JP2020147668A - 発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】発泡成形体である自動車内装材や生鮮食品の容器から、放出される不快臭を低減した発泡性成形体を提供することができる、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。【解決手段】発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、フェニルアセチレン濃度が30ppm以下のスチレン系単量体を重合する重合工程と、得られた重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を含み、前記重合工程では、下記一般式に示される開始剤及び他の特定の開始剤を重合開始剤として使用する。【選択図】なし

Description

本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子とその製造方法に関し、特に、不快臭を抑制した発泡性スチレン系樹脂粒子に関するものである。
発泡性スチレン系樹脂粒子は、比較的安価で、特殊な方法を用いずに蒸気等で発泡成形ができ、高い緩衝・断熱の効果が得られる為、社会的に有用な材料である。発泡性スチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、自動車部材の内装材、魚介や果物等々の生鮮食品の容器として、広く利用されている。
近年、自動車内装材や生鮮食品の容器から、放出される不快臭を低減した発泡成形体が、強く要望されている。
不快臭となる原因物質は、重合で消費できなかった残存スチレン以外に、主原料であるスチレン中の不純物であるエチルベンゼン、トルエン、キシレン等々である。これらの不純物は、ラジカル重合に関与せず、発泡成形体に残存してしまう。又、重合開始剤の残渣が不快臭の原因物質である。
特許文献1、2のように、カーボネート型構造の開始剤を用い、残存スチレン量を低減した発泡性スチレン系樹脂粒子を提案しているが、カーボネート型構造の開始剤残渣が、不快臭がする。
特許文献3のように、1,1−ビス(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のケタール構造を有する開始剤を用いた発泡性スチレン系樹脂粒子を提案しているが、残存スチレン量が多く、不快臭低減には至っていない。
特許文献4のように、2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタン等の開始剤を用いることを提案しているが、併用しているジベンゾイルパーオキサイドの開始剤残渣が、不快臭である。
特開2015−140370号公報 特開平11−269205号公報 特開2006−206830号公報 特開2018−53181号公報
本発明の課題は、発泡成形体からの不快臭が低減し、発泡成形体の表面が美麗である発泡性スチレン系粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の重合開始剤を特定量使用することで残存スチレン量を少なくでき、発泡成形体からの放出する不快臭を低減できる発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることが出来ることを見出し本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、フェニルアセチレン濃度が30ppm以下のスチレン単量体を重合する重合工程と、得られた重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を含み、
前記重合工程では、重合開始剤として、一般式(1)に示される化合物を0.05重量部以上0.40重量部以下、一般式(2)に示される化合物を0.05重量部以上0.40重量部以下使用し、発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量が30ppm以下であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。

(一般式1)
Figure 2020147668
(式中のR1、R2は、直鎖または分岐アルキル基を表す。)

(一般式2)
Figure 2020147668
(式中のR1、R2は、直鎖または分岐アルキル基を表す。)
[2]一般式(1)で示される化合物が、2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタンであることを特徴とする[1]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[3]一般式(2)で示される化合物が、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、および/または、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[4]前記重合工程において、難燃剤として臭素化ポリマーを添加することを特徴とする、[1]〜[3]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[5]前記重合工程において、更に難燃助剤を添加することを特徴とする、[4]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[6]前記難燃助剤がジクミルパーオキサイドを含み、前記ジクミルパーオキサイドの使用量が、前記スチレン系単量体100重量部に対して0.40重量部未満である、[5]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
本発明で製造した発泡性スチレン系樹脂は、自動車内装材や生鮮食品の容器から、放出される不快臭を低減した発泡成形体を、提供することができる。
以下,本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、フェニルアセチレン濃度が30ppm以下のスチレン系単量体を重合する重合工程と、得られた重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を含み、前記重合工程では、重合開始剤として、一般式(1)に示される化合物を0.05重量部以上0.40重量部以下、一般式(2)に示される化合物を0.05重量部以上0.40重量部以下使用し、発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量が30ppm以下であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
本発明に用いるスチレン系単量体としては、スチレン、及び、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明の製造方法を用いて製造される発泡性スチレン系樹脂粒子は、主成分(単量体総量に対して50重量部以上)としてスチレン系単量体が重合されたものであればよく、スチレン系単量体と共重合が可能な成分、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体も包含する。これら共重合が可能な成分を1種又は2種以上使用し共重合に供しても良い。なお、本明細書において、スチレンをスチレン単量体と記載する場合がある。
スチレン単量体は、エチルベンゼンを脱水素化して製造して得られる汎用スチレン(脱水素法)と、エチルベンゼンの自動酸化で、エチルベンゼンハイドロパーオキシドを経由して得られるフェニルアセチレン(以下、PAと記載することがある)含有が少ない低PAスチレン(ハルコン法)の2種がある。汎用スチレンは、一般的に、フェニルアセチレンを50ppm以上含有していると共に、エチルベンゼン、トルエン等の不純物を多く含有している。例えば、一般的な汎用スチレンは、フェニルアセチレン含有量が50〜300ppm、エチルベンゼン含有量が50〜250ppmと言われている。このため、汎用スチレンを用いて発泡性スチレン系樹脂粒子を製造しようとした場合、ラジカル重合において上記不純物が消費されず最終製品に残存し、不快臭気がする。一方、低PAスチレンは、一般的に、フェニルアセチレンの含有量が10ppm以下と少なく、エチルベンゼン、トルエン等の不純物が少ないために、最終製品中の不純物の残存量が少なく、不快臭気が抑制される。例えば、一般的な低PAスチレンは、フェニルアセチレン含有量が10ppm以下、エチルベンゼン含有量が50〜130ppmと言われている。このため、不快臭を低減した発泡性スチレン系樹脂の製造で用いるスチレン単量体は、汎用スチレンを使用するより、低PAスチレンを使用する方が好ましい。
本発明は、一般式(1)に示される化合物を重合開始剤として、0.05重量部以上0.40重量部以下使用することを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
一般式(1)で示される化合物のR1、R2は、直鎖または分岐アルキル基である。ここで、一般式(1)で示されるR1、R2の分岐アルキル基としては、例えば、t−ブチル基、t−アミル基、t−ヘキシル基、t−ペンチル基等が挙げられる。また、一般式(1)で示される化合物としては、具体的には、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタン、2、2−ジ−t−ヘキシルパーオキシブタン等があげられる。
特に、一般式(1)のR1構造、R2構造がt−アミル基であることが、残存スチレン量低減及び分子量低下を抑制できる点で好ましい。また、一般式(1)に示される化合物を重合開始剤として用いる場合、10時間半減期温度が95℃以上110℃以下である事が好ましい。具体的には、2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタンが、最終製品である発泡スチレン系樹脂粒子の残存スチレン量を低減でき、分子量低下を抑制できるため好ましい。
一般式(1)に示す化合物の使用量は、スチレン系単量体の総量100重量部に対して、0.05重量部以上0.40重量部以下である。好ましくは、0.10重量部以上0.30重量部以下である。一般式(1)に示す化合物の使用量が、当該範囲内であると、適度な分子量の樹脂が得られ、かつ、残存スチレン量を低減させることができる。0.05重量部未満では、残存スチレン量が多くなり、最終製品から不快臭がする。0.40重量部を超える場合、重合中のラジカル発生量が多くなり、重合反応が早くなるため制御が困難となり、その結果、異常重合になる可能性が非常に高くなる。
本発明は、一般式(2)に示される化合物を重合開始剤として、0.05重量部以上0.40重量部以下使用することを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法である。
一般式(2)で示される化合物のR1、R2は、直鎖または分岐アルキル基である。ここで、一般式(2)で示されるR1、R2は分岐アルキル基であることが好ましく、例えば、t−ブチル基、t−アミル基、t−ヘキシル基、t−ペンチル基等が挙げられ、10時間半減期温度が60℃以上95℃以下である事が好ましい。
一般式(2)で示される化合物としては、具体的には、t-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシーイソブチラート、t-ブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシー3,3,5−トリメチルヘキサノエートが挙げられる。特に、t-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましく、最終製品である発泡スチレン系樹脂粒子の、不快臭を低減した発泡性スチレン系樹脂粒子を製造するため好ましく、さらに、残存スチレン量を低減できるt-アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましい。
なお、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造で、10時間半減期温度が60℃以上95℃以下である化合物として、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられるが、化合物の開裂により生した、芳香環を有する構造の化合物は、不快臭を発する物質の一つであるという新たな知見を得た。
一般式(2)に示す化合物の使用量は、スチレン系単量体の総量100重量部に対して、0.05重量部以上0.40重量部以下である。好ましくは、0.05重量部以上0.30重量部以下である。一般式(2)に示す化合物の使用量が、当該範囲内であると、適度な分子量の樹脂が得られことが出来る。0.05重量部未満では、最終製品の重量平均分子量35万以上となり、発泡力が低下し、発泡成形体外観が悪化し、0.40重量部を超える場合、最終製品の重量平均分子量が20万以下と低くなり、発泡成形体が破泡したり外観が悪くなる。
過酸化物である一般式(1)及び一般式(2)で示される化合物は、取り扱いの安全上、水、或いは、炭化水素等で希釈して用いられることがあるが、希釈剤の種類によっては、不快臭の原因となることもある。このため、これら化合物を用いる場合、水希釈、或いは水系エマルションした化合物を用いることが、不快臭を低減した発泡性スチレン系樹脂粒子には好適である。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造は、一般式(1)と一般式(2)の化合物を併用して、重合するものである。一般式(1)の化合物の10時間半減期温度が95℃以上110℃以下であり、一般式(2)の化合物の10時間半減期温度が60℃以上95℃以下である場合、一般式(1)の化合物は、主に残存スチレン量を低下させるために使用され、一般式(2)の化合物は、樹脂を形成するために用いられる。
そして、これらの化合物の量、種類の選定は、重合温度、重合時間、および必要とする樹脂の分子量を勘案して適宜決められる。よって、本発明においても、一般式(1)に示される化合物に、一般式(2)に示される化合物を1種或いは2種以上併用することにより、重合温度、重合時間、樹脂の分子量等の選択幅をより広げた上で、残存スチレン量を低減した良好な製品を得ることができる。
本発明の製造方法で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、残存スチレン単量体量が30ppm以下である。最終製品中の残存スチレンは、不快臭の原因物質となることから、発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量は少ないほうが好ましい。よって、発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量は、30ppm未満であることが好ましく、より好ましくは10pm以下である。下限は、実用的には0ppmになり難いので敢えて表示するなら1ppm以上である。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法では、発泡性スチレン系樹脂粒子への難燃性付与のため、重合工程において、難燃剤のみ又は難燃剤および難燃助剤が添加されてもよい。難燃剤としては、ポリグリセリンジブロモプロピルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン等々の低分子化合物や臭素化スチレン、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体、臭素化ノボラック樹脂アリルエーテル、臭素化ポリ(1,3−シクロアルカジエン)及び臭素化ポリ(4−ビニルフェノールアリルエーテル)等の臭素化ポリマーがあげられる。
その中でも、低分子量の難燃剤の分解物は、芳香環を有する構造の化合物であり、不快臭を発する物質の一つとなる。しかし、臭素化ポリマーは、不快臭を放出しがたいために、好ましい。
難燃剤の使用部数は、スチレン系単量体100重量部に対して、0.5重量部以上2.0重量部以下が好ましい。0.5重量部未満であると充分な難燃性能が得られない。また、2.0重量部を超えると得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の成形加工性、成形体物性の悪化を引き起こすため好ましくなく、スチレン重合時の安定性を悪化傾向にある。
本発明に用いる難燃助剤としては、例えば、クメンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン等の高温分解型の有機物があげられる。特に、重合中に分解が少なく、懸濁重合時の分散への影響が少ないことの理由から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
難燃助剤として使用するジクミルパーオキサイドのような芳香環を有する化合物は、分解されることで、芳香環を有する構造の化合物を生成するため、不快臭を発する物質の一つとなる。このため、ジクミルパーオキサイドの使用量は、極力抑えたほうが好ましい。したがって、ジクミルパーオキサイドを使用する場合、その使用量はスチレン系単量体100重量部に対して0.4重量部以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.2重量部以下で、
使用量が少ないほど最終製品の不快臭を抑制できる。
本発明において使用する発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタンなど炭素数3以上5以下の炭化水素等の脂肪族炭化水素類、およびジフルオロエタン、テトラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素類などの揮発性発泡剤が挙げられる。また、これらの発泡剤を併用することもできる。使用量としてはスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは3重量部以上12重量部以下、更に好ましくは5重量部以上9重量部以下である。3重量部より少ないと、予備発泡時間が長くなるとともに成形時の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、12重量部を越えると、予備発泡速度がはやくなり、倍率バラツキが大きくなる。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法では、上記難燃剤、難燃助剤以外の添加剤として、可塑剤、気泡調整剤等が使用できる。可塑剤としては、例えば、ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、流動パラフィン等の有機炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の環状脂肪族等があげられ、これらは併用しても何ら差し支えない。気泡調整剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの中で、シクロヘキサンのような環状脂肪族は、熱により、二重結合が生成し、不快臭の原因物質となるので、添加剤として好ましくない。このため、シクロヘキサンのような環状脂肪族を添加する場合、その使用量は、スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.30重量部未満であることが好ましく、添加量は0部であることがより好ましい。
本発明においては、成形時に融着促進効果のあるステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、硬化ひまし油、硬化大豆油等の高級脂肪酸グリセライド、予備発泡時の集塊化防止効果のあるステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩を使用することができる。これらの添加剤は、発泡性スチレン系樹脂粒子とともにヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ユニバーサルミキサーなどの混合機内で一定時間混合することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子表面に被覆または付着させることができる。さらに、帯電防止剤として一般に使用されるグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド、アルキルスルフォン酸ナトリウム、などの1種または2種以上の併用も可能である。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、公知の方法で発泡させて、スチレン系樹脂発泡成形体を得ることが出来る。例えば、発泡性スチレン系樹脂粒子を一旦予備発泡粒子を作製し、その後型に該予備発泡粒子を充填し成形する方法や、発泡性スチレン系樹脂粒子を直接型に充填し発泡成型する方法等が挙げられる。発泡性スチレン系樹脂粒子を一旦予備発泡粒子を作製し、その後型に該予備発泡粒子を充填し成形する方法の一例としては、下記のような方法が挙げられる。発泡性スチレン系樹脂粒子を回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて80〜110℃程度で加熱することにより、嵩倍率が30〜100ml/g程度の予備発泡粒を得、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気などを用いて100〜145℃程度で加熱することによりスチレン系樹脂発泡成形体とすることができる。
本発明の製造方法により製造された発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られたスチレン系樹脂発泡成形体は、従来品と比較して、残存スチレン単量体量が少ないだけでなく、重合開始剤由来の不快臭も抑制されている。該スチレン系樹脂発泡成形体は、生鮮物の保管用容器をはじめ、建築や土木用の断熱資材、自動車用の緩衝資材として幅広く使用でき、特に不快臭低減が望まれている自動車内装材や生鮮食品の容器へ好適に使用できる。
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例、及び比較例中の樹脂の分子量、及び樹脂中の残存スチレン量、スチレン単量体中のフェニルアセチレン量、難燃性及び不快臭の評価については以下の方法で測定した。なお、「部」「%」は特に断りのない限り重量基準である。
(重量平均分子量測定法)
発泡性スチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに溶解し、GPC(東ソー(株)製HLC−8020、カラム:TSKgel Super HZM−H、カラム温度:40℃、流速:0.35ml/1min.)にて重量平均分子量(Mw)を測定した。
(残存スチレン量測定法)
発泡性スチレン系樹脂粒子を塩化メチレン(内部標準シクロペンタノール)に溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx−1、カラム温度条件:50→80℃(3℃/min)後、80→180℃昇温(10℃/min)、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、発泡性スチレン系樹脂粒子中に含まれる残存スチレン量(ppm)を定量した。
(スチレン単量体中のフェニルアセチレン測定法)
フェニルアセチレン量0ppm(ND)のスチレンを用いて、フェニルアセチレン量とシクロペンタノール量の比から導いたフェニルアセチレン量の検量線を作成した。NDとは、本測定方法では、検出されないことを示す。
スチレンに、内部標準シクロペンタノールを溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx−1、カラム温度条件:50→70℃(3℃/min)へ昇温し、70℃で30分保持後、70→170℃(10℃/min)へ昇温、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、スチレン中のフェニルアセチレン量(ppm)を定量した。
発泡成形体の製造方法は以下の通りである。
(発泡成形体の製造方法)
発泡性スチレン系樹脂粒子を加圧式予備発泡機(大開工業社製)で、105℃の水蒸気で加熱することにより、、嵩倍率が55ml/gの予備発泡粒を得る。次に、この予備発泡粒を室温で1日養生させた後、ダイセン工業社製のKR−57成形機にて平板状発泡成形体を成形した。
(表面性の評価)
得られた発泡成形体の表面状態を目視観察し、以下の基準にて表面性を評価した。
◎:表面の溶融、粒間が無く、非常に美麗。
○:表面の溶融、粒間が少なく、美麗。
△:表面の溶融、粒間があり、外観やや不良。
×:表面の溶融、粒間が多く、外観不良。
(難燃性の評価)
得られた発泡成形体から10mm×25mm×長さ200mmに切り出した試験片5個を、60℃オーブンで12時間養生後、JIS A9511:2006Rの測定方法Aに準拠し測定を行い、5個の試験片の平均値を求め、消炎時間とした。消炎時間が、3秒以内が自消性の特性を有する。
(不快臭の評価)
得られた発泡成形体から、100mm×100mm×厚20mmに切り出した試験片を、アルミホイルにつつみ保管し、1週間以内に、活性炭または活性炭シート等の試験室内で臭気官能試験をおこなう。臭気試験装置は、縦100mm×横100mm×高さ50mmBOXの上蓋にφ50mmの穴を開けた臭気箱に、試験片を、上蓋φ50mmの穴(パッキン付き)に密閉して装着し、更に、その試験片の上部に、臭気袋を密閉して取り付けて、臭気袋に臭気を収集できるようしたものである。試験前に、活性炭に通した脱臭空気を、装置に充満させておき、臭気袋の栓を閉めておく。この装置を、80℃×4時間に放置後、臭気袋の栓を開けて、、5人の臭気パネラーによる臭気官能試験をおこない、5人の快・不快点数の平均値で示した。以下の基準にて快・不快臭の基準は以下に示す。合格基準は、−1.5以上である。
−4:極端に不快
−3:非常に不快
−2:不快−1:やや不快
0:快でも不快でもない
1:やや快
2:快
3:非常に快
4:極端に快
(実施例1)
フェニルアセチレン量0ppm(ND)のスチレンを用いた。撹拌機付き6Lオートクレーブに水96重量部、第3リン酸カルシウム0.16重量部、α−オレインスルフォン酸ソーダ0.003重量部、難燃剤として臭素化ブタジエン・スチレン共重合体(ケムチュラ社製「EMERALD 3000」 臭素含有量64%)1重量部、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド(日油社製パークミルD)0.2重量部、やし油1.0重量部、2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタン(化薬アクゾ社製AM−C55)を0.19重量部、t−アミルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製トリゴノックス121)0.1重量部を仕込んだ後、フェニルアセチレン量0ppm(ND)のスチレン100重量部を仕込み、昇温し、98℃で5時間重合を行った。その後、ノルマルリッチブタン(ノルマル/イソ=70/30)を8部仕込み、117℃へ昇温し、8時間発泡剤含浸重合をおこなった。その後、40℃まで冷却し、発泡性スチレン系樹脂粒子を取り出し、乾燥した。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子について上述した各種測定を行い、その結果を表1に示した。また、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子について上述した方法で発泡成形体を作成し、上述した評価を行い、その結果を表1に示した。
(実施例2)
t−アミルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製トリゴノックス121)を、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(日油社製PB−O)0.1重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られた結果を表1に示す。
(実施例3)
臭素化ブタジエン・スチレン共重合体(ケムチュラ社製「EMERALD 3000」 臭素含有量64%)1.2部、ジクミルパーオキサイド無に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られた結果を表1に示す。
(実施例4)
2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタン(化薬アクゾ社製AM−C55)を0.1重量部、t−アミルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製トリゴノックス121)0.15重量部に変更した以外は、実施例3と同様に行った。得られた結果を表1に示す。
(実施例5)
撹拌機付き6Lオートクレーブに水96重量部、第3リン酸カルシウム0.14重量部、α−オレインスルフォン酸ソーダ0.003重量部、ポリエチレンワクス(東洋アドレ社製PEW)、2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタン(化薬アクゾ社製AM−C55)を0.12重量部、t−アミルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製トリゴノックス121)0.22重量部を仕込んだ後、フェニルアセチレン量0ppm(ND)のスチレン95重量部、アクリル酸ブチル5重量部を仕込み、昇温し、98℃で5時間重合を行った。ノルマルリッチブタン(ノルマル/イソ=50/50)を7部仕込み、120℃へ昇温し、8時間発泡剤含浸重合をおこなった。その後、40℃まで冷却し、発泡性スチレン系樹脂粒子を取り出し、乾燥した。得られた発泡性スチレン系樹脂粒子について上述した各種測定を行い、その結果を表1に示した。また、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子について上述した方法で発泡成形体を作成し、上述した評価を行い、その結果を表1に示した。
(比較例1)
フェニルアセチレン量80ppmのスチレンを用い、ジベンゾイルパーオキサイド(日油社製ナイパーNW)0.1重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油社製PB−E)0.35重量部にした以外は実施例1と同様に行った。得られた結果は表1に示す。
(比較例2)
フェニルアセチレン量0ppm(ND)のスチレンへ変更した以外は比較例1と同様に行った。得られた結果は表1に示す。
(比較例3)
フェニルアセチレン量80ppmのスチレンとした以外は実施例1と同様に行った。得られた結果は表1に示す。
(比較例4)
t−アミルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製トリゴノックス121)を、ジベンゾイルパーオキサイド(日油社製ナイパーNW)0.1重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例5)
2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタン(化薬アクゾ社製AM−C55)を、t−ブチルパーオキシーイソプロピルカーボネート(日油社製PB−I)0.35重量部に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた結果は表1に示す。
(比較例6)
2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタン(化薬アクゾ社製AM−C55)を、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油社製PB−E)0.35重量部に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた結果は表1に示す。
(比較例7)
フェニルアセチレン量80ppmのスチレンを用い、ジベンゾイルパーオキサイド(日油社製ナイパーNW)0.23重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油社製PB−E)0.21重量部に変更した以外は実施例5と同様に行った。得られた結果は表1に示す。
(比較例8)
フェニルアセチレン量0ppm(ND)のスチレンへ変更した以外は比較例7と同様に行った。得られた結果は表1に示す。
Figure 2020147668

Claims (6)

  1. 発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
    フェニルアセチレン濃度が30ppm以下のスチレン系単量体を重合する重合工程と、得られた重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を含み、
    前記重合工程では、一般式(1)に示される化合物及び一般式(2)に示される化合物を重合開始剤として使用し、
    前記一般式(1)に示される化合物の使用量は、前記スチレン系単量体100重量部に対して0.05重量部以上0.40重量部以下であり、
    前記一般式(2)に示される化合物の使用量は、前記スチレン系単量体100重量部に対して0.05重量部以上0.40重量部以下であり、
    前記発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量が30ppm以下であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。

    一般式(1)
    Figure 2020147668
    一般式(2)
    Figure 2020147668
    (式中のR1、R2は、直鎖または分岐アルキル基を表す。)
  2. 前記一般式(1)で示される化合物が、2,2−ジ−t−アミルパーオキシブタンであることを特徴とする請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記一般式(2)で示される化合物が、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、および/または、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  4. 前記重合工程において、難燃剤として臭素化ポリマーを添加することを特徴とする、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  5. 前記重合工程において、更に難燃助剤を添加することを特徴とする、
    請求項4に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  6. 前記難燃助剤がジクミルパーオキサイドを含み、
    前記ジクミルパーオキサイドの使用量が、前記スチレン系単量体100重量部に対して0.40重量部未満である、
    請求項5に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
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