JP2021104685A - 抗ウィルス性の化粧板、及び、抗ウィルス性の化粧板の製造方法 - Google Patents

抗ウィルス性の化粧板、及び、抗ウィルス性の化粧板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 抗ウィルス性に優れ、かつその抗ウィルス性能が経時的に低下しない長期耐久性に優れた化粧板を提供する。【解決手段】 基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に配置され、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層と、からなり、上記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する上記抗ウィルス機能層の膜厚の比率が、0.3〜1.1倍であることを特徴とする抗ウィルス性の化粧板。【選択図】 図1

Description

本発明は、抗ウィルス性の化粧板、及び、抗ウィルス性の化粧板の製造方法に関する。
従来から、メラミン化粧板等の化粧板に、光触媒などの機能性物質を添加もしくは塗布することで、防汚性、抗菌性、抗ウィルス性等の機能性を付与した化粧板が提供されている。
特許文献1には、Al及び/又はGaドープ酸化亜鉛粒子を含有する無機バインダが基材表面に焼き付けられてなる抗菌機能材が開示されている。
特開2011−190155号公報
特許文献1の実施例では、Ga又はAlをドープした酸化亜鉛粒子を水に分散させ、これを水ガラス水溶液に添加、混合してスプレー液を調製し、該スプレー液を陶器質タイルの表面にスプレーした後、焼き付けることによって抗菌性タイルが作製されている。得られた抗菌性タイルについては、大腸菌及び黄色ブドウ球菌を用いて抗菌活性が測定されている。さらに、温水浸漬後の抗菌活性が測定されており、初期及び耐久後の抗菌活性とドープした金属種との相関が評価されている。
特許文献1には、使用される酸化亜鉛粒子の平均粒径の範囲や、抗菌粒子(導電性酸化亜鉛)と無機バインダとの重量配合比等は記載されているが、塗工後に形成されるガラス層の厚さと抗菌粒子の平均粒子径との相関、及び、抗菌活性の発現については記載されていない。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、抗ウィルス性に優れ、かつその抗ウィルス性能が経時的に低下しない長期耐久性に優れた化粧板を提供することを目的とする。本発明は、特に、水平向けの建材に好適に用いられる抗ウィルス性の化粧板を提供することを目的とする。
本発明の抗ウィルス性の化粧板は、基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に配置され、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層と、からなり、上記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する上記抗ウィルス機能層の膜厚の比率が、0.3〜1.1倍であることを特徴とする。
本発明の抗ウィルス性の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する上記抗ウィルス機能層の膜厚の比率が、0.5〜1.0倍であることが望ましい。
本発明の抗ウィルス性の化粧板(以下、単に「本発明の化粧板」ともいう)において、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.3〜1.1倍であると、インフルエンザウィルス等の疾病を引き起こすウィルスの感染リスクを大幅に低減できる。例えば、くしゃみや咳等で排出される飛沫に含まれる10万個のウィルスが建材等の日常生活の空間構成部材に付着したと仮定すると、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.3〜1.1倍に調整されている場合、本発明の抗ウィルス性の化粧板が高い抗ウィルス性能を持つため、湿度等の条件による自然減少分を除いたとしてもウィルスの数を1/100にでき、ウィルスの絶対数を1000個以下に減らせるため、感染のリスクを大幅に低減できるのである。
また、本発明の化粧板において、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.5〜1.0倍であるいうことは、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層の表面に露出して配置されていることを意味している。無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層の内部に埋没していると、無機抗ウィルス粒子とウィルスとの接触が不充分となり、無機抗ウィルス粒子本来の機能を発揮することができないのに対し、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層の表面に露出していると、無機抗ウィルス粒子が化粧板の表面に露出するため、抗ウィルス性、抗菌性等の機能を充分に発揮することができる。さらに、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.5〜1.0倍であると、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層に脱落することなく固定され、物理的負荷等がかかっても無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層から脱落しにくいため、その効果を長時間維持することができる。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.5倍未満である場合、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層の膜厚よりも大きくなりすぎるため、抗ウィルス機能層に固定化される無機抗ウィルス粒子の数が不充分となる。そのため、初期のウィルス不活性度が−2.50と同等かそれよりも抗ウィルス性に優れていることを示す数値を得ることができず、充分な抗ウィルス性、抗菌性を発揮することができない。一方、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が1.0倍より大きい場合、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層の内部に埋没してしまうため、ウィルス不活性度が−2.50と同等かそれよりも抗ウィルス性に優れていることを示す数値を得ることができず、充分な抗ウィルス性、抗菌性を発揮することができない。
これに対し、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.5〜1.0倍である場合、ウィルス不活性度が−2.50と同等かそれよりも抗ウィルス性に優れた値となるため、充分な抗菌性、抗ウィルス性を発揮することができる。したがって、住宅設備、公共施設など、抗ウィルス性、及び、抗ウィルス性能が経時的に低下しない、抗ウィルス性能の長期耐久性の両立が要求される水平向け建材用途への応用が可能となる。
なお、ウィルス不活性度とは、元のウィルスの量を1とし、ウィルス失活処理後に失活したウィルス量をXとした場合に、常用対数log(1−X)で示される数値(負の値で示される)であり、絶対値が大きいほどウィルスを不活性化する能力が高い。たとえば、元のウィルスの99.9%が失活した場合、ウィルス不活性度は、log(1−0.999)=−3.00で表記される。また、ウィルス失活処理前の全ウィルス量に対するウィルス失活処理後に失活したウィルス量の割合を%で表したもの(上記の場合、99.9%)をウィルス不活度という。
本発明の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径は、0.5〜10μmであることが望ましい。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が小さいと、抗ウィルス機能層の膜厚を薄くしても、無機抗ウィルス粒子を抗ウィルス機能層の表面に露出させることが難しく、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層の内部に埋没してしまうため、無機抗ウィルス粒子の本来の機能を発揮することが難しくなる。一方、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が大きいと、化粧板の意匠性が悪化するだけでなく、抗ウィルス機能層へ無機抗ウィルス粒子を固定することが難しく、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層から容易に脱落してしまうため、結果として抗ウィルス性及びその長期耐久性を発現することが難しくなる。
本発明の化粧板において、上記抗ウィルス機能層に含まれる上記無機抗ウィルス粒子の量は、0.01〜10g/mであることが望ましく、0.02〜0.5g/mであることがより望ましい。
抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01〜10g/mであると、変色等による化粧板の意匠性を低下させることなく、抗ウィルス機能を発現することができる。抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01g/m未満である場合、無機抗ウィルス粒子の量が少なすぎるため、充分な抗ウィルス性、抗菌性が得られにくい。一方、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が10g/mを超えると、無機抗ウィルス粒子によって化粧板の意匠性が低下しやすくなる。
本発明の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子は、抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を含有する無機粒子からなることが望ましい。
抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を無機粒子に含有させることで、抗ウィルス性機能層に固定化された無機抗ウィルス粒子とウィルスが接触し、不活化しやすくなるからである。なお、「無機粒子が抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を含有する」とは、抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を無機粒子の表面または内部に保持することをいい、抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物と無機粒子とは直接またはバインダを介して間接的に結合していてもよい。中でも、無機粒子の構成元素の一部を金属イオンと置換(イオン交換)させる態様が最も好適である。
本発明の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子は、酸化銅(I)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライト、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたアルミナ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたシリカ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化チタン、並びに、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種からなる無機粒子であることが望ましい。
本発明の化粧板において、上記抗ウィルス機能層は、無機ゾルの乾燥体を含むことが望ましい。具体的には、上記抗ウィルス機能層は、上記無機抗ウィルス粒子を含む皮膜を有し、上記皮膜は、無機ゾルの乾燥体を含むことが望ましい。
無機ゾルの乾燥体によって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
本発明の化粧板において、上記皮膜は、無機高分子の乾燥体もしくは硬化体をさらに含むことが望ましい。具体的には、上記皮膜は、シロキサンを含有する無機高分子の乾燥体をさらに含むことがより望ましい。
この場合、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。具体的には、無機高分子はシロキサンが望ましい。
本発明の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子は、その少なくとも一部が上記抗ウィルス機能層の表面から露出していることが望ましい。
無機抗ウィルス粒子の少なくとも一部が抗ウィルス機能層の表面から露出していることで、無機抗ウィルス粒子、特に、無機抗ウィルス粒子に固定化されている抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物がウィルスと接触する確率を高くすることができ、抗ウィルス性能を改善できるからである。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法は、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層が基材フィルムの表面に定着した転写フィルムを準備する工程と、基板となる樹脂含浸紙の一方面又は両面上に表層樹脂層となる樹脂含浸紙を積層し、さらに、上記抗ウィルス機能層が上記表層樹脂層となる樹脂含浸紙と接するように、上記転写フィルムを上記表層樹脂層となる樹脂含浸紙上に積層する工程と、上記基板となる樹脂含浸紙、上記表層樹脂層となる樹脂含浸紙及び上記転写フィルムの積層体を熱圧成形することにより、上記基板上に表層樹脂層を形成するとともに、上記表層樹脂層上に上記抗ウィルス機能層を固定させる工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法では、熱圧成形時に、抗ウィルス機能層を塗工した転写フィルムを用いて、抗ウィルス機能層を表層樹脂層となる樹脂含浸紙に転写させることによって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層を固定させることができる。その結果、抗ウィルス性及び長期耐久性に優れた化粧板を製造することができる。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法において、上記転写フィルムを準備する工程では、上記無機抗ウィルス粒子を含むスプレー液を、上記基材フィルムの表面に吹き付けることが望ましい。この場合、上記基材フィルムの表面に吹き付ける上記無機抗ウィルス粒子の量は、1〜10g/mであることが望ましい。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法において、上記転写フィルムを準備する工程では、上記スプレー液を吹き付けた後の上記基材フィルムの表面に、無機ゾルを含む塗工液を塗工し、上記塗工液を乾燥させることが望ましい。
無機ゾルによって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法において、上記塗工液は、無機高分子をさらに含むことが望ましい。具体的には、上記塗工液は、シロキサンを含有する無機高分子をさらに含むことが望ましい。
上記無機高分子によって、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法では、上記転写フィルムにおいて、上記抗ウィルス機能層は、コロナ放電処理が施された上記基材フィルムの表面に定着していることが望ましい。
基材フィルムの表面にコロナ放電処理が施されていると、塗工液のぬれ性が良くなるため、無機抗ウィルス粒子が均一に分散された皮膜を形成できる。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法において、上記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径は、0.5〜10μmであることが望ましい。
本発明の化粧板の製造方法において、上記無機抗ウィルス粒子は、抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を含有する無機粒子からなることが望ましい。
本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法において、上記無機抗ウィルス粒子は、酸化銅(I)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライト、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたアルミナ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたシリカ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化チタン、並びに、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種からなる無機粒子であることが望ましい。
本発明の抗ウィルス性の化粧板は、また、基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に配置され、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層と、からなり、上記抗ウィルス機能層にクラックが形成されていることを特徴とする。
上記の本発明の抗ウィルス性の化粧板は、抗ウィルス機能層にクラックが形成されており、ウィルスを含む流体をこのクラックにトラップさせられるため、さらに抗ウィルス活性の高い化粧板となる。
上記抗ウィルス性の化粧板では、上記抗ウィルス機能層は、無機ゾルの乾燥体を含むことが望ましい。
抗ウィルス機能層が無機ゾルの乾燥体を含むと、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子をしっかりと固定することができる。
本発明の抗ウィルス性の化粧板では、上記抗ウィルス機能層は、上記無機抗ウィルス粒子を含む皮膜を有し、上記皮膜は、無機高分子の乾燥体もしくは硬化体をさらに含むことが望ましい。
上記抗ウィルス機能層が、上記無機抗ウィルス粒子を含む皮膜を有し、上記皮膜が、無機高分子の乾燥体もしくは硬化体をさらに含むと、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。
本発明の化粧板では、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.5〜1.0倍であるため、充分な抗ウィルス性及びその長期耐久性を発揮することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る化粧板を模式的に示す概略断面図である。 図2A、図2B、図2C、図2D、図2E及び図2Fは、図1に示す化粧板の製造方法の一例を模式的に示す概略断面図である。 図3は、実施例1で作製した化粧板の断面SEM写真である。 図4は、比較例3で作製した化粧板の断面SEM写真である。 図5は、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率とウィルス不活性度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の抗ウィルス性の化粧板(単に「本発明の化粧板」ともいう)について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る化粧板を模式的に示す概略断面図である。
図1に示す化粧板1は、基板11と、基板11の表面上に積層される表層樹脂層12と、表層樹脂層12上に配置される抗ウィルス機能層13と、を備えている。抗ウィルス機能層13は、無機抗ウィルス粒子14を含んでいる。
本発明の化粧板に使用する基板は、特に限定されるものではなく、一般的に化粧板に使用されるコア紙やマグネシアセメント等の不燃基材等を使用することができる。コア紙は単独でもよく複数枚のコア紙を積層した積層体としてもよい。コア紙の枚数は特に限定されないが、1〜20枚とすることができる。コア紙としては、例えば、水酸化アルミニウム抄造紙を使用することができる。コア紙には、フェノール樹脂を含浸させることができる。また、コア紙とマグネシアセメント不燃基材を積層させて基板とすることもできる。
マグネシアセメント不燃基材は、単独で使用することにより、又は、コア紙の中心部に積層して配置させることにより基板を構成することができる。マグネシアセメント不燃板は、酸化マグネシウム(MgO)と塩化マグネシウム(MgCl)を混合し、さらに骨材と水を加えて混練し、板状に成形することにより製造されるものである。骨材としては、ロックウール、グラスウール等の無機質繊維、ウッドチップ、パルプ等の有機質繊維を用いることができる。また、マグネシアセメント不燃板の強度を高めるため、中間層として網目状等に形成されたガラス繊維層を設けることができる。
複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃基材からなる基板表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。例えば、表層樹脂層がメラミン樹脂層である場合、基板の片面又は両面にメラミン樹脂含浸紙を積層し、熱圧成形する方法を用いることができる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
また、本発明の化粧板を構成する表層樹脂層に用いることができる樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。これらの中では、メラミン樹脂を用いることが望ましい。すなわち、本発明の化粧板において、表層樹脂層は、メラミン樹脂層であることが望ましい。
メラミン樹脂は、透光性などの光学的、視覚的特性を損なうことなく、寸法安定性や靭性を改善した樹脂である。メラミン樹脂としては、メラミン及びその誘導体をモノマーとする樹脂であれば公知のものを採用することができる。また、メラミン樹脂は、単一のモノマーからなる樹脂であってもよく、複数のモノマーからなる共重合体であってもよい。メラミンの誘導体としては、例えば、イミノ基やメチロール基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基などの官能基を有する誘導体が挙げられる。また、メチロール基を有するメラミン誘導体に低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物をモノマーとして用いることができる。モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロール基を有する誘導体(以下、「メチロール化メラミン」という。)を架橋剤としてメラミンと共重合させてなるメラミン樹脂を用いることができる。
メラミン樹脂含浸紙は、パターン紙にメラミン樹脂を所定の含浸率で含浸させた後、加熱、乾燥させることにより作製される。メラミン樹脂をパターン紙に含浸させるには、溶媒として、例えば、ホルムアルデヒド水溶液を使用したメラミン樹脂含有溶液中にパターン紙を浸漬することにより行うことができる。また、メラミン樹脂含浸紙に曲げ加工性を付与するために、メラミン樹脂と共に可塑剤を含む溶液を含浸させることができる。可塑剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、アセトグアナミン、パラトルエンスルフォン酸アミド、尿素等を使用することができる。パターン紙としては、例えばチタン紙が用いられる。パターン紙の坪量は、パターン紙の厚みや重さを考慮して80〜150g/mとすることができる。加熱、乾燥の温度は、パターン紙にメラミン樹脂を強固に固着させるために100〜150℃に設定することができる。
メラミン樹脂層は、チタン紙に模様や色彩を印刷したパターン紙に前述したメラミン樹脂等を含浸、硬化させてパターン層を構成していてもよい。また、メラミン樹脂層は、填料(酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子)が5重量%以下の透明紙に前述したメラミン樹脂等を含浸、硬化させたものをパターン層上に積層して、オーバーレイ層を構成してもよい。さらに、複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント等からなる不燃基材からなる基板の裏面にバッカー層を設けて、反りを防止してもよい。
本発明の化粧板において、上記表層樹脂層上には、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層が配置されている。無機抗ウィルス粒子は、その少なくとも一部が抗ウィルス機能層の表面から露出していることが望ましい。また、無機抗ウィルス粒子は、抗ウィルス機能層の表面近傍に分散して配置されていることが望ましい。
無機抗ウィルス粒子に、ウィルスや菌が接触すると、無機抗ウィルス粒子に含まれる活性成分は、ウィルスや菌を全分解させるか、又は、一部を損傷させることができるので、菌やウィルスを減少させることができる。ただし、無機抗ウィルス粒子が凝集して存在すると、局所的にウィルスや菌と無機抗ウィルス粒子との接触頻度が低下し、想定される抗ウィルス性や抗菌性が発揮されにくくなる。したがって、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子は、均一に分散されていることが望ましい。
本発明の化粧板においては、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が、0.5〜1.0倍であることを特徴としている。上述したように、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.5〜1.0倍である場合、ウィルス不活性度が−2.50と同等かそれよりも抗ウィルス性に優れた値となるため、充分な抗菌性、抗ウィルス性を発揮することができる。したがって、住宅設備、公共施設など、抗ウィルス性及び長期耐久性の両立が要求される水平向け建材用途への応用が可能となる。
本発明の化粧板において、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は、0.6〜0.9倍であることが望ましい。無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.6〜0.9倍である場合、ウィルス不活性度が−3.00と同等かそれよりも抗ウィルス性に優れた値となるため、さらに充分な抗菌性、抗ウィルス性を発揮することができる。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径、及び、抗ウィルス機能層の膜厚は、化粧板を厚さ方向に割った後、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した断面写真からそれぞれの平均値を算出することによって求めることができる。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径は、任意の10個の無機抗ウィルス粒子について、粒子径の平均値を算出することによって求められる。具体的には、1個の無機抗ウィルス粒子に着目して最大直径と最小直径を計測して、その平均を当該無機抗ウィルス粒子の平均粒子径とし、同様の測定を他の9個の無機抗ウィルス粒子についても行い、合計10個の粒子について平均を求めることで、平均粒子径を計測する。
一方、抗ウィルス機能層の膜厚は、抗ウィルス機能層の任意の6箇所について、膜厚の平均値を算出することによって求められる。
本発明の化粧板において、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径は、0.5〜10μmであることが望ましく、1〜5μmであることがより望ましい。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層に埋まりやすくなるため、化粧板の抗ウィルス機能が低下する傾向にある。一方、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が10μmを超えると、無機抗ウィルス粒子の固定化が不充分となり、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層から脱落しやすくなるため、抗ウィルス性能が低下する傾向にある。また、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層から脱落すると、表面に窪みができるため、化粧板の外観及び意匠性に不具合が生じる。これに対し、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が0.5〜10μmであると、無機抗ウィルス粒子の機能が充分に発揮される。また、化粧板の外観及び意匠性においても問題とならない。
本発明の化粧板において、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量は、0.01〜10g/mであることが望ましく、0.02〜0.5g/mであることがより望ましい。
抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01〜10g/mであると、変色等による化粧板の意匠性を低下させることなく、抗ウィルス機能を発現することができる。抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01g/m未満である場合、無機抗ウィルス粒子の量が少なすぎるため、充分な抗ウィルス性、抗菌性が得られにくい。一方、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が10g/mを超えると、無機抗ウィルス粒子によって化粧板の意匠性が低下しやすくなる。
なお、後述する方法によって抗ウィルス機能層を形成する場合、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量は、スプレー液中に含まれる無機抗ウィルス粒子の量、及び、スプレーの塗着効率、及び、塗布体の面積から算出することができる。
例えば、スプレー液中に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が1〜10g/mである場合、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量は、スプレー塗着効率が2%であれば、0.02〜0.2g/mとなり、スプレー塗着効率が5%であれば0.05〜0.5g/mとなる。
本発明の化粧板において、無機抗ウィルス粒子は、抗菌性、抗ウィルス性、抗アレルゲン性、消臭性等の機能を有する材料からなることが望ましい。無機抗ウィルス粒子は、抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を含有する無機粒子であることが望ましい。抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を無機粒子に含有させることで、抗ウィルス性機能層に固定化された無機抗ウィルス粒子とウィルスが接触し、不活化しやすくなるからである。
例えば、抗ウィルス性、抗菌性を示す材料としては、銀又は銅もしくはその両方を含有する材料が挙げられる。また、無機抗ウィルス粒子としては、銀、銅、亜鉛、チタン等から選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物あるいは金属水和物の粒子を用いることもできる。無機抗ウィルス粒子の具体例としては、例えば、酸化銅(I)(亜酸化銅)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライト、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたアルミナ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたシリカ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化チタン、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウム等の無機粒子が挙げられる。これらの無機粒子は1種でもよいし、2種以上であってもよい。銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライトは、さらに亜鉛イオン等の他の金属イオンで交換されていてもよい。
本発明の化粧板において、無機抗ウィルス粒子は、粉末自身の着色によって化粧板の意匠性を損なわないために、白色粉末である銀イオン交換ゼオライト、ナノ銀が担持されたアルミナ、ナノ銀が担持されたシリカ、ナノ銀が担持された酸化亜鉛、ナノ銀が担持された酸化チタン、又は、ナノ銀が担持されたリン酸カルシウムからなる無機粒子であることが望ましい。
本発明の化粧板において、抗ウィルス機能層は、無機ゾルの乾燥体を含むことが望ましい。具体的には、抗ウィルス機能層は、無機抗ウィルス粒子を含む皮膜を有し、上記皮膜は、無機ゾルの乾燥体を含むことが望ましい。
無機ゾルの乾燥体によって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
無機ゾルとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が挙げられる。これらは、1種でもよいし、2種以上であってもよい。中でも、シリカゾルを用いることが望ましい。
本発明の化粧板において、抗ウィルス機能層の皮膜は、無機ゾルの乾燥体に加えて、無機高分子の乾燥体もしくは硬化体をさらに含むことが望ましい。具体的には、シロキサンを含有する無機高分子の乾燥体を含むことが望ましい。
この場合、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。
シロキサンを含有する無機高分子としては、例えば、シリコーンオイル、シランカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種でもよいし、2種以上であってもよい。また、シロキサンを含有する無機高分子として、例えば、「マイブロックワコー101」(和光純薬製)等の市販品を使用することもできる。「マイブロックワコー101」は、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステルである。
シロキサンを含有する無機高分子の添加量は、無機抗ウィルス粒子に対して、固形分重量比で15wt%以下であることが望ましい。上記無機高分子の添加量が固形分重量比で15wt%より大きいと、上記無機高分子の乾燥体が無機抗ウィルス粒子を被覆してしまい、抗ウィルス機能が発揮されにくくなる。
次に、本発明の抗ウィルス性の化粧板の製造方法について説明する。
図2A、図2B、図2C、図2D、図2E及び図2Fは、図1に示す化粧板の製造方法の一例を模式的に示す概略断面図である。
まず、図2A及び図2Bに示すように、無機抗ウィルス粒子14を含む抗ウィルス機能層13が基材フィルム20の表面に定着した転写フィルム30を準備する。
本発明の化粧板において説明したように、抗ウィルス機能層は、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率が0.5〜1.0倍となるように形成されていることが望ましく、上記比率が0.6〜0.9倍となるように形成されていることがより望ましい。
本発明の化粧板の製造方法においては、無機抗ウィルス粒子を含むスプレー液を、基材フィルムの表面に吹き付けることが望ましい。この場合、上記基材フィルムの表面に吹き付ける上記無機抗ウィルス粒子の量は、1〜10g/mであることが望ましい。
上記スプレー液は、無機ゾルをさらに含むことが望ましく、無機ゾルに加えて、無機高分子をさらに含むことがより望ましく、具体的には、シロキサンを含有する無機高分子をさらに含むことがより望ましい。
この場合、スプレー液に含まれる無機ゾルは、後述する塗工液に含まれる無機ゾルと同じであることが望ましい。同様に、スプレー液に含まれる無機高分子は、後述する塗工液に含まれる無機高分子と同じであることが望ましい。
本発明の化粧板の製造方法においては、スプレー液を吹き付けた後の基材フィルムの表面に、無機ゾルを含む塗工液を塗工し、上記塗工液を乾燥させることが望ましい。
無機ゾルによって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
上記塗工液は、無機高分子をさらに含むことが望ましい。具体的には、シロキサンを含有する無機高分子をさらに含むことが望ましい。
上記無機高分子によって、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。
上記塗工液をバーコーターを用いて所定の膜厚になるように塗工し、自然乾燥させることにより、基材フィルムの表面に抗ウィルス機能層を定着させることができる。
塗工液に含まれる無機ゾル、及び、無機高分子については、本発明の抗ウィルス性の化粧板において説明したため省略する。
本発明の化粧板の製造方法において、基材フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。
抗ウィルス機能層を定着させる側の基材フィルムの表面には、コロナ放電処理が施されていることが望ましい。したがって、基材フィルムとしては、表面にコロナ放電処理が施されたOPPフィルム又はPETフィルムを用いることが望ましい。
抗ウィルス機能層を定着させる側の基材フィルムの表面には、マット処理が施されていてもよいが、上記基材フィルムの表面粗さRmaxは5μm以下であることが望ましい。基材フィルムの表面粗さが大きいと、化粧板の表面に微細な凹凸が発生し、意匠性及び手触り感触が悪化しやすくなる。
次に、図2Cに示すように、基板となる樹脂含浸紙31a、31b、31c及び31dの表面上に表層樹脂層となる樹脂含浸紙32を積層し、さらに、抗ウィルス機能層13が表層樹脂層となる樹脂含浸紙32と接するように、転写フィルム30を表層樹脂層となる樹脂含浸紙32上に積層する。
続いて、図2Dに示すように、基板となる樹脂含浸紙31a、31b、31c及び31d、表層樹脂層となる樹脂含浸紙32及び転写フィルム30の積層体を熱圧成形する。これにより、図2Eに示すように、基板11上に表層樹脂層12を形成するとともに、表層樹脂層12上に抗ウィルス機能層13を固定させることができる。
本発明の化粧板においても説明したが、基板の表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。具体的な表層樹脂層の形成方法としては、例えば、コア紙の積層体からなる基板の片面又は両面にメラミン樹脂等の樹脂含浸紙を積層し、メラミン樹脂等の樹脂含浸紙が積層された基板を熱圧成形する方法が挙げられる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
この際、抗ウィルス機能層を塗工した転写フィルムを表層樹脂層となる樹脂含浸紙上に積層し、これらの積層体を熱圧成形することによって、抗ウィルス機能層が表層樹脂層となる樹脂含浸紙に転写される。その結果、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層を固定させることができる。
熱圧成形する際の加熱条件としては、化粧板の温度を125〜150℃とすることができ、加圧条件としては、1.96〜9.80MPa(20〜100kg/cm)とすることができる。温度が125℃未満の場合又は圧力が1.96MPa未満の場合には、基板に対する樹脂含浸紙の密着性が不足し、剥離が発生しやすくなる。一方、温度が150℃を超える場合又は圧力が9.80MPaを超える場合には、亀裂が発生するおそれがある。
その後、基材フィルム20を剥離等して除去することにより、図2Fに示すように、図1に示す化粧板1が得られる。
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(一次メラミン含浸工程)
厚さ0.2〜0.3mmの紙ロールを、メラミン樹脂を含む溶液中に浸漬した。溶液の温度20℃、浸漬時間2分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、ロール紙にメラミン樹脂を含浸させた。なお、ロール紙の移動速度は、10〜20cm/秒であった。
(乾燥工程)
メラミン溶液中を通過したロール紙は、乾燥機より、温度100℃、乾燥時間30秒となるように乾燥させた。
(二次メラミン含浸工程)
乾燥工程を経た紙ロールを、メラミン樹脂からなる溶液中に浸漬させた。溶液の温度20℃、浸漬時間30分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、メラミン樹脂を紙ロールに含浸させた。なお、ロール紙の移動速度は、10〜20cm/秒であった。
(乾燥・切断工程)
メラミン溶液中を通過したロール紙は、乾燥機より、温度100℃、乾燥時間2時間となるように乾燥させた。乾燥後、300mm×300mmに切断した。
(転写フィルムの準備1:無機抗ウィルス粒子スプレー工程)
無機抗ウィルス粒子として、平均粒子径2.5μmの銀イオン及び亜鉛イオン交換ゼオライト粉末(シナネンゼオミック製ゼオミックAK−10N)とシリカゾル(SiO濃度25wt%)とマイブロックワコー101(固形分濃度30wt%)とを、130:20:1の重量割合で含むメタノール混合溶液からなるスプレー液を調製した。スプレー液を常温でスプレーに充填させて、コロナ放電処理が施されたOPPフィルムの表面に吹き付けた。
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)
無機抗ウィルス粒子が付着したOPPフィルムの表面に対し、シリカゾル(SiO濃度25wt%)とマイブロックワコー101(固形分濃度30wt%)とメタノールとを20:1:10の重量割合で混合した塗工液を番手7番のコートバーを用いて塗工し、その後室温で自然乾燥させることにより、OPPフィルムの表面に抗ウィルス機能層が定着した転写フィルムを作製した。
(組合せ工程)
厚み0.3〜0.4mmのフェノール樹脂含浸コア紙を4枚積層し、その上に、メラミン樹脂含浸紙を積層させた。さらに、抗ウィルス機能層がメラミン樹脂含浸紙と接するように転写フィルムをメラミン樹脂含浸紙上に積層させ、温度143℃、プレス圧80kg/cm、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着した。この後、さらにOPPフィルムを剥離し、これにより、メラミン樹脂層上に、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層が配置された化粧板の作製を完了した。
図3は、実施例1で作製した化粧板の断面SEM写真である。
図3より、表層樹脂層12であるメラミン樹脂層上に、無機抗ウィルス粒子14を含む抗ウィルス機能層13が配置されていることが確認できる。
なお、図3では、抗ウィルス機能層にクラックが存在しているが、ウィルスを含む流体がこのクラックにトラップされ、抗ウィルス粒子と接触するため、抗ウィルス機能の発現に有利である。
実施例1では、樹脂層と抗ウィルス層を構成するシリカゾルの乾燥体の熱膨張係数が異なるため、上記組合せ工程におけるプレス後の冷却で、抗ウィルス層にクラックが形成されるものと考えられる。無論、シリカゾルに混合されている無機高分子であるマイブロックワコー101(アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル)の量を調整して、抗ウィルス層と樹脂層との熱膨張係数を整合させることでクラックの無い化粧板とすることも可能である。
SEMの断面観察から抗ウィルス機能層の膜厚を計測したところ、抗ウィルス機能層の平均膜厚は2.3μmであった。したがって、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は0.90倍であった。
(実施例2)
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:5に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
実施例2で作製した化粧板の抗ウィルス機能層の平均膜厚は1.6μmであり、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は0.63倍であった。
(実施例3)
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:20に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
実施例3で作製した化粧板の抗ウィルス機能層の平均膜厚は1.4μmであり、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は0.57倍であった。
(実施例4)
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:10に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
実施例4で作製した化粧板の抗ウィルス機能層の平均膜厚は1.3μmであり、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は0.50倍であった。
(比較例1)
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:50に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
比較例1で作製した化粧板の抗ウィルス機能層の平均膜厚は0.5μmであり、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は0.20倍であった。
(比較例2)
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:5に変更し、バーコートの番手を7番から9番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
比較例2で作製した化粧板の抗ウィルス機能層の平均膜厚は3.1μmであり、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は1.23倍であった。
(比較例3)
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:2に変更し、バーコートの番手を7番から14番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
図4は、比較例3で作製した化粧板の断面SEM写真である。
図4より、表層樹脂層12であるメラミン樹脂層上に、無機抗ウィルス粒子14を含む抗ウィルス機能層13が配置されていることが確認できる。
比較例3で作製した化粧板の抗ウィルス機能層の平均膜厚は3.5μmであり、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率は1.40倍であった。
(意匠性の評価)
各実施例及び比較例で作製した化粧板の外観を目視で観察したところ、いずれも問題がないことが確認された。
(抗ウィルス性評価)
各実施例及び比較例で作製した化粧板の抗ウィルス性を評価するために、JIS R1756 可視光応答形光触媒材料の抗ウィルス性試験方法を改変した手法により抗ウィルス性に関する測定を行った。改変点は、「4時間の1000ルクス光照射」を「室内蛍光灯下(300ルクス程度)での放置」とした点である。測定結果は、大腸菌に対して不活化されたウィルス濃度で表す。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用した。ウィルス不活度とは、バクテリオファージを用いた抗ウィルス性試験で、ファージウィルスQβ濃度:830万個/ミリリットルを用いて、大腸菌に感染することができるウィルスの濃度を測定することにより、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度を算出した結果である。すなわち、ウィルス不活度は、ファージウィルスQβ濃度に対して、大腸菌に感染することができない濃度の度合いであり、(ファージウィルスQβ濃度−大腸菌に感染することができるウィルスの濃度)/(ファージウィルスQβ濃度)×100で算出することができる。ウィルス不活度の値が高いほど(ウィルス不活性度の絶対値が高い程)、抗ウィルス性に優れるといえる。
各実施例及び比較例で作製した化粧板について、ウィルス不活度からウィルス不活性度を求めた。抗ウィルス機能層の膜厚、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率、及び、ウィルス不活性度をまとめて表1に示す。また、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率とウィルス不活性度との関係を図5に示す。表1及び図5中、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する抗ウィルス機能層の膜厚の比率を「抗ウィルス機能層膜厚/平均粒子径比」と記載している。
Figure 2021104685
表1及び図5より、実施例1〜3については、ウィルス不活度が99.9%以上(ウィルス不活性度が−3.00と同等か、それよりも抗ウィルス性に優れた値)という結果が得られた。また、実施例4については、ウィルス不活度が99.84%以上(ウィルス不活性度が−2.80と同等か、それよりも抗ウィルス性に優れた値)という結果が得られた。一方、比較例1〜3については、ウィルス不活度が96.84%(ウィルス不活性度が−1.50程度)であり、実施例1〜4と比較して抗ウィルス性が低いことが確認された。
(拭き取り耐久性試験)
実施例2で作製した化粧板について、拭き取り荷重に対する耐久性を評価するために、水道水を染み込ませたマイクロファイバークロスを用いて、150Paの圧力で3650回の拭き取り試験を実施した。
150Paで3650回拭き取りした後のウィルス不活度は99.75%以上(ウィルス不活性度が−2.60と同等か、それよりも抗ウィルス性に優れた値)という結果が得られ、抗ウィルス機能が保持されていることが確認された。
1 化粧板
11 基板
12 表層樹脂層
13 抗ウィルス機能層
14 無機抗ウィルス粒子
20 基材フィルム
30 転写フィルム
31a,31b,31c,31d 基板となる樹脂含浸紙
32 表層樹脂層となる樹脂含浸紙

Claims (3)

  1. 基板と、
    前記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、
    前記表層樹脂層上に配置され、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層と、からなり、
    前記抗ウィルス機能層にクラックが形成されていることを特徴とする抗ウィルス性の化粧板。
  2. 前記抗ウィルス機能層は、無機ゾルの乾燥体を含む請求項1に記載の化粧板。
  3. 前記抗ウィルス機能層は、前記無機抗ウィルス粒子を含む皮膜を有し、
    前記皮膜は、無機高分子の乾燥体もしくは硬化体をさらに含む請求項1又は2に記載の化粧板。
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