JP7188508B2 - 化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法 - Google Patents
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Description
そこに使用されている化粧シートは、燃焼時のガスの問題から、近年では、オレフィン系材料のものが主に使用されている(例えば、特許文献1~特許文献3参照。)。
表面の摩耗から絵柄を守るために、化粧シートを複層にし、着色オレフィンシート上に絵柄を印刷し、その上に透明のオレフィンシートを貼り合わせたものが広く使われている。
また、従来の化粧シートは、複層であるがゆえに、シートを薄膜化するにも成膜上の限界と、シートの硬さとが得られないという問題がある。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状などが下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本発明の一実施形態に係る化粧シート10は、図示しないが、例えば室内に使用され、建具(室内ドア、玄関収納)・造作材(見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠)などの表面に貼られ、家や部屋毎に建具・造作材の柄を合わせたりして使用される。
図1に示すように、化粧シート10は、次の各層を含み、各層が(1)から順に積層されている。化粧シート10は、透明原反20の表面側及び裏面側のいずれにも他のフィルムからなるラミネート層を有しない化粧シートである。
なお、次の(1)~(5)については後述する。
(1)プライマー層30
(2)着色層40
(3)印刷絵柄層50
(4)透明原反20
(5)表面保護層60
また、化粧シート10は、図4に示すように、上記「(1)プライマー層30」を省略しても良い。すなわち、上記「(2)着色層40」にプライマー層としての機能があれば、プライマー層30を省略可能である。
さらに、図4に示すように、上記「(2)着色層40」を省略しても良い。すなわち、着色層40も必要がない場合、例えば隠蔽性を付与する必要が無い場合には、着色層40を省略可能である。
透明原反20は、化粧シート10の支持体となるものであって、透明オレフィンシートからなる。
透明原反20は、図1に示すように、印刷絵柄層50側から順に、透明スキン層21、透明のポリプロピレン製の透明コア層22、透明スキン層23の順に2種3層が積層されてなり、押し出し成形により形成される。
透明原反20は、図面上、透明コア層22、透明スキン層21、23とが別層を形成する様に表現しているが、実際は透明コア層22、透明スキン層21、23は連続的であり、界面は存在しない単層シートである。
なお、透明原反20を、透明オレフィンシートから構成される単層フィルム(透明スキン層21/透明コア層22/透明スキン層23)から構成したが、これに限定されず、図示しないが、例えば透明オレフィンシートから構成される単層フィルム(透明層)から構成しても良い。このとき、単層フィルム(透明層)が透明原反20に相当する。
なお、透明原反20に、抗ウイルス剤を添加してもよい。抗ウイルス剤としては、例えば、銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)を使用することができる。
透明原反20に抗ウイルス剤を添加することに限定されず、透明原反20の表面保護層60側の面のみに抗ウイルス剤を塗布しても良い。
透明コア層22を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂があげられる。例えば透明ポリプロピレン樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを使用する。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
透明コア層22には、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。
透明スキン層21及び23は、ポリプロピレン系の透明熱可塑性樹脂に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して形成している。また、透明スキン層21、23には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラー(以下、ナノサイズの造核剤ともいう。)が添加されている。
透明スキン層21、23を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、透明コア層22と同様の樹脂材料を用いることができる。
また、透明スキン層21、23を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていても良い。透明スキン層21、23は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート10の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。
このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21、23の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、透明スキン層21を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料をいう。
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。
また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
つぎに、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。
この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
造核剤ベシクルを構成する外膜は、例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしても良い。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしても良い。
プライマー層30は、図1に示すように、透明原反20を挟んで、表面保護層60とは逆側に位置し、主として接着性改善を目的で設けられるものである。
なお、プライマー層30の機能には、接着性改善のほか、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。
プライマー層30は、例えばグラビア印刷法により固形分量が1g/m2となるようにウレタン系樹脂を塗工して形成している。
着色層40は、図1に示すように、プライマー層30の表面に位置し、印刷方法を用いて形成され、主として隠蔽性を付与する目的で設けられるものである。
着色層40は、例えばグラビア印刷法により2液ウレタン系樹脂で印刷したものである。
印刷絵柄層50は、図1に示すように、着色層40の表面に位置し、印刷方法を用いて形成され、化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷絵柄層50は、例えばグラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷したものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法を例示したが、これに限定されず、例えばオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用可能である。
印刷絵柄層50の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
また、印刷絵柄層50は単色であってもよい。
例えば、ドア枠や窓枠は家自体に組み込む必要があるため、施工の早い段階から取り付けることになるが、ドア自体は後で取り付けたり、取り外したりすることが可能である。
本実施形態によれば、枠材を単色にしておくと、中のドア柄が何であっても事前に対応することが可能となるため、ドア柄を後で決めることが可能になったり、老朽化してドアを変更する際にも枠材から壊して取り変えなくてもドアだけの変更で対応することが可能だったりもする。もちろん、ドア自体も単色にしておくこともできる。
また、本実施形態によれば、白で仕上げた後に木目調にしたくなった場合に、本実施形態に係る化粧シート10は、薄くても硬いことから、後で木目調に変えることも可能である。
印刷方法に用いられる印刷インキとしては、例えば塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)を用いている。
なお、印刷インキとしては、ウレタン系樹脂を例示したが、これに限定されず、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤等でも良いし、又、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
表面保護層60は、図1に示すように、透明原反20の印刷絵柄層50とは逆側の面側に位置し、印刷方法を用いて形成され、耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設けられるものである。
表面保護層60は単層でも良く、また複数の層を重ねて表面保護層60としても良い。図1に示すように、本実施形態に係る化粧シート10では、表面保護層60として、第1表面保護層61及び第2表面保護層62の2層が設けられている。表面保護層60が一層から構成される構造(単層構造)の場合、第1表面保護層61が表面保護層60となる。
第1表面保護層61及び第2表面保護層62を含む表面保護層60は、それぞれの層を、硬化型樹脂の種類に応じて、既知のコーティング装置、熱乾燥装置及び紫外線照射装置を用いて塗布及び塗膜の硬化を行うことで形成する。
第1表面保護層61は、表面保護層60を構成する層(第1表面保護層61、第2表面保護層62)のうち、最表面(最外面)に位置する層(最表層)である。本実施形態では、第1表面保護層61は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも1種を含んでいる。なお、電子線硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂とをまとめて電離放射線硬化型樹脂と記載する。第1表面保護層61は、一般的に反応性樹脂を塗工することにより塗膜形成をし、その後加熱や電離放射線照射により塗膜を硬化させる方法で形成することができる。第1表面保護層61においては、硬化方法の違いによる特性差もある。例えば、一般的に電離放射線硬化型樹脂で形成された第1表面保護層61は、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷性に優れる傾向にある。一方で、熱硬化性樹脂で形成された第1表面保護層61は、比較的架橋度が低いために硬度が低く、折り曲げや基材への追従などの柔軟性に優れる傾向にある。
例えば、化粧シート10を部材として複雑な形状が多い建具に用いる場合は、柔軟性(例えば加工適正)が要求されることが多い。このため、例えば建具に用いる化粧シート10において、第1表面保護層61の主成分には、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、化粧シート10において柔軟性よりも耐傷性が求められる場合には、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
例えば、化粧シート10を建具に用いる場合、第1表面保護層61の主成分となる熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物は、熱硬化性樹脂を最も多く含有することが好ましい。具体的には、当該混合物において熱硬化性樹脂が50重量%を超えていればよく、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
このように、表面保護層60のうちの最表層に当たる第1表面保護層61の主成分が、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物とすることで、耐傷性を満足させると同時に曲げ加工においては表面保護層60の白化や割れが発生し難くなる。
ここで第1表面保護層61に用いる電離放射線硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂を含む)としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。電離放射線硬化型樹脂における硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250~100000程度が好ましい。
また、上述のプレポリマーとして、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常、190nm以上380nm 以下の範囲が好ましい。
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100keV以上1000keV以下の範囲のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましく、100keV以上300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものがより好ましい。
ここで第1表面保護層61に用いる熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂が挙げられる。2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。また熱硬化性樹脂としてはこれらに限られず、1液反応硬化型のポリウレタン系樹脂や、1液又は2液反応硬化型のエポキシ系樹脂などを用いてもよい。
また、第1表面保護層61の層厚は、3μm以上15μm以下の範囲内が望ましい。第1表面保護層61の厚さが3μm以上であれば、耐傷性、耐摩耗性、耐候性等、各種耐性が向上する。第1表面保護層61の厚さが15μm以下であれば、必要以上に多くの量の樹脂材料を使用する必要がなくコストを低減することができる。
第1表面保護層61は、抗ウイルス性を向上させる抗ウイルス剤を含んでいる。抗ウイルス剤は、銀系材料であることが好ましい。具体的には、抗ウイルス剤は、無機系であり、その活性成分として銀を使用している。
抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる。また抗ウイルス剤としてジンクピリジオン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、10、10-オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン-2-チオール-オキシド等が使用できるが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。
第1表面保護層61における抗ウイルス剤の添加量は、第1表面保護層61の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下の範囲内である。抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合、抗ウイルス剤が効果的に作用し、抗ウイルス性が向上する。抗ウイルス剤の添加量が10質量%以下である場合、耐傷性が向上し、10質量%よりも大きい場合には、第1表面保護層61の機械強度への影響が大きい。
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、第1表面保護層61と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、耐傷性が向上する。
また、本実施形態に係る化粧シート10において、例えば耐汚染性向上策として、化粧シート10の最表面(第1表面保護層61)にシリコン系成分(例えばシリコン樹脂)やフッ素系成分(例えばフッ素樹脂)を設定してもよい。
シリコン樹脂を用いる場合は、周囲との密着性や相溶性の問題から変性シリコンを用いることが好ましい。第1表面保護層61を構成する硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、電離放射線反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また第1表面保護層61を構成する硬化型樹脂が熱硬化性樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、熱反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また、第1表面保護層61を構成する硬化型樹脂が電離放射線硬化型樹脂及び熱硬化性樹脂の混合から形成される場合には、上記変性シリコンは、電離放射線反応性及び熱反応性の少なくとも一方からなる変性シリコン樹脂であることが好ましい。
フッ素樹脂は最小レベルの表面張力を示すことが広く知られており、耐汚染材料として好適である。第1表面保護層61が含有するフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン―エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられ、これら以外にも多くの誘導体を用いることができる。またこれらのフッ素樹脂のメーカーとしてはダイキン工業株式会社、三井・デュポンフロロケミカル株式会社などが挙げられる。第1表面保護層61が含有するフッ素樹脂の量は、10質量部以上100質量部以下が好ましい。より好ましくは20質量部以上である。ここで、フッ素樹脂自体が硬化型樹脂であっても良い。すなわち、フッ素樹脂の一部が、表面保護層60(第1表面保護層61、第2表面保護層62)の主成分である硬化型樹脂の一部を兼ねていても良い。例えば、第2表面保護層62の樹脂成分全部がフッ素樹脂であっても良い。
また、化粧シート10の各層の接着強度を向上するために、透明原反20と表面保護層60との層間に、イソシアネート系硬化剤を使用する2液硬化型ウレタン系接着剤を含む接着層を設けてもよい。
第2表面保護層62は、表面保護層60を構成する層(第1表面保護層61、第2表面保護層62)のうち、最表層と透明原反20との間に形成された層(内側層)である。本実施形態では、第2表面保護層62は、第1表面保護層61と同様に、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも1種を含んでいる。なお、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂については、第1表面保護層61に含まれる硬化型樹脂と同様であるため説明を省略する。
なお、第1表面保護層61を、第2表面保護層62と比較して艶の高い層とすることで、印刷絵柄層50の絵柄と同調した絵柄で印刷するようにしてもよい。すなわち、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、印刷絵柄層50の絵柄と同調させるようにしてもよい。
ここで、エンボス部というと、それなりの高低差のイメージを持つが、第2表面保護層62と印刷絵柄層50の絵柄と同調した第1表面保護層61との高低差は、実際には数μmオーダーの高低差しかなく、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させる、という表現と同様の意味である。
基材91としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。基材91の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。なお基材91は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。基材91を形成することにより、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制可能な化粧材12を提供することができる。
接着剤層92は、化粧シート10のプライマー層30において着色層40とは反対の面側に設けられる基材91との接着に用いられる接着剤との密着性を向上させるために、必要に応じて施されるものである。例えば、基材91が木質系材料で形成されている場合には、接着剤として、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等の接着剤が使用されるため、接着剤層92は、これらの接着剤に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を用いることができる。特に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系のプライマー剤等が好ましい。また、例えば、シリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加すると、巻取保存時のブロッキングの防止や投錨効果による接着力の向上に有効である。
化粧シート10は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程から第3の工程を有し、インラインで製造するものである。
ここで、「インライン」は、フィルム同士をラミネートするラミネート工程が無いため、通常、複数の工程となる印刷を、一つのライン、すなわちワンラインで加工できることを意味する。すなわち、印刷から表面保護層60を付与するまでの製造工程を1工程のインラインで行うことができる。
第1の工程は、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いた透明コア層22と、透明コア層22の表裏面側にそれぞれ位置し、熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加した透明スキン層21、23と、を押出し成形した単層フィルムである透明原反20を製造する工程である。
(2)第2の工程
第2の工程は、第1の工程で製造した透明原反20の裏面側に、印刷絵柄層50と、着色層40と、プライマー層30とを順に形成する工程である。
(3)第3の工程
第3の工程は、第2の工程の後、又は第2の工程に先立ち、前記第1の工程で製造した透明原反20の表面側に、表面保護層60を形成する工程である。
上記工程の順番は、第1の工程、第2の工程、第3の工程の順番と、第1の工程、第3の工程、第2の工程の順番との二通りである。
本実施形態に係る化粧シート10の主な特徴は、次の通りである。
(1)本実施形態に係る化粧シート10は、透明オレフィンシートから構成される単層フィルムである透明原反20の裏面側つまり表面保護層60とは逆の面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層50、着色層40、プライマー層30が順に形成され、透明原反20の表面側に、表面保護層60が形成され、透明原反20の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しない化粧シートである。さらに、透明原反20は、透明スキン層21、透明コア層22、透明スキン層23の順に、2種3層の構成となるように、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて押出し成形により製造されたものであり、透明スキン層21、23には、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されている。
また、本実施形態によれば、必要に応じて、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させることもできる。
さらに、本実施形態によれば、従来の化粧シートが複層であるために、シートを薄膜化するにも成膜上の限界と、シートの硬さとが得られないという問題があったが、本実施形態に係る化粧シート10は、単層であるため、薄膜化が容易であり、更にナノサイズの添加剤を使用することで、薄膜でもシートを硬くすることができる。
ここで、従来、化粧紙や化粧板地等に抗ウイルス性を付与するため、抗ウイルス剤を該当素材中に添加したり、練り込んだりする方法、又は後工程にて塗装する方法等が行われている。また、抗ウイルス性を有する化粧シートも公知のものであり市販されている。
本実施形態に係る化粧シート10によれば、上述のように抗ウイルス性に優れ、薄膜でも硬い化粧シートを容易に作製することができる。
本実施形態によれば、一層の薄膜化、並びに耐傷付き性能を向上できる。
(3)本実施形態に係る化粧シート10は、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部25が形成されている。
本実施形態によれば、従来の化粧シートが複層であるため、印刷絵柄層50の付与と、ラミネートフィルム表面の表面保護層60との同調表現が困難であるのに対し、インラインで透明オレフィンシートある透明原反20の表裏面側に、絵柄印刷とエンボス部25とを付与することで、容易に同調させることができる。
また、下地が天然木や木目調のシートに、化粧シート10を重ねて貼ることにより、下地意匠を活かしつつ、性能向上やさらなる意匠向上を図ることができる。
この構成によれば、抗ウイルス剤の接触面積が拡大し、また抗ウイルス剤自体の表面積が拡大することにより高い抗ウイルス性を実現することができる。
(5)抗ウイルス剤の平均粒径を、第1表面保護層61の厚さの0.5倍以上2倍以下としたため、抗ウイルス剤と第1表面保護層61との接触面積の拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積拡大により良好な抗ウイルス性を実現できる。
(7)化粧シート10を用いて化粧タックシート11や化粧材12を構成するため、これら化粧タックシート11や化粧材12を、例えば、建築物の内外装や建具、家具等また、床等に適用することによって、耐傷性と共に抗ウイルス性を持たせることができる。
(実施例1)
単層シートを下記の材料と手順で作製した。
透明コア層22として、ポリプロピレン系の透明熱可塑性樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを用い、透明スキン層21及び23として、ポリプロピレン系の透明熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤等を添加したものを用いてナノ化し、例えば、透明スキン層21:透明コア層22:透明スキン層23が、0.5:9:0.5の厚みが比率であり、総厚50μmとなるように押し出し成形を行い透明原反20を作成した。
透明原反20の裏面側、すなわち、透明スキン層21側の面に、グラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷し印刷絵柄層50を付与した後、2液ウレタン系樹脂で着色層40を付与した。
次に、透明原反20の着色層40とは逆側の面に、表面保護層60の第2表面保護層62として、熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製W480)を厚み3μmにて塗工し、さらに第2表面保護層62の上に、第1表面保護層61として、熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製W480)を3μmの厚さで塗工した。このとき、第1表面保護層61の熱硬化性樹脂中に、抗ウイルス剤として、無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)を、固形分比率で0.2質量%配合した。また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を5μmとした。このとき、抗ウイルス剤の粒径分布の第1ピークを3μmとし、第2のピークを7μmとした。また、第1表面保護層61の厚さD(本実施例では、3μm)に対する抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1.67Dとした。
続いて加熱により熱硬化性樹脂を硬化させ、実施例1の化粧シートを作製した。
透明原反20の厚みを130μmに変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の化粧シートを作製した。
(実施例3)
抗ウイルス剤の添加量を7質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の化粧シートを作製した。
(実施例4)
実施例1における第2表面保護層62として熱硬化性樹脂(DICグラフィックス製W480)を厚み3μmにて塗工し、第1表面保護層61として紫外線硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製ウレタンアクリレート樹脂)中に平均粒径が5μmの無機材料に、銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)を、固形分比率で7%配合し、これを6μmで塗工した。これ以外は、実施例3と同様にして実施例4の化粧シートを得た。
抗ウイルス剤の添加量を10質量%に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例5の化粧シートを作製した。
(実施例6)
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例6の化粧シートを作製した。
(実施例7)
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を10μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例7の化粧シートを作製した。
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例8の化粧シートを作製した。
(実施例9)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを1μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例9の化粧シートを作製した。
(実施例10)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例10の化粧シートを作製した。
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを6μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例11の化粧シートを作製した。
(実施例12)
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例12の化粧シートを作製した。
(実施例13)
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例13の化粧シートを作製した。
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを10μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例14の化粧シートを作製した。
(実施例15)
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例15の化粧シートを作製した。
(実施例16)
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更し、第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例16の化粧シートを作製した。
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを10μmに変更し、第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例17の化粧シートを作製した。
(実施例18)
第1表面保護層の厚さを2μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例18の化粧シートを作製した。
(実施例19)
第1表面保護層の厚さを15μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例19の化粧シートを作製した。
(実施例20)
第1表面保護層の厚さを25μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例20の化粧シートを作製した。
透明原反として厚さ55μmの顔料配合着色ポリエチレンシート(リケンテクノス株式会社製)を用い、透明原反の一方の面にグラビア印刷によってウレタンインキ(東洋インキ製造株式会社製ラミスター)を用いて絵柄印刷層として形成した。
次に、絵柄印刷層上に透明PP層としてホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製)(以下、当名PP層ともいう。)、70μmを押出ラミネートした。なお、透明原反及び透明PP層は、ナノ化しなかった。
続いて加熱により熱硬化性樹脂を硬化させ、比較例1の化粧シートを作製した。
第1表面保護層において、抗ウイルス剤の添加を省略した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例2の化粧シートを作製した。
(比較例3)
抗ウイルス剤の添加量を0.1質量%に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例3の化粧シートを作製した。
(比較例4)
抗ウイルス剤の添加量を14質量%に変更した。それ以外は比較例1と同様の方法で、比較例4の化粧シートを作製した。
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を0.5μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例5の化粧シートを作製した。
(比較例6)
抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を13μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例6の化粧シートを作製した。
<性能評価方法>
以上のようにして得た実施例1~20、比較例1~6の試験体としての化粧シートに対し、以下の評価を行なった。
スクラッチ試験は、試験体としての化粧シートのそれぞれに対して、コインスクラッチ試験を行い、化粧シートの表面に連続的な傷跡が生じなかった際の荷重を測定した。
なお、スクラッチ試験では、10円硬貨を化粧シートの表面に当てて、荷重1Kgから試験を開始し、1kgずつ徐々に荷重を増加し、4kgまで試験を行った。
(評価基準)
◎(合格):荷重が「2kg」以上
○(合格):荷重が「1kg」以上
×(不合格):荷重が「1kg」より少ない
スクラッチ試験の評価結果を表1に示す。
引っ掻き硬度試験は、試験体としての化粧シートのそれぞれに対して、JIS K5600-5-4:1999に規定する引っ掻き硬度(鉛筆法)試験により、化粧シートの表面に傷跡を生じなかった最も固い鉛筆の硬度(鉛筆硬度)を測定した。
(評価基準)
◎(合格):鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「HB」以上
○(合格):鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「2B」以上
×(不合格):鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「2B」よりも小さい
スクラッチ試験の評価結果を表1に示す。
・抗ウイルス試験方法
ISO21702に準じて実施した。試験体としての化粧シートそれぞれについて50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、エンペローブウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO2・37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2~3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
・ウイルス感染価の算出
以下の式に伴い、試料1cm2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm2当たりのウイルス感染価(PFU/cm2)
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)-log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
・評価基準
◎:抗ウイルス活性値3log10以上である場合
○:抗ウイルス活性値2log10以上である場合
×:抗ウイルス活性値3log10以上である場合
抗ウイルス活性値の評価結果を、表1に示す。
化粧シートを建具基材である厚み3mmのMDF(Medium density fiberboard)(広葉樹タイプ)の表面に、接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業株式会社製「リカボンド」(重量比BA-10L/BA-11B=100:2.5))をウェット状態で100g/m2に塗工した後貼り合わせ、24時間養生することで建具化粧材とした。
これらの建具化粧材に対してVカット加工を実施し、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した。Vカット加工としては、建具化粧材において化粧シートが張り付けられていない面側から建具基材と化粧シートとを貼り合わせている境界まで、化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を入れた。次に、化粧シートを貼付した面が山折りとなるようにして、建具基材を当該V型の溝に沿って90度まで折り曲げた。
〇:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が無し。
×:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化発生。
Vカット加工適正の評価結果を表1に示す。
表1中に示されるように、ナノ化処理が行われ、ナノサイズの添加剤として分散剤等が添加された透明原反20を有する実施例1~実施例20、比較例2、3、5、6の場合には、ナノ化処理が行われていない比較例1、4に比較して、スクラッチ試験及び引っ掻き硬度試験において優れていることがわかる。また、実施例1、2から、ナノ化処理が行われ、透明スキン層21と透明コア層22と透明スキン層23との厚み比率が同一である場合、透明原反20の厚みが厚い方が、スクラッチ試験及び引っ掻き硬度試験において優れていることがわかる。
また、実施例1~実施例20のように、抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上10μm以下である場合には、比較例5、6のように、抗ウイルス剤の平均粒径が1μmより小さい場合、また、10μmよりも大きい場合に比較して、抗ウイルス性が高いことがわかる。
11 化粧タックシート
12 化粧材
20 透明原反
21 透明スキン層
22 透明コア層
23 透明スキン層
25 エンボス部
30 プライマー層
40 着色層
50 印刷絵柄層
60 表面保護層
70 粘着剤層
80 剥離紙
92 接着剤層
91 基材
Claims (12)
- 透明オレフィンシートから構成される2種3層のフィルムである透明原反の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層が形成され、表面側に、表面保護層が形成され、前記透明原反の表面側及び裏面側のいずれにもラミネート層を有しない化粧シートであって、
前記透明原反は、透明スキン層、透明コア層、透明スキン層の順に、2種3層の構成となるように、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて押出し成形により製造された単層シートからなり、前記透明スキン層には、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されており、
前記表面保護層は、無機系材料に銀イオンを担持させた銀系無機添加剤である抗ウイルス剤と、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうちの少なくとも一種とを含み、
前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下であり、
前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり、前記抗ウイルス剤の粒径のピークは、複数存在し、
前記表面保護層は、さらに界面活性剤が添加され、
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の少なくとも一種を含むことを特徴とする化粧シート。 - 前記抗ウイルス剤の粒径のピークは、1μm以上5μm以下の範囲である第1ピークと、5μm以上10μm以下の範囲である第2ピークとを含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
- 前記抗ウイルス剤は、銀系材料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。
- 前記抗ウイルス剤の平均粒径は、前記表面保護層の厚さの0.5倍以上2倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の化粧シート。
- 前記抗ウイルス剤は、無機材料により担持されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の化粧シート。
- 前記表面保護層は、シリコン樹脂又はフッ素樹脂のうちの少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の化粧シート。
- 前記表面保護層の表面側には、前記印刷絵柄層と同調させたエンボス部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の化粧シート。
- 前記透明スキン層には、無機フィラーが添加されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の化粧シート。
- 前記印刷絵柄層は、単色であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の化粧シート。
- 前記透明原反の裏面側に、前記印刷絵柄層と、着色層と、プライマー層とが順に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の化粧シート。
- 請求項1から請求項10の何れか一項に記載の化粧シートと、
当該化粧シートの前記表面保護層とは逆側の面に貼り合わされた基材とを備えることを特徴とする化粧材。 - ポリプロピレン系の透明熱可塑性樹脂を用いた透明コア層と、前記透明コア層の表裏面側それぞれに位置し、前記透明熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加した透明スキン層と、を押出し成形した2種3層の構成のフィルムである透明原反を製造する第1の工程と、
前記第1の工程で製造した前記透明原反の裏面側に、印刷絵柄層を形成する第2の工程と、
前記第2の工程の後、又は前記第2の工程に先立ち、前記透明原反の表面側に、無機系材料に銀イオンを担持させた銀系無機添加剤である抗ウイルス剤と、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうちの少なくとも一種とを含み、さらに界面活性剤が添加された表面保護層を形成する第3の工程とを有し、
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の少なくとも一種を含み、
前記ウイルス剤の粒径のピークは、複数存在し、
インラインで製造することを特徴とする化粧シートの製造方法。
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