JP4800268B2 - ソース - Google Patents

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本発明は、トマトを配合したソースにおいて、ココア、乾燥ローストオニオンおよび肉を配合したコクを有するソースに関する。
五味とは、甘味、酸味、苦味、塩味、旨味のことをいい、旨味を呈する物質としては、グルタミン酸ナトリウム(昆布の代表的な旨味成分)、イノシン酸ナトリウム(鰹節の代表的な旨味成分)、グアニル酸ナトリウム(椎茸の代表的な旨味成分)等が知られている。また、グルタミン酸と核酸系旨味物質との間には相乗効果を呈することが知られており、このことを利用した調味料が多種多様なソースに利用されている。しかしながら、このような調味料を利用したソースでは、旨味は増強されているものの単純な呈味となり、ソース本来の自然かつ複雑な旨味の増強には至らず、旨味がぼけるという欠点を有している。
ソースの旨味に複雑さと深みを与える味として、コクが知られている。コクを付与する昔からの調理方法としては、例えば、フライパンや鍋に細断した玉葱等の香味野菜と適量のサラダ油を入れ、最初は、中火程度で炒め、香味野菜中の水分をある程度飛ばし、その後、弱火で更に時間をかけてじっくり炒める、いわゆるミルポアを作る方法が知られている。また、コクの付与する食品や食品添加物としては、例えば、畜肉エキス、魚介エキス、野菜エキス等の天然エキス、ペプチドや、特開昭60−9465号公報(特許文献1)に記載されているグルタチオン、特開平8−143551号公報(特許文献2)に記載されているアミノ酸誘導体等が知られている。しかしながら、ミルポアを作るには長時間じっくりと炒めなければならず、工業的規模での生産には向いていなかった。また、天然エキスは原料由来の不快な臭い、苦味やエグミがあり、ペプチド等のコクを付与する成分は、好ましくない味や異臭を併せ持つため、使用量に制限を生じ、充分にコクを付与することができなかった。
一方、トマトはイタリア料理等でよく用いられる食材であり、トマトを配合した代表的なソースとしては、ミートソース等が挙げられる。ミートソース等のトマトを配合したソースは、トマトの酸味により全体的に軽い食味となることから、コクのあるソースが要望されている。
特開昭60−9465号公報 特開平8−143551号公報
そこで、本発明の目的は、トマトを配合したソースにおいて、コクを付与するソースを提供するものである。
本発明者は、上記目的を達成すべく配合原料に関し鋭意研究を重ねた結果、トマトを配合したソースにおいて、ココア、乾燥ローストオニオンおよび肉を配合するならば、意外にも、コクを有することを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)トマトを配合したミートソースにおいて、製品に対しココアを0.05〜3%、乾燥ローストオニオンを0.03〜3%および肉を15〜50%配合しているミートソース、
(2)前記ミートソースがレトルト処理されてなる(1)のミートソース、
である。
本発明によれば、トマトを配合したソースにおいて、コクを有することが可能であることから、トマトを配合したソースの新たな需要の拡大が期待される。
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
本発明のトマトを配合したソースは、ココア、乾燥ローストオニオンおよび肉を配合していることを特徴とし、これにより、トマトの酸味により全体的に軽い食味となる課題を解決し、コクのあるソースを得ることができる。本発明のソースとしては、例えば、ミートソース(ボロネーゼソース)、ラグーソース、アマトリチャーナ、デミグラスソース等が挙げられる。これらのソースのなかでもミートソースは、本発明の効果が発現し易く好適である。
本発明のソースに用いるトマトとしては、フレッシュトマトの他、レトルト処理を施したトマト缶詰等の加工処理を施したものであってもよい。また、トマトは、各種ソースに合わせて、好みの形状、大きさを用いればよく、ホールトマト、ダイストマト、トマトピューレ、トマトペースト等を用いればよい。本発明のソースにおいてトマトの配合割合は特に規定していないが、トマトの配合割合は、10%以上が好適であり、15%以上がより好適である。トマトの配合割合が前記値より少なくなると、トマトの酸味で軽い食味となることによるコクの感じにくさが、問題となりにくいからである。
本発明の必須の配合原料であるココアとは、カカオ豆を砕いて皮などを取り除きロースターで焙焼した後、粉砕して得られるカカオマスを搾油してココアバターを分離し、搾油粕のココアケーキを粉砕して得られるものである。ココアの配合割合は、製品に対して0.01〜5%が好ましく、0.05〜3%がより好ましい。
本発明の必須の配合原料である乾燥ローストオニオンとは、次の方法により製したものをいう。まず、カットした玉葱をロースト(ソテー、炒める)する。ローストは、常法によって行えばよく、フライパンや鍋で炒めればよいが、焦げ付き防止のために、必要に応じて油脂を添加したりあるいはフッ素樹脂加工等焦げ付き防止処理したフライパン等を使用することができる。また、本発明においては、後の工程において真空加熱乾燥処理を行うので、開放系ではなく密閉可能な加熱釜、例えば攪拌羽根付き加熱釜(ニーダー)を用いるのが好適である。このようにして原料玉葱をローストする。ローストは、原料玉葱の質量に対して、20〜80%、好ましくは30〜70%の質量になるまで行う(つまり、水分を80〜20%、好ましくは70〜30%蒸発させるまでソテーを行う)。次いで、減圧〜真空条件下で加熱乾燥する。その際、できる限り真空で、しかも攪拌しながら加熱するのが好ましい。加熱釜として密閉系を使用する場合は、ひき続きそのまま真空条件下にすればよいが、開放系の加熱釜使用の場合には、ここで密閉系に変更する必要がある。加熱釜内を真空にすることで、ローストしながらオニオンの水分を蒸発(気化)させ、水分含量を効率的に減少させる。減圧〜真空加熱乾燥の処理条件としては、ゲージ圧を−0.05〜−0.10MPaとし、40〜100℃で30分〜5時間程度とする。上述した方法で製した乾燥ローストオニオンの水分量は、3〜10%となる。当該乾燥ローストオニオンには、必要に応じて、食塩・砂糖・ブドウ糖・香辛料等の調味料や澱粉、デキストリン等を適宜配合してもよい。また、当該乾燥ローストオニオンの配合割合は、製品に対して0.01〜5%が好ましく、0.03〜3%がより好ましい。
本発明の必須の配合原料である肉とは、牛、豚、鶏等、食用に供される食肉であればいずれでもよく、また、食肉をパンチェッタのように塩漬処理したり、ベーコンのように塩漬後に燻煙処理したものでもよい。肉の配合割合は、製品に対して10〜60%が好ましく、15〜50%がより好ましい。
前記ココア、乾燥ローストオニオンおよび肉のそれぞれの配合割合が前記範囲より少なくなると、コクを付与するのが難しくなり、一方、前記範囲より多くなると、風味のバランスが悪くなり、好ましくない傾向が見られる。
本発明を含め市販されているソースは、細菌的問題により加熱殺菌されるが、100℃を超える温度でレトルト処理を施すと、ソースのコクを感じにくくなる。本発明は、このようなレトルト処理を施してもコクを付与することができるので、レトルトソースに好適である。なお、レトルト処理とは、レトルトパウチや缶詰等の耐熱性容器にソースを充填密封し、当該ソースの中心部の品温が120℃で4分間相当の加熱処理を行う、またはこれと同等以上の効果を有する条件で加熱殺菌処理を施すことをいう。
また、市販されているソースのナトリウム量は、一般に製品100gに対し400mg以上800mg未満であるが、製品100gに対し800〜1200mgとナトリウム量が多い場合があり、ナトリウム量が多くなるとソースのコクが有しにくくなる。本発明は、製品100gに対しナトリウム量が800〜1200mgと多い場合でも、コクを付与することができるので、ナトリウム量が多いソースに好適である。なお、ナトリウム量は、一般的に行われている原子吸光法により、原子吸光光度計を用いて、測定したものである。
本発明のソースには、上述した原料の他に、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチ、レギュラーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉などの天然澱粉、またはそれらにアルファ化などの処理を施した加工澱粉や冷水膨潤性澱粉、架橋、エステル化、エーテル化、アルデヒド化、酸化などの処理を施した化工澱粉、加圧加熱等物理処理した湿熱処理澱粉、食塩、醤油、グルタミン酸ナトリウム、動植物等のエキス類、アミノ酸等の調味料類、鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅、セレン、マンガン、コバルト、ヨウ素等のミネラル類、あるいはこれらミネラル類を高度に含有した酵母、ワイン、砂糖、水飴、デキストリン、還元デキストリン、サイクロデキストリン、ソルビトール、トレハロース等の糖類、スクラロース、ステビア、マルチトール、アセスルファムカリウム等の甘味料、月桂樹、胡椒等の香辛料、酢酸ソーダ、グリシン、ポリリジン、卵白リゾチーム、プロタミン等の静菌剤、大豆油、菜種油等の油脂類、ホエー、カゼイン等の蛋白質類、キサンタンガム、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、アラビアガム、タマリンドガム、アルギン酸ソーダ、カラヤガム、トラガントガム、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、プルラン、ゼラチン、コラーゲン、食物繊維、ビタミン類、キレート剤、β―カロチン、クチナシ、アナトー色素などの着色成分、ポテト、玉ねぎ、人参、マッシュルーム、シメジ、エノキダケ、グリンピース、パセリ、ピーマン、セロリ、カボチャ、豆類、コーン、ニンニク、エビ、タコ、イカ、ツナ、鮭、貝類、タラコ、数の子、カニ等の具材等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
本発明のソースの製造方法は、本発明の必須原料であるトマト、ココア、乾燥ローストオニオン、肉、その他の具材、調味料、ソース類、清水等を、それぞれ所定量ずつ、加熱撹拌釜に投入し、常法に従い加熱調理および加熱殺菌を行うとよい。また、レトルト処理を施す場合には、前述したように、レトルトパウチや缶詰等の耐熱性容器に充填密封してから、当該ソースの中心部の品温が120℃で4分以上相当になるように留意して、加熱殺菌の温度と時間を適宜調節すればよい。
以下、本発明のソースについて、実施例等に基づき具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
[実施例1]
下記配合割合のミートソースを製した。つまり、まず、加熱撹拌釜にラードと玉葱を下記配合割合投入し、玉葱の質量に対して80%になるまでローストする。そして、下記配合割合に示すラードと玉葱以外の原料を加熱撹拌釜に投入し、加熱撹拌した。ソース全体の品温が80℃に達温後、加熱撹拌を停止し、レトルトパウチに80gずつ充填密封し、レトルト殺菌機で116℃30分間のレトルト処理を行い、本発明のソースであるミートソース(製品100gに対しナトリウム量905mg)を製した。
<ミートソースの配合割合>
牛肉(挽肉) 25%
トマトピューレ 20%
玉葱 10%
食塩 2%
ラード 1%
L−グルタミン酸ナトリウム 0.8%
ココア 0.3%
乾燥ローストオニオン 0.05%
ニンニク 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――
合計 100%
[比較例1]
実施例1のミートソースで使用したココアを除いた以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[比較例2]
実施例1のミートソースで使用した乾燥ローストオニオンを除いた以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[比較例3]
実施例1のミートソースで使用したココアと乾燥ローストオニオンを除いた以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[比較例4]
実施例1のミートソースで使用した牛肉(挽肉)に換えてトマトピューレを用いた以外は、実施例1と同様の製造方法により、トマトソースを製した。
[試験例1]
実施例1、および比較例1〜比較例4で得られたミートソースを常温で6日間保管後、レトルトパウチごと湯煎により温めて、乾麺100gを茹でたパスタと和えたものを風味テストした。結果を表1に示す。
Figure 0004800268
表1より、本発明のココア、乾燥ローストオニオンおよび肉を配合した実施例1のミートソースは、ココアを配合しなかった比較例1、乾燥ローストオニオンを配合しなかった比較例2および、ココアと乾燥ローストオニオンを配合しなかった比較例3のミートソースならびに、肉を配合しなかった比較例4のトマトソースと比較し、コクを感じることが理解される。
[実施例2]
実施例1のミートソースで使用した乾燥ローストオニオンの配合割合を0.01%に変更した以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[実施例3]
実施例1のミートソースで使用した乾燥ローストオニオンの配合割合を0.03%に変更した以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[実施例4]
実施例1のミートソースで使用した乾燥ローストオニオンの配合割合を3%に変更した以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[実施例5]
実施例1のミートソースで使用した乾燥ローストオニオンの配合割合を5%に変更した以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[比較例5]
実施例1のミートソースで使用した乾燥ローストオニオンを配合するのをやめて、玉葱の配合割合を15%に変更した以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[比較例6]
実施例1のミートソースで使用した乾燥ローストオニオンをオニオンパウダーに変更した以外は、実施例1に準じてミートソースを製した。
[試験例2]
実施例1〜5、比較例2、比較例5および比較例6で得られたミートソースを常温で6日間保管後、レトルトパウチごと湯煎により温めて、乾麺100gを茹でたパスタと和えたものを風味テストした。結果を表2に示す。
Figure 0004800268
表2より、乾燥ローストオニオンを配合した実施例1〜5のミートソースは、乾燥ローストオニオンの換わりにローストした玉葱の配合量を増やした比較例5、あるいは乾燥ローストオニオンの換わりに玉葱をローストせずに、減圧〜真空条件下で加熱乾燥したオニオンパウダーを配合した比較例6のミートソースと比較し、コクを感じる。特に、乾燥ローストオニオンの配合割合が0.03〜3%である実施例1、実施例3および実施例4は、風味のバランスが悪くならずに、とてもコクを感じることが理解される。
(参考試験)トマトの配合割合
比較例3の配合割合を基本にして、トマトピューレの配合割合を表3に示すとおりに換えた以外は、比較例3に準じてミートソースを製した。得られたミートソースを常温で6日間保管後、レトルトパウチごと湯煎により温めて、乾麺100gを茹でたパスタと和えたものを風味テストした。結果を表3に示す。
Figure 0004800268
表3より、製品に対し、トマトを10%配合すると、トマトの酸味によりやや軽い食味となるためコクを感じにくく、15%以上配合すると、トマトの酸味により軽い食味となるためコクを感じないことが理解される。また、表2より、トマトを20%配合しても、ココア、乾燥ローストオニオンおよび肉を配合した実施例1〜5のミートソースは、コクを感じることが理解される。

Claims (2)

  1. トマトを配合したミートソースにおいて、製品に対しココアを0.05〜3%、乾燥ローストオニオンを0.03〜3%および肉を15〜50%配合していることを特徴とするミートソース。
  2. 前記ミートソースがレトルト処理されてなる請求項1に記載のミートソース。
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