以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状などが下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<構成>
本発明の一実施形態に係る化粧シート10は、図示しないが、例えば室内に使用され、建具(室内ドア、玄関収納)・造作材(見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠)などの表面に貼られ、家や部屋毎に建具・造作材の柄を合わせたりして使用される。
図1に示すように、化粧シート10は、次の各層を含み、各層が(1)から順に積層されている。化粧シート10は、透明原反20の表面側及び裏面側のいずれにも他のフィルムからなるラミネート層を有しない化粧シートである。
なお、次の(1)〜(5)については後述する。
(1)プライマー層30
(2)着色層40
(3)印刷絵柄層50
(4)透明原反20
(5)表面保護層60
なお、化粧シート10の各層は、上記した(1)〜(5)に限定されず、例えば、図1に示すように、化粧シート10のプライマー層30側の面に、(6)粘着剤層70と、(7)剥離紙80とを追加し、化粧タックシート11としても良い。また、図2に示すように、透明原反20の表面保護層60側の面、具体的には後述の透明スキン層23の表面保護層60と接する側の面に、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部25を形成しても良い。エンボス部25は、例えば、エンボス版を用いて目的の意匠、性能に見合った形状としてもよい。
また、図3に示すように、粘着剤層70及び剥離紙80を設けずに、プライマー層30の表面に接着剤層92を介して基材91を接着し、化粧材12としても良い。
また、化粧シート10は、図4に示すように、上記「(1)プライマー層30」を省略しても良い。すなわち、上記「(2)着色層40」にプライマー層としての機能があれば、プライマー層30を省略可能である。
さらに、図4に示すように、上記「(2)着色層40」を省略しても良い。すなわち、着色層40も必要がない場合、例えば隠蔽性を付与する必要が無い場合には、着色層40を省略可能である。
<透明原反20>
透明原反20は、化粧シート10の支持体となるものであって、透明オレフィンシートからなる。
透明原反20は、図1に示すように、印刷絵柄層50側から順に、透明スキン層21、透明のポリプロピレン製の透明コア層22、透明スキン層23の順に2種3層が積層されてなり、押し出し成形により形成される。
透明原反20は、図面上、透明コア層22、透明スキン層21、23とが別層を形成する様に表現しているが、実際は透明コア層22、透明スキン層21、23は連続的であり、界面は存在しない単層シートである。
なお、透明原反20を、透明オレフィンシートから構成される単層フィルム(透明スキン層21/透明コア層22/透明スキン層23)から構成したが、これに限定されず、図示しないが、例えば透明オレフィンシートから構成される単層フィルム(透明層)から構成しても良い。このとき、単層フィルム(透明層)が透明原反20に相当する。
上記単層フィルム(透明層)の「透明層」は、透明スキン層21と同様に、ナノサイズの添加剤として分散剤が添加されている。また、「透明層」には、透明コア層22と同様に、耐候剤もブレンドしている。
なお、透明原反20に、抗ウイルス剤を添加してもよい。抗ウイルス剤としては、例えば、銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を使用することができる。
透明原反20に抗ウイルス剤を添加することに限定されず、透明原反20の表面保護層60側の面のみに抗ウイルス剤を塗布しても良い。
<透明コア層22>
透明コア層22を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂があげられる。例えば透明ポリプロピレン樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを使用する。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
透明コア層22には、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。
<透明スキン層21、23>
透明スキン層21及び23は、ポリプロピレン系の透明熱可塑性樹脂に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して形成している。また、透明スキン層21、23には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラー(以下、ナノサイズの造核剤ともいう。)が添加されている。
透明スキン層21、23を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、透明コア層22と同様の樹脂材料を用いることができる。
ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されることが好ましい。
また、透明スキン層21、23を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていても良い。透明スキン層21、23は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート10の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。
この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。
一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。
このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
透明スキン層21、23は、例えば、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成される。
造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21、23の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、透明スキン層21を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料をいう。
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。
また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。
超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。
つぎに、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。
この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は、例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。
このうち、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしても良い。
本実施形態の化粧シート10においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート10の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしても良い。
<プライマー層30>
プライマー層30は、図1に示すように、透明原反20を挟んで、表面保護層60とは逆側に位置し、主として接着性改善を目的で設けられるものである。
なお、プライマー層30の機能には、接着性改善のほか、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。
プライマー層30は、例えばグラビア印刷法により固形分量が1g/m2となるようにウレタン系樹脂を塗工して形成している。
<着色層40>
着色層40は、図1に示すように、プライマー層30の表面に位置し、印刷方法を用いて形成され、主として隠蔽性を付与する目的で設けられるものである。
着色層40は、例えばグラビア印刷法により2液ウレタン系樹脂で印刷したものである。
<印刷絵柄層50>
印刷絵柄層50は、図1に示すように、着色層40の表面に位置し、印刷方法を用いて形成され、化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷絵柄層50は、例えばグラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷したものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法を例示したが、これに限定されず、例えばオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用可能である。
印刷絵柄層50の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
また、印刷絵柄層50は単色であってもよい。
つまり、最近では、家や部屋毎の建具・造作材の柄に合わせるのではなく、単色が使われることがある。新築の場合、建具扉などと造作材では組み込むタイミングが異なる。
例えば、ドア枠や窓枠は家自体に組み込む必要があるため、施工の早い段階から取り付けることになるが、ドア自体は後で取り付けたり、取り外したりすることが可能である。
本実施形態によれば、枠材を単色にしておくと、中のドア柄が何であっても事前に対応することが可能となるため、ドア柄を後で決めることが可能になったり、老朽化してドアを変更する際にも枠材から壊して取り変えなくてもドアだけの変更で対応することが可能だったりもする。もちろん、ドア自体も単色にしておくこともできる。
また、本実施形態によれば、アパートなどでも全ての部屋を単色で統一することでロットを増やして生産性を上げることや単価を下げることもしやすくなるため、単色のシートを使うことによるメリットがある。
また、本実施形態によれば、白で仕上げた後に木目調にしたくなった場合に、本実施形態に係る化粧シート10は、薄くても硬いことから、後で木目調に変えることも可能である。
印刷方法に用いられる印刷インキとしては、例えば塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)を用いている。
なお、印刷インキとしては、ウレタン系樹脂を例示したが、これに限定されず、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤等でも良いし、又、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
<表面保護層60>
表面保護層60は、図1に示すように、透明原反20の印刷絵柄層50とは逆側の面側に位置し、印刷方法を用いて形成され、耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設けられるものである。
表面保護層60は単層でも良く、また複数の層を重ねて表面保護層60としても良い。図1に示すように、本実施形態に係る化粧シート10では、表面保護層60として、第1表面保護層61及び第2表面保護層62の2層が設けられている。表面保護層60が一層から構成される構造(単層構造)の場合、第1表面保護層61が表面保護層60となる。
第1表面保護層61及び第2表面保護層62を含む表面保護層60は、それぞれの層を、硬化型樹脂の種類に応じて、既知のコーティング装置、熱乾燥装置及び紫外線照射装置を用いて塗布及び塗膜の硬化を行うことで形成する。
表面保護層60は、曲げ加工性、耐候性、耐傷付性や清掃性に関してその優劣を左右する重要な役割をもつ。表面保護層60は、硬化型樹脂(硬化性樹脂)を主成分とする。すなわち樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば樹脂全体を100質量部とした場合に80質量部以上が硬化型樹脂であることを指す。表面保護層60には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含んでもよい。
<第1表面保護層61>
第1表面保護層61は、表面保護層60を構成する層(第1表面保護層61、第2表面保護層62)のうち、最表面(最外面)に位置する層(最表層)である。本実施形態では、第1表面保護層61は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも1種を含んでいる。なお、電子線硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂とをまとめて電離放射線硬化型樹脂と記載する。第1表面保護層61は、一般的に反応性樹脂を塗工することにより塗膜形成をし、その後加熱や電離放射線照射により塗膜を硬化させる方法で形成することができる。第1表面保護層61においては、硬化方法の違いによる特性差もある。例えば、一般的に電離放射線硬化型樹脂で形成された第1表面保護層61は、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷性に優れる傾向にある。一方で、熱硬化性樹脂で形成された第1表面保護層61は、比較的架橋度が低いために硬度が低く、折り曲げや基材への追従などの柔軟性に優れる傾向にある。
第1表面保護層61は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のいずれか1種を主成分としてもよい。つまり、第1表面保護層61の主成分は、熱硬化性樹脂単体であってもよいし、紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂単体であってもよい。
例えば、化粧シート10を部材として複雑な形状が多い建具に用いる場合は、柔軟性(例えば加工適正)が要求されることが多い。このため、例えば建具に用いる化粧シート10において、第1表面保護層61の主成分には、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、化粧シート10において柔軟性よりも耐傷性が求められる場合には、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
また、第1表面保護層61の主成分は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物であってもよい。当該混合物を主成分とする場合、使用用途によって、第1表面保護層61における熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の比率をコントロールすることで、化粧シート10を各種用途の要求に応じて使い分けることができる。
例えば、化粧シート10を建具に用いる場合、第1表面保護層61の主成分となる熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物は、熱硬化性樹脂を最も多く含有することが好ましい。具体的には、当該混合物において熱硬化性樹脂が50重量%を超えていればよく、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
また、例えば、化粧シート10に耐傷性が求められる場合、第1表面保護層61の主成分となる熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の少なくとも一方を最も多く含有することが好ましい。具体的には、当該混合物において紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が50重量%を超えていればよく、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
このように、表面保護層60のうちの最表層に当たる第1表面保護層61の主成分が、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物とすることで、耐傷性を満足させると同時に曲げ加工においては表面保護層60の白化や割れが発生し難くなる。
ただし、第1表面保護層61に用いる樹脂の硬化方法の違いのみで、上記のような耐傷付性や加工適性といった化粧シート10の性能が決まるわけではない。化粧シート10の性能(ここでは耐傷付性や加工適性)は、樹脂自体の材料設計やフィラーなどの添加剤の添加作用、つまり表面保護層60に含まれる各種成分の物性が性能に大きく寄与する。このため、表面保護層60全体としての設計が重要になってくる。
〔電離放射線硬化型樹脂〕
ここで第1表面保護層61に用いる電離放射線硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂を含む)としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。電離放射線硬化型樹脂における硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
具体的には、上述のプレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。
また、上述のプレポリマーとして、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常、190nm以上380nm 以下の範囲が好ましい。
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100keV以上1000keV以下の範囲のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましく、100keV以上300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものがより好ましい。
〔熱硬化性樹脂〕
ここで第1表面保護層61に用いる熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂が挙げられる。2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。また熱硬化性樹脂としてはこれらに限られず、1液反応硬化型のポリウレタン系樹脂や、1液又は2液反応硬化型のエポキシ系樹脂などを用いてもよい。
また、第1表面保護層61は、界面活性剤が添加されている。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の少なくとも一種を含んでいる。界面活性剤が添加されていることにより、銀系抗ウイルス剤と第1表面保護層61のバインダ中の相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス剤の沈殿等による濃度のばらつきが抑制された化粧シートを得ることができる。
また、第1表面保護層61の層厚は、3μm以上15μm以下の範囲内が望ましい。第1表面保護層61の厚さが3μm以上であれば、耐傷性、耐摩耗性、耐候性等、各種耐性が向上する。第1表面保護層61の厚さが15μm以下であれば、必要以上に多くの量の樹脂材料を使用する必要がなくコストを低減することができる。
〔抗ウイルス剤〕
第1表面保護層61は、抗ウイルス性を向上させる抗ウイルス剤を含んでいる。抗ウイルス剤は、銀系材料であることが好ましい。具体的には、抗ウイルス剤は、無機系であり、その活性成分として銀を使用している。
抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる。また抗ウイルス剤としてジンクピリジオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシド等が使用できるが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。
また、抗ウイルス剤は銀系材料が無機材料に担持されている構成であってもよい。これにより、ウイルス効果の持久性の優れた化粧シート10を得ることができる。
第1表面保護層61における抗ウイルス剤の添加量は、第1表面保護層61の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下の範囲内である。抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合、抗ウイルス剤が効果的に作用し、抗ウイルス性が向上する。抗ウイルス剤の添加量が10質量%以下である場合、耐傷性が向上し、10質量%よりも大きい場合には、第1表面保護層61の機械強度への影響が大きい。
抗ウイルス剤の平均粒径は、第1表面保護層61の厚さの0.5倍以上2倍以下であることが望ましい。すなわち、抗ウイルス剤の平均粒径をΦ、第1表面保護層61の厚さをDとしたときに、0.5≦Φ≦2Dの関係が成り立つことが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が第1表面保護層61の0.5倍以上2倍以下である場合、抗ウイルス剤との接触面先拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積拡大により抗ウイルス性が良好になる。
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、第1表面保護層61と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、耐傷性が向上する。
また、抗ウイルス剤の粒径分布のピークは複数存在していることが好ましい。具体的には、抗ウイルス剤の粒径分布のピークは2つのピークを有し、2つのピークは、1μm以上5μm以下の範囲である第1ピークと、5μm以上10μm以下の範囲である第2ピークとを含んでいることが好ましい。ここで、抗ウイルス剤の粒径の第2ピークは、第1ピークより大きい値とする。抗ウイルス剤の粒径分布のピークが複数存在していることにより、抗ウイルス剤の充填密度がより向上し、抗ウイルス剤をより多く添加することができる。このため、抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス自体の表面積も拡大することにより、抗ウイルス性が向上する。
また、本実施形態に係る化粧シート10において、例えば耐汚染性向上策として、化粧シート10の最表面(第1表面保護層61)にシリコン系成分(例えばシリコン樹脂)やフッ素系成分(例えばフッ素樹脂)を設定してもよい。
〔シリコン樹脂〕
シリコン樹脂を用いる場合は、周囲との密着性や相溶性の問題から変性シリコンを用いることが好ましい。第1表面保護層61を構成する硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、電離放射線反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また第1表面保護層61を構成する硬化型樹脂が熱硬化性樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、熱反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また、第1表面保護層61を構成する硬化型樹脂が電離放射線硬化型樹脂及び熱硬化性樹脂の混合から形成される場合には、上記変性シリコンは、電離放射線反応性及び熱反応性の少なくとも一方からなる変性シリコン樹脂であることが好ましい。
変性シリコンは、反応性変性シリコンと非反応性シリコンとに分類できる。熱反応性の変性シリコンとしては、モノアミン変性シリコン、ジアミン変性シリコン、エポキシ変性シリコン、カルビノール変性シリコン、カルボキシ変性シリコン、メルカプト変性シリコン、シラノール変性シリコン、アルコール変性シリコン、ジオール変性シリコンが例示出来る。また、電離放射線反応性の変性シリコンとしては、アクリル変性シリコン、メタクリル変性シリコンが例示できる。また、非反応性変性シリコンであるポリエーテル変性シリコン、アラルキル変性シリコン、長鎖アルキル変性シリコン、高級脂肪酸エステル変性シリコンが例示出来る。またこれらの変性シリコン製造メーカーとしては信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、旭化成ワッカーシリコーン株式会社などが挙げられる。
〔フッ素樹脂〕
フッ素樹脂は最小レベルの表面張力を示すことが広く知られており、耐汚染材料として好適である。第1表面保護層61が含有するフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン―エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられ、これら以外にも多くの誘導体を用いることができる。またこれらのフッ素樹脂のメーカーとしてはダイキン工業株式会社、三井・デュポンフロロケミカル株式会社などが挙げられる。第1表面保護層61が含有するフッ素樹脂の量は、10質量部以上100質量部以下が好ましい。より好ましくは20質量部以上である。ここで、フッ素樹脂自体が硬化型樹脂であっても良い。すなわち、フッ素樹脂の一部が、表面保護層60(第1表面保護層61、第2表面保護層62)の主成分である硬化型樹脂の一部を兼ねていても良い。例えば、第2表面保護層62の樹脂成分全部がフッ素樹脂であっても良い。
このように、本実施形態に係る化粧シート10において、表面保護層60の最表層、すなわち第1表面保護層61に、シリコン系成分又はフッ素系成分のうち少なくともいずれか一方が含まれていてもよい。これにより、化粧シート10の耐汚染性を向上することができる。耐汚染性が向上されると、ウイルスが化粧シート10の表面に長期間存在することを抑制することができ、結果として、抗ウイルス性をさらに向上させることができる。
また、化粧シート10の各層の接着強度を向上するために、透明原反20と表面保護層60との層間に、イソシアネート系硬化剤を使用する2液硬化型ウレタン系接着剤を含む接着層を設けてもよい。
[第2表面保護層]
第2表面保護層62は、表面保護層60を構成する層(第1表面保護層61、第2表面保護層62)のうち、最表層と透明原反20との間に形成された層(内側層)である。本実施形態では、第2表面保護層62は、第1表面保護層61と同様に、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも1種を含んでいる。なお、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂については、第1表面保護層61に含まれる硬化型樹脂と同様であるため説明を省略する。
第2表面保護層62は、第1表面保護層61と同様に抗ウイルス剤及び界面活性剤を含んでいてもよい。このとき、第2表面保護層62に含まれる抗ウイルス剤は、第1表面保護層61に含まれる抗ウイルス剤と同様の材料でもよいし、また第1表面保護層61に含まれる抗ウイルス剤とは異なる材料でもよい。
なお、第1表面保護層61を、第2表面保護層62と比較して艶の高い層とすることで、印刷絵柄層50の絵柄と同調した絵柄で印刷するようにしてもよい。すなわち、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、印刷絵柄層50の絵柄と同調させるようにしてもよい。
また、第1表面保護層61の表面は、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部を形成しても良い。
ここで、エンボス部というと、それなりの高低差のイメージを持つが、第2表面保護層62と印刷絵柄層50の絵柄と同調した第1表面保護層61との高低差は、実際には数μmオーダーの高低差しかなく、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させる、という表現と同様の意味である。
<基材91>
基材91としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。基材91の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。なお基材91は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。基材91を形成することにより、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制可能な化粧材12を提供することができる。
<接着剤層92>
接着剤層92は、化粧シート10のプライマー層30において着色層40とは反対の面側に設けられる基材91との接着に用いられる接着剤との密着性を向上させるために、必要に応じて施されるものである。例えば、基材91が木質系材料で形成されている場合には、接着剤として、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等の接着剤が使用されるため、接着剤層92は、これらの接着剤に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を用いることができる。特に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系のプライマー剤等が好ましい。また、例えば、シリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加すると、巻取保存時のブロッキングの防止や投錨効果による接着力の向上に有効である。
(化粧シート10の製造方法)
化粧シート10は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程から第3の工程を有し、インラインで製造するものである。
ここで、「インライン」は、フィルム同士をラミネートするラミネート工程が無いため、通常、複数の工程となる印刷を、一つのライン、すなわちワンラインで加工できることを意味する。すなわち、印刷から表面保護層60を付与するまでの製造工程を1工程のインラインで行うことができる。
(1)第1の工程
第1の工程は、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いた透明コア層22と、透明コア層22の表裏面側にそれぞれ位置し、熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加した透明スキン層21、23と、を押出し成形した単層フィルムである透明原反20を製造する工程である。
(2)第2の工程
第2の工程は、第1の工程で製造した透明原反20の裏面側に、印刷絵柄層50と、着色層40と、プライマー層30とを順に形成する工程である。
(3)第3の工程
第3の工程は、第2の工程の後、又は第2の工程に先立ち、前記第1の工程で製造した透明原反20の表面側に、表面保護層60を形成する工程である。
上記工程の順番は、第1の工程、第2の工程、第3の工程の順番と、第1の工程、第3の工程、第2の工程の順番との二通りである。
<化粧シート10の主な特徴>
本実施形態に係る化粧シート10の主な特徴は、次の通りである。
(1)本実施形態に係る化粧シート10は、透明オレフィンシートから構成される単層フィルムである透明原反20の裏面側つまり表面保護層60とは逆の面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層50、着色層40、プライマー層30が順に形成され、透明原反20の表面側に、表面保護層60が形成され、透明原反20の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しない化粧シートである。さらに、透明原反20は、透明スキン層21、透明コア層22、透明スキン層23の順に、2種3層の構成となるように、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて押出し成形により製造されたものであり、透明スキン層21、23には、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されている。
そのため、化粧シート10の製造時には、他のシートをラミネートするラミネート工程がないため、印刷から表面保護層60を付与するまでの製造工程を1工程のインラインで行うことができる。
また、本実施形態によれば、必要に応じて、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させることもできる。
さらに、本実施形態によれば、従来の化粧シートが複層であるために、シートを薄膜化するにも成膜上の限界と、シートの硬さとが得られないという問題があったが、本実施形態に係る化粧シート10は、単層であるため、薄膜化が容易であり、更にナノサイズの添加剤を使用することで、薄膜でもシートを硬くすることができる。
そして、本実施形態に係る化粧シート10は、表面保護層60の第1表面保護層61に、抗ウイルス剤を添加し、抗ウイルス剤の添加量は、第1表面保護層61の固形分に対して0.2質量部以上10質量部以下としている。そのため、第1表面保護層61の機械強度に影響を与えず、より高い抗ウイルス性を実現することができ、結果的に、抗ウイルス性に優れ、薄膜でも硬い化粧シートを容易に作製することができる。
ここで、従来、化粧紙や化粧板地等に抗ウイルス性を付与するため、抗ウイルス剤を該当素材中に添加したり、練り込んだりする方法、又は後工程にて塗装する方法等が行われている。また、抗ウイルス性を有する化粧シートも公知のものであり市販されている。
しかしながら、抗ウイルス性を必要とするのは化粧材のごく薄い表面だけでよいが、従来は樹脂に練り込む方法や塗料に練り込む方法が取られており、必ずしも最適な抗ウイルス性塗膜形成法とは言えない。また、抗ウイルス剤をプラスチック成形品等に練り込む場合は、製造工程やコストが増加したり、生産性が低下する等の問題が発生したりし易い。また、成形用樹脂や塗料用樹脂に抗ウイルス剤を練り込む場合、その樹脂の中には樹脂組成物としての必要成分として顔料、染料、硬化剤、触媒等が混合されており、これらの物が抗菌剤に変色、抗菌作用の低下等の悪影響を与える場合があり、各樹脂との適正を個々に検討する必要がある。つまり、従来の樹脂組成物はそのまま使用することは出来ず、基材、用途毎に樹脂組成を検討する必要があり、作業が煩雑となる問題が生じる。また、抗ウイルス剤を成形用樹脂に練り込む場合、大部分の抗ウイルス剤は樹脂に練り込まれて成形品の中に入っていて抗ウイルス作用を示さないため、抗ウイルス剤の使用方法としては経済的に大きな問題となる。
本実施形態に係る化粧シート10によれば、上述のように抗ウイルス性に優れ、薄膜でも硬い化粧シートを容易に作製することができる。
(2)本実施形態に係る化粧シート10は、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーが添加されている。
本実施形態によれば、一層の薄膜化、並びに耐傷付き性能を向上できる。
(3)本実施形態に係る化粧シート10は、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部25が形成されている。
本実施形態によれば、従来の化粧シートが複層であるため、印刷絵柄層50の付与と、ラミネートフィルム表面の表面保護層60との同調表現が困難であるのに対し、インラインで透明オレフィンシートある透明原反20の表裏面側に、絵柄印刷とエンボス部25とを付与することで、容易に同調させることができる。
また、下地が天然木や木目調のシートに、化粧シート10を重ねて貼ることにより、下地意匠を活かしつつ、性能向上やさらなる意匠向上を図ることができる。
(4)本実施形態に係る化粧シート10の抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下である。
この構成によれば、抗ウイルス剤の接触面積が拡大し、また抗ウイルス剤自体の表面積が拡大することにより高い抗ウイルス性を実現することができる。
(5)抗ウイルス剤の平均粒径を、第1表面保護層61の厚さの0.5倍以上2倍以下としたため、抗ウイルス剤と第1表面保護層61との接触面積の拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積拡大により良好な抗ウイルス性を実現できる。
(6)抗ウイルス剤の粒径は、複数のピークを有するため、抗ウイルス剤の充填密度がより向上し、抗ウイルス剤をより多く添加することができ、その結果、抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス自体の表面積も拡大することにより、抗ウイルス性を向上させることができる。
(7)化粧シート10を用いて化粧タックシート11や化粧材12を構成するため、これら化粧タックシート11や化粧材12を、例えば、建築物の内外装や建具、家具等また、床等に適用することによって、耐傷性と共に抗ウイルス性を持たせることができる。
本発明に係る化粧シート10の効果を確認するために行った実施例を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例及び比較例の試験体の作製>
(実施例1)
単層シートを下記の材料と手順で作製した。
透明コア層22として、ポリプロピレン系の透明熱可塑性樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを用い、透明スキン層21及び23として、ポリプロピレン系の透明熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤等を添加したものを用いてナノ化し、例えば、透明スキン層21:透明コア層22:透明スキン層23が、0.5:9:0.5の厚みが比率であり、総厚50μmとなるように押し出し成形を行い透明原反20を作成した。
透明原反20の裏面側、すなわち、透明スキン層21側の面に、グラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷し印刷絵柄層50を付与した後、2液ウレタン系樹脂で着色層40を付与した。
次に、着色層40の透明原反20とは逆側の面にグラビア印刷法により固形分量が1g/m2となるようにウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層30を形成した。
次に、透明原反20の着色層40とは逆側の面に、表面保護層60の第2表面保護層62として、熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製W480)を厚み3μmにて塗工し、さらに第2表面保護層62の上に、第1表面保護層61として、熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製W480)を3μmの厚さで塗工した。このとき、第1表面保護層61の熱硬化性樹脂中に、抗ウイルス剤として、無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で0.2質量%配合した。また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を5μmとした。このとき、抗ウイルス剤の粒径分布の第1ピークを3μmとし、第2のピークを7μmとした。また、第1表面保護層61の厚さD(本実施例では、3μm)に対する抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1.67Dとした。
続いて加熱により熱硬化性樹脂を硬化させ、実施例1の化粧シートを作製した。
(実施例2)
透明原反20の厚みを130μmに変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の化粧シートを作製した。
(実施例3)
抗ウイルス剤の添加量を7質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の化粧シートを作製した。
(実施例4)
実施例1における第2表面保護層62として熱硬化性樹脂(DICグラフィックス製W480)を厚み3μmにて塗工し、第1表面保護層61として紫外線硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製ウレタンアクリレート樹脂)中に平均粒径が5μmの無機材料に、銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で7%配合し、これを6μmで塗工した。これ以外は、実施例3と同様にして実施例4の化粧シートを得た。
(実施例5)
抗ウイルス剤の添加量を10質量%に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例5の化粧シートを作製した。
(実施例6)
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例6の化粧シートを作製した。
(実施例7)
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を10μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例7の化粧シートを作製した。
(実施例8)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例8の化粧シートを作製した。
(実施例9)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを1μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例9の化粧シートを作製した。
(実施例10)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例10の化粧シートを作製した。
(実施例11)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを6μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例11の化粧シートを作製した。
(実施例12)
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例12の化粧シートを作製した。
(実施例13)
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例13の化粧シートを作製した。
(実施例14)
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを10μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例14の化粧シートを作製した。
(実施例15)
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例15の化粧シートを作製した。
(実施例16)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更し、第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例16の化粧シートを作製した。
(実施例17)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを10μmに変更し、第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例17の化粧シートを作製した。
(実施例18)
第1表面保護層の厚さを2μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例18の化粧シートを作製した。
(実施例19)
第1表面保護層の厚さを15μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例19の化粧シートを作製した。
(実施例20)
第1表面保護層の厚さを25μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例20の化粧シートを作製した。
(比較例1)
透明原反として厚さ55μmの顔料配合着色ポリエチレンシート(リケンテクノス株式会社製)を用い、透明原反の一方の面にグラビア印刷によってウレタンインキ(東洋インキ製造株式会社製ラミスター)を用いて絵柄印刷層として形成した。
次に、絵柄印刷層上に透明PP層としてホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製)(以下、当名PP層ともいう。)、70μmを押出ラミネートした。なお、透明原反及び透明PP層は、ナノ化しなかった。
続いて、第1実施例と同様に、表面保護層60の第2表面保護層として、熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製W480)を厚み3μmにて塗工し、さらに第2表面保護層の上に、第1表面保護層として、熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製W480)を3μmの厚さで塗工した。このとき、第1表面保護層の熱硬化性樹脂中に、抗ウイルス剤として、無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で0.2質量%配合した。また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を5μmとした。このとき、抗ウイルス剤の粒径分布の第1ピークを3μmとし、第2のピークを7μmとした。また、第1表面保護層の厚さD(本実施例では、3μm)に対する抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1.67Dとした。
続いて加熱により熱硬化性樹脂を硬化させ、比較例1の化粧シートを作製した。
(比較例2)
第1表面保護層において、抗ウイルス剤の添加を省略した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例2の化粧シートを作製した。
(比較例3)
抗ウイルス剤の添加量を0.1質量%に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例3の化粧シートを作製した。
(比較例4)
抗ウイルス剤の添加量を14質量%に変更した。それ以外は比較例1と同様の方法で、比較例4の化粧シートを作製した。
(比較例5)
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を0.5μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例5の化粧シートを作製した。
(比較例6)
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を13μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例6の化粧シートを作製した。
<評価方法および評価基準>
<性能評価方法>
以上のようにして得た実施例1〜20、比較例1〜6の試験体としての化粧シートに対し、以下の評価を行なった。
〔スクラッチ試験〕
スクラッチ試験は、試験体としての化粧シートのそれぞれに対して、コインスクラッチ試験を行い、化粧シートの表面に連続的な傷跡が生じなかった際の荷重を測定した。
なお、スクラッチ試験では、10円硬貨を化粧シートの表面に当てて、荷重1Kgから試験を開始し、1kgずつ徐々に荷重を増加し、4kgまで試験を行った。
(評価基準)
◎(合格):荷重が「2kg」以上
○(合格):荷重が「1kg」以上
×(不合格):荷重が「1kg」より少ない
スクラッチ試験の評価結果を表1に示す。
〔引っ掻き硬度試験〕
引っ掻き硬度試験は、試験体としての化粧シートのそれぞれに対して、JIS K5600−5−4:1999に規定する引っ掻き硬度(鉛筆法)試験により、化粧シートの表面に傷跡を生じなかった最も固い鉛筆の硬度(鉛筆硬度)を測定した。
(評価基準)
◎(合格):鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「HB」以上
○(合格):鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「2B」以上
×(不合格):鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「2B」よりも小さい
スクラッチ試験の評価結果を表1に示す。
〔抗ウイルス性能〕
・抗ウイルス試験方法
ISO21702に準じて実施した。試験体としての化粧シートそれぞれについて50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、エンペローブウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
・ウイルス感染価の測定(プラーク法)
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO2・37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2〜3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
・ウイルス感染価の算出
以下の式に伴い、試料1cm2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm2当たりのウイルス感染価(PFU/cm2)
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
・抗ウイルス活性値の算出
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)−log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
・評価基準
◎:抗ウイルス活性値3log10以上である場合
○:抗ウイルス活性値2log10以上である場合
×:抗ウイルス活性値3log10以上である場合
抗ウイルス活性値の評価結果を、表1に示す。
〔化粧シートVカット加工適正〕
化粧シートを建具基材である厚み3mmのMDF(Medium density fiberboard)(広葉樹タイプ)の表面に、接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業株式会社製「リカボンド」(重量比BA−10L/BA−11B=100:2.5))をウェット状態で100g/m2に塗工した後貼り合わせ、24時間養生することで建具化粧材とした。
これらの建具化粧材に対してVカット加工を実施し、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した。Vカット加工としては、建具化粧材において化粧シートが張り付けられていない面側から建具基材と化粧シートとを貼り合わせている境界まで、化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を入れた。次に、化粧シートを貼付した面が山折りとなるようにして、建具基材を当該V型の溝に沿って90度まで折り曲げた。
・評価基準
〇:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が無し。
×:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化発生。
Vカット加工適正の評価結果を表1に示す。
<評価結果>
表1中に示されるように、ナノ化処理が行われ、ナノサイズの添加剤として分散剤等が添加された透明原反20を有する実施例1〜実施例20、比較例2、3、5、6の場合には、ナノ化処理が行われていない比較例1、4に比較して、スクラッチ試験及び引っ掻き硬度試験において優れていることがわかる。また、実施例1、2から、ナノ化処理が行われ、透明スキン層21と透明コア層22と透明スキン層23との厚み比率が同一である場合、透明原反20の厚みが厚い方が、スクラッチ試験及び引っ掻き硬度試験において優れていることがわかる。
また、実施例1〜実施例20のように、抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合には、比較例3のように抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%より小さい場合、また、比較例4のように抗ウイルス剤の添加量が10より大きい場合に比較して、抗ウイルス性が高いことがわかる。
また、実施例1〜実施例20のように、抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上10μm以下である場合には、比較例5、6のように、抗ウイルス剤の平均粒径が1μmより小さい場合、また、10μmよりも大きい場合に比較して、抗ウイルス性が高いことがわかる。
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。