JP2013194196A - ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 - Google Patents
ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2013194196A JP2013194196A JP2012064939A JP2012064939A JP2013194196A JP 2013194196 A JP2013194196 A JP 2013194196A JP 2012064939 A JP2012064939 A JP 2012064939A JP 2012064939 A JP2012064939 A JP 2012064939A JP 2013194196 A JP2013194196 A JP 2013194196A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polyamide resin
- resin composition
- acid
- parts
- glass fiber
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Abstract
【課題】機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができ、金型転写性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ること。
【解決手段】1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とするジアミンと、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)扁平断面ガラス繊維1〜200重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とするジアミンと、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)扁平断面ガラス繊維1〜200重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上のジアミンを主要構成成分とするジアミンと、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂に対して、扁平断面ガラス繊維を配合してなるポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関するものである。
1,5−ペンタンジアミンは非石油原料として、医薬中間体などの合成原料や高分子原料として期待され、近年需要が高まっている。1,5−ペンタンジアミンを原料とするポリアミド樹脂組成物に関し、例えば、特許文献1には、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸誘導体を主要成分として含有するジカルボン酸誘導体を重縮合して得られるポリアミド樹脂が開示され、充填材を添加できることが開示されている。また、特許文献2には、ペンタメチレンジアミンと炭素数7以上のジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸誘導体を主要成分として含有するジカルボン酸誘導体を重縮合して得られるポリアミド樹脂が開示され、充填材を添加できることが開示されている。しかしながら、これらポリアミド樹脂組成物は、金型転写性が不十分であること、得られる成形品の機械特性および表面外観に劣り、成形品に反りが生じやすいことなどの課題があった。
特許文献3には、テトラメチレンテレフタルアミド単位およびヘキサメチレンテレフタルアミド単位を含む半芳香族ポリアミド樹脂が開示され、強化フィラーなどを添加できることが開示されている。しかしながら、かかるポリアミド樹脂は融点が高く溶融滞留安定性に劣り高重合度物が得られにくく、成形時にバリが生じやすく、金型転写性が不十分であること、得られる成形品の表面外観に劣ることなどの課題があった。
特許文献4には、2−メチル−ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンの混合物である脂肪族ジアミンとテレフタル酸とイソフタル酸の混合物である芳香族カルボン酸とからなるコポリアミド樹脂が開示され、強化材を含むことが開示されている。しかしながら、かかるポリアミド樹脂は、側鎖にメチル基が導入されるために立体障害が大きく、結晶化速度や結晶化度の低下を引き起こすことから、成形時にバリが生じやすく、得られる成形品の機械特性、とりわけ高温剛性に劣る課題があった。
さらに特許文献5には、ペンタメチレンジアミンを含む短鎖脂肪族ジアミンと炭素数6以上の長鎖脂肪族ジアミンを含むジアミンから誘導された構成単位およびテレフタル酸を含むジカルボン酸から誘導された構成単位を含む半結晶性半芳香族ポリアミド樹脂が記載され、補強材を含むことが開示されている。しかしながら、かかるポリアミド樹脂組成物は、金型転写性が不十分であること、得られる成形品の機械特性および表面外観に劣り、成形品に反りが生じやすいことなどの課題があった。
本発明は、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができ、金型転写性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることを課題とする。
本発明は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明は、
(1)(a)1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とするジアミンと、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)扁平断面ガラス繊維1〜200重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物、
(2)前記(a)ポリアミド樹脂の融点が270〜330℃であり、かつガラス転移温度が100〜150℃である(1)記載のポリアミド樹脂組成物、
(3)前記炭素数6以上のジアミンが、1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)〜(2)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(4)前記テレフタル酸および/またはその誘導体が、ジカルボン酸総量に対して96モル%以上である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(5)前記(b)扁平断面ガラス繊維の平均扁平率が2〜5である(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(6)組成物中における(b)扁平断面ガラス繊維の平均繊維長(D50)が0.1〜2.0mmであり、累積繊維長分布曲線より得られる累積度95%繊維長(D95)と累積度5%繊維長(D5)の比(D95/D5)が12.0以下である(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(7)前記(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(c)難燃剤1〜50重量部をさらに配合してなる(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(8)前記(c)難燃剤がホスフィン酸金属塩および/またはジホスフィン酸金属塩を含む(7)記載のポリアミド樹脂組成物、
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品、
(10)成形品が筐体または外装部品である(9)記載の成形品、である。
(1)(a)1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とするジアミンと、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)扁平断面ガラス繊維1〜200重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物、
(2)前記(a)ポリアミド樹脂の融点が270〜330℃であり、かつガラス転移温度が100〜150℃である(1)記載のポリアミド樹脂組成物、
(3)前記炭素数6以上のジアミンが、1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)〜(2)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(4)前記テレフタル酸および/またはその誘導体が、ジカルボン酸総量に対して96モル%以上である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(5)前記(b)扁平断面ガラス繊維の平均扁平率が2〜5である(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(6)組成物中における(b)扁平断面ガラス繊維の平均繊維長(D50)が0.1〜2.0mmであり、累積繊維長分布曲線より得られる累積度95%繊維長(D95)と累積度5%繊維長(D5)の比(D95/D5)が12.0以下である(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(7)前記(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(c)難燃剤1〜50重量部をさらに配合してなる(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(8)前記(c)難燃剤がホスフィン酸金属塩および/またはジホスフィン酸金属塩を含む(7)記載のポリアミド樹脂組成物、
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品、
(10)成形品が筐体または外装部品である(9)記載の成形品、である。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、金型転写性に優れる。さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物により、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とするジアミンと、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂は、構成成分のうち、1,5−ペンタンジアミン、炭素数6以上の脂肪族ジアミン、テレフタル酸およびその誘導体の総量が70モル%以上であることが好ましい。より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは96モル%以上である。ここで、本発明において、ポリアミド樹脂の主要構成成分とは、70モル%以上を占める成分を指す。すなわち、ポリアミド樹脂の構成成分のうち、ジアミン総量を100モル%として、1,5−ペンタンジアミン、炭素数6以上の脂肪族ジアミンの総量が70モル%以上である場合を、1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とするジアミンとする。また、ジカルボン酸総量を100モル%として、テレフタル酸およびその誘導体の総量が70モル%以上である場合を、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸とする。より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは96モル%以上である。
本発明において、ポリアミド樹脂を構成するジアミンは、1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とする。1,5−ペンタンジアミンを主要構成成分の1つとすることにより、得られるポリアミド樹脂組成物に適度な結晶性を付与することができる。すなわち、ポリアミド樹脂組成物の金型転写性を向上させ、表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得るために適度に低い結晶性を付与しながら、成形時にバリが生じにくく、機械特性に優れた成形品を得るために適度に高い結晶性を付与することができる。さらに、炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分の1つとすることにより、炭素数4以下の脂肪族ジアミンを主要構成成分の一つとした場合と比較して、得られるポリアミド樹脂の融点を適度に抑えることができ、成形加工性に優れる。また、高重合度化しやすいため成形品の機械特性に優れ、流動性低下による成形時のバリの発生を抑制したポリアミド樹脂組成物を得ることができる。また、ポリアミド樹脂組成物の金型転写性を向上させ、表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得るために適度に低い結晶性を付与することができる。
ジアミン総量を100重量%として、1,5−ペンタンジアミンの総量を20重量%以上80重量%以下とすることが好ましく、成形時のバリの発生を抑制し、金型転写性をより向上させるとともに、得られる成形品の機械特性および表面外観をより向上させ、反りをより低減することができる。より好ましくは25重量%以上75重量%以下、さらに好ましくは30重量%以上70重量%以下である。
炭素数6以上の脂肪族ジアミンの具体例としては、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ジアミンの入手性や、得られるポリアミド樹脂の結晶性、機械特性および耐熱性の観点から、1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが好ましい。
ジアミン総量を100重量%として、炭素数6以上の脂肪族ジアミンの総量を20重量%以上80重量%以下とすることが好ましく、成形時のバリの発生をより抑制し、金型転写性をより向上させるとともに、得られる成形品の機械特性および表面外観をより向上させ、反りをより低減することができる。より好ましくは25重量%以上75重量%以下、さらに好ましくは30重量%以上70重量%以下である。
また、本発明において、ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸は、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とする。テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とすることにより、得られるポリアミド樹脂組成物の耐熱性および機械特性、とりわけ高温剛性を向上させることができる。テレフタル酸の誘導体の具体例としては、テレフタル酸クロリド、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
また、ジカルボン酸総量を100モル%として、テレフタル酸および/またはその誘導体の総量を96モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは97モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。テレフタル酸および/またはその誘導体の総量を96モル%以上とすることにより、成形時のバリの発生をより抑制し、金型転写性をより向上させることができる。また、得られる成形品の機械特性および表面外観をより向上させ、反りをより低減することができる。
本発明において、ポリアミド樹脂の構成成分として、1,5−ペンタンジアミン、炭素数6以上の脂肪族ジアミン、テレフタル酸および/またはその誘導体に加えて、他のジアミンやジカルボン酸、アミノ酸、ラクタムなどを共重合してもよい。共重合される構成成分としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これら共重合される構成成分は、本発明のポリアミド樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂構成成分の30モル%以下とすることが好ましく、10モル%以下がより好ましく、4モル%以下がより好ましい。
本発明において、(a)ポリアミド樹脂の融点は、270〜330℃であることが好ましい。融点が270℃以上であれば、成形品の高温剛性をより向上させることができる。一方、融点が330℃以下であれば、溶融滞留安定性に優れ、成形加工に適したポリアミド樹脂組成物を得ることができる。より好ましくは320℃以下である。ここで、本発明におけるポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂を、溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークを融点とする。
本発明において、(a)ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、100℃〜150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が100℃以上であれば、成形品の高温剛性をより向上させることができる。より好ましくは120℃以上である。一方、ガラス転移温度が150℃以下であれば、成形時の結晶化速度を適度に抑え、成形加工に適したポリアミド樹脂組成物を得ることができる。ここで、本発明におけるポリアミド樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂を、液体窒素にて急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる階段状吸熱ピークの中点の温度と定義する。
本発明において、(a)ポリアミド樹脂の重合度は、0.01g/mlとした98%硫酸溶液の25℃における相対粘度が1.5〜4.5であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、得られる成形品の機械特性をより向上させることができる。2.0以上がより好ましい。一方、相対粘度が4.5以下であれば、流動性に優れることから成形加工性に優れ、得られる成形品の表面外観をより向上させることができる。3.5以下がより好ましい。
本発明において用いられるポリアミド樹脂は、上記ジアミンとジカルボン酸を重縮合して得られるものである。以下、ポリアミド樹脂の製造方法について説明する。
本発明において、ポリアミド樹脂を構成する1,5−ペンタンジアミンの製法に制限はないが、例えば、2−シクロヘキセン−1−オンなどのビニルケトン類を触媒としてリジンから合成する方法や、リジン脱炭酸酵素を用いてリジンから転換する方法などが既に提案されている。前者の方法では、反応温度が約150℃と高いのに対し、後者の方法は100℃未満であり、後者の方法を用いる方が、副反応をより低減できると考えられるため、原料としては後者の方法によって得られた1,5−ペンタンジアミンを用いることが好ましい。
後者の方法で使用するリジン脱炭酸酵素は、リジンを1,5−ペンタンジアミンに転換させる酵素であり、Escherichia coli K12株をはじめとするエシェリシア属微生物のみならず、多くの生物に存在することが知られている。本発明において、リジン脱炭酸酵素は、これらの生物に存在するものを使用することができ、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞由来のものも使用できる。
組換え細胞としては、微生物、動物、植物、または昆虫由来のものが好ましく使用できる。例えば動物を用いる場合、マウス、ラットやそれらの培養細胞などが用いられる。植物を用いる場合、例えばシロイヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞が用いられる。また、昆虫を用いる場合、例えばカイコやその培養細胞などが用いられる。また、微生物を用いる場合、例えば、大腸菌などが用いられる。
また、リジン脱炭酸酵素を複数種組み合わせて使用してもよい。
このようなリジン脱炭酸酵素を持つ微生物としては、例えば、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)またはコリネバクテリウム・グルタミカス(Corynebacterium glutamicum)等が挙げられる。
リジン脱炭酸酵素を得る方法に特に制限はないが、例えば、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞などを適当な培地で培養し、増殖した菌体を回収し、休止菌体として用いることも可能であり、また当該菌体を破砕して無細胞抽出液を調製して用いることも可能であり、また必要に応じて精製して用いることも可能である。
リジン脱炭酸酵素を抽出するために、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や組換え細胞を培養する方法に特に制限はないが、例えば微生物を培養する場合、培地としては、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他有機成分を含有する培地が用いられる。例えば、E.coliの場合しばしばLB培地が用いられる。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、グルコン酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養素としては、各種アミノ酸、ビタミンB1等のビタミン類、RNA等の核酸類などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。それらの他に、必要に応じて、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
培養条件にも特に制限はなく、例えばE.coliの場合、好気条件下で16〜72時間程度実施することが好ましい。培養温度は通常30℃〜45℃に、特に好ましくは37℃に、培養pHは通常5〜8に、特に好ましくはpH7に制御することが好ましい。なおpH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を使用することができる。
増殖した微生物や組換え細胞は、遠心分離等により培養液から回収することができる。回収した微生物や組換え細胞から無細胞抽出液を調整するには、通常の方法が用いられる。すなわち、微生物や組換え細胞を超音波処理、ダイノミル、フレンチプレス等の方法にて破砕し、遠心分離により菌体残渣を除去することにより無細胞抽出液が得られる。
無細胞抽出液からリジン脱炭酸酵素を精製するには、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱処理、pH処理等酵素の精製に通常用いられる手法が適宜組み合わされて用いられる。精製は、完全精製である必要は必ずしもなく、リジン脱炭酸酵素以外のリジンの分解に関与する酵素、生成物である1,5−ペンタンジアミンの分解酵素等の夾雑物が除去できればよい。
リジン脱炭酸酵素によるリジンから1,5−ペンタンジアミンへの変換は、上記のようにして得られるリジン脱炭酸酵素を、リジンに接触させることによって行うことができる。
反応溶液中のリジンの濃度については、特に制限はない。
リジン脱炭酸酵素の量は、リジンを1,5−ペンタンジアミンに変換する反応を触媒するのに十分な量であればよい。
反応温度は、通常、28〜55℃、好ましくは40℃前後である。
反応pHは、通常、5〜8、好ましくは約6である。1,5−ペンタンジアミンが生成するにつれ、反応溶液はアルカリ性へ変わるので、反応pHを維持するために無機あるいは有機の酸性物質を添加することが好ましい。好ましくは塩酸を使用することができる。
反応には静置または撹拌のいずれの方法も採用し得る。
リジン脱炭酸酵素は固定化されていてもよい。
反応時間は、使用する酵素活性、基質濃度などの条件によって異なるが、通常、1〜72時間である。また、反応は、リジンを供給しながら連続的に行ってもよい。
このように生成した1,5−ペンタンジアミンを反応終了後、反応液から採取する方法としては、イオン交換樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、溶媒抽出する方法、単蒸留する方法、その他通常の採取分離方法が採用できる。
ポリアミド樹脂の製造方法としては、公知の方法が適用可能であり、例えば「ポリアミド樹脂ハンドブック」(福本修編)等に開示されている方法が使用できる。1,5−ペンタンジアミン、炭素数6以上の脂肪族ジアミン、テレフタル酸の混合物を、高温で加熱し、脱水反応を進行させる加熱重縮合法、また、1,5−ペンタンジアミンと炭素数6以上の脂肪族ジアミンを水に分散させておき、テレフタル酸クロリドを水と混ざらない有機溶媒に溶解しておき、これら水相と有機相の界面で重縮合させる方法(界面重合法)などが挙げられる。ここで、加熱重縮合とは、製造時のポリアミド樹脂の最高到達温度を200℃以上に上昇させる製造プロセスと定義する。界面重合法は、有機溶媒を用いること、重縮合時の副生成物となる塩酸を中和することが必要であることなどプロセスが複雑であるため、工業的に製造するには加熱重縮合法を用いることが好ましい。
ポリアミド樹脂の加熱重縮合においては、溶融重合において通常必要とされる、重合系内を加圧状態で保持して、プレポリマーを生成させる工程を経由することが必要であり、水共存下で行うことが必要である。水の仕込量は、原料と水をあわせた全仕込量に対して10〜70重量%とすることが好ましい。水の仕込量が10重量%以上であれば、ナイロン塩の均一溶解を短時間で行うことができる。逆に、水の仕込量が70重量%以下であれば、水の除去に要する熱エネルギーを低減することができる。さらに、加圧状態で保持する圧力は、1.0〜2.5MPaとすることが好ましい。1.0MPa以上であれば、1,5−ペンタンジアミンの重合系外への揮発を抑制することができる。また、2.5MPa以下であれば、重合系内の温度をより低く抑えることができ、結果として1,5−ペンタンジアミンの系外への揮発を抑制することができる。
加熱重縮合法としては、例えば、1,5−ペンタンジアミンとテレフタル酸の塩、炭素数6以上の脂肪族ジアミンとテレフタル酸の塩を調製し、水の共存下、これらを混合し、加熱して脱水反応を進行させる方法が用いられる。また、塩を調製することなく、原料を直接仕込み、加熱して脱水反応を進行させる方法を用いてもよい。あらかじめ塩調製する場合には、1,5−ペンタンジアミンとテレフタル酸の塩、炭素数6以上の脂肪族ジアミンとテレフタル酸の塩の混合比を変化させることによって、塩調製しない場合には、各原料の仕込み比を変化させることによって、ポリアミド樹脂の共重合組成比を変化させることができる。
加熱重縮合後、さらに固相重合、あるいは押出機中で溶融滞留させることによって、ポリアミド樹脂をより高重合度化することも可能である。固相重合は、100℃〜融点の温度範囲で、真空中、あるいは不活性ガス中で加熱することにより進行する。また、押出機中での溶融滞留は、ポリアミド樹脂の融点以上の温度で溶融滞留させることにより進行する。特に、ベント部から減圧は、重縮合時の水を効率的に除去することができ、分子量の増大効果が大きいため好ましい。
ポリアミド樹脂の加熱重縮合においては、高温で重合反応を行うため、1,5−ペンタンジアミンが重合系内から揮発する、および/あるいは脱アンモニア反応により環化するなどの理由で、重合の進行に伴い、重合系内では全カルボキシル基量に対する全アミノ基量が少なくなる可能性がある。そのため、原料を仕込む段階で、あらかじめ特定量の1,5−ペンタンジアミンを過剰に添加して、重合系内のアミノ基量を制御することが、高分子量のポリアミド樹脂を合成するために好ましい。原料として使用するジアミンのモル数をa、ジカルボン酸のモル数をbとしたとき、その比a/bが1.003〜1.10となるように原料組成比を調整することが好ましく、1.010〜1.04となるように原料組成比を調整することがより好ましい。a/bを1.003以上とすることにより、重合系内の全アミノ基量が、全カルボキシル基量に対して適度な範囲となり、十分に高分子量のポリアミド樹脂を容易に得ることができる。一方、a/bを1.10以下とすることにより、重合系内の全カルボキシル基量が、全アミノ基量に対して適度な範囲となり、十分に高分子量のポリアミド樹脂を容易に得ることができる。これにより、ポリアミド樹脂の溶融粘度を前述の好ましい範囲に容易に調整することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前記(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)扁平断面ガラス繊維1〜200重量部を配合してなる。ここで、扁平断面ガラス繊維とは、ガラス繊維の繊維方向に対して垂直な断面が、長径と短径の比が1を越える非円形断面であるガラス繊維を指す。具体的な断面形状としては、楕円形状、長径方向に直線部を有する長円形状、円形が2本対となる繭形状などが挙げられる。扁平断面ガラス繊維を用いることにより、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができ、金型転写性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。扁平断面ガラス繊維は、円形断面ガラス繊維と比べて比表面積が高くマトリックスであるポリアミド樹脂との接着効果が向上するため、成形品の機械特性に優れると考える。また、流れ方向に配向しやすい特徴があり、樹脂の流動抵抗が小さくなるために流動性が向上し、表面外観に優れると考える。さらに、樹脂流れ方向の直角の方向にアスペクト比が発生するため、その方向の収縮率を低減でき、金型転写性に優れ、反りの少ない成形品を得ることができると考える。
本発明のポリアミド樹脂組成物に配合する(b)扁平断面ガラス繊維は、その断面の長径が10〜80μmであることが好ましく、ガラス繊維の紡糸が容易となり、ガラス繊維の強度を高く維持することができる。より好ましくは、15μm以上、50μm以下である。また、その断面の短径が2〜20μmであることが好ましく、ガラス繊維の紡糸が容易となり、ガラス繊維の強度を高く維持することができる。より好ましくは4μm以上、15μm以下である。ここでいう長径および短径とは、扁平断面ガラス繊維に外接する最小面積の長方形を想定したときに、その長方形の長辺の長さ(長径)および短辺の長さ(短径)を指す。(b)扁平断面ガラス繊維の長径および短径は、顕微鏡(倍率600倍)により任意のガラス繊維50本分の断面を観察して長径および短径を定規を用いて測定し、その数平均値を算出することにより求めることができる。
前記長径と短径の比(長径/短径)を扁平率として表す場合、(b)扁平断面ガラス繊維の平均扁平率は2〜5であることが好ましい。平均扁平率が2以上であると、比表面積が増大してマトリックスであるポリアミド樹脂との接着効果が向上するため、成形品の機械特性(強度)をより向上させることができる。また、成形品の表面外観をより向上させ、反りをより低減することができる。一方、平均扁平率が5以下であると、扁平断面ガラス繊維の割れを抑制することができ、成形品の機械特性(強度)をより向上させることができる。4以下がより好ましい。(b)扁平断面ガラス繊維の平均扁平率は、前述の方法により任意のガラス繊維50本の長径および短径を測定し、その数平均値を算出することにより求めることができる。なお、前記(b)扁平断面ガラス繊維の扁平率は、ポリアミド樹脂組成物中においてもほぼ同等の値を維持するものと考えられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に配合する(b)扁平断面ガラス繊維の繊維長に特に制限はないが、平均繊維長は1〜10mmが好ましい。平均繊維長が1mm以上であれば、成形品の機械特性をより向上させることができる。一方、平均繊維長が10mm以下であれば、成形時に射出成形機の供給ホッパーにおけるブリッジなどのトラブルが生じにくい。6mm以下がより好ましい。扁平断面ガラス繊維の繊維長は、顕微鏡写真(倍率120倍)により任意のガラス繊維1000本を観察し、各々のガラス繊維の長さを画像解析処理装置(Quick Grain Standard)を用いて測定し、その数平均値を算出することにより求めることができる。
また、公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)やその他の表面処理剤を用いて、(b)扁平断面ガラス繊維を表面処理することが好ましく、ポリアミド樹脂との親和性を高めて密着性を向上させ、成形品の機械特性をより向上させることができる。カップリング剤としてシラン系カップリング剤を用いる場合、その割合はポリアミド樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部が好ましい。0.1重量部以上用いることにより、補強効果が十分に奏され、2重量部以下とすることで、成形加工時のガス発生を抑制し、表面外観をより良好に保つことができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、(b)扁平断面ガラス繊維の配合量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜200重量部である。(b)扁平断面ガラス繊維の配合量が1重量部未満では、樹脂組成物から得られる成形品の十分な機械特性(強度)が得られない。20重量部以上が好ましい。一方、(b)扁平断面ガラス繊維の配合量が200重量部を超えると、成形品の表面外観が悪化する。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、組成物中における(b)扁平断面ガラス繊維の平均繊維長(D50)は0.1〜2.0mmであることが好ましい。組成物中のD50が0.1mm以上であれば、単繊維あたりのポリアミド樹脂との接着面積が高く、ガラス繊維の抜けが抑制されることから、成形品の機械特性(強度)がより向上する。0.2mm以上がより好ましい。一方、D50が2.0mm以下であれば、成形品表面に露出する繊維端を低減することができ、成形品の表面外観がより向上する。1.0mm以下がより好ましい。ここで示す平均繊維長(D50)とは、ポリアミド樹脂組成物を厚さ1/8インチのASTM1号ダンベル試験片に成形し、その成形品を電気炉中で燃焼させて樹脂成分を除去し、得られたガラス繊維1000本を光学顕微鏡観察(倍率120倍)し、各々のガラス単繊維の長さを測定し、その累積度50%の値を算出することによって求めることができる。
また、繊維長測定により得た累積繊維長分布曲線より累積度95%繊維長(D95)と累積度5%繊維長(D5)の比(D95/D5)が12.0以下であることが好ましい。より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは8.0以下である。D95/D5が12.0以下であれば、樹脂組成物中のばらつきが生じにくく、また、成形品表面に露出する繊維端を低減することができ、成形品の機械特性(強度)および表面外観がより向上する。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、さらに難燃剤を配合することができる。難燃剤を配合することで難燃性を付与することができ、難燃性が必要とされる例えば、自動車および電気・電子用筐体、外装部品に好適に用いることができる。(c)難燃剤は、本発明のポリアミド樹脂組成物に難燃性を付与できるものであれば特に限定されない。具体的には、リン系難燃剤、窒素系難燃剤および金属水酸化物系難燃剤などのハロゲン原子を含まない非ハロゲン系難燃剤、臭素系難燃剤に代表されるハロゲン系難燃剤を挙げることができる。これらの難燃剤を2種以上用いてもよい。
リン系難燃剤は、リン元素を含有する化合物であり、具体的には、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンなどのポリリン酸系化合物、ホスフィン酸金属塩またはジホスフィン酸金属塩(以下、これらをあわせて(ジ)ホスフィン酸金属塩と記載する場合がある)、ホスファゼン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、(ジ)ホスフィン酸金属塩が好ましい。(ジ)ホスフィン酸金属塩を用いた場合、他の難燃剤を用いた場合と比較して、難燃剤添加による高温剛性の低下が極めて少ないという特徴を有する。この原因は定かではないが、(ジ)ホスフィン酸金属塩は他のリン系難燃剤と比べて耐熱性が高く、また臭素系難燃剤と比べてより少ない添加量で難燃性を発現することができるため、優れた高温剛性を保持したものと考えている。
(ジ)ホスフィン酸金属塩は、例えば、ホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物を使用して水性媒体中で製造される。(ジ)ホスフィン酸塩は、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存し、環境によっては縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩となる場合もある。ホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸およびジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。また、上記のホスフィン酸と反応させる金属成分(M)としては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンおよび/または亜鉛イオンを含む金属炭酸塩、金属水酸化物および金属酸化物などが挙げられる。ホスフィン酸金属塩としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。ジホスフィン酸金属塩としては、例えば、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)亜鉛等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの(ジ)ホスフィン酸塩の中でも、特に、難燃性、電気的特性の観点からエチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。また、これら(ジ)ホスフィン酸塩には、金型腐食性防止の観点から、酸補足剤を添加することができる。酸補足剤としては、ハイドロタルサイトやステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
ホスファゼン化合物は、分子中に−P=N−結合を有する有機化合物であり、好ましくは、環状フェノキシホスファゼン、鎖状フェノキシホスファゼン、ならびに、架橋フェノキシホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120〜130℃の温度で反応させて得られる環状および直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロロホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。鎖状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220〜250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3〜10000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。架橋フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、4,4’−スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2−(4,4’−ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’−ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、環状ホスファゼン化合物および/または鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基およびフェニレン基数を基準として、通常50〜99.9%、好ましくは70〜90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
芳香族リン酸エステルは、オキシ塩化リンおよびフェノール類またはフェノール類とアルコール類の混合物との反応により生成する化合物群である。芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、またはt−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(t−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(t−ブチルフェニル)ホスフェートなどのブチル化フェニルホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェートなどのプロピル化フェニルホスフェートなどが挙げられる。
芳香族縮合リン酸エステルは、オキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物およびフェノール(またはアルキルフェノール)との反応生成物である。芳香族縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
ハロゲン化リン酸エステルは、触媒の存在下で、アルキレンオキサイドとオキシ塩化リンを反応させることによって製造される。ハロゲン化リン酸エステルとしては、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート、ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェートなどが挙げられる。
窒素系難燃剤としては、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩を形成する化合物が挙げられる。トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩とは、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との付加物であり、通常は1対1(モル比)、場合により2対1(モル比)の組成を有する付加物である。トリアジン系化合物のうち、シアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成しないものは除外される。好ましいトリアジン系化合物の例としては、メラミン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられ、とりわけメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンが好ましい。トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩の具体例としては、メラミンシアヌレート、モノ(β−シアノエチル)イソシアヌレート、ビス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、とりわけメラミンシアヌレートが好ましい。
金属水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどが挙げられ、水酸化マグネシウムがより好ましい。これらは通常市販されているものであり、粒子径、比表面積、形状など特に限定されるものではないが、好ましくは粒子径が0.1〜20μm、比表面積が3〜75m2/g、形状が球状、針状または小板状のものがよい。金属水酸化物系難燃剤は、表面処理が施されていてもいなくてもよい。表面処理法の例としては、シランカップリング剤、アニオン界面活性剤、多価官能性有機酸、エポキシ樹脂など熱硬化性樹脂による被覆形成などの処理法が挙げられる。
臭素系難燃剤としては、化学構造中に臭素を含有する化合物であれば特に制限はなく、通常公知の難燃剤を使用することができる。例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールAなどのモノマー系有機臭素化合物、臭素化ポリカーボネート(例えば臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールAとの共重合物)、臭素化エポキシ化合物(例えば臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレンなどの臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(α−メチルスチレン)などのハロゲン化されたポリマー系臭素化合物が挙げられる。なかでもエチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、臭素化エポキシポリマー、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが好ましく、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが最も好ましく使用できる。
本発明のポリアミド樹脂組成物における(c)難燃剤の配合量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜50重量部が好ましい。(c)難燃剤の配合量が1重量部以上であれば、難燃性を向上させることができる。また、50重量部以下であれば、得られる成形品の機械特性、特に靱性をより向上させることができる。(c)難燃剤としてリン系難燃剤を用いる場合、その配合量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、好ましくは2〜40重量部、より好ましくは3〜35重量部である。(c)難燃剤として窒素系難燃剤を用いる場合、その配合量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部である。(c)難燃剤として金属水酸化物系難燃剤を用いる場合、その配合量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは20〜50重量部である。(c)難燃剤として臭素系難燃剤を用いる場合、その配合量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは20〜50重量部である。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、上記の臭素化難燃剤とともに難燃助剤を配合してもよく、相乗的に難燃性を向上させることができる。難燃助剤としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、十二酸化アンチモン、結晶性アンチモン酸、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸リチウム、アンチモン酸バリウム、リン酸アンチモン、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛、塩基性モリブデン酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、赤燐、膨潤性黒鉛、カーボンブラック等を例示できる。これらのうちスズ酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンがより好ましい。難燃助剤の配合量は、難燃性改良効果の点から、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.2〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、要求される特性に応じて前記(a)ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂や他のポリマー類を配合することができる。具体的には、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカンメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、充填剤(グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、炭素繊維、アラミド繊維、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、繊維状、針状、板状充填材)、他の重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)を任意の時点で配合することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物を得る方法としては特に制限はないが、具体例として、原料のポリアミド樹脂、ガラス繊維、必要に応じて難燃剤およびその他成分を公知の溶融混練機に供給して溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練機としては、例えば、短軸押出機、二軸押出機などの押出機を挙げることができる。溶融混練機への原料供給方法についても特に制限はないが、ガラス繊維は、折損防止の観点から、樹脂成分が溶融した後に配合することが好ましい。
先述のように、機械特性、金型転写性および表面外観に優れ、成形時にバリが生じにくく、反りの少ない成形品を得るためには、ポリアミド樹脂組成物中の扁平断面ガラス繊維の平均繊維長(D50)は0.1〜2.0であることが好ましく、また累積度95%繊維長(D95)と累積度5%繊維長(D5)の比(D95/D5)が12.0以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維の繊維長をかかる範囲にするためには、例えば、以下に示す溶融混練条件で溶融混練することが好ましい。溶融混練機としては、押出機を用いることが好ましい。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機が挙げられ、スクリュー構成の容易性、ガラス繊維の折損防止の観点から、同方向回転二軸押出機を用いることがより好ましい。
押出機の全スクリュー長Lとスクリュー径Dの比(L/D)は25以上であることが好ましい。L/Dが25以上であると、ガラス繊維供給位置までにポリアミド樹脂が十分に加熱され、溶融された状態でガラス繊維を供給することが容易になり、剪断力によるガラス繊維の折損を抑制し、D50およびD95/D5を前述の範囲に容易に調整することができる。その結果、得られる成形品の機械特性(強度)をより向上させることができる。ここでいうスクリュー長とは、スクリュー根本の(a)ポリアミド樹脂が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、スクリュー先端部までの長さである。
(b)扁平断面ガラス繊維は、(a)ポリアミド樹脂が溶融状態であり、かつ、スクリュー長の1/2より下流側に設けた供給口より供給することが好ましい。扁平断面ガラス繊維の供給位置をスクリュー長の1/2より下流側にすることにより、ガラス繊維供給位置までにポリアミド樹脂が十分に加熱され、溶融された状態でガラス繊維を供給することが容易になり、剪断力によるガラス繊維の折損を抑制し、D50およびD95/D5を前述の範囲に容易に調整することができる。その結果、得られる成形品の機械特性(強度)をより向上させることができる。
(b)扁平断面ガラス繊維の供給位置における(a)ポリアミド樹脂の溶融粘度は、剪断速度1000/秒で、扁平断面ガラス繊維供給位置における(a)ポリアミド樹脂の溶融温度で測定したときに400Pa・s以下であることが好ましい。この溶融粘度以下では、ガラス繊維の折損を抑制し、D50およびD95/D5を前述の範囲に容易に調整することができる。(a)ポリアミド樹脂の溶融粘度を上述の範囲にする方法に特に制限はないが、例えば、ガラス繊維の供給位置より上流側における加熱温度を高める方法や、ガラス繊維の供給位置より上流側にニーディングゾーンを設け、剪断発熱させる方法などがある。扁平断面ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの合計長さをLn1とした場合、Ln1/Lは0.01〜0.40であることが好ましく、0.01〜0.20であることがさらに好ましい。Ln1/Lを0.01以上とすることにより、剪断発熱により加熱温度を高めることができ、0.40以下とすることにより、剪断発熱を適度に抑えて樹脂の熱劣化を抑制することができる。ポリアミド樹脂の溶融温度に特に制限はないが、ポリアミド樹脂の熱劣化による分子量低下を抑制するため、340℃以下が好ましい。ここでいうニーディングゾーンとは、1個以上のニーディングスクリューピースより構成される。
押出機のスクリュー構成として、扁平断面ガラス繊維供給位置でのスクリューピースは順方向フライトを用い、とりわけ剪断を抑え扁平断面ガラス繊維の折損を抑制する観点から、角フライトを用いることが好ましい。扁平断面ガラス繊維供給位置の下流側では、少なくとも1ヶ所以上のニーディングゾーンを設けることが好ましく、扁平断面ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln2/Lは0.01〜0.30であることが好ましく、0.04〜0.16であることがさらに好ましい。Ln2/Lが0.01〜0.30の範囲にあることで、扁平断面ガラス繊維が均一に分散したポリアミド樹脂組成物が得られやすく、また、扁平断面ガラス繊維の折損を抑制することができる。ニーディングゾーンのスクリューピースに特に制限はないが、順送りニーディングスクリューピースや逆送りニーディングスクリューピースや直交ニーディングスクリューピースが好ましく用いられ、それらを組み合わせて用いることも可能である。ただし逆送りニーディングスクリューピースを用いる場合、逆送りニーディングスクリューピースの合計長さをLbとすると、Lb/Ln2は0.5以下であることが好ましい。Lb/Ln2が0.5以下の場合、扁平断面ガラス繊維の折損を抑制することができる。
かくして得られるポリアミド樹脂組成物は、通常公知の方法で成形することができ、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形などの成形品、シート、フィルムなどの成形物品とすることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、スマートフォン、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
これらの中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができ、成形時にバリが生じにくく、金型転写性に優れる特徴を有するため、これら特徴が必要とされる筐体または外装部品、例えば、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、カーナビゲーション、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、家庭用音楽機器などの電気・電子用筐体および外装部品や、ルーフレール、フェンダー、バンパー、ドアミラーステー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用筐体および外装部品に好適に使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。特性評価は下記の方法に従って行った。
[ガラス繊維の扁平率]
配合前の任意の扁平断面ガラス繊維50本分の断面を、顕微鏡(倍率600倍)により観察し、その顕微鏡写真にて長径および短径を定規を用いて測定し、長径と短径の比(長径/短径)を算出し、その比の数平均値を扁平率とした。
配合前の任意の扁平断面ガラス繊維50本分の断面を、顕微鏡(倍率600倍)により観察し、その顕微鏡写真にて長径および短径を定規を用いて測定し、長径と短径の比(長径/短径)を算出し、その比の数平均値を扁平率とした。
[硫酸相対粘度(ηr)]
ポリアミド樹脂のηrは、98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定した。
ポリアミド樹脂のηrは、98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定した。
[ガラス繊維供給位置における樹脂温度]
押出機内部の熱電対により測定した。
押出機内部の熱電対により測定した。
[ガラス繊維供給位置における樹脂溶融粘度]
ガラス繊維の供給位置におけるポリアミド樹脂の溶融粘度の指標として、各実施例および比較例に用いるポリアミド樹脂約10gを東洋精機製 キャピラリーレオメーター キャピログラフ1Cに投入し、ガラス繊維供給位置における樹脂温度にて5分間滞留させた後、せん断速度1000/秒における溶融せん断粘度を測定した。その際、キャピラリー長20mm、キャピラリー直径1mmのキャピラリーを使用した。
ガラス繊維の供給位置におけるポリアミド樹脂の溶融粘度の指標として、各実施例および比較例に用いるポリアミド樹脂約10gを東洋精機製 キャピラリーレオメーター キャピログラフ1Cに投入し、ガラス繊維供給位置における樹脂温度にて5分間滞留させた後、せん断速度1000/秒における溶融せん断粘度を測定した。その際、キャピラリー長20mm、キャピラリー直径1mmのキャピラリーを使用した。
[熱特性]
ポリアミド樹脂の融点およびガラス転移温度は、セイコーインスツル製 ロボットDSC RDC220を用い、ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、次の条件で測定した。ポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、これに続いて、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。また、ポリアミド樹脂の融点+30℃の溶融状態から液体窒素で急冷した試料について、20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測されるDSC曲線の階段状吸熱ピークの中点の温度からガラス転移温度を求めた。
ポリアミド樹脂の融点およびガラス転移温度は、セイコーインスツル製 ロボットDSC RDC220を用い、ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、次の条件で測定した。ポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、これに続いて、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。また、ポリアミド樹脂の融点+30℃の溶融状態から液体窒素で急冷した試料について、20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測されるDSC曲線の階段状吸熱ピークの中点の温度からガラス転移温度を求めた。
[引張特性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃)により厚さ1/8インチのASTM1号ダンベル試験片を作製した。この試験片について、ASTM D638に従い、引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)を用いて、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、引張強度を求めた。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃)により厚さ1/8インチのASTM1号ダンベル試験片を作製した。この試験片について、ASTM D638に従い、引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)を用いて、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、引張強度を求めた。
[曲げ特性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃)により厚さ1/4インチの棒状試験片を作製した。この試験片について、ASTM D790に従い、曲げ試験機テンシロンRTA−1T(オリエンテック社製)を用いて、23℃および130℃に温調された高温槽内で、クロスヘッド速度3mm/minで曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃)により厚さ1/4インチの棒状試験片を作製した。この試験片について、ASTM D790に従い、曲げ試験機テンシロンRTA−1T(オリエンテック社製)を用いて、23℃および130℃に温調された高温槽内で、クロスヘッド速度3mm/minで曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
[表面外観]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃、射出/冷却時間=10/10秒の条件で、80×80×3mmtの鏡面磨き角板(フィルムゲート)を射出成形した。得られた角板表面(エジェクトピン側)の中心付近を、表面粗さ計(ACCRETECH製サーフコム130A)を用いて樹脂流動方向(MD)に表面粗度を測定し、算術平均粗さ(Ra)を求めた。測定条件は、カットオフ値0.8mm、評価長さ10mm、測定速度0.6mm/sとした。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃、射出/冷却時間=10/10秒の条件で、80×80×3mmtの鏡面磨き角板(フィルムゲート)を射出成形した。得られた角板表面(エジェクトピン側)の中心付近を、表面粗さ計(ACCRETECH製サーフコム130A)を用いて樹脂流動方向(MD)に表面粗度を測定し、算術平均粗さ(Ra)を求めた。測定条件は、カットオフ値0.8mm、評価長さ10mm、測定速度0.6mm/sとした。
[成形収縮率]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃、射出/冷却時間=10/20秒の条件で、ASTM4号ダンベル試験片を成形した。得られた成形品10本について、下記式で表される収縮率を測定し、その数平均値を成形収縮率とした。
収縮率(%)={(金型の長尺方向の長さ−成形片の長尺方向の長さ)/金型の長尺方向の長さ}×100
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃、射出/冷却時間=10/20秒の条件で、ASTM4号ダンベル試験片を成形した。得られた成形品10本について、下記式で表される収縮率を測定し、その数平均値を成形収縮率とした。
収縮率(%)={(金型の長尺方向の長さ−成形片の長尺方向の長さ)/金型の長尺方向の長さ}×100
[反り量]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃、射出/冷却時間=10/20秒の条件で、1.6mm厚、100mmφの円板試験片を作製した。得られた円板試験片を、23℃、湿度50%の雰囲気下にて、水平盤に静置して、以下のa〜dを測定し、下記式により各円板試験片の反り量を測定した。円板試験片10枚分の反り量を測定し、その数平均値を用いた。反り量は小さいほど好ましい。
基準点の反り量a,b:水平盤に接地している2点での反り量
反り点の反り量c,d:反りが大きい2点での反り量
反り量計算式:反り量(mm)=(c+d)/2−(a+b)/2
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃、射出/冷却時間=10/20秒の条件で、1.6mm厚、100mmφの円板試験片を作製した。得られた円板試験片を、23℃、湿度50%の雰囲気下にて、水平盤に静置して、以下のa〜dを測定し、下記式により各円板試験片の反り量を測定した。円板試験片10枚分の反り量を測定し、その数平均値を用いた。反り量は小さいほど好ましい。
基準点の反り量a,b:水平盤に接地している2点での反り量
反り点の反り量c,d:反りが大きい2点での反り量
反り量計算式:反り量(mm)=(c+d)/2−(a+b)/2
[バリ長さ]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+20℃、金型温度:140℃、スクリュー回転数150rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=10/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、流動末端部におけるバリの長さを顕微鏡観察(倍率10倍)により測定した。試験片10本分のバリ長さを測定し、その数平均値を用いた。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+20℃、金型温度:140℃、スクリュー回転数150rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=10/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、流動末端部におけるバリの長さを顕微鏡観察(倍率10倍)により測定した。試験片10本分のバリ長さを測定し、その数平均値を用いた。
[ガラス繊維長]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃)により厚さ1/8インチのASTM1号ダンベル試験片を成形した。その成形片を電気炉中で燃焼させて樹脂成分を除去し、得られたガラス繊維1000本を顕微鏡観察(倍率120倍)し、各々のガラス単繊維の長さを画像解析処理装置(Quick Grain Standard)を用いて測定し、累積繊維長分布曲線を得た。その累積分布曲線より、累積度50%の平均繊維長(D50)、累積度95%(D95)と累積度5%(D5)の繊維長の比(D95/D5)を算出した。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H―MIV、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:140℃)により厚さ1/8インチのASTM1号ダンベル試験片を成形した。その成形片を電気炉中で燃焼させて樹脂成分を除去し、得られたガラス繊維1000本を顕微鏡観察(倍率120倍)し、各々のガラス単繊維の長さを画像解析処理装置(Quick Grain Standard)を用いて測定し、累積繊維長分布曲線を得た。その累積分布曲線より、累積度50%の平均繊維長(D50)、累積度95%(D95)と累積度5%(D5)の繊維長の比(D95/D5)を算出した。
[難燃性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、UL94に定められている厚み1/32”インチの難燃性評価用試験片を成形した。この試験片を用いて、UL94に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、UL94に定められている厚み1/32”インチの難燃性評価用試験片を成形した。この試験片を用いて、UL94に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
[滞留安定性]
各実施例および比較例により得られたペレット1gを、窒素雰囲気下、ポリアミド樹脂の融点+20℃の温度で1時間保持し、それを98%硫酸に0.01g/ml濃度となるよう溶解させ、完全に溶解した場合を○、不溶成分が見られる場合を×で示した。
各実施例および比較例により得られたペレット1gを、窒素雰囲気下、ポリアミド樹脂の融点+20℃の温度で1時間保持し、それを98%硫酸に0.01g/ml濃度となるよう溶解させ、完全に溶解した場合を○、不溶成分が見られる場合を×で示した。
(ポリアミド樹脂の合成)
脂肪族ジアミンとジカルボン酸の等モル塩、または原料を直接計量し、表1〜4に示す重量比になるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して1.0mol%の主成分であるジアミンを過剰に添加した。ただし、a−6:6T/66=55/45、a−10:6T/10T=40/60及びa−12:6T/12T=40/60については、全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%の主成分であるジアミンを過剰に添加した。さらに、全原料70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ポリアミド樹脂を得た。
脂肪族ジアミンとジカルボン酸の等モル塩、または原料を直接計量し、表1〜4に示す重量比になるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して1.0mol%の主成分であるジアミンを過剰に添加した。ただし、a−6:6T/66=55/45、a−10:6T/10T=40/60及びa−12:6T/12T=40/60については、全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%の主成分であるジアミンを過剰に添加した。さらに、全原料70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ポリアミド樹脂を得た。
表1、表2、表3、表4に示す略号は次の通りである。
5T:1,5−ペンタンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
6T:1,6−ヘキサンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
M5T:2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
4T:1,4−ブタンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
56:1,5−ペンタンジアミンとアジピン酸の等モル塩
66:1,6−ヘキサンジアミンとアジピン酸の等モル塩
10T:1,10−デカンジアミンとテレフタル酸の等モル混合物
12T:1,12−ドデカンジアミンとテレフタル酸の等モル混合物
9T:1,9−ノナンジアミンとテレフタル酸の等モル混合物
5T:1,5−ペンタンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
6T:1,6−ヘキサンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
M5T:2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
4T:1,4−ブタンジアミンとテレフタル酸の等モル塩
56:1,5−ペンタンジアミンとアジピン酸の等モル塩
66:1,6−ヘキサンジアミンとアジピン酸の等モル塩
10T:1,10−デカンジアミンとテレフタル酸の等モル混合物
12T:1,12−ドデカンジアミンとテレフタル酸の等モル混合物
9T:1,9−ノナンジアミンとテレフタル酸の等モル混合物
また、本実施例および比較例に用いた(b)ガラス繊維、(c)難燃剤、(d)難燃助剤は以下の通りである。
(b−1):扁平断面ガラス繊維(日東紡績製CSG 3PA−820、長径28μm、短径7μm、扁平率4.0、断面形状:長円形、表面処理剤:シラン系カップリング剤、繊維長3mm)
(b−2):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子製T−275H、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、繊維長3mm)
(c−1):ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントGmbH製Exolit OP−1230)
(c−2):赤燐(燐化学工業製ノーバエクセル140)
(c−3):臭素化ポリスチレン樹脂(GLC社製:商品名PDBS)
(d−1):三酸化アンチモン(日本精鉱製ATOX)
(b−1):扁平断面ガラス繊維(日東紡績製CSG 3PA−820、長径28μm、短径7μm、扁平率4.0、断面形状:長円形、表面処理剤:シラン系カップリング剤、繊維長3mm)
(b−2):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子製T−275H、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、繊維長3mm)
(c−1):ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントGmbH製Exolit OP−1230)
(c−2):赤燐(燐化学工業製ノーバエクセル140)
(c−3):臭素化ポリスチレン樹脂(GLC社製:商品名PDBS)
(d−1):三酸化アンチモン(日本精鉱製ATOX)
(実施例1〜6、実施例9〜13、比較例1〜3,5〜7、9〜10)
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表1〜4に記載の通り用いて、必要により表3記載の割合で難燃剤および難燃助剤とドライブレンドした後、シリンダー設定温度を融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表1〜4記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.35の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.14であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.07であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.3となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表1〜4に記載の通り用いて、必要により表3記載の割合で難燃剤および難燃助剤とドライブレンドした後、シリンダー設定温度を融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表1〜4記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.35の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.14であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.07であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.3となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
(比較例4,8)
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表1〜2に記載の通り用いて、シリンダー設定温度を融点+15℃、スクリュー回転数を150rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表1〜2記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.35の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.14であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.07であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.3となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表1〜2に記載の通り用いて、シリンダー設定温度を融点+15℃、スクリュー回転数を150rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表1〜2記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.35の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.14であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.07であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.3となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
(実施例7)
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表2に記載の通り用いて、シリンダー設定温度を300℃、スクリュー回転数を400rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表2記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.55の位置、つまりスクリュー長の1/2より上流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.14であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.32であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.6となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表2に記載の通り用いて、シリンダー設定温度を300℃、スクリュー回転数を400rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表2記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.55の位置、つまりスクリュー長の1/2より上流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.14であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.32であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.6となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
(実施例8)
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表2に記載の通り用いて、シリンダー設定温度を315℃、スクリュー回転数を100rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表2記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.20の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.34であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.07であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.3となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
上記合成例により得られたポリアミド樹脂を表2に記載の通り用いて、シリンダー設定温度を315℃、スクリュー回転数を100rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーに供給し、表2記載の割合でガラス繊維をスクリューの全長を1.0としたときの下流側より見て約0.20の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側に設置したサイドフィーダーより供給して溶融混練を行った。押出機のスクリュー構成は、ガラス繊維供給位置の上流側でのニーディングゾーンの長さLn1/Lが0.34であり、ガラス繊維供給位置の下流側でのニーディングゾーンの長さLn2/Lが0.07であり、ニーディングゾーン内の逆送りニーディングスクリューピースの合計長さLb/Ln2が0.3となるよう構成した。ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
各実施例および比較例の評価結果を表1〜4に示す。
実施例1は比較例1,2,3と比較して、成形時にバリが生じにくく、金型転写性に優れ、さらに、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができた。また比較例2は、融点が330℃より高く、溶融滞留安定性に劣るものであった。実施例3は比較例4と比較して、金型転写性、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができた。さらに比較例5はガラス繊維含有量が特定の範囲以下であったため機械特性に劣り、比較例6は特定の範囲以上であったため、成形時にバリが生じやすく、金型転写性が不十分であること、および表面外観に劣り、成形品に反りが生じやすいものであった。
実施例4は比較例7と比較して、成形時にバリが生じにくく、金型転写性に優れ、さらに、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができた。実施例4と比較例8の比較より、本発明に規定する特定のポリアミド樹脂に扁平断面ガラスを用いることで、金型転写性、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができた。とりわけ高温剛性に優れるのは特異な効果である。実施例4と実施例7の比較より、組成物中のガラス繊維長を特定範囲とすることにより、成形時にバリが生じにくく、金型転写性に優れ、さらに、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができた。
実施例9は、実施例10,11と比較して、成形時にバリが生じにくく、金型転写性に優れ、さらに、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができた。とりわけ高温剛性に優れるのは特異な効果である。また、実施例9と比較例9の比較より、本発明に規定する特定のポリアミド樹脂とホスフィン酸アルミニウムを用いることで特異的に優れた高温剛性を達成することを見出した。
実施例12は比較例10と比較して、成形時にバリが生じにくく、金型転写性に優れ、さらに、機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができた。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、通常公知の射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品などとして利用することができる。特に、本発明においては機械特性および表面外観に優れ、反りの少ない成形品を得ることができ、金型転写性に優れる点を活かし、各種電気・電子部品、自動車部品の筐体用途および外装用途などに加工することが有効である。
Claims (10)
- (a)1,5−ペンタンジアミンおよび炭素数6以上の脂肪族ジアミンを主要構成成分とするジアミンと、テレフタル酸および/またはその誘導体を主要構成成分とするジカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)扁平断面ガラス繊維1〜200重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
- 前記(a)ポリアミド樹脂の融点が270〜330℃であり、かつガラス転移温度が100〜150℃である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記炭素数6以上の脂肪族ジアミンが、1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記テレフタル酸および/またはその誘導体が、ジカルボン酸総量に対して96モル%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(b)扁平断面ガラス繊維の平均扁平率が2〜5である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 組成物中における(b)扁平断面ガラス繊維の平均繊維長(D50)が0.1〜2.0mmであり、累積繊維長分布曲線より得られる累積度95%繊維長(D95)と累積度5%繊維長(D5)の比(D95/D5)が12.0以下である請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(c)難燃剤1〜50重量部をさらに配合してなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(c)難燃剤がホスフィン酸金属塩および/またはジホスフィン酸金属塩を含む請求項7記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
- 成形品が筐体または外装部品である請求項9記載の成形品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012064939A JP2013194196A (ja) | 2012-03-22 | 2012-03-22 | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012064939A JP2013194196A (ja) | 2012-03-22 | 2012-03-22 | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013194196A true JP2013194196A (ja) | 2013-09-30 |
Family
ID=49393541
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012064939A Pending JP2013194196A (ja) | 2012-03-22 | 2012-03-22 | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2013194196A (ja) |
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016094601A (ja) * | 2014-11-11 | 2016-05-26 | エーエムエス−パテント アクチェンゲゼルシャフト | ポリアミド成形材料、それから製造された成形品および使用目的 |
JP2016098240A (ja) * | 2014-11-18 | 2016-05-30 | 東レ株式会社 | ポリアミド樹脂成形品 |
JP2016169290A (ja) * | 2015-03-12 | 2016-09-23 | 三井化学株式会社 | 車両灯具のエイミングナット用ポリアミド樹脂組成物、及びそれを含むエイミングナット |
JP6129464B1 (ja) * | 2015-11-12 | 2017-05-17 | ユニチカ株式会社 | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 |
JP2018158959A (ja) * | 2017-03-22 | 2018-10-11 | 大日精化工業株式会社 | 難燃性マスターバッチ、難燃性樹脂組成物、及び難燃性繊維 |
WO2020137004A1 (ja) * | 2018-12-27 | 2020-07-02 | 日東紡績株式会社 | ガラス繊維強化樹脂成形品 |
JP2020524740A (ja) * | 2017-06-22 | 2020-08-20 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se | リン及びAl−ホスホネートを有するポリアミド |
US11383491B2 (en) | 2016-03-24 | 2022-07-12 | Ticona Llc | Composite structure |
CN114920925A (zh) * | 2022-03-14 | 2022-08-19 | 金发科技股份有限公司 | 一种生物基聚酰胺树脂及其制备方法 |
-
2012
- 2012-03-22 JP JP2012064939A patent/JP2013194196A/ja active Pending
Cited By (15)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016094601A (ja) * | 2014-11-11 | 2016-05-26 | エーエムエス−パテント アクチェンゲゼルシャフト | ポリアミド成形材料、それから製造された成形品および使用目的 |
JP2016098240A (ja) * | 2014-11-18 | 2016-05-30 | 東レ株式会社 | ポリアミド樹脂成形品 |
JP2016169290A (ja) * | 2015-03-12 | 2016-09-23 | 三井化学株式会社 | 車両灯具のエイミングナット用ポリアミド樹脂組成物、及びそれを含むエイミングナット |
JP6129464B1 (ja) * | 2015-11-12 | 2017-05-17 | ユニチカ株式会社 | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 |
WO2017082231A1 (ja) * | 2015-11-12 | 2017-05-18 | ユニチカ株式会社 | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 |
JP2017119886A (ja) * | 2015-11-12 | 2017-07-06 | ユニチカ株式会社 | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 |
US11383491B2 (en) | 2016-03-24 | 2022-07-12 | Ticona Llc | Composite structure |
US11919273B2 (en) | 2016-03-24 | 2024-03-05 | Ticona Llc | Composite structure |
JP2018158959A (ja) * | 2017-03-22 | 2018-10-11 | 大日精化工業株式会社 | 難燃性マスターバッチ、難燃性樹脂組成物、及び難燃性繊維 |
JP2020524740A (ja) * | 2017-06-22 | 2020-08-20 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se | リン及びAl−ホスホネートを有するポリアミド |
JP7196107B2 (ja) | 2017-06-22 | 2022-12-26 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア | リン及びAl-ホスホネートを有するポリアミド |
US11859068B2 (en) | 2017-06-22 | 2024-01-02 | Basf Se | Polyamides with phosphorous and al-phosphonates |
US11091596B2 (en) | 2018-12-27 | 2021-08-17 | Nitto Boseki Co., Ltd. | Glass fiber-reinforced resin molded article |
WO2020137004A1 (ja) * | 2018-12-27 | 2020-07-02 | 日東紡績株式会社 | ガラス繊維強化樹脂成形品 |
CN114920925A (zh) * | 2022-03-14 | 2022-08-19 | 金发科技股份有限公司 | 一种生物基聚酰胺树脂及其制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2013194196A (ja) | ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 | |
JP4523004B2 (ja) | 耐燃焼性芳香族ポリアミド樹脂組成物、およびそれから形成された物品 | |
US7612130B2 (en) | Composition of polyester, aromatic epoxy compound and epoxy-functional polyolefin and/or copolyester | |
JP5800096B2 (ja) | 難燃性ポリアミド樹脂組成物 | |
JP5026591B2 (ja) | 難燃化熱可塑性組成物 | |
JP6226704B2 (ja) | ポリアミド樹脂組成物 | |
US9475933B2 (en) | Antimony trioxide free flame retardant thermoplastic composition | |
WO2012117840A1 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
WO2007132733A1 (ja) | ポリアミド樹脂 | |
JP2011526940A (ja) | スズ酸亜鉛を含む耐燃性半芳香族ポリアミド樹脂組成物、およびそれからの物品 | |
CN110964316B (zh) | 聚酰胺组合物、成型品和半芳香族聚酰胺 | |
JP2011225830A (ja) | ポリアミド樹脂の製造方法 | |
JP2014231603A (ja) | ポリアミド樹脂組成物及び成形品 | |
JP7107646B2 (ja) | ポリアミド組成物および成形品 | |
JP5504756B2 (ja) | 難燃性ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2015224286A (ja) | ポリアミド樹脂組成物 | |
JP6097203B2 (ja) | ポリアミド樹脂組成物 | |
JP2004091584A (ja) | 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 | |
JP2009079218A (ja) | 環境配慮型熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形体 | |
JP6843698B2 (ja) | ポリアミド組成物及び成形品 | |
JP2000313803A (ja) | ポリアミド樹脂組成物 | |
JP5760319B2 (ja) | 難燃性ポリアミド樹脂組成物 | |
JP2008063512A (ja) | ポリ乳酸アイオノマー樹脂及びその製造法、ポリ乳酸アイオノマー樹脂組成物。 | |
WO2014132883A1 (ja) | 表面実装型電気電子部品に使用する難燃性ポリアミド樹脂組成物 | |
JP2019178261A (ja) | ポリアミド組成物及び成形品 |