JP2023168957A - 化粧シート及び化粧板 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シート及び化粧板を提供する。【解決手段】化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層され、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボスが形成されており、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内であり、ポリエステル系樹脂層4は、2軸延伸されており、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であり、ポリエステル系樹脂層4の厚さと透明熱可塑性樹脂層6の厚さとの合計値は、150μm以上700μm以下の範囲内であり、表面保護層7は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含む。【選択図】図1

Description

本開示は、化粧シート及び化粧板に関する。
従来、ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとしてオレフィン系樹脂を使用した化粧シートが多く提案されているが、耐擦傷性が悪く、従来のポリ塩化ビニルシートに劣っているものであった(例えば、特許文献1参照)。
特開2014-188941号公報
近年、抗ウイルス性能の需要が高まり、抗ウイルス製品の開発が急務となっている。しかしながら、化粧シートが摩耗したり傷ついたりすることにより、最表面がすり減り、抗ウイルス性が低下するという課題があった。特に床用化粧シートにおいて、靴やヒールなどを想定した土足用途の床材として使用する場合は、耐傷性能等が劣り、床用化粧材表面に傷がつきやすく、抗ウイルス剤を添加した最表面のすり減りが目立つという問題点があった。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シート及び化粧板を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧シートは、熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層は、2軸延伸されており、前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚さと前記透明熱可塑性樹脂層の厚さとの合計値は、150μm以上700μm以下の範囲内であり、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含むことを特徴とする。
上記課題を解決するために、本開示の他の一態様に係る化粧板は、化粧材用基板と、前記化粧材用基板に張り合わされた前記化粧シートと、を備えることを特徴とする。
本開示の態様によれば、耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シート及び化粧板を提供することができる。
本開示の第一実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第一実施形態の第一変形例に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第一実施形態の第二変形例に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第二実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第二実施形態の第一変形例に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第二実施形態の第二変形例に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第三実施形態に係る化粧板の一構成例を示す断面図である。
図面を参照して、本開示の実施形態を以下において説明する。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。
さらに、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
(化粧シート10の構成)
本実施形態の化粧シート10の構造の例を図1及び図2に示す。化粧シート10は、木質系基材、無機質系基材、合成樹脂基材、金属系基材等々の基材へ貼り合わせるオレフィン系化粧シートまたはポリエステル系化粧シートであり、特に、耐傷付き性や耐摩耗性が求められる部分に使用される化粧シートである。以下、化粧シート10の構成について、具体的に説明する。
化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボス9が形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内である。
またポリエステル系樹脂層4は、2軸延伸されており、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内である。また、ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、150μm以上700μm以下の範囲内である。
また、表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を含んでいる。
上述の構成を有することにより、化粧シート10は優れた耐傷性を得ることができ、さらに耐汚染性、耐摩耗性にも優れている。
本実施形態に係る化粧シート10は、土足用途の床材として使用することができる。
従来、木質系基材からなる板張り用の床用化粧材としては、合板に突き板を貼り、木工機械にて溝加工して、溝部を着色した後、紫外線硬化型塗料を塗布して硬化させたものが知られている。しかしながら、突き板が天然木のため、色にバラツキを生じ、壁や天井や家具等と色調を調和することが難しかった。
またその他にも、木質系基材の表面に凹状溝を設け、表面に導管着色用合成樹脂塗料を塗布し、凹状溝以外の塗料を除去した後、木目柄の導管凹部を形成し、凹状溝以外の木質系基材表面に透明合成樹脂塗料を塗布する方法も知られている。
またさらに、木質系基材上に、着色熱可塑性樹脂層,絵柄模様層,透明熱可塑性樹脂層をこの順に設けた熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂)による化粧シートを積層した床用化粧材も知られている。
これらの従来の床用化粧材は、主に居室用に使用され、素足や靴下やスリッパ等での歩行を想定したものである。そのため、上記床用化粧材を、靴やヒール等での歩行を想定した土足用として使用すると、土足用床材として必要な耐傷性が不十分であり、床用化粧材が損傷し易かった。特に、化粧材の表面材である化粧シートに傷がつきやすく、絵柄のすり減りが目立つ等の問題があった。
本実施形態に係る化粧シート10は、上述の構成を有することにより耐傷性を向上することができ、さらに耐摩耗性にも優れている。
また、本実施形態に係る化粧シート10において、表面保護層7は、電離放射線硬化型樹脂に抗ウイルス剤を添加して形成される。すなわち、表面保護層7は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含んでいる。これにより、化粧シート10には抗ウイルス性が付与される。
したがって、本実施形態に係る化粧シート10は、耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シートである。
以下、上記各層の詳細について説明する。
〔熱可塑性樹脂基材シート1〕
本実施形態の熱可塑性樹脂基材シート1としては、塩化ビニル樹脂以外の種々材質が可能であるが、例えば、無公害性、価格、性能、着色の容易さ等の点から考慮すると、充填剤と着色顔料とを添加したポリオレフィン系材料(ポリオレフィン系樹脂)が好適に使用できる。つまり、熱可塑性樹脂基材シート1としては、着色されたポリオレフィン系樹脂を主剤とする着色熱可塑性樹脂基材シートを用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂基材シート1に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリプテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、共重合ポリエステル樹脂(代表的には1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である通称PET-G)等のポリエステル系樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂や、6-ナイロン、6,6ナイロン、6,10ナイロン、12ナイロン等のポリアミド系樹脂や、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂や、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含塩素系樹脂や、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、またはこれらから選ばれる2種または3種以上の共重合体や混合物を用いることができる。
熱可塑性樹脂基材シート1は、上記の樹脂成分に、着色顔料、充填剤、安定剤等を添加して分散均一化し、シート状に成形したものであってもよい。
熱可塑性樹脂基材シート1は、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。熱可塑性樹脂基材シート1の厚さが上記数値範囲内であれば、床材性能として必要な耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性をそれぞれ十分に備えた化粧シートとなる。
〔絵柄模様層2〕
熱可塑性樹脂基材シート1の表面には、任意の絵柄が印刷された絵柄模様層2が設けられる。絵柄模様層2のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等である。絵柄模様層2の形成に使用する印刷インキの種類は特に限定されず、化粧シートの形成に使用されている公知の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂系、ブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整した印刷インキであってもよい。
絵柄模様層2の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷法が用いられる。印刷インキとしては、それぞれの印刷法に適した印刷インキを用いることができる。
〔第1接着剤層3〕
絵柄模様層2の上には第1接着剤層3が形成されている。第1接着剤層3は、絵柄模様層2の上に、第1接着剤層3を形成するための組成物を塗布して形成してもよい。第1接着剤層3に含まれる接着剤は、透明熱可塑性樹脂層6に含まれる透明熱可塑性樹脂との組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択可能である。
〔ポリエステル系樹脂層4〕
ポリエステル系樹脂層4は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等が用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが好適に用いられる。また、第1接着剤層3や表面保護層7との密着性を向上させるため、例えば、易接着層を設けたり、適宜コロナ処理などを施したりしてもよい。
ポリエステル系樹脂層4は、2軸延伸されている(2軸延伸処理がなされた層である)ことが好ましい。また、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。ポリエステル系樹脂層4の厚さが上記数値範囲内であれば、丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対して切削加工性を高めることができる。
ポリエステル系樹脂層4は、上述した樹脂にポリエチレンテレフタレート樹脂を含んだ層であってもよいし、ポリエチレンテレフタレート樹脂のみで構成された層であってもよい。以下、ポリエステル系樹脂層4をポリエチレンテレフタレート樹脂で構成した場合、即ちポリエステル系樹脂層4をポリエチレンテレフタレート樹脂層4aとした場合について、説明する。なお、ポリエステル系樹脂層4がポリエチレンテレフタレート樹脂を含んだ層(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)である場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂層4全体の質量に対して、30質量%以上であればよく、50質量%以上であれば好ましく、80質量%以上であればさらに好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aは、延伸処理をしていないフィルムで形成されていてもよい。つまりポリエステル系樹脂層4は、ポリエチレンテレフタレートを含み、且つ、無延伸の層であってもよい。本実施形態において、延伸処理をしていないポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの厚さは、150μm以上300μm以下の範囲内であれば好ましく、200μm以上250μm以下の範囲内であればより好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aに、延伸処理をしていないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合には、化粧シート10の機械的強度を向上させることができ、且つ、化粧板にした際の耐摩耗性に優れ、例えば丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対して切削加工性を高めることができる。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの厚さが上記数値範囲内であれば、丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対して切削加工性をさらに高めることができる。
また、ポリエステル系樹脂層4は、上述した樹脂にポリブチレンテレフタレート樹脂を含んだ層であってもよいし、ポリブチレンテレフタレート樹脂のみで構成された層であってもよい。以下、ポリエステル系樹脂層4をポリブチレンテレフタレート樹脂で構成した場合、即ちポリエステル系樹脂層4をポリブチレンテレフタレート樹脂層4bとした場合について、説明する。なお、ポリエステル系樹脂層4がポリブチレンテレフタレート樹脂を含んだ層(ポリブチレンテレフタレート樹脂層4b)である場合には、ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂層4全体の質量に対して、30質量%以上であればよく、50質量%以上であれば好ましく、80質量%以上であればさらに好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bは、例えば、延伸処理をしていないフィルムで形成されていてもよい。本実施形態において、ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であれば好ましく、100μm以上150μm以下の範囲内であればより好ましい。ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さが50μm未満であると、耐摩耗性が不十分となるおそれがある。また、ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さが200μmを超える場合には、化粧シート10を基材に貼り合せる際の加工性に問題が生じることがある。
上述したポリエチレンテレフタレート樹脂層4aをポリエステル系樹脂層4として備えた化粧シート10は、重歩行用途としても十分な性能を持っている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aをポリエステル系樹脂層4として備えた化粧シート10は、JAS規格に規定する1類浸漬剥離試験には適合するものの、白化を生じる場合があり、床暖房や強い日差しが想定される用途には適さない場合がある。
ここで、特許文献1に記載された化粧シート及び化粧材は、床材用化粧シートにおいて、被着材に起因する不陸の問題、及び温度差に起因する断熱層の凝集破壊の問題を解消しつつ、断熱性、耐傷性、及び耐キャスター性に優れた化粧シート及び化粧材を提案したものである。
特許文献1に記載された化粧シートは、これらの問題を解決するために、化粧層の裏面側に合成樹脂バッカー層と発泡樹脂バッカー層を積層したものである。しかしながら、近年床暖房の普及により、表面床材には断熱性が要求されないばかりか、むしろ床暖房効果を阻害する場合もあることが指摘されている。
これに対し、ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bをポリエステル系樹脂層4として備えた化粧シート10であれば、床暖房用としても使用できる耐熱性を有している。
〔第2接着剤層5〕
ポリエステル系樹脂層4の上には第2接着剤層5が形成されている。第2接着剤層5は、ポリエステル系樹脂層4の上に、第2接着剤層5を形成するための組成物を塗布して形成してもよい。第2接着剤層5に含まれる接着剤は、透明熱可塑性樹脂層6に含まれる透明熱可塑性樹脂の組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択可能である。
〔透明熱可塑性樹脂層6〕
透明熱可塑性樹脂層6は、ポリエステル系樹脂層4側に形成され、ポリプロピレン樹脂を用いて形成されている。
透明熱可塑性樹脂層6は、エンボス9が形成された層であって、例えば、複数層からなるシート状の層である。透明熱可塑性樹脂層6を構成する各層は、絵柄模様層2の絵柄が透けて見えるように、例えば透明な熱可塑性樹脂で形成される。透明熱可塑性樹脂層6に含まれる熱可塑性樹脂は、透明であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂以外の種々の樹脂であってもよい。透明熱可塑性樹脂層6を構成する各層の樹脂の組み合わせは、目的とする特性により、様々な組合せが可能である。
透明熱可塑性樹脂層6に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、エチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。本実施形態において透明熱可塑性樹脂層6に用いる熱可塑性樹脂層としては、透明なポリプロピレン樹脂が好ましい。透明なポリプロピレン樹脂の詳細は、後述する。
なお、エンボス9は、絵柄模様層2が木目の場合には、自然木の持つ導管を凹みで表現してもよく、木目以外の場合でも砂目や幾何学模様の凹凸で意匠性を高めることが可能である。このように、エンボス9を形成することで、化粧シート10の表面に立体感を与え、意匠性を向上させることができる。また、エンボス9は、透明熱可塑性樹脂層6のみに留まらず、他の層に及んでもよい。エンボス9を形成する方法としては、各層を貼り合せた後に全体を加熱してエンボスロールを押し当てる後エンボス方法や、透明熱可塑性樹脂層6をTダイから押し出してエンボスロールに押し当てる押し出し同時エンボス法等を用いることができる。このように、エンボス9は、表面保護層7を形成する前に形成したものでもよく、あるいは表面保護層7を形成した後に形成したものでもよい。
また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内であれば好ましく、50μm以上150μm以下の範囲内であればより好ましい。透明熱可塑性樹脂層6の厚さが上記数値範囲内であれば、エンボス9による凹凸を形成することに支障がないことのほか、耐摩耗性において、物理的な磨耗に対して十分実用範囲である。あるいは、意匠性の面でも、透明熱可塑性樹脂層6の存在が絵柄模様層2と相俟って、より深みや奥行きを感じさせる効果を持つ。具体的には、透明熱可塑性樹脂層6の厚さが50μm未満であると、耐摩耗性、耐傷性能が得られないことがある。一方、透明熱可塑性樹脂層6の厚さが500μmを超えると、製造時の生産性が劣りコスト的にも不利となることがある。
また、ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であれば好ましい。ポリエステル系樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが上記数値範囲内であれば、化粧シート10としての可撓性と機械的強度との両方を損なうことがなく、またインラインでのロールラミネートなど化粧板への加工性、さらに化粧板としての加工性などに支障をきたすことがなく、使い勝手が向上する。
また、ポリエステル系樹脂層4として、延伸処理をしていないポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリエチレンテレフタレート樹脂層4aを用いる場合には、そのポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの厚さと、透明熱可塑性樹脂層6の厚さとの合計値は、200μm以上350μm以下の範囲内であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが上記数値範囲内であれば、化粧シート10としての可撓性と機械的強度との両方を損なうことがなく、またインラインでのロールラミネートなど化粧板への加工性、さらに化粧板としての加工性などに
支障をきたすことがなく、使い勝手が向上する。
また、ポリエステル系樹脂層4として、ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bを用いる場合には、そのポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さと、透明熱可塑性樹脂層6の厚さとの合計値は、140μm以上350μm以下の範囲内であることが好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが140μm未満であると、耐摩耗性に不安が生じる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが350μmを超えると、化粧板に加工する際のロールラミネート適性に問題が生じることがある。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが上記数値範囲内であれば、化粧シート10としての可撓性と機械的強度との両方を損なうことがなく、またインラインでのロールラミネートなど化粧板への加工性、さらに化粧板としての加工性などに支障をきたすことがなく、使い勝手が向上する。
本実施形態の透明なポリプロピレン樹脂としては、例えば、自由末端長鎖分岐を付与したポリプロピレン樹脂(a)と、自由末端長鎖分岐を付与していないポリプロピレン樹脂(b)との混合物で、その混合物の質量平均分子量/数平均分子量として定義される分子量分布Mw/Mnが1以上5以下の範囲内にあり、かつ、そのポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)の混合樹脂の、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数が、1%以上90%以下の範囲内にあるものを用いるようにしてもよい。これにより、化粧シート10を、例えば鋼板基材に貼り合わせた後の折り曲げ加工において、白化や割れを抑制することができる。
ここで、分子量分布は、分子量Miの分子がNi個存在する場合に、数平均分子量Mn=Σ(Mi×Ni)/ΣNi、質量平均分子量Mw=Σ(Ni×Mi2)/Σ(Ni×Mi)の比、Mw/Mnとして定義される値である。1に近いほど分子量の分布が狭く、均一性が高くなる。この分子量分布が5以下になるようにすれば、分子量を必要十分な大きさに揃えることができ、白化や割れの抑制に寄与するようになる。一般的には、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
また、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数は、ポリプロピレン樹脂中の結晶化度を調べる指標として有用である。具体的には、試料を沸騰n-ヘプタンで一定時間抽出を行い、抽出されない部分の質量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。詳しくは、円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、恒温恒湿の室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中に試料(粉体またはフレーク状)8g以上10g以下を入れ、秤量カップ、ピンセットを用いて精秤する。これをヘプタン約80ccの入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器を組み立てる。これをオイルバスまたは電機ヒーターで加熱し、12時間抽出する。加熱は、冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。続いて、抽出残分の入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器にいれて80℃、100mmHg以下の真空度で5時間乾燥する。乾燥後、恒温恒湿中に2時間放置した後、精秤し、(P/Po)×100によりアイソタクチック指数を算出する。ただし、Poは抽出前の試料質量(g)、Pは抽出後の試料質量(g)である。
アイソタクチック指数を90%以下にすることで、ポリプロピレン結晶起因によるシート剛性を抑制することができる。アイソタクチック指数を下げる方法としては、例えば、非晶質ポリプロピレン成分(シンジオタクチックポリプロピレンやアダクチックポリプロピレン等)を一部に使う方法や、エチレンやα-オレフィン等のオレフィンモノマーを1種類以上ランダム共重合させる方法、各種ゴム成分(例えばエチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等の成分)を添加する方法を用いることができる。
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合樹脂の溶融張力(2.0mm径のノズルキャピラリーレオメーターを用い、温度条件230℃、60mm/分で押し出し、2mm/分で引き取るときの張力)は、100mN以上500mN以下
の範囲内にあることが望ましく、300mN以上400mN以下の範囲内にあることがより望ましい。500mNを超えると、溶融粘度が高くなりすぎて、安定した成膜ができなくなる。また100mN以下では、長鎖分岐成分が不十分となり、所望の性能を得難い。
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合物の、JIS-K6760にて規定される230℃におけるメルトフローレートが5g/10min以上50g/10min以下の範囲内にすることで、分子量をある一定値以上で、かつ安定的な製膜状態を保持することができる。より好適なメルトフローレートの範囲は、10g/10min以上30g/10min以下の範囲内であり、更に好ましくは10g/10min以上25g/10min以下の範囲内である。メルトフローレートが50g/10minを超えると、Tダイによる溶融押し出し時に、Tダイから溶融押し出しされた樹脂が、中央に集まろうとする効果(ネックイン)が大きくなり、Tダイから溶融押し出しされた樹脂の端部厚さが増大してしまう。端部の厚さ増大は冷却効率の低下と巾方向の厚さ安定性に影響を与えるため、安定した製膜がしづらくなる。また、5g/10minよりも低いと、溶融樹脂のドローレゾナンスが悪くなり、Tダイから出た直後の溶融樹脂の速度(初速)と冷却ロールに触れた直後の樹脂の速度とのギャップに溶融樹脂が対応できなくなってしまい、安定した製膜がしづらくなる。
また、透明熱可塑性樹脂層6に添加する紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等から適宜選定する。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール,2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を用いることができる。
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を用いることができる。
さらに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、オクタベンゾンや変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。イソシアネート添加による架橋による樹脂成分との結合を望めるため、紫外線吸収剤としては、特に、水酸基を有するものが適している。添加部数は、所望の耐候性に応じて設定すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%以上50%以下の範囲内、好ましくは1%以上30%以下の範囲内とする。
また、透明熱可塑性樹脂層6に添加する光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル
-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。
添加部数は、所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲内、好ましくは1質量%以上30質量%以下の範囲内とする。
上記以外では、例えば、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を添加してもよい。熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]-プロピオネート、2、4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトに代表される燐系酸化防止剤等やこれらの混合物、つまり、1種、または2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
また、難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機系化合物や燐酸エステル系の難燃剤等を用いることができる。さらに、ブロッキング防止剤としては、例えば、珪酸アルミニウム、酸化珪素、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム等の無機系ブロッキング防止剤、脂肪酸アミド等の有機系ブロッキング防止剤等を用いることができる。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内が好適である。
〔表面保護層7〕
表面保護層7は、化粧シート10の最表面にあって、化粧シート10に対する直接の外力、たとえば物がぶつかったり、移動の際に擦ったりといった外力に対して化粧シート10を保護する役割を果たす。つまり、表面保護層7は、化粧シート10の表面物性を向上させるものであり、化粧シート10表面に耐傷性や耐汚染性、滑り性、耐候性、耐久性等を付与し、意匠性(艶、触感等)などの機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層7の材料としては、耐擦傷性・耐候性・耐久性を考慮すると、例えば、電離放射線硬化型樹脂を用いることができる。耐傷性としては、表面保護層7は、JIS K 5600に準じた鉛筆硬度試験の硬度がH以上であることが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂のうち、紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。また、電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋反応する性質を有する(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和結合を有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの少なくとも何れかを主成分とする組成物を用いることができる。電離放射線としては、例えば、電子線、紫外線を用いることができる。電離放射線硬化型樹脂には、例えば、必要に応じて重合開始剤や増感剤等の添加剤を添加してもよい。
重合性不飽和結合を有するプレポリマーやオリゴマーとしては、例えば、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等を用いることができる。また、モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の単官能モノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマー等を用いることができる。
また、表面保護層7は、電離放射線硬化型樹脂と、イソシアネート硬化型アクリル系樹脂組成物との混合物を用いることができる。
イソシアネート硬化型アクリル系樹脂組成物としては、例えば、アクリル系樹脂組成物を主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤とした反応生成物を用いることができる。アクリル系樹脂組成物としては、例えば、アクリルポリオール化合物を採用することができる。アクリルポリオール化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等の通常のアクリル系モノマーに、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等の水酸基を含有するモノマーと、必要に応じてスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、バーサチック酸ビニル、エチルビニルエーテル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の共重合可能な重合性モノマーを配合して、共重合させて得られ
る、側鎖に水酸基を有するアクリル系の高分子化合物を採用することができる。
また、ポリイソシアネートのイソシアネートプレポリマーとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等を使用することができる。特に、耐候性・黄変性・生産性を考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の三量体を使用できる。すなわち、HDIを原料とするイソシアヌレート型、つまり、HDIの誘導体であるHDIイソシアヌレートを使用できる。また、イソシアネートプレポリマーの側鎖としては、例えば、表面保護層7の柔軟性への付与を考慮すると、ウレタン結合を使用することができる。
また、表面保護層7の材料としては、例えば、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂(UV硬化型樹脂)との混合物(ブレンド樹脂)を用いてもよい。
表面保護層7は、電離放射線硬化型樹脂(例えば紫外線硬化型樹脂)、つまり、硬度が高い樹脂を含むことにより、表面に露出した表面保護層7によって、化粧シート10の耐傷性を向上できる。また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
熱硬化型樹脂としては、例えば、化粧シート10の変形追従性、耐擦傷性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を用いるのが好ましい。
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
表面保護層7は、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。
表面保護層7の形成方法は、特に限定されず、前述の材料を塗液化したものを、例えばグラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の方法で塗布した後、熱硬化や紫外線硬化など材料に適合した方法で硬化させることで表面保護層7を形成する。
また、表面保護層7には、界面活性剤が添加されていてもよい。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の少なくとも一種を含んでいる。界面活性剤が添加されていることにより、後述する無機系(例えば銀系)抗ウイルス剤と表面保護層のバインダ中の相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス剤の沈殿等による濃度のばらつきが抑制された化粧シートを得ることができる。
また、表面保護層7の層厚は、3μm以上15μm以下の範囲内が望ましい。表面保護層7の厚さが3μm以上であれば、耐傷性が向上する。表面保護層7の厚さが15μm以下であれば、必要以上に多くの量の樹脂材料を使用する必要がなくコストを低減することができる。
(抗ウイルス剤)
また、本実施形態に係る化粧シート10において、表面保護層7には抗ウイルス剤が含まれている。つまり、表面保護層7は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含んでいる。したがって、化粧シート10は、抗ウイルス性を有する化粧シートである。
抗ウイルス剤としては、例えば無機系抗ウイルス剤が含有されていてもよい。無機系抗ウイルス剤としては、例えば無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる。また抗ウイルス剤としてジンクピリジオン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、10、10-オキシビスフェノキサノジン、有機窒素硫黄ハロゲン系、ピリジン-2-チオール-オキシド等が使用できるが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。つまり、本実施形態に係る化粧シート10において表面保護層7が含有する抗ウイルス剤は、銀系材料であることが好ましい。また、表面保護層7には、上記した無機系抗ウイルス剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の無機系抗ウイルス剤が含まれていてもよい。
また、抗ウイルス剤は銀系材料が無機材料に担持されている構成であってもよい。これにより、抗ウイルス効果の持久性に優れた化粧シート10を得ることができる。
銀系材料を担持する「無機材料」としては、例えば「ガラス」を使用できるが、「無機材料」はガラスに限定されない。銀を無機物に担時させることで、経時での銀成分の脱落や、下層側(例えば、透明熱可塑性樹脂層6側)への転移を防ぐことができる。無機系抗ウイルス剤は抗ウイルス効果の持続性に優れているため、無機系抗ウイルス剤を添加することにより、抗ウイルス効果の持続性を向上させることができる。
表面保護層7における抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内である。抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合、抗ウイルス剤が効果的に作用し、抗ウイルス性が向上する。抗ウイルス剤の添加量が10質量%以下である場合、耐傷性が向上する。
抗ウイルス剤の平均粒径は、表面保護層7の厚さの0.5倍以上2倍以下であることが望ましい。すなわち、抗ウイルス剤の平均粒径をΦ、表面保護層の厚さをDとしたときに、0.5≦Φ≦2Dの関係が成り立つことが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が表面保護層7の0.5倍以上2倍以下である場合、抗ウイルス剤との接触面先拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積拡大により抗ウイルス性が良好になる。
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、表面保護層7と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、耐傷性が向上する。
また、抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることが好ましい。具体的には、抗ウイルス剤の粒径のピークは2つのピークを有し、2つのピークは、1μm以上5μm以下の範囲である第1ピークと、5μm以上10μm以下の範囲である第2ピークとを含んでいることが好ましい。ここで、抗ウイルス剤の粒径の第2ピークは、第1ピークより大きい値とする。抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることにより、抗ウイルス剤の充填密度がより向上し、抗ウイルス剤をより多く添加することができる。このため、抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス自体の表面積も拡大することにより、抗ウイルス性が向上する。
また、本開示において、表面保護層7が含有する抗ウイルス剤は、無機系抗ウイルス剤に限定されない。表面保護層7には、有機系抗ウイルス剤が含有されていてもよい。有効成分が有機系材料である有機系抗ウイルス剤を用いることで、化粧シート10に優れた抗ウイルス性が付与され、無機系抗ウイルス剤に比べて即効性の抗ウイルス効果を発揮することができる
本実施形態による化粧シート10において、表面保護層7に添加する有機系抗ウイルス剤としては、例えば、ハロカルバン、クロロフェネシン、塩化リゾチーム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヘキサクロロフェン、ベルベリン、チオキソロン、サリチル酸およびそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ヘキサクロロフェン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、チアントール、ヒノキチオール、トリクロサン、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、モノニトログアヤコールナトリウム、ウイキョウエキス、サンショウエキス、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及びウンデシレン酸誘導体、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、スチレンスルホン酸塩を含む共重合体、陰イオン系ナトリウム塩等が挙げられる。
有機系抗ウイルス剤を用いる場合も、表面保護層7における抗ウイルス剤の含有量は、無機系抗ウイルス剤を用いる場合と同様に、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
本実施形態において、表面保護層7には、抗ウイルス剤として、上記した無機系抗ウイルス剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の無機系抗ウイルス剤が含まれていてもよい。また。表面保護層7には、上記した無機系抗ウイルス剤と有機系抗ウイルス剤とを混合して用いてもよい。この場合、上記した有機系抗ウイルス剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の有機系抗ウイルス剤が含まれていてもよい。
また、本実施形態に係る化粧シート10において、例えば耐汚染性向上策として、化粧シート10の最表面(表面保護層7)にシリコン系成分(例えばシリコン樹脂)やフッ素系成分(例えばフッ素樹脂)を設定してもよい。
〔シリコン樹脂〕
シリコン樹脂を用いる場合は、周囲との密着性や相溶性の問題から変性シリコンを用いることが好ましい。表面保護層7を構成する硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂、すなわち電離放射線硬化型樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、電離放射線反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また、表面保護層7を構成する硬化型樹脂が電離放射線硬化型樹脂及び熱硬化型樹脂の混合から形成される場合には、上記変性シリコンは、電離放射線反応性及び熱反応性の少なくとも一方からなる変性シリコン樹脂であることが好ましい。
変性シリコンは、反応性変性シリコンと非反応性シリコンとに分類できる。熱反応性の変性シリコンとしては、モノアミン変性シリコン、ジアミン変性シリコン、エポキシ変性シリコン、カルビノール変性シリコン、カルボキシ変性シリコン、メルカプト変性シリコン、シラノール変性シリコン、アルコール変性シリコン、ジオール変性シリコンが例示出来る。また、電離放射線反応性の変性シリコンとしては、アクリル変性シリコン、メタクリル変性シリコンが例示できる。また、非反応性変性シリコンであるポリエーテル変性シリコン、アラルキル変性シリコン、長鎖アルキル変性シリコン、高級脂肪酸エステル変性シリコンが例示出来る。またこれらの変性シリコン製造メーカーとしては信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、旭化成ワッカーシリコーン株式会社などが挙げられる。
〔フッ素樹脂〕
フッ素樹脂は最小レベルの表面張力を示すことが広く知られており、耐汚染材料として好適である。表面保護層7が含有するフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン―エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられ、これら以外にも多くの誘導体を用いることができる。またこれらのフッ素樹脂のメーカーとしてはダイキン工業株式会社、三井・デュポンフロロケミカル株式会社などが挙げられる。表面保護層7が含有するフッ素樹脂の量は、10質量部以上100質量部以下が好ましい。より好ましくは20質量部以上である。ここで、フッ素樹脂自体が硬化型樹脂であっても良い。すなわち、フッ素樹脂の一部が、表面保護層7の主成分である電離放射線硬化型樹脂の一部を兼ねていても良い。
このように、本実施形態に係る化粧シート10において、最表層である表面保護層7に、シリコン系成分又はフッ素系成分のうち少なくともいずれか一方が含まれていてもよい。これにより、化粧シート10の耐汚染性を向上することができる。耐汚染性が向上されると、ウイルスが化粧シート10の表面に長期間存在することを抑制することができ、結果として、抗ウイルス性をさらに向上させることができる。
〔プライマー層8〕
プライマー層8としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの混合物等を使用することができる。更に、ポリオールとイソシアネートによる2液タイプにすることで、熱可塑性樹脂基材シート1とプライマー層8との密着性及びプライマー層8自体の凝集力が向上する。ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′ジフェニルメタンジイソシアネートといった芳香族系、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートといった脂肪族系が挙げられる。反応性の早さの点、耐熱性の点で芳香族系のポリオールが好ましい。
プライマー層8の厚さは、1μm以上が好ましく、10μm以下が好ましい。プライマー層8の厚さは1μm未満となると接着剤の溶剤種によっては溶解してしまい、プライマー層8が消失することから密着性が向上しないことがある。
(化粧シート10の製造方法)
以下、化粧シート10の製造方法について簡単に説明する。
まず、熱可塑性樹脂基材シート1上に、例えば、印刷によって絵柄模様層2を形成する。
その後、その絵柄模様層2上に、ポリエステル系樹脂層4をドライラミネーションにて貼り合わせる。次に、ポリエステル系樹脂層4上に、溶融した透明熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を押し出し機から押し出して透明熱可塑性樹脂層6を形成する。次に、透明熱可塑性樹脂層6にエンボス加工を行う。最後に、エンボス加工が施された透明熱可塑性樹脂層6上に、電離放射線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂)に抗ウイルス剤を添加した樹脂組成物をグラビアコート法等で塗布して硬化させることで表面保護層7を形成する。こうして、本実施形態に係る化粧シート10を製造する。
なお、本実施形態に係る化粧シート10の製造方法では、絵柄模様層2とポリエステル系樹脂層4との間に第1接着剤層3を形成する工程を含んでもよい。また、ポリエステル系樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層6との間に第2接着剤層5を形成する工程を含んでもよい。また、透明熱可塑性樹脂層6を形成する工程において、溶融した透明熱可塑性樹脂に紫外線吸収剤及び光安定剤を添加してもよい。
また、熱可塑性樹脂基材シート1の絵柄模様層2とは反対側の面に対して表面処理を施した後、プライマー塗工液をグラビアコート法等で塗布することにより、プライマー層8を形成する工程を含んでもよい。
(第一変形例)
第1実施形態に係る化粧シートの第一変形例について、図2を用いて説明する。図2は、第1実施形態の第一変形例による化粧シート11の一構成例を説明するための断面模式図である。本変形例による化粧シート11は、耐傷性をさらに向上するために、表面保護層に樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤が添加されている点で、上記第1実施形態に係る化粧シート10と異なる。
以下、化粧シート11において化粧シート10と異なる構成である表面保護層70について詳細に説明する。なお、化粧シート11において、表面保護層70以外の構成は化粧シート10と同等である。このため、化粧シート10と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
図2に示すように、化粧シート11は表面保護層70を備えている。表面保護層70は、樹脂材料(例えば電離放射線硬化型樹脂)に、抗ウイルス剤および造核剤を添加して形成されている。本変形例では、造核剤は、単層膜の外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で上記樹脂材料に添加されている。つまり、本変形例において表面保護層70は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含んでおり、さらに電離放射線硬化型樹脂に対して単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを添加して形成されている。これにより、化粧シート11にさらに高い耐傷性を付与することができる。
以下、表面保護層70に含まれる造核剤について、詳細に説明する。なお、表面保護層70は、造核剤ベシクルを含有する点を除いて上記第1実施形態における表面保護層7と同等の構成である。このため、以下では造核剤ベシクルについて詳しく説明し、樹脂材料および抗ウイルス剤についての説明は省略する。
〔造核剤〕
上述のように、本変形例において表面保護層70は、ナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されることが好ましい。また、本実施形態において、表面保護層70を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。表面保護層70は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート10の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
表面保護層70における造核剤ベシクルの添加量は、例えば、主成分としての電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成されることが好ましい。造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、上記樹脂材料の結晶化度が十分に向上せず、表面保護層70の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、電離放射線硬化型樹脂の結晶化度が十分に向上せず、表面保護層70の耐傷性が確実に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、表面保護層70を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料を示すものとする。したがって、表面保護層70の樹脂材料が電離放射線硬化型樹脂と他の樹脂材料(イソシアネート硬化型アクリル系樹脂組成物、又は熱硬化型樹脂)との混合物(ブレンド樹脂)である場合も、ブレンド樹脂の50質量部以上が電離放射線硬化型樹脂であれば、上記の範囲内でブレンド樹脂に造核剤ベシクルを添加すればよい。
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。つまり、本変形例において造核剤ベシクルは、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに造核剤を内包させてベシクル化したものが好ましい。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本変形例の化粧シート11においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソーム(ラジカル捕捉剤)とすることが好ましい。外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート10の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、オレイン酸ナトリウム、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、オレイン酸ナトリウムを用いることが好ましい。また、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることもできるが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども使用できる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
また、本変形例において熱可塑性樹脂基材シート1は、上記第1実施形態の化粧シート10と同様に、ポリオレフィン系樹脂を含んでおり、さらに厚さが50μm以上200μm以下の範囲内である。これにより、化粧シート11は、耐傷性に加えて優れた床材性能(耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性)を得ることができる。
つまり、本変形例に係る化粧シート11は、熱可塑性樹脂基材シート1がポリオレフィン系樹脂を含み、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内である。さらに化粧シート11の表面保護層70には、抗ウイルス剤に加えて、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルが添加されていることが好ましい。これにより、抗ウイルス性を有し且つ、より優れた耐傷性と優れた床材性能とが付与された化粧シートを得ることができる。
(第二変形例)
次に、第1実施形態に係る化粧シートの第二変形例について、図3を用いて説明する。図3は、第1実施形態の第二変形例による化粧シート12の一構成例を説明するための断面模式図である。本変形例による化粧シート12は、耐傷性をさらに向上するために、透明熱可塑性樹脂層に樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤が添加されている点で、上記第1実施形態に係る化粧シート10と異なる。
以下、化粧シート12において化粧シート10と異なる構成である透明熱可塑性樹脂層60について詳細に説明する。なお、化粧シート12において、透明熱可塑性樹脂層60以外の構成は化粧シート10と同等である。このため、化粧シート10と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
図3に示すように、化粧シート12は透明熱可塑性樹脂層60を備えている。透明熱可塑性樹脂層60は、樹脂材料(ポリプロピレン樹脂)に、造核剤を添加して形成されている。本変形例において造核剤は、上記第一変形例と同様に、単層膜の外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で上記樹脂材料に添加されている。
つまり、本変形例において透明熱可塑性樹脂層60は、ポリプロピレン樹脂を用いて形成されており、さらにポリプロピレン樹脂に対して単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを添加して形成されている。これにより、化粧シート11にさらに高い耐傷性を付与することができる。
このように、本変形例に係る化粧シート12は、表面保護層に代えて透明熱可塑性樹脂層に造核剤ベシクルを含む構成である点で、上記第一変形例と異なる。
また、透明熱可塑性樹脂層60に含まれる造核剤は、上記第一変形例において表面保護層70に含まれる造核剤ベシクルと同等であるため、詳細な説明は省略する。また、透明熱可塑性樹脂層60は、造核剤ベシクルを含有する点を除いて上記第1実施形態における透明熱可塑性樹脂層6と同等の構成であるため、詳しい説明は省略する。
本変形例において、透明熱可塑性樹脂層60を構成するポリプロピレン樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。これにより、透明熱可塑性樹脂層60は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート12の耐擦傷性(耐傷性)をより向上することができる。
また透明熱可塑性樹脂層60における造核剤ベシクルの添加量は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内であることがより好ましい。
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明熱可塑性樹脂層60の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明熱可塑性樹脂層60の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、透明熱可塑性樹脂層60を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料を示すものとする。
また、本変形例においても上記第一変形例と同様に、熱可塑性樹脂基材シート1は、ポリオレフィン系樹脂を含んでおり、さらに厚さが50μm以上200μm以下の範囲内である。これにより、化粧シート12は、耐傷性に加えて優れた床材性能(耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性)を得ることができる。
つまり、本変形例に係る化粧シート12は、熱可塑性樹脂基材シート1がポリオレフィン系樹脂を含み、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内であり、透明熱可塑性樹脂層60に、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルが添加されていることが好ましい。これにより、抗ウイルス性を有し且つ、より優れた耐傷性と優れた床材性能とが付与された化粧シートを得ることができる。
以上、第1実施形態に係る化粧シートの変形例として、表面保護層または透明熱可塑性樹脂層に造核剤ベシクルが含まれる構成を説明したが、本開示の構成はこれに限られない。例えば、本開示における化粧シートにおいて、造核剤ベシクルは表面保護層および透明熱可塑性樹脂層の両方に含まれていてもよい。
つまり、本開示における化粧シートは、熱可塑性樹脂基材シートがポリオレフィン系樹脂を含み、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内であり、表面保護層または透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方に、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを含有していてもよい。
これにより、優れた床材性能とより優れた耐傷性とを確実に付与することができ、耐傷性にさらに優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シートを提供することができる。
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボスが形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4は、2軸延伸されており、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、150μm以上700μm以下の範囲内である。また、表面保護層7は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含んでいる。
このような構成であれば、耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シートを提供することが可能となる。また、このような構成であれば、抗ウイルス性に加え、メラミン板を備えた化粧シートと同等の耐傷付き性や耐摩耗性を備え、且つ加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することが可能となる
また、本実施形態に係る化粧シートにおいて、前記熱可塑性樹脂基材シート1は、ポリオレフィン系樹脂を含み、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内であり、表面保護層又は前記透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方に、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルが添加されていてもよい。
つまり、本実施形態に抱える化粧シートは、造核剤ベシクルが添加された表面保護層70を備える化粧シート(化粧シート11)であってもよいし、造核剤ベシクルが添加された透明熱可塑性樹脂層60を備える化粧シート(化粧シート12)であってもよい。
このような構成であれば、床材性能に優れるとともに、より耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シートを提供することが可能となる。
また本実施形態において、表面保護層70は、電離放射線硬化型樹脂に対して造核剤ベシクルを添加して形成されていてもよい。
このような構成であれば、より確実に耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧シートを提供することが可能となる。
また、表面保護層70における造核剤ベシクルの添加量は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることが好ましい。
このような構成であれば、樹脂材料の結晶化度が十分に向上し、且つ表面保護層70の耐傷性を確実に向上させることができる。
また、本実施形態の化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1の絵柄模様層2と反対側の面にプライマー層8が設けられていてもよい。
このような構成であれば、化粧シート10の絵柄模様層2とは反対の面側に設けられる化粧材用基板との接着に用いられる接着剤との密着性を向上させることができる。
また、本実施形態の化粧シート10は、透明熱可塑性樹脂層6の厚さが、50μm以上150μm以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、耐摩耗性、耐傷性能が十分実用範囲となり、且つ製造時の生産性に優れコスト的にも有利となる。
また、化粧シート10は以下のような構成であってもよい。すなわち、本実施形態の化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボスが形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4は、ポリエチレンテレフタレートを含んだ無延伸の層(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)であり、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、150μm以上300μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、200μm以上350μm以下の範囲内である。また、表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂を含んでいる。
このような構成であれば、メラミン板を備えた化粧シートと同等の耐傷付き性や耐摩耗性を備え、且つ加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することが可能となる。
本実施形態の化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボスが形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4は、ポリブチレンテレフタレートを含んだ層(ポリブチレンテレフタレート樹脂層4b)であり、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4(ポリブチレンテレフタレート樹脂層4b)の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、140μm以上350μm以下の範囲内である。また、表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂を含んでいる。
このような構成であれば、メラミン板を備えた化粧シートと同等の耐傷付き性や耐摩耗性を備え、且つ加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することが可能となる。さらに、床暖房や強い日差しが想定される用途においても、化粧シート表面の白化が生じにくいため、床暖房用の化粧シートとして使用できる。
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る化粧シートについて、図4を用いて説明する。図4は、第2実施形態の変形例による化粧シート20の一構成例を説明するための断面模式図である。本実施形態に係る化粧シート20は、透明熱可塑性樹脂層が複層構成である点で、化粧シート10と異なる。
以下、化粧シート20において化粧シート10と異なる構成である透明熱可塑性樹脂層26について詳細に説明する。なお、化粧シート20において、透明熱可塑性樹脂層26以外の構成は化粧シート10と同等である。このため、化粧シート10と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
図4に示すように、化粧シート20は透明熱可塑性樹脂層26を備えている。透明熱可塑性樹脂層26は、ポリエステル系樹脂層4側から、予め定めた樹脂(以下、「第1の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第1の樹脂層26a、及び第1の樹脂とは異なる樹脂(以下、「第2の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第2の樹脂層26bの2層がこの順に積層されて形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層26は、第1の樹脂層26a及び第2の樹脂層26bの2層のみで構成されていてもよい。
本開示における透明熱可塑性樹脂層において、層の数は、4層以上も可能だが、押し出し機の構造が複雑化し作業の煩雑さが大きくなるため、3層までが好ましい。もちろん、図2に示すように、本開示において透明熱可塑性樹脂層(例えば透明熱可塑性樹脂層60)は、2層であってもよいし、図1に示すように、透明熱可塑性樹脂層(例えば透明熱可塑性樹脂層6)は、1層であってもよい。
本実施形態において、第1の樹脂層26aの厚さは、10μm以上であればよく、透明熱可塑性樹脂層26全体の厚さの20%以下であればよい。また、第1の樹脂層26aの厚さは、50μm以上であれば好ましく、透明熱可塑性樹脂層26全体の厚さの10%以下であればより好ましい。第1の樹脂層26aの厚さが10μm未満であれば、第1の樹脂層26aの密着安定性が低下する傾向がある。また、第1の樹脂層26aの厚さが透明熱可塑性樹脂層26全体の厚さの20%超であれば、化粧シート20全体の表面強度が低下する傾向がある。つまり、第1の樹脂層26aの厚さが10μm以上であり、且つ透明熱可塑性樹脂層26全体の厚さの20%以下であれば、第1の樹脂層26aの密着安定性を維持しつつ、化粧シート20全体の表面強度を維持することができる。また、第1の樹脂層26aの厚さは、10μm以上であり、且つ第1の樹脂層26a及び第2の樹脂層26bの2層のみで構成された透明熱可塑性樹脂層26全体の厚さの20%以下であってもよく、その場合であっても第1の樹脂層26aの密着安定性を維持しつつ、化粧シート20全体の表面強度を維持することができる。
また、第1の樹脂層26aに対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、第2の樹脂層26bに対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。この場合であっても第1の樹脂層26aの密着安定性を維持しつつ、化粧シート20全体の表面強度を維持することができる。具体的には、第1の樹脂層26aに対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、80質量%以上であり、第2の樹脂層26bに対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。
化粧シート20が第1の樹脂層26aと第2の樹脂層26bとを備えた場合には、第1の樹脂層26aが熱可塑性樹脂基材シート1との接着性を担保し、第2の樹脂層26bが主要部分となって、その他の物性を担うなど、材料の設計の巾を広げることが可能となる。第1の樹脂層26aに透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含めることで、層間の接着性を向上させることができる。また、第2の樹脂層26bを、透明ポリプロピレン樹脂を含めた層とすることで、樹脂内部の耐脆化を低減することができる。
なお、第1の樹脂層26aと第2の樹脂層26bの2層からなる透明熱可塑性樹脂層26を形成する方法としては、2軸押し出し機を用いて第1の樹脂層26aと第2の樹脂層26bとを2層同時に押し出して貼り合わせる方法が好ましい。
以上のように、本開示において透明熱可塑性樹脂層は、種類の異なるポリプロピレン樹脂で形成された複数の層で構成されていてもよい。
例えば透明熱可塑性樹脂層26は、ポリプロピレン樹脂を用いて形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層26aと、第1の樹脂層26a上に形成され、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含む第2の樹脂層26bとを有していてもよい。
透明熱可塑性樹脂層における第1の樹脂及び第2の樹脂としては、例えば、化粧シート20の表面の耐傷性、耐候性、耐汚染性、耐光性、透明性、折り曲げ性、及び熱成形性等を考慮し、更に材料コスト等を考慮すれば、第1の樹脂は透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましく、第2の樹脂は透明ポリプロピレン樹脂が好ましい。なお、第2の樹脂層26bは、第2の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂とともに、紫外線吸収剤及び光安定剤のいずれか一方を含んで構成される層であってもよい。
(化粧シート20の製造方法)
以下、化粧シート20の製造方法について簡単に説明する。
化粧シート20の製造方法は、透明熱可塑性樹脂層60の形成工程において第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bを形成する点で、上記第1実施形態に係る化粧シート10の製造方法と異なる。
具体的には、本実施形態の化粧シート20の製造方法は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、印刷によって絵柄模様層2を形成し、その絵柄模様層2上にポリエステル系樹脂層4をドライラミネーションにて貼り合わせる。その後、溶融した透明熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を多層押し出し機から押し出して形成した複数の層(第1の樹脂層26a、第2の樹脂層26b)を積層することで透明熱可塑性樹脂層26を形成し、透明熱可塑性樹脂層26にエンボス加工を行う。
このような構成であれば、化粧シート20は塩化ビニル樹脂で得ていたような柔軟性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性、耐傷性、透明感を主体とする意匠性等の特性を得、再現性に優れたエンボスを形成することができる。
(第一変形例)
第2実施形態に係る化粧シートの第一変形例について、図5を用いて説明する。図5は、第2実施形態の第一変形例による化粧シート21の一構成例を説明するための断面模式図である。本変形例による化粧シート21は、耐傷性をさらに向上するために、複層構成の透明熱可塑性樹脂層に樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤が添加されている点で、上記第2実施形態に係る化粧シート20と異なる。
以下、化粧シート21において化粧シート20と異なる構成である透明熱可塑性樹脂層216について詳細に説明する。なお、化粧シート21において、透明熱可塑性樹脂層216以外の構成は化粧シート20と同等である。このため、化粧シート20と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
図5に示すように、化粧シート21は、透明熱可塑性樹脂層216を備えている。透明熱可塑性樹脂層216は、樹脂材料(ポリプロピレン樹脂)に、造核剤を添加して形成されている。本変形例において造核剤は、上記第1実施形態の第一変形例、第二変形例と同様に、単層膜の外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で上記樹脂材料に添加されている。
より具体的には、透明熱可塑性樹脂層216は、第1の樹脂層216aを形成する第1の樹脂および第2の樹脂層216bを形成する第2の樹脂に造核剤ベシクルを含有している。
つまり、本変形例において透明熱可塑性樹脂層216は、ポリプロピレン樹脂を用いて形成され、第1の樹脂(透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)を含んで形成される第1の樹脂層216aと、第1の樹脂層上に形成され、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂(透明ポリプロピレン樹脂)を含んで形成される第2の樹脂層とを有している。さらに透明熱可塑性樹脂層216は、上記第1の樹脂および上記第2の樹脂の両方のポリプロピレン樹脂に造核剤ベシクルが添加されている。これにより、化粧シート21にさらに高い耐傷性を付与することができる。
このように、本変形例に係る化粧シート21は、複層構成の透明熱可塑性樹脂層に造核剤ベシクルを含む構成である点で、上記第2実施形態の化粧シート20と異なる。
また、透明熱可塑性樹脂層216に含まれる造核剤は、上記第1実施形態の第一変形例、第二変形例において表面保護層70、透明熱可塑性樹脂層60に含まれる造核剤ベシクルと同等であるため、詳細な説明は省略する。また、透明熱可塑性樹脂層216は、造核剤ベシクルを含有する点を除いて上記第2実施形態における透明熱可塑性樹脂層26と同等の構成であるため、詳しい説明は省略する。
本変形例において、透明熱可塑性樹脂層216を構成するポリプロピレン樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。これにより、透明熱可塑性樹脂層216の第1の樹脂層216a、第2の樹脂層216bは造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート12の耐擦傷性(耐傷性)をより向上することができる。
また透明熱可塑性樹脂層216における造核剤ベシクルの添加量は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内であることがより好ましい。
ここで、「主成分」とは、第1の樹脂層216a、第2の樹脂層216bを構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料を示すものとする。
造核剤ベシクルの添加量が上述の範囲内であることにより、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上し、透明熱可塑性樹脂層216(第1の樹脂層216a、第2の樹脂層216b)の耐傷性が確実に向上する。
また、本変形例においても上記第1実施形態の第二変形例と同様に、熱可塑性樹脂基材シート1は、ポリオレフィン系樹脂を含んで構成され、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。これにより、抗ウイルス性を有し且つ、より優れた耐傷性と優れた床材性能とが付与された化粧シートを得ることができる。
以上、第2実施形態に係る化粧シートの第一変形例として、第1の樹脂(透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)および第2の樹脂(透明ポリプロピレン樹脂)の両方のポリプロピレン樹脂、すなわち第1の樹脂層216aおよび第2の樹脂層216bの両方に、上述の造核剤ベシクルが添加されている例を説明したが、本開示はこれに限られない。
例えば、第1の樹脂層および第2の樹脂層を有する複層構成の透明熱可塑性樹脂層、造核剤ベシクルを含有する第1の樹脂層216aと、造核剤ベシクルを含有しない第2の樹脂層26bとで構成されてもよいし、造核剤ベシクルを含有しない第1の樹脂層26aと造核剤ベシクルを含有する第2の樹脂層216bとで構成されてもよい。
すなわち、複層構成の透明熱可塑性樹脂層は、第1の樹脂である透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のみ、すなわち第1の樹脂層のみに造核剤ベシクルが含有されていてもよいし、第2の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂のみ、すなわち第2の樹脂層のみに造核剤ベシクルが含有されていてもよい。
つまり、本開示における化粧シートは、第1の樹脂層および第2の樹脂層を有する透明熱可塑性樹脂層において、第1の樹脂又は第2の樹脂のうち少なくとも一方の前記ポリプロピレン樹脂に前記造核剤ベシクルが添加されていてもよい。これにより、用途やコストに合わせて造核剤ベシクルを含む層を選択しつつ、化粧シートにより優れた耐傷性を付与することができる。
より具体的には、本開示における化粧シートは、第1の樹脂層および第2の樹脂層を有する透明熱可塑性樹脂層216における造核剤ベシクルの添加量が、第1の樹脂(透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)または第2の樹脂(透明ポリプロピレン樹脂)のうち少なくとも一方のポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であってもよい。
つまり、第1の樹脂に造核剤ベシクルが添加される場合、第1の樹脂としてのポリプロピレン樹脂(透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルを添加すればよい。また、第2の樹脂に造核剤ベシクルが添加される場合、第2の樹脂としてのポリプロピレン樹脂(透明ポリプロピレン樹脂)100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルを添加すればよい。また、第1の樹脂および第2の樹脂層の両方に造核剤ベシクルが添加される場合、第1の樹脂および第2の樹脂それぞれのポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルを添加すればよい。
これにより、用途やコストに合わせて造核剤ベシクルを含む層を選択しつつ、化粧シートにより優れた耐傷性を確実に付与することができる。
(第二変形例)
第2実施形態に係る化粧シートの第二変形例について、図6を用いて説明する。図6は、第2実施形態の第二変形例による化粧シート22の一構成例を説明するための断面模式図である。本変形例による化粧シート22は、耐傷性をさらに向上するために、表面保護層に樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤が添加されている点で、上記第2実施形態に係る化粧シート20と異なる。
図3に示すように、化粧シート22は複層構成の透明熱可塑性樹脂層26を備え、さらに造核剤ベシクルを含有する表面保護層70を備えている。
表面保護層70は、上記第1実施形態の第一変形例に係る化粧シート11(図2参照)の表面保護層70と同等の構成である。このため、詳しい説明は省略する。
つまり、本変形例において透明熱可塑性樹脂層26は、ポリプロピレン樹脂を用いて形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層26aと、第1の樹脂層26a上に形成され、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層26bとを有している。さらに化粧シート22において表面保護層70の樹脂材料(例えば電離放射線硬化型樹脂)には、上述の抗ウイルス剤および単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルが添加されている。これにより、化粧シート22に抗ウイルス性を付与し、且つより高い耐傷性を付与することができる。
なお、化粧シート22において、表面保護層70以外の構成は化粧シート10と同等である。このため、化粧シート10と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
また、本開示はこれに限られない。本変形例に係る化粧シートは、表面保護層と透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層または第2の樹脂層少なくとも一方とに造核剤ベシクルを含有する構成であってもよい。この場合、透明熱可塑性樹脂層において第1の樹脂層および第2の樹脂層の両方に造核剤ベシクルが添加されていてもよいし、第1の樹脂層または第2の樹脂層のうち一方に造核剤ベシクルが添加されていてもよい。これにより、用途やコストに合わせて造核剤ベシクルを含む層をより柔軟に選択しつつ、化粧シートにより優れた耐傷性を確実に付与することができる。
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の化粧シート(例えば化粧シート20,21)において、透明熱可塑性樹脂層26,216は、ポリプロピレン樹脂を用いて形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層26a,216aと、第1の樹脂層26a,216a上に形成され、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層26b,216bとを有し、第1の樹脂は、ポリプロピレン樹脂のうち透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、第2の樹脂は、ポリプロピレン樹脂のうち透明ポリプロピレン樹脂である。さらに透明熱可塑性樹脂層216において、第1の樹脂又は前記第2の樹脂のうち少なくとも一方のポリプロピレン樹脂に造核剤ベシクルが添加されている。
この構成によれば、用途やコストに合わせて造核剤ベシクルを含む層を選択しつつ、化粧シートにより優れた耐傷性を付与することができる。
また、透明熱可塑性樹脂層216における造核剤ベシクルの添加量は、第1の樹脂又は第2の樹脂のうち少なくとも一方のポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内である。
この構成によれば、用途やコストに合わせて造核剤ベシクルを含む層を選択しつつ、化粧シートにより優れた耐傷性を確実に付与することができる。
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係る化粧板について、図7を用いて説明する。図7は、本開示の第4実施形態に係る化粧板100の一構成例を説明するための断面図である。
(化粧板)
化粧板100は、熱可塑性樹脂基材シート1の一方の面側に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されており、熱可塑性樹脂基材シート1の他方の面側に、プライマー層8及び基材19が設けられている。
すなわち、化粧板100は、基材19を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート10と相違する。
以下、基材19について説明する。なお、基材19以外の各層(絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、表面保護層7及びプライマー層8)については、化粧シート10の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
(基材)
基材19は、化粧板用の基材である。基材19としては、木質基材又は金属基材を使用することができる。木質基材としては、例えば木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板を採用することができる。化粧材用基板である基材19と、化粧材用基板に張り合わされた化粧シート10とを備えることにより、耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧板100を提供することができる。また、化粧板100は、耐傷性に優れているため、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制可能である。
なお、本実施形態においては、上記第1実施形態に係る化粧シート10に基材19が貼り合わされているが、本開示はこれに限られない。化粧シート10に代えて上記第1実施形態の第一変形例に係る化粧シート11(図2参照)、第二変形例に係る化粧シート12(図3参照)又は上記第2実施形態に係る化粧シート20(図4参照)、上記第2実施形態の第一変形例に係る化粧シート21(図5参照)、第二変形例に係る化粧シート22(図6参照)さらにこれらの化粧シートを用いて化粧材を形成してもよい。
<第3実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧板100は、第1実施形態および第2実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
本実施形態の化粧板100は、化粧材用基板である基材19と、化粧材用基板に張り合わされた化粧シート10,11,12,20,21,22のいずれかの化粧シートと、を備える。
この構成によれば、耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有する化粧板100を提供することができる。
以下、本開示を実施例によりさらに詳しく説明する。なお本開示は、実施例により何ら限定されるものではない。
(第1実施例)
〔実施例1-1〕
熱可塑性樹脂基材シートとして厚さ55μmのポリオレフィン系無機充填シート(リケンテクノス(株)製「OW」)を用い、表面側にグラビア印刷法によって木目模様を印刷して絵柄模様層を形成した。
続いてこの絵柄模様層上に、あらかじめコロナ処理を施した厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製「ルミラーT60」)をドライラミネートし、第1接着剤層及びポリエステル系樹脂層を形成した。
続いて、このポリエステル系樹脂層上に、ウレタン樹脂系接着剤を塗布し温風乾燥して第2接着剤層を形成した。
続いて、この第2接着剤層上に、溶融した2層の透明熱可塑性樹脂を多軸エクストルーダーによりTダイで押し出して2層からなる透明熱可塑性樹脂層を形成した。第1の樹脂には、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(理研ビタミン(株)製)を用い、第2の樹脂には、ポリプロピレン樹脂100質量部にフェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「IRGANOX1010」)を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)を0.3質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)を0.5質量部添加した樹脂を用いた。
2層からなる透明熱可塑性樹脂層を形成するのと同時に全層を導管エンボス版とゴムロールでニップしてエンボス加工とラミネートと同時に行った。これにより、図4に示したような熱可塑性樹脂基材シート1、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、及び透明熱可塑性樹脂層26(第1の樹脂層26a、第2の樹脂層26b)からなる構成の積層体を得た。ここで、第1の樹脂層の厚さは15μmとし、第2の樹脂層の厚さは85μmとした。
この積層体のエンボス面に表面処理を施した後、トップコート樹脂としてウレタン系樹脂(東洋インキ(株)製「URV238ワニス」)100質量部に対して硬化剤(東洋インキ(株)製「UR150Bワニス」)を10質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)を0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)を1質量部、及び抗ウイルス剤として後述の銀系無機抗菌剤を添加したアクリル系紫外線硬化型樹脂をグラビアコートで乾燥後の塗布量が7g/mとなるように塗布し、直ちに紫外線を照射して硬化させて表面保護層(図4の表面保護層7に相当)を形成した。表面保護層の厚さは10μmであった。
ここで、表面保護層に添加した抗ウイルス剤について詳細に記載する。
抗ウイルス剤としては、銀系無機抗菌剤(株式会社タイショーテクノス製、ビオサイドTB-B100)を用いた。当該抗ウイルス剤においては、有効成分である銀系材料が無機材料により担持されている。上記抗ウイルス剤は、表面保護を形成するアクリル系紫外線硬化樹脂100質量部に対し、0.2質量部となるように添加した。抗ウイルス剤の平均粒径は5μmであった。また上記抗ウイルス剤の粒径の第1ピークは3μmとし、第2ピークを7μmとした。
更に、熱可塑性樹脂基材シートの裏面に表面処理を施した後、この面にポリオール100重量部に対して、シリカ10重量部を添加して含有させ、イソシアネート3重量部を加えたものをプライマー塗工液とし、グラビアコートで乾燥後の塗布量が3g/mとなるようにコートしプライマー層を得た。
このような手順により、実施例1-1化粧シートを形成した。
〔実施例1-2〕
表面保護層における抗ウイルス剤の添加量を5質量部に変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-2の化粧シートを作製した。
〔実施例1-3〕
表面保護層における抗ウイルス剤の添加量を10質量部に変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-3の化粧シートを作製した。
〔実施例1-4〕
抗ウイルス剤の平均粒径を0.1μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-4の化粧シートを作製した。
〔実施例1-5〕
抗ウイルス剤の平均粒径を1μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-5の化粧シートを作製した。
〔実施例1-6〕
抗ウイルス剤の平均粒径を10μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-6の化粧シートを作製した。
〔実施例1-7〕
抗ウイルス剤の平均粒径を20μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-7の化粧シートを作製した。
〔実施例1-8〕
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-8の化粧シートを作製した。
〔実施例1-9〕
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを1μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-9の化粧シートを作製した。
〔実施例1-10〕
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-10の化粧シートを作製した。
〔実施例1-11〕
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを6μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-11の化粧シートを作製した。
〔実施例1-12〕
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-12の化粧シートを作製した。
〔実施例1-13〕
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを5μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-13の化粧シートを作製した。
〔実施例1-14〕
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを10μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-14の化粧シートを作製した。
〔実施例1-15〕
抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-15の化粧シートを作製した。
〔実施例1-16〕
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを0.1μmに変更し、第2ピークを4μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-16の化粧シートを作製した。
〔実施例1-17〕
抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを10μmに変更し、第2ピークを20μmに変更した。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例1-17の化粧シートを作製した。
〔実施例1-18〕
透明熱可塑性樹脂層を1層構成に変更した。具体的には、透明熱可塑性樹脂層として第1の樹脂層を設けずに、第2の樹脂(ポリプロピレン樹脂)による第2の樹脂層のみを設けることで1層の透明熱可塑性樹脂層を形成した。それ以外は、実施例1-2と同様の方法で、実施例1-18の化粧シートを作製した。
〔比較例1-1〕
表面保護層に抗ウイルス剤を添加しなかった。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、比較例1-1の化粧シートを作製した。
〔比較例1-2〕
抗ウイルス剤の添加量を0.1質量部に変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、比較例1-2の化粧シートを作製した。
〔比較例1-3〕
抗ウイルス剤の添加量を14質量部に変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、比較例3の化粧シートを作製した。
<評価判定>
上述した実施例1-1~1-18、比較例1-1~1-3で得られた化粧シートについて、以下の方法で抗ウイルス性能、耐傷性及び耐汚染性の評価を行った。
<評価>
〔抗ウイルス性能〕
実施例1-1~1-18及び比較例1-1~1-4の化粧シートについて、ISO 21702に準じた方法で抗ウイルス試験を実施した。50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、エンペローブウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間後)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
〈ウイルス感染価の測定(プラーク法)〉
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO・温度37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2~3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
〈ウイルス感染価の算出〉
以下の式に伴い、試料1cm当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm当たりのウイルス感染価(PFU/cm
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
〈抗ウイルス活性値の算出〉
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。ここで、抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)-log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm当たりのウイルス感染価の常用対数値
算出した抗ウイルス活性値を以下の◎、〇、×の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:抗ウイルス活性値3log10以上である場合
○:抗ウイルス活性値2log10以上である場合
×:抗ウイルス活性値2log10未満である場合
なお、「〇」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
〔耐傷性〕
化粧板を、JIS K 5600に規定される鉛筆硬度試験にかけ、傷の付き方を確認した。なお、鉛筆硬度の測定は、作製した化粧シートを厚さ3mmのMDF(Medium Density Fiberboard 中密度繊維板)(広葉樹タイプ)と接着剤層を介して貼り合わせた床用の化粧材を用いて評価した。
◎:7H以上で傷なし
○:4H~6Hで傷なし
△:H~3Hで傷なし
×:Hより軟らかいレベルで傷なし
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
〔耐汚染性〕
JAS汚染A試験に準拠する方法で化粧シートの耐汚染性を評価した。化粧シートに著しい着色のない場合を「〇」、化粧シートに着色残りがある場合を「×」とした。
なお、「〇」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
以上の評価結果を表1に示す。
Figure 2023168957000002
表1中に表されるように、本実施例に係る化粧シートは、耐傷性に優れ、かつ抗ウイルス性を有していることが分かった。また本実施形態に係る化粧シートは、抗ウイルス性、耐傷性および耐汚染性においてバランスが取れており、床材用の化粧シートとして有用である。
(第2実施例)
〔実施例2-1〕
表面保護層に造核剤ベシクルを添加し、2層構造の透明熱可塑性樹脂層には造核剤ベシクルは添加しなかった。それ以外は実施例1-2と同様の方法で、実施例2-1の化粧シートを作製した。
具体的には、また、表面保護層を形成するトップコート樹脂としてのウレタン系樹脂100質量部に対して、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを0.05質量部添加した。造核剤ベシクルは、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化したものを用いた。超臨界逆相蒸発法では、まずメタノール100重量部、分散剤としてのオレイン酸ナトリウム70重量部、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン5重量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とした。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100重量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながらさらに15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことで分散剤を内包したリン脂質からなる外膜を具備するリポソームを得た。なお、ベシクルの外膜を分散剤などの物質とする場合には、ホスファチジルコリンに替えて上述の分散剤を用いればよい。
〔実施例2-2〕
表面保護層における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-2の化粧シートを作製した。
〔実施例2-3〕
表面保護層に造核剤ベシクルを添加せず、透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層に造核剤ベシクルを添加した。具体的には、透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層を形成する第1の樹脂(透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)100質量部に対して、造核剤ベシクルを0.05質量部添加した。なお、第2の樹脂層を形成する第2の樹脂(ポリプロピレン樹脂)には、造核剤ベシクルを添加しなかった。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-3の化粧シートを作製した。
〔実施例2-4〕
透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例2-3と同様の方法で、実施例2-4の化粧シートを作製した。
〔実施例2-5〕
表面保護層に造核剤ベシクルを添加せず、透明熱可塑性樹脂層の第2の樹脂層に造核剤ベシクルを添加した。具体的には、透明熱可塑性樹脂層の第2の樹脂層を形成する第2の樹脂(透明ポリプロピレン樹脂)100質量部に対して、造核剤ベシクルを0.05質量部添加した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-5の化粧シートを作製した。
〔実施例2-6〕
透明熱可塑性樹脂層の第2の樹脂層における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例2-5と同様の方法で、実施例2-6の化粧シートを作製した。
〔実施例2-7〕
表面保護層に造核剤ベシクルを添加せず、透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層および第2の樹脂層にそれぞれ、0.05質量部の造核剤ベシクルを添加した。
それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-7の化粧シートを作製した。
〔実施例2-8〕
透明熱可塑性樹脂層の第2の樹脂層における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例2-7と同様の方法で、実施例2-8の化粧シートを作製した。
〔実施例2-9〕
表面保護層に造核剤ベシクルを添加せず、透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層および第2の樹脂層にそれぞれ、0.5質量部の造核剤ベシクルを添加した。
それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-9の化粧シートを作製した。
〔実施例2-10〕
透明熱可塑性樹脂層の第2の樹脂層における造核剤ベシクルの添加量を0.05質量部に変更した。それ以外は実施例2-9と同様の方法で、実施例2-10の化粧シートを作製した。
〔実施例2-11〕
表面保護層における造核剤ベシクルの添加量を0.1質量部に変更し、さらに透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層および第2の樹脂層にそれぞれ、0.1質量部の造核剤ベシクルを添加した。
それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-11の化粧シートを作製した。
〔実施例2-12〕
透明熱可塑性樹脂層の第1の樹脂層を形成せず、透明熱可塑性樹脂層を1層(第2の樹脂層のみ)とした。
それ以外は実施例2-11と同様の方法で、実施例2-12の化粧シートを作製した。
〔実施例2-13〕
透明熱可塑性樹脂層に造核剤ベシクルを添加しなかった。それ以外は実施例2-12と同様の方法で、実施例2-13の化粧シートを作製した。
〔実施例2-14〕
表面保護層に造核剤ベシクルを添加しなかった。それ以外は実施例2-12と同様の方法で、実施例2-14の化粧シートを作製した。
<評価判定>
上述した実施例2-1から2-14で得られた化粧シートについて、上記第一実施例と同様の方法で、抗ウイルス性能、耐傷性及び耐汚染性の評価を行った。当該評価の結果を表2に示す。
Figure 2023168957000003
表2中に表されるように、本実施例に係る化粧シートは、表面保護層又は透明熱可塑性樹脂層において造核剤ベシクルが添加されていることにより、造核剤ベシクルを添加していない第一実施例の化粧シートに比べて耐傷性が高いことがわかった。つまり、本実施例に係る化粧シートは、造核剤ベシクルを添加したことにより耐傷性にさらに優れ、かつ抗ウイルス性を有していることが分かった。また本実施形態に係る化粧シートは、抗ウイルス性および耐汚染性を有するとともに対称性に非常に優れており、土足用途の床材に用いる化粧シートとして有用である。
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、
少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、
前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上500μm 以下の範囲内であり、
前記ポリエステル系樹脂層は、2軸延伸されており、
前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であり、
前記ポリエステル系樹脂層の厚さと前記透明熱可塑性樹脂層の厚さとの合計値は、150μm以上700μm以下の範囲内であり、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含む
ことを特徴とする化粧シート。
(2)
前記熱可塑性樹脂基材シートは、ポリオレフィン系樹脂を含み、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内であり、
前記表面保護層又は前記透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方 に、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルが添加されている
ことを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート。
(3)
前記表面保護層は、前記電離放射線硬化型樹脂に対して前記造核剤ベシクルを添加して形成される
ことを特徴とする上記(2)に記載の化粧シート。
(4)
前記表面保護層における前記造核剤ベシクルの添加量は、前記電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(3)に記載の化粧シート。
(5)
前記透明熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン樹脂を用いて形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層上に形成され前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含む第2の樹脂層とを有し、
前記第1の樹脂は、前記ポリプロピレン樹脂のうち透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、
前記第2の樹脂は、前記ポリプロピレン樹脂のうち透明ポリプロピレン樹脂であり、
前記第1の樹脂又は前記第2の樹脂のうち少なくとも一方の前記ポリプロピレン樹脂に前記造核剤ベシクルが添加されている
ことを特徴とする上記(2)から(4)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(6)
前記透明熱可塑性樹脂層における前記造核剤ベシクルの添加量は、前記第1の樹脂又は前記第2の樹脂のうち少なくとも一方の前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることを特徴とする上記(5)に記載の化粧シート。
(7)
前記造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームである
ことを特徴とする上記(2)から(6)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(8)
前記造核剤ベシクルは、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに前記造核剤を内包させてベシクル化したものである
ことを特徴とする上記(2)から(7)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(9)
前記熱可塑性樹脂基材シートの前記絵柄模様層と反対側の面にプライマー層が設けられている
ことを特徴とする上記(1)から(8)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(10)
前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート。
(11)
化粧材用基板と、
前記化粧材用基板に張り合わされた上記(1)から(10)のいずれか1項に記載の化粧シートと、
を備えることを特徴とする化粧板。
本実施形態の化粧シートは、建築物の床面、壁面、天井等の内装、家具、各種キャビネット等の表面装飾材料、建具の表面化粧、車両の内装等に用いる表面化粧用として利用が可能である。
1 :熱可塑性樹脂基材シート
2 :絵柄模様層
3 :第1接着剤層
4 :ポリエステル系樹脂層
4a :ポリエチレンテレフタレート樹脂層
4b :ポリブチレンテレフタレート樹脂層
5 :第2接着剤層
6、26、216:透明熱可塑性樹脂層
7、70:表面保護層
26a、216a:透明熱可塑性樹脂層(第1の樹脂層)
26b、216b:透明熱可塑性樹脂層(第2の樹脂層)
8 :プライマー層
9 :エンボス
10、11、12、20、21、22:化粧シート
100 :化粧板

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、
    少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、
    前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内であり、
    前記ポリエステル系樹脂層は、2軸延伸されており、
    前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であり、
    前記ポリエステル系樹脂層の厚さと前記透明熱可塑性樹脂層の厚さとの合計値は、150μm以上700μm以下の範囲内であり、
    前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂および抗ウイルス剤を含む
    ことを特徴とする化粧シート。
  2. 前記熱可塑性樹脂基材シートは、ポリオレフィン系樹脂を含み、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内であり、
    前記表面保護層又は前記透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方に、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルが添加されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記表面保護層は、前記電離放射線硬化型樹脂に対して前記造核剤ベシクルを添加して形成される
    ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  4. 前記表面保護層における前記造核剤ベシクルの添加量は、前記電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項3に記載の化粧シート。
  5. 前記透明熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン樹脂を用いて形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層上に形成され前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含む第2の樹脂層とを有し、
    前記第1の樹脂は、前記ポリプロピレン樹脂のうち透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、
    前記第2の樹脂は、前記ポリプロピレン樹脂のうち透明ポリプロピレン樹脂であり、
    前記第1の樹脂又は前記第2の樹脂のうち少なくとも一方の前記ポリプロピレン樹脂に前記造核剤ベシクルが添加されている
    ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  6. 前記透明熱可塑性樹脂層における前記造核剤ベシクルの添加量は、前記第1の樹脂又は前記第2の樹脂のうち少なくとも一方の前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
  7. 前記造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームである
    ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  8. 前記造核剤ベシクルは、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに前記造核剤を内包させてベシクル化したものである
    ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  9. 前記熱可塑性樹脂基材シートの前記絵柄模様層と反対側の面にプライマー層が設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  10. 前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  11. 化粧材用基板と、
    前記化粧材用基板に張り合わされた請求項1から10のいずれか1項に記載の化粧シートと、
    を備えることを特徴とする化粧板。
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