JP7073754B2 - 成形用積層フィルム、深絞り蓋材、及び包装体 - Google Patents

成形用積層フィルム、深絞り蓋材、及び包装体 Download PDF

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Description

本発明は、成形用積層フィルム、深絞り蓋材、及び包装体に関する。
一般的に、食品などの内容物を収容包装する包装体は、深絞り成形加工された底材及び底材を覆う蓋材から構成される。蓋材には、主に無延伸フィルムが使用されている。例えば、プロピレン単独重合体を含有する層/プロピレン系重合体を含有する層/イージーピール層を有し、総厚が30~150μm程度の蓋材用無延伸フィルムや、ポリエステル樹脂を含有する層/プロピレン系樹脂を含有する層/イージーピール層を有し、総厚が30~150μm程度の蓋材用無延伸フィルムが提案されている(特許文献1及び2)。
更に、近年、食品業界では、環境負荷の低減や資源の有効活用、あるいはコストの削減のため、食品の廃棄ロスの削減が求められている。食品の廃棄ロスを削減するためには、食品の劣化の要因となる酸素流入や雑菌繁殖を抑制し、食品の長期保存を可能にする必要がある。酸素流入や雑菌繁殖を抑制するために、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、無定形ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリスチレン樹脂から選ばれてなる基材に、ガスバリア層及びヒートシール層を有する複合フィルムの外側に、耐熱コーティング膜が形成されたガスパック用蓋材が提案されている(特許文献3)。
特開2012-45884号公報 特開2012-45885号公報 特開2000-128200号公報
特許文献1及び2で提案された無延伸フィルムは、蓋材側からヒートシールをした際に、熱板に非融着であるが、包装体に収容包装する食品にボリュームがある場合を考慮した成型加工用には適していない。
特許文献3で提案されたガスパック用蓋材は、ガスバリア性を有しているが、耐熱コーティング膜に用いられる耐熱コーティング剤が不透明なので、蓋材の外観を損ねる可能性がある。又、複合フィルムに別途耐熱コーティング膜を形成する工程が必要で、蓋材の製造が多工程に亘ってしまうので、その製造に費用と時間を要する可能性もある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性の観点から、蓋材側からのヒートシールが可能で、かつ包装体の自立性や外観上の観点から、成形性と透明性に優れた、深絞り蓋材に好適に使用できる成形用積層フィルム、深絞り蓋材、及び包装体に関する。
すなわち、本発明の成型用積層フィルムは、外層、ガスバリア層及びヒートシール層を少なくとも有し、前記外層、前記ガスバリア層及び前記ヒートシール層の順で積層され、前記外層が、150℃での貯蔵弾性率E´が8.0MPa以上で、前記外層の総質量に対して40質量%以上のポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、前記フィルムの総厚が200μm以上800μm以下であることを特徴とする。
前記外層の層厚が、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
前記外層と前記ガスバリア層との間でかつ前記外層の内側に隣接して配置され、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル系樹脂を含む隣接層を有することが好ましい。
前記ガスバリア層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む層及びポリメタキシリレンアジパミド樹脂を含む層の少なくとも1層を有することが好ましい。
前記ヒートシール層が、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
本発明は、深絞り蓋材であって、上記いずれかに記載の成形用積層フィルムが用いられる。
本発明は、包装体であって、上記に記載の深絞り蓋材が用いられる。
本発明によれば、蓋材側からのヒートシールが可能で、かつ成形性と透明性に優れた、深絞り蓋材に好適に使用できる成形用積層フィルム、深絞り蓋材、及び包装体を実現できる。
図1は、本実施形態に係る成形用積層フィルムの構造を模式的に示す断面図である。 図2は、本実施形態の別の態様に係る成形用積層フィルムの構造を模式的に示す断面図である。 図3は、本実施形態に係る深絞り蓋材を示す断面図である。 図4は、本実施形態に係る包装体を示す断面図である。 図5は、リジット感の評価試験の態様を示す参考図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
<成型用積層フィルム>
図1は、本実施形態に係る成形用積層フィルム1Aの構造を模式的に示す断面図である。成形用積層フィルム(以下、単に「フィルム」ということがある。)1Aは、包装体の蓋材となる部材である。成形用積層フィルム1Aは、外層11、ガスバリア層13及びヒートシール層14を有している。外層11は、包装体となった場合、外気と接触する面となり、主にフィルム1Aを熱から保護する耐熱性を備える層である。ヒートシール層13は、包装体となった場合、内容物及び底材と接する面となり、底材等の被着体にヒートシールを施す最内層である。ガスバリア層13は、外層11とヒートシール層14との間に配置され、内容物を酸素ガスから保護する酸素ガスバリア性を備える層である。つまり、成形用積層フィルム1Aは、外層11、ガスバリア層13、ヒートシール層14の順で積層されている。
図2は、本実施形態の別の態様に係る成形用積層フィルム1Bの構造を模式的に示す断面図である。成形用積層フィルム1Bは、外層11、ガスバリア層13及びヒートシール層14に加えて、隣接層12を有する。隣接層12は、外層11とガスバリア層13との間でかつ外層11の内側に隣接して配置され、フィルム1Bに剛性、強度、成形性を付与する層である。
その他の層として、耐ピンホール性を付与するために、ポリアミド系樹脂を含む層を隣接層12とガスバリア層13との間又はガスバリア層13とヒートシール層14との間のいずれにも設けても良い。また、各層間の接着性を向上させる為に、接着層を各層間のいずれにも設けても良い。
また、各層は其々2層以上設けても良い。
ここでは、例えば、図1で示された成形用積層フィルム1Aの層構成を、外層/ガスバリア層/ヒートシール層と表記する。また、以下では、成形用積層フィルム1Aと成形用積層フィルム1Bを区別する必要がない場合、成形用積層フィルム1として説明する。
<外層>
成形用積層フィルム1の外層11は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBT樹脂と略記すことがある。)を含む。PBT樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート単独重合体又はポリブチレンテレフタレート共重合体などが挙げられる。
ポリブチレンテレフタレート単独重合体は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びジオール成分として1,4-ブタンジオールを用いて単独重合されたものである。ポリブチレンテレフタレート共重合体としては、テレフタル酸及び1,4-ブタンジオールに、ジカルボン酸成分としてドデカンジオン酸及びジオール成分としてポリテトラメチレングリコール、テトラメチレンオキシドグリコールが共重合されたものなどが挙げられる。これらのPBT樹脂は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。なかでも、テレフタル酸及び1,4-ブタンジオールを成分とするポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。ポリブチレンテレフタレート単独重合体を用いることで、耐熱性を付与する事ができる。
外層11は、PBT樹脂以外のポリエステル系樹脂を含んでいても良い。ポリエステル系樹脂としては、無定形ポリエチレンテレフタレート樹脂、耐熱ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエチレンテレフタレート系樹脂が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。剛性及び透明性の観点からは、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
外層11におけるPBT樹脂の質量割合は、外層11の総質量に対して40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。外層11におけるPBT樹脂の質量割合を、外層11の総質量に対して40質量%以上にすることで、ヒートシール時に熱板にとられる事のない耐熱性を付与できる。上限は特に限定されず、PBT樹脂の質量割合が大きいほど好ましく、100質量%が最も好ましい。
外層11の150℃での貯蔵弾性率E´は、8.0MPa以上であることが好ましく、20.0MPa以上であることがより好ましく、50.0MPa以上であることが更に好ましい。フィルムに成形性を付与するためには、フィルムを厚くし、それに伴いヒートシール時の温度を高く設定する必要がある。外層11の150℃での貯蔵弾性率E´が8.0MPa以上であれば、ヒートシールによるフィルム1の熱変形及び熱板への熱融着を防ぐことができる。上限は特に限定されないが、150℃での貯蔵弾性率E´が1000MPa以下であれば、実用上特に問題なく使用できるため好ましい。
外層11の貯蔵弾性率E´は、動的粘弾性測定機を用いて、振動周波数:10Hz、昇温速度:3℃/分、歪0.1%の条件で、貯蔵弾性率E´を0℃から250℃まで測定し、得られたデータから150℃における貯蔵弾性率E´を評価した。
外層11の荷重たわみ温度は、特に限定されないが、フィルムのヒートシールによる熱板への熱融着を防ぎ、フィルムの剛性を高める観点から、80℃以上(条件:1.80MPa荷重、たわみ量0.25mm)であることが好ましい。
外層11の層厚は、下限は5μm以上が好ましい。上限は30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。
外層11の層厚を、下限は5μm以上、上限は30μm以下にすることにより、後述する隣接層12を厚く設計し、フィルム1に剛性を付与することができる。
<隣接層>
成形用積層フィルム1Bの隣接層12は、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル系樹脂を含む。ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下、PET樹脂と略記することがある。)、耐熱ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET-Gと略記することがある)などが挙げられるが、PET樹脂は、非晶のまま固化させて無定形ポリエチレンテレフタレート樹脂として用いることができるため、低コストで、層厚を大きくしても経済性が良く、フィルムに対し、剛性、強度、成形性を十分に付与することも可能なので、PET樹脂が好ましい。PET樹脂を含む隣接層12を、外層11とガスバリア層13との間でかつ外層11の内側に隣接して配置させることで、フィルムに剛性、強度及び成形性を付与することができる。
PET樹脂における多価カルボン酸成分としては、エチレンテレフタレートユニットを構成するテレフタル酸の他、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸類;2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸類;44-ジカルボキシジフェニル、2,2,6,6-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジカルボン酸などのジカルボキシビフェニル類;1,1,3-トリメチル-3-フェニルインデン-4,5-ジカルボン酸およびその置換体;1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボン酸及びその置換体などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシリン酸、テトラデカンジカルボン酸、タプシン酸、ノナデカンジカルボン酸、ドコサンジカルボン酸などが挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、1,4-ジカルボキシシクロヘキサン、1,3-ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。
PET樹脂における多価アルコール成分としては、エチレンテレフタレートユニットを構成するエチレングリコールの他、脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールが挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール系化合物のエチレンオキサイド付加物;キシリレングリコールなどが挙げられる。
又、多価アルコール成分として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどを用いても良い。
このような多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を用いてPET樹脂を調製するには、深絞り成形用共押出フィルムとしての特性を改良するため、1種類以上の多価カルボン酸成分及び1種類以上の多価アルコール成分を組み合わせて調製しても良い。組み合わせる成分の種類および含有量は、所望のフィルム特性、経済性などに基づいて適宜決定することができる。また、PET樹脂は、1種のPET樹脂を単独で用いても良く、2種以上のPET樹脂を混合して用いても良い。
経済性の観点から、PET樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸を成分とするポリエチレンテフタレート単独重合体又はテレフタル酸及びエチレングリコールにそれ以外の多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を共重合させたポリエチレンテフタレート共重合体が好ましい。例えば、PET樹脂におけるエチレンテレフタレートユニットの含有率は、80モル%以上が好ましく、83モル%以上がより好ましく、85モル%以上が更に好ましい。
隣接層12の層厚は、フィルム1の総厚に対し、上限は40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。隣接層12の層厚をフィルム1の総厚に対し40%以上にすることにより、フィルム1に良好なコシと耐カール性を付与することができる。下限は、75%以下であることが好ましく、70%以下がより好ましく、65%以下が更に好ましい。
<ガスバリア層>
成形用積層フィルム1のガスバリア層13は、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略記することがある)を含む層並びにポリメタキシレン及びアジピン酸の重縮合反応物であるポリメタキシリレンアジパミド樹脂(以下、MXDと略記することがある)を含む層の少なくとも1層を有する。ガスバリア性の観点からは、EVOHを含む層を有することが好ましく、耐熱性及び耐水性の観点からは、MXDを含む層を有することが好ましい。EVOHを含む層及びMXDを含む層の少なくとも1層を有するガスバリア層13を、外層11とヒートシール層14との間に配置させることで、フィルムに酸素ガスバリア性を付与し、食品の腐敗を防止し、食品の賞味期限を延長することができる。
エチレン-酢酸ビニル共重合けん化物のエチレン含有率は、特に限定されるものではないが、フィルム製膜安定性の観点から、下限は27モル%以上が好ましく、32モル%以上がより好ましい。上限は47モル%以下が好ましく、44モル%以下がより好ましい。
フィルム1の酸素ガス透過率は、食品の劣化抑制の点から、10cc/(m・day・atm)以下が好ましく、8cc/(m・day・atm)以下がより好ましい。
ガスバリア層13の層厚は、下限は2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。上限は10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が更に好ましい。
ガスバリア層13の層厚を、2μm以上とすることにより、フィルムに十分な酸素ガスバリア性を付与し、且つ安定したフィルム製膜ができる。又、ガスバリア層13の層厚を、10μm以下とすることにより、経済性に優れる他、耐ピンホール性の低下が避けられる。
<ヒートシール層>
成形用積層フィルム1のヒートシール層14は、防曇剤が添加されたポリオレフィン樹脂を含む層を有する。成形用積層フィルム1は、ポリオレフィン樹脂を含むヒートシール層14を最内層として内容物側に配置させることで、底材等の被着体にヒートシールを施すことができ、かつ、内容物の食品などから出る水分により蓋材の内面が曇るのを抑制することができる。
ヒートシール層14に含まれるポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン―アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン―アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン―アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン―メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン―メタクリル酸共重合体(EMAA)及びポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン樹脂が好ましいが、特に限定されるものではない。
ヒートシール層14の層厚は、5μm以上200μm以下が好ましい。ヒートシール層14の層厚を5μm以上200μm以下にすることにより、良好なフィルム製膜性、剛性、強度、ヒートシール性、熱板非融着性及びガスバリア性が得られる。
<その他の層>
成形用積層フィルム1は、前述の層以外に、他の層を有していてもよい。他の層としては、耐ピンホール性を付与するために、ナイロン6単独重合体など(以下、Nyと略記することがある)のポリアミド系樹脂を含む層、層間強度を向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂などの接着性樹脂(以下、ADと略記することがある)を含む接着層などが挙げられる。
<成形用積層フィルムの総厚>
成形用積層フィルム1の総厚は、200μm以上800μm以下であることが好ましい。下限は210μm以上がより好ましく、220μm以上が特に好ましく、層厚の上限は、700μm以下がより好ましく、600μm以下が特に好ましい。総厚を200μm以上とすることで、フィルムに適度なリジット感を与えることができるため好ましく、総厚を800μm以下とすることで、取り扱い易さや、成形する際の成形時間が短くなり、コストの面でも好ましい。
<深絞り蓋材>
成形用積層フィルム1は、深絞り蓋材(以下、蓋材と略記すことがある)2に用いることができる。図3は、本発明の実施形態に係る深絞り蓋材2の断面図である。図3に示す様に、蓋材2は、外気側から、外層11、ガスバリア層13及びヒートシール層14がこの順に積層されるようにフィルム1が配置され、蓋材2の中央は底部が開口し、所定の高さを有する。
<包装体>
深絞り蓋材2は、包装体4に用いることができる。図4は、本発明の実施形態に係る包装体4の断面図である。図4に示す様に、包装体4は、蓋材2及び底材3が、蓋材2の周辺部と底材3の周辺部とが接合するように組み合わせた形状を有する。底材3としては、深絞り蓋材2とのヒートシール性を損なわない限り、材質、大きさ、形状など特に制限はなく公知の底材を用いることができる。底材3としては、例えば、ポリアミド系樹脂を含む層/ヒートシール層、ポリオレフィン系樹脂を含む層/ポリアミド系樹脂を含む層/ヒートシール層、又それらの層間にガスバリア層を配置した層構成などを有する無延伸共押積層フィルムを用いて成形された底材;発泡ポリスチレンシート、ポリプロピレンシートなどを用いて成形されたトレー底材などが挙げられるが、これらに限定されず、深絞り蓋材2を底材として用いても良い。
なお、底材3及び蓋材2のいずれか一方又は両方の接合面に、イージーピール機能を有するイージーピール層を別途設けても良い。
又、内容物としては食品が主に考えられるので、蓋材2のヒートシール層14側にコーティング材を練り込み又はコーティングして蓋材2に防曇性を付与しても良い。
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で応用が可能である。
<成形用積層フィルムの製膜>
実施例1~5及び比較例1~2に示す層構成の成型用積層フィルムを、共押出Tダイ法により作製した。
各例に示す層構成は、外気側から順に記した。各層に含まれる樹脂組成の表記には、次の略号を用いた。又、「+」の表記は、含有を意味する。
PBT:ポリブチレンテレフタレート単独重合体
PET:ポリエチレンテレフタレート単独重合体
耐熱PET:スピログリコール共重合ポリエステル系樹脂
PET-G:ポリエチレンテレフタレート-グリコール共重合体
Ny:ナイロン6単独重合体
EVOH:エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物 エチレン32モル%
LDPE:低密度ポリエチレン樹脂
防曇:防曇剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル
AD:不飽和カルボン酸変性ポリエチレン系樹脂
<実施例1>
外層:PBT(10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
<実施例2>
外層:PBT[80%]+PET-G[20%](10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
<実施例3>
外層:PBT[70%]+PET-G[30%](10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
<実施例4>
外層:PBT[80%]+耐熱PET[20%](10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
<実施例5>
外層:PBT[40%]+PET-G[60%](10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
<比較例1>
外層:PET-G(10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
<比較例2>
外層:PET-G(10μm)/隣接層:PET(120.5μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(3.5μm)/Ny(3μm)/AD(7μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(18μm)、総厚180μm
<深絞り蓋材の作成>
各例で作成した成型用積層フィルムを、深絞り包装機(ムルチパック社製、R530)を用いて、成型加熱温度95℃、成型時間2.0秒の条件で、縦13cm、横16cm、絞り深さ2.5cmの略直方体状に深絞り成形し、蓋材を作製した。
<包装用成形体作成>
蓋材を、三菱ケミカル株式会社製ダイアミロンMF L628(350μm)、構成:Ny/EVOH/PP/CPPを用いて成形した底材と組み合わせ、蓋材の周辺部と底材の周辺部を蓋材の外層側から、シール機(富士インパルス株式会社製、T-230K)を用いて160℃設定で2秒間ヒートシールして包装体を作製した。
<測定及び評価方法>
上記の通り作成した成形積層用フィルム及び深絞り蓋材を用いて下記に記載の評価を実施した。結果を表1に示す。
<耐熱性(貯蔵弾性率E´)>
耐熱性(熱板トラレ)の指標として、貯蔵弾性率E´を用いた。
外層に使用した樹脂組成物を単独で40mmφ同方向二軸押出機により混錬し、Tダイより押出し、得られたシートから、直径40mm×厚さ4mmのサイズの試験片を採取し、動的粘弾性測定機(アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペクトロメーターDVA-200)を用いて、振動周波数:10Hz、昇温速度:3℃/分、歪0.1%の条件で、貯蔵弾性率E´を0℃から250℃まで測定し、得られたデータから150℃における貯蔵弾性率E´を評価した。
<熱板融着>
深絞り包装機(ムルチバック社製、R530)のシール機構を用いて、160℃設定で、縦40cm×横40cmサイズに切り出したフィルムの外層側から1秒間ヒートシールを行い、外層が熱板に融着せず、変形がみられなかったものを「◎」、若干変形が見られたものの融着は見られなかったものを「○」、熱板に融着したものを「×」と評価した。
<リジット感>
縦13cm、横16cm、絞り深さ2.5cmの略直方体状に深絞り成形した蓋材を、図5に示した様に、ヒートシール層側を水平かつ平坦なスチール製の台に接地させて置き、接地した蓋材の上面全体に均等な荷重がかかるように1500gの重りを乗せ、蓋材の変形を観察した。
蓋材が変形し高さが沈んでしまう場合を「×」、蓋材の変形が見られない場合を「○」とし、成形体としての自立性、堅牢性を評価した。
<透明性>
ヘーズメーター((株)村上色彩技術研究所製、HM-150)を用い、JIS K7105に準拠して、各例で作成したフィルムのヘーズを測定した。透明性の良い12%以下のものを「○」、13%を超えるものを「×」とした。
Figure 0007073754000001
表1から分かる様に、実施例1~5によれば、貯蔵弾性率E´が、8.0MPa以上で、熱板融着に関する評価が、外層が熱板に融着せず、変形がみられなかったの「◎」又は若干変形が見られたものの融着は見られなかったの「○」なので、フィルムは耐熱性を有し、蓋材に成型した際に蓋材側からのヒートシールが可能であることが分かった。また、リジット感も蓋材の変形が見られない場合の「○」なので、フィルムは深絞り成形性に優れていることが分かった。更に、透明性に関する評価が、透明性の良い12%以下の「○」なので、フィルムは透明性も有することが分かった。
これに対して、外層にPET-Gが含まれる比較例1においては、貯蔵弾性率E´が、8.0MPa未満で、熱板融着に関する評価が、熱板に融着したの「×」なので、フィルムは耐熱性が劣り、蓋材に成型した際に蓋材側からヒートシールするのに適していないと考えられる。
外層にPET-Gが含まれ、フィルムの総厚が200μm未満の比較例2においては、貯蔵弾性率E´が、8.0MPa未満で、熱板融着に関する評価が、熱板に融着したの「×」であることに加え、リジット感も蓋材が変形し高さが沈んでしまう場合の「×」なので、フィルムは耐熱性が劣り、蓋材に成型した際に蓋材側からヒートシールするのに適しておらず、深絞り成形用にも適していないと考えられる。
本発明に係る成形用積層フィルムは、蓋材側からのヒートシールが可能で、かつ成形性と透明性に優れているので、深絞り蓋材に好適に使用できる。又、底材と深絞り蓋材とを組み合わせてヒートシールし、包装体にすることで、食品などの内容物を劣化させる原因である酸素流入や雑菌繁殖を抑制し、内容物を長期保存することができ、内容物を変形させることなく、美観を保ったまま市場に提供することができる。
1、1A、1B 成形用積層フィルム
2 深絞り蓋材
3 包装体
11 外層
12 隣接層
13 ガスバリア層
14 ヒートシール層

Claims (7)

  1. 外層、ガスバリア層及びヒートシール層を少なくとも有し、前記外層、前記ガスバリア層及び前記ヒートシール層の順で積層された成形用積層フィルムであって、
    前記外層が、150℃での貯蔵弾性率E´が8.0MPa以上で、前記外層の総質量に対して40質量%以上のポリブチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル系樹脂を含み
    記フィルムの総厚が210μm以上800μm以下であることを特徴とする成形用積層フィルム。
  2. 前記外層の層厚が5μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の成形用積層フィルム。
  3. 前記ガスバリア層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む層及びポリメタキシリレンアジパミド樹脂を含む層の少なくとも1層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形用積層フィルム。
  4. 前記ヒートシール層が、ポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の成形用積層フィルム。
  5. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の成形用積層フィルムを用いた深絞り蓋材。
  6. 外層、ガスバリア層及びヒートシール層を少なくとも有し、前記外層、前記ガスバリア層及び前記ヒートシール層の順で積層された成形用積層フィルムであって、
    前記外層が、150℃での貯蔵弾性率E´が8.0MPa以上で、前記外層の総質量に対して40質量%以上のポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
    前記外層と前記ガスバリア層との間でかつ前記外層の内側に隣接して配置され、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル系樹脂を含む隣接層を有し、
    前記フィルムの総厚が210μm以上800μm以下である成形用積層フィルムを用いた深絞り蓋材。
  7. 請求項または請求項に記載の深絞り蓋材を用いた包装体。
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