JP4179459B2 - 防汚性化粧板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は化粧板に関し、より詳しくは表面の汚れが光により分解されやすい防汚性化粧板に関する。
【0002】
【特許文献1】
特開2002−225191号公報
【特許文献2】
特開2000−62128号公報
【特許文献3】
特開平11−115093号公報
【0003】
【従来の技術】
従来、テーブル、カウンター、キッチンなどの水平面や、壁、ブースなどの垂直面に供される化粧板があり、例えば耐摩耗性、耐衝撃性などの諸物性に優れるジアリルフタレート樹脂化粧板やメラミン樹脂化粧板などの熱硬化性樹脂化粧板が広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、化粧板の表面には日常生活上種々の汚染物質が付着し、放置すると容易に除去できなくなることがあった。特に化粧表面にエンボス加工が施されている場合は、力を入れて布等で擦ることを余儀なくされ、たとえ表面がフラットであっても、その表面は金属プレートやプラスチックフィルムの超微細な凹凸面が転写されたものであることから容易に汚れを除去できるというものではなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので以下のことを特徴とするものである。
すなわち、請求項1記載は、樹脂含浸コア材と、樹脂含浸化粧紙と、プラスチックフィルムに光触媒ゾルとオルガノシリカゾルを含む光触媒含有組成物を塗布し、更にこの上にオルガノシリカゾルを塗布した転写シートとを順次積層し、熱圧成形後、該プラスチックフィルムを除去することを特徴とする防汚性化粧板の製造方法である。
また、請求項2記載の発明は、更に、該樹脂含浸化粧紙と該転写シートの間に樹脂含浸表面紙を介在させることを特徴とする請求項1記載の防汚性化粧板の製造方法である。
更に、請求項3記載の発明は、該プラスチックフィルムを除去し、紫外線を照射することを特徴とする請求項1又は2記載の防汚性化粧板の製造方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0006】
本発明で用いるコア基材としては、化粧板用のクラフト紙、不織布、クロスなどに熱硬化性樹脂から樹脂を含浸処理した樹脂含浸コア紙や、合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボードなどの木質系基材が挙げられ、適宜、用途、要求される品質により選択される。
【0007】
中でもコア基材は、耐水性、強度、耐熱性などの物性面からクラフト紙を用いた樹脂含浸コア紙が好ましく、含浸用に供される樹脂としては、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂などの熱硬化性樹脂からなる樹脂液を含浸し、乾燥したものが用いられるが、とりわけ、強度、耐熱性などに優れるフェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂はフェノール類とアルデヒド類とをフェノール性水酸基1モルに対してアルデヒド類を1〜1.3モルの割合で塩基性触媒下にて反応させることにより得ることができる。
【0008】
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられ、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザールなどが挙げられる。また、必要に応じてパラスルフォンアミド、桐油、DOP、TCP(トリクレジルホスフェート)などの可塑化を促す変性剤で変性されたものも適用でき、塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。
【0009】
樹脂含浸化粧紙は、坪量が60〜180g/m2で、着色、あるいは印刷により各種の模様を施した化粧板用の化粧紙に、熱硬化性樹脂からなる樹脂液を含浸し、乾燥処理したもので、樹脂含浸表面紙は、熱圧成形後透明となる化粧板用の表面紙で坪量は18〜60g/m2である。樹脂含浸表面紙は樹脂含浸化粧紙に耐摩耗性が必要とされる場合に積層されて熱圧成形される。
【0010】
熱硬化性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、あるいはこれらの混合物などが例示され、とりわけ、耐熱性、耐水性などの表面物性の面からアミノ−ホルムアルデヒド樹脂を用いるのが好ましい。
【0011】
アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはアミノ化合物、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどとホルムアルデヒドを反応させた初期縮合物のほか、メチルアルコール、エチルアルコールなどの低級アルコ−ルによるエ−テル化、パラトルエンスルホンアミドなどの可塑化を促す反応性変性剤で変性されたものが適用できる。
【0012】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンフィルム、ナイロンに代表されるポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル系フィルム、フッ素系フィルムなどを挙げることができる。これらのうち、機械的強度、寸法安定性などが優れポリエステルフィルムが好ましく用いられる。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔などが挙げられる。
【0013】
ポリエステルフィルムは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物からなるフィルムの総称であり、特に好ましいポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン−2、6ナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレン−2、6ナフタレートフィルムなどを挙げることができ、これらの中でもポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン−2、6ナフタレートフィルムが好ましい。
【0014】
プラスチックフルムの表面に塗布される光触媒含有組成物は光触媒とシリカ系バインダー、界面活性剤、及び必要に応じて用いる光触媒活性触媒などからなるもので、光触媒は、特定の波長の光が照射されると光化学反応を起こすことにより有機物を分解する触媒として作用したり、抗菌または防黴作用等の働きが得られる金属酸化物のことをいい、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化セリウム(CeO)、酸化鉄(Fe2O3)等が挙げられ、これらの酸化物のうち、太陽光や日常生活で用いられる照明光で高い触媒活性を有する酸化チタンがとりわけ望ましい。
【0015】
酸化チタンとしてはルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが例示されるが、アナターゼ型の方が入手しやすく安価で特性が安定しており、かつ、人体に無害であり、光触媒として優れた効果を発揮し好ましい。
【0016】
更に、熱硬化性樹脂化粧板の表面の柄、色調を妨げない範囲で白金、ルテニウム、銀、酸化ルテニウム、ニオブ、銅、スズ、酸化ニッケルなどの金属及び金属酸化物を光触媒活性促進剤として酸化チタン表面に付着または被覆させてもよい。
【0017】
光触媒含有組成物中には光触媒である金属酸化物とシリカ系バインダーとの密着性をより強固なものとするため、チタニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤を含ませてもよい。
【0018】
光触媒含有組成物の塗布方法としては、スプレ−コ−ティング法、フロ−コ−ティング法、バーコート法、ロ−ルコ−ティング法、刷毛塗り、スポンジ塗りなどの公知の方法が利用でき、塗布量はwet状態で1〜10g/m2、固形分で0.1〜5g/m2が好ましい。下限に満たないと光触媒分解性能が劣りやすく、上限を超えると白化しやすく塗布ムラが起こり、また、光触媒粒子が表面に出なくなり光触媒分解性能が劣りやすくなる。
【0019】
バインダー剤は前述の光触媒組成物との密着を強固にし、光触媒を固着するためのもので、例えば、光触媒作用による分解機能の影響を受けない化1で示されるシラン化合物、あるいは分解機能に耐えるポリシロキサン、シリコーン変性樹脂などが利用できる。
【0020】
【化1】
(式中、nは0、1、2、3のいずれかの整数を表し、R1はC1からC4のアルキル基、フェニル基、ビニル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、γ−クロロプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−アミノプロピル基、1−アクリロキシプロピル基などが挙げられる。)
【0021】
Xについて式中バインダーとして効果的なものはアルコキシ基で、nが0〜3の整数であるアルコキシシランとしては、例えば、nが0の場合、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどの4官能シランが挙げられる。nが1の場合は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシランなど3官能シランが挙げられる。nが2の場合は、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能シランが挙げられる。nが3の場合は、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシランなどの単官能シランが挙げられる。
【0022】
ポリシロキサンとしては、前述のアルコキシシランの如き加水分解性シリコーン化合物モノマーあるいはこれらの部分加水分解生成物から得られる重合体や、コロイダルシリカなどを挙げることができる。
【0023】
シリコーン変性樹脂は、合成樹脂にシリコーンを導入したもので、合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。シリコーンが導入された合成樹脂の内、アクリルシリコーン樹脂、エポキシシリコーン樹脂は、成膜性、膜強度及び担体との密着性の点で優れている。
【0024】
コロイダルシリカは、シリカ微粒子が溶媒中にコロイド状に分散されたものであり、5〜100nmの平均粒子径を有するものが使用される。コロイダルシリカのゾルとしては水性シリカゾルとオルガノシリカゾルがあり、どちらも適用可能であるが、樹脂含浸紙、光触媒との密着を考慮すればオルガノシリカゾルを使用することが好ましい。オルガノシリカゾルは乾燥されることによって、コロイド粒子の凝集結合力が作用して、シリカの3次元長鎖状網目構造となる。
【0025】
コロイダルシリカのゾル中のシリカ濃度は5〜50重量%のものであり、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン/n−ブタノール混合溶媒等を挙げることができる。
【0026】
バインダー剤の塗布方法としては公知の手段、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スクイズ法、噴霧、吹き付けなどを採用することができる。塗布量は固形分で0.1〜50g/m2であればよく、塗布量が下限に満たないと、光触媒の密着性が劣りやすく、上限を超えると白化し、熱可塑性フィルムから脱落しやすくなる。
【0027】
本発明の防汚性化粧板は、コア材と、樹脂含浸化粧紙と、必要に応じて樹脂含浸表面紙と、プラスチックフィルムに光触媒含有組成物を塗布し、更にこの上にバインダー剤を塗布した転写シートとを順次積層し、熱圧成形後、該プラスチックフィルムを除去することにより得られるが、該プラスチックフィルムを除去した後、紫外線を照射すると、より光触媒分解性能が向上する。
【0028】
本発明の防汚性化粧板の光触媒層を光励起させるための光源としては、蛍光灯、白熱電灯、メタルハライドランプ、水銀ランプ、太陽光などが挙げられ、これらの光のより汚れが分解される。
【0029】
以下、本発明について、実施例に基づいてより詳細に説明する。
【実施例】
実施例1
光触媒含有組成物
光触媒ゾル(二酸化チタン系、PC−201 チタン工業株式会社製)
69重量%
オルガノシリカゾル(NPC−ST−30 日産化学株式会社製 固形分濃度30重量%)
23重量%
ノニオン系活性剤(HS−210 日本油脂株式会社製)
0.4重量%
水
7.6重量%
転写フィルム
厚み25μmの艶消しポリプロピレンフィルムに、上記の光触媒含有組成物を固形分で4g/m2塗布し、更にこの上にオルガノシリカゾル(NPC−ST−30 日産化学株式会社製 固形分濃度30重量%)を固形分で4g/m2塗布して転写フィルムを得た。
メラミン樹脂含浸化粧紙
坪量100g/m2の白色無柄の化粧紙に前記のメラミン樹脂液を含浸量が固形分換算値で100g/m2となるように含浸し乾燥してメラミン樹脂含浸化粧紙を得た。
フェノール樹脂含浸紙
フェノールとホルムアルデヒドのモル比を1:1.15とし水酸化ナトリウム下で反応させてレゾール型フェノール樹脂を得た後、190g/m2のクラフト紙に含浸量が固形分換算値で90g/m2となるように含浸し乾燥してフェノール樹脂含浸紙を得た。
防汚性化粧板の製造
フェノール樹脂含浸紙4枚と、メラミン樹脂含浸化粧紙1枚と、転写フィルムとをオルガノシリカゾルが塗布された面がメラミン樹脂含浸化粧紙に当接されるように順次積層し、ステンレスプレートを配して温度170℃、圧力50kg/cm2、時間100分の条件で熱圧成形した。熱圧成形後、艶消しポリプロピレンフィルムを除去して、実施例1の防汚性化粧板を得た。
【0030】
実施例2
実施例1の防汚性化粧板の表面に、12mW/cm2の紫外線を30分照射して、実施例2の防汚性化粧板を得た。
【0031】
実施例3
メラミン樹脂含浸表面紙
メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比が1.5のメラミン初期縮合物にパラトルエンスルホン酸アミド6部、硬化剤(キャタニットA 日東理研工業株式会社社製)3部、離型剤1部(セパ−ル328 中京油脂株式会社社製)を添加してメラミン樹脂液を得た、坪量22g/m2の表面紙に含浸用樹脂を含浸量が固形分換算値で55g/m2となるように含浸し乾燥してメラミン樹脂含浸表面紙を得た。実施例1において、メラミン樹脂含浸表面紙をメラミン樹脂含浸化粧紙の上に配した以外は同様に実施して、実施例3の防汚性化粧板を得た。
【0032】
評価結果を表1に示す。
【表1】
【0033】
評価方法
光触媒分解機能
実施例1,2,3の防汚性化粧板について、500ppmのメチレンブルー溶液を塗布し、色測計にてLabを測定し、20Wブラックライトを光源として、1mW/cm2の紫外線に2時間暴露し、Labを測定して色差ΔEを測定し、数1により分解率(%)を算出した。また、同様に4時間曝し、分解率(%)を算出した。
【数1】
ここで、L0、a0、b0は試験体そのものの色、LMB、aMB、bMBはメチレンブルー溶液塗布後の色、Luv、auv、buvは光照射後の色を示し、ΔEuvは、光照射後とメチレンブルー溶液塗布後との色差、ΔEMBは、メチレンブルー溶液塗布後と試験体そのものとの色差である。
【0034】
【発明の効果】
本発明の防汚性化粧板は、樹脂含浸紙の表面に熱圧成形と同時に光触媒層が転写され、バインダー剤を用いることにより、光触媒層との密着がよく、光触媒分解性能を長期に渡って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 防汚性化粧板の製造方法を示す模式構成断面図。
【符号の説明】
1 プラスチックフィルム
2 光触媒含有層
3 バインダー剤層
4 転写フィルム
5 樹脂含浸表面紙
6 樹脂含浸化粧紙
7 樹脂含浸コア紙
9 防汚性化粧板
Claims (3)
- 樹脂含浸コア材と、樹脂含浸化粧紙と、プラスチックフィルムに光触媒ゾルとオルガノシリカゾルを含む光触媒含有組成物を塗布し、更にこの上にオルガノシリカゾルを塗布した転写シートとを順次積層し、熱圧成形後、該プラスチックフィルムを除去することを特徴とする防汚性化粧板の製造方法。
- 更に、該樹脂含浸化粧紙と該転写シートの間に樹脂含浸表面紙を介在させることを特徴とする請求項1記載の防汚性化粧板の製造方法。
- 該プラスチックフィルムを除去し、紫外線を照射することを特徴とする請求項1又は2記載の防汚性化粧板の製造方法。
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