JP2021147652A - 金属板の酸洗方法および金属板の製造方法 - Google Patents

金属板の酸洗方法および金属板の製造方法 Download PDF

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【課題】リンガーロールへのスラッジの固着を防止し、酸切り能力の低下を防ぐ技術を提供する。【解決手段】金属板を酸液へ浸漬した後、搬出された前記金属板を挟んで配設された少なくとも一対のリンガーロールによって前記金属板から酸液絞りを行う金属板の酸洗方法であって、前記リンガーロールの長手方向に面して配設された少なくとも一つのノズルから前記リンガーロールの周面に洗浄液を噴射することを特徴とする、金属板の酸洗方法。【選択図】図1

Description

本発明は、リンガーロールへのスラッジの固着を防止し、酸切り能力の低下を防ぐことのできる金属板の酸洗方法および、当該酸洗方法を用いた金属板の製造方法に関する。
金属板の製造工程において、熱処理後の表面スケールの除去などを目的として、酸液に浸漬する酸洗が行われる。一般に、酸洗は酸液を満たした槽に金属板を浸漬し、一定時間経過後に引き上げて水洗などの後処理工程を行う。酸洗槽から出た金属板には酸液が付着しているので、そのまま後処理工程に搬送すると酸液が後処理工程に持ち込まれることになる。このため、酸洗後に金属板から酸液を除去する工程が採用されている。
特許文献1では、酸洗槽を出た帯鋼板をリンガーロールで挟み付けて付着した酸洗液を絞り取る(酸切り)方法を提案している。
特開昭63−307287号公報
従来の金属板の酸洗方法では、酸洗槽を出た後、リンガーロールにより酸切りが行われるが、継続使用によって、金属板に付着したスラッジがリンガーロールへ固着し、酸切りの能力低下が起こる課題があった。後処理槽へ酸が持ち込まれると後処理槽浸漬時間を増加する必要があり、ライン減速の原因となる。
本発明は、リンガーロールへのスラッジの固着を防止し、酸切り能力の低下を防ぐことのできる金属板の酸洗方法および、当該酸洗方法を用いた金属板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために、以下のことを見出した。
すなわち、リンガーロールへのスラッジの固着は、酸洗槽から持ち込まれるスラッジがリンガーロールに付着・堆積することによって生じる。特に、図4a、図4bに示すように、リンガーロール2Aと金属板1の端部の液だまり10部分に原因があると考えられる。そこで、酸洗槽出側と後処理槽の間に配置したリンガーロールの周面に洗浄液を噴射することで、ロール周面に付着したスラッジを含んだ酸液を洗い流し、スラッジの固着を防止することが重要であることが分かった。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 金属板を酸液へ浸漬した後、搬出された前記金属板を挟んで配設された少なくとも一対のリンガーロールによって前記金属板から酸液絞りを行う金属板の酸洗方法であって、前記リンガーロールの長手方向に面して配設された少なくとも一つのノズルから前記リンガーロールの周面に洗浄液を噴射することを特徴とする、金属板の酸洗方法。
[2] 前記洗浄液が後処理液であることを特徴とする、[1]に記載の金属板の酸洗方法。
[3] 前記金属板が水平方向に搬出され、前記金属板を上下に挟んで配設された前記リンガーロールの少なくとも上側のロールの周面に前記洗浄液を噴射することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の金属板の酸洗方法。
[4] 前記リンガーロールの出側から前記洗浄液を噴射することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の金属板の酸洗方法。
[5] 前記ノズルがスプレーノズルであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の金属板の酸洗方法。
[6] 前記リンガーロールの長手方向中央部における前記洗浄液の噴射流量が、前記リンガーロールの長手方向端部における前記洗浄液の噴射流量より大きいことを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の金属板の酸洗方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の金属板の酸洗方法を用いることを特徴とする、金属板の製造方法。
本発明は、酸洗後のリンガーロールへのスラッジ固着による酸切り能力の低下を防ぐことができるので、頻繁なロール交換や後処理槽のpH低下による処理時間増加を防止できるため、製造時間や製造コストの著しい短縮化がはかれ、産業上の利用価値は極めて高い。
図1は本発明の一実施形態を説明する、酸洗後のノズルとリンガーロールの斜視図である。 図2は図1の側面図である。 図3は本発明の一実施形態を説明する、酸洗槽、後処理槽、リンガーロールの全体図である。 図4aは従来技術の酸洗後のリンガーロールと金属板エッジ部の液だまり部分を示す斜視図であり、図4bは、図4aのX方向から見た正面図である。
本発明の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に置換可能なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
本発明の金属板の酸洗方法を、図1に概略的に示す。矢印Dは金属板1の搬送(走行)方向を意味し、水平方向(重力に対し垂直な方向)への搬送を想定している。金属板1は一例として熱延鋼帯が挙げられる。リンガーロール2A〜2Cは金属板1を上下に挟持して配設され、金属板1の搬送方向に回転することによって酸切りを行う。ここで、ノズル3A〜3Cは、夫々リンガーロール2A〜2Cの長手方向に面して配設され、当該リンガーロールの周面に洗浄液Wを噴射することができる。金属板1が搬送される際に、ノズル3A〜3Cから噴射された洗浄液Wが、例えば金属板1のエッジ部分の液だまり10部分からリンガーロール2A〜2Cに付着する酸液を酸洗槽8から持ち込まれたスラッジと共に洗い流す。
リンガーロール2A〜2Cに噴射する洗浄液Wとしては、水を用いても良いが、後処理液が水以外の場合は、後処理液を洗浄液Wとして用いることが好ましい。後処理液としては、例えばアルカリ性洗浄液がある。アルカリ性洗浄液の種類については特に限定されず、酸液を中和するために通常用いられるもので良い。
図2は図1の側面図である。リンガーロール2A〜2Cのうち、少なくとも上側のロールに洗浄液Wを噴射すれば良く、上下両方のロールに洗浄液Wを噴射するとより好ましい。下側のロールに洗浄液Wを噴射しない場合でも本発明の効果は得られる。これは下側のロールへのスラッジ付着量が上側のロールへのスラッジ付着量に比べ、小さいためである。
また当該ノズル3A〜3Cの配設位置としては、リンガーロール2A〜2Cの入側、出側方向どちらでもスラッジ固着の回避には有効であると考えられる。後処理槽が水洗槽の場合は鋼板に付着した水の持ち込みは特に問題にならず、また、出側から洗浄液Wを噴射した方が鋼板に付着した酸の濃度を薄めることができるので、リンガーロール出側にノズルを設置することが好ましい。
ここでリンガーロール入側とは、リンガーロール2A〜2Cに対する金属板1の入側、リンガーロール出側とは、リンガーロール2A〜2Cに対する金属板1の出側を意味する。また、「リンガーロール出側から洗浄液Wを噴射する」とは、リンガーロール2A〜2Cと金属板1との接点からリンガーロール2A〜2Cを通る垂線を引いて分断した周面範囲のうち、リンガーロール出側に対応する周面範囲に洗浄液を噴射することを意味する。
また、金属板1のエッジ部の液だまり10から酸液を洗い流すためには、リンガーロール2A〜2Cの長手方向端部と長手方向中央部における洗浄液Wの噴射流量は同じであっても良いが、長手方向端部よりも長手方向中央部の噴射流量を大きくし、洗い流した酸液がリンガーロール2A〜2Cの外側へより流れ出るよう洗浄液Wの流量を調整することが更に好ましい。たとえば、ノズル3A〜3Cに夫々ノズルヘッドを複数個所設置し、リンガーロール2A〜2Cの長手方向中央部に面したノズルヘッドの噴射流量をリンガーロール2A〜2Cの長手方向端部に面したノズルヘッドの噴射流量よりも高くすることにより、スラッジを含んだ酸液をロール外側へ流すことができる。好ましいノズルヘッドの数は3以上、噴射流量として、リンガーロール2A〜2Cの長手方向中央部については20〜60L/min、長手方向端部については0〜40L/minである。
洗浄液のノズルとしては、スプレーノズルが好適だが、その他の手段も用いることができる。例えば、シャワーノズルなどである。
上述の実施形態は、金属板を酸液へ浸漬した後、水平方向に搬出された場合であるが、この他に、金属板が鉛直方向に搬出されても良い。金属板が鉛直方向に搬出される場合には、金属板を挟んで配設されたリンガーロールのうち、少なくともいずれか片側のロールの周面に、水平方向に搬出された場合と同様に洗浄液を噴射すれば良い。
本発明の金属板の製造方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
図3に示す酸洗槽8および後処理槽9A〜9Cとして水洗槽とリンガーロール2A〜2C、4〜7を用いて熱延鋼帯の酸洗処理を行った。
厚さ1.6〜7.0mm、幅762〜1880mmの常法によって製造された熱延鋼帯を酸洗槽8に60秒浸漬し、リンガーロール2A〜2Cによって酸切りを行い、後処理槽9A〜9Cに搬送した。酸洗槽8には10−15%程度の塩酸が入っており、後処理槽9A〜9Cは3つの水洗槽から構成されている。それぞれのリンガーロールは上下のロールで挟みこみ水切りを行うことができる。リンガーロール2A〜2C、4〜7のロール径は上:500mm、下:350mmであり、酸洗槽後のリンガーロール2A〜2Cは3組設置してある。酸洗槽後のリンガーロール2A〜2Cは使用距離が増えると、塩酸槽から持ち込まれるスラッジがリンガーロールに固着するため、酸切りの能力が低下し、後処理槽のpHが低下する。そこで、スラッジ付着部11へのスラッジの固着を防ぎ、後処理槽9A〜9CのpH低下を抑えるため、リンガーロール2A〜2Cの中心から左右それぞれ450mmと750mmの位置に噴射することのできるスプレーノズル3A〜3Cを取り付けた。まず、リンガーロール2A〜2Cについたスラッジを洗い流すため、スプレーの流量をそれぞれ20L/minでリンガーロールの上側のロールの周面へ吹付けたところ、スラッジ付着部11へのスラッジの固着を軽減することができた。また、スプレーノズル3A〜3Cの不使用から使用への変更前後でスラッジ付着部11の付着量を確認したところ、1か月間の使用後でスラッジの付着量が100gから30gに低下していた(発明例1)。また、リンガーロール2A〜2Cの中央部における噴射流量を30L/min、リンガーロールの長手方向端部の噴射流量を20L/minに調整してリンガーロールへスプレーすることで、さらにスラッジの固着を抑えることができ、ライン減速の時間をさらに低減することができた(発明例2)。一方比較例については、リンガーロールの洗浄は行わずに1か月間使用した。表1に実施条件、スラッジ付着量、評価を示す。スラッジ付着量の測定は、使用前後のロール重量差分よりロール摩耗分を差し引くことにより行った。なお、評価基準として付着量が20g以下の場合を◎とし、20超〜60gの場合を〇とし、60g超の場合を×とした。
Figure 2021147652
比較例ではスラッジ付着量を低減できず、評価は×であった。一方で、発明例1、2では共にスラッジ付着量を大幅に低減できた。特に、リンガーロールの中央部における洗浄液の噴射流量をリンガーロールの長手方向端部における噴射流量よりも高くした発明例2では、噴射流量に差異のない発明例1よりも更にスラッジ付着量を低減できた。
1 金属板(熱延鋼帯)
2A〜2C リンガーロール
3A〜3C ノズル(スプレーノズル)
4〜7 リンガーロール
8 酸洗槽(3槽)
9A〜9C 後処理槽(水洗槽)
D 金属板の走行方向(搬送方向)
W 洗浄液
10 液だまり
11 スラッジ付着部

Claims (7)

  1. 金属板を酸液へ浸漬した後、搬出された前記金属板を挟んで配設された少なくとも一対のリンガーロールによって前記金属板から酸液絞りを行う金属板の酸洗方法であって、前記リンガーロールの長手方向に面して配設された少なくとも一つのノズルから前記リンガーロールの周面に洗浄液を噴射することを特徴とする、金属板の酸洗方法。
  2. 前記洗浄液が後処理液であることを特徴とする、請求項1に記載の金属板の酸洗方法。
  3. 前記金属板は水平方向に搬出され、前記金属板を上下に挟んで配設された前記リンガーロールの少なくとも上側のロールの周面に前記洗浄液を噴射することを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属板の酸洗方法。
  4. 前記リンガーロールの出側から前記洗浄液を噴射することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の金属板の酸洗方法。
  5. 前記ノズルがスプレーノズルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の金属板の酸洗方法。
  6. 前記リンガーロールの長手方向中央部における前記洗浄液の噴射流量が、前記リンガーロールの長手方向端部における前記洗浄液の噴射流量より大きいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の金属板の酸洗方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の金属板の酸洗方法を用いることを特徴とする、金属板の製造方法。
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