JP2020000168A - 粉末食品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】食品素材の粉末化物(一次粉末)を含有しながら、風味や食感に優れた粉末食品及びその製造方法を提供する。【解決手段】本粉末食品は、食品素材の粉末化物と、多孔性デキストリンに油脂が吸着された油脂デキストリンと、を含有する。また、油脂デキストリンは、油脂及び多孔性デキストリンの合計を100質量%とした場合に、油脂を1〜40質量%含むこと。更に、粉末化物及び油脂デキストリンの合計を100質量%とした場合に、油脂デキストリンを1〜55質量%含むこと。更に、多孔性デキストリンの比容積を2〜10mL/gとすること。本方法は、多孔性デキストリンと油脂とを混合し、油脂デキストリンを得る第1混合工程と、油脂デキストリンと粉末化物とを混合する第2混合工程と、を備える。【選択図】なし

Description

本発明は、粉末食品及びその製造方法に関する。更に詳しくは、食品素材の粉末化物を含んだ粉末食品及びその製造方法に関する。
粉末食品は、素材そのものに比べて嵩が小さく、輸送や運搬に便利である。また一般に保存性が向上されており、長期貯蔵食品として適する。このような粉末食品としては、例えば、下記特許文献1〜3に開示された食品用トッピング剤が知られている。
特開2017−012149号公報 特開2017−012150号公報 特開2017−012151号公報
粉末食品の風味付け・味付けに、食品素材の粉末化物(以下、食品素材の粉末化物を単に「一次粉末」ともいう)を用いられているが、製造過程や長期貯蔵の際に、凝集を生じやすいという問題があった。
例えば、魚の乾燥物を粉砕した魚粉は、魚をそのまま利用したものであり、魚に含まれる油分が、一次粉末にも引き継がれる。よって、この油分が影響すると考えられる一次粉末同士の凝集を生じやすい。この凝集が生じると製造過程でダマとなり、分散させて製品内に均等に配合できなかったり、製品内でも次第に凝集が進んでしまい、風味等に影響するという問題があった。
そのため、粉末食品に食品素材の風味付け・味付けをする方法としては、例えば、ベースとなる副原料(大豆加工品等)に対して一次粉末を少量混合して乾燥・造粒した造粒物や、食品素材の抽出物を造粒化した顆粒などが多用されている。上記の造粒物、例えばカツオ風味の大豆加工品などは、加工品全体に対する一次粉末の含有割合を大きくすることが難しく、また、塊状で硬く、口当たりのよいものではないため、素材本来の風味も感じにくかった。また、上記の顆粒、例えば、食品素材の抽出物(エキス等)を流動層造粒した顆粒は、抽出や加熱、乾燥の工程が加わることで、素材本来の風味が弱くなり、食味という観点からは物足りなさを感じ易いものであった。
この点、上記特許文献1〜3には、一次粉末の利用、一次粉末の利用に際して生じる課題、更には、この課題に関する検討はなされていない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一次粉末を含有しながら、風味や食感に優れた粉末食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、比容積の大きいデキストリン、いわゆる、多孔性デキストリンを利用することにより、上記課題を解決できることを見出した。即ち、多孔性デキストリンに予め油脂を吸着させた油脂デキストリンを形成し、この油脂デキストリンを、粉末食品に配合することで、一次粉末の凝集を抑制し、それによって、風味及び食感に優れた粉末食品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]本発明の粉末食品は、食品素材の粉末化物と、多孔性デキストリンに油脂が吸着された油脂デキストリンと、を含有することを要旨とする。
[2]上記[1]の粉末食品において、前記油脂デキストリンは、前記油脂及び前記多孔性デキストリンの合計を100質量%とした場合に、前記油脂を、1〜40質量%含むことができる。
[3]上記[1]又は[2]の粉末食品において、前記粉末化物及び前記油脂デキストリンの合計を100質量%とした場合に、前記油脂デキストリンを、1〜55質量%含むことができる。
[4]上記[1]乃至[3]のうちのいずれかの粉末食品において、前記多孔性デキストリンの比容積は、2〜10mL/gとすることができる。
[5]上記[1]乃至[4]のうちのいずれかの粉末食品において、前記食品素材は、魚介類、畜肉類、海藻類、果実類及び野菜類からなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。
[6]上記[1]乃至[5]のうちのいずれかの粉末食品において、前記食品素材は、前記魚介類であって、
更に、アゴ類、タイ類、サケ類及びアジ類からなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。
[7]上記[1]乃至[6]のうちのいずれかの粉末食品において、ふりかけ、おむすびの素、スープの素、混ぜご飯の素、又は、チャーハンの素とすることができる。
[8]本発明の粉末食品の製造方法は、上記[1]乃至[7]のうちのいずれかに記載の粉末食品の製造方法であって、
前記多孔性デキストリンと前記油脂とを混合し、前記油脂デキストリンを得る第1混合工程と、
前記油脂デキストリンと前記粉末化物とを混合する第2混合工程と、を備えることを要旨とする。
本発明によれば、一次粉末を含有しながら、食味に優れた粉末食品とすることができる。即ち、一次粉末の凝集を抑制し、風味及び食感に優れた粉末食品とすることができる。特に粉末食品及びこれを添加した食品に対して、ふわふわとしたやわらかく口当たりの良い独特の食感を与えることができる。
本発明の粉末食品は、食品素材の粉末化物と、多孔性デキストリンに油脂が吸着された油脂デキストリンと、を含有する。
[1]食品素材の粉末化物
上記「食品素材の粉末化物」(一次粉末)は、食品素材を粉末化したもの(粉末)である。一次粉末は、原料食品をそのまま粉末化したものでもよく、原料食品に前加工を施した後、粉末化したものでもよい。前加工としては、乾燥する(例えば自然乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥、常温乾燥、熱風乾燥、冷風乾燥など)、焼く、煮る、蒸す、炊く、燻す、塩蔵、調味等の加工が含まれる。これらの前処理は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
従って、食品素材には、原料食品(生の原料食品)の乾燥物、原料食品の加熱乾燥物(原料食品を焼いて乾燥させたもの、煮炊きしたのち乾燥させたもの等)、原料食品の燻製物(原料食品の乾燥時に燻されたもの、原料食品を燻して乾燥させたもの等)などが含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、当然ながら、原料食品を前加工することなく、生のまま粉末化できる場合には、原料食品そのものが粉末化されたものを一次粉末として利用できるが、通常、前述のような各種の前加工を施し、粉末化し易い食品素材を得た後、得られた食品素材を粉末化して用いる。
尚、食品素材には、前述した前加工以外の加工方法を用いて加工された食品は含まれない。例えば、畜肉類であれば、チキンナゲットなどのフライ加工肉製品、海藻類であれば、寒天デザート、ところてんなどの海藻加工製品、野菜類であれば、こんにゃく、納豆、豆腐などの野菜加工製品が相当する。
本粉末食品は、一次粉末を利用する。一次粉末は、食品素材そのものや、食品素材を粉砕して粉末化したものを含むため、本粉末食品は、形態が粉末であるにも関わらず、実質的に食品素材そのものを直接利用しているに等しく、食品素材の風味、食感を本粉末食品に直接加えることができる。
一次粉末を構成する粉末の粒度は限定されないが、通常は目開き2mmのフルイ下であるが、凝集抑制の観点からは、更に目開き500μmのフルイ下、とりわけ目開き300μmのフルイ下、特に150μmのフルイ下が好ましい。
粉末の粒度は、JIS Z8801−1(日本工業規格)の標準ふるいで測定することができる。
また、一次粉末を構成する粉末粒子の平均粒径(d50)は特に限定されないが、通常10μm以上であり、凝集抑制の観点から、更に50μm以上が好ましく、とりわけ75μm以上が好ましく、特に100μm以上が好ましい。上限は、通常2mm以下であり、風味のよさの観点から、更に1.8mm以下が好ましく、特に1.5mm以下が好ましく、とりわけ1mm以下が好ましい。
平均粒径の測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置は、例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステム、測定アプリケーションソフトウェアは、例えばDMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。測定時の溶媒は、任意の溶媒でよく、例えばエタノールを用いることができる。
また、食品素材を粉砕処理する場合の手段は特に限定されず、処理時の温度や圧力も何ら限定されない。粉砕処理の装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらの何れであってもよく、乾式粉砕又は湿式粉砕の何れであってもよい。
本発明における、食品素材(原料食品としても同様)として、より具体的には、魚介類、畜肉類、海藻類、果実類及び野菜類からなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。
このうち、魚介類は、魚類、貝類、甲殻類、頭足類を含む。これら魚類、貝類、甲殻類、頭足類は、各々、海水生、淡水生、汽水生のいずれであってもよい。
尚、当然ながら、これらは、いずれも食用の魚介類である。即ち、食用魚類、食用貝類、食用甲殻類、食用頭足類を含む。
上記のうち、魚類は限定されず、食用可能な魚が含まれる。特に魚類のなかでも、調味に適すると共に脂分を多く含んだ青魚類、タイ類、サケ類が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
青魚類としては、アゴ類、アジ類、イワシ類、サンマ類、サバ類が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
アゴ類としては、これらに限定されるものではないが、ツクシトビウオ、アヤトビウオ、ハマトビウオ、ホソトビウオ、アカトビウオ、オオメナツトビウオ、ホソアオトビ、カラストビウオ、チャバネトビウオ、ハマトビウオ、マトウトビウオ等が挙げられる。
アジ類としては、これらに限定されるものではないが、マアジ、シマアジ、ムロアジ、ブリ、カンパチ、ヒラマサが例示される。
イワシ類としては、これらに限定されるものではないが、マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシが例示される。
サンマ類としては、これらに限定されるものではないが、ハシナガサンマ、ニシサンマ、太平洋ミニサンマ、大西洋ミニサンマなどが例示される。
サバ類としては、これらに限定されるものではないが、マサバ、ゴマサバ、大西洋サバが例示される。
また、タイ類としては、これらに限定されるものではないが、マダイ、チダイ、ヘダイ、クロダイ、キチヌ、イシダイ、イシガキダイ、アカマダイ、イトヨリダイ、イボダイ、メダイ、タカオハダイ、コショウダイ、コロダイ、テンジクダイ、フエダイが例示される。
更に、サケとしては、これらに限定されるものではないが、サケ、カラフトマス、ベニザケ、ギンザケ、サクラマス、サツキマス、ニジマス、ジャガートラウト、アトランティックサーモン、イワナ、イトウが例示される。
その他の魚類としては、これらに限定されるものではないが、以下が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
タラ類(マダラ、スケ卜ウダラ、ギンダラ等)、ホッケ類(真ホッケ、シマホッケ、根ホッケ等)、カツオ類(カツオ、スマ、ソウダガツオ(ヒラソウダ、マルソウダ等)、ハガツオ、シマガツオ、マナガツオ、イケカツオ等)、マグロ類(マグロ、メバチマグル、キハダマグロ等)、ハゼ類(マハゼ、イサザ、ゴリ、イサザ)、シシャモ類(シシャモ)、カワハギ類(カワハギ)、オオクチバス類(オオクチバス、ブラックバス、ブルーギル、コクチバス、フロリダバス等)、その他の淡水魚類(ワカサギ、アユ、オイカワ、カワムツ、ハヤ)、スズキ、キンメダイ、マトウダイ等や、前記魚類の魚卵が例示される。
貝類としては、これらに限定されるものではないが、アサリ、ハマグリ、シジミ、ホタテ、カキ、アワビ、サザエなどが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
頭足類としては、これらに限定されるものではないが、イカ、タコなどが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
甲殻類としては、これらに限定されるものではないが、エビ、カニ、オキアミなどが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、特に、アゴ類、タイ類、サケ類及びアジ類からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。アゴ類、タイ類、サケ類又はアジ類は、いずれも、食品素材に比較的多くの油分が含むため、本発明の構成に起因する作用をより効果的に得ることができる。即ち、一次粉末の凝集が抑制され、粉末食品に、一次粉末による風味及び食感をより強く与えることができる。
上記畜肉類としては、これらに限定されるものではないが、牛、豚、馬、山羊及び羊などの獣肉類、鶏、アヒル、七面鳥、ホロホロチョウ、ガチョウ、ダチョウ、ウズラ及びこれらの卵などの鶏肉類、鶏卵類などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、鶏が好ましい。特にブロイラー鶏は、食品素材に比較的多くの油分が含まれるため、本発明の構成に起因する作用をより効果的に得ることができる。即ち、一次粉末の凝集が抑制され、粉末食品に、一次粉末による風味及び食感をより強く与えることができる。
野菜類としては、果菜類の野菜、葉茎菜類の野菜、根菜類の野菜、種実類が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、果菜類としては、これらに限定されるものではないが、トマト、キュウリ、カボチャ、ピーマン、パプリカ、枝豆、インゲンマメ、ソラマメ、エンドウマメ、大豆、黒豆、小豆、グリーンピース、ナツメグ、トウモロコシ等が例示される。
葉茎菜類としては、これらに限定されるものではないが、キャベツ、コールラビ、ケール、カリフラワー、ブロッコリー、ハクサイ、チンゲンサイ、モロヘイヤ、コマツナ、アブラナ、ミズナ、レタス、ネギ、ホウレンソウ、アスパラ、ミョウガ、ニラなどが例示される。
根菜類としては、これらに限定されるものではないが、カブ、ダイコン、ハツカダイコン、ニンジン、ゴボウ、ジャガイモ、タマネギ、ニンニク、サトイモ、ヤムイモ、ヤマイモ、サツマイモ、ショウガ、ラッキョウなどが例示される。
種実類としては、これらに限定されるものではないが、アーモンド、カシューナッツ、カボチャの種、ギンナン、クリ、クルミ、ゴマ、トチ、ハスの実、ヒシ、ピスタチオ、ヒマワリの種、ヘーゼルナッツ、ペカン、マカダミアナッツ、マツ、ラッカセイなどが例示される。中でも、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツなどが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、クリ、クルミ、ゴマが好ましい。
海藻類としては、褐藻類、紅藻類及び緑藻類等が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
具体的には、これらに限定されるものではないが、褐藻類としては、ワカメ、コンブ、モズク、ツルモ、スジメ、カジメ、クロメ、アラメなどが例示され、紅藻系のノリ等が例示され、緑藻系のノリなどが例示される。
果実類としては、これらに限定されるものではないが、アセロラ、アボカド、アンズ、イチゴ、イチジク、ウメ、カンキツ類(イヨカン、ウンシュウミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、レモン、ユズなど)、カキ、キウイ、ザクロ、スイカ、スモモ、チェリー、パインアップル、ハスカップ、バナナ、ブドウ、ベリー類(ブルーベリー、ラズベリーなど)、マンゴー、メロン、モモ、リンゴ等が例示される。中でも、アボカド、イチゴ、ベリー類、カンキツ類、ブドウ、リンゴなどなどが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、アボカド、カンキツ類が好ましく、特に風味の観点からユズが好ましい。
[2]油脂デキストリン
油脂デキストリンは、多孔性デキストリンに油脂が吸着されたものである。
本発明において「吸着」とは、多孔性デキストリンに油脂が吸収されて、常温常圧では、油脂デキストリンから油脂が漏出されない状態をいう。これにより、油脂デキストリン全体として、サラサラとした粉体としての流動性を維持できるため、粉末食品に適する。多孔性デキストリンを構成する粒子の間に油脂が介在された状態となると、サラサラとした粉体の流動性を維持できず、ベタベタした粉体としての流動性を呈し易く、粉末食品には適さない状態となるからである。
尚、吸着によって、油脂の全量が多孔性デキストリンの微細孔内に包含されているか否かは問わず、上述の粉体流動を維持できるのであれば、油脂の一部が、多孔性デキストリンを構成する粒子の間に介在してもよい。
(1)油脂
上記「油脂」は、食用の油脂であれば特に制限なく利用できる。油脂としては、植物性油脂、動物性油脂及びこれらの加工油脂が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち植物性油脂としては、ごま油、コーン油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、綿実油等が例示される。
また、動物性油脂としては、牛脂、乳脂、豚脂、魚油(サケ油等)等が例示される。
更に、加工油脂としては、前述した各種油脂を水素添加した油脂、分別した油脂、エステル交換した油脂等が例示される。
油脂の種類は、配合する一次粉末の種類によって適宜選択することができる。例えば、一次粉末を構成する食品素材としてサケを用いた場合には、油脂としてサケ油を利用することができる。また、サケ油とごま油とを併用することもできる。この場合には、一次粉末に起因する風味や食味等をより強化することができる。
(2)多孔性デキストリン
本発明の「多孔性デキストリン」とは、比容積が大きいデキストリンをいう。本発明で用いる多孔性デキストリンの比容積は限定されないが、通常2.0mL/g以上であることが好ましい。更に、2.5mL/g以上がより好ましく、3.0mL/g以上が更に好ましく、4.0mL/g以上がとりわけ好ましく、5.0mL/g以上が特に好ましい。一方、多孔性デキストリンの比容積の上限は限定されず、大きすぎると脆く崩れ易いため、通常、10.0mL/gとすることができる。この比容積の上限は、更に、9.0mL/g以下とすることができ、更に、8.0mL/g以下とすることができる。上述の多孔性デキストリンであれば、油脂を吸着させることができるとともに、一次粉末の凝集を抑制することができる。これにより、ふわふわとしたやわらかく口当たりの良い独特の食感を与えることができる。
また、本発明で用いる多孔性デキストリンは、油脂を吸着することができるデキストリンである。即ち、油脂を吸着してもサラサラとした粉体の流動性を維持できるデキストリンである。この多孔性デキストリンの油脂吸着の機序は限定されず、例えば、構成粒子自体の表面形状が複雑であり、粒子表面に油脂を吸着できるものであってもよい。
また、多孔性デキストリンの原料は限定されないが、例えば、とうもろこし、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ、小麦、コメ、キャッサバ等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
この多孔性デキストリンの粉末の粒度は限定されないが、通常目開き1mmのフルイ下であるが、凝集抑制の観点から、更に目開き850μmのフルイ下、更に500μmのフルイ下が好ましい。また、多孔性デキストリンは、一次粉末の凝集抑制及び粉末食品の分級抑制の観点から、目開き25μmのフルイ上が好ましく、更に目開き45μmのフルイ上が好ましく、特に100μmのフルイ上が好ましい。
(3)油脂デキストリンの調製
油脂デキストリンは、多孔性デキストリンに油脂が吸着されたものであればよく、その調製方法は限定されない。油脂デキストリンの調製は、通常、油脂と多孔性デキストリンとの混合により行われる。特に、油脂が液状である場合には、混合のみにより油脂デキストリンを得ることができる。また、油脂が液状であっても流動性が小さい場合や、油脂が半固形状又は固形状である場合には、油脂を加熱して流動性を大きくして、多孔性デキストリンと混合することが好ましい。
混合する際に用いる混合機も限定されず適宜選択できるが、例えば、容器回転型混合機(例えば、ドラム型混合機、スクリュー型混合機など)や容器固定型混合機(例えば、リボン型混合機、ドラム型混合機、スクリュー型混合機など)を利用することができる。
油脂デキストリンを構成する、油脂と多孔性デキストリンの割合は限定されないが、例えば、油脂と多孔性デキストリンとの合計質量を100質量%とした場合の油脂の割合は、1質量%以上とすることができる。油脂の割合が小さくなると、味わいの強さを抑えてしまう傾向が認められる。具体的には、塩味、うまみ、甘み、一次粉末の風味等を小さくしてしまう傾向がある。このような理由から、油脂の割合は、1質量%以上であると、本発明の効果を得ることができる。即ち、一次粉末の凝集を抑制して、ふわふわとしたやわらかく口当たりの良い独特の食感を与えることができる。油脂の割合は、更に2質量%以上、中でも3質量%以上、とりわけ4質量%以上、特に5質量%以上であると好ましい。一方、油脂の割合が40質量%を超えると、一次粉末による嗜好が小さくなるとともに、油感が増す傾向がある。このような理由から、油脂の割合の上限は、40質量%以下であればよく、更に、35質量%以下が好ましく、中でも30質量%以下が好ましく、とりわけ27質量%以下が好ましく、特に25質量%以下が好ましい。特に上述のように、油脂と多孔性デキストリンとの合計質量を100質量%とした場合に、油脂の割合の下限が5質量%以上、上限が25質量%以下である場合には、油感を抑えつつ、一次粉末による風味をより一層引き立てることができる。
[3]一次粉末と油脂デキストリンとの配合
一次粉末と油脂デキストリンとの配合割合は限定されないが、一次粉末及び油脂デキストリンの合計を100質量%とした場合に、油脂デキストリンの割合は1質量%以上とすることができる。この範囲では、本発明の効果を得ることができる、即ち、一次粉末の凝集を抑制して、ふわふわとしたやわらかく口当たりの良い独特の食感を与えることができる。更に、3質量%以上が好ましく、中でも7質量%以上が好ましく、とりわけ10質量%以上が好ましく、特に15質量%以上が好ましい。油脂デキストリンの割合が、1質量%未満であると、味わいの強さを抑えてしまう傾向が認められる。一方、上限は、55質量%以下とすることができる。この範囲であれば、油脂デキストリンの割合は、本発明の効果を得ることができる、即ち、一次粉末の凝集を抑制して、ふわふわとしたやわらかく口当たりの良い独特の食感を与えることができる。更に、50質量%以下が好ましく、中でも48質量%が好ましく、とりわけ46質量%が好ましく、特に45質量%が好ましい。55質量%を超えると、一次粉末による嗜好が小さくなるとともに、油感が増す傾向にある。特に上述のように、一次粉末及び油脂デキストリンとの合計質量を100質量%とした場合に、油脂デキストリンが下限が15質量%以上、上限が45質量%以下である場合には、油感を抑えつつ、一次粉末による風味をより一層引き立てることができる。
[4]粉末食品
粉末食品は、前述の通り、一次粉末及び油脂デキストリンを含有する。また、この粉末食品は、各種食材や各種調理食品の一部として、例えば米、スープ、うどんやスパゲッティなどの麺類、洋食メニュー、サラダ、卵などの食材や調理食品に、ふりかけたり、混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させて用いることができる。これにより、優れた見た目や風味を与えて、各食材や各調理食品の嗜好性を高めた味付けをすることができる。
より具体的には、ふりかけ、おむすびの素、スープの素、麺類のつゆの素、ぞうすいの素、おかゆの素、リゾットの素、ドリアの素、お茶漬けの素、混ぜご飯の素、炊き込みご飯の素、和えサラダの素、すしの素、チャーハンの素、卵焼きの素、野菜炒めの素、トッピング等が例示される。これらの中でも、特に、ふりかけ、おむすびの素、又は、スープの素、混ぜご飯の素、チャーハンの素であることが好ましく、本発明の粉末食品として有用である。
(1)その他の成分
本粉末食品は、上記以外の他の成分を含有することができる。他の成分としては、調味成分、着香成分、食品添加物等が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(1−1)調味成分
粉末食品に使用される調味成分としては、粉末状及び片状等の乾燥形態とされた調味のための各種食材が例示される。具体的には、調味料(みそ、醤油、ソース、食酢など)、糖類(グルコース、砂糖、果糖など)、旨味調味料(グルタミン酸ソーダなど)、酸味料、脱脂粉乳、鰹節、鶏がらエキス、香味油、香辛料などが例示される。尚、これらの調味成分は、一次粉末との混合物であってもよいし、それ以外の形態であってもよい。また、塩(塩粒)や砂糖(砂糖粒)もここで言う調味成分の一種に含めるものとする。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(1−2)着香成分
粉末食品に使用される着香成分としては、粉末状及び片状等の乾燥形態とされた香り付けのための各種食材が例示される。具体的には、梅、梅干、ゆず、酢橘、かぼす又はだいだい等など果実類や、胡椒、山椒、山葵、生姜、ニンニク、唐辛子又はマスタードなどの香辛料、抹茶などが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。尚、これらの着香成分は、一次粉末との混合物であってもよいし、それ以外の形態であってもよい。
(1−3)食品添加物
粉末食品に使用される食品添加物としては、粉末状及び片状等の乾燥形態とされた着色や酸化防止、保存等のための各種食材が例示される。具体的には、酸化防止剤として例えばトコフェノール、ローズマリー抽出物又はアスコルビン酸など、保存料として、ε-ポリリジン、ピロ亜硫酸カリウム又は亜硫酸ナトリウムなど、増粘剤として例えば、加工澱粉、タラガム、キサンタンガムなど、着色料として例えば、カラメル、クチナシ、ターメリック、パプリカ、アントシアニン色素、紅花色素、紅麹色素、ウコン色素、カロチン色素などが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
[5]粉末食品の製法
粉末食品は、どのように製造してもよいが、例えば、以下の二段階の混合工程を備えた方法により製造することができる。
即ち、多孔性デキストリンと油脂を混合して油脂デキストリンを得る工程(第1混合工程)があり、この工程では、例えば、容器回転型混合機(例えば、ドラム型混合機、スクリュー型混合機など)や容器固定型混合機(例えば、リボン型混合機、ドラム型混合機、スクリュー型混合機など)などの一般的な乾燥粉粒体混合用機械を用いることができる。 次いで、得られた油脂デキストリンと一次粉末と、必要に応じて他成分と、を混合する工程(第2混合工程)があり、この工程では、上記の乾燥粉粒体混合用機械内に、一次粉末と、必要に応じて他成分と、を追加投入して混合することができる。
尚、上記の全ての素材を一括して混合して、粉末食品が得られる場合には、一段階の混合工程により粉末食品を製造してもよいが、通常、油脂が適当な割合で多孔性デキストリンに対して吸着されず、他成分に対しても吸着され得るため、前述の二段階の混合工程を備えた方法により製造することが好ましい。
[6]実施形態の効果
本発明によれば、食味に優れた粉末食品を提供することができる。
即ち、本発明の粉末食品によれば、比容積の大きいデキストリン、いわゆる、多孔性デキストリンに予め油脂を吸着させた油脂デキストリンを、粉末食品に配合することにより、一次粉末の凝集を抑制するとともに、それによって、食味及び食感に優れた粉末食品が得られる。特に、粉末食品及びこれを添加した食品に対して、ふわふわとしたやわらかく口当たりの良い独特の食感を与えることができる。
更に、上述のように、油脂デキストリンにより一次粉末の凝集抑制作用が得られることに加えて、油脂デキストリン自体も、優れた口溶けによりだし感を口腔内に強く広げる作用を発揮できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
〔1〕油脂デキストリンの油脂割合について
〔1-1〕実験例1〜7の調製
以下の油脂、多孔性デキストリン及び一次粉末(アゴ粉末、鯛粉末、鶏粉末、野菜粉末)と、食塩並びに砂糖を用いて、実験例1〜7(実験例1−1〜7−4)の実験用粉末食品(表1〜2参照)を調製した。尚、いずれの実験例でも、多孔性デキストリンと油脂とを予め混合して、油脂デキストリンを形成した後、他成分と混合して実験用粉末食品を得た。
また、一次粉末は、各原料を乾燥させてから、ピンミルで粉砕処理し、JIS Z8801−1(日本工業規格)の標準ふるいで目開き1mmを通過したものを用いた。具体的には、アゴ粉末は、焼きアゴの乾燥物を上記粉砕処理して得た粉末のうち、目開き1mmのフルイ下のもの、鯛粉末は、茹でた鯛の乾燥物を上記粉砕処理して得た粉末のうち、目開き1mmのフルイ下のもの、鶏粉末は、茹でた鶏の乾燥物を上記粉砕処理して得た粉末のうち、目開き1mmのフルイ下のもの、野菜粉末は、茹でたカボチャの乾燥物を上記粉砕処理して得た粉末のうち、目開き1mmのフルイ下のものを用いた。
・A1 油脂:ごま油
・A2 多孔性デキストリン:比容積7.09mL/g
・B 一次粉末:
(B−1)アゴ粉末
(B−2)鯛粉末
(B−3)鶏粉末
(B−4)野菜粉末
Figure 2020000168
Figure 2020000168
上記表1〜2に示すように、油脂デキストリンに含まれる油脂の割合を1.8質量%から43.2%まで変化させた実験用粉末食品7種を調製した。尚、それ以外の原料については、一定量としており、更に、一次粉末と油脂デキストリンの合計量に対する油脂デキストリンの割合も32.0%の一定量とした。
また、実験例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1及び7−1については、一次粉末として「アゴ粉末」を利用した。
実験例1−2、2−2、3−2、4−2、5−2、6−2及び7−2については、一次粉末として「鯛粉末」を利用した。
実験例1−3、2−3、3−3、4−3、5−3、6−3及び7−3については、一次粉末として「鶏粉末」を利用した。
実験例1−4、2−4、3−4、4−4、5−4、6−4及び7−4については、一次粉末として「野菜粉末」を利用した。
〔1−2〕実験例1〜7の評価
上記の実験用粉末食品を5名の被験者に試食させて、各々の実験用粉末食品について、「嗜好性」に関する質問と、「味わいの強さ」に関する質問を以下の基準で行った。
「嗜好性」に関しては、「おいしさ(総合的)」と「一次粉末による風味の嗜好」について、良い(5点)、やや良い(4点)、普通(3点)、あまり良くない(2点)、良くない(1点)の5段階で評価するように質問を行った。そして、5名の被験者の評価点の平均値を表1〜2に併記した。
また、「味わいの強さ」に関しては、「うまみの強さ」、「一次粉末による風味の強さ」、「油感(べたべた感)の強さ」について、強い(+2点)、やや強い(+1点)、ちょうどよい(0点)、やや弱い(−1点)、弱い(−2点)の5段階で評価するように質問を行った。そして、5名の被験者の評価点の平均値を表1〜2に併記した。
〔1−3〕実験例1〜7の効果
油脂デキストリン全体に対して油脂が7.2〜18.0質量%である範囲では、おいしさが4.2〜5.0(アゴ)、3.8〜4.6(鯛)、4.0〜5.0(鶏)、3.8〜4.8(野菜)という優れた結果が得られた。また、各一次粉末に由来する風味の嗜好についても、3.6〜4.8(アゴ)、4.2〜4.8(鯛)、3.8〜4.6(鶏)、3.6〜4.0(野菜)という優れた結果が得られた。
また、うまみの強さ、一次粉末に由来する風味の強さについては、油脂量が少ない程、評価値も小さくなり、油脂量が多い程、評価値が小さくなり、油脂量が14.4質量%に近い程、評価値が高い傾向が認められた。一方で、油感の強さは、過度な油感を抑えつつ、優れた味わいの強さを得るという観点から、油脂割合は、7.2〜18.0質量%において最良であると考えられた。
上記の結果は全体として、A1/(A1+A2)に示すように油脂は50.0%程まで多孔性デキストリンに吸着させることができるものの、吸着量が多いと油感が強くなる一方で、一次粉末に由来する風味の強さ及びうまみの強さは低くなる傾向が認められ、それに伴い、嗜好性も低下していた。従って、油脂の吸着量は43.2%未満にすることで一次粉末の種類に関わらず、嗜好性を平均評価値3.0以上にすることができた。更に、1.8%を超えた値にすることで、嗜好性を向上させることができた、特に一次粉末があごの場合、この効果が大きい傾向が見られた。そして、3.6%を超え28.8%未満の範囲においては、油感を適度にしつつ、一次粉末の種類に関わらず、味わいの強さ及び嗜好性を大幅に引き上げることができた。
〔2〕油脂デキストリンの割合について
〔2−1〕実験例8〜14の調製
実験例1〜7と同様に、実験例8〜14の実験用粉末食品を得た(表3〜4)。
Figure 2020000168
Figure 2020000168
上記表3〜4に示すように、油脂デキストリンに含まれる油脂の割合を14.4質量%に固定する一方、油脂デキストリンと一次粉末との合計量に対する油脂デキストリンの割合を5.2〜59.9質量%まで変化させた7種の実験用粉末食品を調製した。尚、それ以外の原料については、一定量とした。
また、実験例8−1、9−1、10−1、11−1、12−1、13−1及び14−1については、一次粉末として「アゴ粉末」を利用した。
実験例8−2、9−2、10−2、11−2、12−2、13−2及び14−2については、一次粉末として「鯛粉末」を利用した。
実験例8−3、9−3、10−3、11−3、12−3、13−3及び14−3については、一次粉末として「鶏粉末」を利用した。
実験例8−4、9−4、10−4、11−4、12−4、13−4及び14−4については、一次粉末として「野菜粉末」を利用した。
〔2−2〕実験例8〜14の評価
上記〔1−2〕と同じ評価を行い、得られた5名の被験者の評価点の平均値を表3〜4に併記した。
〔2−3〕実験例8〜14の効果
油脂デキストリンと一次粉末との合計量に対して、油脂デキストリンの割合が20.7〜40.3質量%である範囲では、おいしさが4.0〜4.8(アゴ)、4.0〜5.0(鯛)、4.0〜5.0(鶏)、4.4〜4.8(野菜)という優れた結果が得られた。また、各一次粉末に由来する風味の嗜好についても、4.0〜4.6(アゴ)、4.4〜5.0(鯛)、4.2〜5.0(鶏)、4.2〜4.6(野菜)という優れた結果が得られた。
また、うまみの強さ、一次粉末に由来する風味の強さについては、油脂デキストリンの割合が少ない程、評価値も小さくなり、油脂デキストリンの割合が多い程、評価値が小さくなり、油脂デキストリンの割合が30.0質量%に近い程、評価値が高い傾向が認められた。一方で、油感の強さは、過度な油感を抑えつつ、優れた味わいの強さを得るという観点から、油脂デキストリンの割合は、20.7〜40.3質量%において最良であると考えられた。
上記の結果は全体として、(A1+A2)/(A1+A2+B)に示すように、一次粉末の割合が大きいからといって、嗜好性や味わいの強さが大きくなるわけではなく、油脂デキストリンとの配合比によってコントロールできる。具体的には、A1/(A1+A2)が14.4%と適切な範囲の油脂デキストリンを利用することで、(A1+A2)/(A1+A2+B)が59.9%の場合、即ち、一次粉末の割合が少ない場合でも、油感は−0.4〜0.2の評価値となり、適度にすることができた。特に一次粉末が鯛である場合においしさを3.4という優れた値にすることができた。そして、(A1+A2)/(A1+A2+B)が5.2%を超え59.9%未満の範囲にすることで、一次粉末の種類に関わらず、嗜好性を平均評価値3.0以上にすることができた。更に、10.4%を超え49.5%未満の範囲にすることで、油感を適度な値にしつつ、一次粉末の種類に関わらず、嗜好性の評価値をすべて4.0以上と極めて優れた値に引き上げることができた。とりわけ、20.7%を超え40.3%未満の範囲においては、油感を−0.2〜0という優れた値にしつつ、一次粉末の種類に関わらず、味わいの強さ及び嗜好性を極大にすることができた。
〔3〕多孔性デキストリンについて
〔3−1〕実験例15〜26の調製
実験例1〜7と同様に、実験例15〜26の実験用粉末食品を得た(表5〜6)。この実験例15〜19及び21〜25では比容積の異なる多孔性デキストリン、実験例20及び26では非多孔性デキストリンを用いた。尚、実験例1〜7で用いたA1とBの各成分に加えて下記の成分を用いた。また、表5〜6における「その他」には、具材(目開き2mmのフルイ上である非粉末状の緑藻系のノリなど)が含まれている。これらの詳細については以下の通りである。
・A2 多孔性デキストリン:比容積2.14〜7.09mL/g
・非多孔性デキストリン:比容積1.82mL/g
Figure 2020000168
Figure 2020000168
上記表5〜6に示すように、比容積を1.82〜7.09mL/gまで変化させた実験用粉末食品12種を調製した。
また、実験例15−1、16−1、17−1、18−1、19−1及び20−1については、一次粉末として「アゴ粉末」を利用した。
実験例15−2、16−2、17−2、18−2、19−2及び20−2については、一次粉末として「鶏粉末」を利用した。
実験例15−3、16−3、17−3、18−3、19−3及び20−3については、一次粉末として「野菜粉末」を利用した。
実験例21、22、23、24、25及び26については、一次粉末として「鯛粉末」を利用した。
〔3−2〕実験例15〜26の評価
上記の実験用粉末食品を5名の被験者に試食させて、各々の実験用粉末食品について、「嗜好性」に関する質問と、「味わいの強さ」に関する質問を以下の基準で行った。
「嗜好性」に関しては、「おいしさ(総合的)」、「一次粉末による風味の嗜好」及び「口当たりの良さ」について、良い(5点)、やや良い(4点)、普通(3点)、あまり良くない(2点)、良くない(1点)の5段階で評価するように質問を行った。そして、5名の被験者の評価点の平均値を表5〜6に併記した。
尚、「口当たりの良さ」とは、具体的には、例えば、ふわふわとしたやわらかい食感や、それに伴う素材の風味の口腔内へのひろがりの有無による評価である。即ち、例えば、ふわふわ感が強い程、高い数値の評価が得られることとなる。
また、「味わいの強さ」に関しては、「一次粉末による風味の強さ」について、強い(+2点)、やや強い(+1点)、ちょうどよい(0点)、やや弱い(−1点)、弱い(−2点)の5段階で評価するように質問を行った。そして、5名の被験者の評価点の平均値を表5〜6に併記した。
〔3−3〕実験例15〜26の効果
嗜好性については、一次粉末の種類に関わらず、比容積が大きい程、優れた結果が得られた。味わいの強さに関しては、一次粉末としてアゴを用いた場合には、全体として優れた結果が得られるものの、特に、比容積が2.59mL/g以上で優れた評価が得られた。一方、鶏及び野菜に関しては、比容積が大きい程、より良い結果が得られる傾向が認められた。また、鯛に関しては、ばらつきがあるが、比容積4.49〜7.09mL/gで、良い結果が得られる傾向が認められた。
また、嗜好性の「口当たりのよさ」は、非多孔性デキストリンを用いた場合、3.0点未満の評価となった。一方で、多孔性デキストリンを用いた場合、その比容積に比例してより高い評価となり、口当たりがよく、ふわふわしたやわらかい食感があり、素材の風味が口腔内へひろがることを確認できた。
尚、調理使用形態での確認のため、米飯180gに試験品5gをふりかけた場合と、茹でうどん220gに試験品25gをふりかけた場合において、上記の全実施例で同様の試験を行い、同様の結果が得られた。
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に記載されたものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。

Claims (8)

  1. 食品素材の粉末化物と、多孔性デキストリンに油脂が吸着された油脂デキストリンと、を含有することを特徴とする粉末食品。
  2. 前記油脂デキストリンは、前記油脂及び前記多孔性デキストリンの合計を100質量%とした場合に、前記油脂を1〜40質量%含む請求項1に記載の粉末食品。
  3. 前記粉末化物及び前記油脂デキストリンの合計を100質量%とした場合に、前記油脂デキストリンを1〜55質量%含む請求項1又は2に記載の粉末食品。
  4. 前記多孔性デキストリンの比容積が、2〜10mL/gである請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の粉末食品。
  5. 前記食品素材が、魚介類、畜肉類、海藻類、果実類及び野菜類からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の粉末食品。
  6. 前記食品素材が、前記魚介類であって、
    更に、アゴ類、タイ類、サケ類及びアジ類からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の粉末食品。
  7. ふりかけ、おむすびの素、スープの素、混ぜご飯の素、又は、チャーハンの素である請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の粉末食品。
  8. 請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の粉末食品の製造方法であって、
    前記多孔性デキストリンと前記油脂とを混合し、前記油脂デキストリンを得る第1混合工程と、
    前記油脂デキストリンと前記粉末化物とを混合する第2混合工程と、を備えることを特徴する粉末食品の製造方法。
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