JP2021042161A - 脱毛剤、脱毛モデル動物及び白髪モデル動物 - Google Patents

脱毛剤、脱毛モデル動物及び白髪モデル動物 Download PDF

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Abstract

【課題】効果の持続期間が短いことや痛みを伴うこと、或いは費用の点等、従来の脱毛・除毛方法が抱える問題点を解消し得る、新たな脱毛手段の提供を課題とする。また、脱毛の予防・治療に有効な薬剤及び治療法の開発に有用なアッセイ系及びそれに利用されるツールを提供することも課題とする。【解決手段】特定の元素又はその化合物を脱毛剤の有効成分に用いる。また、特定の元素を投与することで脱毛を誘導し、脱毛モデル動物を作製する。脱毛モデル動物は、脱毛の予防・治療に有効な薬剤及び治療法の開発に有用である。【選択図】なし

Description

本願は脱毛剤及び脱毛モデル動物に関する。脱毛モデル動物は、例えば、脱毛の予防又は治療(改善)に有効な物質(抗脱毛剤)のスクリーニングに有用である。別の局面として、本願は白髪モデル動物に関連する発明も提供する。
脱毛(除毛)に対するニーズは高く、その市場規模は約1,500億円を上回ると試算されている(2015年現在)。一般に、脱毛方法は3種類、即ち、シェービング(毛剃り)、ワックス脱毛(毛抜き)及び光/レーザー/電気脱毛、に大別される。シェービングは低価格であるものの一時的な効果(数日)に留まる。ワックス脱毛は比較的低価格であり、細かい産毛もまとめて脱毛でき且つ比較的長期間の効果(2〜4週間)が得られるという長所があるものの、脱毛部位に制限があり(顔以外が対象となる)、痛みも伴う。光/レーザー/電気脱毛については、最も長期間の効果(1年以上)が得られるが、痛みを伴うことや安全性、費用の点が問題となる。このように、既存の脱毛方法はいずれも一長一短であり、昨今高まりをみせるニーズに十分応えられていない。尚、新たな試みとして毛乳頭細胞に細胞死を誘導して脱毛(永久脱毛)する方法(特許文献1を参照)や特定の遺伝子の発現抑制によって毛の成長を抑制し、除毛又は脱毛効果を得ること(特許文献2を参照)などが提案されている。
特開2017−100957号公報 特開2017−88547号公報
Xing L. et al., Nature Medicine volume 20, pages 1043-1049 (2014)
以上の背景の下で本発明は、従来の脱毛(除毛)方法の問題点を解消し得る、新たな脱毛手段の提供を課題とする。ここで、脱毛は美容分野で注目されている一方、円形脱毛症に代表されるように疾病としても重要である。現在、脱毛に直接且つ特異的に作用する薬剤はなく、脱毛の治療は対症療法が中心となる。この状況を打開すべく本発明は、脱毛の予防・治療に有効な薬剤及び治療法の開発に有用なアッセイ系及びそれに利用されるツールを提供することも課題とする。
上記課題に鑑み、まず、実用性に優れた脱毛モデル動物を作製することを目指し研究を進めた。その結果、実験動物(マウス)に対してマンガン(Mn)を1回投与するだけで発毛の遅延が生じ、ほんの数日で円形脱毛症様の表現型が得られた。即ち、簡便な操作で、しかも短時間で脱毛モデルを作製することに成功した。円形脱毛症のモデルマウスは報告があるが(非特許文献1)、発症までに数ヶ月を要する。これに比較すると、上記脱毛モデルの作製(脱毛の誘導)に要する時間は極めて短い。非特許文献1(Xing L. et al.,の論文)では、C3H/HeJ系統のマウスが数ヶ月後に円形脱毛症を自然発症する機序について、CD8陽性およびNKG2D陽性のT細胞がIFN-γ、IL-2やIL-15などの液性因子を介してJAKシグナル伝達系を活性化し、毛包の上皮細胞を攻撃する自己免疫反応により発症する事が示されている。
次に、Mnと同様の効果がないか他の元素についても検討したところ、有効な元素が特定された。一部の元素はMnと同等以上の効果を示した。効果が認められた元素は脱毛剤の有効成分として有望である。また、更なる検討によって、Mnによる作用(毛包(毛幹部、毛球部)の構成細胞が障害を受ける一方で、バルジ領域の毛包幹細胞及び色素幹細胞は実質的な影響を受けないこと)が明らかになり、Mn等を脱毛剤の有効成分に利用する上で有益な知見、具体的には、毛周期に回復不能な障害を与えることなく(永久脱毛にはならない)比較的長期の脱毛効果が得られること、が判明した。また、皮下注射ではなく、Mnを含有するクリームの皮膚への塗布によっても同様の表現型(発毛の遅延)が得られ、Mn等が脱毛効果に優れ且つ製品化に適した特性を持つことが示唆された。
一方、Mnを投与したマウスの経過を観察したところ、処置後、短期間で投与部位の周囲に白髪の出現を認めた。即ち、Mnによって白髪が誘発された。この事実は、任意の時期に短時間で任意の場所を白髪にできる技術の開発に成功したことを意味する。この技術による白髪モデル動物は白髪の予防・治療法の開発等に有用であり、例えば、白髪の予防・治療薬のスクリーニング系を構築し得る。
上記の成果及び考察に基づき、以下の発明が提供される。
[1]クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を有効成分として含有する脱毛剤。
[2]有効成分が、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質である、[1]に記載の脱毛剤。
[3]有効成分が、マンガン(Mn)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質である、[1]に記載の脱毛剤。
[4]脱毛又は剃毛処理後の皮膚に適用される、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の脱毛剤。
[5]それを皮膚に適用した後、適用部位が脱毛又は剃毛処理される、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の脱毛剤。
[6]毛周期に影響を与えることで脱毛効果を発揮する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の脱毛剤。
[7]毛包のバルジ領域に存在する、毛包幹細胞及び色素幹細胞を障害することなく、脱毛効果を発揮する、[6]に記載の脱毛剤。
[8]齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するステップを含む、脱毛モデル動物の作製方法。
[9]前記齧歯目動物がマウス又はラットである、[8]に記載の作製方法。
[10]前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、[8]又は[9]に記載の作製方法。
[11]前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、[8]又は[9]に記載の作製方法。
[12][8]〜[11]のいずれか一項に記載の作製方法で得られる、脱毛モデル動物。
[13]以下のステップ(1)及び(2)を含む、脱毛の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング方法:
(1)齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するとともに、被験物質を投与するステップ、
(2)前記物質の投与による脱毛又は発毛の遅延に対する被験物質の予防又は治療効果を判定するステップ。
[14]前記齧歯目動物がマウス又はラットである、[13]に記載のスクリーニング方法。
[15]前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、[13]又は[14]に記載のスクリーニング方法。
[16]前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、[13]又は[14]に記載のスクリーニング方法。
[17]前記被験物質が、前記物質を投与した部位又はその近傍に投与される、[13]〜[16]のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
[18]齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するステップを含む、白髪モデル動物の作製方法。
[19]前記齧歯目動物がマウス又はラットである、[18]に記載の作製方法。
[20]前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、[18]又は[19]に記載の作製方法。
[21]前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、[18]又は[19]に記載の作製方法。
[22][18]〜[21]のいずれか一項に記載の作製方法で得られる、白髪モデル動物。
[23]以下のステップ(1)及び(2)を含む、白髪の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング方法:
(1)齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するとともに、被験物質を投与するステップ、
(2)前記物質の投与による白髪の誘発に対する被験物質の予防又は治療効果を判定するステップ。
[24]前記齧歯目動物がマウス又はラットである、[23]に記載のスクリーニング方法。
[25]前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、[23]又は[24]に記載のスクリーニング方法。
[26]前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、[23]又は[24]に記載のスクリーニング方法。
[27]前記被験物質が、前記物質を投与した部位又はその近傍に投与される、[23]〜[26]のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
脱毛実験の方法。 Mn投与後の経過観察。上:投与2日後。Mn投与群では脱毛(未発毛)が確認された(矢印a)。下:投与後14日後。Mn投与群の投与部位の中心には3mm程度の黒毛がうっすらと生え(矢印A)、その後、白髪部分は黒毛にもどる事が分かった(矢印B)。 Mn投与後の経過観察(成体マウスでの脱毛)。投与3日後で発毛の遅延が観察された(点線の囲い部分)。 Mn投与後の経過観察(別系統マウスでの脱毛)。投与6日後で脱毛(未発毛)が確認された(中央部分)。 各種元素の脱毛効果。マンガン(Mn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、イットリウム(Y)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)及びガリウム(Ga)に脱毛効果が認められた。 Mn投与後の皮膚の病理解析。投与2日後にH&E染色を行った。 Mn投与後の皮膚の病理解析。H&E染色像の表皮部分(上)と毛乳頭部分(下)の拡大。スケールバー: 20μm 毛周期(ヘアサイクル)の模式図。 バルジの構成。 角化細胞/幹細胞のマーカー(CK15)と色素細胞/幹細胞(Dct)のマーカーの抗体を用いた免疫組織染色(対比染色にはDAPIを使用)。バルジ付近の染色結果を示す。 Mnの作用部位。Mnは毛包及び毛乳頭の細胞に影響を与える。 Mn等含有クリームの塗布による脱毛効果。3種元素(Mn、Cu、Zn)を含有するクリームを塗布した。塗布開始後8日目、塗布開始後14日目及び塗布開始後23日目の観察結果を示す。 Mn等含有クリームの塗布による脱毛効果(皮膚の病理解析)。塗布開始後9日目にH&E染色を行った。 Zn含有クリームの塗布による脱毛効果(成体マウスでの脱毛)。 Mn投与による白髪モデルマウスの作製(仔マウス)。 Mn投与による白髪モデルマウスの作製(成体マウス)。
1.脱毛剤
本発明の第1の局面は、マンガン(Mn)、銅(Cu)、金(Au)等の元素に発毛遅延作用(脱毛効果)が認められたという驚くべき事実に基づき、特定の元素又はその化合物を有効成分とした脱毛剤を提供する。本発明の脱毛剤の価値ないし意義を理解する上で特に重要なことは、本発明の有効成分の代表例として用いたMnによって毛包(毛幹部、毛球部)の構成細胞が障害を受ける一方で、バルジ領域の毛包幹細胞及び色素幹細胞への実質的な影響が認められなかったことである。この知見に基づく本発明の脱毛剤によれば、毛周期に回復不能な障害を与えることなく(従って永久脱毛にはならない)、長期の脱毛効果が得られる。言い換えれば、一時的でありながらも長期間にわたって発毛を遅延させることができる。従って、本発明は、回復可能な「毛の生えていない状態」(当該状態を「脱毛状態」と呼ぶ)を長期間にわたって得るための手段として有用である。
本発明の脱毛剤にはその有効成分(以下、「脱毛誘導物質」とも呼ぶ)としてクロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、又は金(Au)若しくはその化合物が含有される。本発明では脱毛誘導物質として特定の元素、即ちCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Y、Ru、Ag、Sn、Te、Hf又はAuが単体又は化合物の形態で用いられる。
その効果の高さからは、好ましい元素はCr、Mn、Fe、Cu、Zn、Y、Ru、Ag、Sn、Te、Hf及びAuである。また、効果の高さに加え、安全性、入手容易性、扱い易さ等も考慮すると、より好ましい元素はMn、Cu、Zn、Ag及びAuであり、特に好ましい元素はCu、Ag及びAuである。
それを使用した際に脱毛効果が得られる限りにおいて、各元素の化合物は特に限定されない。例えば、各元素について以下の化合物が知られている。
クロム化合物:酸化クロム(III)(Cr2O3)、酸化クロム(VI)(CrO3)、塩化クロム(II)(CrCl2)、塩化クロム(III)(CrCl3)、クロム酸鉛(PbCrO4)、クロム酸亜鉛(ZnCrO4)、クロム酸カルシウム(CaCrO4)、クロム酸バリウム(BaCrO4)、
マンガン化合物:塩化マンガン(II)(MnCl2)、硫酸マンガン(II)(MnSO4)、硝酸マンガン(II)(Mn(NO3)2)、二酸化マンガン(MnO2
鉄化合物:塩化鉄(II)(FeCl2)、塩化鉄(III)(FeCl3)、酸化鉄(II)(FeCl3)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、硫酸鉄(II)(FeSO4
コバルト化合物:塩化コバルト(II)(CoCl2)、塩化コバルト(III)(CoCl3)、酢酸コバルト(II)(Co(C2H3O2)2・4H2O)、硝酸コバルト(II)(Co(NO3)2)、酸化コバルト(II)(CoO)、酸化コバルト(III)(Co3O4)、アルミン酸コバルト(CoAl2O4
ニッケル化合物:塩化ニッケル(II)(NiCl2)、酢酸ニッケル(II)(Ni(CH3COO)2)、水酸化ニッケル(I)(NiOH)、水酸化ニッケル(II)(Ni(OH)2)、炭酸ニッケル(II)(NiCO3
銅化合物:硫化銅(CuS)、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl2)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、硫酸銅(CuSO4)
亜鉛化合物:塩化亜鉛(ZnCl2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、硫酸亜鉛(ZnSO4)
ガリウム化合物:塩化ガリウム(III)(GaCl3)、酸化ガリウム(III)(Ga2O3)、水酸化ガリウム(III)(Ga(OH)3)、ヨウ化ガリウム(III)(Ga2I6
イットリウム化合物:酸化イットリウム(III)(Y2O3)、塩化イットリウム(III)(YCl3)、硫化イットリウム(III)(Y2S3)、フッ化イットリウム(III)(YF3)、臭化イットリウム(III)(YBr3)
ルテニウム化合物:塩化ルテニウム(III)(RuCl3)、ジクロロテトラキス(ジメチルスルホキシド)ルテニウム(II)(RuCl2(dmso)4
銀化合物:塩化銀(I)(AgCl)、硝酸銀(I)(AgNO3)、硫化銀(I)(Ag2S)、酸化銀(I)(Ag2O)、一酸化銀(AgO)、酢酸銀(I)(AgC2H3O2
スズ化合物:塩化スズ(II)(SnCl2塩化スズ(IV)(SnCl4)、酸化スズ(II)(SnO)、酸化スズ(IV)(SnO2)、酸化スズ(VI)(SnO3)、硫化スズ(II)(SnS)、硫化スズ(IV)(SnS2
テルル化合物:塩化テルル(IV)(TeCl4)、二酸化テルル(TeO2)、テルル酸(H6TeO6)、テルル化水素(H2Te)、硫化テルル(TeS2)、テルル化金(AuTe)、テルル化二銀(Ag2Te)
ハフニウム化合物:塩化ハフニウム(IV)(HfCl4)、硫化ハフニウム(IV)(HfS2
金化合物:塩化金(I)(AuCl)、塩化金(III)(AuCl3)、八塩化四金(Au4Cl8)、水酸化金(I)(AuOH)、水酸化金(III)(Au(OH)3)
好ましい化合物の例として、Crの化合物であるCrCl3、Mnの化合物であるMnCl2、Feの化合物であるFeCl2、Coの化合物であるCoCl2、Niの化合物であるNiCl2、Cuの化合物であるCuSO4、Znの化合物であるZnCl2、Gaの化合物であるGaCl3、Yの化合物であるYCl3、Ruの化合物であるRuCl3、Agの化合物であるAgNO3、Snの化合物であるSnCl2、Teの化合物であるTeCl4、Hfの化合物であるHfCl4、Auの化合物であるAuCl3を挙げることができる。
各元素の有機化合物(有機クロム化合物、有機マンガン化合物、有機鉄化合物、有機コバルト化合物、有機ニッケル化合物、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機ガリウム化合物、有機イットリウム化合物、有機ルテニウム化合物、有機銀化合物、有機スズ化合物、有機テルル化合物、有機ハフニウム化合物、有機金化合物)を脱毛誘導物質に用いてもよい。
2種類以上の脱毛誘導物質を併用してもよい。併用する場合の物質の組合せは特に限定されない。併用する物質の数も特に限定されず、例えば、2種類の物質の併用、3種類の物質の併用、4種類の物質の併用、5種類の物質の併用等が想定される。また、併用する各物質の含有率、混合比率等も特に限定されない。組合せの具体例として、Mn若しくはその化合物、Cu若しくはその化合物及びZn若しくはその化合物の組合せ(3元素の組合せ)、Cu若しくはその化合物、Ag若しくはその化合物及びAu若しくはその化合物の組合せ(3元素の組合せ)を挙げることができる。
本発明の脱毛剤には、脱毛誘導物質に加え、化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いることが可能な他の成分が必要に応じて配合される。「他の成分」の例は、基剤/賦形剤(ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ラノリン、ポリエチレン樹脂、シリコン、豚脂、ミツロウ、グリセリン等)、界面活性剤/懸濁剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、増粘剤(例えば、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、デキストリン、ゼラチン、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、安定剤(メチルパラベン、プロピレングリコール、アスコルビン酸)、保湿剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、アテロコラーゲン、乳酸ナトリウム)、保存剤(例えば、フェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール)、緩衝剤(例えばリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等)、色素、香料である。
本発明の脱毛剤はクリーム、軟膏、ローション、ジェル、乳液(エマルジョン)、スプレー液、テープ、パッチ等の剤形(形態)に調製される。有効成分である脱毛誘導物質の含有量は特に限定されず、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.001重量%〜約50重量%の範囲内で設定する。
例えば、クリーム、軟膏、ローション、ジェル、乳液(エマルジョン)等であれば皮膚表面への塗布、滴下等によって、スプレー液であれば皮膚表面へのスプレーによって、テープやパッチ等であれば皮膚表面への貼付によって、各々適用することができる。
本発明の脱毛剤は、その剤形に適した一般的な製造法によって、有効成分である脱毛誘導物質とその他の成分を混合・分散し、所望の形態に加工することによって製造することができる。
典型的には、本発明の脱毛剤は皮膚に適用される。脱毛剤を適用する体の部位(脱毛処理の箇所)は特に限定されない。従って、本発明の脱毛剤は顔面、鼻腔、外耳道、頸部、腋、胸部、腹部、背部、上腕、前腕、手、大腿、下腿、足、陰部、頭部等に適用可能であり、各種体毛(揉み上げ、睫毛、眉毛、鼻毛、耳毛、腋毛、胸毛、腹毛、腕毛、指毛、手の甲の毛太腿の毛、足(太腿、脹ら脛、脛、足の甲等)の毛、陰毛、頭髪等)が脱毛の対象となる。
典型的には、本発明はヒトに適用される。但し、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ、齧歯類等)、家畜(ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等)等、各種動物へ適用してもよい。
本発明の脱毛剤の適用条件(使用量、使用回数、使用期間等)は、適用部位、毛の量等を考慮して適宜設定することができる。適用条件の具体例として、ヒトの皮膚へ適用する場合であれば、例えば、有効成分量が0.000001 mg/cm2〜1000 mg/cm2となるように1回又は複数回(例えば2回〜10回)適用する。数日間、数週間等、継続的に適用することにしてもよい。継続的な適用の場合、毎日適用、隔日適用、2日毎に適用など、様々な適用スケジュールを採用し得る。
本発明の脱毛剤を適用する際(即ち、本発明の脱毛剤による脱毛処理の際)、別の手段による脱毛(除毛)又は剃毛処理を併用してもよい。このような併用の場合の処理順序は特に限定されず、いずれを先に行っても良い。但し、本発明の脱毛剤の作用機序に鑑みれば、本発明の作用効果を高めるためには、別の手段による脱毛又は剃毛処理の後に本発明の脱毛剤による処理を行うことが好ましい。「別の手段による脱毛又は剃毛」の処理としては、カミソリや電気シェーバー等によるシェービング、ワックス脱毛、光(IPL、SSC、SHR等)脱毛、レーザー脱毛、ニードル(電気針)脱毛を挙げることができる。
2.脱毛モデル動物
本発明の第2の局面は脱毛モデル動物及びその作製方法に関する。本発明の脱毛モデル動物は、齧歯目動物又はウサギ(これらをまとめて「被処置動物」と呼ぶ)に対して脱毛誘導物質を投与することによって作製される。より具体的には、本発明の脱毛モデル動物の作製には、以下のステップが行われる。
齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するステップ
齧歯目動物は特に限定されず、マウス(例えばC57BL/6、Jcl:ICR、Crl:CD1(ICR)、BALB/c、B6C3F1、B6D2F1、CBA/J、C3H)、ラット(例えばBN、SD、Wistar、F344)、モルモット、ハムスター等の齧歯類が用いられる。これらの齧歯目動物の種類や遺伝的背景等は特に限定されない。ウサギについても同様である。好ましくは、扱いやすさ、遺伝子改変の容易性、実験期間の短縮等扱いやすさや実験期間短縮等の点からマウス又はラットを非処置動物として採用する。
被処置動物として、生後、最初の毛が生える段階の仔動物又は毛が生えそろった段階以降の成体動物を用いることができる。
一又は二以上の脱毛誘導物質が被処置動物に投与される。併用する場合の組合せ(採用される物質)、併用する物質の数等は特に限定されない。尚、脱毛誘導物質については、上記第1の局面(脱毛剤)の場合と同様であるため、特に言及しない点については上記の説明が援用される。
本発明では、脱毛誘導物質によって毛包(毛幹部、毛球部)を構成する細胞に障害を与え、脱毛を誘導する。そこで、毛包へと脱毛誘導物質が送達されるように、背、腹、頭等、被処置動物の毛が生える部位の皮膚又はその近傍に脱毛誘導物質が投与される。観察に適した箇所(例えば、背中)を投与部位にすることが好ましい。例えば、脱毛誘導物質を含有する組成物(例えば溶液、クリーム、軟膏)を用意し、皮膚への塗布又は滴下、皮下、皮膚内又は筋肉内注射等によって投与すればよい。間隔を置いて2回以上(例えば2回、3回、4回又は5回)投与することにしてもよい。最適な投与量、投与回数等は予備実験を通して決定することができるが、投与量の例として、Cuを用いた場合であれば、例えば皮膚内に10μg〜500μg(好ましくは50μg〜200μg。具体例は100μg)を挙げることができる。
被処置動物として、毛が生えそろった段階以降の成体動物を用いる場合には、より確実且つ効果的に脱毛を誘導するため、脱毛誘導物質の投与前に投与部位の皮膚(皮膚に投与する場合)、又は投与部位近傍の皮膚(皮膚の近傍に投与する場合)を脱毛又は剃毛しておくことが好ましい。換言すれば、毛が生えそろった段階以降の成体動物を用いる場合の好ましい態様では、脱毛又は剃毛処理後の皮膚又はその近傍に脱毛誘導物質が投与される。
脱毛誘導物質の投与によって投与部位又はその近傍の皮膚に存在する毛の毛周期が影響を受け、脱毛が誘導される。その結果、円形脱毛症様の表現型が形成される。被処置動物としてマウスを用いた場合、例えば、1日〜14日程度で当該表現型が観察される。この例からわかるように、本発明は、脱毛モデル動物を短期間で作製することを可能にする。
3.脱毛モデル動物の用途
本発明の第3の局面は、本発明の作製方法で得られる脱毛モデル動物(以下、「本発明の脱毛モデル動物」とも呼ぶ)の用途に関する。典型的な用途として、脱毛の予防又は治療(改善)に有効な物質、即ち、抗脱毛剤のスクリーニング方法が提供される。本発明のスクリーニング方法では以下のステップが行われる。尚、本明細書において「抗脱毛剤」とは、脱毛を発症している患者に対してその症状の改善や治癒などを目的として使用する薬剤はもとより、脱毛を発症するおそれのある者に対して予防的に(再発防止の目的も含む)使用する薬剤も含む用語として用いられる。このように、本発明のスクリーニング方法を利用して選抜される薬剤は、脱毛の予防又は治療(改善)に適用される。
(1)齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質(脱毛誘導物質)を投与するとともに、被験物質を投与するステップ
(2)脱毛誘導物質の投与による脱毛又は発毛の遅延に対する被験物質の予防又は治療効果を判定するステップ
ステップ(1)は脱毛モデルの作製と被験物質の投与を行うものであり、前者については上記で説明した通りであり、その説明を省略する。ステップ(1)では脱毛モデルの作製と併せて被験物質が投与される。被験物質の投与のタイミング(時期)は大別して4種類、即ち、(a)脱毛モデルの作製のために投与される物質(脱毛誘導物質)の投与前、(b)脱毛誘導物質の投与と同時、(c)脱毛誘導物質の投与後であって脱毛又は発毛の遅延が生じる前、及び(d)脱毛誘導物質の投与後であって脱毛又は発毛の遅延が生じた後、が想定される。(a)及び(b)は特に予防効果の判定に適し、(d)は特に治療効果の判定に適する。(c)については予防効果はもとより、治療効果の判定にも有効である。被験物質を複数回投与することにしてもよい。その場合には各回の投与量は同一であっても異なっていても良い。
典型的には、脱毛誘導物質を投与した部位又はその近傍、言い換えれば脱毛の発症部位又はその周囲に被験物質が投与される。但し、本発明のスクリーニング方法は、局所投与によって薬効を示す薬剤/薬剤候補の探索ないし同定のみに利用可能なものではないことから、投与部位、投与経路等は特に限定されない。従って、被験物質の投与方法として、皮膚への塗布又は滴下、皮下、皮膚内、筋肉内、静脈内、動脈内又は腹腔内注射、経口投与、噴霧投与、経鼻投与、経気管投与等を採用し得る。
被験物質としては様々な分子サイズの有機化合物(核酸、ペプチド、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド等))又は無機化合物を用いることができる。被験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。2種類以上の化合物を含有する物質(即ち組成物)を被験物質にすることもできる。また、植物、藻類、菌類、微生物等の抽出物や精製物、粉体等、細胞(動物細胞、植物細胞、微生物細胞等)の抽出物や培養上清等を被験物質にして用いてもよい。更には、既認可薬を被験物質とし、適用拡大(ドラッグ・リポジショニング)を図ることにしてもよい。
脱毛誘導物質の投与によって脱毛が誘導され、また、それに伴い発毛の遅延が生じる(脱毛モデルの形成)。ステップ(2)では、当該脱毛又は発毛の遅延に対する、脱毛誘導物質とともに投与した被験物質の予防又は治療効果を判定する。換言すれば、脱毛誘導物質によって誘導された脱毛/発毛の遅延に対して被験物質が予防的又は治療的に作用するか否か(即ち、薬効の有無)を判定する。薬効があると判定された被験物質は、脱毛症に対する有力な薬剤候補となる。
脱毛の状態及び/又は発毛(脱毛からの回復)の状態を指標(基準)として薬効を判定することができる。より具体的には、以下の指標を採用することができる。
(i)被験物質の投与によって脱毛が防止された(脱毛が認められなかった)場合、被験物質に薬効(特に予防効果)があると判定する
(ii)被験物質の投与によって脱毛の程度が軽減された場合、被験物質に薬効(特に予防効果)があると判定する
(iii)被験物質の投与によって発毛の遅延が防止された(発毛の遅延が認められなかった)場合、被験物質に薬効(特に予防効果)があると判定する。
(iv)被験物質の投与によって発毛が早まった場合、被験物質に薬効(特に治療効果)があると判定する。
(v)被験物質の投与によって発毛の遅延後の回復が早まった(毛の発育が促進された)場合、被験物質に薬効(特に治療効果)があると判定する。
尚、以上の指標は単独又は2つ以上を組み合わせて用いることができる。
好ましくは、被験物質が投与される被処置動物(試験群)と、被験物質が投与されないこと以外は同条件の被処置動物(対照群)を用意する。そして、採用した指標に関して試験群と対照群を比較し、その結果を基にしてステップ(2)の判定を行う。比較の結果、試験群に有意な予防又は治療効果が認められれば、被験物質が有力な薬剤候補であると判定できる。このように試験群と対照群との比較に基づき判定すれば、被験物質の薬効を容易に且つ高い信頼度で判定することができる。
試験群及び対照群に含まれる被処置動物の個体数は特に限定されない。一般に、使用する個体数が多くなるほど信頼度の高い結果が得られるが、多数の個体を同時に取り扱うことは使用する個体の確保や操作(飼育を含む)の面で困難を伴う。そこで例えば各群に含まれる個体数を1〜50、好ましくは2〜30、さらに好ましくは5〜20とする。
本発明のスクリーニング方法によって選択された化合物が十分な薬効を有する場合には、当該化合物をそのまま脱毛剤の有効成分として使用することができる。一方、十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で脱毛剤の有効成分として使用することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
4.白髪モデル動物及びその作製方法
本発明の第4の局面は白髪モデル動物及びその作製方法に関する。本発明の白髪モデル動物は、上記の脱毛モデル動物と同様、齧歯目動物又はウサギ(これらをまとめて「被処置動物」と呼ぶ)に対して脱毛誘導物質を投与することによって作製される。より具体的には、本発明の白髪モデル動物の作製には、以下のステップが行われる。
齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するステップ
齧歯目動物は特に限定されず、マウス(例えばC57BL/6、Jcl:ICR、Crl:CD1(ICR)、BALB/c、B6C3F1、B6D2F1、CBA/J、C3H)、ラット(例えばBN、SD、Wistar、F344)、モルモット、ハムスター等の齧歯類が用いられる。これらの齧歯目動物の種類や遺伝的背景等は特に限定されない。ウサギについても同様である。好ましくは、扱いやすさ、遺伝子改変の容易性、実験期間の短縮等の点からマウス又はラットを非処置動物として採用する。
被処置動物として、生後、最初の毛が生える段階の仔動物又は毛が生えそろった段階以降の成体動物を用いることができる。
一又は二以上の脱毛誘導物質が用いられる。併用する場合の組合せ(採用される物質)、併用する物質の数等は特に限定されない。尚、脱毛誘導物質については、上記第1の局面(脱毛剤)の場合と同様であるため、特に言及しない点については上記の説明が援用される。
本発明では、脱毛誘導物質によって毛包(毛幹部、毛球部)を構成する細胞に障害を与え、脱毛を誘導する。そこで、毛包へと脱毛誘導物質が送達されるように、背、腹、頭等、被処置動物の毛が生える部位の皮膚又はその近傍に脱毛誘導物質が投与される。例えば、脱毛誘導物質を含有する組成物(例えば溶液、クリーム、軟膏)を用意し、皮膚への塗布又は滴下、皮下、皮膚内又は筋肉内注射等によって投与すればよい。間隔を置いて2回以上(例えば2回、3回、4回又は5回)投与することにしてもよい。最適な投与量、投与回数等は予備実験を通して決定することができるが、投与量の例として、Cuを用いた場合であれば、例えば皮膚内に10μg〜500μg(好ましくは50μg〜200μg。具体例は100μg)を挙げることができる。
被処置動物として、毛が生えそろった段階以降の成体動物を用いる場合には、より確実且つ効果的に脱毛を誘導するため、脱毛誘導物質の投与前に投与部位の皮膚(皮膚に投与する場合)、又は投与部位近傍の皮膚(皮膚の近傍に投与する場合)を脱毛又は剃毛しておくことが好ましい。換言すれば、毛が生えそろった段階以降の成体動物を用いる場合の好ましい態様では、脱毛又は剃毛処理後の皮膚又はその近傍に脱毛誘導物質が投与される。
脱毛誘導物質の投与によって投与部位又はその近傍の皮膚に存在する毛の毛周期が影響を受け、脱毛が誘導される。その結果、円形脱毛症様の表現型が形成される。当該表現型を示した後、投与部位の周囲には白髪が出現する(白髪の誘発)。脱毛誘導物質の投与から「白髪の表現型」を示すまでの期間は例えば20日〜40日であり、短時間で白髪の表現型を示すモデル動物が得られることになる。また、重要なことは、その作製方法(脱毛誘導物質の皮膚への投与)からわかるように、所望の(任意の)時期に所望の(任意の)場所に白髪を誘発することが可能であり、アッセイなどに利用し易い、即ち利用価値の極めて高い白髪モデル動物を提供できることになる。尚、本発明の白髪モデル動物は、通常、白髪の表現型を示した後、白髪は本来の毛(有色毛)へと生えかわることになる。
5.白髪モデル動物の用途
本発明の第5の局面は、本発明の作製方法で得られる白髪モデル動物(以下、「本発明の白髪モデル動物」とも呼ぶ)の用途に関する。典型的な用途として、白髪の予防(再発の防止も含む)又は治療(改善)に有効な物質、即ち、抗白髪剤のスクリーニング方法が提供される。本発明のスクリーニング方法では以下のステップが行われる。
(1)齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質(脱毛誘導物質)を投与するとともに、被験物質を投与するステップ
(2)脱毛誘導物質の投与による白髪の誘発に対する被験物質の予防又は治療効果を判定するステップ。
ステップ(1)は白髪モデルの作製と被験物質の投与を行うものであり、前者については上記で説明した通りであり、その説明を省略する。ステップ(1)では白髪モデルの作製と併せて被験物質が投与される。被験物質の投与のタイミング(時期)は大別して4種類、即ち、(a)白髪モデルの作製のために投与される物質(脱毛誘導物質)の投与の前、(b)脱毛誘導物質の投与と同時、(c)脱毛誘導物質の投与後であって白髪の出現前、及び(d)脱毛誘導物質の投与後であって白髪の出現後、が想定される。(a)〜(c)は特に予防効果の判定に適し、(d)は特に治療効果の判定に適する。被験物質を複数回投与することにしてもよい。その場合には各回の投与量は同一であっても異なっていても良い。
典型的には、脱毛誘導剤を投与した部位又はその近傍、言い換えれば脱毛の発症部位又はその周囲に被験物質が投与される。但し、本発明のスクリーニング方法は、局所投与によって薬効を示す薬剤/薬剤候補の探索ないし同定にのみ利用可能なものではなく、投与部位、投与経路等は特に限定されない。従って、被験物質の投与方法として、皮膚への塗布又は滴下、皮膚内、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内又は腹腔内注射、経口投与、噴霧投与、経鼻投与、経気管投与等を採用し得る。
被験物質としては様々な分子サイズの有機化合物(核酸、ペプチド、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド等))又は無機化合物を用いることができる。被験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。2種類以上の化合物を含有する物質(即ち組成物)を被験物質にすることもできる。また、植物、藻類、菌類、微生物等の抽出物や精製物、粉体等、細胞(動物細胞、植物細胞、微生物細胞等)の抽出物や培養上清等を被験物質にして用いてもよい。更には、既認可薬を被験物質とし、適用拡大(ドラッグ・リポジショニング)を図ることにしてもよい。
脱毛誘導物質の投与によって脱毛が誘導され、円形脱毛症様の表現型が形成される。その後、脱毛誘導物質の投与部位の周囲には白髪が出現する(白髪モデルの形成)。ステップ(2)では、脱毛誘導物質の投与による白髪の誘発に対する被験物質の予防又は治療効果を判定する。換言すれば、脱毛誘導物質による白髪の誘発に対して被験物質が予防的又は治療的に作用するか否か(即ち、薬効の有無)を判定する。薬効があると判定された被験物質は、白髪に対する有力な薬剤候補となる。上記の説明(4.白髪モデル及びその作製方法の欄)からわかるように、白髪が出現した後には本来の毛(有色毛)への生えかわりが起きる。そこで本発明では、白髪の誘発に対する被験物質の薬効(予防又は治療効果)を判定するために、白髪の出現又は有色毛への生えかわり、に対する影響ないし効果を指標(基準)として採用する。より具体的には、以下の指標を採用することができる。
(i)被験物質の投与によって、有色毛が生えるまでの時間が短縮した場合、被験物質に薬効(特に治療効果)があると判定する
(ii)被験物質の投与によって、白髪から有色毛への生えかわるまでの時間が短縮した場合、被験物質に薬効(特に治療効果)があると判定する
(iii)被験物質の投与によって、白髪が生えずに有色毛が生えた場合、被験物質に薬効(特に予防効果)があると判定する
(iv)被験物質の投与によって、生えた有色毛の量が増えた場合、被験物質に薬効(特に治療効果)があると判定する
尚、以上の指標は単独又は2つ以上を組み合わせて用いることができる。
好ましくは、被験物質が投与される被処置動物(試験群)と、被験物質が投与されないこと以外は同条件の被処置動物(対照群)を用意する。そして、採用した指標に関して試験群と対照群を比較し、その結果を基にしてステップ(2)の判定を行う。比較の結果、試験群に有意な予防又は治療効果が認められれば、被験物質が有力な薬剤候補であると判定できる。このように試験群と対照群との比較に基づき判定すれば、被験物質の薬効を容易に且つ高い信頼度で判定することができる。
試験群及び対照群に含まれる被処置動物の個体数は特に限定されない。一般に、使用する個体数が多くなるほど信頼度の高い結果が得られるが、多数の個体を同時に取り扱うことは使用する個体の確保や操作(飼育を含む)の面で困難を伴う。そこで例えば各群に含まれる個体数を1〜50、好ましくは2〜30、さらに好ましくは5〜20とする。
本発明のスクリーニング方法によって選択された化合物が十分な薬効を有する場合には、当該化合物をそのまま抗白髪剤の有効成分として使用することができる。一方、十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で抗白髪剤の有効成分として使用することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
<脱毛剤及び脱毛モデル動物の開発>
1.マンガン(Mn)投与による脱毛
1−1.仔マウス
<方法>(図1)
マウス(C57BL/6系統)の皮膚にMnCl2水溶液を皮下注射し(Mnの投与量は100μg)、投与部位を経過観察した(Mn投与群)。尚、対照群(Mn非投与)には生理食塩水を皮下注射した。
<結果・考察>
Mn投与群では、投与2日後で対照群と比較し、脱毛(未発毛)が確認された(図2上)。投与後14日後の観察では、Mn投与群の投与部位の中心には3mm程度の黒毛がうっすらと生えてきていた(図2下)。また、その周囲には白髪が生え、その後、白髪部分は黒毛にもどることが分かった。
1−2.成体マウス
<方法>
成体マウス(C57BL/6系統)の背部を、有効成分としてチオグリコール酸を含むクリームで除毛した。除毛した部分にMnCl2水溶液を皮下注射し(Mnの投与量は100μg)、投与部位を経過観察した。
<結果・考察>
投与3日後で発毛の遅延が観察された(図3)。
1−3.別系統(ICR)のマウス
<方法>
別系統のマウス(ICR)の皮膚にMnCl2水溶液を皮下注射し(Mnの投与量は100μg)、投与部位を経過観察した。
<結果・考察>
投与6日後には明らかな脱毛(未発毛)が確認された(図4)。
2.各種元素の脱毛効果の検討
<方法>
C57BL/6系統のマウスの皮膚に各種元素化合物(Na3VO4、CrCl3・6H2O、MnCl2、FeCl2、CoCl2・6H2O、NiCl2・6H2O、CuSO4、ZnCl2、GaCl3、AsNaO3、YCl3・6H2O、Na2MoO4・2H2O、RuCl3・nH2O、AgNO3、CdCl2、InCl3、SnCl2・2H2O、C8H4K2O12Sb2・3H2O、TeCl4、HfCl4、Na2WO4・2H2O、NH4ReO4、AuCl3・2H2O)の水溶液を皮下注射し、投与部位を経過観察した。尚、対照群には生理食塩水を皮下注射した。
<結果・考察>
マンガン(Mn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、イットリウム(Y)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)又はガリウム(Ga)の投与群では、投与2日後で対照群と比較し、脱毛(未発毛)が確認された(図5)。クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、スズ(Sn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)及び金(Au)の脱毛効果は特に高い。
3.Mn等の投与による脱毛の作用機序
3−1.皮膚の病理解析
<方法>
C57BL/6系統のマウスの皮膚にMnCl2水溶液を皮下注射した(Mnの投与量は100μg)。投与2日後に投与部位の皮膚組織を採取してパラフィン切片を作製し(固定・パラフィン包埋)、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色に供した。
<結果・考察>
Mn投与2日後では、毛包がダメージを受け、毛周期の進行が停止されていることが観察され、そのまま毛髪が退行することが示唆された(図6〜8)。
3−2.バルジ及びその付近の細胞への影響
<方法>
C57BL/6系統のマウスの皮膚にMnCl2水溶液を皮下注射した(Mnの投与量は20μg、50μg、100μg)。投与2日後に投与部位の皮膚組織を採取し、角化細胞又はその幹細胞のマーカーであるCK15と色素細胞又はその幹細胞のマーカーであるDctの発現を免疫組織染色で調べた。
<結果・考察>
Mnを投与しても、バルジ(図9)及びその付近のCK15検出レベル及びDct検出レベルに実質的な変化はなかった(図10)。即ち、バルジ及びその付近に存在する角化細胞・毛包幹細胞(CK15で検出される細胞)と色素細胞・色素幹細胞(Dctで検出される細胞)の減少は観察されなかった。この結果は、バルジに存在し、発毛に必要な細胞(毛包幹細胞及び色素幹細胞)はダメージを受けず、永久に脱毛しているわけではないことを示唆する(図11)。
4.Mn等含有クリームの塗布による脱毛効果
4−1.仔マウス
<方法>
7日間、3種元素(Mn、Cu、Zn)を含有するクリーム(MnCl2、CuSO4及びZnCl2を含有量がそれぞれ164.84 mg/g、208.1 mg/g及び113.64 mg/gとなるように吸水クリームに混合したもの)をマウス(C57BL/6系統)の皮膚に塗布し、塗布部位を経過観察した。
<結果・考察>
塗布開始後14日目には発毛の遅延が認められ、塗布開始後23日目には脱毛部位から白髪の発毛が観察された(図12)。また、塗布開始後9日目に皮膚の病理解析(ヘマトキシリン・エオシン染色)を行った結果、毛包の減少など、脱毛症状が観察された(図13)。
4−2.成体マウス
<方法>
成体マウス(C57BL/6系統)の背部を、有効成分としてチオグリコール酸を含むクリームで除毛した。除毛した部分に、Znを含むクリーム(ZnCl2含有量113.64 mg/g)を11日間塗布し、塗布部位を経過観察した。
<結果・考察>
Znを含むクリームを外用することによる脱毛が観察された(図14)。
<白髪モデル動物の開発>
5.Mn等の投与による白髪モデルマウスの作製
<方法>
5−1.仔マウス
マウス(C57BL/6系統)の皮膚にMnCl2水溶液を皮下注射し(Mnの投与量は100μg)、投与部位を経過観察した。
<結果・考察>
投与14日後には脱毛部位の周囲で白髪が観察された(図15)。
5−2.成体マウス
<方法>
成体マウス(C57BL/6系統)の背部を、有効成分としてチオグリコール酸を含むクリームで除毛した。除毛した部分にMnCl2水溶液を皮下注射し(Mnの投与量は100μg)、投与部位を経過観察した。
<結果・考察>
投与25日後には投与部位で白髪が観察された(図16)。
本発明の脱毛剤によれば、その特有の作用機序により、毛周期に回復不能な障害を与えることなく長期の脱毛効果が得られる。また、本発明の脱毛剤は例えば皮膚への塗布など、簡便な方法で使用でき、且つ従来の方法(レーザーや脱毛テープを用いた方法)に比して格段に低侵襲である。
一方、本発明の脱毛モデル動物は、脱毛症(例えば円形脱毛症)に対する薬剤のスクリーニングや評価等に有用であり、脱毛症の予防/治療法の確立への貢献が期待される。同様に、本発明の白髪モデル動物は、白髪に対する薬剤のスクリーニングや評価等に有用であり、白髪の予防/治療法の確立への貢献が期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (27)

  1. クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を有効成分として含有する脱毛剤。
  2. 有効成分が、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質である、請求項1に記載の脱毛剤。
  3. 有効成分が、マンガン(Mn)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質である、請求項1に記載の脱毛剤。
  4. 脱毛又は剃毛処理後の皮膚に適用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱毛剤。
  5. それを皮膚に適用した後、適用部位が脱毛又は剃毛処理される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱毛剤。
  6. 毛周期に影響を与えることで脱毛効果を発揮する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の脱毛剤。
  7. 毛包のバルジ領域に存在する、毛包幹細胞及び色素幹細胞を障害することなく、脱毛効果を発揮する、請求項6に記載の脱毛剤。
  8. 齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するステップを含む、脱毛モデル動物の作製方法。
  9. 前記齧歯目動物がマウス又はラットである、請求項8に記載の作製方法。
  10. 前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、請求項8又は9に記載の作製方法。
  11. 前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、請求項8又は9に記載の作製方法。
  12. 請求項8〜11のいずれか一項に記載の作製方法で得られる、脱毛モデル動物。
  13. 以下のステップ(1)及び(2)を含む、脱毛の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング方法:
    (1)齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するとともに、被験物質を投与するステップ、
    (2)前記物質の投与による脱毛又は発毛の遅延に対する被験物質の予防又は治療効果を判定するステップ。
  14. 前記齧歯目動物がマウス又はラットである、請求項13に記載のスクリーニング方法。
  15. 前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、請求項13又は14に記載のスクリーニング方法。
  16. 前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、請求項13又は14に記載のスクリーニング方法。
  17. 前記被験物質が、前記物質を投与した部位又はその近傍に投与される、請求項13〜16のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  18. 齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するステップを含む、白髪モデル動物の作製方法。
  19. 前記齧歯目動物がマウス又はラットである、請求項18に記載の作製方法。
  20. 前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、請求項18又は19に記載の作製方法。
  21. 前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、請求項18又は19に記載の作製方法。
  22. 請求項18〜21のいずれか一項に記載の作製方法で得られる、白髪モデル動物。
  23. 以下のステップ(1)及び(2)を含む、白髪の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング方法:
    (1)齧歯目動物又はウサギである被処置動物の皮膚又はその近傍に、クロム(Cr)若しくはその化合物、マンガン(Mn)若しくはその化合物、鉄(Fe)若しくはその化合物、コバルト(Co)若しくはその化合物、ニッケル(Ni)若しくはその化合物、銅(Cu)若しくはその化合物、亜鉛(Zn)若しくはその化合物、ガリウム(Ga)若しくはその化合物、イットリウム(Y)若しくはその化合物、ルテニウム(Ru)若しくはその化合物、銀(Ag)若しくはその化合物、スズ(Sn)若しくはその化合物、テルル(Te)若しくはその化合物、ハフニウム(Hf)若しくはその化合物、及び金(Au)若しくはその化合物からなる群より選択される一又は二以上の物質を投与するとともに、被験物質を投与するステップ、
    (2)前記物質の投与による白髪の誘発に対する被験物質の予防又は治療効果を判定するステップ。
  24. 前記齧歯目動物がマウス又はラットである、請求項23に記載のスクリーニング方法。
  25. 前記皮膚が脱毛又は剃毛処理後の皮膚である、請求項23又は24に記載のスクリーニング方法。
  26. 前記被処置動物が、生後、最初の毛が生える段階の仔動物である、請求項23又は24に記載のスクリーニング方法。
  27. 前記被験物質が、前記物質を投与した部位又はその近傍に投与される、請求項23〜26のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
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