JP5244664B2 - 熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた成形品およびラベル、ならびに、該成形品及び該ラベルを装着した容器 - Google Patents

熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた成形品およびラベル、ならびに、該成形品及び該ラベルを装着した容器 Download PDF

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Description

本発明は、植物由来の樹脂を用いた熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた成形品およびラベル、ならびに、該成形品及び該ラベルを装着した容器に関する。
現在、ジュース等の清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等は、瓶、ペットボトル等の容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差異化や商品の視認性を向上させ商品価値を高める目的で、容器の外側に印刷を施した熱収縮性ラベルを装着することが多い。
上記分野において、需要の増大が見込まれるペットボトルのラベル用途等では、比較的短時間かつ低温において高度な収縮仕上がり外観が得られ、小さな自然収縮率を有する熱収縮性フィルムが要求されている。その理由としては、最近のペットボトルに装着されるシュリンクフィルムのラベリング工程における低温化のニーズが挙げられる。すなわち、現在、蒸気シュリンカーを用いて熱収縮フィルムをシュリンクさせてラベリングする方法が主流となっているが、無菌充填や内容物の温度上昇による品質低下を回避するためには、シュリンク工程はできるだけ低温で行うことが望ましい。このような理由から、現在のシュリンクフィルム業界では、ラベリング時に蒸気シュリンカー内でできるだけ低温で収縮を開始し、かつ蒸気シュリンカー通過後に優れた収縮仕上がり特性が得られる熱収縮性フィルムの開発が行われている。
この熱収縮性ラベルの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略することがある。)系樹脂やポリスチレン(以下「PS」と略することがある。)系樹脂が用いられている。これらの樹脂で形成された延伸フィルムは、高い透明性や光沢性、剛性を有し、かつ優れた低温収縮特性を有することから、熱収縮性フィルムとして好適に使用することができる。
一方、上記PET系樹脂やPS系樹脂はいずれも石油由来の樹脂であるため、石油の枯渇に関わる問題から石油由来樹脂の代替樹脂が求められているという実状がある。他方、最近のCOガス排出量規制の問題から、少しでも環境に配慮された原料を用いたラベルの開発の必要性が指摘されている。
このような状況下、石油由来樹脂の代替樹脂の一例として、ポリ乳酸(以下「PLA」と略することがある。)系樹脂が知られている。このPLA系樹脂は、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とする植物由来樹脂であり、化学工学的に量産でき、かつ透明性、剛性等に優れるという特徴を有する。さらにその植物由来原料であるために化石資源の節約のみならず二酸化炭素の排出抑制が可能となり、環境配慮型樹脂として注目を集めている。
しかしながら、PLA系熱収縮性フィルムは、剛性や透明性は優れているものの、非常に脆いという欠点を持ち、また収縮温度に対し鋭敏な収縮率変化を示すため、均一な収縮が得られにくく、収縮ムラ等の収縮仕上がりの面で問題があった。
上記脆性を改良する目的で、PLA系樹脂に様々な軟質樹脂を混合したフィルムが提案されている(特許文献1〜3参照)。しかし、これらフィルムはマトリックスをPLA系樹脂としているために、その目的及び作用効果を考慮しても熱収縮性フィルムに必要な熱収縮特性、収縮仕上がり性、延伸性等を得ることは困難である。
また、PLA系樹脂層(A層)とポリスチレン系樹脂層(B層)とを組み合わせた積層フィルムも報告されている(特許文献4参照)。しかしながら、特許文献4に記載され熱収縮性フィルムではA層とB層とが接着層を介さずに積層されてなるフィルムであるため、
A層で使用されるPLA系樹脂とB層で使用されるポリスチレン系樹脂との収縮応力の差が大きくことなるため、フィルム収縮時に層間剥離現象が生じてしまい意匠性に欠ける。
また、飲用のPETボトル等に使用する場合には、他社との差異化や、顧客に対するイメージ向上を目的として、印刷によるラベルの装飾が行われているが、印刷工程において使用される印刷用インキは、一般的に有機溶剤を含有することから、印刷、乾燥後の印刷面には、微量の有機溶剤が残留する。特許文献5には、ヒートシール性樹脂からなる表面層および植物由来樹脂からなる内部層を備えた熱収縮性フィルムが記載されている。該熱収縮性フィルムを用いた場合には、残留溶剤によって、表面層と内部層との接着性が影響を受け、印刷工程後の表面層と内部層との接着強度が、印刷工程を行う前と比較して著しく低下するという問題が新たに生じていた。
従って、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合に、装着時において表面層と中間層との剥離が生じることなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れるとともに、印刷工程において使用される有機溶剤による影響が少なく、印刷工程後も充分な接着強度を有する熱収縮性多層フィルムが求められていた。
特開2005−068232号公報 特開平05−179110号公報 特開平09−316310 号公報 特開2008−1098号公報 特開2007−283531号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、環境適性に優れた植物由来の樹脂を用いた、優れた透明性、低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、及び収縮仕上がり性を有し、かつ自然収縮率が小さい、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することにある。
本発明者は、積層フィルムを形成する表面層と中間層、さらには接着層の各組成を鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得る積層フィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の目的は、以下の熱収縮性積層フィルム(以下「本発明のフィルム」)により達成される。
第1の本発明は、ポリスチレン系樹脂を含む中間層に、接着層を介してポリ乳酸系樹脂を主成分とする表面層が積層されたフィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性積層フィルムであって、接着層がポリアミド系樹脂で構成されることを特徴とする熱収縮性積層フィルムである。
第1の本発明において、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体(スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体)であることが好ましい。
第1の本発明において、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体と、スチレン系炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂であることが好ましい。このスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体は、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、または、これらの混合物であることが好ましい。
第1の本発明において、ポリ乳酸系樹脂は、D−乳酸とL−乳酸との共重合体であることが好ましく、D−乳酸とL−乳酸との比(D/L比)は、「3/97」〜「15/85」、又は、「85/15」〜「97/3」であることが好ましい。
第1の本発明の熱収縮性積層フィルムは、少なくとも一方向に延伸されていることが好ましく、80℃の温水中に10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上であることが好ましい。
第1の本発明において、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比は、10%以上70%以下であることが好ましい。
第2の本発明は、第1の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品(以下、本発明の成形品という場合がある。)である。
第3の本発明は、第1の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル(以下、本発明のラベルという場合がある。)である。
第4の本発明は、第2の本発明の成形品または第3の本発明の熱収縮性ラベルを装着した容器(以下、本発明の容器という場合がある。)である。
本発明のフィルムによれば、優れた、透明性、低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、収縮仕上がり性を兼ね備え、自然収縮率が小さい、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することができる。さらに、植物由来のPLA系樹脂を使用するため、本発明のフィルムによれば、バイオマスの利用を促進し、循環型社会を目指す上で好適である。
また、本発明の成形品及びラベルは、本発明のフィルムが用いられているため、本発明によれば、透明感があり、かつフィルムの腰強さと収縮仕上がり性の良好な成形品、熱収縮性ラベルを提供することができる。さらに、本発明の容器は、前記成形品又は熱収縮性ラベルを装着しているため、本発明によれば、外観の見栄えの良好な容器を提供することができる。
以下、本発明の熱収縮性積層フィルム、並びに成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下の範囲を占める成分である。
また、本明細書において「主収縮方向」とは、フィルムの縦方向(長手方向)とフィルムの横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味する。また、「直交方向」とは該主収縮方向と直交する方向を意味する。
<熱収縮性積層フィルム>
本発明の熱収縮性積層フィルムは、ポリ乳酸系樹脂を主成分とする表面層と、ポリスチレン系樹脂を主成分とする中間層と、該表面層と該中間層との間にそれらを接着させるための接着性樹脂を主成分とする接着層を有する。
<表面層>
本発明において、表面層はポリ乳酸系樹脂を主成分とする。表面層で使用されるポリ乳酸系樹脂は、D−乳酸若しくはL−乳酸の単独重合体又はこれらの共重合体であり、これらの混合物も含まれる。より具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリ(DL−乳酸)、又はこれらの混合物である。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂がD−乳酸とL−乳酸との共重合体である場合、D−乳酸とL−乳酸との共重合比は、D−乳酸:L−乳酸=「99.8:0.2」〜「75:25」、または、D−乳酸:L−乳酸=「0.2:99.8」〜「25:75」であることが好ましく、D−乳酸:L−乳酸=「99.5:0.5」〜「80:20」、または、D−乳酸:L−乳酸=「0.5:99.5」〜「20:80」であることがより好ましい。D−乳酸単独又はL−乳酸単独からなるポリ乳酸は、非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性及び機械的物性に優れる傾向がある。しかしながら、熱収縮性フィルムとして使用する場合は、通常、印刷および溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性及び溶剤シール性を向上させるために構成材料自体の結晶性を適度に下げることが必要となる。また、結晶性が過度に高い場合、延伸時に配向結晶化が進行し、収縮特性が低下する傾向がある。これらのことより、本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂は、D−乳酸とL−乳酸との比(D/L比)が1/99〜15/85、又は85/15〜99/1であることが好ましく、3/97〜15/85、又は85/15〜97/3であることがより好ましく、5/95〜15/85、又は85/15〜95/5であることがさらに好ましい。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂は、異なる共重合比を有するポリ乳酸系樹脂を混合して使用することもできる。その場合には、複数のポリ乳酸系樹脂のD−乳酸およびL−乳酸の共重合比を平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。使用用途に合わせて、D−乳酸とL−乳酸との共重合体比の異なるポリ乳酸系樹脂を二種以上混合し、結晶性を調整することにより、耐熱性と熱収縮特性のバランスをとることができる。
また、表面層で用いられるポリ乳酸系樹脂は、乳酸と、α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、および、脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。ここで、ポリ乳酸系樹脂に共重合される「α−ヒドロキシカルボン酸」としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロラクトン酸などの2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸、及びカプロラクトン、ブチルラクトン、バレロラクトンなどのラクトン類が挙げられる。また、ポリ乳酸系樹脂に共重合される「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。また共重合される「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸などが挙げられる。
上記ポリ乳酸系樹脂は、縮合重合法、開環重合法などの公知の重合法により作製することができる。例えば、縮合重合法であれば、D−乳酸、L−乳酸、又はこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤などを用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。さらには、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物、酸クロライドなどを使用しても構わない。
上記表面層で用いられるポリ乳酸系樹脂の重量(質量)平均分子量は、下限が20,000以上、好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、上限が400,000以下、好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。重量(質量)平均分子量が20,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができる。一方、重量(質量)平均分子量が400,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点からは好ましい。
上記ポリ乳酸系樹脂の市販品としては、例えば、「NatureWorks」(カーギルダウ社製)、「LACEA」(三井化学社製)などが挙げられる。
また、表面層にはフィルムの耐衝撃性を向上させるために、収縮特性及びフィルムの剛性(腰強さ)を損なわない範囲内で、ポリ乳酸系樹脂以外の他のゴム成分を添加することが好ましい。このゴム成分は特に限定されるものではないが、ポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、ジオールとジカルボン酸とポリ乳酸系樹脂との共重合体、コアシェル構造ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体(EMMA)等を好適に使用できる。
上記脂肪族ポリエステルとしては、ポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステルなどをあげることができる。前記ヒドロキシカルボン酸としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロラクロン酸などのヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体を挙げることができる。
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、次に説明する脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類又は2種類以上を選んで縮合するか、あるいは必要に応じてイソシアネート化合物などで分子量をジャンプアップして所望の高分子として得ることができる重合体を挙げることができる。ここで、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などを挙げることができる。
また、環状ラクトン類を開環縮合した脂肪族ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、σ−バレロラクトン、β−メチル−σ−バレロラクトンなどの開環重合体を挙げることができる。これらの環状モノマーは一種だけでなく、複数種を選択して共重合することもできる。
また、合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類との共重合体、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイドとの共重合体、プロピオンオキサイドなどとの共重合体などを挙げることができる。
これらポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルの代表的なものとしては、コハク酸と1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを重合して得られる「ビオノーレ」(昭和高分子社製)を商業的に入手することができる。また、ε−カプロラクトンを開環縮合して得られるものとしては、「セルグリーン」(ダイセル化学工業社製)が挙げられる。
次に、芳香族−脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族鎖の間に芳香環を導入することによって結晶性を低下させたものを用いることができる。芳香族−脂肪族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとを縮合して得られる。
ここで、上記芳香族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸が最も好適に用いられる。また、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、アジピン酸が最も好適に用いられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。なお、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸あるいは脂肪族ジオールは、それぞれ二種類以上を用いてもよい。
芳香族−脂肪族ポリエステルの代表的なものとしては、テトラメチレンアジペートとテレフタレートの共重合体、ポリブチレンアジペートとテレフタレートの共重合体などが挙げられる。テトラメチレンアジペートとテレフタレートの共重合体としてEasterBio(Eastman Chemicals社製)、またポリブチレンアジペートとテレフタレートの共重合体として、Ecoflex(BASF社製)を商業的に入手することができる。
ポリ乳酸系樹脂とジオールとジカルボン酸の共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられ、いずれの構造でもよい。但し、フィルムの耐衝撃性及び透明性の観点から、ブロック共重合体又はグラフト共重合体が好ましい。ランダム共重合体の具体例としては「GS−Pla」(三菱化学社製)が挙げられ、ブロック共重合体又はグラフト共重合体の具体例としては「プラメート」(DIC社製)が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂とジオールとジカルボン酸の共重合体の製造方法は、特に限定されないがジオールとジカルボン酸とを脱水縮合した構造を持つポリエステルまたはポリエーテルポリオールを、ラクチドと開環重合あるいはエステル交換反応させて得る方法が挙げられる。また、ジオールとジカルボン酸とを脱水縮合した構造を持つポリエステルまたはポリエーテルポリオールを、ポリ乳酸系樹脂と脱水・脱グリコール縮合あるいはエステル交換反応させて得る方法がある。
ポリ乳酸系樹脂とジオールとジカルボン酸の共重合体は、イソシアネート化合物やカルボン酸無水物を用い手所定の分子量に調整することが可能である。但し、加工性、機械的特性の観点から、重量(質量)平均分子量は50,000以上、好ましくは100,000以上であり、かつ300,000以下、好ましくは250,000以下のものが望ましい。
次に、表面層に含有させ得るコアシェル構造ゴムとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのジエン系コアシェル型重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン−アクリロニトリル共重合体などのアクリル系コアシェル型重合体、シリコーン−(メタ)アクリル酸−メチル(メタ)アクリル酸共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル酸−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのシリコーン系コアシェル型共重合体が挙げられる。この中でもポリ乳酸系樹脂との相溶性が良好であり、フィルムの耐衝撃性、透明性のバランスのとれるシリコーン−(メタ)アクリル酸−メチル(メタ)アクリル酸共重合体がより好適に用いられる。
具体的には、「メタブレン」(三菱レイヨン社製)、「カネエース」(カネカ社製)などが商業的に入手できる。
次に、表面層に含有させ得る、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体(EMMA)としては、エチレン含有率が50モル%以上、好ましくは60モル%以上であり、かつ95モル%以下、好ましくは85モル%以下であるものが好適に使用される。エチレン含有率が50モル%以上であれば、フィルム全体の剛性、耐熱性を良好に維持でき、またエチレン単位の含有率が95モル%以下であれば、フィルムの耐破断性に対する効果が十分に得られるほか、透明性も維持できるため好ましい。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)をより好適に使用できる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の市販品としては、例えば、「EVAFLEX」(三井デュポンポリケミカル社製)、「ノバテックEVA」(三菱化学社製)、「エバスレン」(DIC社製)、「エバテート」(住友化学社製)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)としては「ノバテックEAA」(三菱化学社製)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)やエチレン−メタクリル酸共重合体(EMA)としては、「ノアフロイAC」(三井デュポンポリケミカル社製)、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体(EMMA)としては、「アクリフト」(住友化学社製)などが挙げられる。
上記ゴム成分の添加量は、表面層の主成分として含まれるポリ乳酸系樹脂100質量部に対し、5質量部以上、好ましくは7質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、100質量部以下、好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下であることが好ましい。ゴム成分の添加量を5質量部以上とすることにより、フィルムに良好な耐衝撃性を付与することができる。またゴム成分の添加量を100質量部以下とすることにより、フィルムの剛性、透明性を損なわず、熱収縮ラベルとして好適に使用することができる。
<接着層>
本発明のフィルムを構成する接着層は、上記表面層と後述する中間層とを接着させる接着性樹脂を主成分としてなる。接着層の主成分として含まれる接着性樹脂は、表面層と中間層とを接着させ得る樹脂であれば特に限定されないが、下記(a)、(b)、(c)及び(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体又は樹脂を用いることが好ましい。
(a)ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体、または、該共重合体を酸または酸無水物で変性させたポリエステル系樹脂
(b)酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、及びメタクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンとからなるエチレン系共重合体又は該共重合体の混合物
(c)変性ポリオレフィン系樹脂
(d)ポリアミド系樹脂
まず(a)のポリエステル系樹脂について説明する。上記ポリエステル系樹脂とは、主にポリエステル系エラストマーのことを示す。該ポリエステル系エラストマーとは、ハードセグメントであるポリエステルと、ゴム弾性に富むソフトセグメントとから構成されるものであり、例えば、ハードセグメントとしてのポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体等が挙げられる。
上記ポリエステル系エラストマーとして、ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合は、下限が好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、上限が好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合が少なすぎると、中間層との接着性が低下する虞がり、逆に多すぎると、表面層に対する接着性が低下する虞がある。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、下限が好ましくは400以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは1000以上であり、上限が好ましくは6000以下、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下である。上記範囲内の数平均分子量を有するポリアルキレンエーテルグリコールを用いることにより、良好な層間強度を得ることができ好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたもののことをいう。
上記ポリエステル系エラストマーを作製する方法としては特に限定されないが、例えば、(i)炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステルと、(iii)数平均分子量が400〜6000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応によりオリゴマーを得た後、更に、オリゴマーを重縮合させることにより、作製することができる。
上記炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのなかでは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらのなかでは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリエステル系エラストマーのうち市販されているものとしては、例えば、商品名「プリマロイ」(三菱化学社製)、商品名「ペルプレン」(東洋紡績社製)、商品名「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
上記したポリエステル系エラストマーは、酸または酸無水物で変性されたもの(以下、「変性ポリエステル系エラストマー」ともいう。)であってもよい。変性ポリエステル系エラストマーとは、ポリエステル系エラストマーを変性剤で変性させたものである。上記変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応は、例えば、上記ポリエステル系エラストマーに変性剤であるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を反応させることによって行われる。また、上記変性反応に際してはラジカル発生剤を使用するのが好ましい。
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらの中では、反応性が高いことから、酸無水物が好ましい。これらは単独でも用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、ジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が挙げられる。これらは単独でも用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
次に(b)のエチレン系共重合体について説明する。上記エチレン系共重合体としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体を好適に使用できる。
上記エチレン系共重合体は、エチレン単位の含有率が50モル%以上95モル%以下、好ましくは60モル%以上85モル%以下であることが望ましい。エチレン単位の含有率が50モル%以上であれば、フィルム全体の剛性を良好に維持できるため、好ましい。一方、エチレン単位の含有率が95モル%以下であれば、柔軟性を十分に維持でき、フィルムに応力が加わった場合に、表面層と中間層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
上記エチレン系共重合体は、MFR(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分以下のものが好適に用いられる。MFRが0.1g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持でき、一方、MFRが10g/10分以下であれば積層フィルムの厚み斑や力学強度の低下を起こしにくく、好ましい。
上記エチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体として「ボンダイン」(住友化学社製)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体として「ボンドファースト」(住友化学社製)などが商業的に入手できる。
次に、上記(c)の変性ポリオレフィン樹脂について説明する。本発明において、接着層を構成し得る変性ポリオレフィン樹脂とは、不飽和カルボン酸又はその無水物、あるいはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂をいう。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、又はこれらの誘導体、あるいは上記各種の酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用することができる。これらの中でも、無水マレイン酸がより好ましく用いられる。なお、変性ポリオレフィン樹脂は、各々単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
また、シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアセチルオキシシランなどを挙げることができる。
変性ポリオレフィン樹脂を製造するには、例えば、予めポリマーを重合する段階でこれらの変性モノマーを共重合させることもできるし、一旦重合したポリマーにこれらの変性モノマーをグラフト共重合させることもできる。また、これらの変性モノマーを単独でもまたは、複数を併用してもよく、その含有率が0.1質量%以上5質量%以下の範囲のものが好適に使用される。この中でもグラフト変性したものが好適に用いられる。
変性ポリオレフィン樹脂は、具体的には、商品名「アドマー」(三井化学社製)、「モディック」(三菱化学社製)等が市販されている。
次に、上記(d)のポリアミド系樹脂について説明する。本発明において、接着層を構成し得るポリアミド系樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。この原料としてのアミノ酸の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。またラクタムの代表例としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。そしてジアミンの代表例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族、脂環族、芳香族のものが挙げられる。またジカルボン酸の代表例としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂肪族、脂環族、芳香族のものが挙げられる。
ポリアミド系樹脂(d)としては、これらの原料から誘導されるホモポリマー又はコポリマーを各々単独又は混合物として用いることができる。具体的には、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等のホモポリマー、ナイロン6/66、ナイロン6/66/610、ナイロン6/12、ナイロン66/61/6、ナイロン6/66/610/12等の共重合体、又はこれらをベースとしたポリアミド系エラストマー等を主成分とする樹脂を用いることができる。
具体的には、商品名「UBESTA」(宇部興産社製)、商品名「グリラックス」(DIC社製)、商品名「ノバミッド」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)、商品名「ハイパーアロイアクティマー」(リケンテクノ社製)等が市販されている。
上記接着層は、上記(a)乃至(d)の共重合体又は樹脂を単独で、又は2種以上を混合して使用することもできる。その場合、上記(a)乃至(d)の共重合体又は樹脂の含有率は、表面層層及び中間層を構成する樹脂に応じて適宜決定することができる。
<中間層>
本発明において、中間層を構成する樹脂として好適に用いられる樹脂はポリスチレン系樹脂である。ポリスチレン系樹脂は、各種のポリスチレン系樹脂が含まれるが、中でも、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体を用いることが好ましい。本明細書に記載されたブロック共重合体は、ブロック毎に樹脂がピュアーになっているピュアブロック、また、共重合成分が混合してブロックを形成しているランダムブロック、さらには共重合成分濃度をテーパーになったテーパードブロック等が含まれるが、粘弾性特性を満たすためには、ブロック部分がランダムブロック及びテーパードブロックであることが好ましい。
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体におけるスチレン系炭化水素の例としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、該スチレン系炭化水素ブロック部分は、これらの単独重合体、これらの共重合体であってもよいし、またはスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでよい。
共役ジエン系炭化水素としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、該共役ジエン系炭化水素ブロック部分は、これらの単独重合体、これらの共重合体であってもよいし、または共役ジエン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでよい。
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体は、中間層全体の質量に対して50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上である。中間層全体の質量に対する前記共重合体の含有率が50質量%以上であれば、中間層においてスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の効果、すなわち、収縮仕上がり性を十分発揮させることができるため好ましい。
本発明で好ましく使用されるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体の一つは、スチレン系炭化水素がスチレンであり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンである、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)である。SBSはスチレン/ブタジエンの質量%比が「95〜60」/「5〜40」であることが好ましく、「90〜60」/「10〜40」であることがさらに好ましい。SBSのメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、下限が好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、上限が好ましくは15g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下である。
上記スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体としては、アサフレックスシリーズ(旭化成ケミカルズ社製)、クリアレンシリーズ(電気化学工業社製)、Kレジン(シェブロンフィリップス社製)、スタイロラックス(BASF社製)、フィナクリア(アトフィナ社製)が挙げられる。
本発明で好ましく使用される他のブロック共重合体としては、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)がある。SIBSにおいて、スチレン/イソプレン/ブタジエンの質量比は、「60〜90」/「10〜40」/「5〜30」であることが好ましく、「60〜80」/「10〜25」/「5〜20」であることがより好ましい。また、SIBSのメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、下限が好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、上限が好ましくは15g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下である。ブタジエン含有量およびイソプレン含有量が上記範囲内であれば、押出機内部等で加熱されたブタジエンの架橋反応を抑制し、ゲル状物の発生を抑えられるほか、原料単価の観点からも好ましい。上記スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体は、例えば、アサフレックスIシリーズ(旭化成ケミカルズ社製)が市販されている。
中間層で用いられるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体は、2種類以上を混合したものであってもよい。すなわち、個々のスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体のみでは以下に示す本発明の所定の粘弾性特性を満たしていなくても、混合後に本発明の所定の粘弾性特性を満たすものを混合して用いることもできる。
0℃における中間層を構成するスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の貯蔵弾性率(E’(0))は、5.0×10Pa以上、好ましくは7.0×10Pa以上であり、かつ1.0×10Pa以下であることが好ましい。また50℃における中間層を構成するスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の貯蔵弾性率(E’(50))は1.5×10Pa以上、好ましくは1.5×10Pa以上であり、かつ2.0×10Pa以下であることが望ましい。0℃及び50℃のスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の貯蔵弾性率(E’(0)及び(50))を上記範囲に調整するためには、例えば、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の損失弾性率(E”)のピークを−80℃以上0℃以下、好ましくは−80℃以上−20℃以下の範囲に存在させ、あるいはブタジエンブロックとスチレンブロックとの分子量の差を調整すればよい。一方、90℃におけるスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の貯蔵弾性率(E’(90))は、1.0×10Pa以上、好ましくは5.0×10Pa以上であり、かつ2.0×10Pa以下であることが望ましい。90℃におけるスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体を1.0×10Pa以上とするためには、SBS等のスチレンブロックをピュアブロックに近い状態にすることによって調整できる。従って、本発明の中間層で用いられるスチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体のブタジエン部分のブロック構造をランダムブロックとし、スチレン部分のブロック構造をピュアブロックに近い状態にすることにより、0℃、50℃、及び90℃における貯蔵弾性率(E’)を所定の範囲に調整することができる。
また、本発明では、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内であれば、成形加工性、生産性及び熱収縮性積層フィルムの諸物性を改良・調整する目的で、表面層、接着層及び中間層の各層にシリカ、タルク、カオリン等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加できる。
<フィルムの層構成>
本発明のフィルムは、表面層と中間層との間に接着層を有する少なくとも3層構成のものであれば、層構成は特に限定されるものではない。例として、表面層/接着層/中間層、表面層/接着層/中間層/接着層/中間層、表面層/接着層/中間層/接着層/表面層、中間層/接着層/表面層/接着層/中間層、等の構成が挙げられる。中でもより効果的な積層構成は、表面層/接着層/中間層/接着層/表面層である。この層構成を採用することにより、本発明の目的である熱収縮特性に優れ、自然収縮が小さく、透明性に優れた、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを生産性、経済性よく得ることができる。
次に、本発明の好適な実施形態の一つである表面層/接着層/中間層/接着層/表面層の5層構成のフィルムについて説明する。
各層の厚み比は、上述した作用効果を考慮して設定すればよく、特に限定されるものではない。表面層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%であり、前記厚み比の上限は70%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。また中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は、20%以上、好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上であり、上限は80%以下、好ましくは75%以下、さらに好ましくは70%以下である。さらに接着層はその機能から、0.5μm以上、好ましくは0.75μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、上限は6μm以下、好ましくは5μm以下の範囲であることが望ましい。各層の厚み比が上記範囲内であれば、フィルムの腰(常温での剛性)、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムがバランスよく得ることができる。
本発明のフィルムの総厚みは特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には延伸後のフィルムの総厚みは、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、フィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、フィルムのハンドリング性を考慮すると、20μm以上であることが好ましい。
<物理的・機械的特性>
本発明のフィルムは、周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間2.5cmの条件の下、測定温度が−150℃から150℃の範囲で動的粘弾性測定を行った際、温度23℃下の貯蔵弾性率(E’)が1,100MPa以上、好ましくは1,200MPa以上、さらに好ましくは1,500MPa以上であり、3,000MPa以下、好ましくは2,700MPa以下、さらに好ましくは2,500MPa以下である。貯蔵弾性率E’が1,100MPa以上であれば、フィルム全体としての腰(常温での剛性)を高くすることができ、フィルムが柔らかくなり過ぎて変形しやすくなり、印刷、製袋等の2次加工時にロールテンションによってフィルムが伸びるなどの不具合や、フィルムの厚みを薄くした場合において、ペットボトルなどの容器に製袋したフィルムをラベリングマシンなどで被せる際に、斜めに被ったり、フィルムの腰折れなどで歩留まりが低下したりしやすいなどの問題点が発生し難いため、好ましい。一方、貯蔵弾性率E’が3,000MPa以内であれば、硬くて伸びにくいフィルムになり、2次加工時にシワが入りやすくなる、使用時にカサカサした感触を感じさせるといった不具合が起きないため、好ましい。
次に、本発明のフィルムは、80℃温水中に10秒浸漬したときの熱収縮率が少なくとも一方向において20%以上であることが重要である。
これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。例えばペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要収縮率はその形状によって様々であるが一般に20%以上70%以下である。
また、現在ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。さらに、近年のラベリング工程の高速化に伴い、より低温で素早く収縮する要求が高くなってきた。このような工業生産性も考慮して、上記条件における熱収縮率が20%以上のフィルムであれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着することができるため好ましい。これらのことから、80℃の温水中に10秒浸漬したときの熱収縮率は、少なくとも一方向、通常は主収縮方向において20%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、上限は85%以下、好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下であることが望ましい。なお、本明細書において「主収縮方向」とは、フィルムの縦方向(長手方向)とフィルムの横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味し、「直交方向」とは主収縮方向と直交する方向を意味する。
また、本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は、80℃の温水中に10秒間浸漬したときは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生し難く、好ましい。
本発明のフィルムは、70℃の温水中で10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上であり、上限は35%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。70℃におけるフィルム主収縮方向の熱収縮率を5%以上とすることにより、蒸気シュリンカーでボトル装着を行う際に、局部的に発生し得る収縮ムラを抑え、結果的にシワ、アバタ等の形成を抑えることができる。また、熱収縮率の上限を35%以下とすることにより、低温における極端な収縮を抑えることができ、例えば、夏場などの高温環境下においても自然収縮を小さく維持することができる。また70℃温水中で10秒間浸漬したときのフィルムの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは、90℃の温水中で10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が40%以上、好ましくは50%以上である。90℃におけるフィルム主収縮方向の熱収縮率を上記に調整することにより、高い収縮率が必要とされるボトル(ひょうたん型の様な異形ボトル)に対して装着を行うことができる。
本発明において、フィルムの主収縮方向の熱収縮率を80℃で20%以上85%以下、70℃で5%以上35%以下、とし、かつ直交方向の熱収縮率を80℃で10%以下とするためには、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、さらに表面層のフィルム全体の厚みに対する厚み比を10%以上とすること、接着層の厚みを6μm以下とすること、及び延伸倍率を2倍以上10倍以下、延伸温度を60以上130℃以下の範囲で制御することが好ましい。
本発明のフィルムの自然収縮率はできるだけ小さいほうが望ましいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率は、例えば、30℃、50%RHで30日保存後の自然収縮率が3.0%未満であることが好ましく、さらに好ましくは2.0%以下であり、最も好ましくは1.5%以下である。上記条件下における自然収縮率が3.0%未満であれば作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。上記フィルムの自然収縮率を調整する手段としては、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、特に表面層のフィルム全体の厚みに対する厚み比を10%以上とすることが好ましい。
本発明のフィルムの透明性は、例えば、厚み50μmのフィルムをJISK7105に準拠して測定した場合、フィルムのヘイズ値は10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。フィルムのヘイズ値が10%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
本発明のフィルムの耐衝撃性は、引張破断伸度により評価され、0℃環境下の引張試験において、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)で伸び率が150%以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは250%以上ある。0℃環境下での引張破断伸度が100%以上あれば印刷・製袋などの工程時にフィルムが破断するなどの不具合を生じにくくなり、好ましい。また、印刷・製袋などの工程のスピードアップにともなってフィルムに対してかかる張力が増加するような際にも、引張破断伸度が150%以上あれば破断しづらく、好ましい。
本発明のフィルムの層間剥離強度(シール強度)は、実用上後述する実施例で記載された測定方法で行うが、23℃50%RH環境下で、T型剥離法にてTDに試験速度200mm/分で剥離する方法を用いて、2N/15mm幅以上、好ましくは4N/15mm幅以上、より好ましくは6N/15mm幅以上、フィルム表面の耐溶剤性の観点から15N/15mm幅以下であることが好ましい。本発明のフィルムは、層間剥離強度が少なくとも2N/15mm幅あるため、使用時にシール部分が剥がれてしまう等のトラブルが生じることもない。上記フィルムの層間剥離強度を確保する手段としては、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、特に接着層の厚みを0.5μm以上とするほか、接着層を本発明で規定する樹脂で構成することが重要である。
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、(印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、)巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
延伸倍率はオーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、縦方向が2倍以上10倍以下、横方向が2倍以上10倍以下、好ましくは縦方向が3倍以上6倍以下、横方向が3倍以上6倍以下程度である。一方、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が2倍以上10倍以下、好ましくは4倍以上8倍以下、それと直交する方向が1倍以上2倍以下(1倍とは延伸していな場合を指す)、好ましくは1.1倍以上1.5倍以下の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。上記範囲内の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね60℃以上、好ましくは70℃以上であり、上限が130℃以下、好ましくは110℃以下の範囲で制御される。また、延伸倍率は、用いる樹脂の特性、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態等に応じて、主収縮方向には1.5倍以上10倍以下、好ましくは3倍以上7倍以下、さらに好ましくは3倍以上5倍以下の範囲で1軸又は2軸方向に適宜決定される。また、横方向に1軸延伸の場合でもフィルムの機械物性改良等の目的で縦方向に1.05倍以上1.8倍以下程度の弱延伸を付与することも効果的である。次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50℃以上100℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
また本発明のフィルムは、必要に応じてコロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
本発明のフィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工して包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
<成形品、熱収縮性ラベル及び容器>
本発明のフィルムは、フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用または食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品および容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上がり性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
本発明のフィルムが利用できるプラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
以下に本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
なお、実施例に示す測定値の計測及び評価は次のように行った。実施例では、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向、その直角方向を「横」方向と記載する。
(1)貯蔵弾性率(E’)
得られたフィルムを横4mm×縦60mmの大きさに正確に切り出し、サンプルとした。粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測社製)を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間2.5cmの条件の下、測定温度が−150℃から150℃の範囲で、縦方向について動的粘弾性を測定した。なお、貯蔵弾性率としては、23℃における貯蔵弾性率を示した。
(2)熱収縮率
得られたフィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、70℃、80℃および90℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向および横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
(3)自然収縮率
得られたフィルムを縦100mm、横1000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、主収縮方向について、収縮前の原寸に対する収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
(4)ヘイズ値
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘイズ値を測定し、15%以上を「×」、5%以上15%満を「○」、5%未満を「◎」として評価した。
(5)層間接着強度
得られたフィルムを縦165mm×横235mmの大きさに切り取り、横方向のフィルムの両端を10mm重ねてメチルエチルケトン(MEK)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約5秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70℃以上85℃以下の範囲とした。ボトル装着時のフィルムの様子を目視により確認し、以下の基準で評価した。
◎:ボトル装着後も層間剥離がない。
○:ボトル装着時、シール部分にわずかに層間剥離が生じる。
×:ボトル装着時、シール部分の全面に層間剥離が生じる。
(6)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦165mm×横235mmの大きさに切り取り、横方向のフィルム両端を10mm重ねてメチルエチルケトン(MEK)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量500mlの角型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約5秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70℃から100℃までの範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
◎:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが生じない。
○:収縮は十分であるが、所々シワ、アバタ又は格子目の歪みが生じている。
×:収縮は十分だがシワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる。又は、収縮が十分でなく、ボトルへの被覆が不十分である。
参考例1)
中間層としてポリスチレン系樹脂:SBS(スチレン/ブタジエン=76/24(質量%)、0℃の貯蔵弾性率E’=7×10Pa、損失弾性率のピーク温度E”=−75℃、103℃、以下「SBS1」と略称する。)を用いた。また、表面層としてポリ乳酸樹脂、NatureWorksLLC社製の「NatureWorks4060(L体/D体比=88/12)」(以下「PLA1」と略称する)、ポリ乳酸樹脂、NatureWorksLLC社製の「NatureWorks4042(L体/D体比=95/5)」(以下「PLA2」と略称する)、DIC社製の「プラメートPD−150」(以下「PLA3」と略する。)を、PLA1/PLA2/PLA3=43/47/10の質量比において混合したものを用いた。さらに、接着層として、ポリエステル系樹脂、三菱化学社製、商品名「プリマロイC1910N」(以下AD1と略称する)を用いた。各樹脂をそれぞれ別個の三菱重工業社製単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、各層の厚みが表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=25μm/5μm/190μm/5μm/25μmとなるよう3種5層ダイスより共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅200mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械社製フィルムテンターにて、予熱温度80℃、延伸温度80℃で横一軸方向に5.0倍延伸した後、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
参考例2)
表1に示すように、参考例1において、接着層に用いたポリエステル系樹脂を住友化学社製エチレン系共重合体「ボンドファースト7M」(以下AD2と略称する)に変更した以外は、参考例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。
参考例3)
表1に示すように、参考例1において、接着層に用いたポリエステル系樹脂を三井化学社製、変性ポリオレフィン樹脂、商品名「アドマーSE800」(以下AD3と略称する)に変更した以外は、参考例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。
(実施例4)
表1に示すように、参考例1において、接着層に用いたポリエステル系樹脂を宇部興産社製、商品名「UBESTA3030XA」(以下AD4略称する)に変更した以外は、参考例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。
参考例5)
表1に示すように、参考例1において、中間層に用いたポリスチレン系樹脂をSBS2(スチレン/ブタジエン=77/23(質量%)、0℃の貯蔵弾性率E’=1.5×10Pa、損失弾性率のピーク温度E”=−35℃、90℃、以下「SBS2」と略称する。)に変更した以外は、参考例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。
参考例6)
表1に示すように、参考例1において、表面層として用いたポリ乳酸樹脂をPLA1/PLA2/PLA3=60/30/10の質量比において混合したものに変更した以外は、参考例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。
(比較例)
表1に示すように、参考例1において、接着層を有さず、未延伸積層シートでの各層の厚み表面層/中間層/表面層=30μm/140μm/30μmとした以外は、参考例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。収縮時において層間で剥離が生じる不具合が生じた。
Figure 0005244664
表1より、実施例および参考例のフィルムは、腰(積層フィルムの引張弾性率)、熱収縮率、自然収縮率、透明性、層間剥離強度および収縮仕上り性は良好であった。これに対し、接着層を有さない場合(比較例)には、充分な層間剥離強度が得られず、試験の途中で層間剥離が起こった。これより、本発明のフィルムは、剛性に優れ、熱収縮特性に優れ、自然収縮が小さく、層間強度および収縮仕上りに優れた、収縮包装、収縮結束包装や熱収縮性ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムであることが分かる。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱収縮性積層フィルム、該フィルムを基材として用いた成形品および熱収縮性ラベル、ならびに、該成形品およびラベルを装着した容器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、剛性、収縮仕上がり性、及び低い自然収縮性を有するため、熱収縮性を必要とする成形品、特にシュリンクラベル等に好適に利用することができる。また、本発明に使用するPLA系樹脂は植物由来樹脂であるため、バイオマスの利用を促進し、循環型社会を目指す上で好適である。

Claims (12)

  1. ポリスチレン系樹脂を含む中間層に、接着層を介してポリ乳酸系樹脂を主成分とする表面層が積層されたフィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性積層フィルムであって、前記接着層がポリアミド系樹脂で構成されることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
  2. 前記ポリスチレン系樹脂が、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体である、請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
  3. 前記ポリスチレン系樹脂が、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体と、スチレン系炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂である、請求項1または2記載の熱収縮性積層フィルム。
  4. 前記スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体が、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、または、これらの混合物である、請求項2または3に記載の熱収縮性積層フィルム。
  5. 前記ポリ乳酸系樹脂が、D−乳酸とL−乳酸との共重合体であって、D−乳酸とL−乳酸との比(D/L比)が3/97〜15/85、又は85/15〜97/3である請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  6. 前記表面層がさらにポリ乳酸系樹脂以外の他のゴム成分を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  7. 積層フィルムが少なくとも一方向に延伸されており、80℃の温水中に10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上である、請求項1〜のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  8. フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比が10%以上70%以下である、請求項1〜のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  9. 周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間2.5cmの条件下、測定温度が−150℃から150℃の範囲で動的粘弾性測定を行った際、温度23℃下の貯蔵弾性率(E’)が1,100MPa以上3,000MPa以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
  11. 請求項1〜のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
  12. 請求項10に記載の成形品または請求項11に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
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