JP2019522021A - チタンカテコール錯体の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エネルギー貯蔵用途での活物質としてのチタンカテコール錯体の活用に寄与するように改良したチタンカテコール錯体を合成する。【解決手段】カテコール化合物と有機溶媒とを含むカテコール溶液を形成し、前記カテコール溶液にチタン試薬を接触させて、反応混合物を形成し、前記チタン試薬と前記カテコール化合物とを反応させて、中間チタンカテコール錯体と副生成物種とを形成し、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離し、前記中間チタンカテコール錯体に、塩基を含むアルカリ水溶液を混合する、ことを含む方法であって、前記塩基は、前記中間チタンカテコール錯体を、水相に少なくとも部分的に溶存する塩形態のチタンカテコール錯体に変換するものである。【選択図】図1

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年7月26日に提出された米国特許出願15/220,322号の一部継続出願であり、そのすべての内容は参照することにより本出願に組み込まれる。また、本出願は、米国特許法第119条に基づき、いずれも2016年12月30日に出願した米国特許仮出願第62/441,146号、米国特許仮出願第62/441,149号、米国特許仮出願第62/441,150号、米国特許仮出願第62/441,151号、米国特許仮出願第62/441,153号、米国特許仮出願第62/441,154号の優先権の利益を主張するものであり、そのすべての内容は参照することにより本出願に組み込まれる。
(連邦政府資金による研究開発に関する記載)
該当なし。
本発明は、一般に、エネルギー貯蔵に関し、より具体的には、エネルギー貯蔵システムに使用するための活物質としてチタンカテコール錯体を調製するための方法に関する。
電池やスーパーキャパシタ等の電気化学エネルギー貯蔵システムに関しては、大規模なエネルギー貯蔵用途で幅広い提案が行われている。この目的のため、これまでフロー電池等の様々な電池設計が検討されてきた。フロー電池は、電力密度のパラメータとエネルギー密度のパラメータとを互いに切り離すことができるため、他の種類の電気化学エネルギー貯蔵システムと比べて特に大規模用途で有利である。
一般に、フロー電池とは、負の活物質と正の活物質とをそれぞれ対応する電解液中に含み、これらの電解液が、負極と正極とを有する電気化学セル内において膜、即ちセパレータの両側をそれぞれ別々に流れるものである。フロー電池は、これら2つのハーフセル内部で起こる活物質の電気化学反応によって充放電される。本明細書において、「活物質(active material)」、「電気活物質(electroactive material)」、「レドックス活物質(redox-active material)」という用語又はこれらの変化形は、フロー電池又はそれに類する電気化学エネルギー貯蔵システムの動作中(即ち、充放電中)に酸化状態が変化する物質を指す用語として同義的に用いられる。フロー電池は、大規模なエネルギー貯蔵用途に有望ではあるが、いくつかある要因の中でも特に、エネルギー貯蔵性能(例えば、往復(round trip)エネルギー効率)の不足や短いサイクル寿命といった問題に悩まされることが多かった。これまでの多大な研究努力にもかかわらず、商業的に実現可能なフロー電池技術は未だ開発されていない。
活物質として、可逆的な酸化還元サイクルが可能な有機化合物を使用することができる場合がある。しかしながら、有機活物質は、特に水系電解液中での溶解度値が低く、且つ導電性も低いため、得られるエネルギー密度が比較的限られたものとなってしまうことが多い。従って、低い溶解度値を補うために、有機活物質は、溶解度の上昇が見込まれる非水系電解液中で使用されることが多い。そして、フロー電池において有機活物質を使用する場合には、高い合成コストや環境問題といった問題を伴う場合がある。
これに対し、金属系の活物質は、フロー電池や他の電気化学エネルギー貯蔵システムでの使用に望ましい場合が多い。配位結合を含まない金属イオン(例えば、レドックス活性金属の溶存塩)を活物質として用いることもできるが、この目的では、配位錯体を用いる方が望ましい場合が多い。本明細書において、「配位錯体(coordination complex)」、「配位化合物(coordination compound)」、「金属−配位子錯体(metal-ligand complex)」、或いは単に「錯体(complex)」という用語は、金属中心とドナー配位子間の共有結合を少なくとも1つ有する化合物を指す用語として同義的に用いられる。電解液中において、金属中心は、酸化形態と還元形態の間を循環することができる。金属中心の酸化形態と還元形態はそれぞれ完全放電状態と完全充電状態のいずれか一方に相当し、該配位錯体がどちらのハーフセルに含まれるかによってそのいずれであるかが決まる。また、場合によっては、配位子を構成する1以上の分子の酸化又は還元によって、さらになる電子移動が起こる場合がある。
チタン錯体は、良好なハーフセル電位(例えば、−0.3V未満)と高い電流密度値(例えば、100mA/cm超)での85%超の電流効率とを実現することができる金属錯体であるため、フロー電池や他の電気化学エネルギー貯蔵システムでの使用に特に望ましい活物質であり得る。中でもチタンのカテコール錯体は、比較的安定な錯体であり、かつ水系媒体中での溶解度が高いため、種々のチタンのカテコール錯体がこの点に関して特に望ましい活物質である。チタンのカテコール錯体(本明細書ではチタンカテコラート錯体(titanium catecholate complex)やチタンカテコール錯体(titanium catechol complex)とも称する場合がある)の合成方法としては、様々な方法が現在利用可能ではあるが、そのいずれも、今のところ、商業的規模でのエネルギー貯蔵用途への応用を可能にするチタンカテコール錯体の大量生産を可能にするものではない。さらに、従来の合成法では、チタンカテコール錯体の合成と同時に異物塩が生成されてしまうが、これが、以下でさらに論じるように、特に問題となり得る。
通常、チタンカテコール錯体は塩の形態で合成される。この塩において、錯体自身が負の形式電荷を帯びているため、電荷平衡を維持するために1以上の正電荷を帯びた対イオンが含まれている。このときチタンカテコール錯体と会合していない異物塩が同時に生成されてしまうと、多くの場合、電解液、特に水系電解液、を生成する際に、共通イオン効果によって錯体の溶解度が不本意にも低下してしまう。チタンカテコール錯体を所望の塩形態で生成する場合に、対イオンを過剰に投入すると、異物塩の同時生成という望ましくない事態を招く可能性がある。多くの場合、過剰な対イオンがチタンカテコール錯体の合成中に形成された副生成物と反応して、異物塩を生成してしまうためである。同様に、対イオンの投入が不十分だと、所望の塩形態の形成が不完全なものとなってしまう可能性がある。これらの状況はいずれも、高いエネルギー密度等の望ましいパラメータを有することを意図した電解液を形成するのに最適な状況とは言えない。
以上のことを考慮すれば、エネルギー貯蔵用途での活物質としてのチタンカテコール錯体の活用に寄与するように改良したチタンカテコール錯体の合成方法は、当技術分野において極めて望ましいと考えられる。本発明は、上記のニーズを満たすと共に関連する利点も提供するものである。
種々の実施形態においては、チタンを含有する配位錯体の合成方法が本明細書に記載されている。本方法は、カテコール化合物と有機溶媒とを含有するカテコール溶液を形成し、カテコール溶液にチタン試薬を接触させて、反応混合物を形成し、チタン試薬とカテコール化合物とを反応させて、中間チタンカテコール錯体と副生成物種とを形成し、副生成物種を中間チタンカテコール錯体から分離し、中間チタンカテコール錯体に、塩基を含有するアルカリ水溶液を混合する、ことを含むもので、塩基は、中間チタンカテコール錯体を、水相に少なくとも部分的に溶存する塩形態のチタンカテコール錯体に変換するものである。
他の種々の実施形態では、チタンを含有する配位錯体の合成方法は、カテコール化合物と有機溶媒とを含有するカテコール溶液を形成し、チタンアルコキシドをカテコール溶液と接触させて、反応混合物を形成し、チタンアルコキシドとカテコール化合物とを反応させて、中間チタンカテコール錯体とアルコールとを形成し、中間チタンカテコール錯体をアルコールから分離せずに、中間チタンカテコール錯体に、塩基を含有するアルカリ水溶液を混合する、ことを含むもので、塩基は、中間チタンカテコール錯体を、アルコールを含有する水相に少なくとも部分的に溶存する塩形態のチタンカテコール錯体に変換するものである。さらなる実施形態では、本方法は、水相からアルコールの少なくとも一部を除去することをさらに含むことができる。
上述の記載は、以下の詳細な説明をより良く理解できるように、本発明の特徴をやや大まかに概説したものである。以下に、本発明のさらなる特徴及び利点を説明する。上記及び上記以外の利点や特徴は、以下の説明からさらに明らかになるであろう。
本発明及びその利点のより完全な理解のために、以下に、本発明の具体的な実施形態を示す添付の図面と併せて読まれるべき説明を記す。
例示的なフロー電池の模式図である。 アセトンを基準物質とする、DO中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的なH−NMRスペクトルを示す図である。 アセトンを基準物質とする、DO中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的なH−NMRスペクトルを示す図である。 O中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的な13C−NMRスペクトルを示す図である。 O中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的な13C−NMRスペクトルを示す図である。 水中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的なUV−VISスペクトルを示す図である。
本発明は、部分的にはフロー電池に関する。また本発明は、部分的には、塩形態、特にアルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体を含有すると共に、同錯体の合成中に形成される異物塩等の副生成物を全く或いは実質的に全く含有しない組成物に関する。さらに、本発明は、部分的には、チタンカテコール錯体の合成中に異物塩等の副生成物を全く或いは実質的に全く形成することなく、塩形態、特にアルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体を合成する方法に関する。
本発明は、添付の図面及び例に関連付けて以下の記載を参照することによって、さらに容易に理解することができるであろう。添付の図面及び例はいずれも本発明の一部をなすものである。本発明が本明細書に記載及び/又は図示する具体的な製品、方法、条件、又はパラメータには限定されないことを理解されたい。本明細書で用いる用語は、単に一例としての特定の実施形態を説明するためのものであって、特に明記しない限り、限定を意図するものではない。同様に、特に明記しない限り、本明細書内において、ある組成物に対する説明はいずれも、該組成物の固体、液体の双方を対象とすることを意図しており、さらに該組成物を含有する溶液及び電解液、及びそのような溶液及び電解液を含む電気化学セル、フロー電池、及びその他のエネルギー貯蔵システムをも対象とすることが意図されている。さらに、本発明において、電気化学セル、フロー電池、又は他のエネルギー貯蔵システムについて説明していると考えられる場合には、電気化学セル、フロー電池、又は他のエネルギー貯蔵システムを動作させる方法についても暗に説明しているものと認識されたい。
また、本明細書では、分かりやすくするため、本発明のいくつかの特徴を別個の実施形態と関連させて記載しているが、これらの特徴を、相互に組み合わせて単一の実施形態において備えることができることが認められよう。即ち、明らかに両立できないか又は明示的に排除される場合を除いて、個々の実施形態は、1以上の他のいずれかの実施形態と組み合わせることができると考えられ、そのような組み合わせは全く別の実施形態であると見なされる。逆に、簡潔にするため、本発明の種々の特徴を単一の実施形態に関連させて説明する場合があるが、これらの特徴を、別々に又は任意のより小さい組み合わせで備えることも可能である。さらにまた、ある特定の実施形態を一連のステップの一部として又はより包括的な構造の一部として記載する場合があるが、各ステップ又は各下位構造はそれ自体を独立した実施形態と見なすことも可能である。
特に明記しない限り、要素をリストアップしている場合には、リストアップした各要素及び同リスト内の各要素のすべての組み合わせをそれぞれ別個の実施形態として解釈すべきであると理解されたい。例えば、「A、B又はC」と示される実施形態のリストは、「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B又はC」という実施形態を含むものとして解釈される。
本発明において、文脈上明らかに他の意味を示す場合を除き、単数の冠詞「a(1の)」、「an(1の)」及び「the(その/前記)」は、対応する複数に対する言及も包含するものであり、特定の数値に対する言及は、少なくともその特定の値を包含するものである。このため、例えば「a material(1の物質)」は、そのような物質及びその均等物のうち少なくとも1つを指す。
一般に、「約(about)」という用語を使用する場合、本発明の主題が達成しようとする所望の特性に応じて変動する可能性のある近似値を示し、機能に基づいて状況に応じて解釈されるべきものである。従って、当業者であれば、個々の状況に応じてある程度の変動範囲を汲み取ることができるであろう。「約」という用語が許容する変動を規定する代表的な技法として、特定の値を表す際に有効桁数を使用することが考えられる。或いは、「約」という用語が許容する変動範囲を、一連の値に段階を設けることによって規定することもできる。さらに、本発明におけるすべての範囲は上下限値を含みかつ連結可能であり、ある範囲で規定される値に対して言及する場合、その言及は範囲内のすべての個々の値を包含するものである。
上述したように、高い効率値を維持しながら大規模に動作することができるエネルギー貯蔵システムが非常に望ましい場合がある。配位錯体を活物質として用いるフロー電池は、この点で大きな関心を集めてきた。以下では、例示的なフロー電池、並びにそれらの用途及び動作特性を、例示的に説明する。チタン配位錯体、特に少なくとも1のカテコラート配位子を含有するチタン配位錯体は、いくつかある要因の中でも特に、その好ましいハーフセル電位と高い電流効率値のために、特に望ましい場合がある。現在、当技術分野では、チタンカテコール錯体の合成技術として利用可能な技術が各種存在するが、そのいずれも、エネルギー貯蔵用途での商用利用に必要な、活物質の高純度・(数ポンドから数トン規模の)超大量生産に適したものとは考えられない。この種の活物質を商業的に見合う量で供給するに当たり、現時点で問題となり得る要因として、原材料費、人件費、低収率、純度不足を挙げることができる。この点に関しては、チタンとは異なる金属中心、カテコラート配位子とは異なる配位子、或いはその両方を含有する他の金属錯体も、同様の問題を有している。
本明細書において、「カテコール(catechol)」という用語は、隣接する炭素原子上にヒドロキシル基(即ち、1,2−ヒドロキシル基)を有する芳香環を持つ化合物を指す。また任意選択的に、1,2−ヒドロキシル基に加えてさらに置換基を有していてもよい。本明細書において、「カテコラート(catecholate)」という用語は、金属−配位子結合で金属中心、特にチタン金属中心、に結合した置換カテコール化合物又は非置換カテコール化合物を指す。本明細書において、「非置換カテコラート(unsubstituted catecholate)」という用語は、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)が金属−配位子結合で金属中心に結合している特定の場合を指す。カテコラート配位子に任意選択的置換を施すことによって、例えば、同配位子から生成される金属錯体の溶解度特性及びハーフセル電位の少なくとも一方を変化させる等の多くの目的を果すことができる。例えば、モノスルホン化カテコラート配位子は、非置換カテコラート配位子のみが存在する場合に得られるのと少なくとも同等の望ましい電気化学的特性を維持しながら、チタン配位錯体の溶解度を向上させることができる。本明細書において、「モノスルホン化(monosulfonated)」という用語は、1のスルホン酸基又はその任意の塩が芳香環上に存在する状態を指す。例えば、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、没食子酸等の追加のヒドロキシル基を有するカテコラート配位子もこの点で同様に有利であり得る。また、任意選択的に、上述のようなカテコラートがさらに置換されていてもよい。以下に、さらなる置換基を有する他の有利なカテコラート配位子について説明する。なお、本発明での使用に適したカテコール及びカテコラートには、本明細書において必ずしも具体的に示されていない位置異性体も含まれることを理解されたい。さらに、本明細書中で特に指定しない限り、いくつかの実施形態では、一置換のカテコールやカテコラートを、多置換、特に二置換又は三置換のカテコールやカテコラートとすることもできる。
本願の発明者は、容易に入手可能で比較的安価な出発物質から開始可能なチタンカテコール錯体の合成方法を発見した。即ち、本明細書に記載の合成は、一般的な有機溶媒を用いて、例えば、四塩化チタン等の四ハロゲン化チタン、オキシハロゲン化チタン、オキシ硫酸チタン、チタンアルコキシドのような容易に入手可能なチタン試薬から行われる。これらのチタン試薬は、アルカリ金属塩形態等の適切な塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水系電解液を形成する過程で副生成物種を生成するものの、これらの副生成物種は、各種手段によって除去可能なものである。そして、この錯体の合成法は、グラム規模の実験工程から数トン規模の生産工程まで、広範囲の規模での実施が可能である。従って、本明細書に記載の合成法は、1以上の副生成物種を生成するがそれらは除去可能なものであるため、良好な純度で高濃度に水相に存在する状態でチタンカテコール錯体を得ることができる。このような状態は、追加の処理を殆ど又は全く行うことなくフロー電池や他の電気化学エネルギー貯蔵システムで使用するのに適したものである。特に、本明細書に記載の合成法は、所望の塩形態のチタンカテコール錯体と会合していないハロゲン化アルカリ金属塩のような異物塩を有意量では形成することなく、チタンカテコール錯体を水相で生成することを可能にする。本明細書に記載の合成法では、チタンカテコール錯体の一次形成時に生成される副生成物種を慎重に除去することにより、異物塩の形成を制限することができる。副生成物種を除去しなければ、副生成物種が異物塩を生成する反応を起こし、添加すべき塩基の化学量論量の決定が困難となる場合がある。
より具体的には、本明細書に記載の合成法では、有機溶媒中でチタン試薬をカテコール化合物と反応させることによって、中間チタンカテコール錯体を一次形成することができる。中間チタンカテコール錯体は、多くの有機溶媒中で反応混合物から沈殿するため、これにより、出発物質の完全変換に向けた反応を促進することができる。不溶性の中間段階で反応が止まるため、このタイミングで反応混合物から副生成物種を除去してから、水相で中間チタンカテコール錯体を所望の塩形態に変換することができる。例えば、ハロゲン化物を含有するチタン試薬を使用した場合、反応の副生成物としてHCl等のハロゲン化水素ガスが形成される場合があるが、そのようなハロゲン化水素ガスをほぼ完全に追い出してから、塩形態のチタンカテコール錯体を少なくとも部分的に溶存した形で含有する水相を形成することができる。HCl等のハロゲン化水素のような副生成物種が存在したままの状態では、そのような副生成物種が、チタンカテコール錯体をその塩形態に変換する際に併用される塩基と反応して、異物塩を生成してしまう場合がある。そして、塩基と副生成物種との反応によって生成される異物塩は悪影響を及ぼすことが多い。例えば、共通イオン効果によって、異物塩が塩形態のチタンカテコール錯体の溶解度を低下させてしまう可能性がある。さらに、そのような副生成物種と塩基との反応によって、中間チタンカテコール錯体が完全に変換されてその所望の塩形態になることが妨げられる可能性もある。ハロゲン化水素以外の副生成物種も、同様の問題やさらなる課題の原因となる可能性があり、そのような副生成物種もまた、中間チタンカテコール錯体の段階で除去することが望ましい場合がある。なお、場合によっては、中間チタンカテコール錯体の単離を行わずに、中間チタンカテコール錯体から副生成物種を除去することもできる。しかしながら、他の場合には、副生成物種の除去は、中間チタンカテコール錯体を単離し、それにより副生成物種を除去し、次いで塩形態のチタンカテコール錯体を形成することによって、より容易に行うことができる。
いくつかの実施形態では、中間チタンカテコール錯体を、アルカリ金属塩基を含有するアルカリ水溶液と反応させることにより、アルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体に変換することができる。本明細書において、「アルカリ金属(alkali metal)」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム等の周期表I族の金属を指す。ナトリウム塩、カリウム塩、又はナトリウム・カリウム混合塩の形態は、電解液に含有させるのに特に望ましい塩形態である。アルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体は、フロー電池や他の電気化学システムのコンポーネントと共に使用するのに有利であるが、他の塩基を使用して異なる塩形態を合成してもよいことを認識されたい。例えば、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属塩基を使用して、アルカリ土類金属塩形態のチタンカテコール錯体を合成することもできる。アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウム、混合アルキル/アリール四置換アンモニウム、テトラアリールホスホニウム、イミニウム、及びニトロニウムの塩形態のような他の塩形態も、同様に調製、使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、混合塩の形態も可能である場合がある。そのような混合塩形態は、水相溶解度が向上されていることが望ましい。
中間チタンカテコール錯体とは異なり、アルカリ金属塩形態等の塩形態のチタンカテコール錯体は、中間チタンカテコール錯体へのアルカリ水溶液の添加によって得られる水相に容易に溶解する。(チタン試薬の初期モル量に基づいて)中間チタンカテコール錯体に添加する塩基の化学量論量を慎重に調整することによって、中間チタンカテコール錯体を所望の塩形態に変換した結果得られる水相のpHを所望の値とすることができる。さらに、本明細書に記載の合成法によって、副生成物種、特に塩基の添加によって異物塩を形成する可能性のある副生成物種を、アルカリ水溶液を添加する前に反応混合物から実質的に除去することができるため、水相中の基本的に全ての塩基を、塩形態のチタンカテコール錯体とは関係のない異物塩(特に、アルカリ金属塩基の場合であれば、ハロゲン化アルカリ金属塩等のアルカリ金属塩)を形成する反応ではなく、中間チタンカテコール錯体をその塩形態に変換する反応に供することができる。ハロゲン化アルカリ金属塩等の異物塩が水相中で形成されれば、異物金属塩の存在による共通イオン効果のために塩形態のチタンカテコール錯体の溶解度が低下してしまう場合がある。従って、そのような異物塩が水相中で形成されるのを防ぐことは、塩形態のチタンカテコール錯体の高い溶解度を維持するために望ましい場合がある。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成される水相中に存在するハロゲン化アルカリ金属塩等の異物塩のレベルを、塩形態のチタンカテコール錯体に対して約0.01当量以下とすることができる。
さらなる利点として、水不混和性の有機溶媒を利用すれば、本発明の合成により得られた塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相を、各種相分配技術で容易に単離することができる。不混和性の溶媒を使用する場合には、必要な後処理(workup)が最小限に抑えられるため、生産工程において、比較的短時間で大量の水相生成物を産出することができる。従って、本明細書に記載の合成法は、所望のレベルまで規模拡大した生産工程に、容易に適合させることができる。さらに、本明細書に記載の合成法は、バッチ工程ではなく連続的な合成工程への拡張が容易である。なお、上述の理由から、水不混和性の有機溶媒が有利であるが、本明細書においてさらに説明するように、場合によっては、水混和性の有機溶媒も適切且つ有利である。例えば、いくつかの例では、チタン試薬としてチタンアルコキシドを利用することができ、その場合には、副生成物としてアルコールが生成されて、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する有機溶媒及び/又は水相中に含まれる可能性がある。
本明細書に記載の合成法やそのさらなる応用用途においては、チタンカテコール錯体が有利であるが、他の金属カテコール錯体もこの点で適している場合がある。例えば、チタンの代わりにAl、Ca、Co、Cr、Sr、Cu、Fe、Hf、Mg、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sn、Zn、Zr、V、W、U等の代替金属を含有する金属カテコール錯体も、同様の手順で合成して、フロー電池用の活物質として利用することができる。ランタニド及びアクチニドもこの点で適している場合がある。チタンと同様、ZrやHfの配位化合物は、フロー電池の活物質として組み込むのに非常に望ましい性質を有している場合がある。従って、本明細書に記載のチタンに関する発明は、当業者であれば、上述の代替金属にまで拡げることが可能であり、特に限定されるものではない。
さらに、本明細書の記載の発明は、カテコラート配位子のみを含有する金属配位錯体、1以上のカテコラート配位子と他の非カテコラート配位子との組み合わせを含有する金属配位錯体、非カテコラート配位子のみを含有する金属配位錯体といった、チタン配位錯体等の金属配位錯体にまで拡げることができる。適切な非カテコラート配位子としては、任意の単座配位子、二座配位子、三座配位子を挙げることができる。以下に、適切な非カテコラート配位子の例をいくつか挙げる。
種々の実施形態においては、本発明は、カテコール化合物と有機溶媒とを含有するカテコール溶液を形成し、カテコール溶液にチタン試薬を接触させて反応混合物を形成し、チタン試薬とカテコール化合物とを反応させて、中間チタンカテコール錯体と副生成物種とを形成し、副生成物種を中間チタンカテコール錯体から分離し、中間チタンカテコール錯体に、塩基を含有するアルカリ水溶液を混合する、ことを含む方法に関する。ここで、塩基は、中間チタンカテコール錯体を、水相に少なくとも部分的に溶存する塩形態のチタンカテコール錯体に変換する。
さらなる実施形態において、本方法は、水相と有機相とを互いに分離することを含んでよい。本明細書において説明するように、水相は、塩形態のチタンカテコール錯体の生成前又は生成中に形成される副生成物、例えばハロゲン化金属等の異物塩を実質的に含まないものである。例えば、水相は、チタン試薬由来のアニオンと、塩形態のチタンカテコール錯体の生成に用いられる塩基由来のカチオンとの反応によって形成される異物塩を実質的に含まない。チタン試薬由来の反応性副生成物種は、中間チタンカテコール錯体の単離を行うことなく除去することもできるが、場合によっては、副生成物種の除去のために中間チタンカテコール錯体を単離することもできる。水相の分離に適した技術としては、各種溶媒分配技術を挙げることができる。なお、溶媒分配技術を用いて水相の分離を行う場合、実質的に水不混和性の有機溶媒を使用することが前提となる。中間チタンカテコール錯体の単離を行う実施形態においては、中間チタンカテコール錯体の形成のために使用した有機相からの水相の分離を行うことなく、水相を直接形成することができる。
本明細書に記載の種々の実施形態での使用に適したカテコール化合物は、特に限定されるものではない。いくつかの実施形態では、カテコール化合物を、o−カテコール(即ち、非置換1,2−ジヒドロキシベンゼン)そのものとすることができる。いくつかの又は他の実施形態では、カテコール化合物は、少なくとも1の置換カテコール化合物を含むことができ。また、任意選択的に、この置換カテコール化合物は、非置換カテコール化合物との混合物として存在することもできる。従って、本明細書に記載の中間チタンカテコール錯体及び塩形態のチタンカテコール錯体は、非置換カテコラート配位子、置換カテコラート配位子、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。さらなる実施形態では、追加の配位子としての非カテコラート配位子が、置換カテコラート配位子又は非置換カテコラート配位子との組み合わせで存在することもできる。上述したように、本発明の代替的な実施形態においては、非カテコラート配位子や他の金属を使用することができる。特定の実施形態では、塩形態のチタンカテコール錯体の形成に使用するのに特に好ましい置換カテコール化合物として、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸を挙げることができる。ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び没食子酸も、特に望ましい置換カテコール化合物である。いくつかの実施形態では、上記及び上記に類する他のカテコール化合物をさらに置換することもできる。
本明細書に記載の実施形態での使用に適し得る置換カテコール化合物の他の例としては、得られる錯体の対水溶解度を高める可溶化基を有する置換カテコール化合物を挙げることができる。限定を意図するものではないが、本明細書に記載の実施形態での使用に適し得る置換カテコール化合物の例として、中性の形態又は塩の形態で以下の構造を有するものを挙げることができる。

Zは、AA1、AA2、AA3、CHO及びスルホン酸からなる群から選択されるヘテロ原子官能基である。変数nは1〜4の範囲の整数であり、よって1つ以上のZが芳香環の空いている位置で置換カテコラート化合物に結合する。2つ以上のZが存在する場合、各Zは同一であってもよく、又は異なっていてもよい。Aは、−(CH−又は−(CHOR)(CH−であり、RA1は、−OR又は−(OCHCHO)である。aは0〜約6の範囲の整数であるが、bは1〜約10の範囲の整数である。Aは、−(CH−又は−CH(OR)(CH−であり、RA2は、−NR、炭素結合アミノ酸、又は−C(=O)XRである。Xは、−O−又は−NR−であり、cは0〜約6の範囲の整数であり、dは0〜約4の範囲の整数である。Aは、−O−又は−NR−であり、RA3は、−(CHROR、−(CHRNR、−(CHRC(=O)XR、又は−C(=O)(CHRである。eは1〜約6の範囲の整数であるが、fは0〜約6の範囲の整数である。Rは、H、C−Cアルキル、ヘテロ原子置換C−Cアルキル、又はC−Cカルボキシアルキルである。Rは、H、メチル、エチル、エーテル結合、若しくはエステル結合により結合したC−Cポリオール、又はC−Cカルボキシアルキルである。R、R、R、及びRは、H、C−Cアルキル、又はヘテロ原子置換C−Cアルキルからなる群から独立に選択される。Rは、H、C−Cアルキル、ヘテロ原子置換C−Cアルキル、エステル結合により結合したC−Cポリオール、エステル結合により結合したヒドロキシ酸、エステル結合により結合したポリグリコール酸、エステル結合、若しくはアミド結合により結合したアミノアルコール、エステル結合、若しくはアミド結合により結合したアミノ酸、又は−(CHCHO)である。RはH又はOHである。Rは、H、C−Cアルキル、ヘテロ原子置換C−Cアルキル、エーテル結合、若しくはエステル結合により結合したC−Cポリオール、エーテル結合、若しくはエステル結合により結合したヒドロキシ酸、エーテル結合、若しくはエステル結合により結合したポリグリコール酸、エーテル結合、エステル結合、若しくはアミド結合により結合したアミノアルコール、エーテル結合、エステル結合、若しくはアミド結合により結合したアミノ酸、炭素結合アミノ酸、又は−(OCHCHO)である。いくつかの実施形態において、上記構造の置換カテコール化合物は、他の同様の構造に共有結合することができ、上述いた通り、それらはいずれも、独立して(Z)で置換することができる。これらの構造は、単一架橋基又は二重架橋基で互いに結合することができる。
いかなる理論やメカニズムにも拘束されるものではないが、本発明の実施形態で生成される中間チタンカテコール錯体は、以下の化学式を有すると考えられる。
Ti(L)
式中、Lは、非置換カテコラート配位子又は置換カテコラート配位子、二座の非カテコラート配位子、又はそれらの任意の組み合わせを表しており、ここで、少なくとも1つのLが、置換カテコラート配位子又は非置換カテコラート配位子である。即ち、中間チタンカテコール錯体は、チタン系錯体アニオンの「プロトン化した(protonated)」イオン対であると考えられる。さらに、単座の非カテコラート配位子が存在する場合には、これに対応する追加のLが存在(即ち、>3)し、チタン中心に対してTi(IV)の最も一般的な配位数である6配位とすることができる。
上述した通り、中間チタンカテコール錯体は、アルカリ金属塩基等の塩基と反応させることにより塩形態のチタンカテコール錯体に変換することができる。やはりいかなる理論やメカニズムにも拘束されるものではないが、そのような塩形態のチタンカテコール錯体は、以下の化学式を有すると考えられる。
1−6Ti(L)
式中、Dは金属カチオン、アンモニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、又はホスホニウムカチオンであり、Lは上記で規定した通りである。Dのモル当量は、Dのカチオンが一価であるか二価であるか等、Lがイオン性官能基を含むか否かに応じて、1〜6の範囲とすることができる。例えば、Dがアルカリ金属イオン等の一価のカチオンであり、Lが非荷電カテコラート配位子を表す場合、2モル当量のアルカリ金属イオンが存在すれば、電荷平衡を維持することができる(即ち、塩形態のチタンカテコール錯体がDTi(L)の化学式を有する)。アルカリ水溶液がアルカリ土類金属塩基等、アルカリ金属塩基とは異なる塩基を含む場合、Dは、(例えば、1のアルカリ土類金属イオン、2以上のアルカリ土類金属イオンの混合物、ホスホニウムイオン及び/又はアンモニウムイオン等の)他の任意のカチオンを含むことができる。また、任意選択的に、このような他のカチオンを1以上のアルカリ金属イオンとの組み合わせで含んでもよい。いずれの場合も、Dのモル当量が、電荷平衡の維持に必要な量を示している。いくつかの実施形態では、1種類の置換カテコラート配位子又は非置換カテコラート配位子が錯体中に存在し得る。他の実施形態では、2種類以上の非置換カテコラート配位子及び/又は置換カテコラート配位子の混合物が存在し得る。さらに他の実施形態では、非カテコラート配位子が存在してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、塩形態のチタンカテコール錯体は、以下の化学式を有することができる。
1−6Ti(L)(L)(L
式中、Dは上記で規定した通りであり、L〜Lは配位子である。ただし、L〜Lのうち少なくとも1つはカテコラート配位子又は置換カテコラート配位子である。いくつかの具体的な実施形態では、2つのカテコラート配位子が存在してもよく、他の具体的な実施形態では、3つのカテコラート配位子が存在してもよい。L〜Lのバランスを構成し得る代替的な配位子としては、以下に記載する特定の例示的な配位子を挙げることができるが、これらに限定されない。少なくとも1の単座の非カテコラート配位子が存在する場合、ちょうど3つの配位子(即ち、L,L,L)を超える追加の配位子が存在し得る。その場合、最大で、配位圏内全てで配位するのに必要な量まで存在することができる。
より具体的な実施形態においては、本発明の塩形態のチタンカテコール錯体は、以下の化学式を有することができる。
NaLiTi(L)
式中、m+n+o=2である。ただし、Lは荷電官能基を持たない。Lは上記で規定した通りである。例えば、スルホン酸アニオン等の負電荷を帯びた官能基を有する少なくとも1のカテコラート配位子(L)の場合、電荷平衡を維持するためには、2モル当量を超えるナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンが必要である。より特定的な実施形態においては、o=0、且つm+n=2であり、その場合、塩形態は、ナトリウム塩及び/又はカリウム塩の形態となる。さらに、特定的な実施形態では、mとnはいずれも0以外の数であり、mとnは互いに等しくてもよく、等しくなくてもよい。いくつかの実施形態では、nに対するmの比を、約1:10〜約10:1の範囲又は約1:5〜約5:1の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、実質的に等モル量のナトリウムとカリウムが、塩形態のチタンカテコール錯体中に存在し得る。上述した通り、塩形態のチタンカテコール錯体中には、非カテコラート配位子も存在することができる。
従って、より一般的な実施形態においては、本明細書に記載の塩形態のチタンカテコール錯体は、以下の化学式を有することができる。
1−7Ti(L)(L)(L
この場合、式中、Dは、(例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、又は他のカチオン等の)一価又は二価のカチオンであり、L〜Lは、二座配位子である。ただし、L〜Lのうち少なくとも1つはカテコラート配位子又は置換カテコラート配位子であり、任意選択的に、L〜Lのうち1つ以上は正又は負の電荷を帯びている。存在するDのモル当量は、Dの電荷と、L〜Lが電荷を帯びている場合にはその電荷の両方に依存する。より特定的な実施形態においては、塩形態のチタンカテコラート錯体は、以下の化学式を有することができる。
Ti(L)(L)(L
この場合、式中、Dは1の一価のカチオン又は2以上の一価のカチオンの混合物であり、L〜Lは上記で規定した通りである。
塩形態のチタンカテコール錯体は、その形成促進のために用いられる塩基に由来するカチオンに応じて変化する。適切な塩基は、塩形態のチタンカテコール錯体を生成するだけの十分な塩基性を有している限り、特に限定されるものではない。適切な塩基としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属重炭酸塩、金属炭酸塩、アンモニウム塩基、テトラアルキルアンモニウム塩基、脱プロトン化配位子塩基、アミン、ホウ酸塩、金属水素化ホウ素、金属水素化物、金属リン酸塩、スルホニウム塩基、ホスファゼニウム塩基、グアニジン塩基、金属アジド、シアネート塩基、チオシアネート塩基、金属カルボン酸塩、フェノレート塩基、カルバメート塩基、イミド塩基、脱プロトン化スルホンアミド塩基、ニトロキシル塩基、塩基性アニオン交換樹脂、金属カルコゲニド、ホスホニウム塩基、テトラアルキルホスホニウム塩基、テトラアリールホスホニウム塩基、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。上述した塩基のうち一部は、水相でより高い溶解度を示す塩形態のチタンカテコール錯体を生成するものであり、その他は、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する有機相を形成するためより有利である。
本発明のいくつかの実施形態では、塩基を、1のアルカリ金属塩基、又は2以上のアルカリ金属塩基の組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態では、アルカリ金属塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせ等のアルカリ金属水酸化物を挙げることができる。より特定的な実施形態においては、アルカリ金属塩基を水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物とすることができる。水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとのモル比は、上述した範囲内とすることができる。ナトリウム対イオン及びカリウム対イオンの混合物を有する錯体は、1のアルカリ金属対イオンのみが存在する場合に得られる錯体と比べて高い溶解度値となる可能性を潜在的に有しているため、特に望ましい場合がある。
本発明の代替的な実施形態では、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等のアルカリ金属塩基を使用して、中間チタンカテコール錯体を塩形態のチタンカテコール錯体に変換することができる。任意選択的に、これらのアルカリ金属塩基を、上記水酸化アルカリ金属塩基と組み合わせて使用することもできる。この場合も、アルカリ水溶液中に存在するアルカリ金属塩基を適宜選択することによって、ナトリウム対イオン及びカリウム対イオンの混合物を導入することもできる。例えば、第1のアルカリ金属対イオンを有するアルカリ金属水酸化物を、第2のアルカリ金属対イオンを有するアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属重炭酸塩と組み合わせて、これを実現することができる。
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、アルカリ金属塩基に代えて、水酸化アンモニウム等のアンモニウム塩基を使用することもできる。いくつかの実施形態では、アルカリ水溶液が、水酸化アンモニウムとアルカリ金属塩基の混合物を含有することもでき、その場合、得られる塩形態のチタンカテコール錯体は、アンモニウム対イオンとアルカリ金属対イオンの混合物を含有することができる。テトラアルキルアンモニウムカチオンのように、一部のアンモニウムカチオンはアルキル置換されていてもよく、これらも塩形態のチタンカテコール錯体の含有物として適切である。
いくつかの実施形態では、置換カテコラート配位子又は非置換カテコラート配位子に加えて、さらに複数の配位子が、本明細書に記載の錯体中に存在することができる。カテコラート配位子の代わりに或いはカテコラート配位子と共に存在し得る他の配位子としては、例えば、アミン、ジアミン、アミノアルコール、アミノ酸、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、ポリオール、グルコン酸塩、ヒドロキシアルカン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フタル酸塩、サルコシン酸塩、サリチル酸塩、シュウ酸塩、尿素、ポリアミン、アミノフェノラート、アセチルアセトネート及び乳酸塩が挙げられる。ここで、化学的に実現可能である場合には、これら配位子を、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキル基、C1−6アルケニル基、C1−6アルキニル基、5員環又は6員環のアリール基又はヘテロアリール基、ボロン酸又はその誘導体、カルボン酸又はその誘導体、シアノ、ハロゲン化物、ヒドロキシル、ニトロ、スルホン酸塩、スルホン酸又はその誘導体、ホスホン酸塩、ホスホン酸又はその誘導体、又はポリエチレングリコール等のグリコールから選択される少なくとも1の基によって、任意選択的に置換可能であるものと認識されたい。炭化水素骨格を有するグリコール等の組成物は、1以上の二重又は三重の炭素−炭素結合を任意選択的に含むことができる。アルカン酸塩には、そのα、β及びγ形態がいずれも含まれる。ポリアミンには、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の錯体中に存在し得る配位子の他の例として、単座配位子や、二座配位子、三座配位子を挙げることもできる。本発明の錯体中に存在し得る単座配位子の例としては、例えば、一酸化カルボニル又は一酸化炭素、窒化物、オキソ、ヒドロキソ、水、硫化物、チオール、ピリジン、ピラジン等が挙げられる。本発明の錯体中に存在し得る二座配位子の例としては、例えば、ビピリジン、ビピラジン、エチレンジアミン、(エチレングリコール等の)ジオール等が挙げられ、そのいずれも、二重又は三重の炭素−炭素結合を任意選択的に含むことができる。本発明の錯体中に存在し得る三座配位子の例としては、例えば、テルピリジン、ジエチレントリアミン、トリアザシクロノナン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等が挙げられる。
いくつかの実施形態では、希釈しない原液のままのチタン試薬をカテコールの有機溶媒溶液に添加することができる。四塩化チタン及びチタンイソプロポキシドのような液体チタン試薬の場合、原液での添加が特に望ましい場合がある。他の実施形態では、チタン試薬の有機溶媒溶液をカテコール溶液に添加することもできる。溶液でのチタン試薬の添加は、固体のチタン試薬の添加を容易にする目的で特に望ましい場合がある。また、原液の液体チタン試薬より液体チタン試薬溶液の方が導入が容易であるため、反応工程の規模によっては、四塩化チタン等の液体チタン試薬の溶液を添加することが望ましい場合もある。例えば、反応規模が小さくなるほど、四塩化チタンの添加量が少なくなるため、四塩化チタンの溶液の方が導入が容易である場合がある。
本明細書に記載の種々の実施形態での利用に適した有機溶媒は、特に限定されるものではない。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、チタン試薬に対して非反応性、且つ実質的に水不混和性とすることができる。限定を意図するものではないが、適切な有機溶媒の例として、トルエン、キシレン、ベンゼン、リグロイン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン 、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、及びそれらの任意の組み合わせ等の水不混和性の非プロトン性有機溶媒が挙げられる。この種の水不混和性の有機溶媒は、本明細書においてさらに説明するように、中間チタンカテコール錯体を塩形態のチタンカテコール錯体に変換する処理において有用であるため特に望ましい場合がある。さらに、これらの水不混和性の有機溶媒は、カテコール化合物と本発明の特定のチタン試薬との反応中に形成されるハロゲン化水素ガスを拘束するような有意な親和性を有していない。これにより、アルカリ水溶液を混合して中間チタンカテコール錯体を塩形態のチタンカテコール錯体に変換する前に、この気体状の反応副生成物種を反応混合物から実質的に追い出すことが可能となる。
いくつかの実施形態では、ある程度の水混和性を有する有機溶媒も適切であり得る。この点に関して、適切な有機溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、水混和性の有機溶媒を単独で使用することができ、他の実施形態では、水不混和性の有機溶媒と組み合わせて使用することもできる。水混和性の有機溶媒を使用する場合、塩形態のチタンカテコール錯体の形成の結果生成される水相の中に、有機溶媒の少なくとも一部が残っていてよい。いくつかの例では、水相中の残留有機溶媒が、塩形態のチタンカテコール錯体の溶解度を向上させることがある。ただし、水相中に有機溶媒が存在するのが望ましくない場合には、各種の蒸留、洗浄又は溶媒交換工程によって、残留溶媒を水相から除去することができる。また、必要な場合又は所望の場合には、これらの工程によって、混合した微量の水不混和性の有機溶媒を除去することもできる。
さらに他の実施形態では、アルコール溶媒が本明細書に記載の合成法での使用に適している場合がある。アルコール溶媒は、四塩化チタン等の一部のチタン試薬と反応性があり、副生成物種として、チタンアルコキシドとHClガス等のハロゲン化水素とを生成するものの、チタンアルコキシドはさらに反応して中間チタンカテコール錯体を形成することができる。中間チタンカテコール錯体を形成すると、アルコールが再生される。HClガス等のハロゲン化水素の副生成物種は、本明細書の記載に従って反応混合物から除去することができる。アルコール溶媒は、塩形態のチタンカテコール錯体の形成後に共溶媒として機能し得る場合には反応混合物中に残すことができるが、或いは、又は上述した各種処理によって反応混合物から除去することもできる。いくつかの実施形態では、アルコール溶媒を、上述した他の有機溶媒のうちのいずれかと組み合わせて使用することもできる。
いくつかの実施形態では、適切なチタン試薬として、四ハロゲン化チタンやオキシハロゲン化チタンを挙げることができる。適切な四ハロゲン化チタンとしては、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、及び混合四ハロゲン化チタンを挙げることができる。本明細書において、「混合四ハロゲン化チタン(titanium mixed tetrahalide)」という用語は、TiClBr、TiClBr、TiClBr等の異なるハロゲン化物を2種類以上含有する四ハロゲン化チタンを指す。これらのチタン試薬は全て分子化合物であり、本明細書に記載の実施形態に従って容易に反応を起こすことができる。これに対し、四フッ化チタンとこれに由来するTiF 2−錯体アニオンは、延長された固体ポリマーであり、結合可能な化合物との反応が容易には起こらない。また、四フッ化チタン及びTiF 2−はフッ化水素を生成するが、フッ化水素は反応性と毒性が高いため、製造の観点からは対処が難しく特に問題がある。
適切なオキシハロゲン化チタン試薬としては、オキシ塩化チタン(TiOCl)、オキシ臭化チタン(TiOBr)、酸ヨウ化チタン(TiOI)を挙げることができる。これらの関連物質であるオキシフッ化チタン化合物は、四フッ化チタンと同様の取扱い上の問題や毒性の問題を呈する可能性があるものの、場合によっては適切に使用することができる。
四ハロゲン化チタン、混合四ハロゲン化チタン、オキシハロゲン化チタンは、カテコール化合物等の結合可能な化合物と接触すると反応して、副生成物種としてハロゲン化水素ガスを放出する。上述した通り、本明細書に記載の合成法を実施するのに適した有機溶媒は、HClガス等のハロゲン化水素ガスを拘束するような有意な親和性を有していないものとすることができる。これにより、アルカリ水溶液と中間チタンカテコール錯体とを混合する前に、HClガス等のハロゲン化水素ガスを、反応混合物から実質的に除去することができる。HClガス等のハロゲン化水素ガスを除去することにより、HClガスと塩基との反応によって相当量の異物塩を発生する事態を避けながら、水相中で塩形態のチタンカテコール錯体を形成することができる。上述したように、ハロゲン化アルカリ金属塩等の異物塩の生成を回避することは、塩形態のチタンカテコール錯体の溶解度を向上させるため望ましい場合がある。さらに、追加の手段をとることによって、アルカリ水溶液を添加して塩形態のチタンカテコール錯体を形成する前に、HClガス等のハロゲン化水素ガスの残留量を反応混合物から確実に除去することもできる。後述するように、減圧、不活性ガスパージ、加熱又はそれらの任意の組み合わせを用いて、残留するHClガス等のハロゲン化水素ガスを除去することができる。
いくつかの実施形態では、アルカリ水溶液の添加前に、反応混合物を減圧状態に維持することができる。本明細書において、「減圧(reduced pressure)」という用語は、海面位で760トル(1.013×10パスカル)である通常の大気圧より低い任意の圧力を指す。いくつかの実施形態では、反応混合物からHClガス等のハロゲン化水素ガスを除去するのに適した減圧を、約50トル〜約400トル(約6.666×10〜約5.333×10パスカル)の範囲又は約100トル〜約200トル(約1.333×10〜約2.666×10パスカル)の範囲とすることができる。有機溶媒の標準沸点から、反応混合物からHClガス等のハロゲン化水素ガスを除去するために必要な減圧レベルがある程度決まる。一般には、圧力を、有機溶媒の損失を最小限に抑えられるレベルに維持する必要がある。例えば、溶媒の損失を防ぐためには、ジクロロメタンのような低沸点の溶媒の場合には、キシレンのような高沸点の溶媒を使用する場合に採用し得る圧力より高い圧力が必要とされ得る。
いくつかの実施形態では、不活性ガス流を反応混合物と接触させて、HClガス等のハロゲン化水素ガスを発生させることもできる。適切な不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン等が挙げられる。不活性ガス流を流すことによって、上述の減圧操作と同様に、反応混合物からのHClガス等のハロゲン化水素ガスの除去を促進することができる。
上述したように、副生成物種であるハロゲン化水素から中間チタンカテコール錯体の分離することを容易にするために、塩形態のチタンカテコール錯体の生成の前に、中間チタンカテコール錯体も反応混合物から単離しておくこともできる。中間チタンカテコール錯体は反応混合物に不溶であることが多いため、適切な中間チタンカテコール錯体の単離方法として、例えば濾過、遠心分離、デカンテーション等を挙げることができる。さらにその後、任意選択的に、中間チタンカテコール錯体が不溶性の溶媒を用いて洗浄を行うこともできる。
多くの場合、本明細書に記載の合成法において、中間チタンカテコール錯体は反応混合物に不溶である。上記のように、中間チタンカテコール錯体を沈殿させることにより、反応の完結を助けることができる上、さらには反応がいつ完結したかを確認する視覚的な指標が得られる。中間チタンカテコール錯体は、多くの実質的に水不混和性である非プロトン性有機溶媒に不溶であるため、このような有機溶媒は本発明の実施形態での使用に特に望ましいものである。また、中間チタンカテコール錯体は、一部の水混和性溶媒に不溶であり、このような溶媒も、水相中に若干の有機溶媒の残留が許容される場合等、本明細書に記載のいくつかの実施形態での使用に望ましい場合がある。
原則的に、中間チタンカテコール錯体は、アルカリ水溶液と混合する前に、反応混合物から単離することができ、また任意選択的に精製処理を行うこともできる。中間チタンカテコール錯体が有機溶媒に不溶である場合には、単離及び/又は精製は特に容易になる。中間チタンカテコール錯体の単離及び/又は精製は、残留するHClガス等のハロゲン化水素を除去する他の手段となり得るものである。この残留するHClガス等のハロゲン化水素は、除去しなければ、中間チタンカテコール錯体を塩形態のチタンカテコール錯体に変換する際に異物塩を形成すると考えられる。中間チタンカテコール錯体の単離と精製は、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相を形成する際に有機溶媒が残留していることが望ましくない場合や、或いは残留する有機溶媒の除去が困難であったり高コストであったりする場合にも実施することができる。反応副生成物種や未反応出発物質等の不純物もまた、中間チタンカテコール錯体の単離によって、塩形態に変換してしまう前に除去することができる。
しかしながら、中間チタンカテコール錯体は、アルカリ水溶液と混合する前に反応混合物から単離することなく、イン・サイチュで反応させることがより望ましい。中間チタンカテコール錯体をイン・サイチュで反応させれば、単離や精製の工程を追加で行う場合と比較して労力やコストを抑えることができる。より具体的な実施形態においては、単一の反応容器内で、中間チタンカテコール錯体と塩形態のチタンカテコール錯体とを連続的に形成することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、他のチタン試薬を使用することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、二塩化チタノセン(即ち、ビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)ジクロリド)をチタン試薬として使用することができる。このチタン試薬は、結合可能な化合物と反応して塩化物配位子との置換を起こし、シクロペンタジエニル配位子が依然としてチタン中心に配位しているチタン錯体を生成する。即ち、二塩化チタノセンとカテコール化合物とが反応する場合には、CpTi(cat)の化学式を有するチタンカテコール錯体が生成される。式中、Cpはシクロペンタジエニル配位子であり、catは置換カテコラート配位子又は非置換カテコラート配位子である。シクロペンタジエニルとカテコラート配位子のうちいずれかがイオン性官能基を有していない限り、このチタンカテコール錯体は帯電していないため、これらの錯体は塩形態には変換されない。もちろん、カテコラート配位子が置換によりイオン性官能基を有している場合には、適切な塩形態を生成する場合がある。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合成法における適切なチタン試薬として、水素化チタンを挙げることができる。
上述したように、四ハロゲン化チタン又はオキシハロゲン化チタンをアルコール溶媒と反応させることにより、チタンアルコキシドをイン・サイチュで生成することができる。この工程中に発生したハロゲン化水素も、上述した方法と同様に対処することができる。他の実施形態では、事前に生成しておいたチタンアルコキシドを本発明の実施形態で利用することもできる。以下では、事前に生成しておいたチタンアルコキシドを使用する例について、さらに説明する。
結合可能な化合物との反応時にハロゲン化水素ガスを発生するチタン試薬以外のチタン試薬も、本発明で用いることができる。これらのハロゲン化水素ガスに代わる副生成物種も、ハロゲン化水素ガスの除去方法と同様の方法或いは異なる方法で、反応混合物から除去することができる。
例えば、いくつかの実施形態では、適切なチタン試薬としてオキシ硫酸チタンを挙げることができる。オキシ硫酸チタンは、カテコール化合物等の結合可能な化合物と接触すると、副生成物種として硫酸を形成する。硫酸は揮発性が比較的低いため、硫酸を気相に転化することによって中間チタンカテコール錯体から硫酸を分離するのは困難である場合がある。よって、副生成物種が硫酸である場合には、反応混合物から中間チタンカテコール錯体を単離することが望ましい可能性がある。例えば、中間チタンカテコール錯体から母液(上澄み液)を完全に除去することによって、反応混合物から中間チタンカテコール錯体を完全に単離することができる。中間チタンカテコール錯体を完全に単離する場合、硫酸は母液と共に残される。従って、水相中で中間チタンカテコール錯体をその塩形態に変換するタイミングでは、硫酸が、異物塩としての硫酸塩の形成に寄与することはないと考えられる。場合によっては、有機溶媒として硫酸が不混和性のものを選択することによって、デカンテーション等の相分離技術で硫酸を分離することもできる。また場合によっては、中間チタンカテコール錯体の形成に用いられる有機溶媒と不混和性でありかつ硫酸が混和性である有機溶媒に硫酸を接触させて、相分離技術で副生成物種である硫酸を分離することもできる。
さらに或いは、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相の形成時に、硫酸を、水相に対して強い不溶性を示す硫酸塩に変換することもできる。適切な不溶性の硫酸塩としては、例えば、硫酸カルシウム又は硫酸バリウム等のアルカリ土類金属硫酸塩を挙げることができる。例えば、十分な量の水酸化カルシウム等のアルカリ土類塩基を反応混合物と接触させて、硫酸をアルカリ土類硫酸塩に変換することができる。アルカリ土類塩基の量は、オキシ硫酸チタン試薬から形成すべき硫酸の化学量論量に基づいて選択することができ、これにより、水相の形成後に潜在的に別の異物塩を形成する可能性のある余分なアルカリ土類金属イオンが水相に導入されるのを防ぐことができる。水相の形成時には、異物塩である硫酸塩を、水相に溶存した形で生成することも水から沈殿した形で生成することもなく、アルカリ金属塩形態等の所望の塩形態のチタンカテコール錯体を生成することができる。所望の塩形態のチタンカテコール錯体を生成するために使用される塩基の量は、存在すべき中間チタンカテコール錯体の化学量論量に基づいて選択することができ、この選択によってもまた水相中での異物塩の形成を防ぐことができる。或いは、硫酸をアルカリ土類硫酸塩に変換してアルカリ土類金属塩形態のチタンカテコール錯体を生成するのに十分な量のアルカリ土類塩基を含有する水溶液を用いて、反応混合物を処理することもできる。いずれの場合も、沈殿したアルカリ土類金属硫酸塩は、水相中の塩形態のチタンカテコール錯体から(例えば濾過によって)分離することができる。
チタンアルコキシドは、中間チタンカテコール錯体の形成と同時にアルコールを生成する。さらに上述したように、アルコール溶媒の存在下でチタンアルコキシドをイン・サイチュで形成する際にも、ハロゲン化水素は発生し得る。ここで、塩形態のチタンカテコール錯体の生成時に(例えば、金属水素化物等の)非常に強い塩基を使用しない限り、副生成物であるアルコールから異物塩が形成されることはない。従って、副生成物であるアルコールを反応混合物中に残し、その後得られる塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相にも残るようにすることも可能である。従って、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、カテコール化合物と有機溶媒とを含有するカテコール溶液を形成することと、チタンアルコキシドをカテコール溶液と接触させて、反応混合物を形成することと、チタンアルコキシドとカテコール化合物とを反応させて、中間チタンカテコール錯体とアルコールとを形成することと、中間チタンカテコール錯体をアルコールから分離せずに、中間チタンカテコール錯体に、塩基を含有するアルカリ水溶液を混合することと、を含むことができる。塩基は、中間チタンカテコール錯体を、アルコールを含有する水相に少なくとも部分的に溶存する塩形態のチタンカテコール錯体に変換する。チタンアルコキシドがイン・サイチュで生成される場合には、アルコール溶媒もまた水相に含まれ得る。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、水相からアルコールを分離することをさらに含むことができる。水相からの適切な除去技術としては、例えば、溶媒洗浄、共沸蒸留等を挙げることができる。
いくつかの又は他の実施形態では、副生成物であるアルコール及び/又はアルコール溶媒を、中間チタンカテコール錯体から分離することができる。例えば、塩形態のチタンカテコール錯体の形成時にアルコールが水相に含まれている状態を望まない場合等に、アルコールを分離することが望ましい場合がある。中間チタンカテコール錯体からアルコールを除去するのに適した技術は、副生成物であるハロゲン化水素ガスを除去する上記の技術(例えば、減圧、不活性ガスの流過等)と同様である。場合によっては、アルコールが混和性でありかつ中間チタンカテコール錯体の形成に用いられる有機溶媒と不混和性である有機溶媒に反応混合物を接触させて、アルコールを除去することもできる。
他の実施形態では、反応混合物から中間チタンカテコール錯体を単離することによって、中間チタンカテコール錯体からアルコールを分離することができる。その場合、アルコールは、母液と共に除去される。中間チタンカテコール錯体を単離し、また任意選択的にさらに高純度に精製するのに適した技術については上述の通りである。
いくつかの実施形態では、反応混合物中でチタンアルコキシドをイン・サイチュで生成することができる。より特定的な実施形態においては、四ハロゲン化チタン等のチタン試薬をアルコール溶媒と反応させてイン・サイチュでチタンアルコキシドを生成し、副生成物としてのハロゲン化水素ガスを遊離させることができる。そして、イン・サイチュで生成されたチタンアルコキシドは、上述したように反応させることによって中間チタンカテコール錯体を生成し、反応混合物中でアルコールを再生することができる。副生成物であるハロゲン化水素とアルコールは、上述したこれらの副生成物種の除去技術を用いて別々に又は同時に対処することができる。
アルカリ水溶液中の塩基の量は、水相中で中間チタンカテコール錯体をその塩形態に変換するのに十分な量となるように選択することができる。特定的な実施形態では、塩基を、1のアルカリ金属塩基、又は2以上のアルカリ金属塩基の組み合わせとすることができる。任意選択的に、本明細書に記載の他の任意の塩基とさらに組み合わせた塩基も可能である。従って、いくつかの実施形態において、塩形態のチタンカテコール錯体はアルカリ金属塩形態である。塩基の量は、チタン試薬の初期量と化学量論的に等価となるように選択することができるが、或いは、化学量論的にわずかに過剰又は不足して塩基が存在する場合もある。従って、その結果得られる塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相は、存在する塩基の実際の量と中間チタンカテコール錯体の形成における収率とに応じて、中性、弱塩基性、又は弱酸性となり得る。本明細書に記載の合成方法は、HClガス等のハロゲン化水素のような様々な塩形成性副生成物を、反応混合物から実質的に除去することを可能にするため、水相中でアルカリ金属塩化物等の不要な異物塩の形成のために塩基が消費されてしまうことが基本的にない。さらに、中間チタンカテコール錯体が高収率で形成されるため、存在するチタン試薬の初期モル量と添加する塩基のモル量とに基づいて、水相のpHを精度よく推定することができる。
より特定的な実施形態においては、アルカリ水溶液中の塩基の量は、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相が約6〜約8のpHを有するような量である。より特定的な実施形態では、得られる水相が約7〜約8のpHを有するように、塩基の量を選択することができる。初期のpHを中性から大きくは外れない値とすることができれば、塩形態のチタンカテコール錯体が比較的安定であるpH条件の水相中で、塩形態のチタンカテコール錯体の形成と維持を行うことができる。さらに、初期pHがこの範囲内にあれば、後述するように、ハロゲン化アルカリ金属等の異物塩を水相に投入することなく、容易に上方に調整することができる。即ち、塩形態のチタンカテコール錯体が安定である中性に近いpHを有する水相を形成することにより、その後、より慎重な上方pH調整を行うことが可能となる。これに対し、仮に中間チタンカテコール錯体をその塩形態に変換するためにアルカリ水溶液を過剰に添加したとすると、初期pHはより高くなることが考えられる。このようなより高いpHでも塩形態のチタンカテコール錯体は安定であるかもしれないが、水相に異物塩を投入せずに酸でpHを下げることはできない。例えば、アルカリ水溶液中にアルカリ金属塩基が存在する場合、初期pHを塩酸で低下させると、水相中に塩化ナトリウム又は塩化カリウム等のアルカリ金属塩化物塩が生成されるという望ましくない事態が生じる。このような事態を回避するのが望ましい理由については、上述した通りである。従って、いくつかの実施形態では、当該アルカリ水溶液或いは異なるアルカリ水溶液を追加で一定量添加して、pHが約9〜約10の範囲、約10〜約12の範囲、又は約12〜約14の範囲となるように初期pHを調整することができる。pHの範囲は、想定されている特定の水相の用途に応じて選択することができる。
本発明の種々の実施形態において、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相の錯体濃度は、約0.5M以上とすることができる。より特定的な実施形態においては、塩形態のチタンカテコール錯体の濃度は、約0.5M〜約2Mの範囲、約0.75M〜約1.5Mの範囲、又は約1M〜約2Mの範囲とすることができる。
従って、いくつか又は他の種々の実施形態において、本発明は、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する組成物を提供する。より具体的な実施形態においては、本明細書に記載の組成物は、水相と、水相に溶存するアルカリ金属塩形態等の塩形態のチタンカテコール錯体と、を含んでよい。組成物は、塩形態のチタンカテコール錯体に対して約0.01モル当量以下の異物塩を含有する。より具体的な実施形態においては、水相は、ハロゲン化アルカリ金属塩、特に塩化ナトリウム又は塩化カリウム、を実質的に含まないものとすることができる。上述のように、この種の水相は、既に上述した合成工程によって容易に調製することができる。
いくつかの実施形態では、水相は、有機溶媒を実質的に含まないものとすることができる。水相から除去される有機溶媒は、中間チタンカテコール錯体の形成の際に使用されたものであり得る。水不混和性の有機溶媒は、容易に除去することができる。必要ならば、追加の蒸留工程を行って、水相から有機溶媒を除去することができる。
他の実施形態では、上述した発明に従って形成された水相が、有機溶媒の少なくとも一部量を含有してもよい。いくつかの実施形態では、水相は、中間チタンカテコール錯体の形成の際に使用された有機溶媒を、微量又は非微量に含有してもよい。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、四塩化チタン又は上述したような他のチタン試薬に対して非反応性である水混和性の非プロトン性有機溶媒であってよい。他の実施形態では、水相がアルコール等の水混和性のプロトン性溶媒を含む場合がある。いくつかの又は他の実施形態では、水相の形成後に、一定量の有機溶媒を水相に添加することができる。水相形成後に水相に添加する有機溶媒としては、水混和性の有機溶媒を挙げることができ、この有機溶媒は、四塩化チタン等のチタン試薬に対して反応性であってもよく、非反応性であってもよい。より特定的な実施形態においては、水相の形成後に、アルコール又はグリコール溶媒を添加することができる。
より具体的な実施形態においては、水相は少なくとも約98重量%の水を含有することができる。他のより具体的な実施形態においては、水相は、少なくとも約55重量%の水、少なくとも約60重量%の水、少なくとも約65重量%の水、少なくとも約70重量%の水、少なくとも約75重量%の水、少なくとも約80重量%の水、少なくとも約85重量%の水、少なくとも約90重量%の水、又は少なくとも約95重量%の水を含有してよい。いくつかの実施形態では、水相は水混和性の有機溶媒を含有せず、塩形態のチタンカテコール錯体の溶媒として水のみを含んでよい。
さらなる実施形態において、水相は、粘度調整剤、湿潤剤、緩衝剤、又はそれらの任意の組み合わせを含有することができる。適切な粘度調整剤としては、例えば、コーンスターチ、コーンシロップ、ゼラチン、グリセロール、グアーガム、ペクチン等を挙げることができる。他の適切な例については、当業者にはよく知られているであろう。適切な湿潤剤としては、例えば、様々な非イオン性の界面活性剤や洗剤を挙げることができる。いくつかの又は他の実施形態において、水相は、グリコール又はポリオールをさらに含有することができる。適切なグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びポリエチレングリコールを挙げることができる。適切なポリオールとしては、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを挙げることができる。水相中に存在し得る例示的な緩衝剤としては、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS,トリス)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES,ヘペス)、ピペラジン−N,N’−ビス(エタンスルホン酸)(PIPES,ピぺス)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。水相にこれらの成分のいずれかを含有させることは、例えば、アルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体の溶存状態の維持、フロー電池への水相の組み込みの少なくともいずれかに役立ち得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の水相は、1以上の可動イオン(即ち、外来の電解質)をさらに含み、フロー電池又はこれに類する電気化学システムにおける電解液として使用することができる。いくつかの実施形態では、適切な可動イオンとして、プロトン、ヒドロニウム又は水酸化物イオンを挙げることができる。他の種々の実施形態では、プロトンや、ヒドロニウム、水酸化物イオン以外の可動イオンが、単独で、或いはプロトン、ヒドロニウム又は水酸化物イオンと一緒に存在していてもよい。例えば、そのような代替的な可動イオンとして、(例えば、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Sr2+等の)アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンや、(例えば、F、Cl、Br等の)ハロゲン化物イオンを挙げることができる。他の適切な可動イオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、カルコゲニド、リン酸塩、リン酸水素、ホスホン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、可動イオンの約50%未満を、プロトン、ヒドロニウム又は水酸化物イオンとすることができる。他の種々の実施形態では、可動イオンの約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、又は約2%未満を、プロトン、ヒドロニウム又は水酸化物イオンとすることができる。他の種々の実施形態では、本発明の塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相は、外来の電解質を全く含まない場合もある。
上述したように、本発明の塩形態のチタンカテコール錯体、特にアルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体、及び当該錯体を含有する関連水相を、フロー電池やこれに類似する電気化学システムに組み込むことができる。以下に、適切なフロー電池とその動作パラメータについてさらに説明する。
種々の実施形態においては、本発明のフロー電池は、第1のハーフセルを備えることができ、その中に第1の電解液を有している。第1の電解液は、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相であり、この塩形態のチタンカテコール錯体に対する異物塩の含有量は、約0.01モル当量以下である。塩形態のチタンカテコール錯体に関するより具体的な開示については、上述した通りである。
さらなる実施形態では、本発明のフロー電池は、第2のハーフセルを備えることができ、その中に第1の電解液の活物質とは異なる活物質を含有する第2の電解液を有している。より具体的な実施形態においては、第2の電解液はヘキサシアノ鉄錯体を含有する水溶液とすることができる。ヘキサシアノ鉄錯体は、水溶液の有効電気化学ウィンドウの範囲内で、高い電極反応性と実質的に可逆的な電気化学的挙動とを有するために特に望ましい活物質であり得る。いくつかの実施形態では、ニトロキシド化合物(特に[2,2,6,6−テトラメチル−4−(スルホオキシ)ピペリジン−1−イル]オキシダニル又はその塩、又はピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、チアゾリン、チオアゾリジン、及びそれらのベンゾ縮合類似体並びにそれらの誘導体)もまた、第2の電解液の活物質として同様に有利である。従って、これらの物質は、特に第1の電解液の活物質としての塩形態のチタンカテコール錯体と組み合わせた場合に、高い開路電位とセル効率の実現を可能にするものである。より具体的な実施形態では、本発明のフロー電池では、第1の電解液がフロー電池の負極に接触し、第2の電解液がフロー電池の正極に接触することができる。
ここで、例示的なフロー電池構成についてさらに詳細に説明する。いくつかの実施形態では、本発明のフロー電池は、数時間の持続時間を有する持続性のある充放電サイクルに適している。従って、本発明のフロー電池を使用して、エネルギーの供給・需要プロファイルを平滑化し、(例えば、太陽光エネルギーや風力エネルギー等の再生可能エネルギー源からの)間欠発電資産を安定化させる機構を提供することができる。よって、本発明の種々の実施形態では、このような長い充電又は放電の持続時間が望ましいエネルギー貯蔵の用途が含意されていることを理解されたい。例えば、限定を意図するものではないが、いくつかの例では、本発明のフロー電池は、送配電網に接続されて、再生可能エネルギーの統合(renewables integration)、ピーク負荷シフト、送配電網の安定化(grid firming)、ベースロード発電及び電力消費、エネルギー裁定取引、送配電資産の繰延、弱送配電網のサポート、周波数調整、又はこれらの任意の組み合わせを可能にする。送配電網に接続されない場合には、本発明のフロー電池を、遠隔キャンプ、前線作戦基地、送配電網を利用しない電気通信、遠隔センサ等や、これらの任意の組み合わせのための電源として使用することができる。さらに、本明細書の開示は概してフロー電池を対象とするが、本明細書に記載の水相は、流れない(stationary)電解液を利用する電気化学エネルギー貯蔵媒体等のフロー電池以外の電気化学エネルギー貯蔵媒体にも組み込み得るものと理解されたい。
いくつかの実施形態においては、本発明のフロー電池は、第1の水系電解液に接触している状態で負極を収容する第1のチャンバと、第2の水系電解液に接触している状態で正極を収容する第2のチャンバと、第1の電解液と第2の電解液との間に配置されたセパレータと、を備えることができる。上述したように、第1の水系電解液を、塩形態のチタンカテコール錯体を含有する水相とすることができる。これらのチャンバはそれぞれがセル内で別個の貯留槽となるものであり、第1の電解液、第2の電解液の少なくとも一方はこれらのチャンバを通過してそれぞれの電極及びセパレータに接触するように循環する。各チャンバとそれに関連付けられた電極及び電解液とで、対応するハーフセルを形成している。セパレータには、例えば、(1)第1の電解液と第2の電解液との混合を防ぐ障壁として機能すること、(2)正極と負極との短絡を低減又は防止するよう電気的に絶縁すること、及び(3)正極電解液チャンバと負極電解液チャンバとの間のイオン移動を容易にし、これにより充放電サイクル中の電子輸送のバランスをとること等のいくつかの機能がある。負極及び正極の表面では、充放電サイクル中に電気化学反応を起こすことができる。充放電サイクル中、電解液は、それぞれの別個の貯蔵タンク内から対応するチャンバを通過して輸送される。充電サイクルにおいては、セルに電力を印加することで、第2の電解液に含まれる活物質が1以上の電子酸化を受けると共に、第1の電解液中の活物質が1以上の電子還元を受けることができる。同様に、放電サイクルにおいては、第2の活物質が還元されると共に第1の活物質が酸化されて電力が生成される。
より具体的な実施形態においては、本発明の例示的なフロー電池は、(a)第1の配位錯体を含有する第1の水系電解液と、(b)第2の配位錯体又はニトロキシド化合物を含有する第2の水系電解液と、(c)第1の水系電解液と第2の水系電解液の間に配置されたセパレータと、(d)任意選択的に、第1の水系電解液と第2の水系電解液の中に存在する可動イオンとを含むことができる。以下により詳細に説明するように、セパレータはアイオノマー膜であってよく、100ミクロン未満の膜厚を有することができると共に、第1の配位錯体及び第2の配位錯体と同じ符号の正味の電荷を帯びることができる。
図1は、単一の電気化学セルを備える例示的なフロー電池を示す模式図である。図1は、単一の電気化学セルを備えるフロー電池を示しているが、複数の電気化学セルを一体に組み合わせる手法は公知であり、以下では、それについて簡単に説明する。活物質やその他のコンポーネントが単一のアセンブリに収容される一般的な電池技術(例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等)とは異なり、フロー電池は、貯蔵タンクのレドックス活性エネルギー貯蔵物質を(例えばポンピングによって)電気化学スタックを通過させて輸送するものである。この設計上の特徴により、電気エネルギー貯蔵システムの電源がエネルギー貯蔵容量から切り離されるため、大幅な設計の柔軟性とコストの最適化が実現可能となる。
図1に示すように、フロー電池1は電気化学セルを備えている。この電気化学セルは、その2つの電極10,10’を隔てるセパレータ20(例えば膜)を備えることを特徴とするものである。本明細書において、「セパレータ(separator)」及び「膜(membrane)」という用語は、電気化学セルの正極と負極との間に配置され、イオン伝導性と電気的絶縁性とを有する材料を指す用語として同義的に用いられる。電極10,10’は、金属、炭素、グラファイト等の適切な導体材料で形成されている。図1では、電極10,10’がセパレータ20から離間しているように図示しているが、より特定的な実施形態においては、電極10,10’をセパレータ20に接触して配置することができる。電極10,10’を形成する材料は、第1の電解液30及び第2の電解液40との接触表面積が大きくなるように、多孔質とすることができる。電極10,10’との接触により、第1の電解液30及び第2の電解液40の活物質は、フロー電池1の動作中に酸化状態と還元状態との間を循環することができる。例えば、特定的な実施形態では、電極10,10’の一方又は両方を多孔質カーボン布又はカーボン発泡体で形成することができる。
ポンプ60は、第1の活物質を含有する第1の電解液30をタンク50から電気化学セルに輸送するためのものである。フロー電池はまた適宜、第2の活物質を含有する第2の電解液40を保持する第2のタンク50’も含む。第2の電解液40中の第2の活物質は、第1の電解液30中の第1の活物質と同一の物質であってよく、又は異なる物質であってもよい。第2のポンプ60’は、第2の電解液40を電気化学セルに輸送するためのものである。また、(図1には示していないが)電気化学セルからタンク50,50’に第1の電解液30及び第2の電解液40を戻す輸送のためにもポンプを用いてよい。また、例えばサイフォン等の、流体輸送に作用する他の方法によっても、第1の電解液30及び第2の電解液40を電気化学セル内外に適宜輸送することができる。図1には電源、即ち負荷70も図示されている。負荷70によって電気化学セル回路が完成し、回路の動作中、ユーザによる電気の蓄積(貯蔵)が可能となる。また、充放電を目的とした送配電網への接続も負荷70から行われ得る。
図1は、フロー電池の具体的な実施形態を示すものであり、限定を意図するものではないことを理解されたい。従って、本発明の精神と合致するフロー電池が図1の構成とは様々な面で異なる場合がある。一例として、フロー電池システムは、固体、気体、及び/又は液体に溶存する気体である1以上の活物質を含むことができる。活物質は、大気に開放しているか又は単に大気への通気口を設けたタンク又は容器に貯蔵することができる。
充電サイクルでのフロー電池の動作においては、一方の活物質が酸化を受け、他方の活物質が還元を受ける。放電サイクルでは、各ハーフセルにおいて逆の反応が起こる。活物質の酸化状態を変化させると、両電解液の化学ポテンシャルの均衡が崩れる。そして、この化学ポテンシャルの不均衡を解消するために、各電解液に溶存する可動イオンがセパレータを通過して移動し、一方の電解液中の電荷を低下させ、他方の電解液中の電荷を上昇させる。従って、可動イオンは活物質の酸化や還元によって発生する電荷を移動させるが、通常、可動イオン自体は酸化や還元を受けない。高い電極反応性を維持するため、フロー電池は、電解液において可動イオンと活物質の溶存状態が継続的に保たれるように構成される。さらに、電解液において可動イオンと活物質の溶存状態を継続的に保つことによって、固体が循環してしまうことに伴う潜在的な問題を回避することができる。
上記したように、動作中のエネルギー貯蔵・放出速度を上昇させるため、複数の電気化学セルを相互に組み合わせて電気化学スタックとすることもできる。放出されるエネルギー量は、存在する活物質の総量によって決定される。電気化学スタックにおいては、隣接する電気化学セル間で電気的な通信は確保しながら流体連通は遮断するように、両隣接セル間にバイポーラプレートを設けている。このように、バイポーラプレートは、個々の電気化学セル内の適切なハーフセル内にそれぞれの電解液を封じ込めるものである。一般に、バイポーラプレートは、全体として流体連通性を持たない導電材料から製造されている。適切な材料としては、炭素、グラファイト、金属、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。非導電性ポリマーに導体材料を分散させてバイポーラプレートを製造することもできる。そのような導体材料としては、炭素粒子、炭素繊維、金属粒子、金属繊維、金属グラフェン、カーボンナノチューブ、又はその何れか又は全ての組み合わせ等が挙げられる。バイポーラプレートは、電気化学セルの電極と同じ種類の導体材料から製造され得るが、電極が電解液の流れの通過を完全に許す連続孔を多く有するのに対して、バイポーラプレートは、そのような多連続孔性は有していない。ただし、バイポーラプレートは、必ずしも完全無孔質の物体には限られないことを認識されたい。バイポーラプレートは、材質的或いは構造的な複数の流路を有しており、この複数の流路によって、電解液が接触できるバイポーラプレートの表面積が増大している。適切な流路構成としては、例えば、交互配列された(interdigitated)流路を挙げることができる。いくつかの実施形態では、流路によって、電気化学セル内の電極への電解液の送達を促進することができる。
場合によっては、(図1には示していない)流体入口マニホールドと流体出口マニホールドとを介して、各電気化学セルへの電解液の送達と回収を行うことができる。いくつかの実施形態では、流体入口マニホールドと流体出口マニホールドとは、隣接する電気化学セルを隔てるバイポーラプレートを介して、電解液の供給と回収を行うことができる。各電気化学セルの両ハーフセルそれぞれに別体のマニホールドを設けることにより、対応する電解液を個別に供給することが可能となる。より特定的な実施形態においては、流体入口マニホールドと流体出口マニホールドとは、(例えば、バイポーラプレートの流路の一端部から電解液の供給を行い、他端部から電解液の回収を行う等)バイポーラプレートの互いに対向する側面をそれぞれ介して電解液の供給と回収を行うように構成することができる。
本明細書において、「セパレータ(separator)」及び「膜(membrane)」という用語は、電気化学セルの正極と負極との間に配置され、イオン伝導性と電気的絶縁性とを有する材料を指す。セパレータは、いくつかの実施形態では多孔質膜、及び/又は他の種々の実施形態ではアイオノマー膜とすることができる。いくつかの実施形態では、セパレータをイオン伝導性ポリマーから形成することができる。
ポリマー膜は、アニオン伝導性又はカチオン伝導性の電解質とすることができる。「アイオノマー(ionomer)」と記載する場合、この用語は、電気的に中性の繰返し単位及びイオン化した繰返し単位の双方を含有するポリマー膜を指し、イオン化した繰返し単位は、ペンダント基としてポリマー骨格に共有結合している。一般に、イオン化した単位の比率は、約1mol%〜約90mol%の範囲とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、イオン化した単位の含有量は約15mol%未満であり、他の実施形態では、イオン含有量はより高く、例えば約80mol%超である。さらに別の実施形態では、イオン含有量は、例えば約15〜約80mol%の範囲のように中間範囲によって規定される。アイオノマーにおけるイオン化した繰返し単位としては、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性官能基が挙げられる。これらの官能基は、アルカリ又はアルカリ土類金属等の一価又は二価以上のカチオンによって電荷を平衡させることができる。またアイオノマーとしては、結合された又は組み込まれた第四級アンモニウム、スルホニウム、ホスファゼニウム、及びグアニジンの残基又は塩を含有するポリマー組成物も挙げられる。適切な例については、当業者にはよく知られているであろう。
いくつかの実施形態では、セパレータとして利用できるポリマーが、高フッ素化ポリマー骨格又は過フッ素化ポリマー骨格を含む場合がある。本発明において利用できる特定のポリマーとしては、テトラフルオロエチレンと1以上のフッ素化酸官能性コモノマーとの共重合体が挙げられる。この共重合体は、デュポン(DuPont)社からナフィオン(NAFION)(登録商標)過フッ素化ポリマー電解質として市販されているものである。他の利用可能な過フッ素化ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンとFSO−CFCFCFCF−O−CF=CFの共重合体、フレミオン(FLEMION)(登録商標)及びセレミオン(SELEMION)(登録商標)が挙げられる。
さらに、スルホン酸基(又はカチオン交換スルホン酸基)で修飾した、実質的にフッ素化されていない膜を用いることもできる。このような膜としては、実質的に芳香族の骨格を有するものが挙げられ、例えばポリスチレン、ポリフェニレン、ビフェニルスルホン(BPSH)、又はポリエーテルケトン及びポリエーテルスルホン等の熱可塑性物質等を含むことができる。
電池セパレータ用の多孔質膜も本セパレータとして使用可能である。そのような膜はそれ自身ではイオン伝導性を待たないため、通常、セパレータとして機能させるために添加物を含浸させている。一般に、これらの膜は、ポリマーと無機充填剤の混合物を含有し、多くの開放孔を有する。適切なポリマーとしては、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。適切な無機充填剤としては、炭化ケイ素マトリックス材、二酸化チタン、二酸化ケイ素、リン化亜鉛及びセリアが挙げられる。
セパレータは、ポリエステルや、ポリエーテルケトン、ポリ(塩化ビニル)、ビニルポリマー、置換ビニルポリマーで形成することもできる。これらは単独で、又は前述のポリマーの何れかと組み合わせて使用できる。
多孔質セパレータは、電解液で満たされた開流路を介した両電極間の電荷移動を可能とする非導体膜である。しかし、この透過性によって、(例えば、活物質等の)化学物質がセパレータを通過して一方の電極から他方の電極へ移動して、相互汚染やセルのエネルギー効率の低下が引き起こされてしまう可能性が高まる。このような相互汚染の程度は、いくつかある特徴の中でも特に、孔のサイズ(有効径及び流路長)、孔の特性(疎水性/親水性)、電解液の性質、及び孔の電解液に対する濡れ性によって決まり得る。
多孔質セパレータの孔のサイズの分布は、両電解液間での活物質のクロスオーバーを実質的に防止するものであれば概ね十分である。適切な多孔質膜の平均孔サイズ分布は、約0.001nm〜20μm、より典型的には約0.001nm〜100nmとすることができる。多孔質膜の孔のサイズ分布はかなり広くとることができる。言い換えれば、多孔質膜は、非常に小さい径(略1nm未満)の第1の複数の孔と、非常に大きい径(略10μm超)の第2の複数の孔とを含むことができる。孔のサイズが大きくなれば、活物質のクロスオーバー量が増大するおそれがある。多孔質膜が有する、活物質のクロスオーバーの実質的な防止力は、平均孔サイズと活物質のサイズとの相対的な差によって決まる。例えば、活物質が金属中心の配位錯体である場合には、該配位錯体の平均径は本多孔質膜の平均孔サイズよりも約50%大きくなる。一方、もし多孔質膜が実質的に均一な孔サイズを有していた場合には、該配位錯体の平均径は、この多孔質膜の平均孔サイズよりも約20%大きくなる。また、配位錯体が少なくとも1つの水分子とさらに配位結合すると、配位錯体の平均径はさらに大きくなる。少なくとも1つの水分子を持つ配位錯体の径は、一般に流体力学的径と見なされるものである。本実施形態では、この流体力学的径が平均孔サイズより概ね少なくとも約35%大きくなる。一方、平均孔サイズが実質的に均一である場合には、この流体力学的半径 が平均孔サイズよりも約10%大きくなる。
いくつかの実施形態において、セパレータは、安定性を高めるための補強材料を含むこともできる。適切な補強材料としては、ナイロン、綿、ポリエステル、結晶シリカ、結晶チタニア、非晶質シリカ、非晶質チタニア、ゴム、アスベスト、木材、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
本発明のフロー電池内のセパレータは、約500μm未満、約300μm未満、約250μm未満、約200μm未満、約100μm未満、約75μm未満、約50μm未満、約30μm未満、約25μm未満、約20μm未満、約15μm未満、又は約10μm未満の膜厚を有することができる。適切なセパレータとしては、セパレータが100μmの膜厚を有する場合に、フロー電池が約85%超の電流効率及び100mA/cmの電流密度で動作可能であるものが挙げられる。さらなる実施形態においては、フロー電池は、セパレータが約50μm未満の膜厚を有する場合に99.5%超の電流効率で、セパレータが約25μm未満の膜厚を有する場合に99%超の電流効率で、セパレータが約10μm未満の膜厚を有する場合に98%超の電流効率で動作することができる。従って、適切なセパレータとして、フロー電池が60%超の電圧効率及び100mA/cmの電流密度で動作可能であるものが挙げられる。さらなる実施形態では、適切なセパレータとして、フロー電池が70%超、80%超、又は90%超の電圧効率で動作可能であるものが挙げられる。
セパレータを介した第1の活物質及び第2の活物質の拡散率は、約1×10−5mol/cm/日未満、約1×10−6mol/cm/日未満、約1×10−2mol/cm/日未満、約1×10−9mol/cm/日未満、約1×10−11mol/cm/日未満、約1×10−13mol/cm/日未満、又は約1×10−15mol/cm/日未満とすることができる。
また、フロー電池は、第1の電極及び第2の電極に電気的に接続された外部の電気回路を含むことができる。この回路は動作中、フロー電池を充放電することができる。第1の活物質、第2の活物質、又はこれら両活物質の正味のイオン電荷の符号について言及する場合、その言及は、フロー電池が動作中の条件下でのレドックス活物質の酸化形態及び還元形態の両方における正味のイオン電荷の符号に関するものである。フロー電池のさらなる例示的な実施形態によって以下が得られる。即ち、(a)第1の活物質は、正味の正又は負の電荷を帯びると共にシステムの負の動作電位の範囲内の電位に対して酸化形態又は還元形態をとることができ、これにより、得られる第1の活物質の酸化形態又は還元形態が第1の活物質と同じ電荷符号(正又は負)を有し、且つアイオノマー膜も同符号の正味のイオン電荷を有すること、(b)第2の活物質は、正味の正又は負の電荷を帯びると共にシステムの正の動作電位の範囲内の電位に対して酸化形態又は還元形態をとることができ、これにより、得られる第2の活物質の酸化形態又は還元形態が第2の活物質と同じ電荷符号(正又は負の符号)を有し、且つアイオノマー膜も同じ符号の正味のイオン電荷を有すること、又は(a)及び(b)の双方である。いくつかの実施形態では、酸化形態と還元形態のいずれにおいても、正味のイオン電荷が負となる場合がある。第1の活物質及び/又は第2の活物質とアイオノマー膜の電荷を一致させることにより、高い選択性が得られる。より具体的には、このように電荷を一致させることにより、アイオノマー膜を通過する第1の活物質由来又は第2の活物質由来のイオンのモル流束を、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、又は約0.1%未満とすることができる。「イオンのモル流束(molar flux of ions)」という用語は、アイオノマー膜を通過し、外部の電気/電子の流れが帯びている電荷を平衡させるイオンの量を指す。即ち、フロー電池は、アイオノマー膜によって活物質を実質的に遮断しながら動作可能であるか又は動作する。そのような遮断は、電荷が一致することにより促進され得る。
本発明の電解液が組み込まれるフロー電池は、以下の動作特性の1つ以上を有することができる。即ち、(a)フロー電池の動作中、第1の活物質又は第2の活物質が、アイオノマー膜を通過するイオンのモル流束の約3%未満であること、(b)往復電流効率が約70%超、約80%超、又は約90%超であること、(c)往復電流効率が約90%超であること、(d)第1の活物質と第2の活物質の何れか又は両方の正味のイオン電荷の符号が、その酸化形態と還元形態の間で異ならず、且つアイオノマー膜の符号と一致すること、(e)アイオノマー膜が約100μm未満、約75μm未満、約50μm未満、又は約250μm未満の膜厚を有すること、(f)フロー電池が、約100mA/cm超の電流密度及び約60%超の往復電圧効率で動作可能であること、及び(g)電解液のエネルギー密度が、約10Wh/L超、約20Wh/L超、又は約30Wh/L超であることである。
場合によっては、ユーザが、1つの電池セルから得られる電圧よりも高い充放電電圧を得ることを望む場合もある。このような場合、いくつかの電池セルを直列に接続して、各セルの電圧が加算されるようにすることができる。これにより、バイポーラスタックが形成される。(例えばバイポーラプレート等の)無孔質の導電材料を用いて隣接する電池セルを接続してバイポーラスタックにすることで、隣接セル間での電子の移動を可能としながら流体又は気体の移動を防ぐことができる。各セルの正極チャンバや負極チャンバは、スタック内で共通の正の流体マニホールドや負の流体マニホールドを介して流体的に接続することができる。このように、複数の個々のセルを直列に積み重ねることにより、DC用途又はAC用途への変換に適した電圧を生成することができる。
追加の実施形態では、セル、セルスタック又は電池を、より大型のエネルギー貯蔵システム内に組み込むことができる。この大型システムは、大型ユニットの動作に有用な配管や制御装置を適宜備えるものである。そのようなシステムに適した配管や制御装置等の設備については当技術分野において公知であり、例えば、電解液を各チャンバ内外に移動させるためにチャンバと流体連通した配管及びポンプや、充放電した電解液を保持するための貯蔵タンク等を備えることができる。本発明のセルや、セルスタック、電池はまた、動作管理システムを備えることもできる。動作管理システムは、コンピュータ又はマイクロプロセッサ等の任意の適切なコントローラデバイスであってよく、各種のバルブ、ポンプ、循環回路等のいずれかの動作を設定する論理回路を有することができる。
より具体的な実施形態では、フロー電池システムは、(セル又はセルスタックを備える)フロー電池と、電解液を収容及び輸送するための貯蔵タンク及び配管と、制御ハードウェア及び制御ソフトウェア(安全システムを含んでいてもよい)と、電力調節ユニットとを備えることができる。フロー電池セルスタックは、充電サイクルと放電サイクルの間の切替えを可能とし、ピーク電力を決定するものである。貯蔵タンクは、本明細書に記載の配位錯体等の正の活物質や負の活物質を収容するもので、このタンクの容量によって同システムの貯蔵エネルギー量が決まる。制御ソフトウェアや、制御ハードウェア、そして任意選択的に備えられる安全システムは、センサ、緩和装置、及びその他の電子/ハードウェア制御装置及び安全防護装置を適宜備えており、フロー電池システムの安全で自律的、且つ効率的な動作を保証するものである。電力調節ユニットは、エネルギー貯蔵システムのフロントエンド部で用いられ、入力電力の電圧及び電流をエネルギー貯蔵システムに最適な形に、出力電力の電圧及び電流を利用用途に最適な形に変換することができる。例えば、エネルギー貯蔵システムが送配電網に接続されている例の場合、充電サイクルにおいて、電力調節ユニットは入力AC電力をセルスタックに適した電圧及び電流のDC電力に変換することができる。一方、放電サイクルにおいては、セルスタックはDC電力を生成し、電力調節ユニットはこのDC電力を送配電網に送るのに適した電圧と周波数のAC電力に変換する。
上記で別の定義を定めている場合を除き、或いは当業者が別の意味で解している場合を除き、以下の段落における定義を本発明に適用することができる。
本明細書において、「エネルギー密度(energy density)」という用語は、活物質において単位体積当たりで貯蔵され得るエネルギーの量を指す。エネルギー密度は、エネルギー貯蔵の理論上のエネルギー密度を指し、以下の式1によって計算することができる。
エネルギー密度=(26.8A−h/mol)×OCV×[e] (式1)
式中、OCVは50%の充電状態での開路電位であり、(26.8A−h/mol)はファラデー定数であり、[e]は99%の充電状態で活物質に貯蔵される電子の濃度である。正極電解液及び負極電解液の活物質がいずれも原子種又は分子種を主に含む場合、[e]は以下の式2によって計算することができる。
[e]=[活物質]×N/2 (式2)
式中、[活物質]は負極電解液又は正極電解液の活物質のモル濃度のうちいずれか低い方であり、Nは活物質1分子当たりの移動電子の数である。関連用語の「電荷密度(charge density)」は、各電解液が含有する電荷の総量を指す。所与の電解液について、電荷密度は以下の式3によって計算することができる。
電荷密度=(26.8A−h/mol)×[活物質]×N (式3)
式中、[活物質]及びNは上記で定めた通りである。
本明細書において、「電流密度(current density)」という用語は、電気化学セルに流れる総電流をセルの電極の幾何学的面積で除したものを指し、一般にmA/cmの単位で表される。
本明細書において、「電流効率(current efficiency)」(Ieff)という用語は、セルの放電時に生成される総電荷に対する充電時に移動する総電荷の比率であると説明することができる。電流効率は、フロー電池の充電状態の関数であり得る。限定を意図するものではないが、いくつかの実施形態では、電流効率は、充電状態が約35%〜約60%の範囲にある場合に求めることができる。
本明細書において、「電圧効率(voltage efficiency)」という用語は、所与の電流密度において観察される電極電位のその電極のハーフセル電位に対する比率(×100%)であると説明することができる。電圧効率には、電池の充電工程時の電圧効率や放電工程時の電圧効率、或いは「往復電圧効率(round trip voltage efficiency)」が含まれ得る。所与の電流密度における往復電圧効率(Veff,RT)は、以下の式4を用いて、放電時のセル電圧(Vdischarge)と充電時の電圧(Vcharge)とから計算できる。
eff,RT=Vdischarge/Vcharge×100% (式4)
本明細書において、「負極(negative electrode)」及び「正極(positive electrode)」という用語は、相互に相対的に規定された電極のことであり、充電サイクル及び放電サイクルのいずれにおいてもそれらが動作する実際の電位とは無関係に、負極が正極より負の電位で(またその逆で)動作するか又は動作するように設計若しくは意図されるものである。負極は、可逆水素電極より負の電位で実際に動作するか又は動作するように設計若しくは意図される場合があり、そうでない場合もある。本明細書に記載するように、負極は第1の電解液に関連付けられ、正極は第2の電解液に関連付けられている。負極に関連付けられた電解液をネゴライト(negolyte,負極電解液)、正極に関連付けられた電解液をポソライト(posolyte,正極電解液)と記載することがある。
環境大気の排除を意図した標準的な実験手順に従って、本明細書に記載の合成を実施した。
(実施例1:NaKTi(カテコール)の合成)
オーブン乾燥した5L丸底フラスコに、オーバーヘッド攪拌機と、凝縮器と、セプタムとを取り付けた。その後、この実験系に適度な速度で窒素ガス流を流してフラスコ内の環境パージを行った。凝縮器の頂部には窒素出口を配置し、これを水1Lに対してNaOH150gを含有する塩基捕捉剤に接続した。
次に、フラスコに、o−キシレン600mLとカテコール298.25g(2.708mol,2.97モル当量)を順に添加した。そして、撹拌を開始し、o−キシレン100mLをさらに添加した。次に、この混合物を、約75℃〜80℃の温度でカテコールが溶解するまで加熱した。この温度でTiClを添加しながら反応を維持した。
別のフラスコで、窒素ガスの散布により、o−キシレン100mLの脱気を行った。オーブン乾燥と風袋計量を行った500mLの琥珀色瓶にセプタムを取り付け、これにTiCl173g(100mL,0.912mol,1.0モル当量)を移し、さらに脱気したo−キシレンを、カニューレを通して当該琥珀色瓶に移した。TiClはo−キシレンに溶解して暗色の溶液を生成した。次に、カニューレを通して、TiCl溶液を加熱したカテコール溶液に滴下した。TiCl溶液の滴下初期の数滴によって、激しい反応が起こる場合があった。約2時間にわたる滴下の間に、反応混合物の色は、暗赤色を経て暗褐色に変化し、反応混合物からHClが発生した。また、TiCl溶液の滴下中に、反応混合物中に固体が形成された。
TiCl溶液の添加完了後、温度を120℃に上げ、その後17時間にわたって撹拌を継続した。この時フラスコからHClガスを排出するのに十分な速度であってo−キシレン溶媒を実質的に除去しない速度に維持した窒素流を流した。
17時間にわたる加熱時間が終わると、湿式pH試験紙を用いて、窒素出口でHClの発生を検査した。また、HCl発生の完了を確認する2次検査として、窒素出口チューブを少量の脱イオン水に入れてバブリングを行い、当該脱イオン水のpHを検査して非酸性であることを確認した。
HCl発生の完了を確認後、アルカリ水溶液を反応混合物に添加した。具体的には、アルカリ水溶液は、脱イオン水600mLに、NaOH35.57g(0.889mol,0.975モル当量)とKOH58.7g(0.889mol,0.975モル当量)を溶解させ、少なくとも1時間の窒素散布による脱気を行うことにより調整した。次に、カニューレを通して、加熱した反応物にアルカリ水溶液を1時間かけて滴下した。滴下完了後、撹拌を継続し、その後このアルカリ水溶液を加えた反応混合物をさらに3時間還流した。
3時間の還流後、得られた水相の一定分量を採取し、pHが7.52であることを確認した。脱イオン水100mLに、NaEDTA4.33g(0.0114mol,0.0125モル当量)と、KEDTA5.04g(0.0114mol,0.0125モル当量)と、NaOH0.46g(0.0114mol,0.0125モル当量)と、KOH1.51g(0.0228mol,0.0250モル当量)を溶解させた溶液を、反応物に1時間かけて滴下した。その後、反応混合物をさらに1時間還流し、水相の一定分量を再び採取した。塩基の追加投入後の水相のpHを測定すると、10.10であった。
次に、反応混合物を約60℃に冷却し、熱いうちに粗粒フリットガラス漏斗で濾過した。さらに濾液を回収して、中粒フリットガラス漏斗で再濾過した。次に、濾液に含まれる液層を分液漏斗で分液しながら室温に冷却した。次に、下層の水相を回収して、さらに分析を行った。この実験によって得られたアルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体の濃度は0.87Mであり、収率は92%であった。以下では、同錯体を含有する水相の大規模合成工程用の実験データを記載する。
(実施例2:72L規模でのNaKTi(カテコール)の合成)
72L丸底ガラス反応器に、機械式攪拌機と、凝縮器と、1Lの滴下漏斗とを取り付けた。その後、この実験系に適度な速度(7L/分)で窒素ガス流を流した。窒素出口は、塩基捕捉剤に接続した。
次に、フラスコに、カテコール8.621kg(78.290mol,2.95モル当量)とキシレン20Lを添加した。そして、撹拌を開始し、キシレン5Lをさらに添加した。次に、この混合物を、約75℃〜80℃の温度でカテコールが溶解するまで加熱した。この温度でTiClを添加しながら反応を維持した。
カニューレを通して、TiCL原液5.041kg(2.914L,26.576mol,1.00モル当量)を滴下漏斗に投入した。次に、加熱したカテコール溶液に対して、TiCl溶液を約6mL/分の速度で約8時間かけて滴下した。反応混合物を窒素ガス流下で12時間60℃に加熱し、その後、120トルの圧力でさらに12時間60℃に加熱した。真空加熱工程中は、窒素パージを中断した。塩基捕捉剤に対して滴定を行うことで、HClガスの放出量を特定し、その量が理論レベルに近いこと(>「理論上のHCl放出量の99%」)を確認し、さらに、HClの放出完了を確認するための上述の追加のモニタリング検査を実施した。真空加熱工程の完了後は、窒素パージを再開した。
次に、反応器を80℃に加熱し、窒素流パージ下に置いた。次に、等モル量のNaOHとKOH(NaOH1.03kgとKOH1.579kg,共に25.701mol,0.975モル当量)を含有する3Mアルカリ水溶液18.75Lを、2.5時間かけて反応混合物に添加した。NaOH/KOH溶液は、事前に窒素パージを行ったものを使用した。次に、0.12当量のNaOHとKOHを反応混合物(NaOHとKOHを等モル含有する3M溶液)に添加して、得られた水相のpHを調整した。pHが安定条件である9〜10の範囲に達すると、攪拌を止め、相の分液を行った。水相の実際の最終pHは9.87であった。下層の水相を反応器からサイフォン吸引し、遠心分離機で262グラムの濾過剤を含有する含水セライト577ケーキを通して熱濾過した。この間に、反応器に残留する有機相中のエマルジョンが沈降するため、さらなる遠心分離を行ってさらなる量の水相を得、これを最初に分液した水相と合わせた。
濾過後に収集した水相の体積は、全量で25.5Lであり、UV−VIS分光法による測定の結果、アルカリ金属塩形態のチタンカテコール錯体の濃度は0.84Mであった。この測定濃度と収集体積に基づく収率は82%であった。遊離カテコールは、H−NMR測定値で不検出であった。単離後の水相は透明暗赤色であった。図2A及び2Bは、アセトンを基準物質とする、DO中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的なH−NMRスペクトルを示す。図3A及び図3Bは、DO中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的な13C−NMRスペクトルを示す。図4は、水中のNaKTi(カテコール)錯体の例示的なUV−VISスペクトルを示す。
上述した実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者であれば、これらの実施形態が本発明を例示するものに過ぎないことが容易に認められるであろう。本発明の精神から逸脱することなく種々の変更が可能であることを理解されたい。上記の説明には含まれないが本発明の精神及び範囲に相応する任意の数の変形、改変、置き換え、又は同等の構成を組み込むことにより本発明を変更することができる。さらに、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明の態様は、記載した実施形態の一部のみを含み得ることを理解されたい。従って、本発明は、上述の記載によって限定されると見なされるべきではない。

Claims (23)

  1. カテコール化合物と有機溶媒とを含むカテコール溶液を形成し、
    前記カテコール溶液にチタン試薬を接触させて、反応混合物を形成し、
    前記チタン試薬と前記カテコール化合物とを反応させて、中間チタンカテコール錯体と副生成物種とを形成し、
    前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離し、
    前記中間チタンカテコール錯体に、塩基を含むアルカリ水溶液を混合する、
    ことを含む方法であって、
    前記塩基は、前記中間チタンカテコール錯体を、水相に少なくとも部分的に溶存する塩形態のチタンカテコール錯体に変換する、方法。
  2. 前記塩基がアルカリ金属塩基を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記アルカリ金属塩基がアルカリ金属水酸化物を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記塩基がアンモニウム塩基をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  5. 前記チタン試薬が、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、混合四ハロゲン化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ臭化チタン、酸ヨウ化チタン、オキシ硫酸チタン、及びチタンアルコキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記副生成物種が1以上のハロゲン化水素を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記アルカリ水溶液を前記中間チタンカテコール錯体と混合する前に、前記反応混合物を減圧に維持し、前記反応混合物を不活性ガス流と接触させ、又はそれらの任意の組み合わせにより、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記アルカリ水溶液を前記中間チタンカテコール錯体と混合する前に、前記中間チタンカテコール錯体を前記反応混合物から単離して、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離する、請求項6に記載の方法。
  9. 前記副生成物種が硫酸を含む、請求項5に記載の方法。
  10. 前記アルカリ水溶液を前記中間チタンカテコール錯体と混合する前に、前記中間チタンカテコール錯体を前記反応混合物から単離して、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離する、請求項9に記載の方法。
  11. 硫酸と混和性でありかつ前記中間チタンカテコール錯体と不混和性である溶媒であって前記反応混合物を含む前記有機溶媒とも不混和性である溶媒に、前記反応混合物を接触させることにより、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離する、請求項9に記載の方法。
  12. 前記副生成物種がアルコールを含む、請求項5に記載の方法。
  13. 前記アルカリ水溶液を前記中間チタンカテコール錯体と混合する前に、前記反応混合物を減圧に維持し、前記反応混合物を不活性ガス流と接触させ、又はそれらの任意の組み合わせにより、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離する、請求項12に記載の方法。
  14. 前記アルカリ水溶液を前記中間チタンカテコール錯体と混合する前に、前記中間チタンカテコール錯体を前記反応混合物から単離して、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離する、請求項12に記載の方法。
  15. アルコールと混和性であり、且つ前記中間チタンカテコール錯体と不混和性である溶媒であって、前記反応混合物を含む前記有機溶媒とも不混和性である溶媒に、前記反応混合物を接触させることにより、前記副生成物種を前記中間チタンカテコール錯体から分離する、請求項12に記載の方法。
  16. 前記有機溶媒が、水不混和性の有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記水不混和性の有機溶媒が、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記アルカリ水溶液中の塩基の量が、前記塩形態のチタンカテコール錯体を含有する前記水相のpHが約6〜約8となる量である、請求項1に記載の方法。
  19. 前記アルカリ水溶液又は異なるアルカリ水溶液を、追加で一定量前記水相に添加し、前記水相のpHが約9〜約10の範囲となるように調整することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
  20. 前記中間チタンカテコール錯体と前記塩形態のチタンカテコール錯体とが単一の反応容器内で連続的に形成される、請求項1に記載の方法。
  21. 前記水相と、前記有機溶媒を含む有機相とを互いに分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  22. カテコール化合物と有機溶媒とを含むカテコール溶液を形成し、
    チタンアルコキシドを前記カテコール溶液と接触させて、反応混合物を形成し、
    前記チタンアルコキシドと前記カテコール化合物とを反応させて、中間チタンカテコール錯体とアルコールとを形成し、
    前記中間チタンカテコール錯体をアルコールから分離せずに、前記中間チタンカテコール錯体に塩基を含むアルカリ水溶液を混合する、
    ことを含む方法であって、
    前記塩基は、前記中間チタンカテコール錯体を、アルコールを含む水相に少なくとも部分的に溶存する塩形態のチタンカテコール錯体に変換する、方法。
  23. 前記水相からアルコールを分離することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
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