JP6697862B2 - 難燃性を付与した発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃剤とスチレン系単量体を水性媒体中に分散させる工程を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関するものである。
建築や土木用途にポリスチレン系樹脂発泡体が多用されているが、住宅関連資材等に使用する場合に難燃性能を要求される場合が多く、難燃剤等を含有した発泡性ポリスチレン系樹脂発泡体が使用されることが多い。
難燃剤を多く含有するほど難燃性能が向上するが、懸濁重合系に難燃剤が存在すると難燃剤に重合の進行を阻害され、発泡体中のモノマーの残存量が多くなり、シックハウス等の懸念が高まる。 また、懸濁重合法でのEPSの製造方法は、安価で分子量などの調整が容易に可能という特徴を持つが、現在主流となっているポリマー型の難燃剤は分子量が大きいため、懸濁安定性が悪化するといった問題もあった。
従って、近年特に、可能な限り難燃剤を減量する方法への要求が高まっている。難燃性能を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特許文献1では、スチレン100部と臭素化ブタジエン・スチレン共重合体1部と難燃助剤0.2部を仕込んで水中で重合する工程を有する、残存スチレン量230−280ppmで難燃性能を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。しかしながら、難燃剤の量、難燃助剤の量、難燃剤/難燃助剤の比を最適化できておらず、難燃剤量を大量に必要とする問題があった。
また、特許文献2では、臭素化ブタジエン−スチレンブロック共重合体を含有する種粒子と難燃助剤とスチレンとを水中で乳化させ重合する工程を有する、難燃性能を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。しかしながら、難燃剤とスチレン系単量体を重合初期から水性媒体中に分散させる工程を有しないために、EPS樹脂粒子を得るまでの工程が多く生産性が悪い。また、PSと難燃剤を押出機を使って混錬するために、難燃剤の分解が起こり必要以上に難燃剤を必要とする。更に押出工程を経ることでPSの分子量低下が起こり、その後の重合操作でも容易に分子量調整できないことから、最終の分子量が低く強度面が悪化する傾向があった。
また、特許文献3では、スチレン100部とヘキサブロモシクロドデカン(難燃剤)0.62部と過酸化ジクミル(難燃助剤)0.21部を水中で攪拌し重合する工程を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。しかしながら、使用されている難燃剤がヘキサブロモシクロドデカンであるため、環境面の問題がある。
また、特許文献4では、樹脂成分100質量部に対して、難燃剤0.1〜1.0質量部と難燃助剤0.1〜0.5質量部が難燃剤:難燃助剤=1:0.12〜0.63(質量比)の割合で含まれる改質ポリスチレン系発泡性樹脂粒子が提案されている。しかしながら、難燃剤を初期から添加するのではなく、樹脂粒子を作成後に発泡剤と共に含浸する工程を必要とするため、生産性が悪いという問題がある。
特開2015−117282号公報 特開2015−101702号公報 特開平06−025456号公報 特開2014−189769号公報
本発明の目的は、難燃剤の使用量を従来よりも減量し、かつ、難燃性能を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を懸濁重合により得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、難燃性能を発現するためには、燃焼時に難燃剤が分解し速やかにハロゲン系分子等を気層部に放出する必要があることに着目した。難燃剤の分解を促進するために、従来から難燃助剤として過酸化物を樹脂粒子中に含んでいるが、難燃性能発現の機構が複雑で難燃助剤との割合の検討はなされていなかった。本発明では、難燃剤/難燃助剤=0.4以上3.0以下とすることで、従来よりも難燃剤を低減できることを見出した。
また、現在難燃剤として臭素化ポリマーが主流となっているが、分子量が大きいために従来懸濁重合が困難であったが、難燃剤と難燃助剤の比率を見直したことで難燃剤量を減量することが出来、懸濁重合を可能とすることをを見出し本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の第1は、難燃剤とスチレン系単量体を水性媒体中に分散させる工程を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、スチレン系単量体100重量部に対して、難燃剤としての臭素化ポリマーを0.3重量部以上2.0重量部以下含み、難燃助剤を0.2重量部以上1.1重量部以下含み、該難燃剤と該難燃助剤の割合が難燃剤/難燃助剤=0.4以上3.0以下であり、該難燃剤と該難燃助剤の総量が1.1重量部以上であることをことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
本発明の第2は、臭素化ポリマーが臭素化ブタジエン−スチレン共重合体であることを特徴とする第1の発明に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
本発明の第3は、残存スチレン系単量体量が300ppm以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
本発明の第4は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)が25万以上40万以下であることを特徴とする第1〜3の発明のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
本発明の第5は、重合開始剤として、一般式(1)に示される化合物0.05重量部以上0.6重量部以下含むことを特徴とする第1〜4の発明のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
Figure 0006697862
(式中のRは、アルキル基、Rは分岐鎖又は直鎖のアルキル基を表す。)
本発明の第6は、重合開始剤として一般式(1)のR構造がメチル基あるいはエチル基であり、R構造が2−エチルヘキシル基、イソプロピル基であることを特徴とする第1〜5発明のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
本発明によれば、難燃剤の使用量を従来よりも減量し、かつ、難燃性能を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を懸濁重合により得ることができる製造方法を提供することができる。
本発明は、難燃剤とスチレン系単量体を水性媒体中に分散させる工程を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、スチレン系単量体100重量部に対して、難燃剤としての臭素化ポリマーを0.3重量部以上2.0重量部以下含み、難燃助剤を0.2重量部以上1.1重量部以下含み、該難燃剤と該難燃助剤の割合が難燃剤/難燃助剤=0.4以上3.0以下であり、該難燃剤と該難燃助剤の総量が1.1重量部以上であることをことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法である。
本発明で用いる難燃剤は、臭素化ポリマーである。臭素化スチレン、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体、臭素化ノボラック樹脂アリルエーテル、臭素化ポリ(1,3?シクロアルカジエン)及び臭素化ポリ(4?ビニルフェノールアリルエーテル)があげられる。
その中でも、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体が難燃性を得やすいことから好ましい。臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体の中でも、臭素化ブタジエン・スチレン共重合体が高い難燃性が得やすいことから、更に好ましい。臭素化前のスチレン・ブタジエン共重合体は、ジブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエンブロック共重合体)、トリブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)、テトラブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエン・スチレン・ブタジエンブロック共重合体)又はマルチブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエン・スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)のいずれであってもよい。スチレン・ブタジエン共重合体は、ランダム重合を含む既知のいずれの方法によって調製したものでも良いが、連続するアニオン重合又はカップリング反応によって調製したものが好ましい。これらの中でも臭素化スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体のような臭素化トリブロック共重合体が特に好ましい。
その他の難燃剤として、ポリグリセリンジブロモプロピルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)等々の低分子化合物もあげられるが、これらの難燃剤を使用しても、最終製品の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の残スチレン量を低くする効果がえられるが、スチレン系単量体の重合効率の低下により、分子量が低くなってしまう。
本発明における難燃剤の添加量は、スチレン系単量体100重量部に対して0.3重量部以上2.0重量部以下で、好ましくは、0.5重量部以上1.0重量部以下である。0.3重量部未満であると充分な難燃性能が得られない。また、2.0重量部を超えると得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の成形加工性、成形体の表面性の悪化を引き起こし好ましくなく、また、スチレン重合時の安定性を損なう。
本発明に用いる難燃助剤としては、例えば、クメンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン等の高温分解型の有機物があげられる。特に、重合中に分解が少なく、懸濁重合時の分散への影響が少ないことの理由から、ジクミルパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタンが好ましい。
本発明における難燃助剤の添加量は、スチレン系単量体100重量部に対して難燃助剤を0.2重量部以上1.1重量部以下で、好ましくは、0.4重量部以上0.8重量部以下である。0.2重量部未満であると十分な難燃性が得られない。また、1.1重量部を超えると発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を可塑化させるために、特に高温での成形性及び成形体の表面性を損なう傾向にある。
本発明における難燃剤と難燃助剤の総量は1.1重量部以上である。1.1重量部未満であると、難燃性が悪化する傾向にある。
本発明における難燃剤と難燃助剤の割合は難燃剤/難燃助剤=0.4以上3.0以下であり、より好ましくは、0.5以上2.0以下である。難燃剤と難燃助剤の割合が0.4以下であると、難燃剤が少なすぎるために十分な難燃性が得られない。また、3.0を超えると難燃助剤による発生ラジカル量が難燃剤に比べて少ないために同様に十分な難燃性が得られない、さらに難燃剤が多くなりすぎるために残存モノマーが多くなる傾向や成形体の表面性が悪化する傾向がある。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、難燃剤とスチレン系単量体を重合初期から水性媒体中に分散させる工程を有する、いわゆる懸濁重合法により製造される。懸濁重合法は、生産性及び分子量調整の面から押出機でPSと難燃剤を事前に混錬したものを種粒子としてスチレンを追加するいわゆるシード重合よりも好ましい。
懸濁重合とは、例えば以下のようにして製造方法である。所定量の水性懸濁媒体中に、ポリスチレンの重合に使用される一般の重合開始剤に加え、一般式(1)に示す化合物と共に、スチレン系単量体、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体、その他添加剤を添加し、所定の温度、好ましくは90℃以上100℃未満で一定時間重合し、スチレン系単量体の転化率が80%以上95%以下に達した時点で重合工程を完了させる。該重合工程の後、発泡剤を添加し、所定温度、好ましくは110℃以上120℃以下で一定時間発泡剤含浸工程を実施する。実施後冷却をすると発泡性スチレン系樹脂粒子が得られる。
発泡剤含浸工程の温度が110℃以上120℃以下の場合、特に、前記一般式(1)の10時間半減期温度が96℃以上110℃以下である化合物を使用する為、効率よく、スチレン単量体の安定に重合が進行する。しかし、110℃未満の場合、一般式(1)の化合物のラジカル発生が少なくなり、生産性が低下し、120℃を超えると、重合機の内圧が高くなり、重装備の耐圧を有する重合機が必要となる。
重合転化率が80%未満の場合、発泡剤の添加後に、110℃以上120以下の発泡剤含浸工程で重合系が不安定となったり、最終製品の発泡粒子のセル構造が変わり、発泡性が異なったりすることがあり、重合転化率が95%を超えると、重合時間が長くなり生産性が低下する。
以上のようにして得られた本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、残存スチレン系単量体量が300ppm以下であり、好ましくは250pm以下である。下限は、実用的には0ppmになり難いので敢えて表示するなら1ppm以上である。
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量Mwとしては、25万以上40万以下が好ましく、26万以上35万以下がより好ましい。発泡性スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量Mwが25万未満では、発泡成形体とした際の強度が低くなるばかりか、成形体表面が溶融しやすく、外観を損なう傾向があり、また、40万超では、発泡性が低くなり、成形性が悪化する(目的とする発泡倍率の予備発泡粒子を得る為に必要な加熱温度、融着性に優れる成形体を得る為に必要な成形温度が高くなる)傾向があり、成形体の表面性も悪化する。
重量平均分子量Mwは、スチレン系樹脂粒子を重合する際の開始剤の使用量と重合温度の組み合わせにより、制御することができる。例えば、開始剤の使用量を多くする、および/または、重合温度を高くすることにより、Mwを低くすることができる。
ここで、本発明における発泡性熱可塑性樹脂粒子の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミェーションクロマトグラフ(以下、「GPC」と略す場合がある)を用いて、後述する条件にて測定した値であり、ポリスチレン換算の数値である。
本発明に用いるスチレン系単量体としては、スチレン、及び、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられ、さらにスチレンと共重合が可能な成分、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体も包含する。これら共重合が可能な成分を1種又は2種以上使用し共重合に供しても良い。
スチレン単量体の製造過程で副生産物として生成するフェニルアセチレンは、重合阻害物質として働き、フェニルアセチレン量が100ppm以上含有すると、最終製品の発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量が高くなる。一方、フェニルアセチレン量が100ppm未満では、最終製品の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の残存スチレン量が少なくなるが、フェニルアセチレンを除去する工程が必要となり、スチレン単量体自体のコストが高くなる。フェニルアセチレン量の上限は、汎用と呼ばれるスチレンで、400ppmである。
本発明で使用する分散剤としては、一般的に懸濁重合に用いられている分散剤、例えば、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩が挙げられる。これら、難水溶性無機塩を用いる場合には、α−オレフィンスルフォン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダなどのアニオン性界面活性剤を併用すると、分散安定性が増すので効果的である。また、難溶性無機塩は得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径を調節するために、重合中に1回以上追加することもある。
本発明で使用する重合開始剤は、一般式(1)で示される化合物であり、Rはアルキル基、Rは分岐鎖又は直鎖のアルキル基構造をもつものであり、具体的には、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等があげられる。
Figure 0006697862
(式中のRは、アルキル基、Rは分岐鎖又は直鎖のアルキル基を表す。)
特に、一般式(1)の化合物の中で、R構造がメチル基あるいはエチル基であり、R構造がエチルヘキシル基、イソプロピル基であり、10時間半減期温度が96℃以上110℃以下である化合物が、最終製品である発泡スチレン系樹脂粒子の残存スチレン量を低減することができるため好ましい。例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度99℃)、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(98.5℃)などが挙げられる。
前記一般式(1)に示す化合物の使用量は、求める発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量により異なるが、スチレン系単量体100重量部に対して、0.05重量部以上0.6重量部以下であり、好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下、さらに好ましくは、0.2重量部以上で0.4重量部以下である。一般式(1)に示す化合物の使用量が、当該範囲内であると、適度な分子量の樹脂が得られ、かつ、残存スチレン量を低減させることが出来る。 0.05重量部未満でも残スチレン量の低減効果を発揮するが、長い反応時間を要する場合がある。また、上限は0.6重量部であるが、残存スチレン系単量体量を低減させる効果は変わらないが、樹脂の分子量が低下する傾向があり、コストが高くなる。
本発明においては、前記一般式(1)の中で、10時間半減期温度が96℃以上110℃以下である化合物を使用すると、分子量の低下を抑制しつつ、残存スチレン量をさらに低下させる事が可能になる。この化合物については10時間半減期温度が96℃以上110℃以下である事が重要であり、この範囲であれば重合中の開裂量を極力抑制し、熱処理、あるいは発泡剤含浸工程中に効率よく残存スチレン量を減少させる事ができる。10時間半減期温度が95℃未満の場合、重合中の開裂量が増加し、樹脂の分子量を低下させるため好ましくない。この問題の解決方法として、重合温度を下げることも可能であるが、その場合重合時間が延びるため、工業生産上好ましくない。また、逆に10時間半減期温度が110℃を超える場合、熱処理、あるいは発泡剤含浸中に開裂する開始剤の量が不足し、十分に残存スチレン量を減少させることができない。
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造において、一般的には、主に樹脂を形成するための開始剤と主に残存スチレン量を低下させるための開始剤を併用させることが通常行われている。そして、これらの開始剤の選定は重合温度、重合時間、および必要とする樹脂の分子量を勘案して適宜決められる。よって、本発明においても、一般式(1)に示される化合物に、一般に用いられる他の重合開始剤を1種或いは2種以上併用することにより、重合温度、重合時間、樹脂の分子量等の選択幅をより広げた上で、残存スチレン量を低減した良好な製品を得ることができるので、併用することは極めて好ましい実施態様である。ここに、一般に用いられる他の重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル−t−ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチルのような有機化酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などが例示される。
本発明において使用する発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタンなど炭素数3以上5以下の炭化水素等の脂肪族炭化水素類、およびジフルオロエタン、テトラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素類などの揮発性発泡剤が挙げられる。また、これらの発泡剤を併用することもできる。使用量としてはスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは3重量部以上12重量部以下、更に好ましくは5重量部以上9重量部以下である。
本発明において使用する添加剤としては、目的に応じて可塑剤、気泡調整剤、外添剤等が使用できる。可塑剤としては、例えば、ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素等があげられ、これらは併用しても何ら差し支えない。
気泡調整剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
外添剤の具体例としては、例えば、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド、ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド、ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエート等の非イオン界面活性剤などが挙げられる。これら外添剤及び添付剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。また、これら外添剤及び添付剤は発泡剤含浸時に水系に添加してもよいし、脱水後に若しくは乾燥後に添加し被覆してもよく、被覆方法によらない。好ましい被覆方法は、乾燥後に添付し、混合撹拌することにより被覆する方法である。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で発泡させて、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが出来る。例えば、一旦予備発泡粒子を作製し、その後型に該予備発泡粒子を充填し成形する方法や、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を直接型に充填し発泡成型する方法等が挙げられる。発泡成形体の製造方法の例としては下記のような方法が挙げられる。本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子を回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて80〜110℃程度で加熱することにより、嵩倍率が30〜100ml/g程度の予備発泡粒を得、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気などを用いて105〜145℃程度で加熱することによりポリスチレン系樹脂発泡成形体とすることができる。 このようにして得られた、本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体は、難燃性を有し、且つ残存スチレン系単量体量も少ないものとなる。
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、生鮮物の保管用容器をはじめ、建築や土木用の断熱資材、自動車用の緩衝資材として、幅広く使用される。
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例、及び比較例中の樹脂の分子量、及び樹脂中の残存スチレン量、スチレン単量体中のフェニルアセチレン量、難燃性の評価については以下の方法で測定した。なお、「部」「%」は特に断りのない限り重量基準である。
(分子量測定法)
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して、発泡性熱可塑性樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す場合がある)20mlに溶解させた後、ゲルパーミェーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、以下の条件にてGPC測定を行い、GPC測定チャートおよび、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を得た。尚、得られた値はポリスチレン換算の相対値である。
測定装置:東ソー社製、高速GPC装置 HLC−8220
使用カラム:東ソー社製、SuperHZM−H×2本、SuperH−RC×2本
カラム温度:40℃、移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:0.35ml/分、注入量:10μl
検出器:RI。
(残存スチレン測定法)
発泡性スチレン系樹脂粒子を塩化メチレン(内部標準シクロペンタノール)に溶解し、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて以下の条件で発泡性スチレン系樹脂粒子中に含まれる残存スチレン量(ppm)を定量した。
測定装置:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−2014
カラム:キャピラリーカラム(GLサイエンス製Rtx−1)
カラム温度条件:50→80℃(3℃/min)後、80→180℃昇温(10℃/min)、
キャリアガス:ヘリウム。
(スチレン単量体中のフェニルアセチレン測定法)
フェニルアセチレン量0ppmのスチレンを用いて、フェニルアセチレン量とシクロペンタノール量の比から導いたフェニルアセチレン量の検量線を作成した。
スチレンに、内部標準シクロペンタノールを溶解し、以下の条件でスチレン中のフェニルアセチレン量(ppm)を定量した。
測定装置:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−2014
カラム:キャピラリーカラム(GLサイエンス製Rtx−1)
カラム温度条件:50→70℃(3℃/min)へ昇温し、70℃で30分保持後。70→170℃(10℃/min)へ昇温
キャリアガス:ヘリウム。
(表面性評価)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加圧式予備発泡機(大開工業社製)で水蒸気により加熱し、嵩倍率が55ml/gの予備発泡粒を得る。次に、この予備発泡粒を室温で1日養生させた後、ダイセン工業社製のKR−57成形機にて平板状発泡体を成形した。
得られた熱可塑性樹脂発泡体の表面状態を目視観察し、以下の基準にて表面性を評価した。
◎:表面の溶融、粒間が無く、非常に美麗。
○:表面の溶融、粒間が少なく、美麗。
△:表面の溶融、粒間があり、外観やや不良。
×:表面の溶融、粒間が多く、外観不良。
(難燃性の評価)
得られた発泡成形体の難燃性を、以下の基準にて評価した。
○:酸素指数が26以上であり、かつ、自消性が3秒未満である。
×:酸素指数が26未満、および/または、自消性が3秒以上である。
(1)酸素指数測定
発泡成形体を10×10×150mmに切り出した試験片を、60℃オーブンで12時間養生後、JIS K7201−2:2007( 酸素指数による燃焼性の試験方法)に準拠し、酸素指数を測定した。
(2)自消性評価
発泡成形体から10mm×25mm×200mmに切り出した試験片5個を、60℃オーブンで12時間養生後、JIS A9511:2006Rの測定方法Aに準拠し測定を行い、5個の試験片の平均値を求め、消炎時間とした。
(実施例1)
スチレン中のフェニルアセチレン量は、50ppmであった。重合方法は以下のとおり、水性媒体中に難燃剤とスチレン系単量体を初期から添加する懸濁重合法で実施した。
撹拌機付き6Lオートクレーブに水96重量部、第3リン酸カルシウム0.15重量部、α−オレインスルフォン酸ソーダ0.005重量部、過酸化ベンゾイル0.08部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度99℃)0.38部、臭素化ブタジエン・スチレン共重合体(ケムチュラ社製「EMERALD 3000」 臭素含有量64%)1.0部、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド0.4部、添加剤として、やし油1.0部を仕込んだ後、スチレン100重量部を仕込み、昇温し、98℃で5時間重合を行った。その後、添加剤としてシクロヘキサンを0.5重量部、ノルマルリッチブタン(ノルマル/イソ=70/30)を8重量部仕込み、120℃へ昇温し、4時間発泡剤含浸重合をおこなった。その後、40℃まで冷却し、発泡性スチレン系樹脂粒子を取り出し、乾燥した。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量をGPCで測定すると27万、残存スチレン量をガスクロマトグラフィーにて測定すると170ppmであった。
また、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を篩分けして、粒子径0.6mm〜1.2mmを分取した。 分取した発泡性熱可塑性樹脂粒子を、加圧式予備発泡機[大開工業製、BHP]を用いて、吹き込み蒸気圧0.1MPaの条件にて嵩倍率50倍に予備発泡を実施した。その後、常温下で1日放置して、養生乾燥を行った。
得られたスチレン系樹脂予備発泡粒子を、成形機[ダイセン製、KR−57]を用いて、平板形状の金型内に充填し、吹き込み蒸気圧0.06MPaの成型条件にて型内成形を行い、発泡成形体を得た。
難燃性は、酸素指数は29%、消炎時間が0.9秒で燃焼せず合格であった。結果を表1に示す。
(実施例2〜12、比較例1〜7)
表1に記載のとおり、難燃剤、難燃助剤の種類と量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得て、同様の評価を実施した。
(比較例8)
<ポリスチレン系樹脂種粒子の製造>
φ50mm単軸押出機を用いて、ポリスチレン樹脂95質量部、難燃剤として臭素化ブタジエン・スチレン共重合体5質量部、及び安定剤を温度170〜230℃で溶融混練した。次いで、小孔を有するダイよりストランド状に押出し、水中で急冷した後にペレタイザーで切断することで円柱状スチレン系樹脂粒子を得た。
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>
熱可塑性樹脂粒子の重合において、6Lオートクレーブ中に水92重量部に、第3リン酸カルシウム0.6重量部、α−オレフィンスルフォン酸ソーダ0.01重量部、得られたポリスチレン系樹脂種粒子20重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート0.4重量部、ジクミルパーオキサイド0.4部を懸濁させ、水性懸濁液を90℃まで昇温した。
更に90℃を維持し撹拌しながら、スチレン単量体80重量部とベンゾイルパーオキサイド0.25重量部を5時間かけて反応系中に滴下して重合を行った後、添加剤としてシクロヘキサンを0.5重量部、ノルマルリッチブタン(ノルマル/イソ=70/30)を8重量部仕込み、120℃へ昇温し、4時間発泡剤含浸重合をおこなった。その後、40℃まで冷却し、発泡性スチレン系樹脂粒子を取り出し、乾燥した。その後は、実施例1と同様の操作により、予備発泡粒子および発泡成形体を得た。それぞれの評価結果を、表1に示す。
シード重合では、同じ量の難燃剤の懸濁重合(実施例1)と比較すると、難燃性能が悪化する問題点がある。更に分子量が低くなっていることから強度も低くなっている可能性が高い。この原因は難燃剤を事前にPSと押出機で混錬し種粒子を得なければならないために、難燃剤が分解してしまうこと、及びPSの分子鎖が短くなってしまうためと推測する。
Figure 0006697862

Claims (6)

  1. 難燃剤とスチレン系単量体を水性媒体中に分散させる工程を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、スチレン系単量体100重量部に対して、難燃剤としての臭素化ポリマーを0.3重量部以上2.0重量部以下含み、難燃助剤を0.2重量部以上1.1重量部以下含み、該難燃剤と該難燃助剤の割合が難燃剤/難燃助剤=0.4以上3.0以下であり、該難燃剤と該難燃助剤の総量が1.1重量部以上であり、
    さらに、重合工程および発泡剤含浸工程を有し、当該発泡剤含浸工程では120℃を超えないことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
  2. 臭素化ポリマーが臭素化ブタジエン−スチレン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
  3. 残存スチレン系単量体量が300ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
  4. 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)が25万以上40万以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
  5. 重合開始剤として、一般式(1)に示される化合物0.05重量部以上0.6重量部以下含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
    Figure 0006697862
    (式中のR1は、アルキル基、R2は分岐鎖又は直鎖のアルキル基を表す。)
  6. 重合開始剤として一般式(1)のR1構造がメチル基あるいはエチル基であり、R2構造が2−エチルヘキシル基、イソプロピル基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
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