JP2020013005A - 凸版印刷原版 - Google Patents

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JP2020013005A JP2018135564A JP2018135564A JP2020013005A JP 2020013005 A JP2020013005 A JP 2020013005A JP 2018135564 A JP2018135564 A JP 2018135564A JP 2018135564 A JP2018135564 A JP 2018135564A JP 2020013005 A JP2020013005 A JP 2020013005A
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Abstract

【課題】 優れた画像再現性を有し、感光性樹脂層中の第3級窒素原子含有ポリアミドの配合率を高くしても表面粘着性が増大することがなく、さらに優れた耐刷性を有する印刷版を得ることができる凸版印刷原版を提供する。【解決手段】 感光性樹脂層と支持体とを有する凸版印刷原版において、感光性樹脂層が、(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミド、(iii)光重合性不飽和化合物、及び(iv)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物を使用して形成されていること、成分(ii)が、ポリアミド分子中のアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位、及びジアミン単位の合計に対して、シクロへキサンジカルボン酸より得られる構造単位を20〜50モル%含有し、且つ脂環族構造単位を合計50〜95モル%含有すること、及び感光性樹脂層のうち、被印刷体と接触することを意図される表面層の部分の成分(i)の40質量%以上が、1500〜3000の平均重合度を有するものから構成されていることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、部分鹸化ポリ酢酸ビニル含有凸版印刷原版に関するものであり、さらに詳しくは、耐刷性に優れ、かつ印刷版表面粘着の増加が少なく、画像再現性にも優れた凸版印刷版を得ることができる凸版印刷原版に関するものである。
凸版印刷用の印刷原版は、感光性樹脂層に可溶性高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有し、そこに安定剤、可塑剤などの添加剤がさらに配合されることが一般的である。そして、かかる印刷原版は、露光工程において、紫外光に対して不透明な画像マスク層を介して感光性樹脂層に紫外光を照射することによって、感光性樹脂層において溶剤溶解部分とそうでない部分とを形成し、次に、現像工程において、溶剤溶解部を洗い流してレリーフ像を形成し、印刷版を得ることが一般的である。
凸版印刷原版の現像は、水を溶剤として使用して行なわれることが一般的である。このような水現像を可能とするため、感光性樹脂層の可溶性高分子化合物として、水溶解性または水膨潤性の高分子化合物が使用されている。
部分鹸化ポリ酢酸ビニルは、水現像性に優れるために、凸版印刷原版の感光性樹脂層の可溶性高分子化合物として使用されてきた。しかし、部分鹸化ポリ酢酸ビニルを使用した印刷原版は、水現像時に硬いブラシを用いた場合にハイライト網点の欠けが発生するという画像再現性の問題があった。また、印刷時に加えられる印圧に対する脆さのために、ロングラン印刷時にはレリーフにクラックが容易に発生して印刷版を交換しなければならないという耐刷性の問題があった。
これらの問題を解決するために、可溶性高分子化合物として、ポリ酢酸ビニル誘導体と第3級窒素原子含有ポリアミドを併用したものが提案されている(特許文献1、2参照)。この方法は、耐刷性を向上させることができるが、ポリアミド自身の粘着性によって印刷版表面の粘着性が増大するという新たな問題を有していた。
また、可溶性高分子化合物として、変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルと第3級窒素原子含有ポリアミドとを使用し、さらに光重合性不飽和化合物として、特定の5〜7員環を持つものを使用したものが提案されている(特許文献3参照)。この方法は、耐刷性をさらに改善することができたが、第3級窒素原子含有ポリアミドに由来する印刷版表面の粘着性については未解決であった。
出願人は、かかる問題を解決するために、耐刷性の改善のために使用される第3級窒素原子含有ポリアミドとして、シクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位及び脂環族構造単位をそれぞれ特定量含有するものを使用することを提案した(特許文献4参照)。この方法は、耐刷性を維持しつつ、第3級窒素原子含有ポリアミドに由来する印刷版表面の粘着性の増大を防止することができるという点で優れるが、実際の使用現場では、高い印圧下でのロングラン印刷が昨今要求されてきており、耐刷性をさらに向上させたものが要求されているのが現状である。
特開平11−65115号公報 特開2001−272776号公報 WO2014/021322 特願2017−152482
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、硬いブラシで現像した場合でもハイライト網点が欠けることのない優れた画像再現性を有し、感光性樹脂層中の第3級窒素原子含有ポリアミドの配合率を高くしても表面粘着性が増大することがなく、さらに優れた耐刷性を有する印刷版を得ることができる凸版印刷原版を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、凸版印刷原版中の感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物のうち、第3級窒素原子含有ポリアミドとして、ポリアミド分子中のアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位、及びジアミン単位の合計に対して、シクロへキサンジカルボン酸より得られる構造単位、及び脂環族構造単位をそれぞれ特定量含有する第3級窒素原子含有ポリアミドを使用することによって、耐刷性を維持しつつ、現像時に欠けのない高度なハイライト網点画像再現性を有し、しかも、第3級窒素原子含有ポリアミドの配合率を高くしても印刷版表面の粘着性が増大しないことを見出した。さらに、本発明者らは、第3級窒素原子含有ポリアミドだけではなく、側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルにも着目し、凸版印刷原版中の感光性樹脂層のうち、少なくとも被印刷体と接触することを意図される表面層に含まれる変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度を、従来のものより高いレベルに変更することによって、印刷版の強度を高めて耐刷性をさらに向上させることができることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)の構成を有するものである。
(1)感光性樹脂層と支持体とを有する凸版印刷原版において、感光性樹脂層が、(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミド、(iii)光重合性不飽和化合物、及び(iv)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物を使用して形成されていること、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミドが、ポリアミド分子中のアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位、及びジアミン単位の合計に対して、シクロへキサンジカルボン酸より得られる構造単位を20〜50モル%含有し、且つ脂環族構造単位を合計50〜95モル%含有すること、及び感光性樹脂層のうち、被印刷体と接触することを意図される表面層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの40質量%以上が、1500〜3000の平均重合度を有するものから構成されていることを特徴とする凸版印刷原版。
(2)感光性樹脂層のうち、表面層と支持体との間に位置される下層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、300〜700の平均重合度を有するものから構成されていることを特徴とする(1)に記載の凸版印刷原版。
(3)表面層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、300〜1000の平均重合度を有するものを60質量%以下の範囲でさらに含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の凸版印刷原版。
(4)感光性樹脂層において(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミド、(iii)光重合性不飽和化合物、及び(iv)光重合開始剤がそれぞれ、30〜65質量%、5〜30質量%、5〜25質量%、及び0.1〜5質量%の量で存在することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の凸版印刷原版。
(5)前記(ii)第3級窒素原子含有ポリアミドが、ピペラジン環を分子内に含有するポリアミドであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の凸版印刷原版。
(6)前記(i)側鎖に官能基を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、側鎖にエステル結合及び官能基を含有するものであり、官能基が、光重合性不飽和基及び/又はカルボキシル基であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の凸版印刷原版。
(7)前記(iii)光重合性不飽和化合物が、5〜7員環を有する複素環含有光重合性不飽和化合物を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の凸版印刷原版。
本発明の凸版印刷原版は、凸版印刷原版中の感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物のうち、第3級窒素原子含有ポリアミドとして、特定の構造単位を特定量含有するものを使用しており、さらに、凸版印刷原版中の感光性樹脂層のうち、少なくとも被印刷体と接触することを意図される表面層に含まれる変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度を、従来のものより高いレベルに変更しているので、耐刷性に優れ、かつ印刷版表面粘着の増加が少なく、画像再現性にも優れた凸版印刷版を得ることができる凸版印刷版を提供することができる。
本発明の凸版印刷原版は、支持体の上に感光性樹脂層が配置された基本構成を有する。支持体としては、スチール、アルミニウム、ガラス、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムなど従来公知のものが使用でき、一般には50〜500μmの範囲の厚みのフィルムが使用される。
感光性樹脂層は、(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミド、(iii)光重合性不飽和化合物、及び(iv)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物を使用して形成されている。本発明の印刷原版は、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミドとして特定の構造単位を特定の割合で含有するものを使用することによって、高度なハイライト網点画像再現性、耐刷性を維持しながらも、従来の第3級窒素原子含有ポリアミドの欠点である印刷版表面の粘着性の増大を効果的に防止することができること、及び凸版印刷原版中の感光性樹脂層のうち、少なくとも被印刷体と接触することを意図される表面層に含まれる変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度を、従来のものより高いレベルに変更することによって、印刷版の強度を高めて耐刷性を向上させることができることを特徴とする。以下、本発明の凸版印刷原版の感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物の各成分について、順に説明する。
(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル(以下、(i)成分とも称する)とは、側鎖に官能基を含有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルである。この官能基は、光重合性不飽和基及び/又はカルボキシル基であることができる。ここで光重合性不飽和基とは、ラジカル反応性の架橋可能な官能基であり、(メタ)アクリロイル基が好ましい。官能基としては、光重合性不飽和基又はカルボキシル基をそれぞれ単独で導入しても良いし、光重合性不飽和基とカルボキシル基の両者を導入しても良い。光重合性不飽和基を導入することにより、耐水性を向上させることができる。また、カルボキシル基を導入することにより、第3級窒素原子含有ポリアミドとの4級塩化によって相溶性の向上をもたらすことができる。さらに、官能基がエステル結合を有することにより、(iii)光重合性不飽和化合物との相溶性を向上させ、光架橋反応を効率的に行うことができる。特に、光重合性不飽和基とカルボキシル基の両者を導入すると、現像時のレリーフ欠け低減、及び第3級窒素原子含有ポリアミドとの相溶性を向上することができる。
変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖にカルボキシル基を導入する方法としては、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中の水酸基と酸無水物とを反応させてカルボキシル基をポリマー側鎖に導入する方法や、酢酸ビニルと不飽和カルボン酸またはその塩、あるいは不飽和カルボン酸エステルとを共重合させて得られたポリマーを部分ケン化することにより、カルボキシル基を側鎖に導入する方法を挙げることができる。これらの方法によって得られた変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖にはエステル結合も含有されており、(iii)光重合性不飽和化合物との相溶性の点からより好ましい。また、この方法で得られた変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、反応性基の導入が容易であり、本発明の効果が顕著に現れるため、好ましい。
変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に光重合性不飽和基を導入する方法としては、カルボキシル基を側鎖に導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを用いて、変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル中のカルボキシル基と光重合性不飽和基含有エポキシ化合物を反応させることにより、反応性基を導入する方法を挙げることができる。この方法によって得られた変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖にはエステル結合も含有されており、(iii)光重合性不飽和化合物との相溶性の点からより好ましい。また、この方法で得られた変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、反応性基の導入が容易であり、本発明の効果が顕著に現れるため、好ましい。
変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルに光重合性不飽和基を導入する別の方法としては、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとN−メチロール基を有するアクリル系化合物の反応により、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に反応性基を導入する方法を挙げることができる。具体的な製造条件としては、部分ケン化ポリ酢酸ビニル100質量部に対してアクリル系化合物5〜30質量部の範囲で反応させると、現像時のレリーフの欠け低減と水現像性の両立が可能となり、好ましい。N−メチロール基を有するアクリル系化合物としては、N−メチロールアクリルアミドやN−メチロールメタクリルアミドが特に好ましい。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に導入する官能基の量は、変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に、0.1〜0.7モル/kgであることが好ましい。0.7モル/kgより多いと、水溶解性が悪くなるおそれがあり、また、0.1モル/kgより少ないと、改善効果が発現しにくくなるおそれがある。
変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルのケン化度は、60〜95mol%の範囲が好ましく、70〜90mol%の範囲がより好ましい。ケン化度が上記範囲未満であると、親水性が下がることにより水現像性が低下するおそれがあり、また、ケン化度が上記範囲を越えると、結晶性が高くなりすぎることにより水現像性が低下するおそれがある。
本発明の凸版印刷原版では、印刷原版の感光性樹脂層のうち、被印刷体と接触することを意図される表面層の部分の強度を高めるために、この部分の変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの40質量%以上が、1500〜3000の平均重合度を有するものから構成されていることを特徴とする。感光性樹脂層の表面層の部分に従来より高いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用することによって、凸版印刷版の多数回の印刷でも耐えられるように表面層の破壊や亀裂に対する抵抗力を高めることができ、多数回印刷時における耐刷性を従来に比べて大幅に向上させることができる。この特徴の詳細については、後述する。
本発明の凸版印刷原版中の感光性樹脂層において、(i)成分は、好ましくは30〜65質量%、より好ましくは35〜65質量%、さらに好ましくは40〜60質量%の量で存在する。(i)成分の量が上記範囲未満では、感光性樹脂層の形態保持性が低く、ハンドリング性が劣るおそれがあり、上記範囲を越えると、水現像性が低下するおそれがある。
(ii)第3級窒素原子含有ポリアミド(以下、(ii)成分とも称する)は、ポリアミド分子中のアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位、及びジアミン単位の合計に対して、シクロへキサンジカルボン酸より得られる構造単位を20〜50モル%含有し、且つ脂環族構造単位を合計50〜95モル%含有する。ここでの脂環族構造単位には、シクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位が当然含まれる。
本発明に用いる(ii)成分は、上述のようにシクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位及び脂環族構造単位をそれぞれ特定量含有するため、(i)成分の配合によって生じることの多かった現像時のハイライト網点の欠けや印刷時のレリーフ欠けの問題を改良でき、さらには(ii)成分である第3級窒素原子含有ポリアミドの配合量を増加させても印刷版表面の粘着性が増大することが少ないという効果がある。従って、本発明によれば、従来の第3級窒素原子含有ポリアミドでは吸湿しやすく、粘着性が高いために不可能であった添加量を増やすことが可能であり、(ii)成分の配合による効果を高めることができる。
(ii)成分は、シクロヘキサンジカルボン酸を含む脂環族ジカルボン酸、脂肪環族ジアミン、及び第3級窒素原子含有ジアミンだけでなく、さらにはジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノ酸、ラクタムなどの単量体を原料として併用して重合することによって得ることができる。
シクロヘキサンジカルボン酸は、上述したように、ポリアミド分子中のアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位、及びジアミン単位の合計に対して、シクロへキサンジカルボン酸より得られる構造単位が20〜50モル%となるような量で使用される。シクロへキサンジカルボン酸より得られる構造単位の割合が上記範囲未満では、印刷版の表面粘着が増大し、上記範囲を超えると、耐刷性改善の効果が小さい。
シクロヘキサンジカルボン酸は、シクロヘキサン環を含有するジカルボン酸であり、具体的には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロへキサンジカルボン酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジエチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジプロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。これらの中では、ハイライト部の階調印刷性再現性の点で、1,4−シクロへキサンジカルボン酸が好ましい。
(ii)成分は、上述したように、ポリアミド分子中のアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位、及びジアミン単位の合計に対して、脂環族構造単位を合計50〜95モル%含有する。脂環族構造単位には、シクロヘキサンジカルボン酸以外に、脂環族ジカルボン酸、及び必要によりそれらに加えられる脂環族ジアミンや脂環族アミノカルボン酸より得られる構造単位も含まれる。脂環族構造単位合計の含有割合が上記範囲未満では、(i)成分との相溶性に劣るために(ii)成分の配合量を増加することができない。一方、上記範囲を超えると、耐刷性が劣る。なお、本発明において、用語「脂環族ジアミン」は、飽和及び不飽和の環状炭化水素のジアミンだけでなく、ピペラジン類のような、複素環を有するジアミンも含むものとする。
上述のシクロヘキサンジカルボン酸以外の脂環族ジカルボン酸としては、例えばイソホロンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸が挙げられる。
上述の脂環族ジアミンとしては、例えばイソホロンジアミン、1,4−シクロへキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、メチルシクロヘキサンジアミン、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミンが挙げられる。これらの中でも、(i)成分との相溶性の点で、イソホロンジアミン、及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
上述の脂環族アミノカルボン酸としては、例えば、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、3−(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、2−アミノメチルシクロプロパンカルボン酸が挙げられる。
本発明に用いる(ii)成分は、分子内に、具体的には、主鎖または側鎖の一部分に第3級窒素原子を含有するポリアミドであり、第3級窒素原子を有する単量体を用いて縮重合、重付加反応などを行なうことによって得ることができる。第3級窒素原子としては、ピペラジン環やN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、より好ましくはピペラジン環である。(ii)成分を製造するための第3級窒素原子を有する単量体としては、ピペラジン環を有するジアミンやメチルイミノビスプロピルアミン等の第3級窒素原子を含む脂肪族ジアミンが挙げられる。ピペラジン環を有するジアミンとしては、N,N′−ビス(アミノエチル)−ピペラジン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N,N′−ジ(アミノペンチル)ピペラジンが挙げられる。このうち、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンが好ましい。また、N,N’−ジメチル−N−(アミノメチル)−N’−(カルボキシメチル)−エチレンジアミンなどのω−アミノ酸なども使用可能である。
本発明の凸版印刷原版中の感光性樹脂層において、(ii)成分は、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは8〜25質量%の量で存在する。(ii)成分の使用量が上記範囲未満では、耐ブラシ欠け性、画像再現性、及び耐刷性が劣るおそれがあり、上記範囲を越えると、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの配合量が下がることにより、原版形態保持性が損なわれるおそれがある。特に、本発明では、(ii)成分の使用量を感光性樹脂組成物中、8質量%以上と高くしても、印刷版表面の粘着性の増大の問題が目立つことがない。従って、凸版印刷原版用感光性樹脂組成物への(ii)成分の配合による効果を、使用量の増大によって一層高めることができる。
(iii)光重合性不飽和化合物(以下、(iii)成分とも称する)としては、当業者がこの技術分野で従来使用してきたものを使用することができるが、例えば5〜7員環を有する複素環含有光重合性不飽和化合物を含有することが好ましい。5〜7員環を有する複素環含有光重合性不飽和化合物は、複素環内に水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基の官能基を少なくとも有することが好ましい。複素環と官能基は、(i)成分中の水酸基と水素結合するため、(i)成分との相溶性を高めることができる。なお、5〜7員環を有する複素環含有光重合性不飽和化合物は、分子量が300以下であることが好ましい。分子量が大きくなると、(i)成分との相溶性が低下するおそれがある。
(iii)成分としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコール−(メタ)アクリル酸−安息香酸エステル、(メタ)アクリロイルモルフォリン、スチレン及びその誘導体、ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、N−フェニルマレイミド及びその誘導体、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、(メタ)アクリル酸−2−ナフチル、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどを使用することができる。
本発明の凸版印刷原版中の感光性樹脂層において、(iii)成分は、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは8〜20質量%の量で存在する。(i)成分の使用量が上記範囲未満では、画像再現性が不十分になるおそれがあり、上記範囲を越えると、凸版印刷原版に使用する感光性樹脂層が固化しにくくなるおそれがある。
(iv)光重合開始剤(以下、(iv)成分とも称する)は、光吸収によってラジカルを生成する効果を有する。(iv)成分としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。本発明の凸版印刷原版中の感光性樹脂層において、(iv)成分は、好ましくは0.1〜5質量%の量で存在する。
本発明の感光性樹脂組成物には、可塑剤や重合禁止剤などの任意成分をさらに配合することができる。可塑剤は、柔軟性を高めるためのものであり、その具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン及びその誘導体、トリメチロールプロパン及びその誘導体、トリメチロールエタン及びその誘導体、ペンタエリスリトール及びその誘導体などの多価アルコール類が挙げられる。これらの可塑剤の使用量は、本発明の感光性樹脂組成物全体の質量の20質量%以下であることが好ましい。重合禁止剤は、熱安定性を上げるためのものであり、その具体例としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒドロキシアミン誘導体などが挙げられる。これらの重合禁止剤の使用量は、本発明の感光性樹脂組成物全体の質量の0.001〜5質量%であることが好ましい。
さらに、必要により、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などの任意成分を感光性樹脂組成物の最大10質量%の割合で配合することができる。
次に、本発明の凸版印刷原版について、説明する。本発明の凸版印刷原版では、感光性樹脂層は、上述のような成分を含有する感光性樹脂組成物から構成されるが、少なくとも被印刷体と接触することを意図される表面層において、表面層を構成する(i)成分(側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル)の40質量%以上が従来より高いレベルの平均重合度を持つようにしたことを特徴とする。ここでの表面層は、本発明の凸版印刷原版から得られる凸版印刷版を使用して印刷を行なうときに、紙やフィルムなどの被印刷体と接触することを意図される部分であり、感光性樹脂層の中でも印刷時に繰り返し強い力を受け、特に耐刷性が要求される部分である。本発明では、高い耐刷性が要求される表面層に、従来より高いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用することによって、印刷時に凸版印刷版に繰り返し強い力を受けた場合であっても感光性樹脂層の変形や亀裂などの損傷を起こさないように表面強度を大幅に高めることができる。なお、感光性樹脂層は、表面層だけでなく、全体に平均重合度が高い変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用したものとしてもよいが、水現像性の面からは、表面層にのみ、平均重合度が高い変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用し、下層では、従来の平均重合度の低いものを使用することが好ましい。表面層より下の部分は、便宜上、下層と呼ぶが、この部分は、表面層と支持体との間に位置される部分に相当し、印刷時に被印刷体と直接接触しない部分であるので、耐刷性はあまり要求されない。そのため、下層には、表面層のような従来より高いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用する必要がなく、水現像性に優れた従来通りの低いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルで十分である。このような場所に応じた変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの使い分けを行なうことにより、本発明の主目的である耐刷性の向上を達成しながらも、感光性樹脂層の水現像性を全体として確保することができる。
本発明において、感光性樹脂層の厚さは、0.1〜7mmであることが好ましく、0.3〜5mmであることがより好ましく、0.5〜3mmであることがさらに好ましい。感光性樹脂層の厚さが上記下限未満では、印刷版に十分な深度を有するレリーフが形成されず、印刷適性に劣るおそれがある。一方、感光性樹脂層の厚さが上記上限を超えると、露光に使用される活性光線が感光性樹脂層の底部まで十分に到達せず、画像再現性に劣るおそれがある。
感光性樹脂層を、上述のように平均重合度の高い変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用した表面層と、平均重合度の低い変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用した下層とに分ける場合には、表面層の厚さは、感光性樹脂層の厚さの50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。具体的には、表面層の厚さは、0.01〜2.0mmであることが好ましく、0.05〜1.0mmであることがより好ましい。一方、下層の厚さは、0.01〜5.0mmであることが好ましく、0.05〜2.0mmであることがより好ましい。表面層の厚さが上記下限未満では、十分な耐刷性を得られないおそれがある。一方、表面層の厚さが上記上限を超えると、水現像性が低下するおそれがある。
本発明の凸版印刷原版では、感光性樹脂層のうち、表面層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの40質量%以上が、1500〜3000の平均重合度を有するものから構成されている。上述のように、表面層は、感光性樹脂層の中でも被印刷体と直接接触する部分であるので、印刷中の応力によるクラックが発生しやすい。特に、印刷に使用するインキや溶剤などが、高い印圧下でのロングラン印刷中に表面層に浸透し、表面層を劣化させてクラックを発生させるケミカルストレスクラックの問題が生じやすい。本発明では、これらのクラックの問題に対処するために、表面層に含まれる(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルとして、従来より高いレベルの平均重合度を有するものを使用する。このような高いレベルの平均重合度を有する部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、強度の高い表面層を形成することができる。そして、このような強度の高い表面層は、従来の低いレベルの平均重合度を有する部分ケン化ポリ酢酸ビニルから形成された低強度の脆い表面層と比べて、インキや溶剤が浸透しにくく、また、たとえ浸透しても悪影響を受けにくい。その結果、本発明によれば、印刷版の耐刷性を著しく向上させることができ、昨今の高い印圧下でのロングラン印刷の要求にも十分に対応することができる。
表面層に含まれる変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度は、1500〜3000であり、好ましくは1800〜2700であり、より好ましくは2000〜2500である。この平均重合度が上記下限未満では、十分に強度の高い表面層を形成することができず、耐刷性に劣るおそれがある。一方、この平均重合度が上記上限を超えると、逆に強度が高くなりすぎて、表面層の下に配置される下層との接着性に問題が生じるおそれがあると共に、水現像性に劣るおそれもある。
表面層に含まれる変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度は、変性前の部分ケン化ポリ酢酸ビニルとして、様々な平均重合度のものが市販されているので、それらの中から好適なものを適宜選択することによって調節することができる。なお、変性しても、平均重合度は通常、変化しない。
部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度は、JIS K 6726:1994「ポリビニルアルコール試験方法」の「3.試験方法」に記載の平均重合度の測定方法に従って測定することができる。
また、凸版印刷原版の感光性樹脂層中の変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度は、高速液体クロマトグラフィーで質量平均分子量を測定することで知ることが可能である。この場合、ポンプとしては、DP8020(東ソー(株)製)、検出器はRI−71(昭和電工(株)製)を使用し、カラムとしては、TSKgelGMPWXL(東ソー(株)製)を3本直列にして使用する。また、展開溶媒としては、硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの混合溶媒を使用し、標準サンプルとしては、ポリエチレンオキサイドおよびポリエチレングリコールを使用する。
本発明では、従来より高いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの含有割合は、表面層中に含まれる変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。この含有割合が上記下限未満では、十分な耐刷性を示すことができないおそれがある。一方、この含有割合が上記上限を超えると、水現像性が低下するおそれがある。
また、別の観点で言えば、本発明では、従来より高いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの含有割合は、表面層全体を100質量%とした場合、10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜75質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%である。この含有割合が上記下限未満では、十分な耐刷性を示すことができないおそれがある。一方、この含有割合が上記上限を超えると、水現像性が低下するおそれがある。
本発明の凸版印刷原版では、表面層の変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、300〜1000の平均重合度を有するものを60質量%以下の範囲でさらに含むことができる。これにより、耐刷性を維持しながら、露光された印刷原版から印刷版を得るための現像工程において要求される溶剤溶解性(水現像性)を高めることができる。
本発明の凸版印刷原版では、感光性樹脂層のうち、表面層にのみ、上述のような従来より高いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを配合すればよく、表面層と支持体との間に下層を設ける場合は、この下層の部分の変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、従来通りの低いレベルの平均重合度を有するものを配合することができる。表面層とは異なり、下層は、印刷時に被印刷体と直接接触しない部分であるため、耐刷性を考慮する必要がないからである。具体的には、本発明の凸版印刷原版では、感光性樹脂層のうち、下層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、300〜700の平均重合度を有するものから構成されていることができる。なお、従来通りの低いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、強度には劣るが、現像工程において要求される溶剤溶解性や、特にレーザー彫刻タイプの印刷原版の場合に要求される彫刻残渣のリンス性に優れる。従って、耐刷性の要求されない下層において従来通りの低いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを配合することによって、感光性樹脂層全体としての現像性を確保することができる。
次に、本発明の凸版印刷原版の製造方法について説明する。本発明の凸版印刷原版は、上述の(i)〜(iv)の必須成分と所望により任意成分とを含む感光性樹脂組成物を使用して形成された感光性樹脂層を、支持体の上に配置することによって製造することができる。
具体的には、まず、上述の(i)〜(iv)の必須成分と所望により任意成分とを、適切な溶媒と共に混合して、感光性樹脂組成物を調製する。なお、本発明の凸版印刷原版では、感光性樹脂層を表面層と下層とに分ける場合には、表面層の部分と下層の部分とで、そこに含まれる(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度を変えるので、それに応じて感光性樹脂組成物も、表面層用と下層用とに分けて調製することになる。次に、支持体を準備する。この支持体の感光性樹脂層形成面には、感光性樹脂層と支持体との接着性を高めるため、公知の接着剤組成物を塗布して、接着剤層を形成させてもよい。そして、この支持体の感光性樹脂層形成面に、下層用の感光性樹脂組成物を流延し、乾燥させて、下層を形成させる。その後、表面層用の感光性樹脂組成物を下層の上に流延し、乾燥させて、表面層を形成させ、印刷原版を得る。
このようにして得られた印刷原版は、そのまま使用することもできるが、保存や輸送のためには、感光性樹脂層の上に保護フィルムをさらに積層することが好ましい。保護フィルムは、フィルム状のプラスチックが使用でき、例えば125μm厚みのポリエステルフィルムが使用される。また、感光性樹脂層と保護フィルムとの間に粘着性のない透明で現像液に分散又は溶解する高分子を0.5〜3μmの厚みで塗布した粘着防止層を設けてもよい。感光性樹脂層表面に粘着防止層を設けることにより、表面粘着性が強い場合であっても次の露光操作時に行う保護層の剥離を容易に行うことができる。
本発明の凸版印刷原版は、感光性樹脂層と粘着防止層の間に、厚みが1〜30μmのキャップ層を設けてもよい。キャップ層は、現像工程で除去されず印刷版上に残るため、キャップ層を設けることで印刷版表面特性や耐久性を調整することができる。キャップ層としては、従来公知のキャップ層をそのまま使用することができる。
本発明の凸版印刷原版は、感光性樹脂層の表面に感熱マスク層を設けることにより、ネガフィルムを使用しないCTP(Computer to Plate)版を製造できる。感熱マスク層としては、従来公知の感熱マスク層をそのまま使用することができる。
本発明の凸版印刷原版は、感光性樹脂層に透明画像部を有するネガフィルムを密着して重ね合せ、その上方から活性光線を照射して露光を行い、活性光線が透過した露光部のみを不溶化した原版を作成する。活性光線は、通常300〜450nmの波長を中心とする高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、ケミカルランプなどの光源を用いる。
一方、CTP版の場合には、感熱マスク層をIRレーザーにより画像様に照射して、感光性樹脂層上にマスク(ネガフィルムと同じ機能)を形成する。画像情報を感熱マスク層に書き込んだ後、感光性印刷原版にマスクを介して活性光線を全面照射し、活性光線が透過した露光部のみを不溶化した原版を作成する。
次いで、適当な溶剤、特に本発明では中性水により非露光部分を溶解除去するが、スプレー式現像装置、ブラシ式現像装置などの現像方式で非露光部分を溶解除去することが好ましい。その後、非露光部分を溶解除去した印刷版は、水切り、乾燥、後露光工程を行い、最終の印刷版が得られる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。実施例中(本文)の部数は、質量部を表わし、表1のポリアミド組成は、mol%を表す。ポリアミド組成のmol%は、H−NMRの測定により確定した。なお、実施例中の特性値の評価は以下の方法に依った。
(1)水現像性
まず、感光性樹脂層の厚みが685μmの凸版印刷原版に、画像として30μmの細線を含むネガを用い、照度を25W/mに調整したケミカルランプを用いて、感光性樹脂層の表面より高さ5cmの距離から8分露光した。次にブラシ式ウォッシャー(日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で、25℃の水道水で現像し、非画像部が全量除去されるまでに必要な現像時間を測定し、以下の基準で評価した。
○ :2分以内。
△ :2分より長く4分未満。
× :4分以上。
(2)30μm細線耐ブラシ欠け性
まず、感光性樹脂層の厚みが685μmの凸版印刷原版に、画像として30μmの細線を含むネガを用い、照度を25W/mに調整したケミカルランプを用いて、感光性樹脂層の表面より高さ5cmの距離から8分露光した。次にブラシ式ウォッシャー(日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で、25℃の水道水で現像し、レリーフ画像を得た。更に60℃で10分間、温風乾燥した後に、超高圧水銀灯で30秒間後露光して印刷版を得た。30μm細線の再現性を顕微鏡で50倍に拡大して観察し、以下の基準で評価した。
◎:ブラシ径200μmで細線に欠けなし。
○:ブラシ径150μmで細線に欠けなし。
△:ブラシ径120μmで細線に欠けなし。
×:ブラシ径120μmでも細線に欠けがみられる。
(3)印刷版表面の粘着性
まず、感光性樹脂層の厚みが685μmの凸版印刷原版に、画像としてベタ画像(幅1cm×長さ5cm)を含む印刷評価ネガを用い、照度を25W/mに調整したケミカルランプを用いて、感光性樹脂層の表面より高さ5cmの距離から8分露光した。次にブラシ式ウォッシャー(日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で25℃の水道水で現像し、レリーフ画像を得た。更に60℃で10分間、温風乾燥した後に、超高圧水銀灯で30秒間後露光して印刷版を得た。得られた印刷版を用いて印刷版表面の粘着性の評価を行った。粘着性は、被印刷物であるコート紙(グロスPW−8K、(株)リンテック製)を版に押し付けて、コート紙の滑り度合いから以下の基準で評価した。
◎:コート紙を100回以上版に押し付けても、コート紙が抵抗なく滑る。
○:コート紙が抵抗なく滑るが、コート紙を100回以上版に押し付けると、若干の抵抗を感じるようになる。
△:コート紙を版に押し付けると、コート紙と版がすぐに粘着する。但し、力を入れると、コート紙は滑る。
×:コート紙を版に押し付けると、コート紙と版が完全に粘着して滑らない。
(4)画像再現性
まず、感光性樹脂層の厚みが685μmの凸版印刷原版に、画像として200線1%の細線を含むネガを用い、照度を25W/mに調整したケミカルランプを用いて、感光性樹脂層の表面より高さ5cmの距離から8分露光した。次にブラシ式ウォッシャー(日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で、25℃の水道水で現像し、レリーフ画像を得た。更に60℃で10分間、温風乾燥した後に、超高圧水銀灯で30秒間後露光して印刷版を得た。200線1%網点の再現性を顕微鏡で50倍に拡大して観察し、以下の基準で評価した。
◎:ブラシ径200μmで200線1%網点が完全に再現する。
○:ブラシ径150μmで200線1%網点が完全に再現する。
△:ブラシ径120μmで200線1%網点が完全に再現する。
×:ブラシ径120μmでも200線1%網点が再現しない。
(5)耐刷性
上記の(2)の印刷版表面の粘着性の評価用レリーフを作成した時と同じ方法で印刷版を製造し、適性印圧から80μm加圧した状態で1万ショットの印刷を行い、1万ショット印刷後に印刷物と版を200倍に拡大した顕微鏡で観察し、以下の判定基準で評価した。
◎:200倍に拡大した顕微鏡の観察では印刷物に欠点なく、かつ版にもクラックなし。
○:200倍に拡大した顕微鏡の観察では印刷物に欠点はないが、版に軽微なクラックあり。
△:印刷物や版に目視で欠点は確認できないが、200倍に拡大した顕微鏡の観察では印刷物又は版に不良がみられる。
×:目視で印刷物又は版に不良が確認できる。
さらに、追加して5000ショットの印刷を行ない(つまり、合計1万5000ショット)、追加の5000ショットの印刷後に印刷物と版を200倍に拡大した顕微鏡で観察し、上記の判定基準で評価した。
<(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの合成>
合成例i−1:
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル“KH−17”(平均重合度1700、ケン化度80モル%)をアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して、分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度1700の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−1を得た。
合成例i−2:
平均重合度2200、ケン化度80モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルをアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して、分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度2200の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−2を得た。
合成例i−3:
平均重合度2800、ケン化度80モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルをアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して、分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度2800の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−3を得た。
合成例i−4:
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル“KL−05”(平均重合度500、ケン化度80モル%)をアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して、分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度500の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−4を得た。
合成例i−5:
平均重合度400、ケン化度80モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルをアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して、分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度400の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−5を得た。
合成例i−6:
酢酸ビニルにメタクリル酸を共重合単位として1モル%含有させたポリマーをケン化し、平均重合度650、ケン化度75モル%のアニオン変性ポリ酢酸ビニルを得た。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度650の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−6を得た。
合成例i−7:
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル“KL−05”(平均重合度500、ケン化度80モル%)100部を100部の水に溶解し、N−メチロールアクリルアミド15部を添加し、酸触媒としてリン酸1部を加え、100℃4時間攪拌して調整し、次いで水分を除去して、平均重合度500の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−7を得た。
合成例i−8:
平均重合度1400、ケン化度80モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルをアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して、分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度1400の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−8を得た。
合成例i−9:
平均重合度3100、ケン化度80モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルをアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して、分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。このポリマー100部を、エタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6部添加して、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応し、ポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、平均重合度3100の(i)成分である側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルi−9を得た。
<(ii)第3級窒素原子含有ポリアミドの合成>
合成例ii−1:
ε−カプロラクタム521部(46.0モル%)、シクロヘキサンジカルボン酸458部(26.6モル%)、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン549部(27.4モル%)、50%次亜リン酸水溶液5部、及び水3000部をオートクレーブ中に仕込み、窒素置換後、密閉して徐々に加熱した。内圧が0.4MPaに達した時点から、その圧力を保持できなくなるまで水を留出させ、約2時間で常圧に戻し、その後1時間常圧で反応させた。最高重合反応温度は255℃であった。これにより、(ii)成分である第3級窒素原子含有ポリアミドii−1を得た。得られた第3級窒素原子含有ポリアミドの組成をH−NMRで測定し、仕込み組成とポリマー組成に差異がないことを確認した。この第3級窒素原子含有ポリアミドii−1の組成、ポリアミド中のシクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位及び脂環族構造単位の割合を表1に示す。
合成例ii−2〜ii−8
表1に記載のポリアミド組成になるようにジアミン及びジカルボン酸の種類及び配合割合、並びにε−カプロラクタムの配合割合を変更した以外は、合成例ii−1と同様の方法で合成を行ない、(ii)成分である第3級窒素原子含有ポリアミドii−2〜ii−8を得た。得られた第3級窒素原子含有ポリアミドの組成をH−NMRで測定し、仕込み組成とポリマー組成に差異がないことを確認した。これらの第3級窒素原子含有ポリアミドii−2〜ii−8の組成、ポリアミド中のシクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位及び脂環族構造単位の割合を表1に示す。
Figure 2020013005
実施例1
攪拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、表2に示す表面層用の(i)成分、及び(ii)成分を添加し、“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)50部および水50部の混合溶媒を混合した後、攪拌しながら90℃で2時間加熱し、(i)成分および(ii)成分を溶解させた。70℃に冷却した後、その他の成分を添加し、30分攪拌し、表面層用の感光性樹脂組成物を得た。
攪拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、表2に示す下層用の(i)成分、及び(ii)成分を添加し、“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)50部および水50部の混合溶媒を混合した後、攪拌しながら90℃で2時間加熱し、(i)成分および(ii)成分を溶解させた。70℃に冷却した後、その他の成分を添加し、30分攪拌し、下層用の感光性樹脂組成物を得た。
次に、接着剤層を有する支持体を作成した。接着剤層を有する支持体は、紫外線吸収材を含む接着剤組成物を250μm厚みのポリエステルフィルム上に、塗膜厚さ20μmでコートすることによって得た。得られた支持体を用いて、この支持体の接着剤層面に上記の下層用の感光性樹脂組成物を流延し、乾燥させて、厚み500μmの下層を形成させた。その後、この下層の上に上記の表面層用の感光性樹脂組成物を流延し、乾燥させて、厚み380μmの表面層を形成させた。その後、厚み2μmのポリビニルアルコール(AH−26、日本合成化学(株)製)の被膜をコートした厚み125μmのポリエステルフィルムの被膜側を感光性樹脂層の表面層側に接するようにして、ラミネーターを用いて全厚みが1277μmのシート状積層体の生版を成形した。
生版を7日間以上保管した後に、印刷版特性、耐刷性の評価を行った。これらの評価結果を実施例1の感光性樹脂組成物の組成とともに表2に示した。
実施例2〜21、比較例1〜10
感光性樹脂組成物の組成を表2に示されるものに変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、印刷原版を得た。得られた印刷版を実施例1と同様の評価を行った。これらの評価結果を実施例2〜21と比較例1〜10の感光性樹脂組成物の組成とともに表2に示した。なお、実施例21は、表面層用の感光性樹脂組成物のみ調製し、下層用の感光性樹脂組成物は調製せず、下層を形成させなかった。また、比較例7は、下層用の感光性樹脂組成物のみ調製し、表面層用の感光性樹脂組成物は調製せず、表面層を形成させなかった。
なお、表2に記載した(iii)光重合性不飽和化合物(iii−1〜iii−5)、(iv)光重合開始剤、可塑剤、及び熱重合禁止剤の詳細は、以下の通りである。
iii−1:4−アクリロイルモルフォリン KJケミカルズ株式会社製
iii−2:2−アクロイルオキシエチル−フタル酸 HOA−MPL(N) 共栄社化学社製
iii−3:グリセリンジメタクリレート 共栄社化学社製
iii−4:2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート NKエステル701A 新中村化学社製
iii−5:プロピレングリコールジエポキシアクリレート エポキシエステル70PA 共栄社化学社製
光重合開始剤:ベンジルジメチルケタール
可塑剤:ジエチレングリコール
熱重合禁止剤:ハイドロキノンモノメチルエーテル
Figure 2020013005
表2から分かるように、実施例1〜21では、第3級窒素原子含有ポリアミドとして、シクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位と脂環族構造単位を本発明の範囲(それぞれ20〜50モル%、50〜95モル%)で含有する第3級窒素原子含有ポリアミドを使用しており、さらに感光性樹脂層の表面層の部分に、従来より高いレベルの平均重合度を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを使用しているので、耐ブラシ欠け性、印刷版表面の粘着性、画像再現性、耐刷性の全てにおいて優れている。一方、比較例1に示すように、第3級窒素原子含有ポリアミドを含有させないと、耐ブラシ欠け性、画像再現性、及び耐刷性に劣る。比較例2及び3に示すように、シクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位を含有しない第3級窒素原子含有ポリアミドを用いると、印刷版表面の粘着性に劣り、その程度は、その含有割合の増加とともに増大する。また、耐ブラシ欠け性及び画像再現性にも劣る。比較例4に示すように、シクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位を含有していても、その含有量が少なすぎると、耐ブラシ欠け性、印刷版表面の粘着性に劣る。比較例5に示すように、シクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位を含有していても、その含有量が多すぎると、耐刷性が劣る。比較例6に示すように、シクロヘキサンジカルボン酸より得られる構造単位を本発明の範囲内の量で含有していても、脂環族構造単位の合計含有量が多すぎると、耐刷性が劣る。比較例7に示すように、表面層を有さない場合、耐刷性に著しく劣る。比較例8に示すように、表面層に使用する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度が本発明で規定する範囲の上限を越える場合、水現像性に劣る。比較例9に示すように、表面層に使用する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度が本発明で規定する範囲の下限未満の場合、耐刷性に劣る。比較例10に示すように、本発明で規定する範囲の平均重合度を持つ変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの配合量が本発明で規定する範囲の下限未満の場合、耐刷性に劣る。
本発明の凸版印刷原版によれば、高度なハイライト網点画像再現性、耐刷性を維持し、しかも、第3級窒素原子含有ポリアミドの配合率を高くしても印刷版表面の粘着性が増大することのない凸版印刷原版を得ることができる。従って、本発明は、極めて有用である。

Claims (7)

  1. 感光性樹脂層と支持体とを有する凸版印刷原版において、感光性樹脂層が、(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミド、(iii)光重合性不飽和化合物、及び(iv)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物を使用して形成されていること、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミドが、ポリアミド分子中のアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位、及びジアミン単位の合計に対して、シクロへキサンジカルボン酸より得られる構造単位を20〜50モル%含有し、且つ脂環族構造単位を合計50〜95モル%含有すること、及び感光性樹脂層のうち、被印刷体と接触することを意図される表面層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの40質量%以上が、1500〜3000の平均重合度を有するものから構成されていることを特徴とする凸版印刷原版。
  2. 感光性樹脂層のうち、表面層と支持体との間に位置される下層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、300〜700の平均重合度を有するものから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の凸版印刷原版。
  3. 表面層の部分の(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、300〜1000の平均重合度を有するものを60質量%以下の範囲でさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の凸版印刷原版。
  4. 感光性樹脂層において(i)側鎖に官能基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(ii)第3級窒素原子含有ポリアミド、(iii)光重合性不飽和化合物、及び(iv)光重合開始剤がそれぞれ、30〜65質量%、5〜30質量%、5〜25質量%、及び0.1〜5質量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の凸版印刷原版。
  5. 前記(ii)第3級窒素原子含有ポリアミドが、ピペラジン環を分子内に含有するポリアミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の凸版印刷原版。
  6. 前記(i)側鎖に官能基を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、側鎖にエステル結合及び官能基を含有するものであり、官能基が、光重合性不飽和基及び/又はカルボキシル基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の凸版印刷原版。
  7. 前記(iii)光重合性不飽和化合物が、5〜7員環を有する複素環含有光重合性不飽和化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の凸版印刷原版。
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