JP2020093481A - 深絞り成形用多層フィルム及び深絞り包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルム厚さを薄肉化した場合であっても剛性(耐カール性)及び成形性が良好であり、透明性、光沢性がよく、耐ピンホール性に優れた深絞り成形用多層フィルム及び深絞り包装体を提供する。【解決手段】最外層から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11、ガスバリア樹脂層12、支持層13、シール樹脂層14の順に少なくとも4層を備え、下記(1)〜(3)の特徴を有する、総厚さが40〜100μmの深絞り成形用多層フィルム。(1)前記支持層の主成分がポリプロピレン系樹脂であり、総厚さに占める厚さの割合が20%以上、(2)前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂層の総厚さに占める厚さの割合が25%以上、(3)前記ガスバリア樹脂層または前記支持層の少なくとも1層にポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂を、前記ガスバリア樹脂層または前記支持層を基準として、10質量%以上50質量%以下含む。【選択図】図2

Description

本発明は、深絞り成形用多層フィルム及び深絞り包装体に関し、例えば、スライスハム及びスライスベーコンなどの食品包装に好適に使用できる深絞り成形用多層フィルム及び深絞り包装体に関する。
従来、食品などを包装する深絞り包装体の成形に用いられる深絞り包装用の多層フィルムが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献5参照)。これらの多層フィルムでは、ポリエステル樹脂層、ナイロン樹脂(Ny)又はエチレン−酢酸ビニル共重合けん化物(EVOH)からなるガスバリア性の樹脂層、及びシール性を有するポリオレフィン樹脂層がこの順に積層されている。特許文献1〜特許文献4に記載されたフィルムでは、外層となるポリエステル樹脂層に、シクロヘキサンジメタノールとの共重合若しくはイソフタル酸との共重合による非晶性ポリエステル樹脂層、又は結晶性ポリエステルを非晶のまま固化させたポリエチレンテレフタレート系樹脂層を用いることにより、深絞り包装体に必要な剛性、光沢及び透明性を付与している。また、特許文献5には、フィルム層厚200μm以上の耐衝撃性などに優れた多層フィルムが記載されている。
特開平7−096582号公報 特開平8−281892号公報 特開2003−136648号公報 特開2015−36196号公報 特開平10−100336号公報
近年、食品業界では、環境問題を考慮した廃棄物削減及び食品個体の少量化が消費者の意識の深厚と共に急激に進められている。スライスハム及びスライスベーコンなどの食品包装用の深絞り包装体においても、包装材の品質を保った状態で、従来の包装材の厚さに対して半減に近い減量化、即ち薄肉化が求められている。
食品包装用の深絞り包装体の製造工程では、原材料の多層フィルムを深絞り成形機に供給し、成形型で所望の形状及び大きさに底型成形して多層フィルムに複数の深絞り部を設ける。そして、多層フィルムの複数の深絞り部にスライスハムなどの内容物をそれぞれ充填した後、内容物を充填した多層フィルム上から蓋材フィルムを供給してヒートシール及び真空包装して冷却する。その後、多層フィルムの複数の深絞り部の間をフィルムカットすることにより、個別の深絞り包装体が製造される。そして、これら食品包装用の深絞り包装体では、個包装体あたりの食品少量化に合わせて、製造した個別の深絞り包装体を3個〜4個ずらして重ねてラベルテープで接着して一体化させた、所謂3連〜4連パック製造が行われている。
このような深絞り包装体の製造工程においては、市場要求に沿って深絞り包装体の成形用フィルムの薄肉化を行うと、フィルムの強度及び剛性が低下したり、蓋材とのヒートシールによりカールが発生する場合がある。これらの個包装体の強度及び剛性の低下又は変形は、見栄えを含めて内容物を含む深絞り包装体の商品価値を下げるだけでなく、深絞り包装体の製造工程においてフィルムの成形及び個包装体の整列搬送及びラベルの整然貼付などの作業性を著しく悪化させ、製造ラインを停止させるに至ることもある。
このような市場要求に対して、特許文献1〜特許文献3の深絞り成形用多層フィルムでは、フィルムに剛性を持たせるために、厚さが100μmを超える実施形態が記載されているが、フィルムの厚さを100μm以下に薄肉化をすると包装体としたときに形が崩れるおそれがある。
また、特許文献4に記載された深絞り成形用多層フィルムでは、フィルム厚さが40μm〜70μmとしているが、フィルム自体の強度が低く耐ピンホール性が不足する恐れがある。さらに、外層の非晶性ポリエステル樹脂層の厚さが、フィルム総厚に対する比率が15%以上25%以下である実施形態が記載されているが、フィルム総厚に対する比率が25%以下の場合は、包装体としたときに、蓋材とヒートシールする際にカールが発生するおそれがある。
また、特許文献5に記載された深絞り成形用イージーピール複合フィルムは、フィルム外層の厚み200〜500μmの無定形ポリエステル樹脂層からなる高衝撃強度などを有する深絞り複合フィルムであるが、フィルム外層の厚みで強度及び剛性を高めようとするもので、フィルムの総厚が200μmを超えることになり、経済性だけでなく、成形性も悪くなることから、本願の薄肉化しようとする課題には適していなかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、フィルム厚さを薄肉化した場合であっても剛性(耐カール性)及び成形性が良好であり、透明性、光沢性がよく、耐ピンホール性に優れた深絞り成形用多層フィルム及び深絞り包装体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、フィルム厚さを薄肉化した場合であっても所定の厚さのポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる層を有することで剛性(耐カール性)及び成形性が良好であり、そのポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる層をフィルム外層に配しているため、透明性、光沢性がよく、ガスバリア樹脂層または前記支持層の少なくとも1層にポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂を添加することにより耐ピンホール性に優れた深絞り成形用多層フィルム、及び、該多層フィルムを用いた深絞り包装体が得られることを見出し、以下を完成させるに至った。
本願は、第1の形態として、最外層から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層、ガスバリア樹脂層、支持層、シール樹脂層の順に少なくとも4層を備え、下記(1)〜(3)の特徴を有する、総厚さが40〜100μmの深絞り成形用多層フィルムを開示する。
(1)前記支持層の主成分がポリプロピレン系樹脂であり、総厚さに占める厚さの割合が20%以上、
(2)前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂層の総厚さに占める厚さの割合が25%以上、
(3)前記ガスバリア樹脂層または前記支持層の少なくとも1層にポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂を、前記ガスバリア樹脂層または前記支持層を基準として、10質量%以上50質量%以下含む。
第1の形態において、前記ガスバリア樹脂層が、ポリアミド系樹脂を含む層、または、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂を含む層、あるいは、これら両層であることが好ましい。
第1の形態において、前記ガスバリア樹脂層に含む熱可塑性エラストマー樹脂が、ポリエステルブロック共重合体またはポリアミド−ポリエーテル共重合体であることが好ましい。
第1の形態において、前記支持層に含む熱可塑性エラストマー樹脂が、エチレン/α―オレフィン共重合体であることが好ましい。
第1の形態において、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂層と前記ガスバリア樹脂層、ガスバリア樹脂層と前記支持層との間にポリオレフィン系接着樹脂からなる接着樹脂層を有することが好ましい。
本願は、第2の形態として、第1の形態の深絞り成形用多層フィルムを使用した深絞り包装体を開示する。
本願によれば、フィルムを薄肉化した場合であっても、剛性、成形性及び耐ピンホール性が良好であり、透明性及び光沢性に優れた深絞り成形用多層フィルム、及び、該多層フィルムを用いた深絞り包装体を実現できる。
図1は、本発明の実施の形態に係る深絞り成形用多層フィルム100の断面模式図である。 図2は、本発明の実施の形態に係る深絞り包装体400の断面模式図である。
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態によって何ら限定されるものではない。
本実施の形態において、「主成分」とは、各層を構成する樹脂成分全体を基準(100質量%)とした際に、各成分の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%含むことをいう。
[深絞り成形用多層フィルム100]
図1は、本発明の一実施の形態に係る深絞り成形用多層フィルム100の断面模式図である。図1に示すように、深絞り成形用多層フィルム100は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11、ガスバリア樹脂層12、支持層13、シール樹脂層14の順に少なくとも4層を備えている。
また、本開示の深絞り成形用多層フィルム100は、下記(1)〜(3)の特徴を有しており、総厚さが40〜100μmの多層フィルムである。
(1)前記支持層13の主成分がポリプロピレン系樹脂であり、総厚さに占める厚さの割合が20%以上である。
(2)前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11の総厚さに占める厚さの割合が25%以上である。
(3)前記ガスバリア樹脂層12または前記支持層13の少なくとも1層にポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂を、前記ガスバリア樹脂層または前記支持層を基準として、10質量%以上50質量%以下含む。
最外層である前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PET系樹脂」ともいう)を主成分として含む層である。
前記ガスバリア樹脂層は、ガスバリア樹脂を主成分として含む層である。
前記シール樹脂層は、シール樹脂を主成分として含む層である。
最外層とは、深絞り包装体とした場合に、外側となる層をいい、最内層とは深絞り包装体とした場合に、内容物側となる層をいう。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11とガスバリア樹脂層12との間、ガスバリア樹脂層12と支持層13との間には、接着樹脂層を設けてもよい。なお、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11、ガスバリア樹脂層12、支持層13は、および、シール樹脂層14は、2層以上で構成されていてもよい。
深絞り成形用多層フィルム100は、フィルムの総厚さが40μm以上100μm以下である。総厚さが100μm以下であれば、多層フィルム100の成形性が良好となり、包装材の減量化が可能となり、40μm以上であれば、剛性及び機械物性が良好となる。総厚さは、上述した効果が一層向上する観点から、45μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、55μm以上が更に好ましく、また、95μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましい。
以下、深絞り成形用多層フィルム100の各種構成要素について詳細に説明する。
<最外層:ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(PET系樹脂)11>
深絞り成形用多層フィルム100は、最外層にポリエチレンテレフタレート系樹脂層11を備える。ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主成分として含む層であり、フィルム製膜時にポリエチレンテレフタレート系樹脂を非晶状態のまま固化させて層形成される。ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11は、最外層に配されることにより、深絞り成形用多層フィルム100に剛性、強度、成形性及び光沢を付与することができる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11に含まれるポリエチレンテレフタレート系樹脂は、モノマー成分である多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とを重合させることにより得られる。
(多価カルボン酸成分)
多価カルボン酸成分としては、例えば、エチレンテレフタレート単位を構成するテレフタル酸、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸などが用いられる。多価カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸及び5−tert−ブチルイソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸類、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸類、4、4´−ジカルボキシジフェニル及び2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4´−ジカルボン酸などのジカルボキシビフェニル類、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸及びその置換体、1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボン酸及びその置換体などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシリン酸、テトラデカンジカルボン酸、タプシン酸、ノナデカンジカルボン酸及びドコサンジカルボン酸などが挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン及び1,3−ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。
(多価アルコール成分)
多価アルコール成分としては、ポリエチレンテレフタレート単位を構成するエチレングリコール、脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールなどを用いることができる。これらの多価アルコール成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、1,3−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、2,2−ビス(4´−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン及びビス(4´−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール系化合物のエチレンオキサイド付加物、キシリレングリコールなどが挙げられる。
また、上述した多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分は、1種以上の多価カルボン酸成分と1種以上の多価アルコール成分とを適宜組み合わせて用いることができる。これらのモノマー成分の組み合わせの種類及び含有量は、所望の深絞り成形用多層フィルム100のフィルム特性及び経済性などに基づいて適宜決定することができる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、多価カルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量が80モル%以上であることが好ましく、83モル%以上であることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、多価アルコール成分中のエチレングリコールの含有量が80モル%以上であることが好ましく、83モル%以上であることがより好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、多価カルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量が80モル%以上であり、かつ、多価アルコール成分中のエチレングリコールを80モル%以上含むことにより、深絞り成形用多層フィルム100の剛性がより大きくなり、ヒートシール時にフィルムのカールを抑制する効果がより大きくなる。また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、経済性の観点から、多価カルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量が90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、経済性の観点から、多価アルコール成分中のエチレングリコールの含有量が90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。
また、上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、1種のポリエチレンテレフタレート系樹脂を単独で用いてもよく、2種類以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を併用してもよい。
(共重合ポリエステル)
また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、経済性の観点から、テレフタル酸とエチレングリコールとからなるホモポリエチレンテレフタレート、または、テレフタル酸及びエチレングリコールと、これら以外の多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分とからなるポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルであってもよい。
特に最外層に配されるポリエチレンテレフタレート樹脂は2次成形性、透明性の観点から、テレフタル酸及びエチレングリコール以外の多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分がそれぞれ10モル%以上共重合されたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル樹脂が好ましく、30モル%以上共重合されたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル樹脂がより好ましい。上限は特に限定されないが70モル%以下のものが使用できる。テレフタル酸及びエチレングリコール以外の多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を10モル%以上含むことで、製膜時の生産性が良好となり、フィルムの2次成形性も良好となる。
また、深絞り成形用多層フィルム100の厚さ(総厚さ)に対するポリエチレンテレフタレート系樹脂層11の厚さ比率が25%以上であることが必要である。28%以上であることがより好ましく、30%以上であることが特に好ましい。深絞り成形用多層フィルム100は、多層フィルム100の総厚さに対するポリエチレンテレフタレート系樹脂層11の厚さ比率が25%以上であれば、深絞り成形用多層フィルム100に良好な剛性及び耐カール性を付与できる。また、深絞り成形用多層フィルム100の厚さに対するポリエチレンテレフタレート系樹脂層11の厚さ比率の上限は特に規定はしないが、例えば50%以下であれば、ガスバリア樹脂層12、支持層13およびシール樹脂層14の厚さを十分に確保でき、ガスバリア性及びヒートシール性を確保できる。
<ガスバリア樹脂層12>
ガスバリア樹脂層12は、深絞り成形用多層フィルム100に酸素ガスバリア性を付与する。このガスバリア樹脂層12を設けることにより、深絞り成形用多層フィルム100は、深絞り包装体とした際に、内容物へ酸素が透過するのを防いで、内容物である食品などの腐敗を防ぐことができる。
ガスバリア樹脂層12は、ポリアミド樹脂(以下、「PA」ともいう)を含む層、または、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、「EVOH」ともいう)含む層であることが好ましい。例えば、PAを含むガスバリア樹脂層12であってもよく、EVOHを含むガスバリア樹脂層12であってもよく、PA及びEVOHの混合樹脂を含むガスバリア樹脂層12であってもよい。
また、ガスバリア樹脂層12は、単層であってもよく、複数のガスバリア樹脂層12が積層された多層であってもよい。多層のガスバリア樹脂層12としては、例えば、PAを含む第1ガスバリア樹脂層12とEVOHを含む第2ガスバリア樹脂層12とを積層したものなどが挙げられる。なお、PA層とEVOH層とを積層する場合は、PA層とEVOH層のどちらが外層側になっても構わない。
ポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、ガスバリア性及び耐ピンホール性の観点から、ナイロン系樹脂(以下、「Ny」ともいう)が好ましい。ナイロン系樹脂としては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン及びMXD6ナイロンなどの縮合単位の重合体、並びに、これらの2種以上の共重合体及びこれらの混合物などを挙げることができる。これらの中でも、ナイロン系樹脂としては、ガスバリア性の観点から、MXD6ナイロンが好ましく、また耐ピンホール性の観点から、6ナイロン及び6−66ナイロンが好ましい。
EVOHとしては、成形性及びガスバリア性の観点から、エチレン含有量が30モル%以上60モル%以下のものが好ましい。また、EVOHとしては、成形性及びガスバリア性の観点から、けん化度が95%以上のもの好ましい。
PAを主成分とするガスバリア樹脂層12を設ける場合には、ガスバリア樹脂層12の厚さは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましく、また25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。PAを主成分とするガスバリア樹脂層12の厚さは、2μm以上であれば、良好なガスバリア性及び耐ピンホール性が得られ、また25μm以下であれば、深絞り包装機での良好なカット性が得られる。
EVOHを主成分とするガスバリア樹脂層12を設ける場合には、ガスバリア樹脂層12の厚さは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。EVOHを主成分とするガスバリア樹脂層12の厚さは、1μm以上であれば、良好な酸素ガスバリア性が得られ、20μm以下であれば良好な耐ピンホール性が得られる。
ガスバリア樹脂層12は、酸素透過性、剛性及び成形性の観点から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11の厚さに対する厚さ比率が、下限は80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、上限は200%以下であることが好ましく、180%以下であることが好ましく、160%以下であることが更に好ましい。
ガスバリア樹脂層12には、深絞り成形用多層フィルム100の耐ピンホール性を向上させるためポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂のいずれかを添加する事が望ましい。ポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂の添加量は、ガスバリア樹脂層12を基準として、10質量%以上、50質量%以下である。下限は12質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、上限は、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂を10質量%以上添加する事で良好な耐ピンホール性が得られ、50質量%以下にすることで良好な耐カール性が得られる。
(ポリエチレン系樹脂)
ガスバリア樹脂層12に添加するポリエチレン系樹脂としては、特に限定はないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)又はそれらを混合したものを使用することができる。耐ピンホール性やフィルム強度の観点からLLDPEを使用することが特に好ましい。
(熱可塑性エラストマー樹脂)
ガスバリア樹脂層12に添加する熱可塑性エラストマー樹脂としては特に制限はないが、ポリエステルブロック共重合体またはポリアミド−ポリエーテル共重合体が好適に使用できる。
(ポリエステルブロック共重合体)
ポリエステルブロック共重合体としては、ハードセグメントが、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから形成される結晶性の芳香族ポリエステルである。芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル−4,4´−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられる。主として芳香族ジカルボン酸を用いるが、必要によっては、芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4´−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、たとえば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、および酸ハロゲン化物などももちろん同等に用い得る。
ジオールの具体例としては、分子量400以下のジオール、例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2´−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4´−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、および4,4´−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用してもよい。そして、好ましいハードセグメントの例は、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位である。また、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸および/またはジメチルイソフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位からなるものも好ましく用いられる。
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体のソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールなどが挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルの中で、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、及びポリエチレンアジペートなどの使用が好ましく、これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、及びポリ(ε−カプロラクトン)などの使用が好ましい。
また、これらのソフトセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体のソフトセグメントの共重合量は、15〜65質量%であることが好ましく、中でも15〜60質量%であることが好ましい。
本発明におけるポリエステルブロック共重合体において、上記のハードセグメントとソフトセグメントの好ましい組み合わせとしては、ハードセグメントにポリブチレンテレフタレートを用い、ソフトセグメントにポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを用いたものや、ハードセグメントにポリブチレンテレフタレートを用い、ソフトセグメントにポリ(ε−カプロラクトン)を用いたものが挙げられる。
さらに、本発明におけるポリエステルブロック共重合体は、ハードセグメントとソフトセグメントに加えて、効果を損なわない範囲であれば、他の成分が含まれていてもよい。
他の成分としては、分散性や柔軟性付与の面から芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体からなるスチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)が好ましく、中でも相溶性の観点からSEBSがより好ましい。このような他の成分の含有量は、ポリエステルブロック共重合体中の60質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることが好ましく、さらには40質量%以下であることが好ましい。60質量%を超える場合、ポリエステルブロック共重合体の耐衝撃性向上効果が小さくなるため好ましくない。このようなポリエステルブロック共重合体の市販品としては、三菱ケミカル社製「モディックAPシリーズ」、東洋紡績社製「ペルプレン」、東レ・デュポン社製「ハイトレル」、アロン化成社製「エステラール」等がある。
(ポリアミド−ポリエーテル共重合体)
ポリアミド−ポリエーテル共重合体としては、ポリアミド(ナイロン6,66,11,12等)をハードセグメントとし、ポリエーテルおよび/またはポリエステルをソフトセグメントとするものが好ましい。
ポリエーテルブロックアミドは、例えば、ジアミンとジカルボン酸の塩、ラクタム類、またはアミノジカルボン酸などのPA構成成分と、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール(PG構成成分)と、ジカルボン酸とを重縮合させることによって調製される。
市販品としては「ペバックス(登録商標)」(アルケマ社製)、「ダイアミド(登録商標)」(ダイセル・エボニック社製)、「UBESTA(登録商標)XPA」(宇部興産社製)、「ノバミッド(登録商標)」(DSM社製)、「グリラックス(登録商標)」(東洋紡社製)、「グリロン(登録商標)」(エムスケミー・ジャパン社製)等がある。
<支持層13>
また、支持層13には耐カール性を付与する目的でポリプロピレン系樹脂を含む。支持層13は、ポリプロピレン系樹脂を主成分としてなる層である。
深絞り成形用多層フィルム100の厚さに対する支持層13の厚さ比率は20%以上である。該厚さ比率は、23%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。
深絞り成形用多層フィルム100の厚さに対する支持層13の厚さ比率が20%以上であれば、深絞り成形用多層フィルム100に良好な剛性及び耐カール性を付与できる。また、支持層13の厚さ比率の上限は特に規定はしないが、例えば50%以下であればよく、この場合、ガスバリア樹脂層12及びシール樹脂層14の厚さを十分に確保でき、ガスバリア性及びヒートシール性を確保できる。
使用できるポリプロピレン系樹脂は、共押出フィルム製膜の点でメルトフローレート(MFR)が5〜10g/10分程度のものが望ましい。
樹脂の種類は、単一重合体であるホモポリプロピレン、またエチレンモノマー含有量3〜5%程度のエチレンモノマーとの共重合体であるエチレン−プロピレンランダム共重合体が好適に使用できる。また、その要求される品質にあわせてこれらのポリプロピレン系樹脂層を複数積層させて支持層13を形成しても良い。
支持層13には、深絞り成形用多層フィルム100の耐ピンホール性を付与する目的で柔軟成分としてポリエチレン系樹脂又は熱可塑性エラストマー樹脂を添加する事が出来る。
ポリエチレン系樹脂又は熱可塑性エラストマー樹脂の添加量としては、支持層13を基準として、10質量%以上、50%質量以下が好ましい。下限は12質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい、上限は、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。柔軟成分を10質量%以上添加する事で良好な耐ピンホール性が得られ、50質量%以下にすることで良好な耐カール性が得られる。
(ポリエチレン系樹脂)
支持層13に添加するポリエチレン系樹脂としては、特に限定はないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)又はそれらを混合したものを使用することができる。耐ピンホール性やフィルム強度の観点からLLDPEを使用することが特に好ましい。
(熱可塑性エラストマー樹脂)
また、支持層13に添加する熱可塑性エラストマー樹脂としてはエチレン/α―オレフィン共重合体が好適に使用できる。α−オレフィン成分は1種または複数を、共重合体全体を基準として、5.0モル%以下で含有していることが好ましい。所望により、α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1種または複数使用する事が出来る。
<シール樹脂層14>
シール樹脂層14は、深絞り成形用多層フィルム100に柔軟性及びシール性を付与する。シール樹脂層14は、シール樹脂を主成分としてなる層であり、シール樹脂としては、オレフィン系樹脂を用いることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)及びポリエチレン(以下、「PE」ともいう)などが挙げられる。シール樹脂層14としては、EVAを主成分とするシール樹脂層14を用いてもよく、ポリエチレンを主成分とするシール樹脂層14を用いてもよい。
EVAのエチレン含有量は、特に限定されるものではない。EVAのエチレン含有量は、深絞り成形用多層フィルム100のフィルム製膜安定性の観点から、1.5モル%以上20モル%以下であることが好ましく、3モル%以上15モル%以下であることがより好ましい。
PEとしては、特に限定はない。PEとしては、例えば、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」ともいう)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」ともいう)及び高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」ともいう)、並びに、これらを混合したものが用いられる。
シール樹脂層14の厚さは、ヒートシール性、剛性及び成形性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることが更に好ましく、また30μm以下であることが好ましく、27.5μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが更に好ましい。
シール樹脂層14の厚さは、ヒートシール性、剛性及び成形性の観点から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11の厚さに対する厚さ比率が、5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることが更に好ましく、また50%以下であることが好ましく、47.5%以下であることが好ましく、45%以下であることが更に好ましい。
また、シール樹脂層14としては、単層であってもよく、多層が積層されたものであってもよい。シール樹脂層14としては、イージーピール(以下、「EP」ともいう)機能を備えたイージーピール層(以下、「EP層」ともいう)としてもよい。
イージーピール機能を有する樹脂としては、特に限定されず、例えば、非相溶性の2種のポリオレフィン樹脂の混合樹脂などが挙げられる。混合樹脂としては、例えば、LLDPEとポリブテン(以下、「PB」ともいう)との混合樹脂、EVAとポリプロピレン(以下、「PP」ともいう)との混合樹脂、PPとLDPEとの混合樹脂、PPとLLDPEとの混合樹脂、PPとアイオノマー(以下、「IO」ともいう)との混合樹脂、PPとエチレン−アクリル酸共重合体(以下、「EAA」ともいう)との混合樹脂、及びPPとエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(以下、「EMMA」ともいう)との混合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、混合樹脂としては、イージーピール機能の観点から、LLDPEとPBとの混合樹脂、PPとLDPEとの混合樹脂、または、PPとLLDPEとの混合樹脂が好ましい。
混合樹脂としては、イージーピール機能により深絞り包装体の良好な開封性を得る観点から、非相溶性の2種のポリオレフィン樹脂をいずれも35質量%以上含むことが好ましい。
EP層の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましく、また15μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。EP層は、厚さが0.5μm以上であれば、イージーピール機能が充分となり、深絞り成形用多層フィルム100の安定したフィルム製膜性も得られる。また、厚さが15μm以下であれば、剥離時に毛羽立ち及び膜残りを発生し難くすることができ、良好な剥離外観が得られる。
シール樹脂層14のイージーピール強度(剥離強度)としては、深絞り包装体の剥離時に凝集破壊が起こり、かつ剥離面が毛羽立たない程度の強度であればよい。シール樹脂層14のイージーピール強度としては、例えば、25℃で0.8N/15mm幅以上であることが好ましく、1.0N/15mm幅以上であることがより好ましく、1.2N/15mm幅以上であることが更に好ましく、また、40N/15mm幅以下であることが好ましく、3.5N/15mm幅以下であることがより好ましく、3.0N/15mm幅以下であることが更に好ましい。イージーピール強度が、0.8N/15mm幅以上であれば、深絞り包装体の輸送中のシール抜けなどの異常を防止することができ、また40N/15mm幅以下であれば、深絞り包装体の良好な開封性を得ることができる。
<接着樹脂層>
深絞り成形用多層フィルム100は、各層間に接着性樹脂を含有する接着樹脂層を設けてもよい。深絞り成形用多層フィルム100は、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層11とガスバリア樹脂層12との間に少なくとも1層の接着樹脂層を設けてもよく、支持層13とガスバリア樹脂層12との間に少なくとも1層の接着性樹脂層を設けてもよい。
接着樹脂としては、各層を構成する各種樹脂層を必要な強度で接着できれば特に限定されない。接着樹脂としては、ポリオレフィン系接着樹脂が好ましく使用できる。たとえば、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系接着樹脂などが使用できる。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸及びシトラコン酸などが挙げられる。
また、接着樹脂としては、不飽和カルボン酸のエステル及び無水物も用いてもよい。また、接着樹脂としては、誘導体としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド及びアクリル酸ナトリウムなどを用いてもよい。
接着樹脂としては、例えば、商品名:アドマー(三井化学社製)などの市販品を好適に用いることができる。
深絞り成形用多層フィルム100は、例えば、略号を用いて各層をポリエチレンテレフタレート系樹脂層(A)、PA層(B)、EVOH層(C)、支持層(D)、シール樹脂層(E)、及び接着樹脂層(F)で表した場合、以下の層構成を形成することができる。
(1) A/F/B/C/F/D/E
(2) A/F/C/B/F/D/E
(3) A/F/B/C/B/F/D/E
(4) A/F/B/F/B/F/D/E
上記構成のうち特に(1)の層構成が好ましい。
[深絞り成形用多層フィルムの製造方法]
深絞り成形用多層フィルム100は、従来公知の方法を用いて製造することができる。深絞り成形用多層フィルム100は、例えば、押出ラミネーション法、共押出インフレーション法及び共押出Tダイ法などにより製造することができる。これらの中でも、深絞り成形用多層フィルム100の製造方法としては、共押出Tダイ法を用いることが好ましい。
[深絞り包装体400]
上記実施の形態に係る深絞り成形用多層フィルム100は、成形により深絞り包装体400に用いることができる。図2は、本発明の実施の形態に係る深絞り包装体400の断面模式図である。図2に示すように、深絞り包装体400は、上記実施の形態に係る深絞り成形用多層フィルム100を深絞り成形した底材200と、底材200を覆うように設けられた蓋材300とを備える。
底材200には、深絞り成形によって設けられた底部200Aが中央部に設けられている。この底部200A内には、食品などの内容物が収容される。また、底材200は、底部200Aの内側にシール樹脂層14が配置され、外側にポリエチレンテレフタレート系樹脂層11が配置される。
底材200は、両端部200Bのシール樹脂層14が蓋材300にヒートシールによって接着される。このように、深絞り成形用多層フィルム100を深絞り包装体400の底材200として用いることにより、良好な深絞り包装体400を得ることができる。
蓋材300は、底材200とのヒートシール性を有すれば特に制限はない。蓋材300としては、例えば、延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(以下、「OPP」ともいう)と透明蒸着ポリエチレンテレフタレート系フィルムとLLDPEフィルムとをドライラミネートしたもの、延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、「OPET」ともいう)フィルムとEVOH又はNyを含みLLDPEをシール層とした共押出フィルムとをドライラミネートした積層体などを用いることができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
<深絞り成形用多層フィルムの作製>
(実施例1)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例1とした。
PET系樹脂1(10μm)/接着樹脂(3μm)/Ny(80質量%)+ポリエステルブロック共重合体(20質量%)(8μm)/EVOH(4μm)/接着樹脂(3μm)/PP(10μm)/EP(2μm)、
総厚さ:40μm、
PET系樹脂1:イーストマンケミカル社製、多価アルコール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを32モル%共重合したポリエチレンテレフタレート系樹脂、
接着樹脂:三井化学製、「アドマー」、
Ny:ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチック製、「ノバミッド」、
ポリエステルブロック共重合体:三菱ケミカル製、「モディックAP」、
EVOH:クラレ製、「エバール」、エチレン含有量38molタイプ、
PP:日本ポリプロピレン製、「ノバテックPP」、
EP:LLDPE(60質量%)とPP(40質量%)のブレンド、LLDPE:日本ポリエチレン製、「ノバテックLL」、PP:日本ポリプロピレン製、「ノバテックPP」、
(実施例2)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例2とした。
PET系樹脂2(20μm)/接着樹脂(4μm)/Ny(60)+ポリアミド−ポリエーテル共重合体(40)(14μm)/EVOH(5μm)/接着樹脂(4μm)/PP(30μm)/EP(3μm)、
総厚さ:80μm、
PET系樹脂2:SKケミカル社製、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂、
ポリアミド−ポリエーテル共重合体:アルケマ社製、「ぺバックス」、
(実施例3)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例3とした。
PET系樹脂1(20μm)/接着樹脂(3μm)/Ny(12μm)/EVOH(5μm)/接着樹脂(3μm)/PP(60)+PE(40)(15μm)/EP(2μm)、
総厚さ:60μm、
PE:プライムポリマー製LLDPE「エボリュー」
(実施例4)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例4とした。
PET系樹脂1(20μm)/接着樹脂(3μm)/Ny(12μm)/EVOH(5μm)/接着樹脂(3μm)/PP(80)+エチレン−α−オレフィン共重合樹脂(20)(15μm)/EP(2μm)、
総厚さ:60μm、
エチレン−α−オレフィン共重合樹脂:三井化学製、「タフマーA」、
(比較例1)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、比較例1とした。
PET系樹脂1(30μm)/接着樹脂(4μm)/Ny(4μm)/EVOH(5μm)/接着樹脂(4μm)/PP(30μm)/EP(3μm)、
総厚さ:80μm、
(比較例2)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、比較例2とした。
PET系樹脂1(20μm)/接着樹脂(5μm)/Ny(7μm)/EVOH(8μm)/接着樹脂(5μm)/EVA(30μm)/EP(5μm)、
総厚さ:80μm、
EVA:日本ポリエチレン製、「ノバテックLL」、
(比較例3)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、比較例3とした。
PET系樹脂1(20μm)/接着樹脂(8μm)/Ny(15μm)/EVOH(12μm)/接着樹脂(7μm)/PP(13μm)/EP(5μm)、
総厚さ:80μm、
(比較例4)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、比較例4とした。
PET系樹脂2(20μm)/接着樹脂(5μm)/Ny(7μm)/EVOH(8μm)/接着樹脂(5μm)/PE(80)+エチレン−α−オレフィン共重合樹脂(20)(30μm)/EP(5μm)、
総厚さ:80μm、
(比較例5)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、比較例5とした。
PET系樹脂1(5μm)/接着樹脂(7μm)/Ny(14μm)/EVOH(12μm)/接着樹脂(7μm)/PP(30μm)/EP(5μm)、
総厚さ:80μm、
<パックサンプルの作製>
上記実施例および比較例にて作製したフィルムを用いて、深絞り包装機(大森機械工業社製FV6300)によって、直径95mmのスライスハム(60g)を真空包装した。深絞り成形部の大きさは直径98mm、絞り深さ5mmの円柱状である。パック品の大きさは縦120mm、横120mmである。成形加熱温度は90℃、成形時間は1.5秒である。使用した蓋材の構成は下記のとおりである。なお、「//」はドライラミネート法による接着を表す。
OPP(30μm)//透明蒸着PET(12μm)//LLDPE(40μm)、
OPP:OPU−1(トーセロ社製、二軸延伸品)、
透明蒸着PET:VM−PET(東洋メタライジング社製、蒸着PET)、
LLDPE:L−6102(東洋紡社製)、
<評価方法>
上記にて作製した各実施例、比較例のパックサンプルについて、以下の方法により評価した。
(耐カール性評価)
パックサンプル作製後、5分以内に、ヒートシール部がフラットのもの(カールが5mm未満)を「○」、5mm以上カールしているものを「×」とした。
なお、カールは、パックサンプル品のヒートシール部がフラットの場合に本来ある位置からの変位量であり、その最大値をカールの値として評価した。
(耐ピンホール性評価)
パックサンプルを30パック/箱段ボールに入れ、2℃にて24時間以上静置後、1.5mの高さからコンクリート面に50回落下させピンホールの有無を調査した。ピンホールが発生しなかったものを「○」、ピンホールが発生したものを「×」とした。
表1より、実施例1〜4は、深絞り成形性が良好であり、包装直後に包装体のヒートシール部のカールがほとんどなく耐カール性が良好で、ラベルを貼り付ける際にパック品が整列させやすく、耐ピンホール性も良好であった。
これに対し、比較例2〜4は包装直後のヒートシール部が底材側にカールし、包装ラインのラベラーで包装体がうまく整列せず、ラベルが貼りにくい問題があった。比較例1ではヒートシール部のカールがほとんどなかったものの、耐ピンホール試験でピンホールが発生した。比較例5では、包装直後ヒートシール部が底材側にカールし、比較例2〜4と同様な問題の発生と、耐ピンホール試験でピンホールが発生した。
本発明の深絞り成形用多層フィルムは、多層フィルム全体の厚さを薄くしたとしても、剛性(耐カール性)および成形性が良好であり、透明性および光沢性がよく、耐ピンホール性に優れたものとすることができる。よって、該フィルムを用いることで薄肉化された包装体とすることができ、廃棄物の減容化を実現できるような包装体として利用可能である。
100 深絞り成形用多層フィルム、
11 ポリエチレンテレフタレート系樹脂層、
12 ガスバリア樹脂層、
13 支持層、
14 シール樹脂層、
200 底材、
300 蓋材、
400 深絞り包装体、

Claims (6)

  1. 最外層から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層、ガスバリア樹脂層、支持層、シール樹脂層の順に少なくとも4層を備え、下記(1)〜(3)の特徴を有する、総厚さが40〜100μmの深絞り成形用多層フィルム。
    (1)前記支持層の主成分がポリプロピレン系樹脂であり、総厚さに占める厚さの割合が20%以上、
    (2)前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂層の総厚さに占める厚さの割合が25%以上、
    (3)前記ガスバリア樹脂層または前記支持層の少なくとも1層にポリエチレン系樹脂または熱可塑性エラストマー樹脂を、前記ガスバリア樹脂層または前記支持層を基準として、10質量%以上50質量%以下含む。
  2. 前記ガスバリア樹脂層が、ポリアミド系樹脂を含む層、または、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂を含む層、あるいは、これら両層である、請求項1に記載の深絞り成形用多層フィルム。
  3. 前記ガスバリア樹脂層に含む熱可塑性エラストマー樹脂が、ポリエステルブロック共重合体またはポリアミド−ポリエーテル共重合体である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の深絞り成形用多層フィルム。
  4. 前記支持層に含む熱可塑性エラストマー樹脂が、エチレン/α―オレフィン共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の深絞り成形用多層フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の深絞り成形用多層フィルムであって、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂層と前記ガスバリア樹脂層、ガスバリア樹脂層と前記支持層との間にポリオレフィン系接着樹脂からなる接着樹脂層を有する、深絞り成形用多層フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の深絞り成形用多層フィルムを使用した深絞り包装体。
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