JP2020016789A - 光学膜とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[光学膜]
図1及び図2は、本発明の光学膜の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。
多孔質膜4は、ナノ粒子2を含んだ膜である。ナノ粒子2を含む膜の例としては、上に述べた特許文献1(特開2017−54125号公報)に記載の酸化ケイ素の中実粒子を鎖状につなげた鎖状粒子膜、特許文献3(特開2016−109999号公報)に記載の中空酸化ケイ素粒子膜、特許文献4(特開2012−76967号公報)に記載のフッ化マグネシウム微粒子を含む分散液を用いて得られる多孔質膜等が挙げられる。
本発明において緻密膜5を構成する材料の例としては、酸化ケイ素バインダー、ポリ酢酸ビニルとその共重合樹脂、エチレン−酢酸共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、環化ゴム系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂等の溶剤可溶性樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
本発明において、緻密膜5に担持されるフッ素化合物6の好ましい例としてはパーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレンや六フッ化プロピレンの各種共重合体、フルオロアルキルペンダント基を有する各種ポリマーが挙げられる。
本発明の光学膜がその上に形成される基材7としては、ガラス、樹脂などを用いることが可能である。また、その形状は限定されることはなく、平面、曲面、凹面、凸面、フィルム状などのいずれであっても良い。
本発明の光学膜1の製造方法について、その一例を説明する。
本発明の光学膜1の製造方法は、レンズなどの光学部材である基材7の表面に、好ましくは、ナノ粒子2がバインダー3で結合した多孔質膜4を形成する形成工程を有する。なお、多孔質膜4は基材7の表面に直接形成してもよいし、ハードコート層や導電層を介して形成してもよい。
多孔質膜4の表面に緻密膜5を形成するには、乾式法と湿式法のいずれを用いてもよいが、簡便に緻密膜5を形成するには湿式法を用いればよい。湿式法では、緻密膜を構成する材料を溶媒で溶解し適宜希釈して濃度を調整したものを塗料として調製し、これをスプレーコート法やスピンコート法あるいはインクジェット法で塗工することにより多孔質膜上に緻密膜を形成することが可能である。別の基材上に形成した塗膜を転写する方法を用いてもよい。
多孔質膜4上に緻密膜5を形成した後、この表面にフッ素化合物6を担持させる(付着する)には、フッ素化合物6の溶液をスピンコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スリットコート法、印刷法やディップコート法など通常用いられる方法で塗工すればよい。フッ素化合物の溶液に用いる溶媒は、当該フッ素化合物との相溶性の高い溶媒を選択することが好ましい。フッ素化合物の溶液に用いる好ましい溶媒の例としては、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボンなどのフッ素含有有機溶媒、またはそれらの混合溶媒、あるいはそれらと他の有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。溶液中のフッ素化合物の濃度は0.05wt%以上1wt%以下であることが好ましい。
(1)鎖状SiO2粒子を含む塗料1の調製
中実SiO2粒子が鎖状につながった鎖状SiO2粒子の2−プロパノール(IPA)分散液(日産化学工業株式会社製 IPA−ST−UP(登録商標)、粒子径40〜100nm;動的光散乱法・固形分濃度15wt%)中の2−プロパノールの大部分を、エバポレーターで1−プロポキシ−2−プロパノール(シグマ製)に置換することで、鎖状SiO2粒子の1−プロポキシ−2−プロパノール分散液を作製した。溶媒の比率は2−プロパノール:1−プロポキシ−2−プロパノール=7.5:92.5であった。
中空SiO2粒子の2−プロパノール(IPA)分散液(日揮触媒化成株式会社製 スルーリア1110、平均粒径55nm、固形分濃度20.50wt%)6.00gを1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)28.17gで希釈することで、中空SiO2粒子を含む塗料(固形分濃度3.60wt%)2を調製した。動的光散乱法による粒度分布測定(マルバーン社製 ゼータサイザーナノZS)により、粒径が55nmの中空SiO2粒子が分散していることを確認した。
イソオクタン100g、界面活性剤としてビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)10g、水7gを合わせて1時間攪拌し、9nmの水粒子(液滴)が分散した油中水型ミセルが形成された溶液(分散液)を作製した。
1−エトキシ−2−プロパノール(キシダ化学株式会社製)7.7gに、テトラエトキシシラン(TEOS、東京化成工業株式会社製)26.0gと、触媒水としてTEOSに対して10当量の0.01M希塩酸22.5gとを添加し、60分間混合攪拌した。さらに60℃のオイルバス中で40分間攪拌することによってバインダー溶液1を調製した。その後、最終的に酸化ケイ素の固形分濃度が1.0wt%になるように1−エトキシ−2−プロパノールと2−エチルブタノールを加えた。バインダー溶液中の1−エトキシ−2−プロパノールと2−エチルブタノールの比率は3/7とした。
最終的な酸化ケイ素の固形分濃度が1.2wt%になるように1−エトキシ−2−プロパノールと2−エチルブタノールを加えた以外は、(4)と同様の処理を行った。
最終的な酸化ケイ素の固形分濃度が1.5wt%になるように1−エトキシ−2−プロパノールと2−エチルブタノールを加えた以外は、(4)と同様の処理を行った。
最終的な酸化ケイ素の固形分濃度が0.5wt%になるように1−エトキシ−2−プロパノールと2−エチルブタノールを加えた以外は、(4)と同様の処理を行った。
(8)光学膜1の膜厚の測定
分光エリプソメータ(VASE、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製)を用い、波長380nmから800nmまで測定し、解析から膜厚を求めた。
分光エリプソメータ(VASE、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製)を用い、波長380nmから800nmまで測定した。屈折率は波長550nmの屈折率とした。以下の基準で低屈折率性を評価した。
A:屈折率が1.30以下のとき
B:屈折率が1.32以下のとき
C:屈折率が1.32より大きいとき
AR−30(小津産業株式会社製)を用いて膜の表面を150g/cm2で10往復こすったあと、目視で傷を確認した。目視で傷が見えなければ、膜の表面を200g/cm2でこすって傷を確認した。傷が確認できるまで、荷重を50g/cm2ずつ増やしてこの評価を繰り返し、傷が確認できない最大の荷重により以下の基準で耐擦傷性を評価した。
A:最大荷重が300g/cm2以上のとき
B:最大荷重が200g/cm2以上のとき
C:最大荷重が200g/cm2未満のとき
(前処理)
金属スパッタ装置(108Act、Cressington社製)を用い、サンプル表面に30mA、50秒でAu−Pdコートをおこなった。
FE−SEM(Sigma500VP、カールツァイスマイクロスコピー社製)を用いて、2万倍で表面観察を行った。加速電圧は3kVとした。観察箇所のSE像を撮影したあと、観察箇所が重ならないように観察場所を移動し、再び撮影をおこなった。この作業を縦に2枚、横に3枚の画像が得られるように繰り返した。得られた画像をImage−Pro Plus(メディアサイバーネトティクス社製)のソフトウェアで以下の手順で処理をした。
(1)画像部を選択した。
(2)「最適合わせこみ」を実施した。
(3)空間フィルタ(ソーベル)を適用した。
(4)ローパスフィルタ(3×3)を実施した。その時の条件は、回数:2回、強さ:10を適用した。
(5)緻密膜のある場所(暗い色)を選択して、面積比を測定した。(検出サイズ:103〜107倍)
(6)(1)〜(5)を画像の枚数分実施し、得られた面積比の平均を出した。
2万倍の画像は縦12μm、横15μmであったため、縦に2枚、横に3枚の画像を並べた面積は、840μm2となる。本発明においてはこの面積を単位面積とした。
下記のような処理条件で前処理と観察をおこなった。
(前処理)
観察サンプルにカーボン膜およびPt−Pd膜をコートした。
カーボン膜コート:エノモトAV製 NC−5Turbo(60秒×6回)
Pt−Pd膜コート:日立製 E−1030(15mA、60秒×4回)
FIB加工:FEI製 Nova600(FIB加工:30kV)
断面STEM観察:日立製 S−5500(加速電圧:30kV)
観察から得られた断面の20万倍のDF像をImage−Pro Plus(メディアサイバーネトティクス社製)のソフトウェアで以下の手順で処理をした。
(1)8ビットの画像に変換した。
(2)Thresholdで2値化した。
(3)得られた画像から、緻密膜5にあたる部分の距離を測定し、倍率から厚さを計算した。
(4)場所を変えて10か所測定し、その平均値を厚さとした。
SPM(L−trase&NanoNaviII,SIIナノテクノロジー社製)で観察サンプル表面を観察し、緻密膜5が成膜されている部分を測定した。測定後、成膜部分を選択し、Raを測定した。
実施例1では、直径(φ)30mm、厚さ0.5mmのSi基材に、鎖状SiO2粒子を含む塗料1を適量滴下し、3500rpmで20秒スピンコートを行なうことで、基材上に鎖状SiO2粒子からなる多孔質膜を形成した。形成した鎖状SiO2粒子からなる多孔質膜上にSiO2バインダー塗料4を40秒間スプレーで塗工した。さらに、フッ素化合物溶液(株式会社フロロテクノロジー製 FG−5083SH 固形分濃度0.10wt%)を0.06ml滴下し、1000rpmで20秒スピンコートを行なったあと、2000rpmで10秒スピンコートを行なった。その後、熱風循環オーブン中で120℃20分間加熱することで、鎖状SiO2粒子の多孔質膜上に緻密膜が部分的に存在し、さらに緻密膜の上にフッ素化合物が付着した膜(図2)を形成した。
実施例2では、SiO2バインダー塗料4のスプレー時間を80秒に変えた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.316、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は68%、膜厚は24nmであった。この光学膜の耐擦傷性は300gであった。
実施例3では、SiO2バインダー塗料4のスプレー時間を30秒に変えた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.274、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は32%、膜厚は18nmであった。この光学膜の耐擦傷性は200gであった。
実施例4では、鎖状SiO2粒子を含む塗料1の代わりに中空SiO2粒子を含む塗料2を使用した以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.280、膜厚100nmの光学膜(図1)を作製した。また、緻密膜の面積占有率は40%、膜厚は20nmであった。この光学膜の耐擦傷性は200gであった。
実施例5では、中空MgF2粒子を含む塗料3を4000rpmで20秒間スピンコート塗工した。形成した中空MgF2粒子からなる多孔質膜上にSiO2バインダー塗料4を40秒間スプレー塗工した。更に、フッ素化合物溶液(株式会社フロロテクノロジー製 FG−5083SH 固形分濃度0.10wt%)を0.06ml滴下し、1000rpmで20秒スピンコートを行なったあと、2000rpmで10秒スピンコートを行なった。その後、熱風循環オーブン中で120℃20分間加熱することで、中空MgF2粒子の多孔質膜上に緻密膜が部分的に存在し、さらに緻密膜の上にフッ素化合物が付着した膜を形成した。
実施例6では、フッ素化合物溶液(株式会社フロロテクノロジー製 FG−5083SH 固形分濃度0.10wt%)の代わりに、SFコートKS14A(AGCセイケミカル社製)を用いた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.310、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は40%、膜厚は24nmであった。この光学膜の耐擦傷性は250gであった。
実施例7では、SiO2バインダー塗料4の代わりに、SiO2バインダー塗料5を用いた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.318、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は32%、膜厚は30nmであった。この光学膜の耐擦傷性は250gであった。
比較例1では、SiO2バインダー塗料4のスプレー時間を100秒に変えた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.335、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は75%、膜厚は22nmであった。この光学膜の耐擦傷性は350gであった。
比較例2では、スプレー時間を20秒に変えた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.265、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は10%、膜厚は22nmであった。この光学膜の耐擦傷性は150gであった。
比較例3では、フッ素化合物溶液の塗工を実施しない以外は実施例2と同じ条件で処理をした。鎖状SiO2粒子の多孔質膜上に緻密膜が部分的に存在しているが、その上にフッ素化合物の膜は形成されていない。その結果、屈折率が1.290、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は68%、膜厚は24nmであった。この光学膜の耐擦傷性は100gであった。
比較例4では、SiO2バインダー塗料4の代わりに、SiO2バインダー塗料6を用いた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.328、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は32%、膜厚は38nmであった。この光学膜の耐擦傷性は200gであった。
比較例5では、SiO2バインダー塗料4の代わりに、SiO2バインダー塗料7を用いた以外は実施例1と同様の条件で処理をした。その結果、屈折率が1.265、膜厚100nmの光学膜を作製した。また、緻密膜の面積占有率は68%、膜厚は8nmであった。この光学膜の耐擦傷性は100gであった。
2 ナノ粒子
3 バインダー
4 多孔質膜
5 緻密膜
6 フッ素化合物
7 基材
Claims (20)
- 基材上に形成されている多孔質膜を含む光学膜であって、該多孔質膜の表面の一部にフッ素化合物を担持した緻密膜を有しており、前記緻密膜の前記多孔質膜の表面に対する面積占有率が30%以上70%以下であり、前記緻密膜の膜厚が10nm以上30nm以下であり、前記光学膜の屈折率が1.32以下であることを特徴とする光学膜。
- 前記多孔質膜の厚さが、80nm以上200nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光学膜。
- 前記多孔質膜の厚さが、100nm以上160nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光学膜。
- 前記緻密膜の前記多孔質膜の表面に対する面積占有率が、40%以上65%以下である特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記緻密膜の膜厚が、15nm以上25nm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記緻密膜の表面の算術平均粗さが、3nm以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに1項記載の光学膜。
- 前記緻密膜の表面の算術平均粗さが、2nm以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記多孔質膜が、ナノ粒子とバインダーを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記ナノ粒子の平均粒子径が、10nm以上80nm以下であることを特徴とする、請求項8に記載の光学膜。
- 前記ナノ粒子の平均粒子径が、12nm以上60nm以下であることを特徴とする、請求項8に記載の光学膜。
- 前記ナノ粒子が、中空粒子または鎖状の粒子であることを特徴とする、請求項8から10のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記ナノ粒子が中空粒子であり、該中空粒子のシェルの厚みが平均粒子径の10%以上50%以下であることを特徴とする、請求項8から10のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記フッ素化合物が、単分子膜構造を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記光学膜の屈折率が、1.30以下であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記光学膜が、透明基材上に形成された反射防止膜であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の光学膜。
- 前記透明基材が、レンズであることを特徴とする、請求項15に記載の光学膜。
- 少なくともナノ粒子とバインダーと溶剤を含有する第1の塗料を基材の表面に塗工して第1の膜を成膜する工程と、該第1の膜を乾燥して多孔質膜を形成する工程と、該多孔質膜の表面の一部に膜材料と溶剤からなる第2の塗料を塗工して緻密膜を形成する工程と、該緻密膜の表面上にフッ素化合物を担持させる工程を有することを特徴とする光学膜の製造方法。
- 前記緻密膜を形成する工程において、前記第2の塗料中の膜材料の濃度と該塗料の付与量を調整することにより、前記緻密膜の前記多孔質膜の表面に対する面積占有率を30%以上70%以下とすることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
- 前記第1の膜を成膜する工程を、20℃以上30℃以下で行うことを特徴とする請求項17または18に記載の方法。
- 前記第1の塗料の成膜時における粘度が1.3mPa・s以上2mPa・s以下である請求項19に記載の方法。
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