいポリアミド樹脂組成物、当該ポリアミド樹脂組成物により金属樹脂複合体を製造する方法、および製造された金属樹脂複合体が提供される。
1.金属樹脂接合体
本発明の第1の実施形態は、金属部材と、上記金属部材の表面に接合した樹脂部材と、を有する金属樹脂接合体に関する。
1-1.金属部材
金属部材は、金属を成形して所定の形状を付与したものであればよい。
金属部材の金属種は特に限定されず、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム、錫、ニッケルおよび亜鉛、ならびにこれらの合金を用いることができる。これらのうち、アルミニウム、銅、およびこれらの合金が好ましい。金属部材は、その全体がこれらの金属種により形成されていてもよいが、少なくともポリアミド樹脂組成物との接合面にこれらの金属種を含んでいればよい。
金属部材の形状は特に限定されず、金属樹脂複合体の用途に応じて任意に定めることができる。金属部材の形状の例には、平板状、曲板状、棒状、筒状および不定形状などが含まれる。ただし、金属部材は、ポリアミド樹脂組成物との接合面が、平面または曲面などの面状であることが好ましい。金属部材は、材料となる金属に対して、切断およびプレスなどを含む塑性加工を施したり、打ち抜き加工、切削、研磨、および放電加工などを含む除肉加工を施したりして、作製することができる。
金属部材は、ポリアミド樹脂組成物との接合面が粗面化処理されていることが好ましい。粗面化処理の方法は特に限定されず、塩基または酸を含む処理液への浸漬やエッチングなどの化学的な処理や、レーザーまたはブラストなどの物理的な処理により、表面が粗面化されればよい。
粗面化された金属部材の表面は、粗面化処理により形成された複数の凸部の中心間距離(ピッチ)が、5nm以上500μm以下であることが好ましい。複数の凸部の中心間距離が5nm以上であると、凸部同士の間の凹部が適度に大きいため、接合時に樹脂組成物を当該凹部に十分に浸入させやすく、金属部材と樹脂部材との接合強度をより向上させることができる。また、複数の凸部の中心間距離が500μm以下であると、当該凹部が大きくなりすぎないため、金属樹脂接合体の金属-樹脂界面に隙間が生じるのをより抑制し、密着性をより高めることができる。同様の観点から、複数の凸部の中心間距離は、5μm以上250μm以下であることがより好ましい。複数の凸部の中心間距離は、一の凸部の中心とそれと隣接する凸部の中心との間の距離の平均値である。
複数の凸部の中心間距離は、金属樹脂接合体から樹脂部材を機械的剥離、溶剤洗浄などにより除去し、露出した金属部材の表面を、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡観察、あるいは表面粗さ測定装置を用いて観察して測定することができる。
具体的には、複数の凸部の中心間距離が0.5μm未満であるときは、電子顕微鏡により観察することが可能であり、複数の凸部の中心間距離が0.5μm以上であるときは、レーザー顕微鏡または表面粗さ測定装置により観察することができる。例えば、金属部材の表面を電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真において、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部の中心間距離をそれぞれ測定する。そして、凸部の中心間距離の全ての測定値を積算した後、50で除したもの(平均したもの)を「複数の凸部の中心間距離」とする。
金属部材の粗面化処理された表面の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値は、特に制限されないが、2μmを超えることが好ましく、2μmより大きく50μm以下であることがより好ましく、2.5μmより大きく45μm以下であることがさらに好ましい。
十点平均粗さ(Rz)の平均値は、JIS B0601(ISO 4287)に準拠して測定することができる。具体的には、互いに平行な任意の3つの直線部と、それらと直交する任意の3つの直線部の合計6つの直線部上の十点平均粗さ(Rz)を測定し、これらの平均値をRzの平均値とする。
金属部材の粗面化処理された表面の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、0.5μm以上500μm以下であることが好ましい。特に、接合強度をより高める観点からは、複数の凸部の中心間距離が0.5μm未満であり、かつ、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が0.5μm以上500μm以下であることが好ましい。粗さ曲線要素の平均長さも、前述と同様、JISB0601(ISO 4287)により測定することができる。
1-2.樹脂部材
上記樹脂部材は、ポリアミド樹脂組成物の成形体を含む部材である。上記ポリアミド樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が80℃以上180℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含む。
上記ポリアミド樹脂組成物は、樹脂成分の主成分がポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)である樹脂組成物である。主成分であるとは、樹脂成分のうちポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)が占める割合が50質量%以上であることを意味する。樹脂成分のうちポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)が占める割合は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。樹脂成分のうちポリアミド樹脂(A)が占める割合の上限は特に限定されないが、100質量%以下とすることができ、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
1-2-1.ポリアミド樹脂(A)
ポリアミド樹脂(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が80℃以上180℃以下のポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が上記範囲であれば特に限定されないが、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)およびジアミンに由来する成分単位(a2)を含み、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)が、その全モル数に対して、20モル%以上100モル%以下のテレフタル酸に由来する成分単位を含むことが好ましい。また、ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4~20の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むことが好ましい。
[ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)]
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)(即ち、ジカルボン酸に由来する成分単位)は、少なくともテレフタル酸に由来する成分単位を含む。テレフタル酸に由来する成分単位を含む半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、結晶性が高く、樹脂部材の強度および金属部材への樹脂部材の接合強度を高め得る。
具体的には、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分単位を20~100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を0~80モル%と、炭素原子数4~20の脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位を0~60モル%とを含む。ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分単位30~100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位0~70モル%と、炭素原子数4~20の脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位0~30モル%とを含むことがより好ましく、テレフタル酸に由来する成分単位55~100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位0~45モル%とを含むことがさらに好ましい。ただし、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の全モル数を100モル%とする。
テレフタル酸の例には、テレフタル酸やテレフタル酸エステル(テレフタル酸の炭素数1~4のアルキルエステル)が含まれる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらのエステルが含まれる。これらのうち、イソフタル酸が好ましい。
炭素原子数4~20の脂肪族ジカルボン酸は、炭素原子数6~12の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸の例には、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびスベリン酸などが含まれる。これらのうち、アジピン酸が好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)における、テレフタル酸に由来する成分単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはイソフタル酸)に由来する成分単位とのモル比は、テレフタル酸に由来する成分単位/テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位が、55/45~80/20であることが好ましく、60/40~80/20であることがより好ましい。テレフタル酸に由来する成分単位の量が上記範囲であると、樹脂部材の強度および金属部材への樹脂部材の接合強度を高めやすい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂環族ジカルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。脂環族ジカルボン酸の例には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、および1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などが含まれる。
[ジアミンに由来する成分単位(a2)]
ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4~20の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含み、炭素原子数4~8の直鎖状脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むことが好ましく、炭素原子数6~8の直鎖状脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むことがより好ましい。
炭素原子数4~8の直鎖状脂肪族ジアミンの例には、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、および1,8-オクタンジアミンなどの炭素原子数4~8の直鎖状アルキレンジアミンが含まれる。これらのうち、1,6-ジアミノヘキサンが好ましい。
炭素原子数4~20の脂肪族ジアミンに由来する成分単位は、炭素原子数4~15の分岐状脂肪族ジアミンに由来する成分単位をさらに含んでいてもよい。炭素原子数4~15の分岐状脂肪族ジアミンの例には、2-メチル-1,8-オクタンジアミンおよび2-メチル-1,5-ペンタンジアミンが含まれる。
炭素原子数4~20の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の合計量に対して30モル%以上100モル%以下であることが好ましい。ただし、ジアミンに由来する成分単位(a2)の全モル数を100モル%とする。
ジアミンに由来する成分単位(a2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジアミンに由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジアミンの例には、脂環族ジアミンおよび芳香族ジアミンが含まれる。
脂環族ジアミンの例には、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-5,5’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-5,5’-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、α,α’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,4-シクロヘキサン、およびα,α’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,3-シクロヘキサンなどが含まれる。芳香族ジアミンの例には、メタキシリレンジアミンが含まれる。他のジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の合計量に対して50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の具体例には、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位およびイソフタル酸に由来する成分単位であり、ジアミンに由来する成分単位(a2)が1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位であるポリアミド樹脂(PA6T6I)、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位およびアジピン酸に由来する成分単位であり、ジアミンに由来する成分単位が1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位であるポリアミド樹脂(PA6T66)、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位であり、ジアミンに由来する成分単位が1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位および2-メチル-1,5-ペンタンジアミンに由来する成分単位であるポリアミド樹脂(PA6TDT)、などが含まれる。ポリアミド樹脂(A)は、1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
ポリアミド樹脂(A)は、コンパウンドや成形時の熱安定性を高めたり、機械的強度をより高めたりする観点から、少なくとも一部の分子の末端基が末端封止剤で封止されていてもよい。末端封止剤は、例えば分子末端がカルボキシル基の場合は、モノアミンであることが好ましく、分子末端がアミノ基である場合は、モノカルボン酸であることが好ましい。
モノアミンの例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、およびブチルアミンなどを含む脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、およびジシクロヘキシルアミンなどを含む脂環式モノアミン、ならびに、アニリン、およびトルイジンなどを含む芳香族モノアミンなどが含まれる。モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ-ル酸などを含む炭素原子数2以上30以下の脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などを含む芳香族モノカルボン酸、ならびにシクロヘキサンカルボン酸などを含む脂環式モノカルボン酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸および脂環式モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
[物性]
ポリアミド樹脂(A)は、融点(Tm)を280℃以上340℃以下とすることができる。ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)が280℃以上であると、樹脂組成物や成形体の高温域における機械的強度や耐熱性などが損なわれにくく、340℃以下であると、成形温度を過剰に高くする必要がないため、樹脂組成物の成形加工性が良好となりやすい。上記観点から、ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、290℃以上340℃以下であることがより好ましく、300℃以上340℃以下であることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が90℃以上170℃以下であることが好ましく、100℃以上160℃以下であることがより好ましく、120℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、結晶化温度(Tc)が240℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましい。ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度(Tc)が240℃以上であると、ポリアミド樹脂組成物を結晶化させやすくして、樹脂部材の機械的強度および接合強度をより高めることができる。ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度(Tc)の上限は特に限定されないものの、330℃未満とすることができ、300℃未満であることが好ましく、280℃未満であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)は、20J/g以上であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)が20J/g以上であると、結晶性を有するため、樹脂部材の耐熱性を高めやすい。なお、ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)の上限値は、特に制限されないが、成形加工性を損なわないようにする観点では、130J/gでありうる。ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)は、30J/g以上130J/g以下であることが好ましく、30J/g以上100J/g以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂の融解熱量(ΔH)、融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定することができる。
具体的には、約5mgのポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱する。樹脂を完全融解させるために、360℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却する。30℃で5分間置いた後、10℃/minで360℃まで2度目の加熱を行う。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)を結晶性ポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、発熱ピークを結晶化温度(Tc)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とする。融解熱量(ΔH)は、JIS K7122に準じて、1度目の昇温過程での結晶化の吸熱ピークの面積から求める。
結晶性ポリアミド樹脂の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)および融解熱量(ΔH)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a)の構造、およびジアミンに由来する成分単位(a)の構造などによって調整することができる。
ポリアミド樹脂(A)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.6dl/g以上1.5dl/g以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が0.6dl/g以上であると、成形体の機械的強度(靱性など)を十分に高めやすく、1.5dl/g以下であると、樹脂組成物の成形時の流動性が損なわれにくい。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]は、同様の観点から、0.8dl/g以上1.2dl/g以下であることがより好ましい。極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂(A)の末端封止量などによって調整することができる。
結晶性ポリアミド樹脂の極限粘度は、JIS K6810-1977に準拠して測定することができる。具体的には、結晶性ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解して試料溶液とする。この試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して、25±0.05℃の条件下で測定し、得られた値を下記式に当てはめて算出することができる。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
上記式において、各代数または変数は、以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
ηSPは、以下の式によって求められる。
ηSP=(t-t0)/t0
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
[製造方法]
ポリアミド樹脂は、例えば前述のジカルボン酸と、前述のジアミンとを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いでこの低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与して重縮合させることで製造することができる。
ポリアミド樹脂の極限粘度を調整する観点などから、反応系に前述の末端封止剤を添加してもよい。末端封止剤の添加量により、ポリアミド樹脂の極限粘度[η](または分子量)を調整することができる。
末端封止剤は、ジカルボン酸とジアミンとの反応系に添加される。添加量はジカルボン酸の合計量1モルに対して、0.07モル以下であることが好ましく、0.05モル以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との合計質量に対して、35質量%以上95質量%以下であることが好ましく、40質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂(A)の含有量をより多くするほど、金属部材への樹脂部材の接合強度をより高めることができる。一方で、ポリアミド樹脂(B)を添加して、金型温度を低温としたときの接合強度の低下の抑制効果を得る余地を残すため、ポリアミド樹脂(A)の上限は上記範囲としうる。
1-2-2.ポリアミド樹脂(B)
ポリアミド樹脂(B)は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が70℃以下のポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂(B)は、融点(Tm)が観察されるポリアミド樹脂であってもよいし、融点(Tm)が観察されないポリアミド樹脂であってもよい。また、融点(Tm)が観察されるポリアミド樹脂と、融点(Tm)が観察されないポリアミド樹脂とを併用してもよい。これらのうち、融点(Tm)が観察されるポリアミド樹脂が好ましい。融点(Tm)が観察されるポリアミド樹脂であるとき、ポリアミド樹脂(B)は、融点(Tm)が280℃未満であることが好ましく、220℃未満であることがより好ましく、150℃未満であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(B)の融点(Tm)の下限値は特に限定されないものの、80℃以上とすることができる。
ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂(A)よりもガラス転移温度(Tg)が低いため、低温で射出成形したときにもポリアミド樹脂組成物を固化しやすくする。そのため、低温で射出成形したときの接合強度の低下を抑制できると考えられる。上記観点から、ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、65℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。
また、ポリアミド樹脂組成物の流動性を高め、金型温度を低温として射出成形したときの製造時間を短縮下する観点から、ポリアミド樹脂(B)は、結晶化温度(Tc)が240℃未満であることが好ましく、200℃未満であることがより好ましく、150℃未満であることがさらに好ましく、100℃未満であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂(B)の結晶化温度(Tc)の下限値は特に限定されないものの、50℃以上とすることができる。
ポリアミド樹脂(B)の融点(Tm)、結晶化温度(Tc)およびガラス転移温度(Tg)は、原料モノマーの種類および組成などによって調整されうる。
ポリアミド樹脂(B)の融点(Tm)、結晶化温度(Tc)およびガラス転移温度(Tg)は、ポリアミド樹脂(A)と同様の方法で測定し得る。
ポリアミド樹脂(B)は、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であればよく、その種類は特に限定されないが、炭素原子数が6~50、好ましくは10~50の炭素鎖を有する脂肪族ポリアミドであることが好ましい。上記炭素鎖は飽和していてもよいし不飽和部分を有していてもよい。また、上記炭素鎖は分岐を含んでいてもよい。ポリアミド樹脂(B)の例には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、およびダイマー酸に由来する成分単位を含むポリアミドなどが含まれる。これらのうち、ナイロン12、ナイロン612、およびダイマー酸に由来する成分単位を含むポリアミドが好ましい。
ダイマー酸に由来する成分単位を含むポリアミドは、ジカルボン酸としてのダイマー酸(炭素数36)をジアミンと反応させて得られるポリアミドであってもよいし、ダイマー酸をアンモニアと反応させた後に脱水し、ニトリル化して還元することにより得られるダイマージアミンを、ジカルボン酸と反応させて得られるポリアミドであってもよいし、ダイマー酸とダイマージアミンとを反応させて得られるポリアミドであってもよい。
ポリアミド樹脂(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との合計質量に対して、5質量%以上65質量%以下であることが好ましく、5質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(B)の含有量をより多くするほど、金型温度を低温として射出成形したときの接合強度の低下をより効果的に抑制することができる。一方で、ポリアミド樹脂(A)の量を十分に多くして、接合強度のさらなる向上効果を得る余地を残すため、ポリアミド樹脂(B)の上限は上記範囲としうる。
1-2-3.ポリアミド樹脂(C)
樹脂部材は、ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)に加えて、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)が0J/g以上5J/g以下であるポリアミド樹脂(C)を含むことが好ましい。ポリアミド樹脂(C)は、非晶性を示すことが好ましい。また、ポリアミド樹脂(C)は、示差走査熱量測定(DSC)において融点(Tm)が実質的に測定されないことが好ましい。ポリアミド樹脂(C)は、結晶性がポリアミド樹脂(A)よりも低いため、樹脂部材の成形時における樹脂組成物の結晶化速度を遅延化させることができる。これにより、粗面化処理された金属部材の表面の凹凸に沿って十分に樹脂部材を構成する樹脂組成物を流動させて、上記凹凸に樹脂組成物を十分に密着させることができる。そのため、ポリアミド樹脂(C)は、金属部材と樹脂部材の接合強度をより高めることができると考えられる。
「融点(Tm)が実質的に測定されない」とは、上述した測定方法において、融点に相当する変位点が実質的に観測されないことをいう。
ポリアミド樹脂(C)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)と、ジアミンに由来する成分単位(c2)とを含むポリアミド樹脂であり得る。
[ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)]
ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)は、少なくともイソフタル酸に由来する成分単位を含むことが好ましい。イソフタル酸に由来する成分単位は、ポリアミド樹脂(C)の結晶性を低くしうる。
イソフタル酸に由来する成分単位の含有量は、ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)の合計量に対して40モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。イソフタル酸に由来する成分単位の含有量が40モル%以上であると、ポリアミド樹脂(C)を非晶性にしやすい。イソフタル酸に由来する成分単位の含有量の上限は特に限定されないものの、100モル%以下とすることができ、90モル%以下とすることが好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、イソフタル酸以外の他のジカルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでいてもよい。他のジカルボン酸の例には、テレフタル酸、2-メチルテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸などのイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、ならびに脂環族ジカルボン酸が含まれる。脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸は、前述の脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸とそれぞれ同様でありうる。中でも、イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
ジカルボン酸に由来する成分単位(c1)における、イソフタル酸に由来する成分単位とイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸)に由来する成分単位のモル比は、イソフタル酸に由来する成分単位/イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位が、55/45~100/0であることが好ましく、60/40~90/10であることがより好ましい。イソフタル酸に由来する成分単位の量が一定以上であると、ポリアミド樹脂(C)は非晶性となりやすく、樹脂部材の成形時における樹脂組成物の結晶化速度を遅延化させて、金属部材と樹脂部材の接合強度をより高めやすい。
[ジアミンに由来する成分単位(c2)]
ジアミンに由来する成分単位(c2)は、炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含むことが好ましい。
炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンは、前述の炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンと同様であり、好ましくは1,6-ヘキサンジアミンである。
炭素原子数4~15の脂肪族ジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(Bb)の合計量に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
ジアミンに由来する成分単位(c2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素原子数4~15の脂肪族ジアミン以外の他のジアミンに由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジアミンの例には、脂環族ジアミンおよび芳香族ジアミンが含まれる。脂環族ジアミンおよび芳香族ジアミンは、前述の脂環族ジアミンおよび芳香族ジアミンとそれぞれ同様でありうる。他のジアミンに由来する成分単位の含有量は、50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下でありうる。
ポリアミド樹脂(C)の具体例には、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6-ヘキサンジアミン/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン/ω-ラウロラクタムの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン/ω-ラウロラクタムの重縮合体、及びイソフタル酸/テレフタル酸/その他ジアミン成分の重縮合体などが含まれる。中でも、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体が好ましい。ポリアミド樹脂(B)は、1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
ポリアミド樹脂(C)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.6~1.6dl/gであることが好ましく、0.65~1.2dl/gであることがより好ましい。ポリアミド樹脂(C)の極限粘度[η]は、前述のポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]と同様の方法で測定することができる。
ポリアミド樹脂(C)極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂(A)と同様の方法で測定し得る。
ポリアミド樹脂(C)は、前述のポリアミド樹脂(A)と同様の方法で製造することができる。
ポリアミド樹脂(C)の含有量は、ポリアミド樹脂の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(C)が占める割合を上記範囲とすることで、結晶化の遅延による接合強度の向上効果をより十分に奏することができる。樹脂成分のうちポリアミド樹脂(C)が占める割合の上限は特に限定されないが、十分な量のポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)を樹脂組成物中に配合する観点から、30質量%以下とすることができ、25質量%以下であってもよい。
1-2-5.他の成分
樹脂部材は、公知の他の成分を含んでもよい。
他の成分の例には、結晶核剤、強化材、滑剤(流動性向上剤)、着色剤、耐腐食性向上剤、ドリップ防止剤、イオン捕捉剤、エラストマー(ゴム)、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類およびリン類など)、上記以外の耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類など)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類およびオギザニリド類など)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂およびLCPなど)などが含まれる。中でも、樹脂部材を構成する樹脂組成物は、成形体の機械的強度を高める観点からは、強化材をさらに含むことが好ましい。
結晶核剤は、成形体の結晶化度を高め得る。結晶核剤の例には、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ナトリウム、トリス(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウム、およびステアリン酸塩などを含む金属塩系化合物、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、およびビス(4-エチルベンジリデン)ソルビトールなどを含むソルビトール系化合物、ならびに、タルク、炭酸カルシウム、およびハイドロタルサイトなどを含む無機物などが含まれる。これらのうち、成形体の結晶化度をより高める観点から、タルクが好ましい。これらの結晶核剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶核剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。結晶核剤の含有量が上記範囲内であると、成形体の結晶化度を十分に高めやすく、十分な機械的強度が得られやすい。
強化材は、樹脂組成物に高い機械的強度を付与しうる。強化材の例には、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバーおよびカットファイバーなどの繊維状強化材、マイカなどの板状または鱗片状強化材、ならびに粒状強化材が含まれる。これらのうち、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、成形体の機械的強度を高めやすいことなどから、ワラストナイト、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカーが好ましく、ワラストナイトまたはガラス繊維がより好ましい。
繊維状強化材の平均繊維長は、樹脂組成物の成形性、および得られる成形体の機械的強度や耐熱性の観点から、例えば1μm以上20mm以下、好ましくは5μm以上10mm以下としうる。また、繊維状強化材のアスペクト比は、例えば5以上2000以下、好ましくは30以上600以下としうる。
繊維状強化材の平均繊維長と平均繊維径は、以下の方法により測定することができる。
1)樹脂組成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)前記1)で得られた濾過物を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300本それぞれの繊維長(Li)と繊維径(di)を計測する。繊維長がLiである繊維の本数をqiとし、次式に基づいて重量平均長さ(Lw)を算出し、これを繊維状強化材の平均繊維長とする。
重量平均長さ(Lw)=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
同様に、繊維径がDiである繊維の本数をriとし、次式に基づいて重量平均径(Dw)を算出し、これを繊維状強化材の平均繊維径とする。
重量平均径(Dw)=(Σri×Di)/(Σri×Di)
強化材の含有量は、特に制限されないが、樹脂組成物の全質量に対して、例えば15質量%以上70質量%以下とすることができ、40質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。強化材の含有量が多いほど、樹脂部材の接合強度を高めることができる。
結晶核剤は、成形体の結晶化度を高め得る。結晶核剤の例には、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ナトリウム、トリス(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウム、およびステアリン酸塩などを含む金属塩系化合物、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、およびビス(4-エチルベンジリデン)ソルビトールなどを含むソルビトール系化合物、ならびに、タルク、炭酸カルシウム、およびハイドロタルサイトなどを含む無機物などが含まれる。これらのうち、成形体の結晶化度をより高める観点から、タルクが好ましい。これらの結晶核剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶核剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。結晶核剤の含有量が上記範囲内であると、成形体の結晶化度を十分に高めやすく、十分な機械的強度が得られやすい。
滑剤は、樹脂組成物の射出流動性を高め、かつ、得られる成形体の外観を良好にする。滑剤は、オキシカルボン酸金属塩および高級脂肪酸金属塩などの脂肪酸金属塩とすることができる。
上記オキシカルボン酸金属塩を構成するオキシカルボン酸は、脂肪族オキシカルボン酸であってもよく、芳香族オキシカルボン酸であってもよい。上記脂肪族オキシカルボン酸の例には、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシパルミチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、α-ヒドロキシエイコサン酸、α-ヒドロキシドコサン酸、α-ヒドロキシテトラエイコサン酸、α-ヒドロキシヘキサエイコサン酸、α-ヒドロキシオクタエイコサン酸、α-ヒドロキシトリアコンタン酸、β-ヒドロキシミリスチン酸、10-ヒドロキシデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、およびリシノール酸などの炭素原子数10以上30以下の脂肪族のオキシカルボン酸が含まれる。上記芳香族オキシカルボン酸の例には、サリチル酸、m-オキシ安息香酸、p-オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、およびトロバ酸などが含まれる。
上記オキシカルボン酸金属塩を構成する金属の例には、リチウムなどのアルカリ金属、ならびにマグネシウム、カルシウムおよびバリウムなどのアルカリ土類金属が含まれる。
これらのうち、上記オキシカルボン酸金属塩は、12-ヒドロキシステアリン酸の金属塩であることが好ましく、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウムおよび12-ヒドロキシステアリン酸カルシウムがより好ましい。
上記高級脂肪酸金属塩を構成する高級脂肪酸の例は、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ベヘン酸、およびモンタン酸などの炭素原子数15以上30以下の高級脂肪酸が含まれる。
上記高級脂肪酸金属塩を構成する金属の例には、カルシウム、マグネシウム、バリウム、リチウム、アルミニウム、亜鉛、ナトリウム、およびカリウムなどが含まれる。
これらのうち、上記高級脂肪酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、およびモンタン酸カルシウムなどであることが好ましい。
滑剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、0.01質量%以上1.3質量%以下であることが好ましい。滑剤の含有量が0.01質量%以上であると、成形時の流動性が高まりやすく、得られる成形品の外観性が高まりやすい。滑剤の含有量が1.3質量%以下であると、滑剤の分解によるガスが成形時に発生し難く、製品の外観が良好になりやすい。
着色剤は、成形体に所望の色調を付与する。着色剤は、特に制限されないが、顔料でありうる。顔料の例には、カーボンブラック、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの無機顔料や;アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、インダンスレン系顔料などの有機顔料が含まれる。
着色剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
1-2-6.製造方法
上記樹脂組成物は、前述のポリアミド樹脂、および必要に応じて他の成分を、公知の樹脂混練方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、またはタンブラーブレンダーで混合する方法、あるいは混合後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、またはバンバリーミキサーで溶融混練した後、造粒または粉砕する方法で製造することができる。
1-3.金属樹脂接合体の製造方法
金属樹脂複合構造体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、(1)表面が粗面化処理された金属部材を用意する工程と、(2)上記金属部材の粗面化処理された面に、溶融した樹脂組成物を射出し、固化させて、樹脂部材を接合する工程とを有する。
1-3-1.粗面化処理された金属部材の用意
まず、少なくとも一部の表面に凹凸構造を有する金属部材を用意する。
微細な凸凹構造を有する金属部材を得る方法は、特に制限されない。たとえば、レーザー加工を用いる方法、NaOH等の無機塩基水溶液またはHClもしくはHNOなどの無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法、陽極酸化法により金属部材を処理する方法、酸系エッチング剤(好ましくは、無機酸、第二鉄イオン、第二銅イオンおよび必要に応じてマンガンイオンや塩化アルミニウム六水和物、塩化ナトリウムなどを含む酸系エッチング剤水溶液)によってエッチングする置換晶析法、水和ヒドラジン、アンモニアおよび水溶性アミン化合物などの水溶液に金属部材を浸漬する方法、ならびに、温水処理法などを用いることができる。
1-3-2.樹脂部材の接合
上記用意した粗面化処理された表面を有する金属部材を、射出成型金型内のキャビティ部(空間部)に配置する。
そして、上記樹脂組成物の少なくとも一部が、金属部材の粗面化処理された表面と接するように、金型のキャビティ部に樹脂組成物を射出する。その後、冷却して固化させて、金属部材と樹脂部材とを接合する。
射出成形金型の温度は、樹脂組成物を射出成形に適した状態に溶融させうる温度であればよく、特に制限されないが、例えば100~350℃としうるが、100~160℃であることが好ましい。上記樹脂組成物は、金型温度をこのような低温にしたときにも、接合強度の低下が生じにくい。
射出および保圧後、金型冷却を行い、次いで、型開きを行い、必要によりエジェクタピンを用いて突出しすることにより、金属樹脂接合体を得ることができる。
金型としては、公知の射出成形金型、例えば高速ヒートサイクル成形(RHCM、ヒート&クール成形)用金型や発泡成形用コアバック金型を用いることができる。
上記金属樹脂複合体の用途の例には、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、ならびに、その他の構造用部品および外装用部品などが含まれる。
上記金属樹脂複合体の用途のより具体的な例には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた部品が含まれる。このような部品の例には、車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ラジエータ、オイルパン、ステアリングホイール、ECUボックス、および電装部品などが含まれる。また、建材または家具類では、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、および椅子などが含まれる。また、精密電子部品類としては、コネクタ、リレー、およびギヤなどが含まれる。また、輸送容器としては、輸送コンテナ、スーツケース、およびトランクなどが含まれる。
また、上記金属樹脂複合体の用途の他のより具体的な例には、金属部材の高い熱伝導率と、樹脂組成物の成形体の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途が含まれる。このような部品の例には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、およびスピーカーなどの家電製品類、ならびに、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、および電池などの電子情報機器などが含まれる。
その他の用途として、玩具、スポーツ用具、靴、サンダル、鞄、フォークやナイフ、スプーン、皿等の食器類、ボールペンやシャープペン、ファイル、バインダー等の文具類、フライパンや鍋、やかん、フライ返し、おたま、穴杓子、泡だて器、トング等の調理器具、リチウムイオン2次電池用部品、ロボット等が挙げられる。
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
なお、以下の実験において、ポリアミド樹脂の融点(Tm)、結晶化温度(Tc)、ガラス転移温度(Tg)、極限粘度[η]および融解熱量(ΔH)は、以下の方法により測定した。
(融点(Tm)、結晶化温度(Tc)、ガラス転移温度(Tg)、融解熱量(ΔH))
ポリアミド樹脂の融解熱量(ΔH)、融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。
具体的には、約5mgのポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱した。樹脂を完全融解させるために、360℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却した。30℃で5分間置いた後、10℃/minで360℃まで2度目の加熱を行った。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)を結晶性ポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、発熱ピークの温度(℃)を結晶化温度(Tc)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とした。融解熱量(ΔH)は、JIS K7122に準じて、1度目の昇温過程での結晶化の吸熱ピークの面積から求めた。
(極限粘度[η])
ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解させ、得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定し、「数式:[η]=ηSP/(C(1+0.205ηSP))」に基づき算出した。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t-t0)/t0
1.ポリアミド樹脂の合成/用意
1-1.ポリアミド樹脂(A)の合成
1,6-ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、テレフタル酸2774g(16.7モル)、イソフタル酸1196g(7.2モル)、安息香酸36.6g(0.30モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して、低次縮合物を抜き出した。その後、この低縮合物を室温まで冷却後、低次縮合物を粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。得られた低次縮合物の水分量は4100ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。
次に、この低次縮合物を棚段式固相重合装置に入れ、窒素置換後、約1時間30分かけて180℃まで昇温させた。その後、1時間30分反応させて、室温まで降温させた。得られたプレポリマーの極限粘度[η]は、0.20dl/gであった。
その後、得られたプレポリマーを、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度を330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(A-1)を得た。
得られたポリアミド樹脂(A-1)の極限粘度は1.0dl/g、融点(Tm)は330℃、結晶化温度(Tc)は285℃、ガラス転移温度(Tg)は125℃、融解熱量(ΔH)は50J/gであった。
1-1-2.ポリアミド樹脂(A-2)
1,6-ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、テレフタル酸1390g(8.4モル)、イソフタル酸2581g(15.5モル)、安息香酸109.5g(0.9モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを、内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.02MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。その後、低次縮合物を室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3000ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。
次に、この低次縮合物を、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(B-1)を得た。
得られたポリアミド樹脂(B-1)の極限粘度[η]は0.68dl/g、融点(Tm)および結晶化温度(Tc)は測定されず、ガラス転移温度(Tg)は125℃、融解熱量(ΔH)は0J/gであった。
1-2.ポリアミド樹脂(B)の用意
ポリアミド樹脂(B)として、以下のポリアミド樹脂を用意した。
・ポリアミド樹脂(B-1): ナイロン12(融点(Tm)は180℃、結晶化温度(Tc)は140℃、ガラス転移温度は50℃)
・ポリアミド樹脂(B-2): ナイロン66(融点(Tm)は260℃、結晶化温度(Tc)は230℃、ガラス転移温度は50℃)
・ポリアミド樹脂(B-3): ダイマー酸系ポリアミド(融点(Tm)は110℃、結晶化温度(Tc)は70℃、ガラス転移温度は-20℃)
1-1-3.ポリアミド樹脂(C)の用意
テレフタル酸1390g(8.4モル)、1,6-ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、イソフタル酸2581g(15.5モル)、安息香酸109.5g(0.9モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.02MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。その後、室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低縮合物の水分量は3000ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。
次に、この低縮合物を、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/時間の樹脂供給速度で溶融重合して、ポリアミド樹脂(C)を調製した。得られたポリアミド樹脂(C)の極限粘度[η]は0.68dl/g、融点(Tm)および結晶化温度(Tc)は観測されず、ガラス転移温度(Tg)は125℃だった。ポリアミド樹脂(C)の融解熱量(ΔH)をJIS K7122に準じて、結晶化の発熱ピークの面積より求めたところ、0J/gであった。
1-2.結晶核剤(D)
結晶核剤(D)として、以下の材料を用意した。
・タルク(平均粒子径6μm)
1-3.強化材(E)
強化材(E)として、以下の材料を用意した。
・ガラス繊維(オーウェンスコーニング社製、FT2A)
1-4.滑剤(F)
滑剤(F)として、以下の材料を用意した。
・モンタン酸ナトリウム
2.金属樹脂接合体の作製
2-1.ポリアミド樹脂組成物の調製
上記の材料を、表1に示す組成比(単位は質量部)でタンブラーブレンダーにて混合し、30mmφのベント式二軸スクリュー押出機を用いて300~335℃のシリンダー温度条件で溶融混練した。その後、混練物をストランド状に押出し、水槽で冷却させた。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
2-2.金属部材の用意
2-2-1.粗面化処理されたアルミニウム部材の作製
合金番号A6063のアルミニウム板(厚み:2mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。切断されたアルミニウム板の表面を、国際公開第2008/133096号に記載の方法によって粗面化した。
2-2-1.粗面化処理された銅部材の作製
合金番号C1100の銅合金板(厚み2mm)を長さ45mm、幅18mmに切断した。切断された銅合金板を脱脂した後、化学エッチング剤(メック株式会社製、アマルファA-10201H)への浸漬、水洗、化学エッチング剤への浸漬をこの順に実施した。その直後に、化学エッチング剤に同部材を4分間浸漬した。次に、水洗、アルカリ洗浄(5質量% NAOH、20秒浸漬)、水洗、中和処理(5質量% HSO、20秒浸漬)、水洗、防錆処理(A-10290、1分)及び水洗をこの順で行った。
2-3.金属樹脂接合体の作製
粗面化処理を行った金属部材を、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J55-AD)に装着された小型ダンベル金属インサート金型内に設置した。次いで、金型内に上記各種ポリアミド樹脂組成物を、シリンダー温度335℃、一次射出圧90MPa、保圧80MPa、射出速度25mm/秒の条件にて射出成形して、金属部材の表面にポリアミド樹脂製の樹脂部材が接合した試験片を作製した。この試験片の金属部材と樹脂部材との接合面積は、50mmであった。
なお、射出成型時の金型温度を150℃および170℃として、同一の材料から2つの試験片を作製した。
3.評価
得られた金属樹脂接合体、およびそれぞれのポリアミド樹脂組成物を、以下の基準で評価した。
3-1.接合強度
作製した試験片のせん断接合強度(MPa)を、ISO19095に準拠した方法で測定した。具体的には、引張試験機(アイコーエンジニヤリング社製、モデル1323)に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて、破断荷重(N)の測定を行った。測定された破断荷重(N)を金属部材と樹脂部材との接合部分の面積(50mm)で除することにより、せん断接合強度(MPa)を得た。
また、金型温度を150℃として作製した試験片の接合強度を、金型温度を170℃として作製した試験片の接合強度で除算して、金型温度を低温にしたときの接合強度の保持率を求めた。
3-2.流動性
シリンダー温度335℃、射出圧力100MPa、金型温度160℃とした50t型締力の射出成形機にて、3.8mmφ半円のスパイラル状の溝を持った金型に射出成形し、流動距離を測定した。
表1および表2に、各試験における、ポリアミド樹脂組成物に含まれる各成分の種類および(樹脂組成物の全質量に対する質量割合)、ならびに接合強度および流動性の評価結果を示す。
Figure 2023048367000001
Figure 2023048367000002
表1および表2に示すように、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上160℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含むポリアミド樹脂組成物を含む樹脂部材を、金属部材に接合させると、樹脂部材を低温で射出成型させたときの接合力の低下が生じにくかった。
本発明によれば、所望の接合強度を有する金属樹脂複合体を、より低温で製造することができる。そのため、本発明は、金属樹脂複合体の製造時間を短縮させ、および製造コストを低減して、金属樹脂複合体のさらなる普及に寄与することが期待される。

Claims (11)

  1. 金属部材と、
    前記金属部材の表面に接合した樹脂部材と、
    を有する金属樹脂複合体であって、
    前記樹脂部材は、
    示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上180℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、
    示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含むポリアミド樹脂組成物を含む
    金属樹脂複合体。
  2. 前記ポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を含む、請求項1に記載の金属樹脂複合体。
  3. 前記ポリアミド樹脂(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が280℃以上340℃以下のポリアミド樹脂であり、
    前記ポリアミド樹脂(B)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が280℃未満のポリアミド樹脂である、
    請求項1または2に記載の金属樹脂複合体。
  4. 前記ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)およびジアミンに由来する成分単位(a2)を含み、
    前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の全モル数に対して、20モル%以上100モル%以下のテレフタル酸に由来するに由来する成分単位を含み、
    前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4~20の脂肪族ジアミンに由来する成分単位を含む、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
  5. 前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の全モル数に対して、55モル%以上80モル%以下のテレフタル酸に由来する成分単位と、20モル%以上45モル%以下のイソフタル酸に由来する成分単位と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
  6. 前記ジアミンに由来する成分単位(a2)は、1,6-ジアミノヘキサンに由来する成分単位と、2-メチル-1,5-ジアミノペンタンに由来する成分単位とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
  7. 前記ポリアミド樹脂(B)は、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、およびダイマー酸に由来する成分単位を含むポリアミドからなる群から選択されるポリアミド樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
  8. 示差走査熱量計で測定した、昇温過程(昇温速度:10℃/min)における融解熱量が0J/g以上5J/g以下であるポリアミド樹脂(C)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
  9. 前記金属部材は、前記ポリアミド樹脂組成物との接合面に、アルミニウム、銅およびこれらの合金を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体。
  10. 金属部材を用意する工程と、
    前記金属部材の表面に、溶融したポリアミド樹脂組成物を射出して、固化させる工程と、
    を有し、
    前記ポリアミド樹脂組成物は、
    示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上180℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、
    示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含む、
    金属樹脂複合体の製造方法。
  11. 金属部材との接合用のポリアミド樹脂組成物であって、
    示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが80℃以上180℃以下であるポリアミド樹脂(A)と、
    示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgが70℃以下であるポリアミド樹脂(B)と、を含む、
    ポリアミド樹脂組成物。
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