JP5355975B2 - 複合フィルム、深絞り包装用底材、深絞り包装用蓋材、および、深絞り包装体 - Google Patents
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Description
また、近年、ユニバーサルデザインの見地より、蓋を手で開封することのできない完全シールよりも、蓋を手で容易に開封できる易開封性のイージーピール材を用いて、パッケージが製作されることが多い。また、内容物が食品であったり、酸素を嫌う物である場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)層を配した複合フィルムや、耐ピンポール性を付与するため中間層にポリアミド系樹脂(PA)層を有する複合フィルムが広く使用されている。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)を有する複合フィルムからなる深絞り包装体は、良好な腰(リジット性)を有することで、内容物が保護され、かつ見栄えが良好となる。
本発明は、上記課題を解決するために、複合フィルムを構成する材料及び層構成につき鋭意検討した。その結果、所定の組成物からなる層を組み合わせた複合フィルムを用いることにより、良好な易開封性を備えた複合フィルムが得られることを見出し、以下の本発明を完成した。
また、本発明によれば、環境に配慮した食物成分由来のプラスチックを大きく普及させ、石油の枯渇対策・二酸化炭素排出の抑止を目的に、石油由来プラスチックを使用した容器を植物由来へ切り替えるという要望に沿うことができる。また、パッケージのユニバーサルデザインに則ったイージーピール性を付与することができる。
図1に、本発明の複合フィルムを用いてなる深絞り包装用底材20および蓋材10を組み合わせて作製された包装体100の概念図を示す。中央部より右側は、左右対称の同様の形状であるとして、省略した。深絞り包装用蓋材10は、内層10c、内層隣接層10b、および、外層10aにより構成されている。また、深絞り包装用底材20は、内層20c、内層隣接層20b、および、外層20aにより構成されている。蓋材10の内層10cと、底材20の内層20cとが、ヒートシールされて、包装体100が形成される。底材20の中央部には、凹部が形成されており、該凹部により形成される空間30に、内容物が収納される。
本発明の複合フィルムは、少なくとも内層及び内層隣接層を有する複合フィルムであって、該内層がポリ乳酸系樹脂で構成されており、該内層と該内層隣接層とがイージーピール性を有する、複合フィルムである。また、本発明の複合フィルムは、内層、内層隣接層、および、外層の順で積層されている複合フィルムであってもよい。以下、各層について説明する。
(ポリ乳酸系樹脂)
本発明のフィルムの内層は、ポリ乳酸(PLA)系樹脂からなる。ポリ乳酸系樹脂とは、D−乳酸又はL−乳酸の単独重合体又はそれらの共重合体をいい、具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)がある。また、これらの混合体であってもよい。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂で構成される内層には、この発明の効果を著しく阻害しない範囲で、耐衝撃性、成形加工性及び接着性の諸特性をさらに向上させる目的で軟質性樹脂を添加してもよい。
本発明の複合フィルムは、内層と内層隣接層との間にイージーピール性を有する。本発明においてイージーピール性とは、イージーピール強度が一定の範囲内であることをいう。すなわち、イージーピール強度の下限値は、25℃で、好ましくは0.5N/15mm幅以上、より好ましくは1.0N/15mm幅以上、さらに好ましくは2.0N/15mm幅以上であり、上限値は、25℃で、好ましくは15N/15mm幅以下、より好ましくは10N/15mm幅以下、さらに好ましくは5.0N/15mm幅未満である。
本発明の複合フィルムは、上記で説明した内層、および、内層隣接層の他に、外層を備えた複合フィルムであってもよい。外層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物層(EVOH層)、ポリアミド樹脂層(PA層)、エチレン−酢酸ビニル共重合体層(EVA層)、ポリエチレン樹脂層(PE層)、接着性樹脂層、PETG層を挙げることができる。
本発明のフィルムは、耐ピンホール性と深絞り成形性を付与する目的で少なくとも1層のポリアミド樹脂(PA)層を有していてもよい。外層で用いられるPAは、特に限定されないが、耐ピンホール性の観点からはナイロン系樹脂(Ny)を用いることが好ましい。ナイロン系樹脂としては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の縮合単位の重合体又はこれら2種以上の共重合体、さらにはこれらの混合物を挙げることができる。中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが好ましい。
外層として、酸素バリアー性を付与する目的で、少なくとも1層のEVOH層を設けることができる。EVOH層で用いられるEVOHのエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、下限が、好ましくは29モル%以上、より好ましくは32モル%以上であり、上限が、好ましくは47モル%以下、より好ましくは44モル%以下である。また、EVOHのケン化度は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。EVOHのエチレン含有量及びケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のフィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。
外層としては、柔軟性を付与する目的で少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)層又はポリエチレン(PE)層を設けることもできる。
また、外層においては、各層を接着するために少なくとも1層の接着性樹脂層を設けることができる。接着性樹脂層で使用される接着性樹脂は、上記した外層、内層隣接層を必要な強度に接着することができれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また、その誘導体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、PE層、EVOH層を接着させる場合には、特殊ポリオレフィンベース(上記の不飽和カルボン酸等で変性されたポリオレフィン系樹脂)のものが有用であり、さらにEVOH層及びPE層を接着させる場合には、LLDPEタイプのものが好適に使用できる。接着性樹脂層において好ましく使用される接着性樹脂として、ポリオレフィンベースのものとしては、例えば、「アドマー(登録商標)」(三井化学社製)が市販されており、これを好適に使用できる。
本発明の複合フィルムは、ドライラミネート適正を付与する目的で、または、ドライラミネートしない場合は、表面光沢を良好にし、パッケージ外観を良好にする目的で、外層としてPETG層を備えていてもよい。PETGとしては、特に限定されないが、例えば、PETG6763(イーストマンケミカル社製)が市販されており、これを好適に用いることができる。
本発明の複合フィルムは、少なくとも内層および内層隣接層を備えていればよく、また、外層、最外層を備えた構成とすることもできる。以下に、層構成の例を示す。PETG層をA、PA層をB層、EVOH層をC層、PE層をD層、内層隣接層をE層、内層をF層、接着性樹脂層をG層、EVA層をH層、として表した場合、以下の層構成(1)〜(9)を例示することができる。中でも好ましい層構成は、(1)、(2)、(5)、(6)であり、さらに好ましい層構成は(1)又は(2)である。
(1)A/G/B/C/G/D/E/F
(2)A/G/C/B/G/D/E/F
(3)A/G/B/C/G/E/F
(4)A/G/C/B/G/E/F
(5)B/C/G/D/E/F
(6)C/B/G/D/E/F
(7)B/C/G/E/F
(8)C/B/G/E/F
(9)A/G/B/C/G/H/E/F
本発明の複合フィルムの製造方法には特に制限はなく、内層、内層隣接層、および、場合によっては、さらに、外層、最外層を、同時に、又は逐次的に積層して作製することができる。具体的には、Tダイ法、チューブラ法など既存の方法を用いて、ダイを備えた押出機を用いて共押出しすることにより、各層を備えたフィルムを一度に作製できる。また、各層を構成する樹脂を別々にシート化した後に、ドライラミネート法やプレス法や押出ラミネート法などを用いて積層して逐次的に作製することもできる。
本発明の複合フィルムは、深絞り包装機を用いて内容物に対応した大きさ及び形状を有する深絞り包装体における、底材および蓋材に成形することができる。特に、本発明のフィルムを包装体の底材として用いると、光沢性に優れた深絞り包装体を得ることができる。また、本発明の深絞り包装体は、この底材と蓋材とをヒートシール等の接着手段により接着させることによって作製することができる。
実施例1〜4、参考例5〜9、及び比較例1として、以下の構成及び厚みを有する深絞り包装用フィルムを共押出法により作製した。
(実施例1)
各層の構成
PETG層(35μm)/接着性樹脂層(5μm)/ポリアミド樹脂層(8μm)/EVOH層(8μm)/接着性樹脂層(6μm)/EVA層(26μm)/内層隣接層(5μm)[アドマー(90%)+LLDPE(10%)]/内層(7μm)
総厚み:100μm
各層の構成
PETG層(35μm)/接着性樹脂層(5μm)/EVOH層(8μm)/ポリアミド樹脂層(8μm)/接着性樹脂層(6μm)/EVA層(26μm)/内層隣接層(5μm)[アドマー(70%)+LLDPE(30%)]/内層(7μm)
総厚み:100μm
各層の構成
PETG層(33μm)/接着性樹脂層(5μm)/ポリアミド樹脂層(8μm)/EVOH層(8μm)/接着性樹脂層(6μm)/内層隣接層(3μm)[アドマー(90%)+LLDPE(10%))/内層(7μm)
総厚み:70μm
各層の構成
PETG層(33μm)/接着性樹脂層(5μm)/EVOH層(8μm)/ポリアミド樹脂層(8μm)/接着性樹脂層(6μm)/内層隣接層(3μm)[アドマー(80%)+LLDPE(20%)]/内層(7μm)
総厚み:70μm
各層の構成
ポリアミド樹脂層(10μm)/EVOH層(8μm)/接着性樹脂層(6μm)/EVA層(26μm)/内層隣接層(3μm)[アドマー(60%)+LLDPE(40%)]/内層(7μm)
総厚み:60μm
各層の構成
EVOH層(8μm)/ポリアミド樹脂層(10μm)/接着性樹脂層(6μm)/EVA層(26μm)/内層隣接層(3μm)[アドマー(60%)+LLDPE(40%)]/内層(7μm)
総厚み:60μm
各層の構成
EVOH層(8μm)/ポリアミド樹脂層(10μm)/接着性樹脂層(6μm)/LLDPE層(26μm)/内層隣接層(3μm)[アドマー(60%)+LLDPE(40%)]/内層(7μm)[内層樹脂(85%)+プラメート(15%)]
総厚み:60μm
参考例7の内層は、後記する内層を構成するポリ乳酸系樹脂(85質量%)に、軟質性樹脂であるプラメート(大日本インキ化学工業社製、15質量%)の混合樹脂で形成している。
各層の構成
ポリアミド樹脂層(15μm)/EVOH層(15μm)/接着性樹脂層(8μm)/内層隣接層(5μm)[アドマー(90%)+LLDPE(10%)]/内層(7μm)
総厚み:50μm
各層の構成
EVOH層(15μm)/ポリアミド樹脂層(15μm)/接着性樹脂層(8μm)/内層隣接層(5μm)[アドマー(90%)+LLDPE(10%)]/内層(7μm)
総厚み:50μm
各層の構成
PETG層(15μm)/接着性樹脂層(5μm)/ポリアミド樹脂層(8μm)/EVOH層(8μm)/接着性樹脂層(6μm)/ポリ乳酸系樹脂ヒートシール層(8μm)
総厚み:50μm
(1)最外層
・PETG層:ポリエステル系樹脂(PETG6763、イーストマンケミカル社製)
(2)外層
・接着性樹脂層:「アドマー(登録商標)NF500」(三井化学社製)
・ポリアミド樹脂層:「NOVAMID(登録商標)」(6−66共重合ナイロン(66ナイロン含有率15%))(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
・EVOH層:「エバール(登録商標)」(エチレン含量38モル%タイプ)(クラレ社製)
・EVA層:「ノバテックEVA」(日本ポリエチレン社製)
(3)内層隣接層(イージーピール層)
接着性樹脂(アドマー(登録商標)SF600、三井化学社製)と、ポリエチレン系樹脂(ノバテック(LLDPE)、日本ポリエチレン社製)とのブレンド物
(4)内層(ヒートシール層)
ポリ乳酸系樹脂:「NATURE WORKS(登録商標)」(Nature WorksLLC社製)
上記の実施例、参考例、及び比較例にて作製した複合フィルムを用いて、深絞り包装機(大森機械工業社製、FV6300)によって、ガス置換パッケージを包装した。なお、使用した底材は、下記の構成である。
底材:PLAシート(200μm)、エコロージュ、三菱樹脂社製
また、蓋材には、実施例1〜4、参考例5〜9、及び比較例1の複合フィルムの外層側へ、以下のPETフィルム(12μm)をドライラミネート加工したものを使用した。
PETフィルム(12μm):三菱化学ポリエステル社製、ダイアホイル H500 #12
実施例1〜4、参考例5〜9、及び比較例1の複合フィルムを用いて作製した深絞り包装体について、開封強度、易開封性、蓋材の張り(パック品の見栄え)について評価した。評価方法は以下のとおりである。結果を表1に示す。
<深絞り包装体の開封強度>
深絞り包装体のフランジ部(蓋材および底材のシール部)を15mm幅で切り出し、蓋材および底材を別々に引っ張り試験器チャックへセットして、その剥離強度を測定した。
引っ張り試験器としては、島津製作所製、引っ張り試験器AG−100NJを用いた。
深絞り包装体の易開封性について評価した。スムーズに剥離し、開封するものを「◎」、引っかかりがあるなどで、スムーズに開かないものを「×」とし、◎>○>△>×の四段階で評価した。
深絞り包装体の蓋材の張りを評価した。張りがあり、スッキリと深絞り包装体の見栄えがよいものを◎、蓋材に張りがなく、表面がうねり、見栄えの良くないものを×とし、◎>○>△>×の四段階で評価した。
20.3cm×27.9cmの大きさに切断したフィルムを、温度23℃、相対湿度50%の条件下に、24時間以上放置してコンディショニングし、ゲルボフレックステスター(理学工業社製、「No.901型」(MIL−B−131Cの規格に準拠))を使用して、次のように屈曲テストを繰り返し、ピンホール数を計測した。
上記長方形テストフィルムを長さ20.3cmの円筒状にし、当該巻架した円筒状フィルムの一端を上記テスターの円盤状固定ヘッドの外周に、他端を上記テスター円盤状可動ヘッドの外周にそれぞれ固定し、上記可動ヘッドを上記固定ヘッドの方向に、平行に対向した両ヘッド(固定ヘッドと可動ヘッドとは17.8cm隔てて対向している。)の軸に沿って8.9cm接近させる間に440゜回転させ、続いて回転させることなしに6.4cm直進させ、その後、これらの動作を逆に行わせ、上記可動ヘッドを最初の位置に戻すまでの行程を1サイクルとする屈曲テストを、1分あたり40サイクルの速度で、連続して500サイクル行った後に、テストしたフィルムの固定ヘッド、可動ヘッドの外周に固定した部分を除いた17.8cm×27.9cm(7inch×11inch=77inch2=496cm2)内の部分に生じたピンホール数を、ピンホールテスター(サンコー電子研究所製、TRD型)により1KVの電圧を印加して、計測した。
◎:ピンホール数が5ヶ以下
○:ピンホール数が6ヶ〜10ヶ
20 深絞り包装用底材
10c、20c 内層
10b、20b 内層隣接層
10a、20a 外層
Claims (8)
- 少なくとも内層、内層隣接層、及び複数の外層の順で積層されている複合フィルムであって、前記内層がポリ乳酸系樹脂で構成されており、前記内層隣接層が接着性樹脂およびポリオレフィン系樹脂の混合物で構成されており、
前記接着性樹脂が、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であり、
前記ポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、及び、エチレン−アクリル酸共重合体、並びに、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のアイオノマーからなる群から選ばれる樹脂又はその混合体であり、
前記内層と前記内層隣接層とがイージーピール性を有し、
前記内層と前記内層隣接層との間のイージーピール強度が、25℃で0.5N/15mm幅以上5N/15mm幅未満であり、
前記外層の少なくとも1層が、PETGで構成され、
少なくとも1層のPETG層が最外層を構成している、複合フィルム。 - 前記外層の少なくとも1層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物で構成されている、請求項1に記載の複合フィルム。
- 前記外層の少なくとも1層が、ポリアミド樹脂で構成されている、請求項1又は2に記載の複合フィルム。
- 前記外層の少なくとも1層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体で構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の複合フィルム。
- 前記外層の少なくとも1層が、ポリエチレン樹脂で構成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の複合フィルム。
- 前記外層の少なくとも1層が、接着性樹脂で構成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の複合フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の複合フィルムにより形成された深絞り包装用底材又は蓋材。
- 前記請求項1〜6のいずれかに記載の複合フィルムを使用した深絞り包装体。
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