JP2021169157A - 化粧シート及び化粧材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐傷性、耐摩耗性が優れた化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧材を提供する。【解決手段】化粧シート及び化粧材は、基材シート1上に、絵柄模様層2、接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層4、及び表面保護層5がこの順に積層され、前記基材シート1は、ポリオレフィン系樹脂を含み、前記基材シート1の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であり、少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層4にはエンボスが形成されており、前記透明熱可塑性樹脂層4の厚さは、150μm以上500μm以下の範囲内であり、前記表面保護層5は、電離放射線硬化型樹脂にナノサイズの造核剤又はナノサイズの無機粒子を添加して形成されている。【選択図】図1

Description

本開示は、化粧シート及び化粧材に関する。
木質系基材からなる板張り用の床用化粧材としては、合板に突き板を貼り、木工機械にて溝加工して、溝部を着色した後、紫外線硬化型塗料を塗布し硬化させたものが知られている。しかしながら、突き板が天然木のため、色がばらつくなど、壁や天井、家具との色調の調和が困難であった。
その他に、木質系基材の表面に凹状溝を設け、表面に導管着色用合成樹脂塗料を塗布し、凹状溝以外の塗料を除去した後、木目柄の導管凹部を形成し、凹状溝以外の木質系基材表面に透明合成樹脂塗料を塗布する方法も知られている。
一方、木質系基材上に、着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層をこの順に設けた熱可塑性樹脂化粧シートを積層した床用化粧材も知られているが、その床用化粧材は、主に居室用に使用され、素足や靴下、スリッパなどの歩行を想定していた。そのため、上記床用化粧材を、靴やヒールなどを想定した土足用途の床材として使用する場合は、耐傷性能等が劣り、床用化粧材表面に傷がつきやすく、絵柄のすり減りが目立つという問題点があった。また、硬さ性能を上げるために透明熱可塑性樹脂層と着色熱可塑性樹脂層の厚さをそれぞれ厚くしすぎると、木質系基材との連続ラミネート時にライン上でシートカットが困難なものとなり、加工性が悪いといった問題点もあった。なお、床用化粧材に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載した技術がある。
特開2014−188941号公報
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、床材性能として必要な耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性をそれぞれ十分に備え、かつ耐傷性及び耐摩耗性に優れた化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧材を提供することである。
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧シートは、基材シート上に、絵柄模様層、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、前記基材シートは、ポリオレフィン系樹脂を含み、前記基材シートの厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であり、少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、150μm以上500μm以下の範囲内であり、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂にナノサイズの造核剤又はナノサイズの無機粒子を添加して形成される。
また、本開示の別の態様に係る化粧シートは、基材シート上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、前記基材シートは、ポリオレフィン系樹脂を含み、前記基材シートの厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であり、少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、前記透明熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン樹脂にナノサイズの造核剤又はナノサイズの無機粒子を添加して形成され、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、150μm以上500μm以下の範囲内であり、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含む。
本開示の一態様に係る化粧シートであれば、床材性能として必要な耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性をそれぞれ十分に備え、かつ耐傷性及び耐摩耗性に優れた化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧材を提供することが可能となる。
本開示の第一実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第二実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第三実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第四実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。 本開示の第五実施形態に係る化粧材の一構成例を示す断面図である。
以下に、図面を参照して、本開示の一実施形態に係る化粧シート及び化粧材について説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
1.第一実施形態
本開示の第一実施形態に係る化粧シートについて説明する。本実施形態に係る化粧シート20は、例えば、建物の床材、特に土足で歩行される空間の床材上に施工される化粧材である。なお、以下の説明では、化粧シート20の靴と接触する側を「上」とし、化粧シート20が床面に接触する側を「下」として説明する場合がある。
(1.1)化粧シートの基本構成
以下、本開示の実施形態に係る化粧シート20の構成について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の化粧シート20の構造の例を図1に示す。化粧シート20は、木質系基材、無機質系基材、合成樹脂基材、金属系基材等々の基材へ貼り合わせるオレフィン系化粧シートまたはポリエステル系化粧シートであり、特に、耐傷性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性が求められる部分に使用される化粧シートである。以下、化粧シート20の構成について、具体的に説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る化粧シート20の一構成例を説明するための断面図である。図1に示すように、化粧シート20は、基材シート1上に、絵柄模様層2、接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層4、及び表面保護層5がこの順に積層されている。
基材シート1は、緩衝層として機能し、耐摩耗性を向上させるための層である。絵柄模様層2は、基材シート1よりも上側に設けられ、化粧シート20に所望の絵柄による意匠性を付与するための層である。透明熱可塑性樹脂層4は、化粧シート20の上面側に設けられ、靴のかかとや石等によって化粧シート20に生じる傷を抑制するための層である。表面保護層5は、靴と接触する化粧シート20の最上面に設けられ、化粧シート20の保護や化粧シート20表面の艶の調整のために設けられる層である。また、接着剤層3は、絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層4とを接着する層である。
以下、各層について詳細に説明する。
〔基材シート〕
基材シート1としては、ポリオレフィン系樹脂からなるシートを用いる。例えば、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルム等が好適に使用できる。
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、特にポリプロピレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が好ましい。
ポリプロピレンを主成分とする単独又は共重合体も好ましく、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2から20のα−オレフィンが挙げられる。その他、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も好ましい。
基材シート1に用いるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントに高結晶性で且つ高融点の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにガラス転移温度が−70℃以下の非晶性ポリエーテルを使用したブロックポリマーである。特に、アイソタクチックポリプロピレンからなるハードセグメントとアタクチックポリプロピレンからなるソフトセグメントとを重量比80:20で混合したものが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム状にすればよい。
基材シート1の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常50μm以上200μm以下の範囲内であれば好ましい。基材シート1の厚さが上記数値範囲内であれば、床材性能として必要な耐衝撃性、耐キャスター性及び加工性をそれぞれ十分に備えた化粧シートとなる。
基材シート1には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、後述する着色剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。基材シートの着色態様には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)があり、これらは任意に選択できる。例えば、被着材(化粧シートを接着する基材)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、被着材の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
基材シート1の片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、基材シート表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
基材シート1の片面又は両面には、必要に応じて、プライマー層(例えば、被着材の接着を容易とするための裏面プライマー層、絵柄模様層の形成を容易とするための表面プライマー層)を設けてもよい。プライマー層を設けることにより、隣接層(例えば、被着材)との層間密着力を高めることができる。裏面プライマー層7の詳細については後述する。
〔絵柄模様層〕
基材シート1の上には、絵柄模様層2が形成されている。
絵柄模様層2は、化粧シートに所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
絵柄模様層2の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すればよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層2の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
絵柄模様層2の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1μm以上15μm以下であれば好ましい。また乾燥後の層厚は0.1μm以上10μm以下であれば好ましい。
〔接着剤層〕
絵柄模様層2の上には、接着剤層3が形成されている。接着剤層3は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。この接着剤層3は、絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層4とを接着するために形成されている。
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。
化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹
脂も適用し得る。
接着剤層3は、例えば、接着剤を絵柄模様層2の上に塗布し、透明熱可塑性樹脂層4を構成する透明性ポリプロピレン系樹脂を塗工後、乾燥・硬化させることにより形成できる。乾燥温度・乾燥時間等の条件は特に限定されず、接着剤の種類に応じて適宜設定すればよい。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
接着剤層3の厚さは特に限定されないが、乾燥後の厚さが0.1μm以上30μm以下であれば好ましく、1μm以上20μm以下であればさらに好ましい。
〔透明熱可塑性樹脂層〕
接着剤層3の上には、透明熱可塑性樹脂層4が形成されている。
透明熱可塑性樹脂層4の厚さは、150μm以上500μm以下の範囲内であれば好ましく、300μm以上500μm以下の範囲内であればより好ましい。透明熱可塑性樹脂層4の厚さが上記数値範囲内であれば、エンボスによる凹凸を形成することに支障がないことのほか、耐衝撃性や耐キャスター性において十分な効果が得られる。あるいは、意匠性の面でも、透明熱可塑性樹脂層4の存在が絵柄模様層2と相俟って、より深みや奥行きを感じさせる効果を持つ。具体的には、透明熱可塑性樹脂層4の厚さが150μm以上であると、耐衝撃性や耐キャスター性の各性能が得られる。一方、透明熱可塑性樹脂層4の厚さが500μm以下であると、製造時の生産性が向上しコスト的にも有利となることがある。
透明熱可塑性樹脂層4としては、上記厚さを有するものであれば特に限定されないが、ホモポリプロピレンを含むものが好ましい。ホモポリプロピレンの含有割合は特に限定されないが、透明熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂の75重量%以上が好ましい。
透明熱可塑性樹脂層4は、透明熱可塑性樹脂層4単独の引張り弾性率が1000MPa以上、特に1500MPa以上であれば好ましい。引張り弾性率の上限は特に限定的ではないが、2000MPa程度とすればよい。
引張り弾性率は、透明熱可塑性樹脂層4と厚さ及び材質が同じである透明性ポリプロピレン系樹脂シートを作製して測定することができる。なお、本明細書における引張り弾性率は、JIS K6734「プラスチック−硬質ポリ塩化ビニルシート−寸法及び特性−第2部:厚さ1mm未満のシート」の規定に従って測定した値である。
透明熱可塑性樹脂層4は、上記透明性ポリプロピレン系樹脂を、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により透明性接着剤層の上にラミネートしてもよく、また既成のフィルムを用いてもよい。
透明熱可塑性樹脂層4の表面であって、後記する表面保護層5を形成する面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
透明熱可塑性樹脂層4は、ポリプロピレン樹脂に単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを添加して形成された層であってもよい。
以下、この点について詳しく説明する。
<ポリプロピレン樹脂>
透明熱可塑性樹脂層4に用いるポリプロピレン樹脂は、柔軟性の高い、エチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や、公知の非晶性ポリプロピレン樹脂をランダムポリプロピレン樹脂や結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂に混合したものであってもよい。曲げ加工などの加工性をより重視する用途においては、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に対し、例えば、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することができる。
また、本実施形態においては、透明熱可塑性樹脂層4に用いるポリプロピレン樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を、全ポリプロピレン樹脂の質量に対して30質量%以上100質量%以下の範囲内で含むものを用いてもよい。高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が30質量%未満の場合、結晶性が不足するため、十分な強度が得られないことがある。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量13の炭素C(核種)を用いた13C−NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。そして、結晶性ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C−NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。ペンタッド分率は、主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほど結晶化度が高いことを表す。
また、ポリプロピレン樹脂として、例えば、自由末端長鎖分岐を付与したポリプロピレン樹脂(a)と、自由末端長鎖分岐を付与していないポリプロピレン樹脂(b)との混合物で、その混合物の質量平均分子量/数平均分子量として定義される分子量分布Mw/Mnが1以上5以下の範囲内にあり、かつ、そのポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)の混合樹脂の、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数が、1%以上90%以下の範囲内にあるものを用いてもよい。これにより、化粧シート20を、例えば後述する木質基材層9に貼り合わせた後の折り曲げ加工において、白化や割れを抑制することができる。
ここで、分子量分布は、分子量Miの分子がNi個存在する場合に、数平均分子量Mn=Σ(Mi×Ni)/ΣNi、質量平均分子量Mw=Σ(Ni×Mi2)/Σ(Ni×Mi)の比、Mw/Mnとして定義される値である。1に近いほど分子量の分布が狭く、均一性が高くなる。この分子量分布が5以下になるようにすれば、分子量を必要十分な大きさに揃えることができ、白化や割れの抑制に寄与するようになる。一般的には、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
また、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数は、ポリプロピレン樹脂中の結晶化度を調べる指標として有用である。具体的には、試料を沸騰n−ヘプタンで一定時間抽出を行い、抽出されない部分の質量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。詳しくは、円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、恒温恒湿の室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中に試料(粉体またはフレーク状)8g以上10g以下を入れ、秤量カップ、ピンセットを用いて精秤する。これをヘプタン約80ccの入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器を組み立てる。これをオイルバスまたは電機ヒーターで加熱し、12時間抽出する。加熱は、冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。続いて、抽出残分の入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器にいれて80℃、100mmHg以下の真空度で5時間乾燥する。乾燥後、恒温恒湿中に2時間放置した後、精秤し、(P/Po)×100によりアイソタクチック指数を算出する。ただし、Poは抽出前の試料質量(g)、Pは抽出後の試料質量(g)である。
アイソタクチック指数を90%以下にすることで、ポリプロピレン結晶起因によるシート剛性を抑制することができる。アイソタクチック指数を下げる方法としては、例えば、非晶質ポリプロピレン成分(シンジオタクチックポリプロピレンやアタクチックポリプロピレン等)を一部に使う方法や、エチレンやα−オレフィン等のオレフィンモノマーを1種類以上ランダム共重合させる方法、各種ゴム成分(例えばエチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等の成分)を添加する方法を用いることができる。
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合樹脂の溶融張力(2.0mm径のノズルキャピラリーレオメーターを用い、温度条件230℃、60mm/分で押し出し、2mm/分で引き取るときの張力)は、100mN以上500mN以下の範囲内にあることが望ましく、300mN以上400mN以下の範囲内にあることがより望ましい。500mNを超えると、溶融粘度が高くなりすぎて、安定した成膜ができなくなる。また100mN以下では、長鎖分岐成分が不十分となり、所望の性能を得難い。
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合物の、JIS−K6760にて規定される230℃におけるメルトフローレートが5g/10min以上50g/10min以下の範囲内にすることで、分子量をある一定値以上で、かつ安定的な製膜状態を保持することができる。より好適なメルトフローレートの範囲は、10g/10min以上30g/10min以下の範囲内であり、更に好ましくは10g/10min以上25g/10min以下の範囲内である。メルトフローレートが50g/10minを超えると、Tダイによる溶融押し出し時に、Tダイから溶融押し出しされた樹脂が、中央に集まろうとする効果(ネックイン)が大きくなり、Tダイから溶融押し出しされた樹脂の端部厚さが増大してしまう。端部の厚さ増大は冷却効率の低下と巾方向の厚さ安定性に影響を与えるため、安定した製膜がしづらくなる。また、5g/10minよりも低いと、溶融樹脂のドローレゾナンスが悪くなり、Tダイから出た直後の溶融樹脂の速度(初速)と冷却ロールに触れた直後の樹脂の速度とのギャップに溶融樹脂が対応できなくなってしまい、安定した製膜がしづらくなる。
<造核剤ベシクル>
透明熱可塑性樹脂層4はナノサイズの造核剤を含んでいてもよい。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用される。透明熱可塑性樹脂層4は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート20の耐傷性、耐衝撃性、耐キャスター性等を向上することができる。なお、本実施形態において、透明熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下の範囲内であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。このため、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の着色ポリプロピレンフィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した着色ポリプロピレンフィルムを実現することができる。
ここで、造核剤を単純添加した場合は、ポリプロピレン樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなると共に添加した造核剤量に対して結晶核の数が、造核剤ベシクルとして添加した場合よりも大幅に少なくなってしまうことがある。このため、ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が大きくなってしまい、曲げ加工時の割れや白化が抑制できないことがある。よって、結晶化度を高めることによる弾性率向上と加工性が両立できないことがある。
本実施形態の化粧シート20を構成する透明熱可塑性樹脂層4は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。造核剤ベシクルの添加量が0.05質量部未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、造核剤ベシクルの添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法が好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本実施形態では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シート20においては、造核剤ベシクルを、リン脂質を含む外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質で構成することによって、透明熱可塑性樹脂層4の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
上述のように、本実施形態の化粧シート20の特徴(発明特定事項)の一つは、「透明熱可塑性樹脂層4が、ベシクルに内包された造核剤を含有する」ことにある。そして、造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち透明熱可塑性樹脂層4中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シート20の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シート20の状態においても、造核剤は透明熱可塑性樹脂層4に高分散されている。しかしながら、透明熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂組成物に造核剤をベシクルの状態で添加して透明熱可塑性樹脂層4を作製した後の、化粧シート20の作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シート20の処理工程によってばらつくためである。そして、この造核剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本実施形態は、従来に比して、透明熱可塑性樹脂層4に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート20の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
ここで、上記構成の造核剤ベシクルは、後述する表面保護層5に含有させていてもよく、透明熱可塑性樹脂層4の場合と同様に、その特徴を、完成された化粧シート20の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。また、上記構成の造核剤ベシクルは、表面保護層5にのみ含有されていてもよい。
透明熱可塑性樹脂層4において、層の数は、4層以上も可能だが、押し出し機の構造が複雑化し作業の煩雑さが大きくなるため、3層までが好ましい。もちろん、2層であってもよいし、1層であってもよい。
透明熱可塑性樹脂層4に形成されるエンボスは、絵柄模様層2が木目の場合には、自然木の持つ導管を凹みで表現してもよく、木目以外の場合でも砂目や幾何学模様の凹凸で意匠性を高めることが可能である。このように、エンボスを形成することで、化粧シート20の表面に立体感を与え、意匠性を向上させることができる。また、エンボスは、透明熱可塑性樹脂層4のみに留まらず、他の層に及んでもよい。エンボスを形成する方法としては、各層を貼り合せた後に全体を加熱してエンボスロールを押し当てる後エンボス方法や、透明熱可塑性樹脂層4をTダイから押し出してエンボスロールに押し当てる押し出し同時エンボス法等を用いることができる。このように、エンボスは、表面保護層5を形成する前に形成したものでもよく、あるいは表面保護層5を形成した後に形成したものでもよい。
また、必要に応じて、透明熱可塑性樹脂層4の表面にプライマー層(表面保護層5の形成を容易とするための表面プライマー層)を設けてもよい。
表面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シート1の片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1g/m以上100g/m2以下であれば好ましく、0.1g/m以上50g/mであればさらに好ましい。
表面プライマー層の厚さは特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下であれば好ましく、0.1μm以上1μm以下であればさらに好ましい。
〔表面保護層〕
透明熱可塑性樹脂層4の上には、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層5が形成されている。電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層5を形成することにより、化粧シート20の耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高めることができる。
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250以上100000程度が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190nm以上380nmが好ましい。
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100keV以上1000keV以下であり、好ましくは100keV以上300keV以下のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
表面保護層5は、例えば、透明熱可塑性樹脂層4の上に電離放射線硬化型樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、電離放射線を照射して電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより形成できる。
表面保護層5の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上20μm以下程度である。
表面保護層5の表面(大気に露出している面)には、凹凸が形成されていてもよい。通常はエンボス加工により凹凸模様を形成する。エンボス加工方法は特に限定されず、例えば、透明性アクリル系樹脂層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧・賦形後、冷却する方法が好ましい方法として挙げられる。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
表面保護層5は、上述した電離放射線硬化型樹脂に単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを添加して形成された層であってもよい。表面保護層5は、主成分としての電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。造核剤ベシクルの添加量が0.05質量部未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、造核剤ベシクルの添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
また、電離放射線硬化型樹脂に添加する、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであってもよいし、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに前記造核剤を内包させてベシクル化したものであってもよい。
(耐候剤)
本開示の化粧シート20を構成する層の少なくとも1種には、必要に応じて、耐候剤を配合してもよい。耐候剤としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が好ましい。これらの耐候剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、特に塩基性成分(特にヒドロキシル基)を有するものが好ましい。例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の、2’−ヒドロキシフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の、2’−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類等の、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4, 4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の、2ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、4−tert−ブチル−フェニル−サリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応性紫外線吸収剤等も用いられる。上記の中でも、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。なお、これら紫外線吸収剤の添加量は、樹脂分に対して、通常0.1質量%以上5質量%以下程度である。
紫外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、各層に100重量ppm以上10000重量ppm以下程度、好ましくは500重量ppm以上7500重量ppm以下程度である。添加する層は特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できる。
(ヒンダードアミン系光安定剤)
紫外線による各層の劣化をさらに防止し、耐候性を向上させるためには、他の耐候剤としてヒンダードアミン系光安定剤を添加することが好ましい。例えば、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、その他、例えば特公平4−82625号公報に開示されている化合物等が挙げられる。これらの光安定剤の添加量は特に限定されないが、通常、樹脂分に対して0.1重量%以上5重量%以下程度である。
なお、ヒンダードアミン系光安定剤を添加する場合には、基材シート1をはじめ、化粧シート20を構成する層中に塩素原子を含む樹脂を用いないことが耐候性向上の点から好ましい。例えば、バインダー樹脂に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィン等の分子中に塩素原子を含む樹脂を用いると、紫外線又は熱の作用によりこれら塩素含有樹脂から脱塩素反応で塩化水素が発生した場合に、これがヒンダードアミン系光安定剤と反応してその作用を失活・阻害するため、該捕捉剤による耐候性向上効果が十分に発揮されないおそれがあるからである。
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は特に限定されないが、各層に100重量ppm以上10000重量ppm程度、好ましくは500重量ppm以上7500重量ppm以下程度である。添加する層は特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できる。
(1.2)化粧シートの製造方法
以下、化粧シート20の製造方法について簡単に説明する。
まず、基材シート1上に、例えば、印刷によって絵柄模様層2を形成する。
その後、その絵柄模様層2上に、造核剤ベシクルを含む溶融した透明熱可塑性樹脂を多層押し出し機から押し出して形成した複数の層を積層することで、透明熱可塑性樹脂層4を形成する。次に、透明熱可塑性樹脂層4にエンボス加工を行う。最後に、エンボス加工が施された透明熱可塑性樹脂層4上に、例えば、ウレタン系樹脂に、硬化剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を添加した樹脂組成物を塗布した後、その樹脂組成物を乾燥させて表面保護層5を形成する。こうして、本実施形態に係る化粧シート20を製造する。
なお、本実施形態に係る化粧シート20の製造方法では、絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層4との間に接着剤層3を形成する工程を含んでもよい。
(1.3)変形例
上述した化粧シート20は、表面に凹凸が形成されている場合について説明したが、このような構成に限られない。例えば、化粧シート20は、表面保護層5、又は表面保護層5及び透明熱可塑性樹脂層4の上面に凹凸が付与されず平坦に形成されていても良い。
(1.4)第一実施形態の効果
以上のような化粧シート20は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の化粧シート20は、樹脂材料とナノサイズの造核剤とを含み、結晶性樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さく高結晶化された透明熱可塑性樹脂層4を有している。
この構成によれば、耐傷性及び耐摩耗性に優れ、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制可能な化粧シート20を提供することができる。
(2)本実施形態の化粧シート20は、透明熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂材料100質量部に対して造核剤が0.05質量部以上0.5質量部以下添加されて高結晶化された透明熱可塑性樹脂層4を有することが好ましい。
この構成によれば、透明熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂材料の結晶化度が十分に向上し、重歩行時に要求される耐傷性及び耐摩耗性を十分に有する化粧シート20を得ることができる。
(3)本実施形態の化粧シート20は、外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルが添加された樹脂材料により透明熱可塑性樹脂層4が形成されることが好ましい。
この構成によれば、透明熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂材料の結晶化度が十分に向上し、重歩行時に要求される耐傷性及び耐摩耗性を十分に有する化粧シート20を得ることができる。
(4)本実施形態の化粧シート20は、造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
この構成によれば、透明熱可塑性樹脂層4の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
(5)本実施形態の化粧シート20は、基材シート1の一方の面に絵柄模様層2が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート20の意匠性を向上させることができる。
2.第二実施形態
以下、本開示の第二実施形態に係る化粧シートについて、図2を用いて説明する。
図2は、本開示の第二実施形態に係る化粧シート21の一構成例を説明するための断面図である。図2に示すように、化粧シート21は、基材シート1上に、絵柄模様層2、接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層14、及び表面保護層15がこの順に積層されている。
すなわち、化粧シート21は、透明熱可塑性樹脂層4に代えて透明熱可塑性樹脂層14を備え、表面保護層5に代えて表面保護層15を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート20と相違する。
以下、透明熱可塑性樹脂層14及び表面保護層15について説明する。なお、透明熱可塑性樹脂層14及び表面保護層15以外の各層(基材シート1、絵柄模様層2及び接着剤層3)については、化粧シート20の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
(2.1)化粧シートの基本構成
〔透明熱可塑性樹脂層〕
透明熱可塑性樹脂層14は、樹脂材料と無機材料とを含む層である。第一実施形態にかかる化粧シート20では、造核剤を含む樹脂材料によって高い結晶性を有する高耐傷性樹脂シートを形成して透明熱可塑性樹脂層4とした。一方、第二実施形態にかかる化粧シート20では、硬度の高い無機粒子を含む樹脂材料によって高い硬度を有する高耐傷性樹脂シートを形成して透明熱可塑性樹脂層14とすることで、高耐傷性を有する化粧シート21を得る。
無機粒子としては、例えばナノサイズのシリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子が挙げられる。
高耐傷性層27は、例えば、樹脂材料100質量部に対して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で無機粒子が添加された樹脂材料により形成される。
透明熱可塑性樹脂層14は、例えば、ナノサイズの無機粒子を含む無機粒子含有ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、押し出し成形などによって厚さが70μm以上110μm以下のシート状に成形されることにより得られる。
〔表面保護層〕
表面保護層15は、樹脂材料と無機材料とを含む層である。第一実施形態にかかる化粧シート20では、造核剤を含む樹脂材料によって高い結晶性を有する高耐傷性樹脂シートを形成して表面保護層5とした。一方、第二実施形態にかかる化粧シート21では、硬度の高い無機粒子を含む樹脂材料によって高い硬度を有する高耐傷性樹脂シートを形成して表面保護層15とすることで、高耐傷性を有する化粧シート21を得る。
無機粒子としては、例えばナノサイズのシリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子が挙げられる。
表面保護層15は、例えば、樹脂材料100質量部に対して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で無機粒子が添加された樹脂材料により形成される。
表面保護層15は、例えば、ナノサイズの無機粒子を含む無機粒子含有ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、押し出し成形などによって厚さが70μm以上110μm以下のシート状に成形されることにより得られる。
(2.2)第二実施形態の効果
以上のような化粧シート21は、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(6)本実施形態の化粧シート21は、樹脂材料と無機粒子とを含み、高硬度化された高耐傷性層27を有している。
この構成によれば、耐傷性に優れ、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制可能な化粧シート21を提供することができる。
3.第三実施形態
以下、本開示の第三実施形態に係る化粧シートについて、図3を用いて説明する。
図3は、本開示の第二実施形態に係る化粧シート22の一構成例を説明するための断面図である。図3に示すように、化粧シート22は、基材シート1上に、着色隠蔽層6、絵柄模様層2、接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層4、及び表面保護層5がこの順に積層されている。
すなわち、化粧シート22は、着色隠蔽層6を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート20と相違する。
以下、着色隠蔽層6について説明する。なお、着色隠蔽層6以外の各層(基材シート1、絵柄模様層2、接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層4、及び表面保護層5)については、化粧シート20の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
(3.1)化粧シートの基本構成
〔着色隠蔽層〕
着色隠蔽層6は、図3に示すように、基材シート1と絵柄模様層2との間に形成され得る。着色隠蔽層6は、化粧シート22の表面から被着材の地色を隠蔽したい場合に設けられる。基材シート1が透明性である場合は勿論、基材シート1が隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化するために形成してもよい。
着色隠蔽層6を形成するインクとしては、絵柄模様層2を形成するインクであって隠蔽着色が可能なものが使用できる。
着色隠蔽層6の形成方法は、基材シート1全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、前記したロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が好ましいものとして挙げられる。
着色隠蔽層6の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、乾燥後の層厚は0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
(3.2)第三実施形態の効果
以上のような化粧シート22は、第一、第二実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(7)本実施形態の化粧シート22は、基材シート1と絵柄模様層2との間に着色隠蔽層6を有している。
この構成によれば、化粧シート22の表面から被着材の地色を隠蔽することが可能な化粧シート22を提供することができる。
4.第四実施形態
以下、本開示の第四実施形態に係る化粧シートについて、図4を用いて説明する。
図4は、本開示の第四実施形態に係る化粧シート23の一構成例を説明するための断面図である。図4に示すように、化粧シート23は、基材シート1上に、絵柄模様層2、接着剤層3、透明熱可塑性樹脂層40、及び表面保護層5がこの順に積層されている。
すなわち、化粧シート23は、多層構造の透明熱可塑性樹脂層40を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート20と相違する。
以下、透明熱可塑性樹脂層40について説明する。なお、透明熱可塑性樹脂層40以外の各層(基材シート1、絵柄模様層2、接着剤層3、及び表面保護層5)については、化粧シート20の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
(4.1)化粧シートの基本構成
〔透明熱可塑性樹脂層〕
図4では、透明熱可塑性樹脂層40は、絵柄模様層2側から、予め定めた樹脂(以下、「第1の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第1の樹脂層41、及び第1の樹脂とは異なる樹脂(以下、「第2の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第2の樹脂層42の2層がこの順に積層されて形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層40は、第1の樹脂層41及び第2の樹脂層42の2層以外の層を有する3層以上の層であってもよい。
本実施形態において、第1の樹脂層41の厚さは、例えば、10μm以上であればよく、透明熱可塑性樹脂層40全体の厚さの20%以下であればよい。また、第1の樹脂層41の厚さは、50μm以上であれば好ましく、透明熱可塑性樹脂層40全体の厚さの10%以下であればより好ましい。第1の樹脂層41の厚さが10μm未満であれば、第1の樹脂層41の密着安定性が低下する傾向がある。また、第1の樹脂層41の厚さが透明熱可塑性樹脂層40全体の厚さの20%超であれば、化粧シート23全体の表面強度が低下する傾向がある。つまり、第1の樹脂層41の厚さが10μm以上であり、且つ透明熱可塑性樹脂層40全体の厚さの20%以下であれば、第1の樹脂層41の密着安定性を維持しつつ、化粧シート23全体の表面強度を維持することができる。また、第1の樹脂層41の厚さは、10μm以上であり、且つ第1の樹脂層41及び第2の樹脂層42の2層のみで構成された透明熱可塑性樹脂層40全体の厚さの20%以下であってもよく、その場合であっても第1の樹脂層41の密着安定性を維持しつつ、化粧シート23全体の表面強度を維持することができる。
また、第1の樹脂は、例えば、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、第2の樹脂は、例えば、透明ポリプロピレン樹脂であってもよい。第1の樹脂層41に対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、第2の樹脂層42に対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。この場合であっても第1の樹脂層41の密着安定性を維持しつつ、化粧シート23全体の表面強度を維持することができる。具体的には、第1の樹脂層41に対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、80質量%以上であってもよく、第2の樹脂層42に対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。
第1の樹脂層41と第2の樹脂層42とを備えた場合には、第1の樹脂層41が基材シート1との接着性を担保し、第2の樹脂層42が主要部分となって、その他の物性を担うなど、材料の設計の巾を広げることが可能となる。第1の樹脂層41に透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含めることで、層間の接着性を向上させることができる。また、第2の樹脂層42を透明ポリプロピレン樹脂を含めた層とすることで、樹脂内部の耐脆化を低減することができる。
なお、第1の樹脂層41と第2の樹脂層42の2層からなる透明熱可塑性樹脂層40を形成する方法としては、2軸押し出し機を用いて第1の樹脂層41と第2の樹脂層42とを2層同時に押し出して貼り合わせる方法が好ましい。
また、第2の樹脂層42は、第2の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂とともに、紫外線吸収剤及び光安定剤のいずれか一方を含んで構成される層であってもよい。
ここで、透明熱可塑性樹脂層40に含まれる造核剤ベシクルについて、透明熱可塑性樹脂層40のうち、第1の樹脂層41及び第2の樹脂層42の少なくとも一方に含有されていればよい。その場合には、透明熱可塑性樹脂層40を構成する第1の樹脂層41は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。また、透明熱可塑性樹脂層40を構成する第2の樹脂層42は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。
(4.2)第四実施形態の効果
以上のような化粧シート23は、第一実施形態から第三実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(8)本実施形態の化粧シート23は、透明熱可塑性樹脂層40が透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含む第1の樹脂層41を有している。
この構成によれば、層間の接着性を向上させることが可能な化粧シート23を提供することができる。
(9)本実施形態の化粧シート23は、透明熱可塑性樹脂層40が透明ポリプロピレン樹脂を含む第2の樹脂層42を有している。
この構成によれば、樹脂内部の耐脆化を低減することが可能な化粧シート23を提供することができる。
5.第五実施形態
以下、本開示の第五実施形態に係る化粧材について、図5を用いて説明する。
図5は、本開示の第五実施形態に係る化粧材30の一構成例を説明するための断面図である。図5に示すように、化粧材30は、本開示の第一実施形態に係る化粧シート20を構成する基材シート1と、木質基材層9とを、裏面接着剤層8を介して貼りあわせて形成されている。また、基材シート1の絵柄模様層2側とは反対側の面には、裏面プライマー層7が形成されている。以下、化粧材30の構成する層について説明する。
(5.1)化粧材の基本構成
〔裏面プライマー層〕
裏面プライマー層7は、基材シート1と裏面接着剤層8との間に形成されており、例えば木質基材層9の接着を容易にする役割を果たす。裏面プライマー層7は、公知のプライマー剤を基材シートの片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤等が挙げられる。
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1g/m2以上100g/m2以下の範囲内であることが好ましく、0.1g/m2以上50g/m2以下の範囲内であることがより好ましい。
裏面プライマー層7の厚さは特に限定されないが、通常0.01μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下の範囲内であることがより好ましい。
〔裏面接着剤層〕
基材シート1と木質基材層9との間には裏面接着剤層8が形成されている。裏面接着剤層8は、木質基材層9の上に、裏面接着剤層8を形成するための組成物を塗布して形成してもよいし、基材シート1の上に、裏面接着剤層8を形成するための組成物を塗布して形成してもよい。裏面接着剤層8に含まれる接着剤は、基材シート1に含まれる熱可塑性樹脂との組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択可能である。
裏面接着剤層8を形成するための組成物の塗布量は、3g/m以上20g/m以下の範囲内であることが好ましい。裏面接着剤層8を形成するための組成物の塗布量が3g/m以上であると、基材シート1と木質基材層9との間の密着性が向上する。また、裏面接着剤層8を形成するための組成物の塗布量が20g/m以下であると、裏面接着剤層8を形成するための組成物の塗工が均一となり、基材シート1と木質基材層9との間の密着性が均一になる。
〔木質基材層〕
木質基材層9の材料としては、例えば、木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板を採用することができる。
(5.2)化粧材の製造方法
以下、化粧材30の製造方法について簡単に説明する。
まず、上述した化粧シート20の基材シート1上に、裏面接着剤層8を塗工した後、ラミネータを用いて、化粧シート20と木質基材層9とを貼り合せて、化粧材30を製造する。
(5.3)第五実施形態の効果
以上のような化粧材30は、第一実施形態から第四実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(10)本実施形態の化粧材30は、裏面接着剤層8及び木質基材層9を有している。
この構成によれば、床材の不陸の影響を受けにくくし、かつ化粧材30全体の強度を向上させることが可能な化粧材30を提供することができる。
(11)本実施形態の化粧材30は、裏面接着剤層8の塗布量は、3g/m以上20g/m以下の範囲内である。
この構成によれば、基材シート1と木質基材層31との間の密着性が向上させることが可能な化粧材30を提供することができる。
以下、本開示に係る化粧シートについて、実施例を挙げて説明する。
実施例では、第四実施形態で説明した構成の第1の樹脂層及び第2の樹脂層を備える化粧シートを作製し、床材上に貼り合せて化粧シートの評価を行った。
<実施例1>
基材シートとして厚さ200μmのポリオレフィン系無機充填シートを用い、表面側にグラビア印刷法によって木目模様を印刷して絵柄模様層を形成した。
続いて、この絵柄模様層上に、ウレタン樹脂系接着剤を塗布し温風乾燥で接着剤層を形成した。
続いて、この接着剤層上に、溶融した複数層の透明熱可塑性樹脂を多軸エクストルーダーよりTダイで押し出して積層することで、透明熱可塑性樹脂層を形成した。透明熱可塑性樹脂層の単独の引張弾性率は800MPaとした。また、透明熱可塑性樹脂層におけるポリプロピレン樹脂の含有量を60質量%とした。
透明熱可塑性樹脂層のうち第1の樹脂には、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用いた。第2の樹脂には、ポリプロピレン樹脂100質量部にフェノール系酸化防止剤を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を0.3質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5質量部添加した樹脂を用いた。
透明熱可塑性樹脂を形成するのと同時に、導管エンボス版とゴムロールとによって、基材シート、絵柄模様層、接着剤層、及び透明熱可塑性樹脂層の積層体をニップして、エンボス加工とラミネートとを同時に行った。ここで、透明熱可塑性樹脂層の厚さは、500μmとした。透明熱可塑性樹脂層のうち、第1の樹脂層の厚さは77μmとし、第2の樹脂層の厚さは423μmとした。
この積層体のエンボス面に表面処理を施した後、トップコート樹脂をグラビア印刷で乾燥後の塗布量が5g/mとなるように塗布し、直ちに紫外線を照射して硬化させて表面保護層を形成した。なお、トップコート樹脂は、ウレタン系樹脂100質量部に対して硬化剤を10質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部添加した樹脂組成物とした。また、トップコート樹脂には、ウレタン系樹脂100質量部に対して単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを0.01質量部添加した。
更に、基材シートの裏面に表面処理を施した後、この面にポリオール100重量部に対して、シリカ10質量部を添加して含有させ、イソシアネート3質量部を加えたものをプライマー塗工液とし、グラビアコートで乾燥後の塗布量が3g/mとなるようにコートし裏面プライマー層を得た。
このような手順により、実施例1の化粧シートを形成した。
なお、後述する裏面接着剤層の塗布量は、2g/mとした。
<実施例2>
造核剤ベシクルではなく無機粒子をトップコート樹脂に0.01質量部添加して表面保護層を形成した。それ以外は実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを形成した。
<実施例3>
基材シートの厚さを50μmに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層の厚さを150μmに変更した。
続いて、透明熱可塑性樹脂層のうち第1の樹脂には、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを0.01質量部添加した。第2の樹脂には、第1の樹脂と同様に造核剤ベシクルを0.01質量部添加した。
さらに、トップコート樹脂に造核剤ベシクルを添加せずに表面保護層を形成した。それ以外は実施例1と同様にして実施例3の化粧シートを形成した。
<実施例4>
単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた。それ以外は実施例3と同様にして実施例4の化粧シートを形成した。
<実施例5>
透明熱可塑性樹脂のうち第1の樹脂には、造核剤ベシクルではなく無機粒子を0.01質量部添加した。第2の樹脂には、第1の樹脂と同様に造核剤ベシクルではなく無機粒子を0.01質量部添加した。それ以外は実施例3と同様にして実施例5の化粧シートを形成した。
<実施例6>
基材シートの厚さを55μmに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層の厚さを150μmに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層の単独の引張弾性率は1000MPaに変更した。
続いて、透明熱可塑性樹脂層のうち第1の樹脂には、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを0.01質量部添加した。第2の樹脂には、第1の樹脂と同様に造核剤ベシクルを0.01質量部添加した。それ以外は実施例1と同様にして実施例6の化粧シートを形成した。
<実施例7>
透明熱可塑性樹脂層の単独の引張弾性率を800MPaに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層におけるポリプロピレン樹脂の含有量を75質量%に変更した。それ以外は実施例6と同様にして実施例7の化粧シートを形成した。
<実施例8>
透明熱可塑性樹脂層の単独の引張弾性率を800MPaに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層のうち第1の樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.05質量部に変更した。同様に、第2の樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.05質量部に変更した。それ以外は実施例6と同様にして実施例8の化粧シートを形成した。
<実施例9>
透明熱可塑性樹脂層のうち第1の樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。同様に、第2の樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例8と同様にして実施例9の化粧シートを形成した。
<実施例10>
透明熱可塑性樹脂のうち第1の樹脂には、造核剤ベシクルではなく無機粒子を0.05質量部添加した。第2の樹脂には、第1の樹脂と同様に造核剤ベシクルではなく無機粒子を0.05質量部添加した。それ以外は実施例8と同様にして実施例10の化粧シートを形成した。
<実施例11>
透明熱可塑性樹脂層のうち第1の樹脂における無機粒子の添加量を0.5質量部に変更した。同様に、第2の樹脂における無機粒子の添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例10と同様にして実施例11の化粧シートを形成した。
<実施例12>
透明熱可塑性樹脂層の単独の引張弾性率を800MPaに変更した。また、トップコート樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.05質量部に変更して表面保護層を形成した。それ以外は実施例6と同様にして実施例12の化粧シートを形成した。
<実施例13>
トップコート樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更して表面保護層を形成した。それ以外は実施例12と同様にして実施例13の化粧シートを形成した。
<実施例14>
造核剤ベシクルではなく無機粒子をトップコート樹脂に0.05質量部添加して表面保護層を形成した。それ以外は実施例12と同様にして実施例14の化粧シートを形成した。
<実施例15>
トップコート樹脂における無機粒子の添加量を0.5質量部に変更して表面保護層を形成した。それ以外は実施例14と同様にして実施例15の化粧シートを形成した。
<実施例16>
透明熱可塑性樹脂層の単独の引張弾性率を800MPaに変更した。また、裏面接着剤層の塗布量を、3g/mに変更した。それ以外は実施例6と同様にして実施例16の化粧シートを形成した。
<実施例17>
裏面接着剤層の塗布量を、20g/mに変更した。それ以外は実施例16と同様にして実施例17の化粧シートを形成した。
<実施例18>
基材シートの厚さを50μmに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層におけるポリプロピレン樹脂の含有量を75質量%に変更した。続いて、透明熱可塑性樹脂層のうち第1の樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。同様に、第2の樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更した。また、トップコート樹脂における造核剤ベシクルの添加量を0.5質量部に変更して表面保護層を形成した。さらに、裏面接着剤層の塗布量を、3g/mに変更した。それ以外は実施例6と同様にして実施例18の化粧シートを形成した。
<実施例19>
基材シートの厚さを200μmに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層の厚さを500μmに変更した。さらに、裏面接着剤層の塗布量を、3g/mに変更した。それ以外は実施例18と同様にして実施例19の化粧シートを形成した。
<実施例20>
基材シートの上に、アクリルウレタン系樹脂溶液をグラビア印刷により塗布して厚さ2μmの着色隠蔽層を形成した。それ以外は実施例19と同様にして実施例20の化粧シートを形成した。
<比較例1>
基材シートの厚さを40μmに変更した。また、基材シートの上に、アクリルウレタン系樹脂溶液をグラビア印刷により塗布して厚さ2μmの着色隠蔽層を形成した。それ以外は実施例18と同様にして比較例1の化粧シートを形成した。
<比較例2>
基材シートの厚さを55μmに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層の厚さを100μmに変更した。それ以外は比較例1と同様にして比較例2の化粧シートを形成した。
<比較例3>
透明熱可塑性樹脂層の厚さを150μmに変更した。また、透明熱可塑性樹脂層に造核剤ベシクルを添加しなかった。さらに、表面保護層に造核剤ベシクルを添加しなかった。それ以外は比較例2と同様にして比較例3の化粧シートを形成した。
以上得られた20種類の化粧シートを、裏面接着剤層に使用される2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(「BA−10L」と「BA−11B」を100対5で混合))を用いて木質基材層である厚さ3.0mmのMDFに貼り合わせた。この貼り合わせにはラミネータを用いた。化粧シートとMDFとをそれぞれ貼り合わせた後、12時間養生した。そして、上述した化粧シートと化粧材を用いて以下の評価試験を実施した。耐衝撃試験については、作製した化粧材にさらに12mmのラワン合板を貼り合わせ、評価試験を実施した。
<評価>
〔耐傷性〕
実施例1〜20及び比較例1〜3の化粧材をJIS K 5600に規定される鉛筆硬度試験にかけ、傷の付き方を確認した。
◎:5H以上で傷なし
○:2H〜4Hで傷なし
△:HB〜Hで傷なし
×:Bより軟らかいレベルで傷あり
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
〔耐摩耗性〕
実施例1〜20及び比較例1〜3の化粧材をビニル床上に貼り合せ、フローリングの日本農林規格(JAS:Japanese Agricultural Standards)に規定された摩耗A試験を行った。化粧材の絵柄の消失が始まるまでの回転数を確認した。
◎:3000回転以上
○:2500回転以上3000回転未満
△:2000回転以上2500回転未満
×:2000回転未満
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
〔耐キャスター性〕
実施例1〜20及び比較例1〜3の化粧材上で、ポリカーボネート製のダブルキャスター(直径40mm、1輪の幅9mm、2輪間の幅18mm)に25kgの重りで荷重をかけ(約245N)、1万回(1ストローク20cm以上、5千往復)、キャスターを速度20cm/秒で動かした。その後の痕について観察した。
◎:著しい変化なし
○:わずかに艶変化あり
△:わずかに艶変化あり、傷あり
×:著しい艶変化あり、傷あり
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
〔耐衝撃性〕
実施例1〜20及び比較例1〜3の化粧材をラワン合板に貼り合わせ、デュポン式落球試験(JIS K 5600)に準拠して試験を行った。ただし、評価方法としては、高さ300mmから重り500gを化粧材上に落下させて、化粧材の凹み量の測定および表面の観察を行った。
◎:凹み量は2.0mm以下であり、表面に割れなし
○:凹み量は2.0mm以下であるが、わずかに表面に割れあり
△:凹み量は2.0mm以下であるが、割れあり
×:凹み量が2.0mm以上、または著しい割れあり
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
〔加工性〕
化粧シートを化粧材に加工する際に選定可能な方法について確認した。
◎:インラインでのロールラミネート可能
○:インラインでのロールラミネート可能だが、加工にやや慎重性を要する
△:インラインでのロールラミネート可能だが、加工にかなりの慎重性を要する
×:ロールラミネート不可。枚葉での貼り合せのみ可能
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
以上の評価結果を表1及び表2にまとめた。
Figure 2021169157
Figure 2021169157
表1中に表されるように、実施例1〜20、比較例1の評価結果から、実施例1〜20のように基材シートの厚さが50μm以上200μm以下である場合には、比較例1のように基材シートの厚さが50μm以上200μm以下である場合と比べて高い耐傷性を有することがわかった。
また、実施例1〜20、比較例2の評価結果から、実施例1〜20のように透明熱可塑性樹脂層の厚さが150μm以上500μm以下である場合には、比較例2のように基材シートの厚さが150μm以上500μm以下である場合と比べて高い耐傷性及び耐摩耗性を有することがわかった。
また、実施例1〜20、比較例3の評価結果から、実施例1〜20のように透明熱可塑性樹脂層又は表面保護層においてナノサイズの造核剤又はナノサイズの無機粒子を含む場合には、比較例2のように明熱可塑性樹脂層及び表面保護層においてナノサイズの造核剤及びナノサイズの無機粒子を含まない場合と比べて高い耐傷性を有することがわかった。
なお、本開示の粘着シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
1:基材シート
2:絵柄模様層
3:接着剤層
4、14,40:透明熱可塑性樹脂層
41:第1の樹脂層
42:第2の樹脂層
5,15:表面保護層
6:着色隠蔽層
7;裏面プライマー層
8:裏面接着剤層
9:木質基材層
20,21,22,23:化粧シート
30:化粧材

Claims (15)

  1. 基材シート上に、絵柄模様層、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、
    前記基材シートは、ポリオレフィン系樹脂を含み、
    前記基材シートの厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であり、
    少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、
    前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、150μm以上500μm以下の範囲内であり、
    前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂にナノサイズの造核剤又はナノサイズの無機粒子を添加して形成されることを特徴とする化粧シート。
  2. 基材シート上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、
    前記基材シートは、ポリオレフィン系樹脂を含み、
    前記基材シートの厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であり、
    少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、
    前記透明熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン樹脂にナノサイズの造核剤又はナノサイズの無機粒子を添加して形成され、
    前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、150μm以上500μm以下の範囲内であり、
    前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含むことを特徴とする化粧シート。
  3. 前記表面保護層は、前記電離放射線硬化型樹脂にナノサイズの造核剤又はナノサイズの無機粒子を添加して形成されることを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  4. 前記透明熱可塑性樹脂層に含まれるポリプロピレン樹脂の含有量は、前記透明熱可塑性樹脂層の質量に対して、75質量%以上の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。
  5. 前記透明熱可塑性樹脂層の引張弾性率が1000MPa以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧シート。
  6. 前記基材シートと前記絵柄模様層との間に、着色隠蔽層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧シート。
  7. 前記造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧シート。
  8. 前記造核剤又は前記無機粒子の添加量は、前記電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  9. 前記造核剤又は前記無機粒子の添加量は、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項2又は3に記載の化粧シート。
  10. 前記造核剤は、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の化粧シート。
  11. 前記造核剤は、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに前記造核剤を内包させてベシクル化して形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の化粧シート。
  12. 前記無機粒子は、ナノサイズのシリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は11のいずれか1項に記載の化粧シート。
  13. 前記透明熱可塑性樹脂層は、前記絵柄模様層側に形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層上に形成され、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層とを備え、
    前記第1の樹脂は、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、
    前記第2の樹脂は、透明ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の化粧シート。
  14. 前記基材シートの前記絵柄模様層側とは反対側に設けられたプライマー層を備えることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の化粧シート。
  15. 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の化粧シートを構成する前記基材シートと、木質基材層とを、接着剤を介して貼り合わせ、
    前記接着剤の塗布量は、3g/m以上20g/m以下の範囲内であることを特徴とする化粧材。
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