JP7169398B2 - 抗ウィルス性の化粧板、及び、抗ウィルス性の化粧板の製造方法 - Google Patents
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本発明の抗ウィルス性の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する上記抗ウィルス機能層の膜厚の比率が、0.5~1.0倍であることが望ましい。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が小さいと、抗ウィルス機能層の膜厚を薄くしても、無機抗ウィルス粒子を抗ウィルス機能層の表面に露出させることが難しく、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層の内部に埋没してしまうため、無機抗ウィルス粒子の本来の機能を発揮することが難しくなる。一方、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が大きいと、化粧板の意匠性が悪化するだけでなく、抗ウィルス機能層へ無機抗ウィルス粒子を固定することが難しく、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層から容易に脱落してしまうため、結果として抗ウィルス性及びその長期耐久性を発現することが難しくなる。
抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01~10g/m2であると、変色等による化粧板の意匠性を低下させることなく、抗ウィルス機能を発現することができる。抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01g/m2未満である場合、無機抗ウィルス粒子の量が少なすぎるため、充分な抗ウィルス性、抗菌性が得られにくい。一方、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が10g/m2を超えると、無機抗ウィルス粒子によって化粧板の意匠性が低下しやすくなる。
抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を無機粒子に含有させることで、抗ウィルス性機能層に固定化された無機抗ウィルス粒子とウィルスが接触し、不活化しやすくなるからである。なお、「無機粒子が抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を含有する」とは、抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物を無機粒子の表面または内部に保持することをいい、抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物と無機粒子とは直接またはバインダを介して間接的に結合していてもよい。中でも、無機粒子の構成元素の一部を金属イオンと置換(イオン交換)させる態様が最も好適である。
無機ゾルの乾燥体によって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
この場合、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。具体的には、無機高分子はシロキサンが望ましい。
無機抗ウィルス粒子の少なくとも一部が抗ウィルス機能層の表面から露出していることで、無機抗ウィルス粒子、特に、無機抗ウィルス粒子に固定化されている抗ウィルス性の金属、金属イオンもしくは金属化合物がウィルスと接触する確率を高くすることができ、抗ウィルス性能を改善できるからである。
無機ゾルによって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
上記無機高分子によって、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。
基材フィルムの表面にコロナ放電処理が施されていると、塗工液のぬれ性が良くなるため、無機抗ウィルス粒子が均一に分散された皮膜を形成できる。
抗ウィルス機能層が無機ゾルの乾燥体を含むと、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子をしっかりと固定することができる。
図1に示す化粧板1は、基板11と、基板11の表面上に積層される表層樹脂層12と、表層樹脂層12上に配置される抗ウィルス機能層13と、を備えている。抗ウィルス機能層13は、無機抗ウィルス粒子14を含んでいる。
また、本発明の化粧板を構成する表層樹脂層に用いることができる樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。これらの中では、メラミン樹脂を用いることが望ましい。すなわち、本発明の化粧板において、表層樹脂層は、メラミン樹脂層であることが望ましい。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径は、任意の10個の無機抗ウィルス粒子について、粒子径の平均値を算出することによって求められる。具体的には、1個の無機抗ウィルス粒子に着目して最大直径と最小直径を計測して、その平均を当該無機抗ウィルス粒子の平均粒子径とし、同様の測定を他の9個の無機抗ウィルス粒子についても行い、合計10個の粒子について平均を求めることで、平均粒子径を計測する。
一方、抗ウィルス機能層の膜厚は、抗ウィルス機能層の任意の6箇所について、膜厚の平均値を算出することによって求められる。
無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層に埋まりやすくなるため、化粧板の抗ウィルス機能が低下する傾向にある。一方、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が10μmを超えると、無機抗ウィルス粒子の固定化が不充分となり、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層から脱落しやすくなるため、抗ウィルス性能が低下する傾向にある。また、無機抗ウィルス粒子が抗ウィルス機能層から脱落すると、表面に窪みができるため、化粧板の外観及び意匠性に不具合が生じる。これに対し、無機抗ウィルス粒子の平均粒子径が0.5~10μmであると、無機抗ウィルス粒子の機能が充分に発揮される。また、化粧板の外観及び意匠性においても問題とならない。
抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01~10g/m2であると、変色等による化粧板の意匠性を低下させることなく、抗ウィルス機能を発現することができる。抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が0.01g/m2未満である場合、無機抗ウィルス粒子の量が少なすぎるため、充分な抗ウィルス性、抗菌性が得られにくい。一方、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が10g/m2を超えると、無機抗ウィルス粒子によって化粧板の意匠性が低下しやすくなる。
例えば、スプレー液中に含まれる無機抗ウィルス粒子の量が1~10g/m2である場合、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子の量は、スプレー塗着効率が2%であれば、0.02~0.2g/m2となり、スプレー塗着効率が5%であれば0.05~0.5g/m2となる。
本発明の化粧板において、無機抗ウィルス粒子は、粉末自身の着色によって化粧板の意匠性を損なわないために、白色粉末である銀イオン交換ゼオライト、ナノ銀が担持されたアルミナ、ナノ銀が担持されたシリカ、ナノ銀が担持された酸化亜鉛、ナノ銀が担持された酸化チタン、又は、ナノ銀が担持されたリン酸カルシウムからなる無機粒子であることが望ましい。
無機ゾルの乾燥体によって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
この場合、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。
この場合、スプレー液に含まれる無機ゾルは、後述する塗工液に含まれる無機ゾルと同じであることが望ましい。同様に、スプレー液に含まれる無機高分子は、後述する塗工液に含まれる無機高分子と同じであることが望ましい。
無機ゾルによって、表層樹脂層上に抗ウィルス機能層の皮膜を形成することができるため、無機抗ウィルス粒子を固定することができる。
上記無機高分子によって、抗ウィルス機能層の表面の潤滑性、手触り感触を良好にすることができる。
(一次メラミン含浸工程)
厚さ0.2~0.3mmの紙ロールを、メラミン樹脂を含む溶液中に浸漬した。溶液の温度20℃、浸漬時間2分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、ロール紙にメラミン樹脂を含浸させた。なお、ロール紙の移動速度は、10~20cm/秒であった。
メラミン溶液中を通過したロール紙は、乾燥機より、温度100℃、乾燥時間30秒となるように乾燥させた。
乾燥工程を経た紙ロールを、メラミン樹脂からなる溶液中に浸漬させた。溶液の温度20℃、浸漬時間30分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、メラミン樹脂を紙ロールに含浸させた。なお、ロール紙の移動速度は、10~20cm/秒であった。
メラミン溶液中を通過したロール紙は、乾燥機より、温度100℃、乾燥時間2時間となるように乾燥させた。乾燥後、300mm×300mmに切断した。
無機抗ウィルス粒子として、平均粒子径2.5μmの銀イオン及び亜鉛イオン交換ゼオライト粉末(シナネンゼオミック製ゼオミックAK-10N)とシリカゾル(SiO2濃度25wt%)とマイブロックワコー101(固形分濃度30wt%)とを、130:20:1の重量割合で含むメタノール混合溶液からなるスプレー液を調製した。スプレー液を常温でスプレーに充填させて、コロナ放電処理が施されたOPPフィルムの表面に吹き付けた。
無機抗ウィルス粒子が付着したOPPフィルムの表面に対し、シリカゾル(SiO2濃度25wt%)とマイブロックワコー101(固形分濃度30wt%)とメタノールとを20:1:10の重量割合で混合した塗工液を番手7番のコートバーを用いて塗工し、その後室温で自然乾燥させることにより、OPPフィルムの表面に抗ウィルス機能層が定着した転写フィルムを作製した。
厚み0.3~0.4mmのフェノール樹脂含浸コア紙を4枚積層し、その上に、メラミン樹脂含浸紙を積層させた。さらに、抗ウィルス機能層がメラミン樹脂含浸紙と接するように転写フィルムをメラミン樹脂含浸紙上に積層させ、温度143℃、プレス圧80kg/cm2、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着した。この後、さらにOPPフィルムを剥離し、これにより、メラミン樹脂層上に、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層が配置された化粧板の作製を完了した。
図3より、表層樹脂層12であるメラミン樹脂層上に、無機抗ウィルス粒子14を含む抗ウィルス機能層13が配置されていることが確認できる。
なお、図3では、抗ウィルス機能層にクラックが存在しているが、ウィルスを含む流体がこのクラックにトラップされ、抗ウィルス粒子と接触するため、抗ウィルス機能の発現に有利である。
実施例1では、樹脂層と抗ウィルス層を構成するシリカゾルの乾燥体の熱膨張係数が異なるため、上記組合せ工程におけるプレス後の冷却で、抗ウィルス層にクラックが形成されるものと考えられる。無論、シリカゾルに混合されている無機高分子であるマイブロックワコー101(アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル)の量を調整して、抗ウィルス層と樹脂層との熱膨張係数を整合させることでクラックの無い化粧板とすることも可能である。
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:5に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:20に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:10に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:50に変更し、バーコートの番手を7番から4番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:5に変更し、バーコートの番手を7番から9番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
(転写フィルムの準備2:抗ウィルス機能層形成工程)において、シリカゾルとマイブロックワコー101とメタノールとの重量割合を20:1:2に変更し、バーコートの番手を7番から14番に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により化粧板を作製した。
図4より、表層樹脂層12であるメラミン樹脂層上に、無機抗ウィルス粒子14を含む抗ウィルス機能層13が配置されていることが確認できる。
各実施例及び比較例で作製した化粧板の外観を目視で観察したところ、いずれも問題がないことが確認された。
各実施例及び比較例で作製した化粧板の抗ウィルス性を評価するために、JIS R1756 可視光応答形光触媒材料の抗ウィルス性試験方法を改変した手法により抗ウィルス性に関する測定を行った。改変点は、「4時間の1000ルクス光照射」を「室内蛍光灯下(300ルクス程度)での放置」とした点である。測定結果は、大腸菌に対して不活化されたウィルス濃度で表す。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用した。ウィルス不活度とは、バクテリオファージを用いた抗ウィルス性試験で、ファージウィルスQβ濃度:830万個/ミリリットルを用いて、大腸菌に感染することができるウィルスの濃度を測定することにより、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度を算出した結果である。すなわち、ウィルス不活度は、ファージウィルスQβ濃度に対して、大腸菌に感染することができない濃度の度合いであり、(ファージウィルスQβ濃度-大腸菌に感染することができるウィルスの濃度)/(ファージウィルスQβ濃度)×100で算出することができる。ウィルス不活度の値が高いほど(ウィルス不活性度の絶対値が高い程)、抗ウィルス性に優れるといえる。
実施例2で作製した化粧板について、拭き取り荷重に対する耐久性を評価するために、水道水を染み込ませたマイクロファイバークロスを用いて、150Paの圧力で3650回の拭き取り試験を実施した。
11 基板
12 表層樹脂層
13 抗ウィルス機能層
14 無機抗ウィルス粒子
20 基材フィルム
30 転写フィルム
31a,31b,31c,31d 基板となる樹脂含浸紙
32 表層樹脂層となる樹脂含浸紙
Claims (7)
- 基板と、
前記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、
前記表層樹脂層上に配置され、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層と、からなり、
前記無機抗ウィルス粒子は、銀イオンで交換されたゼオライトであり、
前記抗ウィルス機能層は、無機高分子の硬化体を含み、
前記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する前記抗ウィルス機能層の膜厚の比率は、0.5~1.0倍であることを特徴とする抗ウィルス性の化粧板。 - 前記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径は、0.5~10μmである請求項1に記載の化粧板。
- 前記抗ウィルス機能層に含まれる前記無機抗ウィルス粒子の量は、0.01~10g/m2である請求項1又は2に記載の化粧板。
- 前記抗ウィルス機能層に含まれる前記無機抗ウィルス粒子の量は、0.02~0.5g/m2である請求項1又は2に記載の化粧板。
- 前記抗ウィルス機能層は、無機ゾルの乾燥体を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧板。
- 前記抗ウィルス機能層は、前記無機抗ウィルス粒子を含む皮膜を有し、
前記皮膜は、無機ゾルの乾燥体を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧板。 - 前記無機抗ウィルス粒子は、その少なくとも一部が前記抗ウィルス機能層の表面から露出している請求項1~6のいずれか1項に記載の化粧板。
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